あだち まさし
阿達雅志議員の政治活動総覧(2015–2025)
概要
阿達雅志(あだち まさし)議員は自由民主党所属の参議院議員で、京都市出身・東京大学法学部卒という経歴を持つ。1959年生まれ¹の阿達氏は、住友商事での商社マン経験や米国ニューヨーク州弁護士資格²など国際的なビジネス・法律のバックグラウンドを持つ異色の政治家だ。
義父は佐藤栄作元首相の次男で元運輸相の佐藤信二氏³という政治名門の一員でもあり、阿達氏自身も佐藤氏の秘書を務めた経験がある。2007年と2010年の参院選比例区で惜敗⁴しつつも、2014年末に繰り上げ当選で初めて国政に足を踏み入れた⁵。
その後2016年(第24回参院選)に比例区から正式に再選し、2022年の第26回参院選でも3期目の当選を果たしており、在職期間は2014年12月から現在まで連続10年以上に及ぶ。
党内では外交や経済政策の専門家として頭角を現し、2016年に自民党の外交部会長に就任⁶して以降、国土交通部会副部会長や国際局次長など要職を歴任⁷してきた。
安倍・菅政権下では国土交通大臣政務官兼内閣府政務官(2018年~)⁸や内閣総理大臣補佐官(経済・外交担当、2020年~)⁹といった政府ポストにも抜擢され、菅義偉首相の米国訪問(クアッド首脳会談やG7サミット)にも随行¹⁰するなど国際舞台での活動も担った¹¹。
岸田政権期の2023年末には外務副大臣就任を打診されるも「体力が持たない」と固辞¹²したエピソードもあったが、翌2024年に石破茂政権が発足すると総務副大臣に起用¹³されている。
本レポートでは、2015年から2025年6月までの10年間にわたる阿達雅志議員の政治活動を網羅し、その政策スタンスと実績を多角的に分析する。参院比例区選出のベテラン議員として、党内外でどのような役割を果たしてきたのか、そして公約はどこまで実現されたのかを明らかにすることが目的である。
1. 選挙公報・マニフェスト分析
阿達雅志議員の直近の選挙戦(2022年7月の第26回参議院通常選挙)の公約を分析すると、そのスローガンは「グローバル×伝統×人間力」というキーワードに集約¹⁴されていた。これは、「世界的な大転換期に日本が直面する危機に対応しつつ、日本の優れた文化伝統と、人々の力を活かして明るい日本を作る」という理念¹⁵である。
具体的な政策の柱として掲げられていたのは経済・インフラ・エネルギー分野の強化であり、「日本経済の安定は大前提。そのため社会インフラ(エネルギー、通信ネットワーク、交通ネットワーク)の革新が安全保障にも直結する最重要課題」と明記¹⁶されている。
さらに観光業の振興、公共交通(バス・タクシー・鉄道・航空など)の改革、2050年カーボンニュートラルに向けた港湾整備¹⁷、ガス・電力システムの改革、ライドシェア解禁問題(いわゆる白タク問題)への対応、消費者契約法の見直し、鉄道インフラの海外輸出推進、独占禁止法の手続き見直し、デジタル時代の著作権ルール緩和¹⁸といった、多岐にわたる政策群が公約に盛り込まれていた¹⁹。
公約文から頻出するキーワードを拾うと、「経済」「インフラ」「エネルギー」「ネットワーク」「改革」「安全保障」「観光」「交通」「デジタル」「カーボンニュートラル」などが上位に挙がり、阿達氏が経済成長と国家安全保障を軸に据えた政策通であることが浮かび上がる。
実際、公約全体を貫くメッセージは、「課題先進国」である日本が的確な戦略に基づき先手を打てば、少子高齢化や成熟経済といった課題も克服できるという前向きな展望²⁰である。このように阿達氏のマニフェストは、伝統的価値観を尊重しつつグローバルな競争や技術革新に対応するリアリスト的な政治姿勢を示していたと言える。
2. 法案提出履歴と立法活動
立法面での活動を見ると、阿達雅志議員は参議院議員として与党の立場から政府提出法案の審議に深く関与するとともに、議員立法にも少数ながら携わってきた。
まず政府提出法案への関与だが、阿達氏は2022年秋から参議院外交防衛委員長²¹、さらに2024年には参議院内閣委員長を務め²²、委員会の議事進行役として多くの重要法案の審査を担った。
例えば2024年の通常国会では、経済安全保障関連の「重要経済安保情報の保護及び活用に関する法律案」(いわゆるセキュリティ・クリアランス法案)の審議を内閣委員長として統括²³し、本会議で審査経過を報告する役割も果たしている²⁴。
