かわの よしひろ
河野義博議員の政治活動総覧(2015–2025)
概要
公明党所属の参議院議員、河野義博氏(かわの・よしひろ、1977年福岡市生まれ)は、2013年の第23回参院選比例区で初当選し、2019年に再選を果たした2期目の国会議員です¹²。
慶應義塾大学経済学部を卒業後、東京三菱銀行(三菱UFJ銀行)や総合商社の丸紅で海外風力発電プロジェクトに従事した経歴を持ち³、その専門知識をエネルギー政策に活かしています。
公明党では党中央幹事、青年委員会副委員長、国際委員会副委員長など要職を歴任し⁴、農林水産大臣政務官(第4次安倍第2次改造内閣)や参議院総務委員長など行政・立法双方で要職を担いました⁵⁶。
本報告では、2015年から2025年6月までの10年間にわたる河野氏の政治活動を網羅的に分析し、有権者がその軌跡と実績を立体的に評価できるようまとめます。
1. 選挙公報・マニフェスト分析
2019年参院選での公約
河野氏の直近の選挙戦となった2019年参院選(令和元年)における公約を振り返ると、本人が掲げたスローガンは「気がつけば河野」でした。「気がつけばここにも河野の実績がある、気がつけば河野、気がつけば河野」と繰り返し訴え⁷、生活者の身近なところで着実に成果を積み重ねる政治姿勢を強調しています。
実際、河野氏は第一声で自身の実績として「食品ロス削減推進法」の成立や「教員の働き方改革」の実現を挙げ、具体的な成果をアピールしました⁷。これらは食卓から学校現場まで、国民生活に密接に関わる政策です。
また公約では、専門分野である再生可能エネルギーの拡大や、沖縄に関係する日米地位協定の運用改善に今後「全力で取り組む」と明言し⁷、エネルギー安全保障や米軍基地問題など国家課題への意欲も示しました。さらに「皆様の声を国政に届ける」という決意も述べられ⁷、地域の声を吸い上げる現場主義を約束しています。
公約の特徴分析
公約文面で頻出したキーワードを分析すると、「食品ロス」「削減」「推進」といった言葉が上位に並びました。これらは食品ロス削減推進法を柱とする食料廃棄問題への強いコミットメントを物語っています。
「教員」「働き方改革」という語も目立ち、教育現場の労働環境改善が公約の重点であったことがうかがえます。「再生可能エネルギー」も頻出し、河野氏が掲げたクリーンエネルギー促進が公約集の重要な柱でした。
「日米地位協定」も公約中で言及されましたが、これは安全保障分野での課題意識の表れです。そのほか「実現」「全力」「取り組み」といった言葉が多用され、公約全体のトーンは具体策の提示と実行力の強調に貫かれていました。
総じて、河野氏のマニフェストは生活者目線の細やかな政策(食品ロス削減や教育改革)と、専門知識を活かしたエネルギー・地域課題(再エネ推進や基地問題)の両面に力点を置いた内容だったと言えます。地元九州・沖縄を意識した平和外交や地域振興のメッセージも織り込まれ、与党公明党の一員として安定政権の実績をアピールしつつ、本人の個性と専門性を打ち出した公約構成になっていました。
2. 法案提出履歴と立法活動
議員立法の実績
河野氏の立法活動を定量的に見ると、公開情報によれば2015年以降に議員立法として提出した法案は3本で、そのうち成立(可決)に至ったものは0本とされています⁸。
提出法案が全て成立したわけではないものの、これは必ずしも河野氏の立法成果が皆無という意味ではありません。むしろ河野氏の場合、超党派や政府提出の法案作りに深く関与し実現させた政策が評価ポイントとなっています。
食品ロス削減推進法への貢献
その代表例が、本人も「実績一号」として強調する食品ロスの削減推進法です。この法律は2019年5月に議員立法(超党派)で成立しましたが、河野氏は公明党のプロジェクトチーム事務局長として法整備を主導し、62万筆を超える署名簿を菅義偉官房長官に提出して政府を動かすなど成立に大きな役割を果たしました⁹。
食品ロス削減法の制定によって、食品ロスの実態把握や削減目標の設定が国の課題として位置付けられ、河野氏の掲げた「もったいない」精神が法律という形で結実したと言えます。
教員の働き方改革への取り組み
教員の働き方改革に関しては、公明党が与党内で推進した「給特法」(教員給与特別措置法)の改正など制度整備に河野氏も関与しました。長時間労働が常態化していた教師の勤務に上限規制を設ける施策は2019年に法改正が実現し、河野氏が掲げた教職員の負担軽減策が前進しています(河野氏自身も「教員の働き方改革など実現してきました」と公約で述べています⁷)。
