はにゅうだ たかし
羽生田俊議員の政治活動総覧(2015–2025)
概要
羽生田俊(はにゅうだ・たかし、1948年3月28日生)は群馬県前橋市出身の眼科医で、自由民主党所属の参議院議員(比例代表選出、当選2回)です¹²。
東京医科大学医学部卒業後、東京医科大眼科教室を経て羽生田眼科医院院長に就任し、前橋市医師会理事、群馬県医師会理事、日本医師会常任理事など医療界で要職を歴任しました²³。
2013年参院選で初当選し、2019年に再選を果たしました。参議院では厚生労働委員長、党副幹事長、厚生労働部会代理部会長など党内外の要職を歴任し、2022年8月から岸田改造内閣で厚生労働副大臣を務めました³⁴。
本報告書は2015年から2025年6月までの活動を対象とし、選挙公報・マニフェストから実際の立法活動・発言まで、羽生田氏の政治姿勢と実績を多角的に分析します。
1. 選挙公報・マニフェスト分析
羽生田氏は「すべての人にやさしい医療・介護を」というスローガンのもと、医療・介護政策に重点を置いた公約を掲げています⁵。
公式サイトの「政策・理念」では、「国民皆保険を守る」「地域医療と医師の健康を守る(医師の働き方改革)」「被災地の健康維持」「子育て支援」「地域密着の医療・福祉づくり」「経験を生かした医療政策提言」「医師と患者の信頼構築」の七つの柱が示されました⁶⁷。
特に医療体制の維持・充実、働き方改革、安全な地域医療、高齢・被災地対策、家族支援などが訴求点です。公約文中で頻出するキーワードは「医療」「介護」「医師」「健康」「地域」「子育て」などであり、国家の皆保険制度や高齢化社会への対応を重視しています⁸⁵。
マニフェストの柱
例えば「国民皆保険を守る」「地域医療の継続性と医師の健康を両立する働き方改革」「被災地の医療支援」「成育(子育て)基本法の施行支援」「地域密着型医療・介護・福祉」「永年の医師会経験を活かした政策提言」「医療基本法による信頼構築」などを掲げ、医療・福祉分野に特化した姿勢を鮮明にしています⁸⁷。
2. 法案提出履歴と立法活動
羽生田氏個人が提出者となった国会提出法案はほとんど見当たりませんが、厚生労働委員長・副大臣として政府提出法案に深く関与しました。
2016年には参院厚生労働委員長として、がん対策基本法改正案を代表質問し、改正趣旨を説明しています⁹。同年には公的年金の財政強化法案も審議し、委員長として質疑を進行しました¹⁰。
また2017年にはホームレス自立支援法改正案について、委員長報告で法案成立を報告するなど、社会福祉系の法案も扱いました¹¹。具体的には、ホームレス支援措置法の有効期限延長法案を「全会一致で可決する」と報告し、10年間の延長を実現しています¹¹。
これらは政府提出法案への対応ですが、個人議員立法では目立った活動記録はなく、党役職と委員長職を通じての立法調整が中心でした。
与党議員として賛否も原則与党案賛成が多く、具体的な反対投票記録は見当たりませんでした。重要法案の審議では厚労副大臣や委員長として政府側の趣旨説明を行い、委員会での与野党調整を図っています。成立率については、厚労委員長時代に担当した法案はいずれも成立(全会一致で可決)しており、議会での影響力を一定程度発揮しています¹²¹¹。
3. 国会発言の分析
羽生田氏は参議院内では厚労・財金・震災特委など主要委員会で発言しています。委員長・副大臣経験者らしく、質問や質疑進行が中心で、2016年以降も断続的に積極発言しています(詳細な発言回数は公表資料に乏しいため不明ですが、数十回規模とみられます)。発言文字数は議長報告・趣旨説明が多いため長文になることもあり、総文字数も数万字単位と推定されます。
言葉の分析では「医療」「健康」「介護」「子育て」など公約に直結する語よりも、「国会」「厚労省」「法律」「審議」「制度」「財政」など行政・制度一般の用語が目立ちます。
例えば2024年5月22日の厚労委では、物価高騰下の医療機関の経営悪化や賃上げ問題について質疑し、「物価高」や「賃上げ」といったキーワードを使用しました¹³。これは自身の公約で謳った「国民皆保険」や「やさしい医療」というスローガンには直接触れていない点で、公約重視か直近課題重視かのバランスがうかがえます。
