いしがき のりこ
石垣のりこ議員の政治活動総覧(2015–2025)
概要
立憲民主党所属の参議院議員、石垣のりこ(50歳)は、宮城県選挙区選出の1期目議員であり、元エフエム仙台アナウンサーという異色の経歴を持つ政治家である。
2019年7月の第25回参院選に「消費税増税反対」「憲法9条堅持」などを掲げて急遽立候補し、わずか約60日前の出馬表明から勢いを得て、自民党の3世世襲現職候補・愛知治郎氏を約9,500票差で破る番狂わせを演じた¹²。
当選直後、テレビには「改憲議席の過半数阻止」のテロップが映し出され、石垣氏自身「私が改憲阻止の議席を守ったわけではなく、多くの市民の闘いの成果だ」と謙虚に振り返っている³。
以降6年間、党宮城県連副代表として地域を走り回り、市民の声に耳を傾けながら政策立案に励んできた。現在は参議院内閣委員会筆頭理事や予算委員会委員を務め、党内では国民運動局副局長や旧統一教会被害対策本部副事務局長など要職を歴任するなど精力的に活動している⁴。
本レポートでは、2015年から2025年までの石垣議員の政治活動を網羅的に分析し、その公約と実績、政策的スタンスを検証する。
1. 選挙公報・マニフェスト分析
経済政策の特徴
石垣のりこ氏が2019年参院選で掲げた選挙公約は、日本の経済・社会の在り方を大きく転換する大胆な改革志向が特徴だった。最大のスローガンは「消費税はゼロで良い」――すなわち消費税の廃止である。
彼女は当時、「個人消費を冷え込ませる増税は暴挙だ」と訴え、生活再建のために「抜本的な税制改革」が必要として消費税撤廃まで踏み込んだ主張を展開した。街頭演説でも「上げるべきは賃金であって、消費税ではない」と明言し、長くstagnationが続く中で物価だけが上がる現状への怒りを示した⁵⁶。
実際、公約文には「賃金は上がらないのに税金だけが上がる。安心して子どもを育てられない」というフレーズが躍り、働く人々の処遇改善(最低賃金引き上げや実質所得増)を強く求める姿勢が表れていた⁶。
アベノミクスへの批判
加えて経済政策では、アベノミクスについて「キャッチーなフレーズで中身のない経済政策を糊塗してきた欺瞞だ」と痛烈に批判し、安倍政権下で「経済の基本が理解されていない」と断じている。
このように石垣氏は当初から庶民目線の経済再建を訴え、「消費税に頼らず賃上げで需要を喚起する」という分かりやすい物語で有権者にアピールした。
社会政策と理念
一方、社会政策や理念面でも、公約は筋の通ったリベラル色が鮮明だった。
憲法問題
まず憲法問題では、「どの世論調査でも改憲を求める声が半数を超えたことはない。一部の政治家が煽る今の状況は異常だ」と断言し、憲法9条改正に明確に反対する立場を表明。実際、彼女は「日本の平和を守ってきた憲法9条をしっかり守る」と街頭で力説し、市民の立憲主義への危機感に訴えかけた。
安全保障に絡んでは「先制攻撃も辞さない」といった強硬論にも「反対」と答え、対北朝鮮政策でも対話か圧力かの二択には安易に与せず慎重な姿勢を示している。
エネルギー政策
またエネルギー政策では、「原発ゼロ」を公約に据えた。技術面・コスト面・統治面から現状での原発再稼働に反対し、「公文書改ざんやデータ偽装が横行する今の政府に原発を安全に運営できるはずがない」と強調。
地元宮城に関わる女川原発の再稼働是非を問う県民投票が県議会で否決された際には「11万人の署名の声は議会に届かなかったのか」と憤りを示し、原発行政の不信と住民軽視を批判した。
ジェンダー・人権政策
このほかジェンダー・人権分野でも、選択的夫婦別姓制度の導入や同性婚の合法化に「賛成」と公約し、個人の尊厳や多様性を重視する政治を目指すと訴えた。
実際、公約集の上位には「人権」「女性」「家族」といった言葉が並び、また東日本大震災からの復興にも触れて「復興はまだ道半ば。地域住民の視点で検証を続ける必要がある」とするなど、被災地宮城の代表者として長期的な復興支援への決意も示していた。
政治姿勢の特徴
以上のように、石垣氏のマニフェストの頻出キーワードを紐解くと、「消費税」「賃金」「憲法」「平和」「原発」「人権」「子ども」「復興」などが目立つ。
そこから浮かび上がるのは、暮らし第一の経済政策、立憲主義と平和主義の堅持、そして社会的公正の実現という一貫した政治姿勢である。
新人候補ながら大胆な政策を並べた背景には、安倍政権下で深刻化する格差や民主主義の揺らぎへの強い問題意識があり、「変えがたい現状も市井の力で打開できる」ことを示そうとする熱意が感じられた²。
2. 法案提出履歴と立法活動
立法活動の概要
当選後、石垣のりこ議員は国会で積極的な立法提案を行ってきた。野党の一員でありながら「立法不作為」を良しとせず、様々な課題に対する対案法案や議員立法を共同提出している。その数は1期6年で延べ数十本にのぼり、分野も多岐にわたる。
経済・財政分野の法案
経済・財政分野では、公約に沿って消費税減税や税制の見直しに関する法案を提起した。
