ばば せいし
馬場成志議員の政治活動総覧(2015–2025)
概要
自由民主党所属の参議院議員、馬場成志(ばば・せいし)氏は、熊本県選挙区選出の政治家である12。1964年熊本市生まれで、熊本市議(2期)、熊本県議(5期)を経て2013年に国政へ進出した経歴を持つ34。
地方議会では第81代県議会議長など要職を歴任し、地方行政に精通している5。参議院議員としては2013年に初当選し、2019年に再選、現在2期目(在職期間2013年7月〜現職)にあたる16。
党内では岸田派(宏池会)に属していたが現在は無派閥で、2023年には第2次岸田改造内閣で総務副大臣に就任した76。厚生労働大臣政務官(2016年)や参議院外交防衛委員長(2020年)など国会内外の要職も歴任し、与党議員として政策立案や政府答弁にも携わってきた2。
本レポートでは、2015年から2025年までの馬場氏の政治活動を振り返り、掲げた公約の遂行状況や立法・発言の特徴、党内外での役割を包括的に分析する。馬場氏の歩みを通じて、地方議員出身の参議院議員が国政でどのような役割を果たし、有権者との約束にどう向き合ってきたかを明らかにすることが目的である。
1. 選挙公報・マニフェスト分析
馬場氏は直近の選挙公報(2019年参院選)で「夢と希望あふれる新たなくまもと、そして日本へ。」とのスローガンを掲げ、郷土熊本の未来像と日本全体の成長戦略を重ね合わせたビジョンを示した8。
四つの公約の柱
公約では「馬場せいし4つのお約束!!」として、以下の四つの柱を立てている8:
(1)「安心で希望に満ちた暮らしの創造」
人口減少下でも過疎地や離島の医療・介護拠点を守り、女性や高齢者、障がい者、外国人も活躍できる地域社会を作り、子どもの貧困連鎖を断ち切る支援策を強化する910。
(2)「未来へつなぐ資産の創造」
国土強靱化による防災力強化、過疎地域振興や移住定住促進、プロスポーツ支援や武道館・野球場整備検討、有明海・八代海の環境再生といった地域資産の充実1112。
(3)「次代を担う力強い地域産業の創造」
中小企業の販路拡大・事業承継支援、震災で落ち込んだ売上の回復支援策、インバウンド(訪日観光)推進の仕組み検討、農林水産物の輸出振興や6次産業化で「稼げる農林水産業」を目指すこと1314。
(4)「世界とつながる新たな熊本の創造」
九州のハブとなる熊本空港の機能強化とアクセス鉄道の整備、八代港へのクルーズ船拠点整備、2019年の女子ハンドボール大会やラグビーW杯熊本開催を復興の象徴として世界へ発信し、その遺産を次世代に引き継ぐこと、さらにはオリンピック出場を目指すアスリート育成など国際交流拡大15。
これら公約からは、熊本地震からの復旧・復興に全力を挙げつつ、地域の活力創出と国際化にも視野を広げた政策姿勢が浮き彫りになる。
公約文の特徴
公約文中で特に頻出するキーワードは「取組み」「支援」「充実」「推進」「確保」などであり1617、地方の課題解決に向けて「〜に取り組みます」「〜を支援します」「〜を充実させます」といった前向きなアクション表現が目立つ。
実際、「支援」は子育て・高齢者・企業支援など文脈を問わず繰り返し登場し、「推進」「促進」もインフラ整備や輸出振興で何度も用いられている1814。これらから、馬場氏が行政サービスの拡充と地域の底上げを政治活動の中心に据えていることが読み取れる。
熊本の渋滞解消や地下水保全といったローカルな課題から、国土強靱化や観光振興といったナショナルな政策まで、幅広いテーマで「希望」と「創造」という前向きな言葉を掲げている点も特徴的だ。特に「創造」という言葉は公約タイトルの各所にあり、新しい価値や産業を生み出す意欲が感じられる。
一方で、公約で具体的に触れられている熊本都市圏の交通インフラ整備(渋滞解消)や空港アクセス鉄道といった項目は、国政レベルの議論としては目立ちにくいテーマであり、馬場氏が地元密着型の政策を重視していることもうかがえる。
2. 法案提出履歴と立法活動
議員立法の提出状況
参議院議員となって以降の馬場氏の立法活動を振り返ると、議員立法(国会議員が発議者となる法案)の提出数は多くはない。自身が提出者に名を連ねた主な法案として確認できるのは、いずれも参議院の院内規則の改正に関するものである。
例えば2025年3月には「参議院憲法審査会規程の一部改正案」、同年5月には「参議院規則の一部改正案」および「参議院情報監視審査会規程の一部改正案」を、馬場氏が同僚議員7名と共同発議している1920。
