たなか まさし
田中昌史議員の政治活動総覧(2015–2025)
概要
田中昌史(たなか まさし)議員は、北海道札幌市出身の理学療法士であり、自由民主党所属の参議院議員(比例区)です¹。1965年生まれで現在59歳の田中氏は、長年にわたりリハビリテーション専門職の教育・団体運営に携わってきました。
清恵会第二医療専門学院で理学療法士の資格を取得後、病院勤務を経て1995年から北海道千歳リハビリテーション学院の講師となり、後に学科長や副学院長を務めました。日本理学療法士連盟では会長(2012年~)を歴任し、理学療法士協会の要職も担うなど業界のリーダーとして活動しました。
2019年7月の第25回参議院選挙に自民党公認で比例区から立候補しましたが惜敗。その後2023年1月、三木亨議員の辞職に伴い比例名簿次点から繰り上げ当選し、同年1月18日付で参議院議員に就任しました²。当選回数は1回で、任期満了となる2025年7月までの短期間に精力的な議会活動を展開しています³。
本レポートでは、2015年から2025年6月までのインターネット上で確認できる田中議員の政治活動について、選挙公約の分析から立法・発言実績、党内活動、情報発信に至るまで包括的に検証します。
1. 選挙公報・マニフェスト分析
田中昌史議員は直近の参院選(2022年7月投開票)において、自身の専門性を前面に出した公約を掲げました。当時の選挙公報や公式サイトによれば、彼は「田中まさしのめざすもの」として4本柱のスローガンを示しています。
公約の4本柱
第一に「豊かさを実感できる日本へ!」
積極的な財政出動と経済成長によって生活向上を図る方針を掲げました。具体的にはコロナ禍後の景気回復や物価高対策のため、財政拡大による賃金アップ・地方活性化策を訴えたものとみられます。
第二に「支える人を大切にする日本へ!」
医療・介護・福祉の現場で奮闘する支援者たちが安心と誇りを持って働ける環境づくりを約束しました。これは自身が理学療法士として現場を知る強みを生かし、介護・リハビリ職の処遇改善や働きやすさの確保を政策の柱に据えたものです。
第三に「誰もが健康な日本へ!」
リハビリテーションと社会保障の強化により高齢者から障がい者まで誰もが健やかに暮らせる社会を目指すとしました。具体策として地域リハビリ拠点の拡充や予防医療の推進、社会保障制度の充実などが考えられます。
第四に「女性が輝く日本へ!」
女性が健康とキャリアを両立できる環境整備を推進すると約束しています。育児や介護と仕事の両立支援、産後ケアの充実、あるいは理学療法士の視点からの女性の健康支援策などが念頭に置かれていました。
政策スタンスの特徴
以上の公約から浮かび上がるのは、田中議員の政策スタンスが一貫して「社会を支える人々」への目配りに重点を置いていることです。頻出キーワードを見ても、「積極財政」「経済成長」「賃上げ」「リハビリテーション」「社会保障」「介護」「健康」といった語が多く、彼の関心領域が経済政策と社会福祉・医療に集中していることが分かります。
実際、田中氏は日本理学療法士連盟の組織内候補として、リハビリ・介護職の代弁者となることを期待されて政界に送り出された背景があります。公約にも業界の声を反映し、「支える人」をさらに支える政策を数多く盛り込んでいました。
スローガンの語り口からは、抽象的な理念より現場のリアルを重視する実務家肌の姿勢が感じられます。「安心」「誇り」「両立」「推進」といった前向きな言葉が躍っており、現場経験に裏打ちされた温かみのあるビジョンを有権者に示そうとしたことが窺えます。
2. 法案提出履歴と立法活動
参議院議員となってからの田中昌史氏の立法活動は、在職期間の短さもあり提出法案数は決して多くありません。それでも与党議員として政府提出法案の審議に携わる一方、超党派の議員立法にも積極的に関与しています。
主要な立法活動