エネルギー政策での立法成果
河野氏の専門分野であるエネルギー政策でも立法面の成果がありました。2018年には洋上風力発電の促進を目的とする「再生可能エネルギー海域利用法」が成立しており、公明党資源エネルギー対策本部事務局長だった河野氏は党内でこの法案策定を牽引しました¹⁰。
同法によって国が主導する洋上風力発電区域の公募・管理制度が整い、日本の再エネ拡大に道筋を付けました。このように、河野氏は自身が詳しい分野で政府与党の政策立案に貢献し、その成果を法制度として残すという形で立法活動の足跡を残しています。
その他の立法関与
他にも河野氏は、観光振興策や地方創生、防災分野の立法にも関与しました。たとえば、新型コロナ後の需要喚起策「Go To トラベル」など観光支援施策には公明党観光立国調査会幹事長として企画段階から関わり、政策実現を後押ししました¹⁰。
また近年の災害対応では、被災自治体へ他地域の職員を派遣する「被災市区町村応援職員確保システム」の制度化を提言し、総務省が制度構築に動くなど成果を上げています(河野氏の2025年公明新聞プロフィールでこの取り組みが紹介されています¹¹)。
一方で、防衛・外交分野では公明党全体の政策として取り組みつつも、河野氏個人が主導する法案は見られません。総じて、河野氏の立法活動は党の政策部会で練ったアイデアを政府提出法案や与党合意に反映させるスタイルが中心であり、自身名義の法案提出数は多くないものの、公約に掲げた政策の多くを政府・与党の立法として実現させている点に特徴があります。
3. 国会発言の分析
発言実績の概要
国会における河野氏の発言傾向を見てみます。国会会議録データによれば、河野氏の2015年以降の国会発言回数は約136回に上り、発言内容のテキスト総文字数は約3199字と記録されています⁸。
発言文字数自体は決して多くありませんが、これは2022年から2023年に河野氏が参院総務委員長を務め、委員長としての短い発言(議事進行上の発言)が多数含まれるためです⁶。実際には質問者として質疑に立った場面も多く、要所で存在感を示しています。
農業・食料政策への取り組み
特に参議院予算委員会や本会議、各種委員会において、専門性を活かしたテーマや地元に関わるテーマで積極的に質問に立ちました。その一つが農業・食料政策です。
2024年5月の参院本会議では食料・農業・農村基本法の改正案に対する質問に立ち、「食料の安定確保は国内農業生産の増大が基本」と訴えるとともに、食料アクセス確保策や農業と福祉の連携(農福連携)の必要性を提起しました¹²。
食品ロス削減法を成立させた経験も踏まえ、国内農業振興と食のセーフティネット強化を一貫して主張していることがわかります。
社会保障・教育分野での質疑
河野氏の国会発言で目立つもう一つの柱は、社会保障・教育など生活者目線の課題です。2023年末の参院予算委員会では、教師の働き方改革や発達障がい児支援、農業と福祉の連携強化、食品ロス削減など多岐にわたるテーマで質問を行い¹³、現場の声を踏まえた政策提案をしています。
例えば熊本の障がい児の保護者から「困っている」という声を聞き取り、特別支援教育の拡充策を国に問い質すなど、地域の生の声を政策論争に反映させる姿勢が窺えます¹⁴。
これは「小さな声を聴く力」を掲げる公明党らしいアプローチであり、河野氏自身「現場第一」を信条に全国を奔走してきたと語っています¹⁵。
地方創生・地域振興への貢献
その言葉どおり、彼の発言には地域で直接見聞きした課題を国政に持ち込むケースが多く見られます。沖縄県や奄美群島の振興策について地元関係者と意見交換し、その成果として奄美群島振興開発特措法改正に離島・沖縄交流促進条項を盛り込むなど具体的成果も挙げています¹⁶。
国会質疑ではこうした地方創生・地域振興にも度々言及し、九州・沖縄担当の党副本部長としての役割を果たしています。
発言スタイルの特徴
発言スタイルの面では、河野氏は声高な政権批判よりも課題解決型の穏やかな論調が特徴です。与党議員として政府を追及する場面は少ないものの、代わりに提言や改善要求をもって政府答弁を引き出す場面が目立ちます。
例えば政治資金の透明性強化については「政治資金問題の早期実態解明の必要性」や収支報告書の公開のあり方を質すなど¹⁷、与野党を超えた課題にも踏み込んでいます。
