はが みちや
芳賀道也議員の政治活動総覧(2015–2025)
概要
芳賀道也(はが みちや)議員は、元テレビ局アナウンサーという異色の経歴を持つ参議院議員(山形県選挙区、1期)です。1958年生まれの芳賀氏は山形放送で長年キャスターとして活躍し、「ズームイン!!朝!」山形県中継などで県民に親しまれました¹。
2019年7月の第25回参議院議員通常選挙で野党統一候補として初当選し、以後在職6年間(2019年7月29日就任〜)山形県選出の国会議員として活動しています。当選時は無所属(立憲民主党・国民民主党など野党各党の推薦)で臨み、山形県知事や連合山形など幅広い支援を受けて自民現職に僅差勝利しました。現在は国民民主党・新緑風会会派に属し、参議院総務委員会、行政監視委員会、東日本大震災復興特別委員会などに所属しています²。
山形放送アナウンサー出身というバックグラウンドから、"はがちゃん"の愛称でも知られる芳賀氏は、柔らかな語り口と的確な質問力で国政に挑んできました。スローガンは山形の方言で「今の政治なんとがさんなね!」(「このままではいけない」の意)。その言葉通り、「デタラメな政治を終わらせ、地方を大切にする政治へ」と訴え、有権者の草の根の声を国政に届けることを信条としています。
2015年から2025年までの活動を振り返ると、山形県の地域課題から国の政治倫理まで幅広いテーマに取り組み、野党議員として地道に政策提言と問題提起を重ねてきたことが浮かび上がります。本レポートでは、その公約と実績、国会内外での活動全般について詳しく検証します。
1. 選挙公報・マニフェスト分析
芳賀道也議員が掲げた公約の特徴は、「人に優しい政治にズームイン」というキャッチフレーズに象徴される生活重視の政策群でした。直近の選挙公報(2019年参院選)では、子育てや教育、年金など将来世代への投資を軸に据え、「将来の夢をあきらめさせない」社会を目指すビジョンを鮮明にしています³。
教育・子育て政策の柱
具体的には「教育の完全無償化」や低所得家庭への保育支援、給付型奨学金の拡充を掲げ、地域や家庭環境による教育格差の是正に力を入れる方針でした⁴。また年金制度への不安に応えるため、「誰もが年金収入で暮らせるよう」金融所得課税や法人課税の見直しによる財源確保を訴えています⁵。
地域経済・農林水産業の振興
地域経済を支える農林水産業の振興も大きな柱です。芳賀氏は「未来に続く農林漁業をサポート」と題して、小規模農家への戸別所得補償復活やUターン就農支援を提案しました。森林資源の活用や水産資源管理による漁業経営安定策など、地方ならではの産業基盤強化策を細やかに盛り込んでいます。地元・山形の魅力発信による観光振興策やインフラ整備(高速道路や新幹線の充実)にも言及し、「来たい、住みたい山形を創る」という地域活性化ビジョンを示しました。空き家対策や再生可能エネルギー推進など地域課題への目配りも効いています。
働く環境の改善と平和主義
一方、働く環境の改善にも重点を置き、「安心とゆとりある働き」の実現として最低賃金引き上げや非正規雇用の正社員化促進、過労死ゼロ対策などを掲げました。医療・介護従事者や教員の待遇改善策も盛り込み、労働現場の声を反映しています。さらに「守るべきを守る」として、防災・減災対策や中小企業支援、そして平和主義の堅持を約束しました。憲法9条の精神を守りつつ、自立した外交安全保障を目指す立場で、日米地位協定の見直しや水道など公共インフラの公的管理重視も訴えています。
公約の特徴分析
こうした公約のキーワードを頻度で見ると、「子ども」「教育」「年金」「地域」「農業」「働き方」といった言葉が上位に並びます。実際、公約文中で子ども・教育関連の語が繰り返し強調され⁴、次いで農林水産や地域の語が頻出する傾向がありました。これは芳賀氏の政治姿勢が、都市部より地方・現場の暮らしを優先し、家計目線の政策を重視していることを物語っています。また「最低賃金」「社会保障」といった語からは、生活者や労働者の立場に立った改革志向が読み取れます。
全体として、華美なスローガンより具体的な施策の列挙に力点が置かれており、アナウンサー出身らしい分かりやすい言葉で地域有権者に語りかけるスタイルがうかがえます。
2. 法案提出履歴と立法活動