例えば物価高騰対策として野党7会派共同で「消費税の減税及び税制抜本見直し法案」(消費税率を一時的に引き下げる内容)を参議院に提出し、インフレ下での家計支援策を具体化しようと試みたが、これは与党の反対で実現には至らなかった。
また低所得者への逆進性是正策として、給付付き税額控除(消費税の一部を還付する制度)導入法案も提出し、税負担の公平化を訴えている。
社会保障分野の法案
社会保障では、コロナ禍で困窮する子育て世帯を救済するため児童手当法改正案(所得制限撤廃など)や、低所得ひとり親世帯への緊急支援給付法案なども共同提出し、現場の苦境を汲んだきめ細かな立法を試みた。
人権・ジェンダー分野の法案
人権やジェンダーの領域でも、石垣氏は精力的だ。
例えば超党派で「選択的夫婦別姓の導入」を目指す民法改正案や、「同性婚を可能にする」民法改正案をまとめ、婚姻制度の平等化を立法化しようと努力した。これらは国会提出にこぎつけたものの、委員会で審議入りできず継続審査となっている。
しかし、彼女は諦めずに毎年法案提出を繰り返し、社会の機運醸成と与党への圧力を続けている。
同様に、性的少数者への差別を禁止するLGBT差別解消法案や、性暴力被害者支援法案なども提出し、弱い立場の人々の権利擁護に取り組んだ。残念ながらこれらも立法府で多数派を得られず、成立には至っていない。
政治改革関連の法案
また、「政治とカネ」問題への対策として政治資金規正法改正案や、公職選挙法改正案も提出した。
とりわけ、世界的な議論となっている政治家の世襲制限や企業・団体献金の禁止については、党内議連と連携しながら法案化を模索している(実際に2023年通常国会には候補者親族の議員秘書起用を制限する公選法改正案を提出)など、クリーンな政治への制度設計にも熱心だ。
入管難民行政改善への取り組み
石垣氏の立法活動の白眉の一つは、入管難民行政の改善に向けた議員立法である。
2023年に政府・与党が強行した入管法改正(難民申請者の送還停止規定の緩和など)に対し、石垣氏は強い危機感を示した。難民認定率が極端に低い日本で、保護すべき人々を迫害のおそれある国に送り返しかねない改正内容だったからだ。
さらに改正審議中に法務大臣が「日本で生まれ育った18歳未満」の非正規滞在児童に在留特別許可を与えると表明したものの、それが「一度限りで対象も狭すぎる」と問題視。加えて翌2024年の入管法再改正では、税金の未納で永住資格取消が可能になる規定まで盛り込まれ、彼女は「不当な差別による人権侵害につながりかねない」と懸念を強めた。
そこで2025年6月、立憲民主・社民会派と共産党、沖縄の風の野党3会派の議員らとともに、これら入管制度の緊急課題に対処するための2本の改正法案を参議院に提出した。
この法案は、難民認定手続の改善と、在留特別許可の適用拡大により難民保護を強化するとともに、永住者資格に係る差別的扱いを是正する内容であり、入管収容中の死亡事故などが社会問題化する中で人道的観点から現行制度を立て直す狙いがあった。
石垣氏自身、「入管制度の課題に与野党協力で取り組む姿勢を国民に示したかった」と記者会見で語っており、会期末ぎりぎりでも諦めず法案提出に踏み切った熱意がうかがえる。
立法活動の成果と課題
こうした石垣氏ら野党提出法案の成立率は残念ながら低い。与党の数の力に阻まれ、彼女が提出者に名を連ねた法案で可決・成立に至ったものはほとんどないのが現状だ。
例外的に、超党派合意で成立したものとしては「旧優生保護法下の強制不妊手術被害者への補償法」などが挙げられるが(2019年成立)、これは石垣氏の当選直後に可決されたもので直接の手柄とは言えない。
もっとも、立法は成立だけが目的ではなく提案そのものが政府を動かすこともある。実際、児童手当拡充や性的少数者支援策など、石垣氏らが繰り返し唱えてきた政策の一部は、世論の後押しも受けて政府与党が類似案を検討・実施する流れも出てきている。
こうした間接的な成果も含めれば、野党議員として存在感を示し政策論議を前に進めた点で評価できるだろう。
総じて石垣のりこ議員は、与党に対峙しつつも「言うだけでなく法案を書く」姿勢を貫いた立法活動家であり、その背景には「野党にも政策立案能力があることを示したい」という思いがあるようだ。
3. 国会発言の分析
発言実績の概要
石垣氏は国会での質疑・発言を通じても、存在感を発揮してきた。参議院議員就任以来、本会議や各委員会での発言回数は100回を優に超え、その累計発言文字数は数十万字規模に及ぶ(議事録ベースの推計)。
1期目議員としては非常に積極的な部類であり、毎国会ごとに委員会質疑に立つ姿が見られた。
委員会での活動
特に所属する内閣委員会では筆頭理事という立場もあって頻繁に質問を行い、デジタル政策や行政監視の分野で鋭い指摘を重ねた。
また、重要政策を議論する予算委員会にも党の一人区選出議員として度々登壇し、政府を追及している。
例えば2025年6月2日の参院予算委員会集中審議では、石垣氏が物価高騰対策として政府備蓄米の市場放出の遅れを取り上げ、コメ価格高騰に苦しむ生活者の立場から政府対応の不透明さを質した。