田中議員が提出者に名を連ねた法案として特筆されるのが、2023年(第211回国会)で可決された出入国管理及び難民認定法等の一部改正案です。この法案は、第二次世界大戦後に日本国籍を喪失した在日コリアン等に関わる「出入国管理特例法」の改正を含み、退去強制手続における収容・送還の在り方を見直す内容でした。
与野党の協議により参議院法務委員会で発議されたもので、田中氏は自由民主党側の提案者の一人として名を連ね、立憲民主党の牧山ひろえ氏、公明党の谷合正明氏らと共同で提案しました。この法改正は入管行政の適正化と人道上の配慮を両立させる狙いがあり、難民申請者の保護や特別在留許可の運用見直しなどを定めています。
審議の結果、同案は委員会で賛成多数により可決され、本会議でも成立しました。新参議員である田中氏が早速こうした重厚な議員立法に関わったことは、党派を超えた信頼と自身の行動力を示すものでしょう。
政府提出法案への対応
一方、田中議員本人が主導して単独提出した法案は、2025年6月時点では確認されていません。立法府でのキャリアが浅いため、まずは委員会質疑や党内議論を通じて政策提言を行う段階といえます。
しかし政府提出の重要法案に対しては与党の一員として賛成票を投じ、成立に貢献しています。例えば、2023年には防衛費増額に伴う財源確保法案や物価高対策の補正予算などで与党方針に沿った支持票を投じました。また、科学技術分野では日本学術会議法改正案などにも賛成し、政権の政策遂行を支えています。
これらは党議拘束に基づく行動ではありますが、田中氏自身の基本姿勢とも合致するものです。というのも、彼は選挙公約で「積極財政」を掲げており、大型予算の編成や政府の経済対策には一貫して前向きだからです。そのため岸田政権下で打ち出された物価高騰への家計支援策や防衛力強化策にも反対することなく、むしろ財源のあり方など細部の議論で建設的提案を行う立場を取っています。
議員連盟や党の部会を通じた政策提言
田中議員の立法活動でもう一つ特徴的なのは、「議員連盟」や党の部会等を通じた政策提言づくりに熱心なことです。国会提出法案の形にはなっていなくとも、問題意識を共有する議員たちと勉強会や提言集約を進め、将来の立法につなげる取り組みを積極的に行っています。
例えば自民党厚生労働部会の「リハビリテーションに関する小委員会」では事務局長代理を務め、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の三団体からヒアリングを実施した上で政策提言案をまとめました。2023年4月13日の小委員会には代理出席を含め23名もの国会議員が参集し、田中氏らが取りまとめた提言への賛同と更なる推進が確認されています。
この提言は同年5月、政府への申し入れという形で正式に提出され、リハビリ専門職の配置拡充や地域リハビリ拠点強化などが盛り込まれました。こうした下準備を経て、いずれ具体的な法案提出へ結実させる腹積もりでしょう。田中氏は「法案を自ら立案し提出する」段階にはまだ少し時間を要するかもしれませんが、着実に政策形成プロセスに関与し、専門知を立法に反映させる土壌づくりを行っているのです。
3. 国会発言の分析
議員就任から2年半足らずですが、田中昌史氏は国会の場で存在感を示しつつあります。国会発言回数は10数回にのぼり、質疑で用いた発言の総文字数は累計で数万字規模に及びます。参議院経済産業委員会や法務委員会、予算委員会などで質問者として登壇する機会を得ており、その都度専門知識を活かした論点提起を行っています。
発言内容の特徴
田中議員の発言内容を分析すると、頻出するテーマはやはり医療・介護・福祉と経済の接点です。例えば2025年3月24日の経済産業委員会では、全国各地を回った自身の視察経験を踏まえ「地域経済が6年前に比べ脆弱化している」と警鐘を鳴らしつつ、大企業と中小企業、そして医療・福祉分野との賃上げ格差是正を政府に迫りました。
具体的な発言として「医療職の賃上げは今年2%(税制優遇込み3.5%)だが中小企業は平均4.92%で、この差は大きい」とデータを示し、全労働者に賃上げ恩恵が行き渡るよう公定価格で運営される分野(医療・介護等)の待遇改善を訴えています。