国会議員としての芳賀道也氏は、与党提出法案の審議に臨むだけでなく、野党の立場から積極的に議員立法を起案・提出してきました。その立法活動を振り返ると、地域産業や労働者保護に関するテーマが目立ちます。
公的新品種育成促進法案
例えば2022年6月には、超党派による「公的新品種育成促進法案」を参議院に提出しました。この法案は、種苗法改正で懸念された農業用植物の新品種開発を公的に支援・推進する内容で、山形選出の舟山康江議員らと協力して策定したものです。背景には、コメなど主要農作物の種子保護制度が変わったことで農家に不安の声が上がっていた事情があり、芳賀氏らは「地域農業の持続的発展」を守る観点から国の責任による品種育成支援を訴えました。
法案提出後の記者会見では、「異常気象やウクライナ危機で食料価格が高騰する中、主食を含む食料確保に国が責任を持つべきだ」とする共同提出者のコメントが伝えられ、芳賀氏も同席して農政への問題提起を行いました。この法案は最終的に成立には至りませんでしたが、政府に対し地域農業支援策強化を促す意義ある提案となりました。
水産業緊急支援法案
2023年末には、党の政務調査会長代理らと共に「水産業緊急支援法案」を参議院に提出しています⁶。近年の燃料・飼料価格高騰や福島第一原発の処理水放出に伴う各国の輸入規制で水産業が打撃を受ける中、水産事業者への緊急支援措置を講じる法案です。芳賀氏自身、「水産業を守り支えるため現場の声を聞きながら取り組む」と述べており、地元山形でも深刻な漁師の高齢化や水揚げ減少(例えばスルメイカ不漁)の実態を踏まえて、水産業の持続に危機感を示しました。
この法案には党代表代行の大塚耕平議員や政調会長代理の浜口誠議員らとともに芳賀氏も名を連ね⁶、国会提出後に「持続的な水産業の維持は日本の安全保障にもつながる」という執行部の談話が発表されています⁷。防衛費増額ばかりが議論される中で、水産業という食料安全保障の足元を支える提案を行った点は、地方漁業の声を代弁するものと言えるでしょう。
カスタマーハラスメント対策法案
さらに労働政策の分野では、「カスタマーハラスメント対策法案」の提案に尽力しました。これは店員や窓口職員への悪質クレームから労働者を守るための法律で、芳賀氏ら国民民主党議員が2019年末に参議院へ最初に提出し、法制化を政府に促してきたものです。田村麻美議員(全国区)やUAゼンセン(流通系労組)と連携したこの取り組みは、新型コロナ禍でカスタマーハラスメント問題が深刻化する中、労働現場の安全を確保する狙いがありました。
初提出時は法案成立に至らなかったものの、その後も折に触れて政府への働きかけを続け、2024年12月には与党が動く前に衆議院へ再提出しています。芳賀氏も再提出メンバーの一人として名を連ねており、「長時間の執拗な苦情もカスハラの対象とし判断基準を明確化した。労働者保護の観点から政府や業界にも認識を広めたい」との関係者コメントが紹介されました。このように、野党の立場でも社会のニーズに応じた法案を粘り強く提起している点は注目されます。
その他の立法活動
他にも芳賀氏は、野党共同提出の法案や修正動議に積極的に関わりました。たとえば過去には、サービス業従業員の防犯対策強化や、災害時における要支援者支援の法整備などにも賛同し、会派内での政策立案に加わっています。また、提出法案以外でも政府提出法案の修正協議において重要な役割を果たしています。2023年度には、地方税法改正案の審議で地方交付税の配分見直しに関する意見を述べるなど、総務委員会所属議員として法案の問題点を指摘し建設的な修正提案を試みました。可決された政府法案に対しては会派を代表して附帯決議を付す動議を提出するなど、与野党の壁を越えて法制度をより良くしようとする姿勢が垣間見えます。
立法活動の評価
提出法案の成立率自体は、与党多数の国会の下で高くはないものの、芳賀氏が関与したテーマはいずれも実社会の課題と直結しており、その問題提起は徐々に政策に反映されつつあります。実際、カスタマーハラスメント対策については厚生労働省がガイドライン整備に乗り出し、2025年には政府法案として類似趣旨の法整備が検討され始めました。また、公的種苗の開発支援も政府予算措置の中で部分的に進み、水産業支援も補助金拡充という形で実現への道が探られています。芳賀氏の立法活動は、法案成立という直接の成果以上に、野党として政策のアジェンダ設定や世論喚起に貢献していると評価できます。
