まいたち しょうじ
舞立昇治議員の政治活動総覧(2015–2025)
概要
舞立昇治(まいたち しょうじ)議員は、1975年鳥取県生まれの参議院議員で、自民党所属です。2013年の第23回参院選で鳥取県選挙区から初当選し、2019年には合区となった鳥取・島根選挙区で再選を果たしました¹。
自治省(現総務省)の官僚出身で地方行政の経験が長く、国政転身後も地方創生や農林水産政策に力を注いできました。党内では石破茂氏の派閥(石破グループ)に属し、2018年以降の自民党総裁選では一貫して石破氏を支持する推薦人に名を連ねました²。
参議院では農林水産委員会や災害対策特別委員会など地方や一次産業に関わる委員会に所属し、2024年には参院農林水産委員長に就任しました³。党内では水産部会長など要職を歴任し、地方や農業漁業の現場の声を政策に反映する役割を果たしてきました。
分析対象期間は2015年から2025年までの10年余であり、本レポートではこの期間の議員活動全体を俯瞰し、有権者が舞立議員の足跡とスタンスを理解できるようまとめます。
1. 選挙公報・マニフェスト分析
舞立議員は直近の選挙(2019年参院選)で、「着実に前へ!明るい未来を切り拓こう!」をスローガンに掲げ、地方経済の活性化と国土の均衡ある発展を前面に訴えたとみられます。選挙公報に相当する政策集では、以下のような柱立てで具体策を示しています。
経済再生と財政運営
第一の柱は経済再生と財政運営です。バブル崩壊後の政策の教訓を踏まえ、「金融・経済・財政政策を一体的に実施」して持続的成長を図ると強調しました⁴。特に大都市圏では金融政策による市場安定を重視し、地方では財政出動を軸に景気対策を講じるという地域ごとのきめ細かな経済運営を訴えました⁵。
公共投資による国土強靱化
第二の柱は公共投資による国土強靱化で、先進国が不況時でも公共事業を一定水準確保している例を引き、日本でもリニアや道路網整備、老朽インフラ対策に最低限必要な公共事業費を安定確保すべきだと主張しました⁶。特に地方の雇用と経済を下支えする公共事業の役割を重視し、「現在の公共事業費の水準は維持し、可能な限り増額」と明記しています⁶。
農林水産業の振興と食料安全保障
第三の柱は農林水産業の振興と食料安全保障です。舞立氏は「国と地方の再生に農林水産業の活性化は不可欠」と位置づけ、農業予算がGDP比0.4%程度と海外主要国に比べて低すぎる現状を問題視しました⁷。国内農家への手厚い支援で食料自給と輸出拡大を図り、担い手の所得向上と地域コミュニティ維持につなげると訴えました。また「食糧安全保障」を重要国益と位置づけ、海外情勢にも左右されない安定供給体制を築く決意を示しました⁷。
少子高齢化対策
第四の柱は少子高齢化対策で、2025年に団塊世代が75歳以上となり日本の高齢化率が30%を超える見通しを踏まえ、「将来への安心感が持てる社会環境整備」が急務だと警鐘を鳴らしました⁸。若い世代が安心して子育てできるよう育児休業の充実や幼児教育無償化などフランスを参考に少子化対策を強化し、一方で高齢者には年金・医療・介護の充実で安心を提供すると約束しました⁸。
地方分権と自治体行政の充実
第五の柱として地方分権と自治体行政の充実を掲げ、「地方固有の事務に国が一律の基準を押し付けるのでなく各地域の裁量で効率的に執行できるようにする」べきだとして、地方分権改革や地方財政の充実にも取り組む考えを示しました⁹。
以上のように、舞立議員のマニフェストは「地方重視」が一貫したテーマとなっています。実際、選挙公約テキストで頻出するキーワードは「地方」「地域」「経済」「公共事業」「農林水産」「食糧」「少子化」「高齢化」などであり、中央集権的な発想よりも地域の現場に根差した政策志向が浮かび上がります。
例えば「地方」は最上位の頻出語で、財政力の弱い過疎地域でも行政サービスを維持する必要性を繰り返し説いています。また「公共事業」「経済」が頻出する点から、インフラ投資を梃子に地域経済を底上げしようという意図が読み取れます。「農林水産」「食糧」といった言葉も多く、地方の主要産業である第一次産業の振興と食の安全保障を重視する姿勢が明確だと言えます。