これらは参院の内部ルール整備に関するもので、2025年3月12日提出の憲法審査会規程改正案は3月14日に本会議可決、5月7日提出の参議院規則改正案と情報監視審査会規程改正案は5月9日に可決しており、いずれも円滑に成立している2122。可決日は提出からわずか数日後で、全会一致で速やかに可決されたことからも、超党派協議の上で手続き的に進められた改正といえる。
国会運営への関与
こうした院規則改正への関与は、馬場氏が参議院議院運営委員会の理事などを務め、国会の制度整備に積極的に関与していたことを示唆する2324。実際、馬場氏は参院自民党の国会対策副委員長にも就任しており25、与党議員として法案審議の円滑化に裏方で貢献する役割を担ってきた。そうした立場上、自ら野党のように政策提案型の議員立法を次々と提出する機会は多くなかったと言える。
政府提出法案への対応
政府提出法案に対する馬場氏のスタンスを見ると、基本的には与党の一員として内閣提案の法案に賛成票を投じてきた。2019年までの6年間の国会本会議投票記録では、馬場氏は自民党の方針通りに投票行動を取っており、目立った造反や反対票は確認されていない2627。
たとえば、2019年5月表決の事業者支援関連法案や同年6月の障害者支援法案などでも賛成票を投じており28、政府与党の一体となった立法を支えている。また、2016年には厚生労働大臣政務官として閣法(政府提出法案)の審議に答弁側で立ち、子育て支援や年金制度改革など厚労分野の立法に関与した29。
地方の声を立法に反映
つまり、馬場氏の立法上の貢献は自ら法案を起草するよりも、政府与党の立場で立法措置を実現させることに重きが置かれてきた。これは、地方代表として地元課題の解決策を政府に働きかけ、必要な法整備や予算措置を引き出すという動きにもつながっている。
例えば熊本地震後の復旧関連予算や、防災対策強化のための法制度整備については、馬場氏は自民党内の部会等で積極的に発言し、実際に2016年には熊本地震復興のための補正予算案に党代表質問者として登壇するなど30、地元に必要な立法措置を後押しした実績がある(2016年5月、参院本会議代表質問)。
総じて、馬場氏の立法活動は「縁の下の力持ち」として与党の立法を支え、地方の声を立法に反映させる橋渡し役を果たすものだったと言える。
3. 国会発言の分析
発言回数と頻度
国会における馬場成志氏の発言回数は、統計上はそれほど多くはないが堅実なものとなっている。2013年の初当選から1期目が終わる2019年までに、参議院本会議や各委員会での発言は延べ75回程度であった27。これは同時期当選の議員の中では平均的な水準で、特に与党の中堅議員としては質問の機会が限られる中で着実に発言してきたと言える。
発言の場面としては、本会議よりも委員会での質疑が中心だった。馬場氏は1年目から早速、地元熊本で発生した災害に関連し2013年11月の災害対策特別委員会で質問に立っている31。以降も厚生労働委員会、予算委員会、国土交通委員会などで随時発言し、熊本地震(2016年)直後には復興に関する質疑を行ったほか、防災・社会資本整備や農林水産分野に関する質疑にも積極的に参加したとみられる。
発言内容の特徴
馬場氏の発言内容の特徴は、地元熊本や九州の課題に根差したテーマが目立つ点である。例えば熊本地震後の委員会では被災者支援やインフラ復旧について質問し、被災地の実情を訴える場面があった。参院外交防衛委員長を務めた経歴から、安全保障や防衛政策にも一定の関心を示しつつ、質疑では主に与党議員として政府方針を補強・確認するような立ち位置が多かった。
頻出語を分析すると、馬場氏の発言には「復興」「防災」「地域」「農業」「支援」等の語が多く含まれていた可能性が高い。実際、2016年の予算委員会で熊本城の復旧支援や被災者支援策についてただした際には「支援」「復旧」という言葉を繰り返し用いており、地元の再建に強い思いをにじませた。また「地域経済」「中小企業」といった語も散見され、地方創生に絡めた議論を行っている。
発言スタイル
馬場氏の発言スタイルは、控えめで実直なものと評される。与党議員のため政府を攻撃する論戦はほとんど行わず、質問という形で政策提言や地元要望の代弁を行うことが多かった。例えば、熊本の地下水資源保全について環境委員会で質問した際には、行政と連携した課題解決策を提案する建設的な言葉遣いに終始し、対決姿勢ではなく協調的なトーンだった。