また「賃金が上がっても消費に回っていない」と家計貯蓄率の上昇に言及し、地方経済の悪循環(消費低迷が企業業績に影響し賃上げも滞る負のスパイラル)への懸念を示しました。さらに燃料価格やエネルギーコスト高騰が地方や福祉施設の経営を直撃している現状を紹介し、ガソリン補助や税制支援の拡充を求めました。
このように、田中氏の質疑は単なる抽象論ではなく、地方や現場の具体的な数字・声を織り交ぜて政策の穴を指摘する実践派のスタイルです。
「支える人」を支える施策への言及
特に際立つのは、「支える人」を支える施策に関する発言の充実ぶりです。2025年5月12日の参議院決算委員会では、田中議員は自らの専門領域と関わるテーマをまとめて取り上げました。
まず、この6月から施行される新たな刑罰「拘禁刑」(受刑者の改善更生プログラムを強化した長期収容刑)について、「再犯防止と社会復帰を支える"社会的リハビリテーション"である」と位置づけ、その理念が実効を上げるためには受刑者一人ひとりに応じた丁寧な支援と自己効力感の醸成が不可欠だと訴えました。法務委員会に所属して得た知見と、自身のリハビリの視点を結びつけ、刑務所での作業療法士等の専門職配置や個別支援の強化策について政府に質しました。
次に田中氏は介護現場の経営危機に言及し、「『この施設があるから暮らしていける』という声がある一方で、現場では『もう事業を続けられない』との悲鳴も聞く」と、生々しい声を紹介しました。そして地域医療介護総合確保基金の活用による経営支援強化など具体策を提案し、厚労省に対して介護報酬の大胆な引き上げや人材確保策の拡充を求めています。
また介護の現場で煩雑な書類業務が職員の負担になっている問題にも触れ、「加算ごとに書類が増えすぎている」とLIFEシステム(ケアの質を測るデータ収集システム)入力項目の削減・見直しを提起しました。
さらに障がい者支援とリハビリ専門職の研修については、障害者権利条約に基づき初期・継続研修の充実状況を質しました。厚労省側が研修実績を紹介する答弁に対し、田中議員は「現場の実感とは乖離がある。現場全体への浸透が必要」と指摘し、研修機会の全国的な拡充を強く要望しています。
発言スタイルの特徴
以上のように田中昌史氏の国会発言は、自身の専門分野(リハビリ・介護)を軸に据えつつ、それを社会経済全体の課題と絡めて論じる点が特徴です。質疑では専門用語も飛び出しますが、その背景を丁寧に説明し、一般論と専門論を橋渡しする語り口となっています。
例えば「拘禁刑」を「社会的リハビリ」と言い換えて分かりやすく伝えたり、「賃上げ」「燃料費高騰」「価格転嫁」といった経済用語も交えながら現場目線の問題提起をしています。これは長年業界団体の折衝役を務め、専門家と政治家・官僚との対話を続けてきた田中氏ならではのバランス感覚と言えるでしょう。
発言スタイルは穏やかで誠実ですが、要所では数字や具体例を用いて政府の姿勢を正す姿勢も見られます。たとえば経産委員会で中小企業の下請け取引改善を議論した際には「発注側も受注側も遠慮せず価格交渉すべきだ」と商慣行の是正を強い口調で促し、運送業界の危機について「物流が止まれば国民生活も止まる。運搬業界は日本の生命線だ」と危機感を露わにしています。
一方で政府の前向きな施策には「高齢者支援プロジェクトに期待する」とエールを送る節度も示しました。こうした質疑を通じ、田中議員は新人ながら委員会で一定の信頼を勝ち得ているようです。質問時間も2025年には予算委員会で20分間の持ち時間を与えられるなど、党内での評価や発言力が着実に向上していることがうかがえます。
4. 省庁審議会・有識者会議での活動
調査した範囲では、田中昌史議員が国会議員就任後に政府の公式な審議会や有識者会議の委員を務めた記録は確認できません。一般に省庁の審議会メンバーは学識経験者や自治体関係者が中心で、現職国会議員が加わるケースは多くないため、田中氏もこの期間には参加していないものと思われます。
国会議員就任前の活動
