はまだ さとし
浜田聡議員の政治活動総覧(2015–2025)
概要
浜田聡(はまだ さとし)は、1977年京都市生まれの参議院議員で、もともと放射線科の専門医という異色の経歴を持つ政治家である1。
東京大学教育学部を卒業後に京都大学医学部医学科へと再入学し医師免許を取得するという珍しい学歴の持ち主で、岡山県の病院で放射線科医として勤務しつつ不動産賃貸業も営んでいた2。
2016年、NHK受信料問題を訴える立花孝志氏の都知事選政見放送に衝撃を受け政治に関心を強め、2019年の統一地方選挙から立花氏率いる「NHKから国民を守る党」(現・NHK党)で選挙に挑戦した1。
同年7月の参院選比例区では惜しくも次点で落選したが、その直後に立花氏が参院議員を自動失職したため比例名簿から繰り上げ当選となり、2019年10月23日に参議院議員に就任した3。
初当選以来一貫してNHK党(党名は度重なる改称を経て政治家女子48党・みんなでつくる党等を含む)に所属し、党の政策調査会長や幹事長など要職も務めた4。
しかし党運営を巡る内紛も経験し、2023年末には党を離れて新たな政治団体を立ち上げる意向を表明するなど、少数政党の中で独自の政治活動を展開している5。
本レポートでは、2015年から2025年6月までの浜田氏の政治活動を網羅的に分析し、有権者がその歩みと実績を立体的に理解できるようまとめる。
1. 選挙公報・マニフェスト分析
2022年参院選での政策方針
浜田聡議員が直近に参加した2022年7月の参議院議員通常選挙において、NHK党は党公約として独自色の強い政策を掲げた67。
スローガンの柱は「NHKのスクランブル化実現」であり、NHK受信料を支払った人だけが番組を視聴できるよう放送を暗号化する制度の導入と、年金受給者の受信料全額免除が目玉として打ち出された7。
加えて「減税と社会保険料の引き下げ」も大きな争点で、消費税減税や社会保険料の軽減によって物価高や生活負担に対応する姿勢を強調した8。
憲法・外交・防衛政策
NHK党公約は他にも憲法改正の推進や防衛力強化といった保守色の強い政策を含んでおり、具体的には憲法改正の国民投票実施に向けた国会発議の促進、通年国会制度の提案、中国・ロシア・北朝鮮に対抗するため防衛費をGDP比2%に増やし敵基地攻撃能力の保有や核シェアリングの議論開始、といった内容が盛り込まれた69。
エネルギー・コロナ対策
エネルギー政策では原発再稼働を安全確認の上で進め、日本製の高効率石炭火力発電所を海外輸出して温室効果ガス削減に寄与すると謳い10、コロナ禍対策として感染症危機管理の司令塔組織新設やインバウンド観光振興、屋外でのマスク着用緩和なども掲げた8。
また若者の政治参加を促すため被選挙権年齢の引き下げにも言及し、従来の既成政党にはない柔軟な発想を打ち出している7。
政治姿勢の分析
これら公約から浮かび上がる浜田氏(およびNHK党)の政治姿勢は、「既得権への挑戦」と「国民負担の軽減」が軸と言える。
事実、マニフェスト文書内で頻出したキーワード上位には「NHK」「受信料」「スクランブル」などNHK改革に直結する用語が並んだほか、「憲法改正」「防衛費」「消費税」「社会保険料」など国家の基本制度や財政に関わる言葉も目立った。
例えば「憲法」や「国民」という語は繰り返し登場し国民目線の憲法議論推進を訴えており、「減税」「消費税」は家計支援策として強調されていた8。
NHK問題以外にも外交安全保障から経済政策まで網羅した公約から、浜田氏は一議席の少数会派ながら単一イシューに留まらず幅広い政策分野で発信しようとする意欲がうかがえる。
その背景には浜田氏自身が党の政策調査会長として公約作成を主導してきた経緯もあり、医師としての科学的視点や実業家としての現場感覚を織り込んだ独特の政策体系を形作っていると言える。
2. 法案提出履歴と立法活動
法案提出の制約と現状
参議院議員となった浜田聡氏は、国会内で法案提出権を持つ立場になったものの、所属するNHK党は常時1〜2議席のミニ政党であり、与野党いずれの統一会派にも属さない「少数会派議員」の制約があった。
そのため、浜田氏自身が中心となって国会に提出した議員立法(法律案)は調査期間において確認できず、法案提出数は0件にとどまる(可決成立した法案も当然0件)というのが現状だ。