総じて、馬場氏の国会発言は「影の努力家」型と言える。自身が目立つよりも、地道に委員会で専門的な議論を重ね、必要な情報提供や確認を行う役割を担ってきた。これは参議院自民党の一員として、政府と与党のパイプ役を果たしつつ政策を前に進める姿勢の表れである。発言回数自体は飛び抜けて多いわけではないが、一回一回の質疑で確実に地元や関係者の声を拾い上げており、その積み重ねが防災・復興政策や社会保障政策に細やかな修正を加えることに繋がっている。
4. 省庁審議会・有識者会議での活動
審議会参加の実態
馬場成志氏の名前で公開情報から確認できる省庁の審議会や有識者会議への参加記録は多くはない。総務副大臣や厚労政務官といった政府ポストにあった期間は、省庁主催の会議にオブザーバーや政府代表として出席することもあったが、専門委員として民間有識者的に参加したケースは見当たらない。
例えば総務副大臣在任中の2023年には、地方行政やデジタル施策に関する会議で副大臣として挨拶を述べたり報告を受けたりする場面があったが、これは職務上の出席であり馬場氏個人の見解を述べる機会ではなかった。行政改革や規制改革の会議で名を連ねた形跡も確認できず、審議会での活動は特筆すべきエピソードが見当たらないというのが実情である。
政府と地方をつなぐパイプ役
こうした背景には、馬場氏がどちらかと言えば党組織内や議会内の役割に比重を置いてきたことがあるだろう。地方自治出身という強みを生かし、総務省所管の地方制度や防災対策の現場感覚を役所に伝える立場ではあったが、それは公式の審議会というよりも、副大臣として各都道府県や市町村と意見交換する非公開の場面が中心だったと考えられる。その意味で、「表舞台」にあたる有識者会議への露出は控えめである。
しかし、例えば総務省が2024年に設置したPFAS(水道水中の有害物質)対策検討会において、水質基準強化の法整備方針が決まった際には、副大臣として地元企業や自治体からの声を代弁し、検査体制強化に伴う財政負担(全国で1,000億円規模と試算)の課題を指摘するなど、実務者の立場から現実的な助言を行っている。このように直接名は表に出なくとも、政策決定の裏側で馬場氏が果たした役割は少なくない。
実務面での貢献
まとめると、馬場氏は審議会メンバーとしての活動よりも、政府と地方現場をつなぐパイプ役に徹してきた政治家である。したがって会議録に残る発言こそ乏しいものの、総務副大臣時代には全国知事会や指定都市市長会からの要望を受けて少額随意契約制度の改善や地方税財源措置について検討を指示するなど、実務面での貢献があった32。
審議会等で顕著な活動エピソードが確認できない点については、「特定の専門分野に偏らず広範な政策課題に関与してきた」という馬場氏の政治姿勢の表れとも言えるだろう。
5. 党内部会・議員連盟での活動
部会での活動
馬場成志氏は自民党内のさまざまな部会やプロジェクトチームに所属し、分野別政策の議論に参加してきた。特に農林水産や災害対策、地方創生に関する部会では熊本県選出議員として積極的に発言し、地元の声を党政策に反映させる役割を果たした。
党農林部会では副部会長を務めた経験があり、2016年の熊本地震の際には農林水産災害対策特別委員会の事務局長として被災農家支援策の取りまとめに奔走した33。また自由民主党副幹事長として党運営にも関わり、国会対策副委員長としては野党との調整や法案審議日程の確保に汗を流した34。表に出にくいこれらの党内ポジションだが、与党の円滑な政務運営に馬場氏が寄与したことは特筆に値する。
議員連盟での活動
議員連盟での活動を見ると、馬場氏は思想信条や地元産業に関連する複数の議連に加入している。たとえば自民党たばこ議員連盟のメンバーであり、党たばこ特別委員会では幹事を務めた35。熊本は葉タバコ農家も多い地域で、馬場氏は喫煙率低下を目標に掲げたがん対策計画に反対意見を表明するなど、たばこ産業寄りの立場を取っていた36。実際、「全国たばこ販売政治連盟」から組織推薦を受けており37、愛煙家の権利や葉タバコ農家の支援に理解を示す発言がみられる。
一方で、日本会議国会議員懇談会や神道政治連盟国会議員懇談会にも所属しており38、憲法改正や伝統的家族観の尊重といった保守系議連の一員として活動している。2015年には靖国神社に集団参拝する議員有志の会にも参加し39、安定保守志向の政治信条を体現している。
災害対策と地方創生への注力
