かみ ともこ
紙智子議員の政治活動総覧(2015–2025)
概要
紙智子(かみ ともこ)議員は日本共産党所属の参議院議員で、比例代表から通算4期当選しています¹。1955年に札幌市で生まれ、北海道女子短期大学工芸美術科を卒業後に日本民主青年同盟で活動し、1989年から共産党北海道委員会勤務となりました²。
1986年以来、参院選で4回、衆院選で3回立候補するも落選が続きましたが、2001年の参院選比例区で初当選を果たしました³。以来2007年、2013年、2019年と連続当選し、在職期間は2001年から現在まで24年に及びます⁴。
党内では2010年から党中央委員会常任幹部会委員を務め、農林・漁民局長(農林水産部会長)として農政分野の政策を統括してきました⁵。参議院では農林水産委員会や震災復興特別委員会など農業・地域再生に関わる委員会を中心に活動し、参院国会対策副委員長として国会運営にも携わりました⁶。
紙議員は「いのち、食と農が原点」というモットーを掲げ⁷、農業や食の安全、地方の暮らしを守る政治家として知られています。大学卒業後に白衣メーカーに勤務した経験や、北海道出身で農村風景を原風景に持つ自身の背景から、「誰も飢えることのない未来を」との信念を持ち、国政に取り組んできました⁸⁹。
本レポートでは、2015年から2025年までの10年間に焦点を当て、紙智子議員の政策公約、立法活動、国会発言、党内外での役割、政治資金や発信活動など多角的に分析します。有権者がその足跡を深く理解し評価できるよう、公的資料や報道に基づき事実を網羅して記述します。
1. 選挙公報・マニフェスト分析
紙智子議員が直近に当選した2019年参院選(第25回通常選挙)では、日本共産党比例代表候補として全国を遊説し、自身のスローガンとして「いのち、食、農を守る」を前面に掲げました¹⁰。
選挙公報や演説で繰り返し強調したのは、農業再生と食料主権の確立です。BSE(牛海綿状脳症)問題では初当選直後の2001年に閉会中審査を要求して政府を動かし¹¹、国産牛肉の全頭検査やトレーサビリティ制度の実現に寄与した経験を持ちます。こうした経緯から「生産者に自己責任を迫る新自由主義的農政から、人と環境にやさしい農政への転換」を訴え²、農家所得の安定や食料自給率向上を公約の柱に据えました。
社会保障と平和への公約
加えて、暮らしと平和に希望を持てる社会を目指すビジョンも示しました。具体的には年金について「減らない年金」制度を提案し¹²、消費税の増税中止と生活支援策の拡充を約束しました。また「くらしに希望を」というキャッチフレーズのもと最低賃金引き上げや教育負担軽減などの政策パッケージも掲げています¹³。
一方で安全保障では憲法9条を守り活かす平和外交を主張し、安倍政権下での安保法制(戦争法)強行に反対する立場を鮮明にしました¹⁴。原発ゼロ社会の実現も党公約として強く訴え、福島第一原発事故を経験した日本で「原発のない日本」を目指す決意を示しました。
実際、紙議員自身も東日本大震災翌日に被災地入りし、「亡くなった人の分も生きる」という被災者の声を胸に活動してきたと語っています¹²。この言葉は彼女の政治活動の原点の一つであり、公約にも「被災者に寄り添う復興政策」として反映されました。
公約の核心テーマ
紙議員の選挙公約に現れたキーワードを頻度順に見ると、「農業」「農家」「食料」「年金」「消費税」「憲法9条」「原発」「復興」「平和」「暮らし」などが上位に並びます。これら約10語から、彼女の政治姿勢が浮かび上がります。すなわち、第一に農と命を守ること、第二に社会保障で暮らしに安心をもたらすこと、第三に憲法を軸に平和と原発ゼロを追求することです。
例えば「農業」という言葉は公約文中で特に目立ち、実際に「日本の食料自給率38%では危うい。『食の安全保障』と言うなら自給率を向上すべきだ」と訴える姿に表れています¹⁵。また「消費税」「年金」についても、公約で減税や給付改善を掲げただけでなく、国会質問で「物価高で苦しむ庶民への減税を」と政府に迫るなど具体的に追及してきました¹⁶。
平和と憲法に関しては、公約で安保法制撤回や沖縄基地問題の解決を訴え、国会討論でも「もう二度とあんな戦争をしてはいけない」という戦争体験者である父親の言葉を引きながら、「9条を生かした平和外交を強く求める」と他党も含め共感を呼ぶスピーチを行いました¹⁴。
以上のように、選挙公報から読み取れる紙議員の重点分野は、農業と食の安全保障、暮らしの安心、そして平和主義に集約されます。それらは彼女自身の人生経験と一貫しており、公約全体を通じて有権者に「命と暮らしを守る政治」への強いコミットメントを示していました。
2. 法案提出履歴と立法活動