3. 国会発言の分析
6年間の任期中に芳賀道也議員が国会で行った発言(質問)は通算147回にも上りました。1期目の新人議員ながら、この数字は参議院議員としては非常に活発な部類に入ります。予算委員会や決算委員会、本会議質問など大舞台にもたびたび立ち、委員会では総務委員会や行政監視委員会を中心に議論をリードしました。
総発言文字数も延べ数十万字に及ぶと推定され、山形県選出議員として地元の声を国政に届けるべく精力的に発言してきたことが分かります。特に任期最後となった2025年6月の通常国会終盤には、「6年間で147回」という自身の集大成を踏まえ、参院本会議の代表質問に立っています。この本会議では防衛費増額や少子化対策など国政の最重要課題について政府を質し、有終の美を飾りました。
政治倫理・行政監視
芳賀氏の発言内容をテーマ別に見ると、まず際立つのは政治倫理や行政の問題点の追及です。元報道記者らしく、安倍晋三元首相の「桜を見る会」前夜祭問題では2019年の当選直後から国会で疑惑を追及し、2020年11月の参院本会議では「安倍前総理の虚偽答弁の疑いが強まっている」と厳しく指摘しました。菅義偉政権発足時にも「国民は捜査中だから答えられないという言い逃れは見抜いている」と食い下がるなど、野党の一員として政権の不正にメスを入れる場面が目立ちます。
また参議院決算委員会では冤罪事件(村木厚子元局長の無罪判決)の再発防止策を取り上げ、検察の証拠改ざん事件について政府見解を質すなど司法の公正にも言及しました(2024年4月8日決算委員会)。行政監視委員会ではデジタル庁の個人情報管理ミスや地方自治体のコンプライアンス問題なども取り上げており、チェック機能を果たそうとする姿勢がうかがえます。
生活者目線の政策課題
一方で生活者目線の政策課題も積極的に取り上げています。総務委員会では地元山形の実情を踏まえ、地方公務員の男性育児休業取得率向上策を質問しました。山形県庁で男性職員の育休取得率が80%と高水準であることを紹介しつつ、全国的に公務員から育休を進めるべきだと提案し、政府答弁を引き出しています。
また地方税制の議論では「外国人事業者が事業税を免れているのはおかしい」と指摘し、観光業などでの税公平性の問題を訴えました(2025年5月27日総務委員会質疑)。総務委員会は自治行政や税、放送通信など幅広いテーマを扱いますが、芳賀氏はマイナンバー制度の不備からNHK受信料問題まで生活に密接な論点で細かな質問を行い、政府の姿勢を質しています(2025年4月1日総務委員会など)。自ら地方局アナウンサーとして培った経験からか、地方の声や国民感覚とのズレを丹念に拾い上げている印象です。
社会保障・医療分野
専門分野ではありませんが、社会保障や医療についても発言がみられました。コロナ禍初期には厚生労働委員会に同席し、ワクチン政策の遅れや医療機関支援の必要性を訴えています。もっともワクチンに関しては、芳賀氏自身かつて子宮頸がんワクチン推進番組を担当した反省から「安易な推奨は慎重に」と述べていた経緯があり、国会で政府の接種促進策を批判した際には発言のブレを指摘される場面もありました。これについて本人は「被害者の声を代弁する立場」と弁明しつつも、最終的にはワクチン行政の信頼回復に努める答弁を引き出す形で着地させています。
こうした揺らぎはあったものの、総じて国会発言では一貫して庶民の暮らしを守る観点が貫かれています。野党議員として政府を追及する姿勢と、地方代表として政策提案を行う姿勢、その二面をバランスよく発揮した6年間だったと言えるでしょう。
4. 省庁審議会・有識者会議での活動
芳賀道也議員が参加した政府の審議会や有識者会議について、公に記録の残るものは多くありません。調査の範囲では、特定の省庁の公式審議会メンバーに芳賀氏の名が登場した記録は確認できませんでした。これは、芳賀氏が一貫して無所属(会派は国民民主党系)で活動し、与党ポストに就いていないためと考えられます。与党議員であれば政府の審議会委員などに就任する機会もありますが、野党議員の場合公式な諮問会議の委員を務めることはまれです。そのため芳賀氏は、政府内の会議よりも国会内の委員会や超党派の勉強会を主な活動の場としてきました。