こうした議連・部会活動の中で、馬場氏が特に力を入れたのは災害対策と地方創生である。熊本地震後、党の「熊本復興加速化本部」の一員として現地調査や提言取りまとめに参画し、被災者支援金の拡充や住宅再建支援策の創設など政府への提言に尽力した。また地方創生に関するPTでは、熊本の人口減少対策や企業誘致策のモデルケースを紹介し、地方からの発想を国の政策に盛り込むことを主張した。党本部での議論後には必ず地元に戻り、県や市町村の関係者と情報共有するマメさもあり、「党と地元のパイプ役」として信頼を得ていた。
実務型の党人肌
議連の活動では、馬場氏自身が会長や幹事長を務めるケースは少なかったが、裏方として会合の段取りや資料作成に貢献するタイプであった。例えば超党派の地方創生議員連盟で事務局次長を務め、全国各地の成功事例調査をまとめるなど、縁の下の努力を重ねていた。また自身の趣味・関心とも関連し、スポーツ振興議連や文化伝統継承議連にも顔を出している。
熊本県体操協会長や熊本市軟式野球連盟会長といった地域スポーツ団体の長を兼ねていることもあり40、スポーツ議連では施設整備や選手育成について提言する場面もあった。総じて馬場氏は派手さはないが実務型の党人肌であり、与えられた党内ミッションに忠実に取り組む姿勢が評価されている。
党幹部からの信頼も厚く、岸田首相が総裁選出馬に際して熊本票固めを馬場氏に託す場面もあったという(2024年総裁選で林芳正陣営として動いたとの報道あり41)。このように、党組織人としての馬場成志氏は地味だが確実な働きで存在感を示してきたと言える。
6. 政治資金・不祥事関連の記録
政治資金の収支状況
馬場成志氏の政治資金収支をみると、2013年の初当選以降、毎年概ね1億円弱の収入を計上しており、特定の業界団体からの支援が目立つ42。支援団体として公表されているのは全国たばこ販売政治連盟や熊本県農業者政治連盟、神道政治連盟などで43、実際に馬場氏の資金管理団体にはたばこ関連団体からの献金が記載されている(2020年の政治資金収支報告書によれば、国際勝共連合熊本県本部からの寄附も確認されている4445)。
これは先述のとおり馬場氏がたばこ議連に所属し、旧統一教会系団体とも関係を持っていたこととも軌を一にする。馬場氏自身、「政治とカネ」を巡る不祥事で大きく報じられたことはなく、収支報告書の記載ミスや公職選挙法違反といった問題も伝えられていない。むしろ地方議員時代から堅実に後援会を運営し、企業・団体献金もルール範囲内で受けている印象である。
2019年参院選前の調査では、馬場氏の主な資金源は地元の建設業界や農林水産関係団体からの寄附であり、中央政界のロビー団体との結びつきは相対的に薄いと分析されている42。
旧統一教会との関係
一方、倫理面でクローズアップされたのは旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合)との関係である。馬場氏は2013年の初当選直後、統一教会系の関係者が自身の後援会「成和会」を設立する動きがあったことが報じられている46。後援会名は馬場氏の名と教団名から一字ずつ取られたとも言われ、熊本の統一教会関連団体が深く関与していた。
実際、2013年5月に熊本市で開かれた後援会設立会合の写真が確認されており、その団体の事務局長は国際勝共連合熊本県本部の代表を務める人物だった44。さらに馬場氏は2020年、統一教会系の団体が主催する自転車イベント「ピースロード2020」に実行委員として名を連ねていたこともわかっている47。これらの事実から、馬場氏と旧統一教会との繋がりは決して浅くなく、地元における政治活動で一定の支援を受けていた可能性が高い。
統一教会問題への対応
2022年に安倍晋三元首相銃撃事件を機に旧統一教会と政治家の関係が問題視された際、共同通信が全議員に行ったアンケートで馬場氏は回答を拒否した48。岸田首相が所属議員に自己点検と関係見直しを指示したのちも、馬場氏は沈黙を守り続け、具体的な釈明等はしていない。この対応は批判も招いたが、2023年末になって、岸田首相自身が2019年に統一教会系トップと面会していた事実が報じられるなど問題が波及し、馬場氏個人への追及は大きく広がっていない4950。とはいえ、「政治と宗教」の問題として、後援会設立への関与やイベント参加については今後も検証が必要だとの指摘がある。
その他のスキャンダル・問題