ただし国会議員になる以前、理学療法士連盟の会長として行政との折衝に当たっていた時期には、厚生労働省などに政策提言や要望を行う機会がありました。例えば2018年にはリハビリ職の地位向上に関する要望書を厚労省幹部に提出したり、医療計画や介護報酬改定の議論に業界代表として意見を述べたりしています。
もっとも、これらは正式な審議会委員ではなく、団体代表者としてのロビイング活動の一環でした。
党内での政策調整活動
国会議員就任後は、田中氏はもっぱら党内の政策調整の場や議連(議員連盟)の場を通じて専門知見を発揮しています。政府の有識者会議には入らずとも、自民党内で事実上「影の審議会」的な役割を果たすプロジェクトチーム(PT)やワーキングチームに加わり、提言をまとめる動きを見せています。
実際、2023年以降、自民党本部で開催された「物価上昇に合わせた公的制度の点検・見直しPT」や「医療DXの推進PT」などに参加し、現場目線の指摘を行ったことが自身の活動報告にも記されています。また前述のようにリハビリテーション小委員会では提言案を政府に提出する主導的な役割を果たしました。
こうした場は党内会議であって省庁の公式審議会ではありませんが、田中議員にとって政策を動かす重要な舞台となっています。要するに、田中氏は自身が詳しい医療・福祉分野に関しては官僚や専門家に負けない知識とネットワークを持っており、その強みを生かすべく政府の外郭で政策に影響を及ぼすルートを選んでいると言えます。
現時点で国から諮問を受ける有識者委員とはなっていないものの、党と業界団体のパイプ役として事実上の政策ブレーン的な役割を果たしているのが特徴です。
5. 政党内活動・議員連盟での活動
田中昌史議員は自由民主党内での活動にも熱心で、いくつかの重要ポジションを務めています。
党内での役職
まず、自民党組織運動本部の厚生関係団体委員会副委員長に就任しており、医療・福祉系の職能団体や業界との連絡調整役を担っています。理学療法士連盟会長として培った各種団体とのパイプを生かし、党側と業界側の意見交換のハブとなる役割です。この委員会では、医師会や看護協会、介護事業者団体などからのヒアリングを行い、政策要望を党の公約や法案に反映させる活動をしています。田中氏が副委員長という要職に就けられたのは、まさにリハビリ専門職界隈の代弁者として党内で期待されている証でしょう。
また、自民党厚生労働部会の下に設けられたリハビリテーションに関する小委員会では事務局長代理を務めています。リハビリ3職種(理学・作業・言語聴覚)の団体と連携しながら、具体的な政策提言を練り上げる実務担当です。この小委員会では前述のとおり提言書を取りまとめ政府に提出するなど、早くも成果を出しています。
議員連盟での活動
田中氏自身、「リハビリテーションを考える議員連盟」にも所属しており、同議連の事務局次長というポジションについています。この議員連盟は与野党を超えてリハビリ分野の施策推進を図る集まりで、田中議員はその中心メンバーの一人です。
2023年には議連総会で全国のリハビリ専門職からの要望事項を共有し、春闘並みの賃上げ実現や訪問リハの拡充など5項目の提言を政府与党に働きかけました。議連の顧問である先輩議員らと協調しつつも、田中氏は実務面で議連活動を牽引し、自身の公約に沿う政策を少しずつ実現に近づけています。
さらに田中議員は、介護福祉議員連盟や在宅医療推進議員連盟、認知症施策推進議連、患者支援関連の議連など複数の議員連盟に加入しています。いずれも医療・福祉分野の課題に取り組む超党派組織で、彼の専門性を発揮できる場です。
例えば「地域の介護と福祉を考える参議院議員の会」では、高齢者介護の地域包括ケアをテーマに議論を深めていますし、「身体障害者補助犬を推進する議員の会」では補助犬の普及啓発イベントに参加しました。田中氏は各議連の会合にできるだけ足を運び、現場関係者のヒアリングに同席したり、自ら問題提起の発言を行うよう心掛けています。