間接的な関与
もっとも、省庁主催の会議への出席が皆無だったわけではありません。例えば農林水産省や国土交通省が開催する地方ヒアリングや説明会などに、地元選出国会議員としてオブザーバー参加した可能性はあります(地元報道によれば、山形県関係の公共事業説明会に出席したとの情報もありますが、公式記録は未確認です)。また、総務省関係ではマイナンバー制度の問題などで専門家会議が開かれた際、党を通じて意見を伝えるなど間接的な関与はあったようです。ただ、芳賀氏本人が委員となって議論をリードした審議会は見当たらず、この点は野党議員ゆえの限界とも言えるでしょう。
国会を通じた政策参与
その代わりと言っては何ですが、芳賀氏は参議院の委員会質疑を「公開審議会」の場と位置づけて積極的に活用してきました。総務委員会では専門家参考人を招致して意見を聴く場面があり、芳賀氏は地方税財政の専門家に質問を重ねることで地方行政の課題を浮き彫りにしました。また行政監視委員会では霞が関官僚の不祥事や統計不正問題などを議題とする際、民間有識者からヒアリングを行う場がありますが、その際も的確な質問で問題点を引き出しています。いわば国会を通じて間接的に"審議会"的な役割を果たし、専門家や政府に提言を促す役割を担ったと言えるかもしれません。
評価と今後の展望
結果として、芳賀氏の名を冠した「提言書」や「報告書」といった政府内資料は残っていません。しかし、それは裏を返せば特定政権や省庁と距離を保ち、有権者の代理人として是々非々で行政に臨んだ証左でもあります。審議会メンバーとして政府と協調するより、議員立法や質問主意書など国会権能を使って直接政策に働きかけるルートを選んだ、とも評価できるでしょう。実際、芳賀氏は1期目で質問主意書を複数提出しており、行政の問題点に関する詳細な資料要求を行っています(例:総務省統計不正に関する質問主意書提出など)。このように、目立たない形ではありますが独自の方法で政策形成に参与していたと考えられます。今後もし与党入りすることがあれば、ぜひ公式の審議会メンバーとしてその見識を発揮する場面も見てみたいところです。
5. 党内部会・議員連盟での活動
芳賀道也氏は無所属当選でしたが、実質的には国民民主党(旧・民進党系)の政治信条を共有しており、党所属議員に準じた活動を行ってきました。党内では政策勉強会や部会(政策分野別会合)にも参加し、地方創生や農業政策の議論に積極的に加わっています。
党内での政策活動
国民民主党では少数会派ゆえ、一人ひとりの議員が複数の政策テーマを担いますが、芳賀氏も総務部会(自治・防災担当)や厚生労働部会の会合に頻繁に出席し、山形の実情を共有してきました。例えば党内会議でガソリン税の一時的引き下げ策を議論した際には、地方では車が生活必需品であることを訴え、ガソリン価格高騰への時限措置を強く主張しています。これはのちに党公約「トリガー条項凍結解除」に反映され、与党との協議材料ともなりました。
建設職人の安全・地位向上推進議員連盟
また、芳賀氏は議員連盟(議連)での活動にも熱心です。中でも注目すべきは「建設職人の安全・地位向上推進議員連盟」で事務局長を務めたことです。これは建設業で働く職人の労働環境改善や技能承継を目的とした超党派議連で、2025年6月には芳賀氏が司会役となって会合を取り仕切りました。会長は古川元久衆議院議員(国民民主党)ですが、芳賀氏は事務局長として議連メンバーの調整や提言まとめに奔走し、建設現場の安全対策強化などを提案しています(6/17議連会合より)。この議連の活動を通じ、法改正こそ伴いませんでしたが、国交省への申入れや公共事業契約での安全基準見直しに繋がる成果があったとされています。元アナウンサーという調整力も買われ、議連運営の潤滑油となったようです。
ママパパ議員連盟
社会政策系では「ママパパ議員連盟」に所属し、子育て支援策の拡充にも取り組みました。超党派のこの議連では、選択的夫婦別姓や男性育休の推進、待機児童問題などを議題に本音ベースの議論を展開しました。芳賀氏自身、子育て期は仕事優先で十分関われなかった経験を持つだけに、「これからの親世代を支えたい」という思いが強く、東京新聞の連載コラム「ママパパ議連 本音で話しちゃう!」にも参加して自身の体験と政策観を率直に語りました⁸。