2015–2025年の間、紙智子議員は主に野党共同で複数の議員立法を提出し、その背景にある課題の解決を目指してきました。与党の多数に阻まれて成立には至らない法案も多いものの、一連の立法提案から彼女の政策的狙いと行動パターンが浮かび上がります。
家族法制の見直し
まず、家族法制の見直しとして2015年には民主党や社民党などと共同で民法改正案を参議院に提出し、選択的夫婦別姓制度の導入を図りました¹⁷。この法案では「夫婦が結婚前の姓をそれぞれ名乗ることを選択できる」ことなどを盛り込み、婚姻後も男女が平等にキャリアや社会生活を営めるようにする内容でした¹⁸。
紙議員自身、院内集会に積極参加するなど夫婦別姓の実現に長年関わっており¹⁹、この法案提出もそうした活動の延長線上にあります。しかし当時この法案は委員会で審議入りできず、結果的に実現は持ち越されました²⁰。紙議員は「国会の怠慢が問われてもおかしくない状況だ」と法案提出後の会見で述べ²⁰、制度化の遅れに強い危機感を示しています。
政治とカネの改革
次に、政治とカネの改革に関しては、紙議員は2022年に日本共産党を代表して二つの重要法案を提出しました。一つは「企業・団体献金全面禁止法案」で、もう一つは「政党助成法廃止法案」です²¹。
前者は企業・団体から政治家や政党への献金を全面的に禁じ、政治資金パーティー券収入も寄付とみなして規制する内容で²²、2022年5月に紙智子議員ら共産党参院議員団が参院事務総長に提出しました²³。紙議員らは「企業・団体献金こそが政治を歪める温床だ」として金権腐敗根絶への決意を示し、あわせて政党助成金(税金による政党交付金)制度も廃止すべきだと主張しました²⁴。
実際、共産党は他党と異なり企業・団体献金も政党助成金も受け取っておらず、法案提出を通じて他党にも潔白な資金調達を迫った形です²⁵。これら法案は野党内でも一定の賛同を得ましたが、与党の反対でいずれも継続審議扱いとなり、現時点で成立には至っていません。しかし紙議員は諦めず「企業・団体献金禁止と政党助成廃止を一体で行うことが金権腐敗政治を根絶する道だ」と訴え続けました²⁶。
農林水産政策の立法提案
さらに紙議員の専門分野である農林水産政策でも、野党共闘による立法提案が見られました。直近の2025年6月には、立憲民主党・国民民主党・有志の会と共に野党4会派で農業関連4法案を衆議院に提出しています²⁷。
これらは国有林野事業職員の団結権回復を定める2法案と、農産物の新品種開発を国の責務とする「公的品種育成促進法案」、在来種の保存利用を促進する「在来品種利用法案」の計4本です²⁸。紙智子議員は提出者の一人である日本共産党の塩川鉄也衆院議員とともに法案提出の記者発表に同席し、その意義を訴えました²⁹³⁰。
背景には、安倍政権下の2018年に主要農作物種子法が廃止され、2020年には種苗法が改正されるなど農業分野で市場原理を強める政策が次々と進んだことへの対抗があります³¹。紙議員はこうした政府の農政改革に一貫して反対し、「地域の伝統品種を守り、公共の責任で種苗を育成する仕組みを取り戻すべきだ」と主張してきました³²。今回の法案提出も、失われた制度を立法によって再構築しようという試みですが、政府・与党の支持を得るには至らず、これも継続審議中です。
その他の政策提案
その他にも、紙議員はこの10年間でアイヌ民族支援策の拡充や災害被災者救済などに関する質問主意書を複数提出しています³³。たとえば2024年12月には「アイヌ施策推進法の見直しに関する質問主意書」を提出し、政府の姿勢を質しました³⁴。また2019年の臨時国会では台風災害の被災農家支援策を求める質問主意書を提出するなど、議員立法以外の形でも政府への働きかけを行っています。
法案そのものの成立率こそ低いものの、紙議員は野党外交の一翼として他党と共同提出に踏み出すことで政策提言型の野党像を体現してきました。その立法活動は、与党の数の力に対抗しつつ政策論争を喚起する役割を果たしたと言えます。
振り返ると、紙智子議員がこの期間に提出または関与した法案は数こそ限られますが、いずれも彼女の掲げる政策理念と合致しています。選択的夫婦別姓法案はジェンダー平等、献金禁止法案はクリーンな政治、種子法関連法案は食料主権の確立と、一貫して「人間らしく生きられる社会」を実現するためのものでした。
成立に至らなかった点について紙議員自身も悔しさを滲ませていますが、これらの法案提出という形で問題提起を行ったこと自体、与党の政策に一石を投じる効果がありました。例えば企業・団体献金禁止法案の提出翌年には、与党内からもパーティー券収入の透明化を求める声が出始めており、紙議員の提案が議論の端緒を作った面もあります。今後、彼女の後継者たちがこの遺志を継ぎ、法案を再提出・実現していくことが期待されます。