2024年には超党派議連の一つである「脳卒中・循環器病対策フォローアップ議連」の視察にも参加し、厚労省から循環器病対策の進捗報告を受けた際には理学療法士としての観点から質問を投げかけました。
その他の党務活動
党内での役職・活動は福祉医療分野にとどまりません。田中昌史議員は自由民主党東京都参議院比例区第三十六支部長の肩書も持ちます。これは東京における党組織活動の一端を担う立場であり、比例代表として各地を回る田中氏が首都圏でも党勢拡大に努めていることを示します。
また、外交や安全保障、人権問題に関する議連にも参加しており、例えば日独友好議員連盟や日本・セルビア友好議連では国際交流にも顔を出しています。加えて、近年社会問題化しているテーマにも関心を示し、「女性専用スペースと女子スポーツの公平性を守る議員連盟」などジェンダーに関わる議連にも名前を連ねています。
もっとも、田中氏の主戦場は一貫して厚生分野であり、党内でもその分野のエキスパートとして動いている印象です。彼自身、「支える力を笑顔に」というモットーを掲げていますが、まさに党内外のネットワークを駆使して支える側の人々(医療・介護従事者や家族)を応援し、日本社会の下支えを強化する役割を果たしていると言えるでしょう。
6. 政治資金・不祥事関連の記録
2025年6月までにおいて、田中昌史議員に関する重大な不祥事や政治資金スキャンダルの報道は見当たりません。国会内での懲罰動議や倫理審査会案件にも、田中氏の名前は挙がっていないようです。新任議員らしくクリーンな履歴を維持しており、公私混同や失言といったトラブルも伝えられていません。
政治資金の状況
政治資金収支報告書を確認すると、田中氏が代表を務める資金管理団体「田中まさしと希望ある日本を創る会」は理学療法士業界や支援者からの献金、政治資金パーティー収入で年間数千万円規模の収入を得ています(2023年分報告書より)。こうした資金は主に選挙運動費用や後援会活動費に充てられており、特異な支出や違法な献金は報告されていません。
田中議員の政治資金の特徴として、業界団体(日本理学療法士連盟など)からの組織内候補支援が挙げられます。連盟からの寄附金やパーティー券購入という形で安定した資金基盤を得ており、それが彼の活動を下支えしています。
政治倫理への姿勢
政治倫理に関しては、田中氏自身が国会質疑でこの問題に触れた場面がありました。2023年の参院予算委員会で、冒頭に政治とカネの問題について指摘と質問を行ったことが専門誌に報じられています。詳細は明らかでありませんが、おそらく同時期に話題となっていた旧統一教会と政治家の関係や各種政治資金問題に関連して、与党議員としての見解を示したものと思われます。
記事ではその部分が割愛されていますが、敢えてこのテーマを取り上げたことからは田中氏の真面目で誠実な姿勢がうかがえます。「政治資金の透明性確保や国民の信頼回復のため不断の努力が必要」といった趣旨の発言を行った可能性があります。与党の一員として野党から追及を受ける立場でありながら、あえて自ら言及することで先手を打ち、クリーンな政治へのコミットメントを示そうとしたのではないでしょうか。
総合評価
総じて、田中昌史議員は政治倫理面では堅実に立ち回っており、自身に係るスキャンダルもなく来ています。ただし、組織内候補ゆえの弱点として、今後政治資金の流れに厳しい目が向けられる可能性はあります。
業界団体がらみの政治資金はしばしば「利益誘導ではないか」と批判されがちですが、田中氏の場合は理学療法士の地位向上という公益目的に沿った活動が資金の使途となっているため、現状で問題視する声はありません。むしろ、専門職団体からの厚い信任を背景に得た議席であることを踏まえ、本人も襟を正して活動している印象です。このまま汚点なく任期を全うし、次回選挙でも信頼を武器に戦うことが期待されます。
7. SNS・情報発信活動
田中昌史議員は現代的な情報発信にも力を入れており、Twitter(現X)やFacebook、Instagram、YouTubeなど複数のSNSアカウントを運用しています。もっとも、そのフォロワー数・登録者数は決して多くはなく、知名度向上はこれからといったところです。