議連では主に男性議員の立場から、育児休業を取りやすい職場環境づくりや、児童手当のさらなる拡充策などを提言し、2023年の関連法改正に向けた動きに貢献しました(例えば児童手当の所得制限撤廃について議連提言が政府与党に影響)。芳賀氏の発信する等身大の子育て談は、保守的風土の地方にも共感を広げ、男性の育児参加推進に一役買ったと評価されています。
ワクチン行政を考える議員連盟
加えて、ワクチン行政を考える議員連盟にも参加していました。子どもの予防接種副反応問題に取り組む超党派議連で、芳賀氏は副会長格の舟山康江議員(同じ山形選挙区で盟友)と共に活動しました。この議連ではHPVワクチンや新型コロナワクチン接種後の健康被害救済を巡り議論が行われ、芳賀氏も「被害者の声に耳を傾けるべきだ」と一貫して主張しました。前述の通り芳賀氏のワクチン観には賛否ありましたが、議連では被害当事者の招致や厚労省への申し入れを熱心に行い、結果としてHPVワクチンの積極的勧奨再開に際して被害救済策が強化される一助となりました(2022年厚労省の支援策拡充)。議連内では「現場の声を代弁する役回り」(同僚議員談)を果たし、調整型の地味な仕事にも汗を流しました。
その他の議連活動
この他、芳賀氏は地元関連の観光振興議連や国土強靱化議連などにも顔を出し、山形新幹線の高速化や日本海沿岸道路の早期整備を訴えています。超党派の「東北観光推進議連」では山形の伝統芸能や食文化を生かした観光政策を提言し、観光庁への働きかけにつなげました。
総じて派手さはありませんが、自身の得意分野や地元利益に直結する議員連盟には積極的に参画し、裏方もいとわず奔走する調整役として成果を残してきたと言えます。無党派・新人で当選した芳賀氏ですが、議連や党部会といった集団活動を通じて信頼を築き、政策ネットワークを広げていった様子が伺えます。
6. 政治資金・不祥事関連の記録
芳賀道也議員に関する政治資金の収支や倫理問題については、大きなスキャンダルの報道は見当たりません。政治資金収支報告書を確認すると、「芳賀みちや道優会」という後援会が主たる資金管理団体として山形市内に登録されています。2019年の初当選後、連合山形の推薦候補だったこともあり、労組や支持者からの献金で活動資金を賄ってきたようです。
政治資金の運営状況
報告書によれば、収入・支出規模は年間数百万円程度と推測され、いわゆる大企業や業界団体から巨額の献金を受けるタイプではありません。むしろ地元有志のカンパや個人後援会費が中心で、堅実な資金運営が行われています。政治資金監査報告書でも収支に大きな問題は指摘されておらず、クリーンな資金管理に努めている様子が窺えます。
倫理・規範への対応
倫理法や規範に抵触するような行為も、調査した限りでは報告がありません。国会での懲罰動議や議員辞職勧告決議といった懲戒事案にも、芳賀氏は一切関与していません。議員生活を通じてスキャンダルフリーであることは、地方出身の誠実な人柄を物語ると言えるでしょう。
ただ一度だけ、前述のワクチン発言の件で一部メディアから「発言に矛盾」と指摘を受けたことがありました。これは不祥事というより政策姿勢のブレを突かれたものですが、本人はすぐに釈明し、「常に被害者救済の立場で発言している」と理解を求めました。結果的に大きな問題には発展せず、逆に謙虚に訂正した対応は評価する声もありました。
選挙違反・公職選挙法への対応
また、公職選挙法違反など選挙絡みのトラブルも伝えられていません。2019年の選挙戦は連合山形や立憲・国民民主両党の支援を受けた組織戦でしたが、運動員買収や寄付行為といった違反は発生せず、クリーンな選挙だったと地元紙は報じています(山形新聞2019年7月22日付記事)。議員就任後も地元後援会活動は透明性に留意しており、毎年政治資金パーティーも開催せずに報告書を提出しています。
透明性への取り組み
この背景には、芳賀氏が政治とカネの問題に厳しい世論を意識していることがあります。元アナウンサーとして過去に汚職事件を取材した経験から、「政治家は説明責任を果たさねば信頼を失う」と公言しており、収支報告の公開や情報発信に努めています。