3. 国会発言の分析
紙智子議員は国会の場で極めて活発な発言を行い、その存在感を示してきました。2015–2025年の10年間での国会発言回数は詳細な公式統計がないものの、共産党議員の中でも突出して多い部類に入ります。実際、日本農業新聞は2013年時点で「紙氏の発言回数は74回と群を抜く」と伝え、農政・TPPから地元北海道の課題まで幅広く質問していると評価しました³⁵。この傾向はその後も続き、参議院農林水産委員会や本会議での質疑・討論を通じて積極的に政府を追及しています。
頻出テーマと専門性
発言内容の傾向を見ると、紙議員は一貫して農林水産分野と地方創生に関する問題提起を行っています。たとえばコメ価格下落や飼料高騰など農業現場の悲鳴をとり上げ、「政府が農業予算を拡充せず軍事費ばかり増やしている」と批判しつつ¹⁵、「食料自給率向上こそ真の『食の安全保障』だ」と迫る質疑は彼女の代名詞となっています³⁶。
2022年には江藤拓農水相(当時)が「コメは買ったことがない」などと発言した問題で、「農業軽視だ」と資格を問う鋭い質問を投げかけ、大臣を陳謝に追い込む場面もありました。また、酪農や漁業の危機についても各地の生産者から直接聞き取った実情を紹介し、「現場の声を政治に届ける」役割を果たしました。こうした農政に関する発言の積み重ねにより、「農業・農村を軽んじる国に未来はない」との信念が国会内外に浸透し、紙議員は与野党を超えてその論戦力を認められる存在となりました³⁷。
発言スタイルと影響力
紙議員の国会発言は、単に統計や原理を述べるだけではなく、具体的な事例や当事者の声を織り交ぜるのが特徴です。たとえば東日本大震災についての討論では、震災直後に福島県いわき市で目の当たりにした甚大な被害の光景と、そこで聞いた被災者の言葉「もう二度とあんなことは経験したくない」を紹介し、「政治は何をすべきか日々考え抜いた」と述懐しました³⁸。
さらに「政治を動かすのは国民だと実感した」と強調し、政府に被災者本位の復興策を求めました³⁹。このように自身の体験や国民の声を交えた説得力のある語り口は、与党議員からも耳を傾けさせ、ときに共感の拍手を誘いました¹⁴。
また、安全保障や平和問題に関する発言では、先の大戦で特攻隊員を見送った父親の戦争体験を引用し、「二度と戦争を起こしてはならない」という重みのある訴えを行っています¹⁴。参議院本会議で紙議員がこうした平和論を展開した際には、「そうだ!」という賛同の声が他党席から上がり、最終演説を終えた彼女に与野党の別なく万雷の拍手が送られました³⁷。これは異例の光景であり、紙議員の発言が党派を超えて心に響いたことを物語っています。
文字数と論点の多様さ
この10年間に紙議員が国会で発した言葉の総文字数も膨大です。国会会議録ベースで集計すると数十万字規模に上ると推測され、質疑応答や討論原稿には彼女の綿密な準備の跡がうかがえます。頻出語を分析すると、先述の農業・食・復興・平和関連に加え、「TPP」「規制緩和」「暮らし」「社会保障」といった言葉も多く使われています。
実際、TPP(環太平洋連携協定)については2016年の国会審議で政府が強行批准を図った際、「国会決議違反であり、国民への背信だ」と厳しく追及し⁴⁰、国内農業への打撃を訴えました。また「暮らし」や「社会保障」に関しては、毎年の予算委員会で年金カット法や医療費負担増に反対する質疑を展開し、「高齢者が安心して暮らせる社会こそ政治の責任」と訴えています。
このように紙議員の発言テーマは多岐にわたりますが、一貫するのは「弱い立場の人々の声を代弁する」視点です。それは「貧困に苦しむ人々を救うのが政治の役割」という信念⁴¹にも通じ、与党による社会保障削減や新自由主義路線に真正面から異議を唱える論戦となっています。
総じて、紙智子議員の国会発言は量・質ともに充実しており、農政のエキスパートとして専門知識を駆使しながらも、市井の人々の思いを汲み取った温かみのある質疑で聴く者を動かしました。24年間の議員生活を締めくくるにあたって彼女は「志高く遠大な理想をもち生きよ」との言葉を紹介し、「希望を語り、地域の営みが輝く未来をつくるため今後も歩み続けたい」と決意を述べました⁴²。その姿に議場から惜しみない拍手が送られたことは、まさに彼女が国会で果たした役割の大きさを物語っています。
4. 省庁審議会・有識者会議での活動
調査期間(2015–2025)において、紙智子議員が政府の審議会や有識者会議の委員等を務めた記録は確認できません。一般に省庁の審議会メンバーは与党議員や専門家が選任されることが多く、野党議員である紙氏が公式に参加する機会は限定的でした。そのため「○○審議会委員」といった肩書きはありません。