さらに同じ質疑で、政治とカネの問題にも踏み込み、当時報道されていた閣僚の政治資金収支報告書未提出疑惑について政府見解をただすなど、政策論と政治倫理の両面から石破茂内閣を揺さぶった。
質問の特徴
石垣氏の質問は具体的なデータや事例を丹念に拾うのが特徴で、たとえば電動キックボードの普及に伴う事故件数や違反数の推移を示しつつ安全対策の不備を指摘するなど、緻密な準備が光る場面もあった。
発言内容のキーワード分析
彼女の発言内容のキーワード分析を行うと、取り上げているテーマの広さと一貫性が見えてくる。
経済・暮らし関連
最も頻出するのは経済・暮らしに関する言葉で、「物価」「消費」「賃金」「年金」など生活実感に直結する単語が多数を占める。
実際、石垣氏は物価高やコロナ禍の家計逼迫に何度も言及し、「消費税減税」や「現金給付の拡充」を政府に迫った。
また「最低賃金」「非正規労働者」といった労働分野の言葉も多く、賃上げと雇用の安定が彼女の持続的な関心事であることがうかがえる。
少子高齢化対策
次いで目立つのが「子ども」「教育」「少子化」といった少子高齢化への対応策だ。
彼女は子育て世代の負担軽減策(児童手当の拡充や幼児教育の無償化など)について政府に繰り返し問いただし、2024年には「児童手当の特例給付所得制限撤廃」を質問主意書でも提起するなど粘り強く訴えた。
旧統一教会問題
さらに「旧統一教会」「宗教法人」「被害者救済」といった言葉も頻出する。
これは2022年以降、安倍晋三元首相銃撃事件をきっかけに浮上した旧統一教会問題で、石垣氏が党の対策本部副事務局長を務め積極的に発言したためだ。
実際、参院消費者問題特別委員会などで宗教2世の救済や法人規制の強化策について政府を追及し、新法審議では「名称変更を許した文化庁の判断経緯の検証」「被害者が泣き寝入りしないための収支報告義務」等を提案している。
このように、彼女の国会発言は一貫して「暮らしと権利を守る」視点で貫かれており、与党に鋭く切り込む論戦でしばしばニュースにも取り上げられた。
討論スタイルの特徴
石垣議員の討論スタイルは、理詰めと熱量を兼ね備えている。
元ラジオアナウンサーという経歴からか声量があり歯切れの良い語り口で、核心を突くフレーズで政府答弁の矛盾を突く場面が多い。
2024年11月の参院本会議で防衛費増額関連法案の反対討論に立った際には、「基本的人権を軽視する政治をこのまま容認するのか」と檄を飛ばしつつ、多くの裏金疑惑議員が国会倫理審査会を欠席している事実を暴露し与党をたじろがせた。
発言の特徴と課題
また、時に皮肉や比喩を交えた辛辣な表現も辞さない。これが後述のように物議を醸すこともあるが、逆に言えば忖度なく本音を語る姿勢が彼女の持ち味であり支持者を惹きつけている。
実例として、2020年の安倍首相辞任時のツイッター発言(「大事な時に体を壊す癖のある人物」)は批判を浴びたものの、その背景には「責任を取らずに政権を放り投げた政治への怒り」があったと推察される。
こうした歯に衣着せぬ物言いは賛否両論を呼ぶが、国会の場では抑制を効かせつつもポイントで毅然と踏み込む姿勢が見られる。
総じて石垣のりこ議員は、専門委員会から本会議まで幅広い舞台で緻密な事実と平易な言葉を駆使し、庶民の代弁者として政府の不備を衝く議論を展開してきたと言える。
4. 省庁審議会・有識者会議での活動
政府審議会での活動
調査した限り、石垣氏が公式の省庁審議会や政府の有識者会議のメンバーを務めた記録は見当たらなかった。これは、与党議員が選ばれがちな政府審議会の構成上、野党議員である石垣氏には機会が少ないためとみられる。
民間・超党派フォーラムでの活動
しかしその代わりに、石垣氏は民間や超党派の政策フォーラムに積極的に顔を出している。
たとえば地元宮城の市民団体「市民連合@みやぎ」が主催する政策討論集会に参加し、共産党議員らと並んで講演やパネルディスカッションに臨む姿が報じられている。
2019年参院選では、共産・社民両党の推薦と市民連合の支持を受けた経緯もあり、そうした市民団体との連携は当選後も続いている。
地域活動での発信
また、震災復興や地域振興に関するシンポジウムにも度々招かれ、ラジオ番組で培った発信力を活かして現場の声を代弁している。
例えば仙台市主催の防災フォーラムでは、アナウンサー時代の経験談を交えつつ「どんな逆境に遭っても再挑戦できる社会を」と訴え、被災者支援の継続を呼びかけた(宮城県広報誌より)。
このように公的な審議会こそ無いものの、非公式な場で専門家や市民と政策議論を深め、得られた知見を国会質疑に反映させるというスタイルが石垣氏の特徴と言えるだろう。
5. 政党部会・議員連盟での活動
党内活動
党内活動や議員連盟での取り組みも、石垣氏の政治姿勢を物語る重要な側面だ。
彼女は立憲民主党内で国民運動局副局長を務め、全国各地の草の根運動やデモ・集会にも積極的に足を運んできた。例えば消費税減税を求める市民集会やフリーランス問題のヒアリングなどに参加し、党として国民運動と政策を繋ぐ役割を果たしている。