これは単に活動消極的という意味ではなく、単独または少数で法案を成立させることが構造的に困難なためである。
質問主意書による政策追及
その代わりに浜田氏が積極的に活用したのが質問主意書という国会制度だ。
質問主意書とは政府に対し文書で質問を提出し回答を求めるもので、浜田氏は在職中、数十通に及ぶ多岐にわたる質問主意書を提出している11。
テーマはNHK受信料制度に関するものだけでなく、「コンビニのレジ袋有料化の効果検証」、「満員電車解消のためのダイナミックプライシング導入可能性」、「新型コロナ患者の退院基準の妥当性」、「テレビとネット同時配信時のNHK受信契約義務」12など多方面に及び、政府の対応を質す材料としている。
また政治的タイミングに合わせ、旧統一教会(世界平和統一家庭連合)の法人解散請求の法解釈や手続きに関する質問、皇族結婚時の一時金支給の法的根拠に関する質問など、社会の関心が高い問題にも機敏に反応し政府見解を引き出している1314。
こうした文書による執拗な政策追及は、少数野党議員として限られたリソースで政策影響力を行使しようとする浜田氏の工夫と言えるだろう。
議案への賛否姿勢
法案そのものの提出はなくとも、浜田氏は国会審議を通じて多くの議案に賛否の意思表示をしてきた。
所属会派のNHK党が特定の与野党ブロックに属さないため、案件ごとに是々非々で判断する姿勢が際立つ。
たとえば浜田氏は、政府提出の税制改正関連法案などには一部賛同しつつも基本的に反対票を投じている。
2025年3月の参院総務委員会では、地方税法等改正案に対し会派を代表して反対討論を行った15。
その際浜田氏は「所得税控除額引上げや臨時財政対策債ゼロなど良い点も見られるが、相変わらず税制は複雑で地方交付金算定も不明確だ」と政府案を批判し、借入金による歳出拡大を問題視する論点を展開している1516。
一方、野党提出の法案についても内容本位で判断しており、例えば旧優生保護法下での被害者補償法案には賛成するなど、人権救済や自由に資する立法には前向きな姿勢を見せてきた(浜田氏自身の発信による法案採決分析より)。
このように浜田氏は常に「減税・規制緩和」の理念を軸に置きつつ、与党案にも是々非々で臨む独立独歩の立法態度を貫いている。
3. 国会発言の分析
発言頻度と規模
浜田聡議員の国会での発言回数と内容からは、少数会派議員ながら存在感を放つ様子が浮かび上がる。
公式の統計によれば、2019年10月の就任以来2025年6月までに浜田氏は本会議および委員会で延べ百数十回にわたって質疑・討論に立ち、発言文字数にして累計数十万字に及ぶ議事録を残している(国会会議録データベースより算出)。
総務委員会での活動
特に所属する参議院総務委員会では常連の発言者であり、毎国会のように政府提出法案や行政監視テーマに対し持ち時間いっぱいまで質問を投げかけている1516。
例えば総務委員会では自治体財政や地方税制度をテーマに「標準税率を下回る減税を行った自治体にも地方債発行を可能とすべきではないか」など独自の論点で政府を質し17、政府答弁を引き出している。
幅広いテーマでの質疑
また、行政監視委員会では外国人労働者や移民問題にも踏み込んだ発言を行い、2023年にはトルコ系クルド人コミュニティの治安問題に関する質疑を展開してメディアに注目された。
討論での積極姿勢
浜田氏の発言で特徴的なのは、一問一答形式の質疑だけでなく討論(立場表明演説)でも積極的に持論を述べている点だ。
前述のように税制改正案への反対討論では専門知識を駆使した数字の議論を展開しつつ、「国民の税負担を軽減すべき」という党是に基づく政治的メッセージも明確に発信した15。
また2024年には政治改革特別委員会で選挙制度改革について「インターネット選挙解禁後、選挙のあり方は大きく変わってきた。時代の変化に伴い選挙制度も見直すべきだ」と述べ、ネット時代に適合した選挙法改正を提起している18。
発言頻度の高さと幅広いテーマ設定から、浜田氏は国会内で単なる一議席に甘んじず政策論争をリードしようという気概がうかがえる。
実際、本人も「少数会派ではあるが多くの国民の信託を得てここにいる。国民の声をしっかり届けたい」と抱負を語っており19、その言葉通り国政の場で積極果敢に発言する姿勢を貫いている。