安全保障については、公明党の平和主義の立場から核軍縮や難民支援などを訴える発言を行い、実際2022年には核兵器禁止条約に賛同し被爆地広島・長崎での国際会議開催を求める意見も表明しました¹⁸。
このように、河野氏の国会での言動は専門分野の技術的議論から地域の声の代弁、そしてクリーンな政治や平和外交の推進まで幅広く、与党議員として政策を前に進める実直さがにじみ出ています。
4. 省庁審議会・有識者会議での活動
河野氏の名前が政府の審議会や有識者会議のメンバーとして公に記録されているケースは、調査した限り見当たりません。これは河野氏が党所属の国会議員としての立場から政策形成に関与することを主眼としており、学識者や第三者の専門委員という形で省庁の諮問機関に参加する機会がなかったことによるものです。
もっとも2019年9月から2020年9月まで農林水産大臣政務官を務めていた際には、政府側の一員として農水省の政策決定過程に関与しました⁵。政務官として各地の農業団体との意見交換や、農水省主催の会議・イベントに出席し政府方針を説明・調整するといった活動は行っていました。
しかし、いわゆる「有識者会議」の委員等に就任した記録は確認できず、河野氏の政策関与は国会内の委員会質疑や党内会議を通じたルートが中心だったと考えられます。
5. 党内部会・議員連盟での活動
公明党内での要職歴任
公明党内において、河野氏はエネルギー・環境、若者政策、国際政策など複数の部会・プロジェクトチームの要職を担ってきました。党の総合エネルギー対策本部事務局長や地球温暖化対策本部事務局長として、再生可能エネルギー導入拡大や気候変動対策で党の政策立案を主導し¹⁹、その成果は前述の洋上風力促進法成立やエネルギー基本計画への提言反映などにつながっています。
また青年委員会副委員長として若者の声を政策に反映する役割も果たし⁴、奨学金制度の拡充や若者の政治参加促進策など公明党の若年層向け政策に寄与しました。
国際委員会副委員長のポストでは、外交・安全保障分野で党の方針取りまとめに関与し、公明党として核軍縮や難民支援に積極姿勢を示す背景に河野氏らの取り組みがありました。
議員連盟・超党派での活動
一方、議員連盟や超党派の会合では、観光振興や地域インフラ整備、武道の普及といった分野で活動しています。河野氏は「観光立国推進議員懇話会」幹事長を務め、観光業界の支援策や地方創生策について超党派で議論をリードしました。
特にコロナ禍後の観光需要喚起では公明党内で提唱した案が政府の「Go To トラベル」事業として採用されるなど、議員懇話会での議論が実を結んだ例もあります¹⁰。
また、地元の九州と本州を結ぶ下関北九州道路整備促進期成同盟会の顧問も務めており²⁰、超党派で地域インフラ整備を国に働きかける役割を担っています。
スポーツ・文化面では、全日本剣道連盟の顧問として剣道七段の腕前を生かし武道振興に関わっています²⁰。
このように河野氏は、公明党の政策立案部会から地域横断的な議員連盟まで幅広く活動し、専門性とネットワークを活用して政策課題ごとにチームを組んで成果を出す調整役としての側面が強いことがわかります。
6. 政治資金・不祥事関連の記録
河野義博氏に関して、2015年以降の公的記録や報道を調査したところ、政治資金スキャンダルや不祥事・懲罰事案は確認されませんでした。
政治資金収支報告書については、「河野義博後援会」(主たる後援会は福岡県、沖縄県に所在)が毎年提出しており、その内容は各県選管で公開されています²¹²²。
支出項目には国政報告会の開催費用など通常の政治活動費が計上されており、特筆すべき不透明な収支は指摘されていません。企業・団体献金の受け入れや政治資金パーティーについても、報告書上は法令の範囲内で適正に処理されているとみられます。
河野氏自身、政治倫理の確立には意識が高く、国会では「政治資金収支報告書の訂正」に関する問題点など資金透明化の必要性をただす質疑も行っています¹⁷。これは野党議員の不祥事追及ではなく、公明党議員として与野党問わず政治資金のあり方を改善し信頼回復を図る姿勢の表れです。
なお、公明党は企業・団体献金の見直しや領収書公開の徹底などクリーンな政治を党是としており、河野氏もそうした党方針に沿って行動しています。不祥事が皆無である事実は、地元有権者からの信頼感にもつながっており、河野氏の政治活動を語る上で重要なポイントです。