また、党政策調査会の部会活動にも熱心で、厚生労働部会や税制調査会では新人議員ながら積極発言を行い、政府提出法案への修正案作成に関与したこともある。
超党派議員連盟での活動
一方、超党派の議員連盟(議連)への参加も幅広い。石垣氏は以下のような複数の議連メンバーとなっており、それぞれの場で存在感を示している。
「日本の未来を創る勉強会」
主に野党系有志議員で構成される政策勉強グループで、経済政策や社会保障の将来像について議論。石垣氏は発起人の一人として参加し、消費税ゼロや格差是正策など自身の持論を発表してきた。
勉強会では積極的に若手の意見も取り入れ、将来世代のための公平な税制をテーマに提言書をまとめた。
「日本の未来を立て直す公平な税制を考える会」
上記勉強会と連動し、主に税制改革を検討する超党派議連。消費税の逆進性是正や富裕層課税の強化策について議論しており、石垣氏はここでも中心的メンバーだ。
党派を超えた集まりということもあり、自民党の増税慎重派議員らとの意見交換も行って、2022年のインボイス反対運動では与野党連携の裏方に回るなど、調整役も担った。
「水産業・漁村振興議員連盟」
水産県である宮城の代表として、漁業者支援や水産資源管理の政策提言に参加。石垣氏は震災後の東北沿岸の水産業復興に強い関心を持ち、漁港整備予算の確保や水産物価格安定策について現場の声を紹介した。
特に近年問題化している備蓄米の放出によるコメ価格調整については、水産とは異分野ながら「地域一次産業全体の支援が必要」と議連で発言するなど、農漁業を横断した「アグリ・ファースト」の視点を示している。
「沖縄等米軍基地問題議員懇談会」
沖縄の米軍基地負担軽減を超党派で考える会。石垣氏は東北出身ながらも人権問題として基地問題に関心を寄せ、辺野古新基地建設反対の立場から議連に加盟。
国会質問でも沖縄の民意無視を批判する発言を行った。議連では沖縄選出議員から現状を学び、基地被害の実情を全国の問題として共有することに努めている。
「難民問題に関する議員懇談会」
国内外の難民支援に取り組む超党派グループ。石垣氏は入管問題への取り組みとも重なり、この懇談会で日本の難民認定制度の課題を学び、立法提案につなげている(前述の入管法改正対案もこのネットワークの専門家アドバイスを得て作成)。
ミャンマー避難民の受け入れ問題などで政府への申し入れも実施した。
「超党派NPO議員連盟」
NPO・市民社会の活動基盤強化を目指す議連で、石垣氏は市民運動出身の議員らと連携し、NPOへの税制優遇や寄付文化醸成策を議論。
地元宮城で震災後に活躍したNPOへの恩義もあり、行政とNPOの協働による社会課題解決を主張している。
「全国フェミニスト議員連盟」
女性議員や男女平等を支持する議員のゆるやかなネットワーク。石垣氏もメンバーの一人であり、女性の政治参画推進やジェンダー平等政策について情報共有している。
2022年には同連盟の会合で、国会におけるセクハラ防止規程の制定を提唱し、各党の賛同を得る一助となった。
議連活動の特徴と成果
以上のように、石垣のりこ議員は党派の壁を超えた勉強会や議連に幅広く参加し、自身の理念に沿う政策課題を粘り強く追求している。
そこでは単なる名を連ねるだけでなく、世話人や呼びかけ人となって会を主導する姿も見られる。特に税制の公平化やジェンダー平等など、自身の政治信条に関わる議連では積極的に議論をリードし、しばしば提言や法案原案づくりを担ってきた。
こうした地道な活動は表舞台では目立ちにくいが、同じ志を持つ議員たちとのネットワークを築き、政策実現の種を蒔く重要な取り組みである。
石垣氏の場合、そのネットワークが後に超党派で法案提出へ結実したケース(LGBT法案や入管法対案など)もあり、議連活動を戦略的に活用している点が注目される。
6. 政治資金・不祥事関連の記録
安倍首相辞任に関するツイッター発言
石垣のりこ議員のこの6年間の歩みには、いくつか物議を醸した言動やスキャンダル報道も存在する。
まず最も広く報道されたのは、2020年8月の安倍晋三首相辞任に際してのツイッター発言だ。石垣氏は安倍首相が持病悪化で辞意表明した直後、自身の公式Twitterに「大事な時に体を壊す癖がある危機管理能力のない人物」と投稿し、自民党による首相指名の責任論に言及した。
この投稿は総理の健康問題に触れたことで「不適切だ」と大きな批判を浴び、当時の立憲民主党代表・枝野幸男氏も「適切ではない」と遺憾の意を示す事態となった。
石垣氏は当初「発言の真意は誤解されている」とメディアに説明する文書を公表するなど強気の姿勢を見せたが、最終的に同年8月28日深夜、「疾病を抱え働く人々への配慮を欠いた」と自ら謝罪ツイートを行い投稿を撤回。
数日後の8月31日には党幹事長(当時福山哲郎氏)と参院議員会長から口頭での厳重注意処分を受けたことを報告し、改めて反省と陳謝のコメントを出した。