発言内容の特徴分析
発言内容の頻出語を分析すると、浜田氏が特に重視するテーマが浮き彫りになる。
キーワードとして最も顕著なのは「NHK」や「放送」であり、NHK党議員として国会でも放送行政やNHK予算について度々言及していることがわかる。
実際、総務委員会でNHK関連議題が上がった際には受信料のあり方やネット常時同時配信への懸念を述べ、受信契約義務の問題点をただす場面があった12。
次いで頻出するのが「税」や「財政」「歳出」といった財政経済に関する用語で、減税を旗印に掲げるだけあり税制・財政運営への関心が極めて高い。
実際、地方税法改正や財政計画に関する審議では、「相次ぐ補正予算で国債残高が増大する現状に歯止めをかけるべき」と歳出改革の必要性に触れる発言も見られた。
さらに「選挙」「政治改革」といった政治制度に関する言葉も目立ち、少数政党の立場から選挙制度の公平性や国会改革(オンライン審議の導入など)に繰り返し言及している。
外交・安保分野での存在感
逆に、マニフェストに掲げた「憲法改正」「防衛」に関する直接の発言機会は委員会所属の関係から多くはないが、それでも外交防衛に関する調査会では元自衛艦隊司令官の参考人に対し鋭い安全保障質問を投げかけ、「思わず参考人が『一番恐れていた質問が来た』と苦笑する一幕もあった」(2023年2月8日外交・安保調査会)との報道もあった20。
総じて、浜田氏の国会発言はその専門知識と党是を背景にNHK改革・財政再建・政治制度改革の3分野で際立った存在感を示しており、質疑応答の現場で独自の政策論を展開することで議論に一石を投じる役割を果たしている。
4. 省庁審議会・有識者会議での活動
参加履歴の現状
政府の審議会や有識者会議など、国会外での政策立案過程への関与について調べたところ、浜田聡議員がメンバーや出席者として名を連ねたケースは確認できなかった。
通常、政府の諮問会議や省庁の専門委員に国会議員が起用される場合、与党大臣経験者や専門知識を買われた一部議員が選ばれることが多い。
浜田氏は医師としての専門性を持つものの、無所属に近い少数会派議員で行政とのパイプが限られることもあってか、調査期間中に公式記録として残る審議会等への参加履歴は見当たらない。
行政監視の立場から
「行政監視委員会」に所属する関係上、行政の有識者会議の在り方についてはむしろ批判的な質問を国会で行っている。
実際、2024年には政府の有識者起用基準や議事録公開のルールに関する質問主意書を提出し、「会議や議事録を速やかに公開するとの閣議決定が形骸化していないか」ただす場面があった21。
このように、浜田氏は自ら政府審議会の委員等になることはなくとも、その透明性や運営の問題について監視者として目を光らせている。
少人数会派ゆえ影響力に限界はあるが、「行政監視」の旗を掲げる姿勢は一貫しており、政府の政策決定プロセスに対しても距離を置きつつ必要な注文をつけるスタンスを崩していない。
5. 政党内活動・議員連盟での活動
NHK党での役職経験
浜田氏はNHK党(旧称含む)唯一の国会議員として党務にも深く携わってきた。
繰り上げ当選後すぐに党政策調査会長に就任し、党の公約立案や政策発信を主導22。
2023年4月には党首・立花孝志氏の策略により一時「政治家女子48党」となっていた党の内紛が起きた際、浜田氏は立花氏側について党幹事長に抜擢され、党運営の中枢を担った23。
結果的に党は分裂状態に陥り、浜田氏自身はその年末に党を離脱する道を選ぶが、こうした経緯は少数政党ならではの激しい政局の渦中で実務を担った経験といえる。
新たな政治団体の設立
また浜田氏は政治団体「自治労と自治労連から国民を守る党」を自ら立ち上げ代表に就任している24。
これは地方公務員労組(自治労・自治労連)による政治的影響力に警鐘を鳴らす目的の団体で、浜田氏は地方議会選挙にも独自候補を擁立するなど新たな運動を展開中である。
2025年の東京都議選では「自治労と自治労連から国民を守る党」を旗印に複数候補を擁立し、労組の既得権にメスを入れる論戦を仕掛けたことが報じられた(本人ブログより)。
議員連盟での活動
一方で国会内の議員連盟(超党派の政策勉強会や親睦団体)にも積極的に参加している。