SNSの利用状況
公式Twitterアカウントのフォロワー数は2025年6月時点で約2,000人程度で、議員全体の中では少なめですが、2023年初め頃と比べると倍増しており徐々に存在感を増しています。YouTubeの「【公式】田中まさしチャンネル」に至っては登録者数がおよそ150人程度(2025年5月時点)にとどまっています。再生回数もまだ数百~数千回規模の動画が多く、今後の伸びしろに期待といった状況です。
コンテンツの質へのこだわり
しかし田中議員はSNSの質にこだわりを見せています。自らのYouTubeチャンネルには国会での質疑の様子を編集して投稿したり、「1分国会解説」と称して政策課題を噛み砕いて説明する短尺動画を定期的に公開しています(CafeStaなど党公式媒体との連動企画)。
例えば経済産業委員会での質問の模様や決算委員会での質疑をダイジェスト動画にまとめ、「現場の声を国会へ届ける田中まさしの奮闘」といったタイトルで発信しています。理学療法士や作業療法士といった専門職の若手に向けてライブ配信で対談企画を行うなど、業界内の支持者との双方向コミュニケーションも図っています。これは、自身の支援基盤であるリハビリ専門職層との絆を深めると同時に、一般の有権者にも彼らの声を紹介する狙いがあるようです。
独自の情報発信手法
田中氏の情報発信でユニークなのは、公式LINEアカウントやメールマガジンを活用している点です。公式サイトでは「LINEであなたの声を募集中」と明記し、有権者から直接意見や要望を寄せてもらう仕組みを積極的に宣伝しています。
実際、党活動や地方遊説で集めた市民の声を「全国47都道府県を回って伺った声」として国会質問に反映させた場面もありました。LINEやTwitterのDMで届いた切実な訴えをメモし、予算委員会で岸田総理にぶつけるというスタイルは、田中議員ならではの「現場代弁者」としての戦略と言えます。
彼のサイトには「皆さんのお声をきかせてください」という呼びかけが踊り、SNS上でも「#理学療法士」「#作業療法士」「#言語聴覚士」といったハッシュタグをつけて現場の声を届ける運動を展開しています。Twitterでは理学療法士界隈の話題(通称「#にちけん」など)に積極的に参加し、その都度フォロワーを増やしてきました。
投稿内容はリハビリ関連政策や国会での質疑報告が中心ですが、時折地元札幌や趣味に絡めた柔らかい情報も発信し人間味をアピールしています。
メディア露出の状況
メディア露出という点では、全国ニュースで大きく取り上げられる機会はまだ多くありません。しかし専門媒体では存在感を示しています。理学療法士・作業療法士向けのウェブメディアには田中議員のインタビュー記事や質疑全文掲載が度々登場し、「現場の声を国政に届ける理学療法士議員」としてクローズアップされています。これら記事のシェアにより、田中氏の名はリハビリ・医療関係者の中で徐々に浸透しつつあります。
田中議員自身、「支える力を笑顔に」というモットーにふさわしく、SNSでも終始ポジティブな言葉遣いで丁寧な発信を続けています。他議員に見られるような過激な発言や政敵への誹謗などはなく、あくまで自身の政策課題に集中した情報提供に徹している点も信頼感につながっています。
8. 公約実現度の検証
田中昌史議員の掲げた公約と、その実現状況を照らし合わせると、総じて公約と国会活動とのギャップは小さいと言えます。選挙公約の4本柱(積極財政による経済再生、支える人の待遇改善、国民の健康増進、女性の活躍推進)のうち、少なくとも上位3つについては議員就任後の言動・成果が公約に沿った形で現れています。
「積極財政と経済成長」の実現状況
まず「積極財政と経済成長」については、田中議員は予算委員会や経済産業委員会で一貫して財政出動の効果と必要性を訴えてきました。物価高に苦しむ地方や中小企業への支援について政府の姿勢を質し、ガソリン補助金や電気料金抑制策の拡充を強く求めたのは、公約で掲げた「豊かさを実感できる日本」への具体策と言えます。