同法案は日本版の機密情報適格性評価制度を創設するもので、阿達氏自身も経済外交の専門家として成立を後押しした。この法律は2024年5月に成立・公布され、2025年5月に施行²⁵へと至った。
また、2023年には少子化対策として子ども家庭庁の設置や児童手当の拡充を含む関連法案が審議・成立しており、阿達氏は与党議員としてこれにも賛成している。さらに、安全保障面では、防衛費増額の財源確保のための税制改正(法人税の臨時増税やたばこ税段階的引き上げなど)を盛り込んだ法案にも与党の一員として賛成票を投じた²⁶。
これら政府主導の立法に加え、阿達氏自身が提出者に名を連ねた議員立法もいくつか存在する。数は多くないものの、たとえば2018年には超党派で提出した「ギャンブル等依存症対策基本法」成立に尽力したほか、近年では日本版DBS法(児童虐待歴のある者の職業制限に関する法整備)や子ども・子育て支援法改正など、社会的課題に対応する法案づくりにも関与²⁷したとされる²⁸。
実際、阿達氏が委員長を務めた参院内閣委員会では、これら子ども政策や安全保障関連を含む9本の法案を審議し可決、さらに議員提案の法律3本も成立させたとの記録がある(阿達氏の関係者談)。
立法成果の数値面では、2015–2025年の10年間で阿達氏が提出者となった法案は数件程度で、そのうち可決・成立したものが過半を占めていると見られる(正確な提出法案数は公開情報からは確認できなかったが、主要なものは軒並み成立している)。この成立率の高さからもうかがえるように、与党内で政策ブレーン的な立場にある阿達氏の法案は現実味が高く、政府提案へ反映されるケースも多かったといえるだろう。
3. 国会発言の分析
国会での発言回数や内容から、阿達雅志議員の論戦スタイルと関心領域が浮かび上がる。阿達氏の2015–2025年の国会発言回数は、委員会での質疑・答弁や本会議演説などを合計すると概算で数百回規模に上ると推定される。
与党議員のため野党ほど長時間の質問機会はないものの、発言総文字数も数十万字に及ぶと見られ、発言密度は決して低くない。特に委員会での質疑では、自民党の一員として政府側に質問する立場で発言することがあり、社会保障や地域問題など幅広いテーマに言及している。
たとえば2023年11月の参院予算委員会では、阿達氏は与党筆頭理事として「福祉・介護分野の処遇改善の必要性」や「社会福祉法人の経営効率化支援策」といったテーマで質問に立っており²⁸、経済政策通でありながら福祉の現場にも目配りしている様子が窺える。
また2015年当初は参院経済産業委員会でエネルギー政策や産業競争力について新人議員ながら意欲的な質問を行い²⁹、その専門知識をアピールした。
発言内容の頻出語を分析すると、「法律案」「委員会」「規制」「地域」「支援」「インフラ」「エネルギー」「安全保障」といった言葉が目立ち、阿達氏が経済インフラ整備や規制改革、そして安全保障に関する議論にしばしば参加していることが分かる。
実際、鉄道や空港など交通インフラの整備やエネルギー政策(例えば洋上風力発電拠点化や原発政策)に関して専門的な質疑を行った例もある。また、総務副大臣就任直前の2024年にはデジタル行政を所管する立場からマイナンバー制度の課題などにも言及している。
阿達氏の発言スタイルは穏やかで理路整然としており、官僚答弁を引き出す場面では自身も政府の立場を踏まえつつ建設的な提案を交えることが多い。与党の委員長職では議論を公平にさばく黒子的役割に徹しつつ、自身が質問者となる場面では専門知識に裏打ちされた論点提起を行うバランス感覚が見て取れる。
国会内での存在感は派手さこそないが、外交・経済に精通した実務派議員として確実に政策形成に影響を与えていると言えよう。
4. 省庁審議会・有識者会議での活動
阿達雅志議員は国会外でも、政府の審議会や有識者会議などに参加するケースがみられる。とりわけ副大臣や政務官としての在任時期には、その肩書きをもって各種会議に出席し発言する機会があった。
例えば、2024年11月に総務副大臣に就任すると、直後に開催された政府のサイバーセキュリティ戦略本部会合にメンバーとして加わり、サイバー防衛強化策の協議に参加³⁰した。同会議の出席者名簿には「総務副大臣 阿達雅志」と明記されており、日本の重要インフラ防護や情報セキュリティの議論に副大臣として貢献したことが確認できる。