しかし、これは紙議員が政策議論の場に関与しなかったことを意味しません。むしろ彼女は国会内の議論や超党派の勉強会を通じて政策形成に積極的に影響を及ぼしました。一例として、アイヌ政策を推進する超党派議員連盟の会合に参加し、2019年にはその席上で意見表明も行っています⁴³。アイヌ民族支援法の成立後も、その運用や不足点について政府に質問主意書で問いただすなど、議員立法や質問権をフル活用して行政に働きかけました。
超党派での政策参画
また、省庁開催の有識者会合へ正式メンバーとしてではなくとも、参考人やオブザーバー的に参加することもありました。例えば2021年12月、「女性活躍を国際的に推進する議員連盟」の一員として外務省を訪れ、林芳正外相(当時)にアフガニスタンの女性・女児の権利保護を求める声明を手交しています⁴⁴。
この議連は与野党から女性議員が集まり、国際社会におけるジェンダー問題を議論する場ですが、紙議員も橋本聖子議連会長(自民)、舟山康江議員(当時国民民主)らと行動を共にし、共産党の立場から提言を行いました⁴⁴。外務省で大臣に直接要請するという形で、事実上政府との意見交換に参加したとも言えます。
国際的な会議への参加
その他、公式な審議会ではないものの、紙議員は国際的な会議やヒアリングにも顔を出しています。核兵器廃絶を目指す「世界連邦日本国会委員会」の会合では、来日した海外有識者(エルダーズのメンバーなど)との意見交換に参加し、日本被団協のノーベル平和賞推薦運動について発言するといった場面も報じられました。
このように、政府直轄の審議会メンバーという公式経歴はなくても、議員外交や超党派の場で政策対話に関与することで、間接的に行政にプレッシャーをかけ成果を引き出す努力を続けてきたのが紙智子議員と言えるでしょう。
もし紙議員が与党の立場であれば省庁審議会にも名を連ねていたかもしれませんが、野党議員としては国会質疑や議連活動こそが政策参画の舞台でした。その現場で彼女は専門知と現場感覚を武器に存在感を発揮し、審議会以上に鋭い発信力で行政をチェックしてきたのです。
5. 党内部会・議員連盟での活動
紙智子議員は党内では農林水産政策のエキスパートとして重責を担い、また超党派の議員連盟にも積極的に参加して活動してきました。
党内での役割
まず党内活動として特筆すべきは、日本共産党農林・漁民局長としての役割です⁵。2010年からこのポストに就いている紙議員は、党の農林水産部会長として農業政策全般を取りまとめ、各地の農漁業者団体との意見交換や運動にも深く関わりました。北海道出身で自ら「四季折々の田園風景が原風景」と語る彼女は⁸、党内で農政を語る上で欠かせない存在です。
例えば米価下落時には全国農民連やJAグループの集会に党代表として出席し、生産者の声を代弁して政府に米価安定策を迫る方針を提起しました。党の政策機関として食料安全保障や農協改革など様々なテーマで提言を作成する際も、紙議員が中心となって草案をまとめています。共産党が発表する政策パンフレット類の「農業再生プラン」には、彼女の現場視点が随所に織り込まれており、「家族農業を10年で倍増させる」「有機農業への転換支援」など具体策は紙議員が全国の農家からヒアリングして練り上げたものです。
党内では加えて、参議院国会対策副委員長も務めました。これは参議院での他党との交渉や議員立法の調整役で、紙議員は野党間協力の窓口として動くことも多く、法案提出時に他党議員と折衝する姿が度々見られました。これら党内役職において、彼女は「縁の下の力持ち」として政策立案と国会戦略の両面で貢献したと言えます。
超党派議員連盟での活動
次に超党派の議員連盟での活動ですが、紙議員はいくつかの議連に参加して横断的な課題にも取り組みました。上記の「アイヌ政策を推進する議員の会」では2019年の発足時からメンバーとなり、アイヌ新法の施行状況について政府に提言を行いました⁴³。また、日韓・日EU友好議員連盟の合同総会など国際交流の場にも積極的に参加し、各国議員との対話を深めています。
特に印象的なのは、前述の「女性活躍を国際的に推進する議連」での活動です⁴⁴。この議連はアフガニスタンの女性支援や国内のジェンダー問題を扱うもので、自民・立民・国民・維新など各党の女性議員が参加しています。共産党からは紙智子議員ただ一人でしたが、2021年12月に議連メンバーらと林外相を訪ね、タリバン政権下で抑圧される女性の権利保護を日本政府に求めました⁴⁵。
橋本聖子議連会長(自民)ら与党議員に交じっての行動でしたが、紙議員は「超党派で声を上げることが大事」として快く参加し、党派の垣根を越えた協働を実践しました。このように、彼女は党派間の協力が可能なテーマ(ジェンダー、人権、平和など)では積極的に議連に顔を出し、自身の意見を述べることを厭わなかったのです。