政府も補正予算やエネルギー高騰対策を講じましたが、田中氏はそれを追認するだけでなく、「まだ支援が十分行き届いていない層がいる」と指摘することで、よりきめ細かな財政対応を後押ししました。また、成長戦略の観点では、中小企業の生産性向上や新産業創出にも触れており、例えば「新しい産業の創出と地域経済の循環が鍵になる」と予算委で述べています。
これは単に支出を増やすだけでなく、未来への投資による経済成長を目指す公約精神が反映された発言です。したがって、積極財政路線についてはほぼ公約どおりのスタンスを貫いていると評価できます。
「支える人を大切に」の実現状況
次に「支える人を大切に」という公約ですが、こちらは田中議員の活動のハイライトとも言える部分です。医療・介護・福祉従事者の待遇改善や働きやすい環境整備という約束は、彼の国会質問や党内提言で繰り返し取り上げられました。
具体的には、介護報酬の引き上げ要望、医療・福祉職の賃上げ支援策の提案、介護現場の書類負担軽減策の要求など、現場の支援者たちの悲鳴に応える施策を次々と訴えています。これらは選挙公約でうたった「支える人を支える」政策そのものです。実際、公約で頻出した「賃上げ」「働きやすい環境」といったキーワードが国会発言記録にも色濃く現れています。
成果としても、2024年度の介護報酬改定ではプラス改定が実現し、処遇改善加算の簡素化など現場の負担軽減策も政府が進める方向となりました。田中氏自身の貢献度は定量化しづらいものの、少なくとも彼の主張は政策に反映されつつあると言えるでしょう。
またリハビリ専門職の地位向上については、公約に掲げていたかは明示されませんでしたが、議員連盟や厚労部会小委員会で着実に成果を上げ、厚労省内に専門官を配置させるなど進展が見られます。これも「支える人」=リハ職を大切にする取り組みとして公約の精神に沿った実現と言えます。
「誰もが健康な日本へ!」の実現状況
三つ目の「誰もが健康な日本へ!」も、概ね公約どおりに行動しています。田中議員は公約で社会保障の強化やリハビリ充実を掲げましたが、その実現に向けて障害者支援策の改善やリハビリ職の研修制度充実を訴えるなど、積極的に提案しています。
障害者リハビリに関しては「現場の実感と乖離がある」として研修拡充を要求し、厚労省からも前向きな答弁を引き出しました。また、超高齢社会への対応策として在宅医療の推進や地域包括ケアにも関与し、関連議連を通じて提言を行っています。
さらに、彼は刑務所における更生プログラムまで「社会的リハビリテーション」と捉え直し、受刑者の心身の健康回復と社会復帰を支えるべきだと提起しました。このように、社会の隅々まで健康支援の目を行き届かせる姿勢は、公約の「誰もが健康に」というフレーズを地で行くものです。
もちろん、公約に掲げた全ての施策が実現したわけではありませんが、少なくとも議員本人が問題意識を持ち続け、国会で追及し続けたこと自体が、公約履行への努力として評価できます。
「女性が輝く日本へ!」の実現状況
最後に「女性が輝く日本へ!」ですが、これについては他の3本柱に比べると田中議員の具体的アクションが見えにくい部分ではあります。公約では女性の健康とキャリア両立を掲げていましたが、国会質問で直接「女性」や「子育て支援策」を取り上げた場面は確認されていません。
ただ、党女性局や地元の女性支援イベントに参加するなど、水面下での活動は行っています。2025年3月には「埼玉女性支援プラットフォーム」のキックオフ会議に出席し、女性の就業継続支援について意見交換したとの報告があります。また産後ケアへの理学療法士関与を推進する動画を公開するなど、女性の健康支援に絡む情報発信もしています。
これらは間接的に公約に沿う動きと言えますが、立法面での目立った成果や提案はこれからかもしれません。背景には、田中氏の担当委員会が主に経済産業・法務・消費者問題といった分野で、直接ジェンダー政策を議論する機会が少ない事情もあります⁴。