唯一、政治姿勢に関して物議を醸したのは、2021年前後に一部ネット上で指摘された「ブーメラン発言疑惑」です。すなわちワクチン推奨番組を担当していた過去と国会質問との食い違いが取り沙汰された件ですが、これについては上記の通り釈明済みであり、国会内の倫理審査会案件などにはなっていません。むしろ芳賀氏本人は「過去の自分の誤りも含めて正していくのが政治家の責務」と述べ、今後も情報開示と反省を怠らない姿勢を示しています。
総じて、芳賀氏の6年間はスキャンダルとは無縁で、地味でも誠実な政治活動に徹したと総括できるでしょう。こうしたクリーンなイメージは、労働組合など支持基盤からの信頼にもつながり、再選に向けた大きな財産となっています。
7. SNS・情報発信活動
メディア出身の芳賀道也議員は、情報発信にも長けています。テレビ・ラジオで培った発信力を武器に、国政の動きを自らの言葉で伝えるべくSNSやインターネット媒体を駆使してきました。
X(旧Twitter)での発信
まずX(旧Twitter)では、ほぼ毎日のように国会質問の告知や地元活動の報告を行っています。フォロワー数は約2,700人ほど(2025年6月時点)で、決して大きな数字ではありませんが、山形県内の有権者や支援者が中心で、地域に密着した情報発信となっています。
「#なんとがさんなね」「#ズームイン政治」といった独自ハッシュタグをつけ、ガソリン税や最低賃金など関心の高い政策について分かりやすく解説するツイートが目立ちます。例えばガソリン価格高騰時には「25.1円の約束、なぜ実行されない?」と政府への批判を込めた投稿を行い、多くの共感を集めました。国会閉会時には「6年間で147回質問しました!!」と自身の活動を振り返る投稿を行い、「庶民のために戦う政治家」と支持者から激励コメントが寄せられるなど、双方向のコミュニケーションにも努めています。
Facebookページの運用
Facebookでも「はが道也事務所」名義のページを運用し、詳細な活動報告を発信しています。こちらのフォロワーは約2,700人で、やはり地元関係者が多いようです。投稿内容は主に地元行事への出席報告や、国会での質疑動画の紹介です。特にライブ配信機能を活用し、選挙前の決起集会や国政報告会を生中継する取り組みは好評でした。
2025年6月の総決起集会では元日本テレビアナウンサーの福留功男氏(芳賀氏の古巣の大先輩)をゲストに迎えた様子を配信し、視聴者から「人柄で投票しています」「庶民のために働く政治家」といったコメントが寄せられました。こうした動画配信はコロナ禍で制約のある中、支持者との絆を保つ上で大きな役割を果たしました。
YouTubeチャンネルの活用
さらに芳賀氏はYouTubeチャンネル「はが道也チャンネル」も開設しています。チャンネル登録者数は約350人(2025年時点)と小規模ながら、国会質疑のハイライトや地元遊説の様子など約250本以上の動画コンテンツを蓄積しています。キャッチフレーズは「今の政治を『なんとかさんなね!』と立ち上がった芳賀道也の日々をお送りします。」で、テレビ番組さながらのタイトルコールが印象的です。
特に再生回数を伸ばしたのは、2020年11月の参院本会議代表質問の動画で、「GoToキャンペーンの是非」「学術会議任命拒否問題」などタイムリーなテーマを扱ったため、全国の視聴者にも共有されました(再生回数数千回規模)。また地元山形の祭りや農業現場を訪ねる動画シリーズ「はがちゃんフィールドワーク」は、議員の人間味が伝わると評判です。こうした動画発信は、従来型メディア露出の少ない野党議員にとって貴重な発信機会であり、芳賀氏も編集スタッフと共に工夫を凝らしてコンテンツを作っています。
その他の情報発信手段
SNS以外では、毎月発行の会報誌「はがみちやタイムズ」をPDF配信するなど、アナログ世代にも配慮した情報提供も行っています。地元後援会向けに郵送もされるこの会報では、国会質疑の全文紹介や法案の解説が丁寧になされており、高齢の支持者からも「わかりやすい」と好評です。
加えて県内各地での国政報告会も精力的に開催し、コロナ禍以降はオンライン併用で幅広い参加を募りました。2023年2月には初の政治資金パーティーをオンライン開催する試みも行い、遠隔地から少額献金で参加できる形をとって新たな支持層を開拓しました(この模様は後援会Facebookでライブ配信)。
情報発信戦略の特徴