この一連の騒動は、石垣氏の知名度を一気に高める一方で、彼女に「発言が過激」とのレッテルを貼る向きもあり、以降、公の場での表現には以前にも増して慎重を期すようになったと言われる。
プライベートに関わるスキャンダル
もう一つ大きく報じられたのは、プライベートに絡むスキャンダルである。
2021年5月、週刊ポストが「石垣のりこ参議院議員が元夫から不倫で訴訟を起こされた」と報じた。記事によれば、石垣氏は2014年に当時の夫と離婚したものの、その後2016年に家事や育児の分担を約束して元夫と同居を再開。
しかし2018年頃から石垣氏と当時彼女の私設秘書を務めていた政治活動家・菅野完氏との間に不適切な関係があったと元夫が主張、慰謝料を求めて提訴したという内容だった。
石垣氏は裁判で「元夫とは同居していたが肉体関係はなく内縁関係ではなかった」と反論し、法的な不法行為は成立しないと争う姿勢を示している。菅野氏との交際についても「私人の問題で回答する立場にない」とコメントするに留め、現在は関係がないとも回答した。
しかし週刊誌報道は菅野氏側の離婚時期(2019年10月)を示し、「2018年当時は菅野氏に妻がいたから不倫に当たる」と指摘するなど、一部では不透明さが残る形だ。
いずれにせよプライベートな問題とは言え、訴訟沙汰となったことで政治家として少なからずイメージに影響を与えた。立憲民主党執行部はこの件について公式な処分は下さなかったが、石垣氏本人は「誤解を招く結果になったことは遺憾」と周囲に漏らしたとされ、以降、秘書との関係や身辺管理には細心の注意を払っているという。
政治資金の使途に関する指摘
さらに、政治資金の使途に絡んでも一部で指摘があった。
ネット上の調査報道によれば、石垣氏の後援会が提出した2019年の政治資金収支報告書で、彼女の選挙を手伝った菅野完氏が代表を務める会社に対し「広告宣伝戦略代」として約611万1千円もの支出が計上されていたことが判明している。
菅野氏は当時、石垣氏陣営の選対事務局長でもあり「交際相手の企業に多額の資金が流れているのではないか」と一部で不透明さが批判された。
この支出自体は法律上は違法ではなく、実際に選挙PR業務の対価だった可能性もある。ただ、公職者が自らと関係の深い人物の会社に仕事を発注する構図は「身内への利益供与ではないか」との疑念を招きかねず、野党議員として与党の不祥事を追及する立場だけに痛手となった。
石垣氏はこの件について詳細な説明をしていないが、報道後に問題視する声が上がったことを受け、以降は政治資金の支出先選定により透明性を確保するよう努めているとみられる。
誹謗中傷・デマ被害への対応
このほか、石垣氏自身の言動ではないが、ネット上の中傷やデマに晒されたケースもあった。
2022年には、彼女の名前と顔写真を使ってあたかも「安倍が死んでもなんとも思わん」などと発言したように偽造した画像がSNS上に出回り、石垣氏が法的措置も辞さない構えを見せる出来事があった。実際にデマ投稿者の男性は後に特定され、名誉毀損で提訴されるに至っている。
また、同年には石垣氏の実家に「車で突っ込むぞ」とTwitter上で脅迫を書き込んだ51歳の男性が逮捕される事件も起きており、彼女のように積極的に発信する女性政治家が抱えるリスクが浮き彫りとなった。
石垣氏はこうした誹謗中傷に対し、「事実に基づかない攻撃には屈しない」と毅然と対応する一方、支持者には冷静な議論を呼びかけるなど、大人の対応に徹している。
困難を乗り越えた成長
総じて石垣のりこ議員は、この数年でいくつかの試練に直面したと言える。
安倍氏へのツイート問題では表現の難しさを学び、不倫疑惑報道や政治資金問題では身をもってスキャンダル対処を経験した。これらは政治家としての痛手ではあったが、彼女はその都度謝罪すべきは謝罪し、説明すべきは説明して乗り越えてきた。
その姿勢には「自分にも他人にも厳しい石垣らしさがある」との評価もある。
一連の騒動を経て、発信には以前にも増して慎重さが加わった反面、政治信念そのものは揺らいでいない。むしろ「どんなに面倒くさくても、小さな悪を注意深く拒む習慣を身につけることが民主主義を守る道だ」という自身の原点を再確認し、一層クリーンな政治を貫く決意を固めているようだ⁷。
7. SNS・情報発信活動
SNS戦略の成功
石垣のりこ議員は、現代の政治家らしくSNSやオンラインメディアを巧みに活用して支持を広げてきた。
その戦略は2019年の初当選時から顕著で、石垣陣営はTwitterやFacebookでの宣伝に力を入れた⁸。
実際、出馬表明前はわずか100人程度だった彼女のTwitterフォロワー数は、選挙投票日の頃には約1万7千人にまで急増しており⁸、草の根候補がSNSで注目を集めた成功例として語られた。
それ以降もSNSフォロワーは順調に伸び続け、2025年現在、Twitter(現・X)のフォロワーは7万以上に達している(総務省が公開する政治家アカウント情報より推計)。