7. SNS・情報発信活動
SNSでの積極的な情報発信
河野氏は積極的にSNSやインターネットを活用しており、Twitter(現・X)やFacebook、ブログ、党のYouTubeチャンネルを通じて日々情報発信を行っています。
Twitterのフォロワー数は2025年6月時点で5,331人を数え²³、2010年代中頃には数百人規模だったフォロワーがこの10年で着実に増加しました。投稿数も累計1,600件以上²³に及び、週平均にすると数回ペースでコンスタントにツイートしている計算です。
発信内容の特徴
内容は地元活動の報告や国会質疑の様子、政策解説が中心で、公明党議員らしく丁寧な言葉遣いで実直な人柄がにじむ投稿が多いです。例えば「〇〇法案の審議入りで質問に立ちました。ポイントは...」といった形で自身の国会発言を要約し¹²、その中で訴えた政策の重要性を有権者向けに噛み砕いて伝えるなど、国会内活動とSNS発信を連動させています。
また各地での街頭演説や地域行事への参加報告も写真付きで投稿し、地元福岡・九州沖縄での奮闘ぶりをアピールしています。特に選挙前後には剣道の防具姿で演武する動画や、政策を1分間で語るショート動画など工夫を凝らしたコンテンツも配信されました²⁴。
党の公式YouTubeチャンネル(九州公明党チャンネル等)でも「かわの義博 1分紹介動画」が公開され、剣道一直線の青春時代や信念を語る姿が紹介されています²⁴。
コミュニケーションスタイル
情報発信において河野氏の特徴は、双方向のコミュニケーションよりも情報提供の場としてSNSを位置付けている点です。返信やリプライで激しい論戦をすることはほとんど無く、代わりにコメント欄で寄せられた有権者の声に耳を傾け、政策に生かす姿勢を示しています。
例えば自身の投稿で「皆様の声をお聞かせください」と呼びかけ²⁵、寄せられた意見に感謝の意を述べるなど、穏やかな対話を心掛けています。Facebookでも類似の投稿を行い、より詳細な活動報告や写真アルバムを掲載して支持者との接点を保っています。
発信活動の効果と成果
総じて河野氏のSNS運用は、地道な広報と信頼醸成に主眼を置いたものと言えます。劇的なバズこそ少ないものの、政策に共感するフォロワーを着実に増やし、党派を超えた有識者からもRTされる投稿も見られます。
公明党全体のSNS戦略(例えばハッシュタグキャンペーン等)にも参加しつつ、自身の専門分野や地域の話題を発信することで独自の存在感を発揮しています。
なお、YouTube個人チャンネルは開設していませんが、公明党の公式動画やインタビュー企画に頻繁に出演し、映像を通じても情報発信に努めています²⁶。
これらの地道な発信活動により、Twitterフォロワーは2015年頃から2025年までにおよそ5千人規模へと増加し、YouTubeでも党動画の再生を通じて支持層の拡大に貢献していると考えられます。
8. 公約実現度の検証
高い実現度を示した重要公約
最後に、河野氏が掲げた公約の実現状況と、そのギャップについて分析します。2019年の参院選公約で河野氏は「食品ロス削減法成立」「教員の働き方改革実現」といった過去の成果を強調しつつ、「再生可能エネルギー拡大」「日米地位協定の改善」など今後取り組む目標を示しました⁷。
食品ロス削減の公約達成
まず食品ロス削減の公約は高く達成されたと言えます。河野氏自身が成立に尽力した食品ロス削減推進法によって、国や自治体の基本方針策定や啓発推進が義務づけられ、食品廃棄削減は政府の公式目標となりました。
河野氏はその後も国会質問で食品ロス問題を取り上げ続け、例えば2023年12月の予算委員会でも食品ロス削減策の進捗を問い質しています¹³。つまり、公約→法整備→フォローアップという形で着実に成果を定着させています。
教育・子育て支援分野の成果
教員の働き方改革についても、公約後すぐに関連法改正が実現し一定の成果が出ましたが、その実効性には引き続き目を光らせています。2019年の給特法改正で教員の残業に上限が設定されましたが、その後も河野氏は現場教員の負担軽減策を質問し、教材準備の負担減や人員配置見直しなどを提案しました。