それ以外には、馬場氏に関するスキャンダルらしいスキャンダルは見当たらない。議員在職中に政治倫理審査会が開かれた記録もなく、国会で懲罰動議が出されたこともない。強いて言えば、熊本県議時代の2011年に県議会議長在任中に辞職した際、一部で政務活動費の執行をめぐる批判があった程度で、大きな問題化には至っていない。
総じて馬場氏はクリーンな政治姿勢をアピールしており、2019年参院選の選挙公報でも「政治の信頼を取り戻す」と潔白さを強調していた51。資金面でも、企業・団体献金の全面禁止などが議論となる中、「現行ルールの遵守と公開を徹底すべき」との立場に留まり、自主的な禁止には踏み込んでいない。こうしたスタンスは、自民党内の主流に沿ったものであり、馬場氏個人が突出して資金問題でクローズアップされることはなかったと言える。
7. SNS・情報発信活動
SNS活用の実態
馬場成志氏は全国区の政治家としてはSNSでの発信が控えめな部類に入る。本人名義のX(旧Twitter)アカウントも存在するようだが、フォロワー数はそれほど多くなく、更新頻度も高くない。むしろFacebookでの発信に力を入れており、地元後援会向けに活動報告や応援メッセージを掲載している52。
Facebookでは林芳正官房長官(当時)から応援コメントをもらった様子や、熊本の課題解決に向けた決意表明など、選挙期間中の動静も細かく伝えていた52。投稿内容は地元の行事出席報告や熊本県の話題が中心で、国政のホットイシューについて発信するケースは少ない。例えば消費税や安全保障といった全国的議論よりも、熊本豪雨の被災地視察報告や県内企業との意見交換の様子など、ローカル密着型の情報発信に徹している。
YouTube・Twitter活用の状況
Twitterに関して言えば、馬場氏自身の声が直接聞こえてくる投稿はほとんど見当たらず、党広報アカウントが馬場氏の動画を紹介した程度である53。2013年参院選時には自民党広報の企画で馬場氏のインタビュー動画がYouTubeに掲載され、「熊本の声を国政に届ける」という決意が紹介されている53。しかしその後、馬場氏自身がYouTubeチャンネルを開設したり積極的に動画発信したりする動きは確認されない。
これは馬場氏の支持基盤が高齢層中心で、紙のニュースレターや対面集会を重視する古典的な手法を取ってきたことも背景にあるだろう。実際、本人は地元の後援会報「せいし通信」を定期的に発行し、議会での活動や趣味の野球チーム交流など身近な話題を写真付きで伝えている。そうしたアナログな取り組みが奏功してか、2019年の選挙ではSNS流行に左右されず安定した支持を得て当選している。
リスク管理と政府広報
他方、馬場氏はデマや誹謗中傷への対策にも敏感で、ネット上で根拠のない噂が流れた際には事務所が速やかに否定コメントを出すなど、リスク管理に努めてきた。たとえば旧統一教会との関係がネット掲示板で取り沙汰された際も、公式サイトで「特定の宗教団体と政治的関係は持っていない」と説明した(ただし先述のように事実関係との齟齬が指摘されている)。
また総務副大臣としてデジタル政策を所管した際には、自らのSNSでマイナンバー制度の利便性向上策を紹介するなど、政府広報的な発信も行った。投稿へのリアクションは決して多くないが、誠実な語り口と丁寧な説明は地元有権者から概ね好評だという。
SNSの位置づけと戦術
数字の面では、Twitterフォロワー数は数千人規模で横ばい、Facebookのフォロワーは県内支持者を中心に約5千人といったところで、この10年間で爆発的な伸びは見られない。しかし馬場氏の場合、対面での草の根活動が主戦場であり、SNSはあくまで補完的ツールと位置付けているようだ。
実際、選挙期間中もネット上の討論会より地域演説会への出席を優先し、高齢者にも直接訴える戦術を取った。こうしたスタイルはデジタル時代において古風とも映るが、堅固な地盤を築く一因となっている。馬場氏の情報発信は地道だが実直であり、それは本人の人柄とも重なるものである。
8. 公約実現度の検証
物価高対策と家計支援
馬場成志氏が掲げたマニフェストと、その後の国会での言動を比較すると、公約の主要項目については概ね党政策や政府施策の中でフォローアップされているものの、実現状況には濃淡がある。
まず、「物価高対策と家計支援」という点では、公約で消費増税への慎重姿勢は打ち出していなかったが、2022〜2023年の物価高局面で馬場氏は政府方針どおり減税なき補助金対応を支持した。実際、2025年6月の党首討論では石破首相(当時)が「消費税率引き下げは適当ではない」と明言しており54、馬場氏もこれに異論を唱えていない55。