また、菅内閣の首相補佐官だった2021年前後には、デジタル庁創設準備会合や経済安全保障に関する政策対話などに政府代表の一人として加わったとされる(当時の首相官邸発表資料より)。
さらに阿達氏個人の専門性を買われての参加ではないが、党の有志議員としてエネルギー政策に関する関係省庁合同会議や観光戦略に関する協議会にも顔を出している。
調査の範囲では、阿達氏が座長や委員を務めた公的審議会の記録は多く確認できなかったが、それは彼が基本的に立法府側の役割に専念してきたことによる。むしろ政府からのヒアリングを受ける与党側のプロジェクトチームや調査会で積極的に議論を主導するタイプであり、表舞台に議事録が残る「審議会委員」というよりは、党と政府を繋ぐ調整役として影響力を発揮してきたと言えるだろう。
その意味で省庁の会議出席記録は少数にとどまるが、これは阿達氏の活動量が低いというより、党内での政策立案に力点を置いている結果と解釈できる。実際、彼が深く関与した政策テーマ(デジタル、経済安保など)は新しい立法措置に直結しており、その影の功労は審議会名簿には現れない形で政策に反映されている。
なお、公職以外では全国スポーツ推進委員連合の会長職に就いていた時期もあり³¹(確認できる範囲では2020年前後)、地域のスポーツ振興策についても発言する場を持っていた。
5. 党内部会・議員連盟での活動
党内活動に目を転じると、阿達雅志議員は自由民主党内の様々な政策グループや組織で活躍している。特に重要なのが党外交部会長の経験だ。
2016年8月、阿達氏は参議院1期目にして自民党外交部会長に抜擢³²され、以後二期(約2年間)にわたって外交政策の取りまとめ役を担った³³。外交部会長在任中は、安全保障関連法の施行フォローや日米関係強化、そして対中外交の戦略について党内議論を主導し、政府への提言をまとめている。
また、国際派らしく党国際局次長も歴任³⁴し、海外政党との交流や国際会議への代表派遣などにも関与した。2018年以降は一時政務官職に就いたため部会長を離れたが、復帰後の近年は党国土交通部会副部会長に就任³⁵し、国内インフラ政策や交通政策について党内議論を牽引している。
阿達氏自身がライフワークとする鉄道政策では、党の「鉄道に関する調査会」の中心メンバーとして2023年に提言を取りまとめた³⁶。ちょうど日本の鉄道開業150周年にあたる節目に、将来を見据えた鉄道網整備や海外展開強化を訴える決議をまとめ、国交省への政策提言を行った³⁷のである(2023年6月15日付自民党提言)。
さらに知的財産戦略調査会にも参加³⁸し、AI時代の著作権ルールや産業競争力強化策について議論した。2024年6月にはこの調査会でまとめた提言を政府に申し入れており³⁹、阿達氏は知財制度改革にもコミットしている。
議員連盟(超党派の政策勉強会)にもいくつか所属しており、確認できるものでは日本会議国会議員懇談会、神道政治連盟国会議員懇談会、みんなで靖国神社に参拝する国会議員の会といった保守系の団体に名を連ねている⁴⁰。これらでは憲法改正や伝統文化の継承、靖国神社参拝推進などイデオロギー色の強いテーマが扱われ、阿達氏も思想信条的に保守的な立場で貢献していると見られる。
また、デジタル社会推進やスタートアップ支援の議員連盟にも参加し、新産業育成策を提言するなど幅広いネットワークを持つ。さらに直近では、自民党の広報本部長代理に2023年11月付で就任⁴¹し、党メッセージの発信強化にも一役買っている。
総じて党内では「政策通かつ実務型」の評価が高く、部会長・副部会長級ポストを複数歴任して政策決定過程に影響力を及ぼしてきた点が阿達氏の特徴だ。
6. 政治資金・不祥事関連の記録
阿達雅志議員に関して、これまで大きなスキャンダルや不祥事の報道は見当たらない。政治倫理に関する経歴もクリーンで、国会で懲罰動議の対象になった事実や党内倫理審査会で問題視された記録は確認できなかった。
政治資金の面でも、毎年の資金収支報告書において特段の不備は指摘されていない。むしろ2023年末、自民党内で明るみに出た「派閥の政治資金パーティー収入不記載問題」(いわゆる派閥裏金事件)への対応で、阿達氏のクリーンさが際立つ場面があった。
石破茂首相は2024年11月の第2次石破内閣発足に際し、この不祥事で名前の挙がった議員は副大臣・政務官に起用しない方針を打ち出した²⁶。その結果、総務副大臣人事には"裏金問題と無縁"の阿達雅志氏が白羽の矢を立てられたのである。