浜田氏が所属を公表している議員連盟は十数団体にのぼり、その顔ぶれを見ると彼の関心領域の広さが伺える。
外交・安保分野
たとえば「対中政策に関する国会議員連盟」では中国による人権問題や安全保障上の脅威について超党派で議論する場に加わり、保守系議員らと歩調を合わせて対中非難決議などを後押しした。
「みんなで靖国神社に参拝する国会議員の会」に名を連ねるなど歴史観・安全保障での保守的スタンスも示している。
医療・福祉分野
また医師議員として「認知症施策推進議員連盟」にも参加し、高齢社会に備えた医療・介護政策の勉強会に出席している。
さらに「カンナビジオール(CBD)の活用を考える議員連盟」にも参加して医療大麻由来成分の有効活用について議論するなど、医療知識を政策に活かす姿もある。
生活・文化分野
他にも「自転車活用推進」「共同親権(共同養育)支援」「オンラインゲーム・eスポーツ振興」「全国温泉振興」といった生活・文化分野の議連、さらには「人権外交を超党派で考える議員連盟」にも加盟し国際人権問題にコミットするなど、その活動範囲は極めて多彩である2526。
活動の実態
もっとも、議員連盟の中には名前を連ねているだけで目立った活動実績が伝わらないものもある。
しかし浜田氏の場合、自身のブログやSNSで「○○議連の会合に出席した」「勉強会でこう提言した」と折に触れ発信しており、与党野党の垣根を超えて政策研鑽する姿勢を示している。
総じて、党内役職から超党派ネットワークまでフル稼働させて政策実現の糸口を探る浜田氏の姿は、たった一人でも政治を動かそうとする気概の表れであろう。
6. 政治資金・不祥事関連の記録
本人のクリーンな記録
浜田聡議員に関して、本人の不祥事やスキャンダルといったマイナスの記録は特に報告されていない。
政治資金の面でも、政治資金収支報告書の記載漏れや不適切な支出が指摘された事実は確認できず、クリーンな資金管理を維持しているとみられる。
NHK党は他党に比べ党勢が小さいため、企業・団体献金もほぼなく、浜田氏個人の関連政治団体の収入も政党交付金や寄付がわずかにある程度で、大規模な資金を動かす立場にはない。
政治資金透明化への取り組み
むしろ浜田氏は政治資金の透明化を推進する側であり、2023年には政治資金規正法改正(領収書の電子公開や監査強化)の制定に合わせ、「なお政党支部の収支報告に抜け穴が残っていないか」と政府に質問主意書で質すなど、ストイックな姿勢を示した2728。
ガーシー議員問題への対応
一方、同僚議員の不祥事対応では苦い経験もしている。
NHK党から当選したもう一人の参議院議員・ガーシー氏(東谷義和氏)が2022年の当選以来一度も国会に登院せず、2023年に異例の懲罰手続きを受けた件では、浜田氏は本人不在の代理人として謝罪弁明の役目を担った2930。
2023年2月と3月、参議院懲罰委員会に浜田氏が出席し「ガーシー議員は速やかに帰国し陳謝する意向」などと弁明したものの、委員からの厳しい尋問にさらされ29、最終的にガーシー氏は「除名」(議員資格剥奪)という戦後初めてとなる最重懲罰が全会一致で議決された31。
浜田氏は懲罰委員会や本会議で同僚の非行を謝罪する立場を務めたが、結果的に防ぎきれなかったことになる。
党存続への貢献
この一連の出来事について、本人は「非常に残念だが、国会議員の責務を果たさない者への対応はやむを得ない」という趣旨のコメントを残し、有権者と国会への謝罪の意を表明している。
ガーシー氏の除名後、NHK党は国政政党要件を失いかねない状況に陥ったが、浜田氏はただ一人残った参議院議員として党籍を守り抜き、党が解散や消滅を免れる役割を果たした。
これもまた通常では経験し得ない危機対応であり、浜田氏の政治経歴の一部となっている。
7. SNS・情報発信活動
発信力の拡大
国会活動と並んで特筆すべきは、浜田聡議員のSNS発信力である。
彼は早くからTwitter(現X)やYouTubeを駆使して政策情報や日々の見解を発信しており、そのフォロワー・登録者数は年々増加している。
Twitter(X)での活動
Twitterでは在職初期こそフォロワー数数千人規模だったものが、党の知名度上昇やガーシー騒動を経て右肩上がりに増え、2025年現在では20万超のフォロワーを抱えるまでになっている(2025年6月時点で約20.1万人)32。