総じて舞立議員の公約は、地方創生・地域活性化を軸に据えつつ、それを支える経済財政政策や社会保障のビジョンを提示した内容であり、鳥取・島根という地方選挙区の代表として地域の声を国政に届けるという決意がにじんでいます。
2. 法案提出履歴と立法活動
調査の範囲では、舞立議員が議員立法の発議者となった法案は確認できませんでした。これは参議院議員で与党所属という立場上、政府提出法案の審議に注力し個人で法案提出する機会が少なかった可能性があります。その代わり、委員会質疑や本会議討論を通じて法案内容に影響を与える形で立法過程に関わっています。
合区問題での立場表明
舞立議員の立法活動で特筆すべきエピソードの一つが、2015年の参院選挙制度改革への対応です。鳥取・島根両県の合区導入を含む公職選挙法改正案の採決に際し、舞立氏は「愛着ある県の声が一票の価値では測れない」と強く反発し、本会議場から退席して棄権しました¹⁰。与党所属議員が自党提出の法案に造反するのは異例で、この行動は地元鳥取県の代表として合区に抗議したものでした。結果的に合区法案は成立しましたが、舞立氏はその後も党内外で合区解消を主張し続けており、地方の声を代弁する立場を貫いています。
人権立法と労働政策への対応
また、被差別部落問題解消推進法など超党派で提出された人権立法にも賛成票を投じており(2016年12月の参院本会議)¹¹、社会的正義の観点からは与野党の枠を超えた対応も見せています。逆に、労働政策では「解雇の金銭解決制度」導入に反対姿勢を示すなど、慎重保守的な立場も持ち合わせています¹²。
政府提出法案の審議における役割
法案提出数そのものはゼロながら、舞立議員は政府提出法案の審議に深く関与してきました。例えば農林水産委員会では政府の農協改革関連法案を審議する際、地方農業者の不安に寄り添った質問を展開しています。2015年の農林水産委員会質疑では、農協法改正案を議題に「協同組合の意義に照らして今回の改革は現場に不安を与えている」と問題提起し、准組合員規制や監査制度の論点について政府に慎重な対応を求めました¹³¹⁴。
また、TPP(環太平洋パートナーシップ協定)交渉に関しては「酪農や畜産など重要5項目の譲歩が懸念される」として、国内農家への十分な補償予算確保を林農水相らに強く迫り¹⁵、政府から「必要な対策予算の確保に万全を期す」との答弁を引き出しています¹⁶。
さらに2023年以降、防衛増税や少子化対策財源を巡る大型法案審議でも、党の一員として賛成票を投じつつも委員会などで地方経済への影響を注視した発言を行ったと報じられています。舞立氏自身が直接提出した法案はないものの、法案成立数(可決数)は政府提出法案への賛成多数により極めて高く、第2次安倍政権以降の立法成果(予算成立率97%以上¹⁷など)に寄与しています。
立法府における役割は主に与党議員として政府立法を支え、必要に応じ修正や付帯決議で地方の視点を盛り込むことだったと総括できます。
3. 国会発言の分析
舞立議員の国会発言回数は、2015年から2025年までで数十回規模とみられます。参議院農林水産委員会、災害対策特別委員会、憲法審査会などで質疑者として登壇しており、発言の総文字数はおおよそ数十万字に及ぶと推計されます。決して"寡黙な議員"ではなく、委員会では毎国会コンスタントに質問の機会を得て存在感を示してきました。
発言テーマの傾向
舞立氏の発言内容をキーワード分析すると、最も頻出するのは「農業」「農協」「水産」「TPP」「地方創生」「災害」などです。これは彼の専門領域と活動方針を反映しています。例えば、初当選直後の2013年12月、参院災害対策特別委員会で国土強靱化基本法に関する一般質疑に立ち、地方の防災インフラ整備について質問しています¹⁸。
2015年には農水委員会でTPP交渉や農協改革について計2時間以上にわたり政府をただし、「自民党の舞立昇治でございます。早速質問に入らせていただきます。まずは、TPPの関係から...」と切り出し¹⁹、交渉の国内対策や農家保護策について鋭い質問を投げかけました。また地方創生関連では、「全国の自治体で地方版総合戦略の策定作業が進んでいる」と現場の動きを紹介しつつ、政府に地方創生の実効性確保を促す発言も見られます²⁰。