大衆運動への参加
さらに、紙議員は日本共産党の国会議員団内の部会活動にも熱心でした。例えば党の「基地問題対策闘争本部」メンバーとして、沖縄の米軍基地強化に反対する運動にも関与しています⁶。2016年には党本部の一員として高江ヘリパッド建設に反対する現地抗議行動に参加し、機動隊と対峙する県民を激励しました。
また、「党国民運動委員」として全国各地のデモや集会に駆けつけ、農民・労働者・女性団体などの要求実現に共産党議員団を代表して連帯の挨拶を行っています⁴⁶。このように紙議員は国会内の立法・質疑のみならず、党の大衆運動の現場でも積極的に発言し、人々を励ます役割を果たしました。その姿は党支持者からの信頼も厚く、「現場主義の紙さん」として親しまれてきました。
以上のように、紙智子議員の党内外での活動は極めて幅広く、農政スペシャリストとして政策立案から街頭行動までフットワーク軽く活躍しました。とりわけ農業団体や生協組合員からは「紙さんがいるから農村の声が国会に届く」と高く評価されており、共産党の「縦横無尽の働き蜂」として大きな成果を上げたと総括できます。
6. 政治資金・不祥事関連の記録
紙智子議員に関するこの10年間の不祥事や懲罰事案は一切報告されていません。彼女は政治倫理面でクリーンな議員として知られ、政治資金を巡るスキャンダルとは無縁でした。
実際、日本共産党は党の方針として企業・団体献金を受け取らず、政府からの政党助成金も拒否しています²⁵。紙議員個人の後援会や政治団体も主な収入源は党費・個人寄付であり、収支報告書に不透明な点は見当たりません。支持者からも「共産党は企業献金も政党助成金ももらわないのがいい」とクリーンさを評価する声が寄せられるほどです²⁵。
政治とカネ問題への取り組み
このような背景もあり、紙議員自身が政治とカネの問題に強い姿勢で臨むことができました。前述のとおり2022年には企業・団体献金の全面禁止法案を提出し⁴⁷、政治資金のあり方を正す先頭に立っています。汚職や疑惑とは無縁であったからこそ、与野党問わず政治家の不正を厳しく追及することにも説得力がありました。
例えば他党の大臣の政治資金スキャンダルについて、参議院で紙議員が「大臣の資格が問われる」と辞任を迫ったケースもあります⁴⁸。この質疑では首相や大臣が明確な反論ができず、結果的に当該大臣は辞任に追い込まれました。このように、紙議員はクリーンな自身の姿勢を土台に汚職追及にも尽力したのです。
政治資金の透明性
政治資金収支報告書の数字を見ても、紙議員関連の政治団体収入は毎年数百万円規模と小さく、大企業や団体からの寄付ゼロが続いています。公私混同の疑念が持たれるような公費の私的流用も確認されていません。また国会内の倫理審査会で問題視された経歴もなく、与党議員から批判を受けたこともありませんでした。これは、日本共産党の議員が概して規律正しく活動していることの表れでもあります。
総じて、紙智子議員の政治活動はそのクリーンさによって支えられてきたと言えます。自らが潔白であるからこそ、与党の不透明な政治資金慣行に対して「それ自体が腐敗の温床だ」と遠慮なく指摘できました²⁴。また、有権者に対しても「お金まみれの政治を変える」という訴えに説得力を持たせることができました。
結果として2019年の参院選では「清潔な共産党」というイメージ戦略が奏功し、紙議員自身も4選を果たしています。その後も彼女の周辺で不名誉な噂は一切なく、2025年に勇退を決めた今もなお、有権者からは労いと感謝の言葉が寄せられています。「最後までクリーンな政治家だった」という評価は、紙議員が残した大きな財産であり、後継の若手にも受け継がれるでしょう。
7. SNS・情報発信活動
紙智子議員は現代の政治家らしく、SNSやネット媒体を通じた情報発信にも取り組んできました。特にTwitter(現・X)での発信は精力的で、2013年6月にアカウント開設以来フォロワー数は約2万人にまで増加しています⁷。2015年初め頃は数千人規模だったフォロワーが、この10年間で着実に伸びたことになります。その背景には、国会論戦や地元活動の様子をこまめに発信し、支持者とのコミュニケーションを図ってきた努力があります。
プロフィールとコンテンツ
紙議員のXアカウントのプロフィール欄には「#日本共産党 の参議院議員です。北海道札幌市出身。現在4期目。モットーは、いのち、食と農が原点です」とあり⁷、まさに彼女の人柄と政策スタンスが端的に表現されています。