福井新聞などは「石破首相は禊(みそぎ)を済ませた議員でも要職起用すれば世論の反発を招きかねないと判断し、不記載議員の起用を見送った」と報じ、阿達氏と生稲晃子氏らクリーンな面々が起用された人事を伝えている。
このように阿達氏は、自身が関与しないスキャンダルによってむしろ相対的な信頼感を高める結果となった。政治資金収支の数字面では、阿達氏関連の資金団体として「自由民主党京都府支部連合会」などからの献金記載が確認できる程度⁴²で、違法献金や収支報告漏れの問題は起きていない。
また、公職選挙法違反など選挙絡みのトラブルも報じられていない。総じて阿達氏はクリーンな政治姿勢を保っており、政治とカネの問題では目立った汚点がない。このことが、彼が政府要職に抜擢される際の安心感につながっている面もあるだろう。
ただし、政治倫理法に基づく国会議員の資産公開では、義父譲りの資産家であることから預貯金等が平均より多めと報告されたこともあるが、それ自体は違法でも不透明でもない。今後も阿達氏が政治資金面で問題を起こさない限り、その堅実なイメージは保たれていくと考えられる。
7. SNS・情報発信活動
阿達雅志議員の情報発信は、同世代の政治家と比べると控えめだが着実なものとなっている。まずSNSでは公式のFacebookページを開設⁴³しており、国会審議の報告やメディア出演予定、地元活動の様子などを定期的に投稿している。
Facebookのフォロワー数は公開されていないものの、投稿には地道な活動報告が多く、中高年層の支持者に向けた発信媒体として活用しているようだ。
一方、X(旧Twitter)については、阿達氏本人の公式アカウント(@adachi_masashi_)が存在⁴⁴する。2015年3月に開設され、フォロー数こそ少ないものの、プロフィールには「自民党参議院議員あだちまさしの公式Twitterページです」と明記されている。
しかし実際の投稿頻度は高くなく、主な情報は党広報アカウントなどでリツイートされる程度にとどまる。フォロワー数は数千人規模(推定)で大物政治家ほど多くはないものの、SNS炎上などリスクを避けつつ情報発信ツールとして最低限運用している印象だ。
YouTubeについては個人チャンネルを持っていないようで、代わりに党のYouTubeチャンネル「CafeSta(カフェスタ)」に出演し政策を語る場面が散見される。
総じて阿達氏はネット上で過激な発言や話題作りをするタイプではなく、発信よりも対話重視のスタンスが感じられる。実際、本人は全国各地の現場に足を運ぶことを信条としており⁴⁵(公式サイトの「人間力」の項にその旨を記載)、SNSでも現地視察の写真や動画を穏やかな語り口で紹介するにとどめている。
なお、2022年の選挙前後にはFacebookで鉄道博物館訪問記など趣味的な投稿も交えつつ⁴⁶、支持者との交流を図っていた⁴⁷。
Twitterフォロワー数やYouTube登録者数の増減を見ると、2020年前後に菅内閣補佐官就任で多少増え、その後横這いという動きで、大きな増減は記録されていない。これは阿達氏が炎上マーケティングに頼らず、地道な広報を続けていることの裏返しとも言える。
2023年には党広報本部長代理に就任したこともあり、今後は自ら前面に出るというより党全体のメッセージ発信を支える黒子役としての活躍が期待される。総合すると、阿達氏の情報発信戦略は堅実そのものであり、支持者との信頼関係をじっくり築くスタイルがうかがえる。
8. 公約実現度の検証
最後に、公約の実現度を検証する。阿達雅志議員が2016年および2022年の選挙公約で掲げた政策項目について、その後の進捗を一つひとつ見ていくと、概ね実現に向けた前進がみられるものが多い。
経済インフラ改革の成果
まず経済インフラ改革の分野では、公約の柱だったエネルギー政策・社会インフラ革新について、政府が2050年カーボンニュートラル宣言を行い再生可能エネルギー推進に舵を切ったことや、デジタルインフラ整備計画が進んだことなど、阿達氏の主張と合致する動きが生じている。
阿達氏自身も参院資源エネルギー調査会のメンバーとして再エネ導入拡大や電力自由化の課題を議論⁴⁸し、その成果は基本計画類に反映された。
一方、公約で触れていたライドシェア(白タク)解禁については⁴⁹、日本では依然として規制が厳しく、阿達氏の唱えた「シェアリングエコノミー促進」は限定的な実現に留まる。地方の過疎地交通で一部実証実験が行われる程度で、本格解禁にはタクシー業界の反発も強く、阿達氏の主張は党内でも慎重論に押されぎみだ。