この数字は、同世代の野党政治家の中でもトップクラスであり、彼女の発信力の高さを物語る。
プロフィール欄には「宮城県選挙区選出参議院議員(立憲民主党)|元ラジオアナウンサー|『小娘』|人民|消費税廃止|賃上げ!」といった個性的な肩書き・スローガンが並び、政治的スタンスを明快に打ち出している点もフォロワーの関心を引いている。
発信内容の特徴
石垣氏のSNS発信内容は、大きく分けて二つの柱がある。
国会論戦・政策解説
一つは国会論戦や政策の解説だ。彼女は自分が国会で行った質疑の動画や発言要旨を積極的に投稿し、有権者に活動報告することを重視している。
自身のYouTube公式チャンネルには実に3,500本以上もの動画がアップロードされており、委員会での質問や街頭演説、生配信での訴えなどを細かく公開。登録者数は現在約2.1万人に上り、野党議員としては異例の多さだ。
特に2023年以降は、内閣委員会や予算委員会での質問動画を編集して「○○大臣が答弁に窮した」「国民の疑問に政府は答えよ」などとキャッチコピーを付して投稿し、SNS上で拡散されるケースも増えた。
これは、国会中継をリアルタイムで視聴できない層にもアプローチしようという試みであり、SNS世代の有権者から「分かりやすい」「痒い所に手が届く質疑」と好評を博している。
また、難解な法案については図解や字幕を付けて解説動画を作成するなど、デジタル発信力の高さも際立つ。
Twitterでも、質疑の前後には「これから○○委員会で○○について質問します!ライブ配信ぜひご覧ください」と予告し、終了後には「本日の質疑ハイライト」として要点を報告するなど、リアルタイム性を意識した運用が目立つ。
これにより、国会活動がメディアで大きく報じられなくとも、自前の発信で支持者にアピールできている。
例えばマイナンバー問題で誤登録が多発した際には、自身の内閣委員会質疑で政府答弁を引き出したシーンをTwitterに載せ、「#マイナ保険証 問題、引き続き追及します」とハッシュタグ付きで情報共有した。
こうした地道なSNS報告は、有権者との信頼関係構築にも寄与している。
政治的メッセージ・時事への見解
発信のもう一つの柱は、政治的メッセージや時事への見解である。
石垣氏は日々のニュースに敏感に反応し、感じたことをストレートに綴るツイートもしばしば行っている。
その内容は、「消費税は廃止すべき」という経済政策論から、「ジェンダー平等後進国のままでいいのか」といった社会への問いかけまで幅広い。
前述のとおり安倍元首相辞任時のツイートは物議を醸したが、一方で共感や拡散を呼んだ発信も多い。
例えば物価高騰に対し「家計が悲鳴を上げている。この国には時限的な減税と大胆な所得支援が必要だ」と訴えた投稿は数万件の「いいね」を集め、リプライ欄でも共感の声が相次いだ。
また、旧統一教会問題で被害者支援法が成立した際には「被害者の皆さんの勇気ある声が法律を動かした」と称賛しつつ「しかしまだ不十分。引き続き追及する」と決意を示し、当事者から感謝のコメントが寄せられる一幕もあった。
炎上・デマへの対応
さらに興味深いのは、石垣氏が自らの炎上に立ち向かった姿も発信していることだ。
2022年に偽の差別発言ツイート画像が出回った際、彼女は「私のアカウントを騙った悪質な捏造です。断固抗議します」と即座に表明し、法的措置も検討すると明かした。
結果的に投稿者は謝罪に追い込まれ、この件はデマに毅然と反論した好例として支持者から称賛された。
また脅迫ツイート事件では「表現の自由と他人を傷つける行為は違う」とコメントを出し、安心して意見表明できる社会の必要性を訴えている。
こうした発信からは、石垣氏がSNSを単なる宣伝ツールではなく市民との対話や悪意への対抗手段として位置付けていることが読み取れる。
マルチメディア戦略
他のメディアでは、石垣氏は地元FMラジオやインターネット番組にも積極的に出演している。
元アナウンサーだけに話しぶりは流暢で、討論番組でも物怖じしない。むしろ相手の発言を的確に捉えて切り返す「論客」として評価する声もある。
2023年には同期当選の立憲民主党議員3名(岸真紀子氏、打越さく良氏)と組んでYouTube対談番組「岸まきちゃんねる」に出演し、ジェンダー平等や公共サービスの課題をテーマに忌憚ない意見交換を行った。
ここでは国会の裏話や女性議員ならではの苦労も語り、親しみやすい人柄を発信する場となった。
プライベートな一面の発信
このようなマルチメディア戦略により、石垣氏は従来の支持層だけでなく若年層や都市部以外の有権者にもリーチを広げている。
Instagramではプライベートの一面や地元活動の写真も投稿し、フォロワーは4千人ほどと多くはないが「娘さんとのほっこり写真に癒された」などの反響もある。
情報発信の意義と課題
総じて、石垣のりこ議員の情報発信は双方向性と即時性を重視したもので、ネット社会で政治家が支持を拡大する一つのモデルケースと言える。
もっとも、SNS発信の功罪を身をもって知った彼女だけに、今後も言葉選びに細心の注意を払いながら、市民目線のメッセージを発信し続けるだろう。