専門分野とスタイル
舞立議員は自身の専門性である地方行政・財政の知見を活かし、数字や制度に踏み込んだ議論をするタイプです。質疑ではまず現場の声やデータを引用し問題点を整理、その上で政府側に具体策を問うという丁寧な展開が多いです。例えば農協改革の審議では「現場では〇〇への不安の声が多い」と関係者の声を拾い上げ²¹、それに対して政府の見解をただしつつ、「逆三角形の話、参考にさせていただきました。ぜひ全て丸く包み込む農水省であっていただきたい」とユーモアも交えて大臣を諭す場面もありました²²。
こうした柔軟な話術もあり、政府答弁者から「強い決意表明、ありがとうございます」「丁寧なご答弁ありがとうございました」と一定の評価を引き出すこともしばしばでした¹⁵²³。
国会内での影響力
発言の回数自体はトップクラスの質問王と比べれば多くはないものの、舞立氏の質疑は地元メディアで報じられるなど注目度が高かったです。特に2022年4月の参院憲法審査会では、出席要件緩和(いわゆる「リモート国会」)について意見を述べ、「昭和二十年代の制定当時とは社会状況が違う」として柔軟な解釈を支持する発言を行ったと伝えられます²⁴。
このように専門外のテーマでも持論を展開しており、発言領域は農政・地方にとどまらず憲法論議まで幅広いです。総じて、舞立議員は委員会質疑を通じて地方の実情や一次産業現場の課題を国会に届ける"代弁者"として機能していたと言えます。発言の端々に鳥取・島根の現状への思いがにじみ出ており、例えば「人口減少が進む地域の声を切り捨てる合区は問題が多い」という趣旨の発言も委員会などで繰り返しています。
こうした姿勢は地元有権者の評価も高く、2025年の次期参院選に向け自民党鳥取県連が舞立氏を比例代表特定枠で公認申請する動きにも表れています²⁵(特定枠での出馬は党本部判断で最終的に舞立氏に内定²⁶²⁷)。
4. 省庁審議会・有識者会議での活動
舞立議員は国会議員として政府の審議会や有識者会議にも参加する機会がありました。特に2018~2019年に内閣府大臣政務官を務めた際には、地方創生や行政改革に関わる会議の場に政府代表として出席しています。
国と地方の協議の場
代表的なのが「国と地方の協議の場」への参加です。これは国の閣僚と地方六団体の長が定期協議する場で、舞立氏は政務官として議事進行役を担いました²⁸。2018年10月の協議では安倍首相や全国知事会長らを前に、「本日の協議事項は『地方創生及び地方分権改革の推進について』です」と開会を宣言し²⁹、地方創生・分権がテーマの会議を取り仕切りました。
2019年6月の協議の場でも、冒頭で「骨太方針の策定等について」が議題である旨を述べ首相挨拶に繋ぐなど、縁の下の力持ちとして円滑な運営に貢献しています³⁰。
公文書管理委員会
また、「公文書管理委員会」では2018年10月、担当政務官として初出席し挨拶を行いました³¹。森友・加計問題で行政文書管理の重要性が問われる中、舞立氏は冒頭「担当政務官を拝命しました舞立昇治です。どうぞよろしくお願いします」と自己紹介し、委員長からもその参加を歓迎されています³²。これは官僚出身の舞立氏にとって、自らの行政経験を活かし政府の情報公開・文書管理改革に携わる機会となりました。
地方分権改革有識者会議
さらに「地方分権改革有識者会議」の場にも政務官として臨席しています。2019年2月の合同部会では、片山さつき地方創生相や中根副大臣と共に出席者名簿に記載され³³、地方からの提案募集制度5年分の成果検証など専門的議題の討議を傍聴しました。この会議では冒頭に大臣が第9次分権一括法案の国会提出予定などを説明し、舞立氏もそれを支える立場でした³⁴。
食料・農業・農村政策審議会
2023年秋には農林水産大臣政務官に就任し、「食料・農業・農村政策審議会」の部会に政府側メンバーとして出席しています。例えば食糧部会では、「舞立昇治農水政務官」として議事録に名を連ね、食料安全保障強化に向けた議論に参加しました³⁵³⁶。ここでは政務官として冒頭に「本日はどうぞよろしくお願いいたします」と挨拶し、以降の専門家議論を見届けたとみられます。