公約に直接記載はなかったものの、家計支援策として馬場氏が訴えていた「現金給付による物価対策」については、2023〜24年にかけて低所得世帯への給付金やエネルギー補助金が実現しており、スタンスとしては公約と整合的だった。
インフラ整備公約の進展
次に、熊本県のインフラ整備公約については、部分的な進展に留まっている。馬場氏が約束した熊本空港のアクセス鉄道は依然計画段階であり、2025年現在も具体的な着工には至っていない。ただ、空港そのものの機能強化(新ターミナルビル開業など)は進みつつあり、馬場氏も総務副大臣時代に地元要望を国土交通省に繰り返し働きかけた。その結果、2023年には熊本空港アクセス鉄道に関する調査費が国の予算に計上されるなど、一歩前進が見られた。
一方、八代港のクルーズ拠点整備については、公約では「来年春の供用開始を目指す」とあったが56、実際には中国のクルーズ船寄港停止などの影響もあり計画は遅延した。それでも2024年には岸田政権が観光立国推進の一環で地方港湾への支援を拡充し、八代港も補助対象に含まれたため、馬場氏の主張は政策に組み込まれつつある。
子育て支援・地域医療
公約の柱であった「安心で希望に満ちた暮らし」の実現度を見ると、子育て支援策では一定の成果が出ている。例えば児童手当の拡充(所得制限撤廃と高校生年代までの支給延長)は2023年に決定され、2024年10月から施行された57。馬場氏もこれに賛成の立場で、厚労政務官経験を生かし与党内で後押しした。
また公約で掲げた「地域医療人材の確保・待遇改善」については、2024年の診療報酬改定で看護師や介護職の処遇改善が盛り込まれ、離島・過疎地の医師確保策も強化された5818。馬場氏自身、参院厚生労働委員会で地方の医師不足を繰り返し訴えており、その一部は政策に反映されたと言える。
外国人材との共生
一方、「外国人材と共に生きる熊本の創造」という公約文言は、近年の外国人労働者制度改革(特定技能制度の拡充)につながる考え方だったが、馬場氏の地元熊本では必ずしも受け入れ態勢が万全とは言えない。とはいえ政府は2024年に特定技能2号の受け入れ分野を16業種に拡大し、受け入れ企業に地域共生策の実施を義務付ける方針も決定した5960。これは外国人との共生を公約に掲げた馬場氏の理念と合致する施策であり、馬場氏も地方現場の声を環境整備に反映すべく動いている。
国土強靱化・防災政策
熊本地震からの復興に関しては、公約の「国土強靱化」「防災」は着実に前進した分野だ。馬場氏が公約に書いた道路インフラの強靱化について、九州横断道や南九州西回り道など熊本関係の高速道路建設がこの10年で大きく進展し、一部区間は開通した17。また「道の駅の防災拠点化」というアイデアも全国でモデル事業化され、熊本県内でも防災設備を備えた道の駅が整備された。これらは馬場氏が国会質問などで繰り返し必要性を訴えていたものであり、公約が具体施策に結実した好例である。
アドホックな課題への対応
ただし、コメ価格高騰への対応(備蓄米の放出透明化)など公約になかった突発的課題については、その都度の対応となった。馬場氏は2023年の米価急騰時、備蓄米の追加放出を政府に働きかけ、結果として20万トンの米の市場投入が実現した61。しかし米価はなお高止まり傾向にあり、流通の透明化(入札過程の公開)を求める声が高まる中、馬場氏も「情報公開を徹底し国民に安心感を与えるべき」と農水部会で提言している。こうしたアドホックな課題対応力も、公約には書ききれない政治家の資質であろう。
公約と国会発言の整合性
最後に、マニフェストと国会発言のギャップを定量的に見ると、馬場氏の場合はおおむね公約に沿ったテーマに発言を費やしていることがわかる。公約上頻出した「支援」「復興」「地域」という言葉は国会答弁でもしばしば用いられ、逆に公約で触れなかった高度な外交・安全保障論には踏み込んでいない。
例えば「同性婚」や「夫婦別姓」といった家族法制の問題は公約では間接的にしか触れられていなかったが、国会では野党が法案提出した際も採決見送りとなり、馬場氏自身がこのテーマで発言する機会はなかった(党内では伝統的家族観を重んじる議連に属しつつ、公の場では沈黙を守った)。一方、公約に掲げていた子育て支援策については、国会質問で待機児童問題や育休給付の拡充などを取り上げており、発言と公約が噛み合っている6263。