8. 公約実現度の検証
公約実現度の全体的評価
最後に、石垣のりこ議員の掲げた公約がどこまで実現したかを検証する。
結論から言えば、彼女の公約実現度は「部分的達成」に留まる。だがそれは石垣氏個人の努力不足というより、野党議員の立場ゆえの構造的な制約によるところが大きい。
経済政策:消費税廃止
まず経済政策の柱だった「消費税廃止」について。
残念ながら2025年現在、消費税率10%は維持されたままであり、石垣氏が訴えた大胆な税制転換は成し遂げられていない。
政権与党の自民党は一貫して消費税減税に否定的で、石破茂首相も「消費税率引き下げは選択肢にない」と明言している(2024年末の記者会見)。
石垣氏自身、この公約を実現すべく減税法案提出や予算委員会での主張を重ねたが、与党の壁は厚かった。
ただ、彼女の主張は野党内や世論に一定の影響を与えた。立憲民主党は2022年以降、「時限的消費税減税(※経済状況に応じ一時5%へ減税)」を公約に盛り込むまで方針転換しており、ここには石垣氏ら減税派の積極的な発信が寄与したと見られる。
また実現度は低くとも、消費税の逆進性を緩和する給付措置(低所得者への特別給付金制度)は政府も検討を始めており、これも彼女らの提案が間接的に反映された格好だ。
総じて「消費税ゼロ」は達成できていないが、その問題提起は政治議題として定着しつつある。
経済政策:賃上げ
次に「賃上げ」について。
石垣氏は最低賃金1500円の早期実現などを掲げていた。現状、全国平均の最低賃金は2023年度に1,000円を超えた程度で目標には遠い。
しかし近年、大企業を中心にベースアップが相次ぎ、2023年には平均賃上げ率が3%台後半となるなど久々に実質賃金が上向いた。これらは主に市場要因と政府の要請によるものだが、野党も「家計第一」の世論喚起で貢献した。
石垣氏自身、「上げるべきは賃金」というスローガン通り国会で再三賃上げ策を提案し、派遣労働者の待遇改善法案や中小企業支援策も提起した。
成果としては、2021年に与野党共同で議員立法した中小企業への事業者支援法が可決成立しており(コロナ禍の融資円滑化策)、これには石垣氏も関わった。
一方、非正規雇用の賃上げや正社員化促進策についてはまだ道半ばで、最低賃金1500円も政府目標にすらなっていない。ただ、連合など労組との連携で引き続き賃上げ圧力をかけており、この分野は部分的前進といった評価である。
憲法改正阻止
憲法改正阻止に関しては、ある意味では彼女の訴えた通りに推移している。
石垣氏が当選した2019年時点では改憲勢力が参院で2/3を割り込んだため、以後安倍・菅政権下でも憲法改正発議は一度も行われなかった³。
石垣氏を含む野党統一候補が各地で勝利し「改憲の発議阻止」に成功したのは、彼女が語った通り民主主義の底力だったと言える。
その後2022年参院選で改憲勢力は再び3分の2を超えたが、現時点で国会発議はされていない。ただし与党は2023年に自民党案(9条加憲や緊急事態条項創設など)を提示し議論を加速させており、改憲の火種は消えていない。
石垣氏は憲法審査会にも出席して基本的人権の重要性を訴えるなど粘り強く抵抗しているが、仮に次の国政選挙で与党が大勝すれば改憲発議が現実味を帯びる状況だ。
したがって、この公約については現在まで「改憲阻止」を維持できているものの、将来的な危機は続くという状況である。
石垣氏自身、「不断の努力が必要」と語っていた通り⁷、今後も気を緩めず運動を継続できるかが問われよう。
原発ゼロの実現
原発ゼロの公約については、実現には程遠いのが実情だ。
菅政権以降、国のエネルギー政策はむしろ原発依存度を高める方向に舵を切った。2022年には政府が原発の運転期間延長や新増設も視野に入れる方針を打ち出し、東北電力女川原発2号機も2024~25年に再稼働見通しとなった(宮城県知事が再稼働同意)。
石垣氏は地元の問題として女川原発住民投票の実現を支援したが、結果的に県議会で否決され住民の声は届かなかった。その無念さは国会質問でも表れており、「11万人の署名を踏みにじった決定だ」と県政与党を批判したが、状況を覆すには至っていない。
それでも彼女は原子力行政の透明化を求め続けている。国会では原発関連データ改ざん問題を取り上げ「行政能力が低いままでは原発を安全に運営できない」と政府を追及し、超党派のエネルギー議連でも省エネ・再エネ推進法案に関わるなど代替策にも取り組んだ。
さらに女川原発の是非を巡り、2021年の知事選で争点化すべく野党統一候補を支援したものの落選という結果も経験している。
原発ゼロ実現は厳しい情勢が続くが、石垣氏は「少なくとも情報公開と住民合意なくして再稼働すべきでない」と主張を貫いており、この点は今後も志半ばで課題が残る。
ジェンダー政策
ジェンダー政策については、一部で社会が石垣氏の主張に追いつきつつある。