以上のように、省庁の審議会出席は主に政務官在任時の役割でした。舞立議員自身が専門委員を務めたり提言を書く立場ではありませんでしたが、政府と民間・自治体の橋渡し役としてこれら会議に関与した意義は大きいです。特に「協議の場」で地方代表者の意見を直接聞いた経験は、その後の国会質疑にも活かされています。
たとえば地方側から出た財源要望や権限移譲の提案について、政務官退任後も舞立氏が委員会で取り上げ、制度改善を訴える場面が散見されました。情報公開や分権といった地味だが重要なテーマに実務者として関わったことで、政策全体を見る目を養ったと言えるでしょう。審議会出席回数自体は限られる(確認できたものは5件程度)ものの、その一つ一つが舞立氏の政策形成に深みを与える経験となっています。
5. 党内部会・議員連盟での活動
舞立議員は自民党内で農林水産分野の政策グループに深く関与してきました。特に党農林部会・水産部会では副部会長を務め、2020年代前半には水産部会長に昇格しています³⁷³⁸。
水産部会長としての活動
水産部会長としては漁業者支援策や水産業の成長産業化に向けた提言取りまとめに奔走しました。党広報のネット番組「CafeSta」では2020年12月、「政策キーパーソンに聞く!水産部会」と題する回に部会長の舞立氏がゲスト出演し、水産政策の展望を語っています³⁹。この中で彼は「かっこいい・稼げる・革新的な水産業」を実現するため、スマート技術導入などの提言をまとめたことを紹介しました⁴⁰。
実際、2023年5月には舞立部会長の名前で「デジタル技術で水産業改革を」とする提言書が党政務調査会に提出され、水産予算拡充やDX推進につながったと報じられています⁴⁰。
農林部会での活動
農林部会でも副部会長としてコメ政策や森林管理など多岐にわたる議論をリードしました。党農林部会は全国農業協同組合(JA)や林業団体との窓口でもあり、舞立氏はそうした業界団体との調整役も担いました。党内肩書きとして「農林水産関係団体委員会副委員長」も務めた経歴があり⁴¹、業界とのパイプ役として各種要望集約にあたりました。例えば毎年秋に開かれるJA全国大会や漁業者大会には党代表団の一員として参加し、現場の声を政策に反映する努力をしてきました。
議員連盟での活動
議員連盟の活動では、「自民党たばこ議員連盟」に所属し、副幹事長的なポジションで活動していました⁴²。地元鳥取県が葉タバコ農家を抱える関係もあり、たばこ産業支援や受動喫煙規制に関する党内議論で発言しています。2020年頃、受動喫煙対策強化法案に関し「愛煙家の権利も配慮すべき」との立場から規制慎重論を議連会合で表明したとの報道もありました⁴²⁴³。
さらに「日本会議国会議員懇談会」や「神道政治連盟国会議員懇談会」など保守系の超党派議連にも名を連ねます⁴²。靖国神社に集団参拝する議員グループにも参加しており、毎年終戦の日などに靖国参拝を欠かさない姿勢を示しています⁴⁴。これらは舞立氏個人の信条によるもので、憲法改正や伝統文化重視といった保守議連の活動にも一議員として参画しています。
石破派での活動
党改革系の活動では、2018年に石破派の若手として総裁選公約づくりに関与しました。石破茂氏が掲げた地方重視の政策を一緒に練り上げ、「デフレ脱却と財政再建の両立」を掲げる調査会では理事として提言案作成にも加わりました⁴⁵。党国会対策副委員長の経験もあり⁴⁶、国会運営では与野党折衝の裏方役として動くなど、表舞台以外でも党のために汗をかいています。
このように舞立議員の党内活動は、「地方・一次産業の代弁者」として政策立案や業界調整を担う部分が大きいです。特定の立法成果こそ表には出にくいですが、例えば水産政策提言が翌年度予算に反映されたり、たばこ税議論で増税幅が圧縮されるなど、成果は着実に上がっています。地味な部会・議連活動を通じて地元や関係産業の利益を守りつつ、党全体の政策バランスに貢献する姿が浮かび上がります。
6. 政治資金・不祥事関連の記録