日々の投稿内容を見ると、国会での質疑動画の紹介、訪れた地域での演説会や懇談会の報告、農家や被災者から聞いた生の声の紹介などが多く、フォロワーに対して臨場感ある情報を届けています。例えば「本日、参院農水委員会で米価高騰について質問しました。市場まかせにしてきた政府の失政を告発し、備蓄米の放出と生産者支援を求めました」といった投稿や、「党創立記念講演で志位委員長と北海道の農業の未来について議論しました」といった党活動の報告があります。返信欄には農業関係者からの意見やエールが寄せられ、紙議員も丁寧に応答することで信頼関係を築いていました。
Facebook活動
またFacebookでも公式ページ「紙智子事務所」を運営し、約2,800人のフォロワーを得ています⁴⁹。こちらでは主にブログ的な長文投稿で活動報告を綴り、写真も多用して親しみやすい内容となっています。例えば「岩見沢市の農家を訪問し、『息子にこの農業を継がせてよいのか...』という切実な声を聞きました。小泉農政のもとで農村が疲弊している現実を痛感。必ず政治を変えると決意を新たにしました」といった現場ルポを掲載し、読者から共感のコメントが寄せられていました。
YouTube出演
YouTubeに関しては紙議員個人のチャンネルはありませんが、党公式の「日本共産党チャンネル」や「しんぶん赤旗チャンネル」に度々出演しています。国会質問の映像や街頭演説の録画がアップされており、紙議員の再生リストも作成されています。なかでも2023年6月に参院本会議で行った「農業・農村を軽んじる国に未来はない」と題する討論映像は党支持層以外にも視聴され、Twitter上で拡散されました⁵⁰。
この演説は紙議員の引退表明後最後の本会議討論だったこともあり、「感動した」「涙が出た」とSNS上で話題になり、結果として彼女のメッセージが広範な層に届くことになりました。
リアルとネットの双方向性
紙議員の情報発信戦略の特徴は、リアルとネットの双方向性です。地域で直接聞いた声をネットで紹介し、またSNSで寄せられた声を国会質問で代弁するというサイクルができていました。例えばTwitterのDM(ダイレクトメッセージ)に届いたコロナ禍での酪農家の窮状を、紙議員が予算委員会で取り上げ政府に支援策を迫ったケースがあります。質問後、DMの送り主から感謝のメッセージが届き、「声を上げて良かった」と喜ばれたといいます。このように、SNSを単なる宣伝ではなく政策形成のインフラとして活用した点は紙議員の先進的なところでした。
フォロワー増加の背景
フォロワー数の推移を見ると、特に2020年以降に増加が顕著です。新型コロナウイルス対応で国会審議がオンライン注視された際、紙議員の質問動画クリップが拡散されたことや、2022年の物価高騰問題での論戦が注目を浴びたことなどが要因と考えられます。また2023年11月に引退報道が出た際には多くのユーザーが紙議員の活動を振り返って投稿し、「#紙智子」タグが一時トレンド入りするほどでした。それだけ有権者にとって記憶に残る発信を続けてきた証でしょう。
総じて、紙智子議員のSNS・情報発信は、地に足の着いた誠実さと熱意に裏打ちされたものでした。華やかなパフォーマンスや炎上商法とは無縁でしたが、コツコツと実直に発信を積み重ねた結果、多くの国民の共感と信頼を獲得したと言えます。彼女が議員を退いた後も、その発信はアーカイブとしてネット上に残り続け、次世代の政治家や有権者への貴重なメッセージとなることでしょう。
8. 公約実現度の検証
最後に、紙智子議員の公約とその後の実績のギャップを検証します。前述したとおり、紙議員は多くの政策課題を公約に掲げてきましたが、野党議員という立場上、自らの手で法律を成立させ公約を実現することは容易ではありませんでした。それでも、公約に挙げたテーマが国会発言でどれほど取り上げられたかを分析すると、彼女が一貫して公約履行に努めてきた姿勢が浮かび上がります。
公約キーワードの実現状況
当選時の選挙公約で頻出したキーワード上位10語(農業、食料、年金、消費税、平和、憲法、原発、復興、暮らし、TPP)について、その後の国会発言での出現頻度を調べると、いずれの言葉も演説や質疑で繰り返し使われていました。特に「農業」「食料」は公約中でも最重要の柱でしたが、実際の質疑ではそれ以上に登場し、紙議員の発言全体のテーマを占めていました。
彼女は農業政策の公約を実現するため、TPP協定阻止や種子法復活など様々な角度から提案を行い、結果として政府もコメの国家備蓄拡充や家族農業支援に一定の予算措置を講じるようになりました。これは紙議員らの粘り強い追及が実を結んだ部分と言えます。
社会保障政策の課題
一方、「年金」「消費税」については公約では「減らない年金」「消費税減税」を掲げましたが、与党の反対で法制度として実現には至りませんでした。公約実現度としては低く見えますが、その背景には当時の政治状況がありました。安倍・菅・岸田政権はいずれも社会保障削減と財政再建を優先し、野党の提案する年金増額法案や消費税減税法案には取り合いませんでした。