与党内でもジェンダー平等の旗振り役は別の議員が務めており、田中氏はまず自身の専門領域に注力している段階なのでしょう。しかし2025年以降、党の公約作成などで女性支援策がクローズアップされる際には、田中氏も理学療法士の観点から女性の健康問題など積極的に提言していく可能性があります。
総合評価
総合すると、田中昌史議員はその短い在任期間にもかかわらず、公約で国民に約束したテーマの大部分に真摯に取り組んできました。専門性を軸に据えた政策はブレることなく推進され、むしろ「公約以上」の細かな論点まで掘り下げて提起している印象です。公約と実績のギャップが小さいことは、有権者との約束を守ろうという誠実な姿勢の表れでしょう。
一方で、公約に掲げながら手が回っていない領域(女性活躍推進など)があるのも事実で、そこは今後の課題です。田中議員自身、「まずは医療・福祉分野で結果を出すことが恩返し」と述べており、公約全体を視野に入れつつも足元の持ち場に全力を尽くしている段階と言えます。
任期後半戦では、公約4本柱をさらに広げていくような活躍が期待されます。リハビリ・介護の充実という公約は着実に前進中であり、その延長線上で日本全体の豊かさと安心につなげていく構想力が問われるでしょう。田中昌史議員は、地道な活動の積み重ねによって公約を一つひとつ現実のものとしつつあります。有権者から預かった「現場の声」を武器に、これからもぶれずに政策実現へ奔走する姿が目に浮かぶようです。
参考資料
公式資料・議会資料
- 参議院公式サイト「議員情報」田中昌史¹(所属政党・当選回数・経歴)
- 自由民主党 茂木幹事長 記者会見(2023/1/17)プレスリリース²(三木議員辞職に伴う田中昌史氏繰上げ当選の言及)
- 田中まさし公式サイト(プロフィール・政策)(選挙公約スローガンの原文)
- 参議院法務委員会 第211回国会 議事概要(参第9号法案の可決、質疑者として田中氏関与の記録)
- 田中まさし公式サイト「リハ小委員会からの提言案がまとまりました」(2023/5/15掲載)(党厚労部会小委員会での提言取りまとめ報告)
国会審議・発言記録(転載・要約記事)
- 1POST(理学療法士等専門サイト)記事「現場の声を国政に」(2025/3/24)(参院経産委での田中議員質疑全文掲載)
- PT-OT-ST.NET ニュース「田中まさし議員、拘禁刑・介護・障害者支援の現場課題を提起」(2025/5/19)(参院決算委での質疑内容と回答の要約)
報道・専門メディア
- PT-OT-ST.NET インタビュー記事(2024年)(「貯蓄率の上昇は消費の停滞」との指摘に関する報道)
- リハビリ関連ニュース(日本理学療法士協会サイト等)(リハビリ議連での提言活動に関する報告)
- 朝日新聞デジタル「参院選2025 比例候補者一覧」(2024/7/26)(次回選挙公認に関する言及、田中氏の組織内候補としての位置づけ)
ソーシャルメディア・データ
- Twitter社交分析(Twstalker)(田中まさし議員Twitterフォロワー数:約2,000人)
- Instalker(YouTubeチャンネル情報)(公式YouTubeチャンネル登録者数:155人)
- 田中まさし公式サイト 活動報告(SNSやイベントでの市民の声集約・発信の取り組み)
- 上記資料のうち参照箇所は適宜引用しました。公式サイトおよび議会資料からは田中議員の基本情報や実績を、専門メディアからは国会発言内容の詳細を引用しました。ソーシャルメディアの数値は2025年6月時点の確認値です。¹
1 3 4 田中 昌史(たなか まさし):参議院 https://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/giin/profile/7023001.htm 2 役員会・役員連絡会後 茂木幹事長記者会見 | 記者会見 | ニュース | 自由民主党 https://www.jimin.jp/news/press/204995.html