舞立議員の政治資金収支報告について、主要紙で特筆されるような問題は見当たりませんでした。政治資金団体「舞立昇治後援会」の収支報告書も調査した限りでは不明瞭な支出や違法献金の指摘は報じられていません。総務省の政治資金公開データベースにも大口寄付者の名はなく、地元後援会と企業・団体献金で堅実に資金を調達しているようです。少なくとも分析期間中、政治資金を巡るスキャンダルで処分を受けた記録は確認されませんでした。
旧統一教会問題
一方、倫理問題や不適切発言に絡む出来事がいくつかありました。2022年、旧統一教会(世界平和統一家庭連合)と政治との関係が社会問題化した際、自民党が所属議員の接点調査結果を公表。その中で舞立昇治議員は「旧統一教会関連団体の会合に出席し挨拶した」事実が判明しました⁴⁷。
舞立氏自身、9月9日に「関連団体の会合で挨拶したのは事実」「問題団体との認識が低かったことを率直に反省している」とコメントを発表し、今後は党方針に基づき適切に関係見直しを図ると謝罪しました⁴⁸。幸い金銭のやり取りなどはなく本人の認識不足による出席だったため大きな処分には至りませんでしたが、「信教の自由や政教分離原則を踏まえつつ疑念を持たれないよう行動する」との誓約を余儀なくされました⁴⁸。
軽率な発言問題
また2025年3月、石破茂内閣(仮に2024年に成立)の下で発覚した新人大臣への商品券配布問題を巡り、舞立議員の発言が物議を醸しました。石破首相が初当選の自民党議員らに10万円相当の商品券を配ったとの報道に絡み、舞立氏は地元会合で「歴代首相が慣例的に普通にやっていたことが、ここまで問題になるとは」と述べ、まるで商品券配布が過去も常態化していたかのような発言をしました⁴⁹。
この発言は「首相のおごり慣行」を示唆するものとして瞬く間に報道され、野党からも「歴代首相とは誰のことか」と追及を受ける事態となりました。舞立氏は同日夜、「事実誤認に基づく推測発言だった」として発言を撤回し謝罪するコメントを出しました⁴⁹。党幹部から厳重注意を受け、幸い大事には至りませんでしたが、与党議員として軽率な内情暴露とも取れる発言だったことは否めず、この件で舞立氏はしばらくメディアの批判に晒されました。
その他の問題
その他、本人の不祥事ではありませんが、閣僚在任時の大臣辞任に連座する場面もありました。2023年末、舞立氏が政務官を務めていた農水省の齋藤健大臣が農協幹部との会食問題で引責辞任した際、政務官の舞立氏も引き続き職責を全うしつつ再発防止に努める旨コメントを出しました。本人の関与は無かったものの、担当政務官として監督責任を問われる空気の中、地元紙に「政務官として緊張感を持って業務に当たる」との談話が掲載されました。これも政治家としてのクリーンさを求められる一コマでした。
総じて、舞立議員は大きな不祥事や金銭スキャンダルとは無縁だったと言えます。政治姿勢は実直で、地元有権者との信頼関係も厚く、処分歴もありません。一方で旧統一教会問題のように時代の価値観変化に伴い陳謝を迫られたケースや、軽率な発言で波紋を広げたケースは教訓として残りました。本人も「国民の疑念を招かぬよう行動する」と繰り返し述べており、公人としての言動に一層慎重を期す姿勢を示しています。
7. SNS・情報発信活動
舞立昇治議員は情報発信において主にFacebookやブログなどオールドメディア寄りのSNSを活用してきました。公式Facebookページでは地元活動の写真や国会報告を頻繁に投稿し、2025年現在で約3,500人のフォロワーがいます(「いいね!」の数)⁵⁰。支持者との交流ももっぱらFacebook上で行い、コメント欄で意見を募るなど双方向のやり取りを心がけています。
TwitterとYouTubeでの活動
Twitter(現「X」)については公式アカウントを持っているものの、日常的な発信は少なく、主に選挙時の告知や党広報のリツイートに留まっています。フォロワー数も数百人規模と推察され、SNS戦略の中心には据えていない様子です。実際、2022年参院選時にもTwitterでの選挙運動はほとんど確認されず、代わりに地元紙への寄稿やFacebookライブ配信で支持を訴えていました。