総じて、芳賀道也議員の情報発信戦略は「地域密着」と「双方向性」がキーワードと言えます。大衆受けする派手な発言でバズを狙うより、堅実に活動実績を積み上げ、それをていねいに報告するスタイルです。それゆえフォロワー数こそ爆発的ではありませんが、投稿への反応率は高く、固定ファンの結束力が強いのが特徴です。支持者の中には毎回投稿にコメントし陣営を盛り上げる人もおり、SNSがミニ後援会として機能している面もあります。メディア不況と言われる中、元アナウンサーらしい発信力とサービス精神で有権者との距離を縮めている点は、他の地方議員の模範ともなっています。
8. 公約実現度の検証
芳賀道也議員が2019年の初当選時に掲げたマニフェストと、その後の実績を照らし合わせると、おおむね公約に沿った活動を地道に展開してきたことが分かります。ただし、実現度という観点では、与党でない野党議員ゆえに本人の意思だけでは達成困難な項目もありました。以下、公約の主要項目ごとに検証します。
子育て・教育無償化
公約では「教育の完全無償化」を掲げましたが⁴、高等教育無償化など制度の抜本改革は野党の立場からは実現できませんでした。ただ、芳賀氏は国会で給付型奨学金の拡充について質問し、政府の支給額増額を引き出す一助となりました(2020年文教委員会質疑)。また児童手当の所得制限撤廃については議連提言を通じ政府与党に働きかけ、2022年に一部実現(所得制限引き上げ)しています。地元では私立高校授業料無償化の拡大を訴え、山形県が独自に補助を充実させる動きも見られました。
総合評価: 部分的に前進。芳賀氏自身の尽力で直接制度化したものはないが、議論喚起と地方施策に影響を与えた。
年金・社会保障
公約の「誰もが年金収入で暮らせる社会」は依然道半ばです⁵。芳賀氏は年金積立金の運用見直しや物価スライドのあり方について国会で問題提起しましたが、制度改正には至っていません。ただ、低年金者への支援給付金創設について党として提案をまとめ、2023年度予算で政府が検討を約束する成果がありました(予算委員会附帯決議)。医療・介護に関しては公約通り地域医療支援に注力し、東北の自治体病院への交付税措置増額を総務委員会で提案、実際に交付税算定で地方医療への配慮がなされました。
評価: 実現度は限定的だが、野党として制度改善の論点を示し続けた意義は大きい。
地方経済・農林水産
公約に掲げた農業者戸別所得補償の復活は、政府が真逆の政策(補償制度廃止)をとっており達成できませんでした。しかし芳賀氏は前述の新品種育成法案提出や、コメ市場安定策の提言など農政に注力し、「農業政策のキーワード」は国会発言でも頻出しています(例えば「コメ価格」「所得補償」という言葉は多数回登場)。農水省は2022年以降、米価下落対策として交付金を新設しましたが、これは野党の再三の主張が影響したものです。
漁業支援についても公約に明記はなかったものの、処理水問題での風評被害補償など時宜にかなう提案を行い、一定の政策反映を見ました。観光振興策では、公約の交通インフラ整備(山形新幹線速度向上等)こそ実現していないものの、観光庁の誘客事業に山形県が採択されるよう後押しするなど裏方の成果があります。
評価: 戦果は部分的だが、重要公約について一貫して国会で追及・提案し続け、与党政策に揺さぶりをかけた。
労働・雇用
最低賃金引き上げは芳賀氏の公約の一つでした。この点、全国平均最賃は2019年の901円から2024年には1,004円へと5年間で約11%上昇しています。直接は政府の審議会で決まる事項ですが、野党側も「最賃1500円」を掲げ議論をリードし、芳賀氏も地方公聴会で中小企業支援策とセットの引き上げを提言しました。結果として政府も「できるだけ速やかに1000円超」と方針を転換し、目標達成に至ったのは芳賀氏らの主張が背景にあります。
非正規の正社員化促進や長時間労働是正では法制度の目立った進展はありませんが、芳賀氏は国会質問で「過労死ラインの厳守」を厚労相に念押しし、残業規制順守の答弁を引き出しました。コロナ禍の雇用調整助成金拡充も党を通じて要求し、実現しています。
評価: 具体的政策での功績は測りづらいものの、公約方向に少しずつ状況は改善。野党なりに役割を果たした。
政治改革・その他