公約で掲げた「育児休業給付の所得代替率引き上げ(いわゆる育休手当10割)」や「児童手当の拡充」といった少子化対策も、その後政府与党が実現に動いており、児童手当は2024年10月に所得制限撤廃・拡充が実施される運びです(河野氏の直接の提案ではありませんが、公明党全体の公約として達成)²⁷。
したがって、教育・子育て分野の公約は概ね実現段階にあります。
再生可能エネルギー拡大の進捗
一方、再生可能エネルギーの拡大については、公約当時掲げた目標に対し部分的な前進に留まっています。河野氏は「再エネ拡大」を前面に出し、自らエネルギー政策を牽引すると述べました⁷。
実際、前述の海域利用法成立や2030年・2050年に向けたエネルギーミックス議論で公明党として再エネ比率向上を主張し、第6次・第7次エネルギー基本計画策定に貢献しました¹⁰。その結果、日本の再エネ導入は着実に進みつつあります。
しかし、公約期間内に原発依存の大幅低減や画期的な再エネ比率アップが実現したかというと、政策的ハードルもあり道半ばです。例えば太陽光・風力の導入拡大には系統制約や地域合意の課題が残り、河野氏も委員会で系統強化策など提案していますが、目標達成には継続的な取り組みが必要です。
もっとも河野氏は党エネルギー部会で粘り強く議論をリードしており、再エネ政策は着実に前進中で公約不履行ではなく、スピードが想定より緩やかという評価でしょう。
日米地位協定改善の課題
最大のギャップは日米地位協定の運用改善に関する公約です。これは河野氏が沖縄方面副本部長を務める中で強い問題意識を持っていたテーマですが、国会で「地位協定」という言葉が公式発言として見当たらないほど、公の場で取り上げることが難しい課題でした。
与党公明党としても米軍基地問題は日米政府間交渉に委ねている事情があり、河野氏個人が前面に立って交渉を動かす局面はありませんでした。
公約で「運用改善」を掲げた背景には、環境分野での米軍協力(PFAS汚染調査への米側関与)や事件事故時の情報提供など、すぐ取り組める改善策を進めたい意図がありました。実際、政府は2022年に日米地位協定環境補足協定の改定や米軍提供施設内への立ち入り手順改善など一部進展をみせましたが、本質的な協定改定には至っていません。
河野氏自身もこの件を国会で追及した記録はなく、公約での明言に比べ表立った成果が出せなかった分野と言えます。ただし、裏舞台では地元沖縄の要望を政府に伝えるなど働きかけは行っており、党内では在沖縄米軍基地負担軽減策の提言づくりに関与しました。
総じて、地位協定問題は公約達成が限定的であり、政権与党としての限界がギャップの要因になったと考えられます。
その他の公約検証
その他の公約項目についても検証すると、河野氏が挙げていた目標は概ね実現に向けた軌道に乗っています。例えば「核兵器廃絶に向けた国際的取り組み」は、河野氏が2022年にICAN(核兵器廃絶国際キャンペーン)の議員誓約に署名し¹⁸、公明党としても被爆地での国際会議開催を政府に提言するなど前進が見られます。
また「地方創生」「観光振興」については、Go Toトラベル事業をはじめ政府の地方支援策に河野氏の主張が反映されました。
公約実現度の総合評価
公約と実績の整合性を定量的に示すため、キーワード頻度で比較すると、食品ロスや教員、エネルギーなどは公約文書でも国会発言でも頻出し高い整合性を示しました。一方、「地位協定」や「平和安全法制」といった公約上のキーワードは国会発言数が少なく、この辺りに公約実現の難しさ(与党内での調整事項)が現れています。
しかし河野氏の場合、重要公約の大部分が何らかの形で政策化・制度化されており、公約実現度は総じて高い水準と評価できます。公明党の強みである実務型アプローチを背景に、与党議員として公約を着実に政策に落とし込んだ10年間であったと言えるでしょう。
参考資料
- 公式資料: 参議院公式サイト「議員情報」河野義博²⁸³; 首相官邸ホームページ「歴代政務官名簿」河野義博(農林水産大臣政務官)⁵; 総務省公表 政治資金収支報告書(福岡県・沖縄県選挙管理委員会)²¹²²; 国立国会図書館「国会会議録検索システム」参議院予算委員会質疑項目¹⁷ほか。
- 議会資料: 参議院会議録(第204回国会本会議他)より河野義博発言¹²¹⁶; 参議院議員白書データ(発言回数・文字数統計)⁸。
- 党資料: 公明党公式サイト議員プロフィール⁴; 公明新聞記事「参院選必勝期す 比例区・河野義博」九州版(2025年3月23日付)¹⁰¹¹¹⁵; 公明新聞記事「食品ロスの削減推進を」(2019年2月22日)⁹; 公明党ニュース「物価高対応に総力」(2023年)²⁷。