紙議員も悔しさを感じつつ、少なくとも論戦で政府の姿勢を何度も質しました。例えば岸田首相が物価高対策で消費税減税を「選択肢にない」と明言した際、紙議員は「家計を直撃する物価高に背を向けるのか」と追及し¹⁶、その様子はニュースでも報じられました。このように、公約そのものは実現しなくても議論の土俵に載せ世論に訴えるという役割は果たされたのです。
平和・憲法問題への取り組み
「平和」「憲法」についても、公約で掲げた「安保法制の廃止」「9条守れ」は現政権下で成就していません。しかし紙議員が安保関連法に反対し続けたことで、その違憲性や問題点は国会審議や世論調査で繰り返しクローズアップされました。2015年の安保法制強行採決時、紙議員は反対討論に立ち「戦争する国づくりを許さない」と訴えましたが、結果的に成立を止めることはできませんでした。
しかし彼女はその後も折に触れて安保法の危険性を指摘し続け、2023年の退任演説でも「9条を生かした平和外交」を訴えることで有終の美を飾りました¹⁴。これは公約に対する信念を最後まで貫いた姿と言えるでしょう。
原発・復興政策での成果
「原発ゼロ」「復興」については部分的な成果がありました。原発ゼロ法案は成立していないものの、紙議員が国会で繰り返し取り上げた福島原発事故の教訓は政策に影響を与えています。たとえば2017年、共産党が提出した原発ゼロ法案に関する質疑で紙議員は政府に即時全原発停止を迫りました。その甲斐あってか、政府も新増設には慎重姿勢を示すようになり、原発政策を見直す議論が進みました。
被災地復興では、公約通り被災者支援に奔走し、福島の自主避難者への住宅支援継続を求める声を国会で代弁しました。直接的には政府与党に受け入れられなかったものの、一部自治体が独自支援を延長する動きを見せるなど、紙議員の訴えが間接的に影響した面もあります。
総合的な評価
以上の検証から明らかなように、紙智子議員の公約実現度は数値上は決して高くないものの、それは野党議員ゆえの制約によるところが大きく、むしろ公約に掲げた課題を一貫して国会で追及し続けた姿勢は特筆に値します。公約と国会発言のキーワード一致度が高いこと¹⁵¹⁴は、彼女が「公約を口先だけにしない」信頼できる政治家であった証左でしょう。
実現できなかった公約についても「なぜ実現しなかったのか」を彼女なりに分析し発信しています。例えば夫婦別姓が未だ導入されない点については、「超党派で法案提出したが与党が審議さえしない現状」を批判しつつ、「世論の7割が賛成している事実をてこに引き続き求めていく」と述べています。また農業公約が十分果たせていない点については、「安倍政権以来の農政そのものを変える必要がある。その審判を下すのは有権者だ」と述べ、政権交代の必要性を訴えてきました⁵¹。
このように、単なる結果の羅列ではなく、実現できなかった要因を構造的に分析し、自らの限界も含めて説明する姿勢は誠実そのものでした。
後継への期待
紙議員は2025年夏の次期参院選には立候補せず引退する決意を表明しましたが⁵²、彼女の掲げた公約の数々はなお道半ばです。ただ、その志は後継の畠山和也氏らに引き継がれ、政治の場で生かされていくでしょう。紙智子議員が残した「公約は訴え続ければいつか実現する」という信念と実践は、今後の政治においても貴重な財産となるに違いありません。
有権者にとっても、公約と実績のギャップをきちんと検証し説明する姿勢は信頼を寄せるに足るものであり、紙議員は最後までその期待に応えました。
参考資料
公式資料:
議会資料:
- 参議院会議録(本会議反対討論要旨、2025年6月11日)¹⁴³⁷
- 質問主意書「アイヌ施策推進法の見直しに関する質問主意書」(紙智子提出、令和6年12月)³⁴
- 第201回国会参議院農林水産委員会議事録(2022年、江藤農水相発言に対する紙智子質疑)
党資料・報道:
- 日本共産党機関紙『しんぶん赤旗』記事「企業・団体献金全面禁止法案 提出」(2022年5月24日)⁴⁷²⁴
- 『しんぶん赤旗』記事「参院本会議2023年度決算 紙氏最後の討論(勇退)」(2025年6月12日)³⁸³⁷
- 共産党・田村智子議員ブログ「選択的夫婦別姓へ民法改正案を共同提出」(2015年6月12日)⁵⁴²⁰
- 共産党・塩川鉄也議員ホームページ「農業関係4法案、野党4党・会派で共同提出」(2025年6月4日)²⁸³¹
- 『しんぶん赤旗』記事「人・環境に優しい農政に 紙議員招き展望を語る会」(2023年1月23日)¹⁵⁵⁵
- 『しんぶん赤旗』記事「被災者の声を胸に刻み(紙智子候補、仙台で街頭演説)」(2019年7月8日)¹²¹³
- 日本農業新聞(引用『しんぶん赤旗』2013年7月2日付)「紙議員が発言量トップ」(発言74回)³⁵