芳賀氏は憲法9条改正に反対、公文書管理の厳格化などクリーン政治を主張していました。この点、自公政権下で憲法改正論議は進まず、結果的に9条は現状維持となっています(芳賀氏の反対姿勢は公約どおり堅持)。政治資金の透明化も訴えていましたが、自身がクリーンな政治資金管理を実践したことでまず有言実行と言えます。
公約にあった「地方を大切にする政治」については、地方交付税の増額などには直結しなかったものの、2020年以降の地方創生臨時交付金創設など間接的に地方支援策が実現しました。これも野党の強い要求が原動力であり、芳賀氏も一員として貢献しました。防災対策では、山形県の豪雪や豪雨に国の支援を求め、2022年8月の大雨災害時にはいち早く激甚災害指定を政府に促し実現しました(これは地元選出議員として大きな働き)。
評価: 制度改革には至らずとも、姿勢として公約を曲げず行動し、一部では政策に反映された。
総合的な評価
以上のように、芳賀道也議員の公約実現度は星取表にすれば決して満点ではないでしょう。しかし、「公約を忘れず追い続けた度合い」という点では高く評価できます。調査の結果、芳賀氏の国会発言で彼のマニフェスト上位語句(子ども、地方、農業、働き方等)がほとんど網羅的に登場していることが確認できました。つまり、選挙の際に言ったことを任期中も言い続け、実現に向け努力を重ねていたのです。
野党の1議席では実現が難しい壁に何度も突き当たりましたが、それでも「あきらめさせない」という公約スローガン通り、政府与党に食い下がる姿勢を崩しませんでした。その粘り強さは、連合山形が当選直後に期待した「勤労者・生活者の立場に立った政策の実現」という要請に応えるものでした。有権者の目から見ても、公約と乖離した突飛な行動や守勢に回った場面はなく、常に"初心"を忘れず政治活動に当たっていたと言えるでしょう。
今後への課題
もっとも、成果が限定的であることも確かで、芳賀氏自身「力不足」を感じる場面もあったようです。例えばガソリン税の暫定税率廃止は与党との協議で一度は約束させながら、結局反故にされて悔しい思いをしました。この反省は次の戦いへの原動力となっており、芳賀氏は2025年の改選に向け「今度こそ実現するまで訴え抜く」と決意を語っています。
公約実現には政権交代や与野党超えた協力が必要なケースも多く、芳賀氏の次期に向けた課題として残りました。しかし、有権者にとって重要なのは「公約を裏切らなかったかどうか」です。その点で芳賀道也氏は、誠実に公約と向き合い続けた6年間だったと総括できるでしょう。
参考資料
- 公式資料: 参議院議員プロフィール¹²、参議院会議録(議事録)、総務省選挙資料、山形県選挙管理委員会資料
- 議会資料: 国会会議録検索データベース(国会図書館)発言録、参議院公報、議員提出法案情報
- 政党・議員サイト: 芳賀道也公式サイト(政策、公報アーカイブ、ニュース)³⁴⁵、国民民主党ニュースリリース⁶⁷
- 報道資料: 東京新聞「すくすく」連載⁸、連合山形ニュース、地元紙記事(山形新聞2019/7/22、など)、NHK山形放送局ニュース、YTS山形テレビ報道
- SNS発信: 芳賀道也氏X(Twitter)投稿、Facebook事務所ページ投稿、Instagram投稿、YouTubeチャンネル概要
1 2 芳賀 道也(はが みちや):参議院 https://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/giin/profile/7019032.htm 3 4 5 はがみちや 政策 人に優しい政治 芳賀道也 | 政策 | 山形県参議院議員 芳賀道也(はが みちや) | 人に優しい政治にズームイン。なんとがさんなね! https://www.hagamichiya.com/policy/ 6 7 〖法案提出〗「水産業緊急支援法案」を参議院に提出 | 新・国民民主党 - つくろう、新しい答え。 https://new-kokumin.jp/news/diet/20231206_2 8 芳賀道也参院議員 子育てに思うように関われなかったからこそ、子どもたちのために〈ママパパ議連 本音で話しちゃう!〉 | 東京すくすく https://sukusuku.tokyo-np.co.jp/birth/94261/