国会発言ではむしろ社会保障制度全般や医療制度運用面が多く、医療従事者の労働条件や患者支援策についても議論しています。なお、質問主意書の提出など国会活動の統計は公表資料では確認できないため、本報告では明確な数値は示せませんでした。
4. 省庁審議会・有識者会議での活動
羽生田氏は医師会役員として政府側の会議に招かれることが多く、議員就任前後に複数の審議会・懇談会に参加しています。
例えば、2010年10月に厚生労働省主催の終末期医療検討懇談会に日本医師会副会長として参加し、「羽生田俊委員」として議論に加わりました¹⁴。また2003年2月には環境省の中央環境審議会環境保健部会の委員にもなっており、化学物質リスクの審査などに関与した記録があります¹⁵。
これらはいずれも医師会の立場からの臨時委員で、医療政策や環境保健分野に専門的知見を提供しています。これらの審議会活動は議員個人の役割というよりは医師会時代の職務でしたが、幅広い政策分野で意見陳述を行っていたことを示しています。
議員在任中の審議会出席回数は少なく、特に2025年末までには目立った委員就任記録はありませんでした(副大臣・委員長としての委員会審議が主活動であったようです)。
5. 党内部会・議員連盟での活動
党内部会での活動
党内では厚生労働部会副部会長、党副幹事長などを歴任し、自民党の医療・福祉政策策定に関与しました³¹⁶。
内閣官房ページにも経歴として「自民党政調厚生労働部会副部会長」「副幹事長」「労働局次長」などの役職が記載されています¹⁷¹⁸。これら役職を通じ、党議員の医療政策議論をまとめる立場にありました。
議員連盟での活動
議員連盟(議連)活動でも活発で、自身の医師としての立場から医療系テーマを中心に多くの超党派連盟に参加しています。
例えば2024年3月には「眼科医療政策推進議員連盟」の設立総会で幹事に就任し、眼科医師議員の議連活動に携わりました¹⁹。また同月には「乳がん・子宮頸がん検診促進議員連盟」の設立総会に出席し、検診拡充策を議論しています²⁰。
このほか「人間の安全保障議連」など複数の議連に名を連ねています²¹。一方で保守系議連では、「靖国神社に参拝する議員の会」に参加し、「医心方」世界記憶登録推進議連では事務局長も務めるなど、党派を超えた活動も行っています²²。
これら活動では、幹事や事務局長として議連運営にも携わり、医療政策の幅広いアドボカシーを担っています。
6. 政治資金・不祥事関連の記録
政治資金では、議員就任前の2013年に日本医師会から非常に多額(約2億3000万円)の献金を受けたと報じられたことがあります²³。
一方、2024年春には自民党最大派閥の資金管理で未記載が見つかった「安倍派パーティー券問題」に関連し、党紀委員会で羽生田氏に対して戒告などの処分が検討されました²⁴。
参院政倫審(政治倫理審査会)でも山下芳生議員(共産党)から追及され、「所属団体の組織内候補で資金が潤沢なのに、裏金システムを知らなかったとは考えにくい」などと問われました²⁵。羽生田氏は「派閥事務局の指示だった」と主張し関与を否定しました²⁵。
結果的に2024年12月、東京地検は嫌疑不十分で羽生田氏を不起訴としています²⁶。以上のように、党内ルール違反の疑いはあったものの、法的には問題なしと判断されました。いずれも本人の説明で収束しており、重大な不祥事には至っていません。
7. SNS・情報発信活動
羽生田氏はX(旧Twitter)やYouTubeを使った情報発信も行っています。公式サイトではXへのリンク(@hanyuda_takashi)や「羽生田たかしチャンネル」YouTubeを紹介しており、国政・医療関連の情報発信に利用しています²⁷。
たとえば2024年には、国会質問や現地視察の様子をツイートで報告し、医療現場からの声や議論内容を共有しています。フォロワー数は公式発表がないものの、数千~万人規模と見られ、医療関係者や有権者との交流に用いられています。
YouTubeチャンネルでは、演説会や議連設立の動画などを公開し、「政策報告」的に活用しています。SNSを通じ、医療・介護課題や法案審議のポイントを市民に伝える戦略的な情報発信に努めています。