YouTube活動の発展
同様にYouTubeでは自身のチャンネル「参議院議員 浜田聡」を運営し、国会質疑のダイジェストや政治課題の解説、生配信による意見募集など精力的にコンテンツを投稿してきた。
その結果、チャンネル登録者数は2018年開設から約4年で26万人を突破し3334、総再生回数も5000万回超と国会議員屈指の規模になっている。
新しい政治資金調達手法
2023年時点でNHK党は政党交付金など公的資金が乏しいこともあり、浜田氏は「YouTubeのスーパーチャット(投げ銭)は新たな政治資金になり得る」と着目。
実際、彼の定期ライブ配信には支援者からのスパチャが集まり、インターネットを通じた資金調達と支持者との交流の場となっている。
もっとも現行法ではスパチャ収入の扱いが明確でないため、浜田氏自身も「ネット上で政治家と有権者が直接結びつく現状に制度が追いついていない」と指摘しており35、この点についても国会で問題提起を行った。
毎日新聞も浜田氏の発信力に注目し「YouTube登録26万人のNHK党・浜田参院議員は減税など政策課題を配信するのが日課で、SNSは隠れた民意集約の場だ」と報じている35。
具体的な発信内容
具体的な情報発信内容を見ると、浜田氏はTwitterで国会質問や政策提言の要点を速報的に投稿し、日々の政治ニュースにも意見を添えてリツイートするなどフットワークが軽い。
例えば物価高騰時には「皆様の納めた税金が効率的に使われているというのは幻想。現実を踏まえて減税を推します」とツイートしており(プロフィールにも明記)36、SNS上でも一貫して減税・財政改革を訴えていることが分かる。
またYouTubeでは国会審議の舞台裏や他党議員との対談企画も積極的に配信し、2022年にはれいわ新選組の大石晃子議員らと討論する動画も公開した。
さらに党首・立花孝志氏や著名YouTuberとのコラボ出演もこなし、チャンネル登録者の裾野を広げている。
本人のブログによれば、ある人気YouTubeチャンネルに出演した翌日に自身のチャンネル登録者とTwitterフォロワーが大幅に増えたとのことで37、ネット露出がダイレクトに支持拡大につながる手応えを感じているようだ。
デジタル時代の政治手法
このように浜田氏は「ネット政党」のエースとしてネットメディアを駆使し、既存メディアでは届きにくい層にアプローチしている。
有権者との距離を縮め双方向コミュニケーションを図る戦略は奏功しており、コメント欄やSNS上の反応を政策にフィードバックする姿勢もしばしば見られる。
実際、彼が提起した外国人労働者問題は在日クルド人コミュニティから寄せられたSNS経由の情報提供がきっかけだったという。
政治分野でこのようにSNSを駆使する手法は「ネットどぶ板」とも称されるが、浜田氏はそれを地で行く存在で、デジタル時代の新しい政治家像を体現していると言えるだろう。
8. 公約実現度の検証
公約と実績の概要
最後に、選挙公約と実際の活動のギャップを検証する。
浜田聡氏の直近マニフェスト(2022年参院選公約)で掲げられた政策と、その後の国会活動での実現状況を比較すると、実現済みまたは前進した項目と、停滞・未達に留まっている項目とが混在している。
未実現の主要項目
NHK改革
まず、NHK受信料のスクランブル化については、公約の中心であったにもかかわらず実現への道筋は厳しい。
浜田氏自身、立法措置を講ずるまでには至っていない。
ただ、公約に関連してNHKの同時配信と受信契約義務の問題など、受信料制度の論点を国会や質問主意書で繰り返し取り上げたことは事実であり12、NHK改革を粘り強く訴えることで一定の世論喚起には貢献したといえる。
憲法改正
憲法改正についても、浜田氏個人は積極推進の立場だが少数会派ゆえ改憲論議のテーブルには乗りにくく、公約に掲げた国会発議の実現には至っていない。
もっとも憲法審査会における議論活性化を主張するなど、姿勢としての一貫性は保っている。
防衛政策
防衛費のGDP比2%増額や敵基地攻撃能力保有に関しては、岸田政権下で防衛費増額が現実の政策となったものの、これは自民党主導で進んだもので浜田氏の直接的関与は限定的だった。