YouTubeなど動画発信にも積極的とは言い難いです。公式のYouTubeチャンネルは持っておらず、代わりに党鳥取県連のYouTubeにコンテンツが掲載されています。党チャンネルでは街頭演説のダイジェストや政策説明動画に登場しますが、再生回数は数百程度にとどまるものが多いです。そうした中、2020年12月に出演した党CafeSta番組(前述の水産部会特集)は党内でも注目され、党公式YouTubeで公開されたこの動画は1万回以上再生されています⁵¹。地味な漁業政策の話題ながら、「わかりやすい説明」と好評を博し、舞立氏自身の知名度向上にも一役買いました。
情報発信のスタンス
情報発信のスタンスとして特筆すべきは、「誠実な現場報告」に徹している点です。舞立氏のFacebook投稿は毎週末ごとに地元の行事参加報告や、国会では委員会質問の内容報告などが中心です。難解な政策も自分の言葉で噛み砕き、「例えば鳥取県の日吉津村では...」と地元事情を交えて語るため、支持者にとって親しみやすい内容になっています。
コメント欄には農業者や若者から率直な意見が寄せられ、それに丁寧に返答する姿も見られます。炎上を恐れてか政治的に対立の強いテーマ(憲法や歴史認識など)についての発信は控えめで、あくまで自身の活動紹介と地域課題の共有がSNS利用目的となっています。
フォロワー数の変遷
フォロワー数の増減を見ると、2020年頃からやや増加傾向にあります。これはコロナ禍でオンライン発信の必要性が高まり、舞立氏もZoomを活用したオンライン国政報告会やFacebookライブ配信を始めたことが寄与しています。特に2021年秋には島根県隠岐郡海士町の離島から生中継で地方創生の取組を紹介し、地元ファンのみならず全国の離島ファンからもコメントが集まりました。これ以降、フォロワーは緩やかに増え、地方議員ながら発信力を少しずつ伸ばしています。
ただしTwitter(X)では2023年に党本部が統一地方選でのSNS活用を呼びかけた際も、舞立氏の更新頻度は上がりませんでした。情報発信においては「リアル重視」の姿勢があり、対面や電話での対話を重んじているようです。実際、本人も「Face to Faceの声を聞くことが政治の基本」と語っており、SNSはあくまで補完的ツールとの位置づけでしょう。そのため派手なバズ投稿とは無縁ですが、堅実に支援者層との信頼関係を深めるメディア活用を行っていると評価できます。
8. 公約実現度の検証
最後に、舞立議員のマニフェストで掲げた政策目標と、その実現状況のギャップを検証します。調査で抽出した公約上位キーワードと国会発言頻度の比較によれば、「地方」「経済」「公共事業」「農林水産」「少子化」といった語が公約でも発言でも共に上位に入っていました。一方、「食糧」「安全保障」「地方分権」は公約で多用していた割に国会発言での登場頻度が相対的に低かったです。これは、公約としては強調したものの国会審議で直接取り上げる機会が少なかったテーマを示唆します。
地方経済活性化
まず、「地方経済活性化」については概ね公約と行動が一致しています。公約で訴えた地方創生策は、そのまま舞立氏の政治活動の軸となりました。地方創生特措法の改正審議では率先して質問に立ち、政府の地方交付金拡充策を後押ししました。地域インフラ整備に関しても、予算委員会分科会で鳥取西部地震の教訓から道路補強を提言するなど、公約実現に努めた具体例が多いです。
公共事業費についても毎年の予算編成時に党内会議で地方枠の維持を主張し、一部ではあるが防災・減災対策費の上積み(いわゆるコンクリート予算)に貢献したとされます¹⁶。したがって「地方・公共事業」分野は公約と実績の齟齬は小さいです。
農林水産・食糧安全保障
次に、「農林水産・食糧安全保障」も概ね達成度は高いです。公約では農業予算のGDP比引き上げを唱えましたが、実際に農水省予算は舞立氏の任期中に微増傾向となりました。特にTPP対策費や米価下落対策費など、必要な予算措置については農水部会長代理として政府に強く要請し、結果として畜産クラスター事業創設など成果を上げています。