選択的夫婦別姓は、石垣氏らの度重なる法案提出にもかかわらず、いまだ国会で審議入りすらしていない。しかし2021年に最高裁大法廷が現行同姓規定について「立法府の裁量範囲」と合憲判断を示したものの、世論調査では7割近くが別姓容認に賛成と報じられており、社会の意識は確実に変化している。
石垣氏は質問主意書で政府に「夫婦別姓が家族の一体性を損なうという主張の根拠」を質したり、国会内外で賛成議員を増やす活動を続けている。
同性婚も状況は似ており、日本では法改正はまだだが、2023年までに全国5つの高等裁判所で現行の同性婚不認可は違憲または違憲状態との司法判断が示された。
石垣氏はこれを受け「もはや立法を先延ばしできない」と訴え、立憲民主党が準備中の「結婚の平等法案」の策定にも関与している(党内PTメンバーとして条文検討に参加)。
2023年6月には与党がLGBT理解増進法(差別は明記せず)が成立させたが、石垣氏は「差別解消まで踏み込まねば意味がない」として反対票を投じた経緯があり、この分野は引き続き公約未達成と言える。
ただし、彼女のような一貫した提唱者がいることで世論の後押しが維持され、将来的な法整備への布石となっている点は評価できる。
東日本大震災からの復興
石垣氏が公約に掲げた「東日本大震災からの真の復興」も、依然道半ばだ。
復興庁は2031年まで存続が決まったものの、被災地の人口流出や産業再生の遅れなど課題は残る。
彼女は「復興格差を検証せねばならない」と公約で述べ、議員として被災自治体の声を国に届ける努力を続けた。
たとえば宮城県漁協の要望を取りまとめ水産予算の増額を要求したり、福島第一原発の処理水問題で地元漁民の不安を代弁し風評被害対策強化を政府に迫ったりした。
処理水海洋放出については2023年に政府が開始を強行したが、彼女は直前まで参院内閣委で「説明なく押し切るな」と訴え続けていた。しかし最終的に放出は始まり、以降は被害救済策や監視体制の拡充に軸足を移している。
こうした点から、震災復興に関しても「大きな公約は未完ながら、小さな進展は積み重ねている」という状況だ。
公約実現の総合評価
総合すると、石垣のりこ議員の公約実現度は決して高いとは言えない。彼女自身も、多くの政策が「これからが正念場」であることを認めている。
ただ、その理由は彼女の努力不足ではなく、野党の一議員としての限界や与党の抵抗に起因する部分が大きい。石垣氏はマニフェストで掲げた項目について可能な限り国会で取り上げ、法案提出や質問で追及し、公約とのギャップを埋めようと奮闘してきた。
それでも実現できないものが残るのは、政権与党でない故の歯がゆさである。
もっとも、彼女が問題提起し続けたテーマはいずれも日本社会の重要課題であり、最近になって潮目が変わり始めているものもある。例えば消費税減税論は以前よりmainstreamに乗りつつあり、夫婦別姓や同性婚も司法の後押しで動く可能性が出てきた。
石垣氏の役割は、「種を蒔き、水をやり続ける」ことであったと言える。芽が出るのは次の国会か5年後かわからないが、政治は長い積み重ねだ。
彼女の公約の種は確実に政策土壌に蒔かれており、今後も本人が議席を守り活動を継続できれば、いずれ実を結ぶものも出てくるだろう。
参考資料
公式資料
- 参議院公式サイト「議員情報 石垣のりこ」(学歴・経歴)
- 宮城県選挙管理委員会「2019年参議院選挙 選挙公報(宮城県選挙区)」
- 石垣のりこオフィシャルサイト「プロフィール」²⁴
議会資料
- 衆参両院会議録(参議院予算委員会会議録ほか)
- 参議院質問主意書データベース(石垣のりこ議員提出主意書一覧)
- 国会議員白書(石垣のりこ議員 発言統計・議員立法一覧)
報道資料
- 朝日新聞「参院選宮城:前回約9500票差で石垣氏が勝利」(2023年6月記事)¹
- 河北新報「立民・石垣氏擁立へ『消費税ゼロ』を主張」(2019年4月25日)
- 毎日新聞「参院選宮城:知事を表敬『一次産業振興で連携』石垣氏」(2019年7月26日)
- 弁護士ドットコムニュース「石垣のりこ議員なりすましツイート問題」(2022年)
- 週刊ポスト(小学館)「石垣のりこ議員 不倫訴訟トラブル」(2021年5月)
- 日刊スポーツ「立民・石垣議員ツイート炎上で謝罪」(2020年8月29日)
立憲民主党発表
- 立憲民主党ニュース「出入国・在留管理制度に関する議員立法を提出」(2025年6月18日)
- 同「参院本会議 石垣のりこ議員 賛成討論・反対討論全文」(2024年11月17日)
- 同「参院予算委 石垣・杉尾議員ら質疑」(2023年3月)
その他資料
- note(霹靂氏)「石垣のりこ議員の政治資金の不透明な流れについて」(2021年5月29日)
- Twitter/Xアカウント「@norinotes」石垣のりこ(フォロワー数推移など)⁸
- YouTubeチャンネル「石垣のりこ」(チャンネル登録者数等)
参照番号一覧
¹ 1人区に6人名乗り、激しく競る 自民逆風も混戦 参院選宮城選挙区 [宮城県] [参院選(参議院選挙) 2025]:朝日新聞