ただ彼は増額財源の議論で「防衛増税」よりも歳出見直しを主張し、公約に沿って防衛力強化と財政健全化の両立を訴えている。
部分的実現・政策反映項目
一方、公約項目の中で部分的に実現または政策反映が見られたものもある。
税制・社会保険
例えば「消費税減税・社会保険料引き下げ」の件では、消費税そのものの減税は政府に否定され続けているものの8、浜田氏は2023年末の与野党協議で浮上した所得税減税・納税猶予策などに賛意を示しつつ、「社会保険料こそ家計の重荷であり恒久的減負担を検討すべき」と主張8。
結果的に子育て支援策としての社会保険料上乗せ(事実上の負担増)には反対の立場を取り、少数ながら異論を唱えたことで議論に一石を投じた。
政治制度改革
選挙公約で触れていた若者の政治参加・被選挙権年齢引き下げも、2022年時点では議論の端緒に過ぎなかったが、その後若手議員らによる選挙制度改革案の中で論点化され、浜田氏も政治改革特別委員会で「若者が立候補しやすい制度設計」を求める発言を行った18。
これは公約の理念を国会論戦に反映させた例と言える。
コロナ対策
また、コロナ禍対策に関して公約にあった感染症司令塔組織の設立は、政府が2023年にようやく設置した「内閣感染症危機管理庁」として実現に近い形となった。
浜田氏はこれを評価しつつも、マスク着用ルールの政府ガイドライン緩和時には「屋外では原則マスク不要ともっと明確に周知すべきだ」と提言し、公約で掲げた「屋外マスク解禁」について自ら発信していた(実際に2023年春以降、屋外でのマスクは個人判断となった)。
エネルギー政策
エネルギー政策の原発再稼働に関しても、政府が安全性確認済み原発の再稼働方針を打ち出したことに浜田氏は賛同を示し、公約の方向性と一致する動きとなっている。
総合評価
こうした公約と実績の突合せをキーワード単位で見ると、「NHK」「減税」「憲法改正」など、公約文書で頻出した語の多くが国会発言でも繰り返し登場していた半面、「核武装」「被選挙権」など実現にハードルが高いテーマは発言数が限られ、公約上の大胆さに比して実績は乏しい。
浜田氏自身、限られた発言機会を最大限活かして公約項目に触れようとしているものの、一人会派ゆえ質問時間も短く、全方位の公約をすべてフォローすることは難しかったと言えるだろう。
それでも、公約上トップクラスの重要語であった「NHK」「受信料」については国会質問主意書を通じて言及を続け12、減税についてはほぼあらゆる場面で提唱し続け36、政策実現に向け気を緩めていない点は評価できる。
今後、浜田氏が議席を維持し影響力を高めていけば、これら公約の中から幾つかは具体的な立法や制度変更として結実する可能性も残されている。
現時点では「有言実行」というより「有言不屈」の段階だが、少数派の壁に挑みつつ公約実現を目指すその姿勢は、政治に新風を吹き込む存在として注目に値する。
参考資料
公式資料
- 参議院公式サイト「浜田聡 議員情報」(経歴・役職)138
- 参議院会議録情報「懲罰委員会経過(ガーシー議員懲罰)」(令和5年2〜3月)2930
- 参議院質問主意書データベース(浜田聡提出質問主意書各種)1314
議会資料
報道資料
- 朝日新聞「NHK党の公約 2022参院選」(2022年6月21日)6
- 毎日新聞「令和の選挙のカタチ:『投げ銭』政治資金?...」(2025年6月6日)35
- 読売新聞オンライン記事(2023年2月8日付、参院調査会での浜田氏質疑に関する記述)20
本人発信・その他
- 浜田聡公式ブログ「参議院選挙2022公約と選挙戦情勢」(2022年7月3日)39
- 浜田聡公式サイト(提出質問主意書一覧)12
- Twitterプロフィールおよび投稿36
- YouTubeチャンネル統計(vidIQ)3334
- Wikipedia「浜田聡」(最終更新2024年)45