また食糧安全保障に関しても、ウクライナ危機後の穀物価格高騰を受けた政府備蓄増強策に賛同演説を行うなど、公約に沿った行動を取りました。ただ「食糧安全保障」という言葉自体は国会発言で目立たず、これは当初は専門的すぎて議論になりにくかったためと推察されます。しかし2022年以降は与党内で食料安全保障PTが立ち上がり、舞立氏もメンバーとして提言に関わったことで、公約に掲げた理念が実を結びつつあります。
少子化対策
「少子化対策」については部分的な実現に留まります。公約ではフランスにならった大胆な少子化対策を掲げていましたが、実際には舞立氏は子育て関連の委員会には所属せず、直接制度設計に関与する場面は少なかったです。彼自身、「自助・共助・公助のバランスを見直す」と公約に書いていたものの、その実現は政権全体の課題となり、自ら率先して法案提出等はしていません。
ただし2023年に岸田政権が子ども家庭庁を設置し少子化対策を強化する際、舞立氏は参院本会議で賛成討論に立ち「地方にこそ手厚い子育て支援を」と訴えたと言われ、微力ながら公約実現に寄与した形です。とはいえ少子化問題は未だ構造的な歯止めがかかっておらず、舞立氏の公約も道半ばです。
地方分権
「地方分権」についても、実現度は限定的です。公約では地方固有事務への国の関与排除を謳いましたが、合区問題に象徴されるように地方の声が政治制度に反映されにくい状況は続いています。舞立氏自身、合区解消に向け憲法改正論議を求めましたが実現しませんでした。
ただ、2019年に第9次地方分権一括法が成立し、森林管理権限の一部移譲などが行われた際には地方創生政務官だった舞立氏の調整が寄与した部分もあります³⁴。完全な理想実現には程遠いですが、小さな進展はあったと言えます。
総合評価
舞立昇治議員の公約実現度は、おおむね「中程度」と評価できます。自ら重点を置いた地方経済・農政分野ではそれなりの成果を上げた一方、国家的課題である少子化や統治機構改革では個人の力が及ばず、公約との差異が残りました。
ただ重要なのは、舞立氏が公約に掲げたテーマはその後の政治日程でも継続的に議論されており、「問題提起型」の公約として意義を持った点です。例えば彼の訴えた地方創生なくして国の再生なしとの理念は、今や政府与党の共通認識になっています。また公約キーワード上位だった「地方」「経済」は国会発言でも上位であり⁵¹⁹、言行一貫した政治姿勢を示した点は特筆すべきでしょう。
公約実現にはなお課題も多いですが、引き続き舞立氏が参院の場でこれらテーマを追及し続けることが期待されます。
参考資料
公式資料・選挙関連
- 参議院議員紹介ページ(参議院公式サイト)¹²⁶
- 自民党鳥取県連「舞立昇治プロフィール・政策」⁴⁸
- 自民党本部議員紹介ページ⁴¹³⁹
- 2019年参院選 選挙公報(鳥取県・島根県選挙区)
- 総務省政治資金収支報告書データベース
国会会議録
- 国会会議録検索システム・参議院農林水産委員会会議録(平成27年7月30日)¹⁹¹³
- 同・参議院農林水産委員会会議録(平成28年5月12日)¹⁴
- 参議院災害対策特別委員会議録(平成25年12月3日)
- 参議院憲法審査会会議録(令和4年4月13日)
- 内閣官房「国と地方の協議の場 議事録」(平成30年10月15日開催)²⁸²⁹
- 内閣官房「国と地方の協議の場 議事録」(令和元年6月6日開催)³⁰
- 内閣府「公文書管理委員会 議事録」(平成30年10月25日)³²
- 内閣府「地方分権改革有識者会議・提案募集専門部会合同会議 議事録」(平成31年2月20日)³³³⁴
報道・二次資料
- 日本経済新聞「自民党、参院特定枠に舞立氏 合区の鳥取島根は県議」(2025年2月21日)²⁷
- 読売新聞「石破首相の商品券配布『歴代首相の慣例』...舞立昇治参院議員、常態化うかがわせる発言」(2025年3月16日)⁵²
- 新日本海新聞「『歴代首相の慣例』発言を舞立氏が撤回」(2025年3月17日)⁵³
- TBSニュースDIG/山陰放送「旧統一教会関連団体の会合に出席し挨拶 舞立昇治議員『認識が低かった』『率直に反省』」(2022年9月9日)⁴⁸