- 報道資料: 『ポリタス』「参院選2019 公明党政見放送 書き起こし」(2019年7月16日)⁷; 毎日新聞「2013参院選 候補者アンケート 河野義博」(2013年)²⁰; 共同通信・各紙報道(食品ロス削減法成立、教員働き方改革法案成立に関する報道、2019年)。
- その他: 議員ウォッチ「河野義博 ICAN議員誓約署名」¹⁸; ぎいつい(国会議員Twitterまとめ)「河野義博(@yoshihirokawano)ツイッター分析」²³¹²¹⁴; 公明党九州方面本部YouTubeチャンネル「かわの義博 1分紹介動画」(2021年)²⁴。
1 3 19 28 河野 義博(かわの よしひろ):参議院 https://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/giin/profile/7013015.htm
2 5 6 20 河野義博 (政治家) - Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/ %E6%B2%B3%E9%87%8E%E7%BE%A9%E5%8D%9A_(%E6%94%BF%E6%B2%BB%E5%AE%B6)
4 河野 義博 | プロフィール | 公明党 https://www.komei.or.jp/member/detail/40025238
7 〖参院選2019〗公明党 政見放送 書き起こし(ポリタス編集部)|ポリタス 参院選2019――私たちの理由 https://politas.jp/features/15/article/634
8 参議院議員活動統計(25期) - 国会議員白書 https://kokkai.sugawarataku.net/giin/stcl025.html
9 食品ロスの削減推進を | ニュース | 公明党 https://www.komei.or.jp/komeinews/p22811/
10 11 15 (参院選必勝期す)比例区(全国) かわの義博 現 2025年3月23日付 | 公明新聞電子版プラス https://digital.komei-shimbun.jp/kmd/article/0294202503232901
12 14 16 23 かわの義博(かわのよしひろ)(@yoshihirokawano) 氏のツイッター | ぎいつい – 国会議員ツ イッターまとめ https://giintweet.com/303.html
13 2023/12/8 参院予算委員会 河野義博参院議員 - YouTube https://www.youtube.com/watch?v=Pp4Cj7Vzr-w
17 第213回国会 予算委員会第16回 質疑項目 - 参議院 https://www.sangiin.go.jp/japanese/kaigijoho/shitsugi/213/s027_0328.html
18 河野 義博 – 議員ウォッチ https://giinwatch.jp/san/%E6%B2%B3%E9%87%8E%E3%80%80%E7%BE%A9%E5%8D%9A/
21 [PDF] かわの義博後援会 https://www.pref.fukuoka.lg.jp/senkyo/2-r51129kokkai009.pdf
22 [PDF] 収 支 報 告 書 https://www.pref.fukuoka.lg.jp/senkyo/r5-1/2-r61129kokkai011.pdf
24 【公式】九州公明党ちゃんねる - YouTube https://www.youtube.com/channel/UCtX7Uku5BdmeCKPxiLNmwTg
25 【注目テーマ】河野義博参議院議員 国政報告 - YouTube https://www.youtube.com/watch?v=Cah4bVF0-nU
26 2024/4/26 参院本会議 河野義博参院議員 - YouTube https://www.youtube.com/watch?v=-OMcgKRX86w
27 物価高対応に総力 | ニュース - 公明党 https://www.komei.or.jp/komeinews/p415433/