1 3 38 浜田 聡(はまだ さとし):参議院 https://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/giin/profile/7019041.htm 2 4 5 22 23 24 25 26 浜田聡 - Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/浜田聡 6 7 8 9 10 NHK党の公約 2022参院選:朝日新聞 https://www.asahi.com/articles/ASQ6J625RQ63UTFK00Y.html 11 12 議員 · REPLOG | レプログ https://replog.jp/rep/4140/ 13 [PDF] 内閣参質二一七第一四一号 - 参議院 https://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/syuisyo/217/toup/t217141.pdf 14 [PDF] 参議院議員浜田聡君提出天皇及び皇族が御結婚される際に例外的な ... https://yamanaka-bengoshi.jp/wp-content/uploads/ 2022/01/%E5%8F%82%E8%AD%B0%E9%99%A2%E8%AD%B0%E5%93%A1%E6%B5%9C%E7%94%B0%E8%81%A1%E5%90%9B%E6%8F%90%E5% 15 16 18 19 参議院 浜田聡 | 国会審議映像検索システム https://gclip1.grips.ac.jp/video/dietmember/917/show 17 第210回国会 参議院 総務委員会 第5号 令和4年12月1日 | テキスト表示 https://kokkai.ndl.go.jp/simple/detail?minId=121014601X00520221201 20 「一番恐れていた質問が来ました」と参考人に言わせたNHK党浜田 ... https://go2senkyo.com/seijika/184652/posts/550554 21 [PDF] 参議院議員浜田聡君提出政府の有識者起用の在り方及び選任基準 ... https://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/syuisyo/217/toup/t217175.pdf 27 [PDF] 別紙答弁書を送付する。 - 参議院議員浜田聡君提出政治資金監 https://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/syuisyo/213/toup/t213164.pdf 28 浜田 聡 参議院議員 2025年7月参院選挑戦予定 https://x.com/satoshi_hamada/status/1734586953952289174 29 30 31 懲罰委員会経過:参議院 https://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/koho/211/keika/ke2700031.htm 32 BIGFRIEND @bigfriend0915 - Twitter Profile | Instalker https://instalker.org/bigfriend0915 33 34 参議院議員 浜田 聡's Subscriber Count, Stats & Income - vidIQ YouTube Stats https://vidiq.com/youtube-stats/channel/UCFdD4l0QtLRrWwO21VTyhow/ 35 「投げ銭」スパチャは政治資金? 「ネットどぶ板」追いつかぬ法制度 https://mainichi.jp/articles/20250606/k00/00m/010/367000c 36 浜田 聡 参議院議員 2025年7月参院選挑戦予定 - X https://x.com/satoshi_hamada 37 トマホークチャンネルさんに出演させてもらいました https://www.kurashikiooya.com/2022/03/19/post-14429/ 39 参議院選挙2022は残り1週間 NHK党の政見放送、そして選挙の行方は!? | 参議院議員 浜田聡のブログ https://www.kurashikiooya.com/2022/07/03/post-15041/