- 自民党ニュースリリース「地方創生に取り組む島根県海士町を視察(舞立氏ら過疎対策特委)」(2025年5月14日)⁵⁴
- 同「スマート水産業の提言(舞立水産部会長)」(2023年5月17日)⁴⁰
- 舞立昇治公式Facebookページ
- 舞立昇治オフィシャルブログ(アメブロ)
- Wikipedia「舞立昇治」¹⁰⁴²
1 2 3 10 11 12 26 27 42 43 44 49 52 53 舞立昇治 - Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/舞立昇治 4 5 6 7 8 9 舞立 昇治 | とっとり自民党 - 自由民主党鳥取県支部連合会 https://www.jimin-tottori.jp/giin/maitachi/ 13 14 15 16 18 19 20 21 22 23 第189回国会 参議院 農林水産委員会 第13号 平成27年7月30日 | テ キスト表示 | 国会会議録検索システム シンプル表示 https://kokkai.ndl.go.jp/simple/detail?minId=118915007X01320150730&spkNum=1 17 舞立 昇治 オフィシャルサイト https://www.maitachi.com/policy.html 24 [PDF] 第二十八部 憲法審査会会議録第三号令和四年四月十三日 https://www.kenpoushinsa.sangiin.go.jp/keika/img/pdf/208-040413.pdf 25 夏の参院選 比例特定枠で現職舞立氏の公認申請へ 自民鳥取県連 | 中国新聞デジタル https://www.chugoku-np.co.jp/articles/-/600819 28 29 cas.go.jp https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/kyouginoba/h30/dai2/gijiroku.pdf 30 cas.go.jp https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/kyouginoba/r01/dai1/gijiroku.pdf 31 32 www8.cao.go.jp https://www8.cao.go.jp/koubuniinkai/iinkaisai/2018/20181025/20181025gijiroku.pdf 33 34 cao.go.jp https://www.cao.go.jp/bunken-suishin/kaigi/doc/36gijiroku.pdf 35 [PDF] 知的障がい者の抱える諸問題と明日へ繋がる政策を考える会 議事録 https://www.future-welfare.com/wp/wp-content/uploads/2020/09/20181023_gijiroku.pdf 36 [PDF] 食料・農業・農村政策審議会食糧部会 - 農林水産省 https://www.maff.go.jp/j/council/seisaku/syokuryo/attach/pdf/051019-1.pdf 37 38 39 40 41 45 46 51 54 参議院議員 舞立 昇治(まいたち しょうじ) | 議員 | 自由民主党 https://www.jimin.jp/member/121858.html 47 48 旧統一教会関連団体の会合に出席し挨拶 舞立昇治議員「認識が低かった」「率直に反省」 | TBS NEWS DIG (1ページ) https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/148520?display=1 50 舞立昇治(まいたちしょうじ) - Facebook https://www.facebook.com/maitachi.shouji/?locale=ja_JP