8. 公約実現度の検証
羽生田氏の公約と国会活動のギャップを見ると、医療・介護重視の公約に対して国会発言で同じ言葉を多用しているわけではない点が指摘できます。
マニフェスト(選挙公報)では「やさしい医療・介護」「国民皆保険」「子育て支援」などが目立つ一方⁵⁸、国会では財政・運用に関する議論が多く、公約スローガンは直接的には繰り返されていません。
例えば物価高騰対策を議論する質問では「物価高」や「医療分野経営」などの語句が用いられ、公約文言とは異なる切り口でした¹³。また、公約の中心である「介護」や「福祉」の具体的法案提出記録は乏しく、むしろ委員会運営や政策提言の調整という形で実務的に取り組んでいます。
こうした点は「公約と現実とのすり合わせ」とも言え、実現度を示す具体的な数値や成果報告は明確ではありません。総じて、公約に掲げた医療・介護政策の方向性は一貫して支持しているものの、議員活動ではむしろ制度整備・予算配分の裏方的な役割が目立ち、公約文言の直接的実行(たとえば新法成立など)ではなく、既存法・制度の範囲内で実現を図っていると言えます。
参考資料
- 公式資料: 衆参議院・内閣府サイト、厚生労働省・環境省審議会議事録など²⁸¹⁴
- 議会資料: 衆参議院会議録、法案資料、官邸発表経歴⁹³⁴
- 報道資料: 日本共産党「しんぶん赤旗」報道、毎日・朝日新聞等(派閥金問題報道)¹⁵²⁵²⁴
- 政治家公式: 羽生田俊オフィシャルサイト(政策・活動報告)⁶¹⁹
1 22 23 24 26 羽生田俊 - Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/羽生田俊 2 4 16 17 18 厚生労働副大臣 羽生田 俊 (はにゅうだ たかし) | 第2次岸田改造内閣 副大臣名簿 | 内閣 | 首相官邸ホームページ https://www.kantei.go.jp/jp/101_kishida/meibo/fukudaijin/hanyuda_takashi.html 3 28 羽生田 俊(はにゅうだ たかし):参議院 https://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/giin/profile/7013043.htm 5 13 27 トップページ | 羽生田たかし(はにゅうだ たかし) オフィシャルサイト https://www.hanyuda-t.jp/ 6 7 8 政策・理念 | 羽生田たかし(はにゅうだ たかし) オフィシャルサイト https://www.hanyuda-t.jp/seisaku/ 9 12 h28-107ks https://houseikyoku.sangiin.go.jp/bill/pdf/h28-107ks.pdf 10 第192回国会 参議院 本会議 第11号 平成28年11月16日 | テキスト表示 https://kokkai.ndl.go.jp/simple/detail?minId=119215254X01120161116&spkNum=18 11 sangiin.go.jp https://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/gian/193/pdf/k051930191930.pdf 14 第6回終末期医療のあり方に関する懇談会議事録 |厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000000yqxt.html 15 第9回中央環境審議会環境保健部会議事録 | 環境省 https://www.env.go.jp/council/05hoken/y050-09a.html 19 20 21 ページ 163 | 羽生田たかし(はにゅうだ たかし) オフィシャルサイト https://www.hanyuda-t.jp/page/163/?author=0 25 “強制的に還付金”か/旧安倍派議員 山下氏、違法性追及/参院政倫審 https://www.jcp.or.jp/akahata/aik24/2025-02-08/2025020802_05_0.html