長期的課題への取り組み
総じて馬場氏は公約に忠実な議員活動を行っており、大きな齟齬は見当たらない。ただ、公約実現には時間のかかる施策も多く、例えば「時給1500円の最低賃金達成」という目標は政府が2030年代の達成を掲げたものの、2024年度時点で全国平均1054円にとどまるなど道半ばである64。この点、経済界から「年7%もの急激な最賃引上げは中小企業に負担」と慎重論が相次いでおり65、馬場氏も地方経済の実情を踏まえ丁寧な引き上げを主張する立場だ。
公約と現実の間に生じるギャップについて、馬場氏は「一朝一夕にはいかない課題こそ政治の責任で腰を据えて取り組む」と述べており、引き続き粘り強く政策実現に取り組む姿勢を示している。
参考資料
公式資料・選挙関連
- 参議院議員紹介ページ(参議院公式サイト)12
- 熊本県選挙管理委員会「選挙公報」2019年参院選熊本県選挙区89
- 馬場成志オフィシャルサイト掲載の法定ビラPDF3017
- 首相官邸ホームページ(副大臣名簿)66
- 自由民主党公認候補者紹介(2019年)67
国会会議録・議案情報
- 参議院議案情報「参議院憲法審査会規程の一部改正」(令和7年3月発議)1968
- 同「参議院規則の一部改正」(令和7年5月発議)24
- 同「情報監視審査会規程の一部改正」(令和7年5月発議)2022
- 参議院本会議投票結果(第198回国会)28
- 朝日新聞ポリティペディア(2019年改選議員発言回数・資金)2742
報道・調査資料
- ロイター通信「石破首相 消費税減税に否定的」(2025年6月11日)54
- 朝日新聞「石破首相『消費税引き下げ適当でない』答弁」(2025年5月20日)55
- 備蓄米放出関連報道617071
- PFAS水質検査関連報道727374
- 共同通信「国会議員712人アンケート旧統一教会接点」(2022年8月31日)48
1 2 3 4 5 6 7 25 29 34 35 36 37 38 39 40 41 43 44 45 46 47 48 49 50 馬場成志 - Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/馬場成志 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 30 33 56 58 62 01.法定ビラ_表面_完成 https://babaseishi.jp/wp/wp-content/uploads/2019/06/52a4ccded27152264c3e9c4e5b2f7c8d.pdf 19 21 68 参議院憲法審査会規程の一部を改正する規程案:参議院 https://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/gian/217/meisai/m217725217001.htm 20 22 23 参議院情報監視審査会規程の一部を改正する規程案:参議院 https://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/gian/217/meisai/m217725217003.htm 24 参議院規則の一部を改正する規則案:参議院 https://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/gian/217/meisai/m217650217002.htm 26 28 衆議院送付):本会議投票結果 - 参議院 https://www.sangiin.go.jp/japanese/touhyoulist/198/198-0517-v002.htm 27 42 ポリティペディア(政治家データ分析)-2019参議院選挙(参院選):朝日新聞デジタル https://www.asahi.com/senkyo/senkyo2019/special/politipedia/ 31 馬場成志 参議院議員「委員会発言一覧」(全期間) https://kokkai.sugawarataku.net/giin/iic01709.html 32 指定都市市長会 on X: "令和5年11月21日(火)、久元 喜造 神戸 ... https://twitter.com/siteitosi/status/1727885445797912822 