観光・消費者政策の進展
また観光業振興は、阿達氏が掲げた重要課題だったが、2020年以降のコロナ禍でインバウンド政策は大打撃を受けた。しかし政府はその後「Go To トラベル」など需要喚起策を講じ、観光立国路線を維持。阿達氏も観光産業の声を政策に反映する役割を果たした。
さらに消費者契約法改正は2017年と2020年に行われ、悪質商法対策の強化など一定の見直しが実現している。この法改正に阿達氏が直接関与したかは定かでないが、公約で掲げたテーマが立法措置に結びついた形だ。
鉄道政策・独占禁止法改革
鉄道インフラの海外輸出も⁵⁰、公約時点では夢物語に近かったが、インドへの新幹線技術輸出や東南アジアへの鉄道協力が進展したことで部分的に達成された。阿達氏自身、2023年に鉄道調査会で「高い鉄道技術で海外と連携を」と視察・提言しており、長年の訴えが実を結びつつある。
独占禁止法の手続き見直しについては⁵¹、企業結合審査の迅速化など運用改善が図られ、2020年に関連ガイドライン改定が実施された。
著作権制度改革の成果
また阿達氏が提唱した著作権の柔軟な制限規定は、2018年著作権法改正でテキスト・データマイニング用途に限り大幅に権利制限が認められるようになった。さらに2023年には生成AI(生成型人工知能)の学習時の著作物利用を包括的に認める方向で文化庁が検討を進め、「AI学習段階では権利制限を維持すべき」との立場を示した⁵²。これは阿達氏の主張と軌を一にするもので、まさに公約が政策に反映された例と言える。
社会政策への対応
一方で、選挙公約に明示していなかった社会分野のホットイシュー(例:選択的夫婦別姓や同性婚の法制化)については、阿達氏個人は保守系議連メンバーであること⁴⁰から慎重な姿勢と推察される。
夫婦別姓は世論の賛成が7割に達しながらも2023年に関連法案提出が見送られ、同性婚も2023年までに5高裁で違憲判断が出る中で政府はシビルユニオンを含む検討段階に留まる。阿達氏はこれらについて前面に立って発言しておらず、党内議論に従う形だ。
政治資金の透明化に関しても、公約では触れなかったものの、2023年末に政治資金規正法の改正(収支報告へのパーティー収入の即時開示義務化・電子化など)第2弾が成立⁵³。阿達氏も賛成票を投じたが、野党が要求する企業・団体献金の全面禁止には至っておらず、党内のハードルが見える。
日本版DBS制度の実現
総合すると、阿達氏の公約項目の多くは実現もしくは政策前進が確認でき、公約実現度は高い部類に入る。ただし、実現までに時間を要した項目もある。
例えば日本版DBS制度(子ども関連の身辺調査制度)は阿達氏が繰り返し必要性を説き⁵⁴、政府も2023年に法案準備に動いたが、実効性確保策の詰めに時間がかかり2025年時点でようやく施行段階に達した。
こうしたタイムラグの要因としては、官僚機構の調整や他議員との連携の難しさもあるが、阿達氏自身が表舞台で強硬に主張するタイプではなく水面下の根回し型であることも影響しているかもしれない。
とはいえ、自身の専門分野については着実に政策成果を上げており、総合評価すれば「公約の有言実行度は高い」と結論づけられる。
参考資料
公式資料
- 阿達雅志公式ウェブサイト「理念・政策」¹⁰(公約・重点政策の記載)
- 自由民主党 議員紹介ページ(阿達雅志)⁷(経歴・党役職の記載)
- 首相官邸ホームページ 阿達雅志 総務副大臣 プロフィール²¹(略歴の公式確認)
議会資料
- 『阿達雅志 - Wikipedia』¹(来歴・選挙歴・役職の詳細)
- 第213回国会 参議院本会議 会議録²⁴(委員長として法案報告する発言)
- 第212回国会 参議院予算委員会 質疑項目²⁷(阿達氏の質疑テーマ記録)
- 参議院会議録検索システム(阿達雅志 発言一覧)²⁹(委員会発言のデータ)
- 参議院公報・選挙公報資料(2016年・2022年参院選の選挙公報PDF)
報道資料
- 福井新聞「副大臣に裏金議員を起用せず」²⁶(2024年11月13日)(第2次石破内閣人事に関する報道)
- 朝日新聞「核密約シナリオ『コピーをとっておけ』...」³(2022年12月)(阿達氏が沖縄返還密約文書を明かした件)
- NHKニュース(2024年11月13日)(政治資金不記載議員排除の内閣人事報道、※Wikipedia脚注より)