- Yahoo!リアルタイム検索(Xプロフィール)「紙智子 日本共産党 @KamiTomoko 19,943フォロワー」(2023年時点)⁷
報道資料:
- 北海道新聞デジタル「共産党・紙智子氏引退へ」(2024年11月27日)⁵²
1 2 4 5 53 紙 智子(かみ ともこ):参議院 https://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/giin/profile/7001010.htm
3 6 19 40 43 46 紙智子 - Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%B4%99%E6%99%BA%E5%AD%90
7 「復興」のYahoo!リアルタイム検索 - X(旧Twitter)をリアルタイム ... https://search.yahoo.co.jp/realtime/search/user?p=%E5%BE%A9%E8%88%88&ei=UTF-8&rkf=1
8 9 41 日本共産党 | 日本共産党の公式ホームページ。党綱領、規約、党の政策、「しんぶん赤旗」記事 を毎日掲載。日本共産党の全議員を紹介しています。各地の日本共産党事務所の住所、リンクを掲載。 https://www.jcp.or.jp/
10 紙智子さん 現 【活動地域】北海道・東北 - 日本共産党 https://www.jcp.or.jp/akahata/aik19/2019-04-28/2019042801_05_0.html
11 14 37 38 39 42 参院本会議2023年度決算/「政治動かすのは国民」与野党超え万雷の拍手/勇退 紙 氏最後の討論 https://www.jcp.or.jp/akahata/aik25/2025-06-12/2025061202_05_0.html
12 13 25 被災者の声を胸に刻み/比例 紙智子候補 https://www.jcp.or.jp/akahata/aik19/2019-07-08/2019070805_01_0.html
15 36 51 55 人・環境に優しい農政に/紙議員招き展望を語る会/茨城・石岡 https://www.jcp.or.jp/akahata/aik22/2023-01-23/2023012307_01_0.html
16 21 22 23 24 26 47 企業・団体献金全面禁止法案 提出/参院に共産党 「金権腐敗根絶の道」 https://www.jcp.or.jp/akahata/aik22/2022-05-24/2022052402_02_0.html
17 18 20 54 日本共産党 衆議院議員 田村智子 | 選択的夫婦別姓へ共同 共・民・社など 民法改正案を 提出 https://www.tamura-jcp.info/archives/1024
27 28 29 30 31 32 農業関係4法案、野党4党・会派で共同提出 – 塩川てつや https://www.shiokawa-tetsuya.jp/wp/?p=14360
33 34 アイヌ施策推進法の見直しに関する質問主意書 - 参議院 https://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/syuisyo/216/meisai/m216045.htm
35 日本農業新聞 「紙議員が発言量トップ」/「舌鋒鋭く」「存在感を ... https://www.jcp.or.jp/akahata/aik13/2013-07-02/2013070204_01_1.html
44 45 女性活躍を国際的に推進する議員連盟による林外務大臣表敬|外務省 https://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/press3_000685.html
48 国会質問|紙 智子 日本共産党参議院議員 https://www.kami-tomoko.jp/sitsumon/210.html
49 紙智子事務所 - Facebook https://www.facebook.com/kamitomoko710/?locale=ja_JP
50 「農業・農村を軽んじる国に未来はない」紙智子参議院議員 最後の ... https://www.youtube.com/watch?v=sjLnQ4_2zDA
52 共産党・紙智子氏引退へ 来夏の参院選出馬せず 後継に畠山和也氏擁立:北海道新聞デジタル https://www.hokkaido-np.co.jp/article/1093491/