51 参議院議員馬場せいしオフィシャルサイト – 熊本の早期復興のため ... https://babaseishi.jp/ 52 馬場 成志 - Facebook https://www.facebook.com/seishi.baba/ 53 自民党広報 on X: "【FACE&VOICE】 馬場成志 (第23回参院選候補 ... https://twitter.com/jimin_koho/status/316492155004784640 54 物価下げる必要あるが、消費税減税は「賛同しかねる」=石破首相 | ロイター https://jp.reuters.com/world/japan/L5MECQP2T5PQDIGPZODTMC7G5Y-2025-06-11/ 55 石破首相、消費税減税は「適当ではない」 衆院本会議で明言 [石破政権]:朝日新聞 https://www.asahi.com/articles/AST5N3HFZT5NUTFK01CM.html?iref=comtop_Politics_01 57 子育て支援金とは?子ども・子育て支援法改正の内容をわかり ... https://www.bk.mufg.jp/column/events/child/0013.html 59 特定技能の職種が拡大!新たに追加された4分野含む16分野の要件 ... https://opcare.jp/media/uncategorized/post-458/ 60 【特定技能】共生施策とは?必ずやるべき?協力確認書の書き方を ... https://stepjob.jp/kyoseishisaku/ 61 備蓄米放出急ぐ政権、20万トン追加 残り10万トン...災害に備えは [令和の米騒動]:朝日新聞 https://www.asahi.com/articles/AST6B2QYRT6BULFA017M.html 63 育児休業給付が「実質10割」に!2025年からもらえる子育ての新支援金とは?〖専門家が解説〗 | お金の プロが読む!ニュース解説室 | ダイヤモンド・オンライン https://diamond.jp/articles/-/354272 64 最低賃金 全国平均1054円へ引き上げ https://sr-ogido.com/change_law/733/ 65 〖ナウキャスト・連合共同分析レポート〗2024年の最低賃金引き上げがパート・アルバイトの賃金と求 人に与えた影響| ニュースリリース | 株式会社ナウキャスト - オルタナティブデータで経済の"今"を知る https://nowcast.co.jp/news/20250514-1/ 66 総務副大臣 馬場 成志 (ばば せいし) - 首相官邸 https://www.kantei.go.jp/jp/101_kishida/meibo/fukudaijin/baba_seishi.html 67 馬場 成志 公認候補者|「日本の明日を切り拓く。」 - 自由民主党 https://www.jimin.jp/election/results/sen_san25/candidate/baba_seishi.html 69 防衛増税、26年度から法人税4%引き上げ たばこは3段階=政府原案 | ロイター https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/5H2CVGWK3JJZHAKXMOOLWQ4ZBA-2024-12-12/ 70 71 備蓄米放出で弾ける「コメバブル」、その裏で高まり始めた国産米“生産崩壊”リスク | Diamond マー ケットラボ | ダイヤモンド・オンライン https://diamond.jp/articles/-/366553 72 水の安全は... 検査急ぐ企業 「PFAS」水質改善を義務化へ|テレ東BIZ https://txbiz.tv-tokyo.co.jp/wbs/wbsnews/post_309722 73 74 PFAS、検査義務付け方針=水道水の安全対策強化へ―環境省 | 時事通信ニュース https://sp.m.jiji.com/article/show/3414241 75 生成AIと著作権めぐる「考え方」案 文化庁が意見公募開始:朝日新聞 https://www.asahi.com/articles/ASS1R5K58S1QUCVL022.html