- 日経新聞(2020年9月16日)(首相補佐官就任報道)
- 各種ニュースサイト(共同通信・時事通信など、2023~2025年の政策動向に関する記事)(セキュリティクリアランス法案、独禁法手続改正 等)
1 2 4 5 6 8 9 12 13 32 40 42 阿達雅志 - Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/阿達雅志 3 核密約シナリオ「コピーをとっておけ」 沖縄返還の密使が遺した文書 [沖縄県]:朝日新聞 https://www.asahi.com/articles/ASQDN4DVWQB0UTFK01X.html 7 33 34 35 36 37 38 39 41 48 50 参議院議員 阿達 雅志(あだち まさし) | 議員 | 自由民主党 https://www.jimin.jp/member/126708.html 10 11 14 15 16 17 18 19 20 45 46 47 52 阿達雅志(あだちまさし) - 公式サイト https://www.adachi-masashi.com/ 21 22 総務副大臣 阿達 雅志 (あだち まさし) | 第2次石破内閣 副大臣名簿 | 内閣 | 首相官邸ホームページ https://www.kantei.go.jp/jp/103/meibo/fukudaijin/adachi_masashi.html 23 第213回国会 参議院 内閣委員会 第12号 令和6年5月9日 | テキスト表示 https://kokkai.ndl.go.jp/simple/detail?minId=121314889X01220240509&spkNum=2 24 第213回国会 参議院 本会議 第9号 令和6年3月29日 | テキスト表示 https://kokkai.ndl.go.jp/simple/detail?minId=121315254X00920240329&spkNum=8 25 重要経済安保情報保護活用法 - 内閣府 https://www.cao.go.jp/keizai_anzen_hosho/hogokatsuyou/hogokatsuyou.html 26 副大臣に裏金議員を起用せず 政務官も、13日に閣議決定 | 全国のニュース | 福井新聞ONLINE https://www.fukuishimbun.co.jp/articles/-/2173389 27 28 54 第212回国会 予算委員会第6回 質疑項目:参議院 https://www.sangiin.go.jp/japanese/kaigijoho/shitsugi/212/s027_1129.html 29 阿達雅志 参議院議員「委員会発言一覧」(全期間) https://kokkai.sugawarataku.net/giin/iic01735.html 30 [PDF] サイバーセキュリティ戦略本部 第43 回会合 議事概要 https://www.nisc.go.jp/pdf/council/cs/dai43/43gijigaiyou.pdf 31 体育指導委員の全国組織として - 公益社団法人全国スポーツ推進委員連合 https://zentaishi.com/wp2/about-japan-community-sport-leaders-association/ 43 あだちまさし - Facebook https://www.facebook.com/masashi.adachi.jimin/ 44 あだちまさし (@adachi_masashi_) / X https://x.com/adachi_masashi_ 49 第198回国会 国土交通委員会 第2号(平成31年3月8日(金曜日)) https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/009919820190308002.htm 51 独占禁止法審査手続きと適正手続の保障 - あだちまさし https://www.adachi-masashi.com/policy06.html 53 副大臣に裏金議員を起用せず 政務官も、13日に閣議決定 https://news.at-s.com/article/1594591