ひが なつみ
比嘉奈津美議員の政治活動総覧(2015–2025)
概要
比嘉奈津美(ひが なつみ)議員は沖縄県沖縄市出身の歯科医師であり、自由民主党所属の国会議員です。1958年10月3日生まれの彼女は福岡歯科大学を卒業後、地元で「なつみ歯科医院」を24年間開業し地域医療に貢献してきました。
2012年の第46回衆議院選挙で沖縄3区から初当選し、2014年の第47回衆院選でも再選、衆議院議員を通算2期務めました。在任中の2016年には第3次安倍第2次改造内閣で環境大臣政務官に就任し、政府の一員として環境行政に携わりました。
しかし2017年の衆院解散総選挙では議席を失い、一時国政を離れます。その後、歯科医師会など業界の厚い支持を背景に2019年の参院選比例代表に立候補し、次点となりましたが、2021年10月に同党の北村経夫氏の衆院鞍替えによる繰上当選で参議院議員に復帰しました。
翌2022年7月の第26回参院選比例区では正式に当選し、現在1期目の参議院議員(比例代表)として活動しています。党内では茂木派に所属し、参議院では厚生労働委員長や参院国会対策副委員長といった要職を歴任するなど、与党内で存在感を高めています。
本レポートでは、2015年から2025年までの10年間にわたる比嘉議員の政治活動を網羅的に分析し、有権者が同氏の歩みとスタンスを立体的に理解できるようまとめます。
1. 選挙公報・マニフェスト分析
歯科医療を軸とした政策展開
比嘉奈津美議員の直近の公約を見ると、彼女は自身の専門分野である歯科医療を軸に据えた政策を前面に掲げています。2022年参院選時の選挙公報や公式サイトには「歯科界みんなの笑顔のために!」というスローガンが大きく掲げられ、歯科医師・歯科衛生士・歯科技工士といった「デンタルファミリー」の立場から日本の医療課題に取り組む決意が示されました。
7つの重点施策
公約では特に7項目の重点施策が語られており、その内容は歯科医療の充実に集中しています。例えば「国民皆保険制度を守ります」と謳い、誰もがいつでも必要な歯科診療を受けられる体制を維持・強化する方針を明言しました。
また「歯科医療への適正評価を得られるようにします」として、精密な歯科治療が正当に報われるよう保険報酬の矛盾是正に取り組む決意を示しています。さらに「生涯を通じた歯科健診の実現」を掲げ、全身の健康維持のために切れ目ない歯科検診制度を構築することを約束しました。
歯科医療従事者への支援策
こうした歯科医師向けの公約に続き、「歯科衛生士が安心して働ける環境整備」や「歯科技工士の地位向上」など、歯科医療従事者それぞれに対する支援策も具体的に挙げています。
公約から浮かび上がるキーワードは「歯科」「医療」「健診」「保険」「評価」「予防」といったものが上位に並び、比嘉氏が歯科医療の現場目線で制度改善に情熱を注いでいる様子がうかがえます。頻出する語彙からも、歯と口腔の健康を国民全体の健康増進の基礎と捉える姿勢が読み取れ、医療政策の中でも歯科・予防医療を重視するスタンスが明確です。
「デンタルファミリーのための政策!」と銘打った公約全体を通じ、彼女は自らの専門性を活かして国政に新風を吹き込みたいという強い意欲を物語っています。
2. 法案提出履歴と立法活動
衆議院議員時代の立法活動
立法面での比嘉議員の動きを見ると、与党議員らしく政府提出法案の審議に尽力する一方、自ら法案を主導して提出した例は多くありません。衆議院議員在任中(2012–2017)は新人・若手という立場もあり、本会議での代表質問や答弁の経験はなく、議員立法の提出者となった記録も公式には確認されていません。これは与党内での役割上、個人法案の提出よりも党提案や政府法案のサポートに回ったことを示しています。
超党派議員連盟での活動
もっとも、議員連盟などを通じた超党派の立法活動には関与しており、例えば2014年には超党派「山の日」議連の一員として8月11日を新たな国民の祝日「山の日」に制定する法律案の成立に尽力しました。この法案は衛藤征士郎氏ら与野党共同提出により可決されたもので、比嘉氏も自然保護や観光振興の観点からその成立を後押ししたとされています。
また、教育現場でのいじめ防止対策推進法案など複数の超党派法案に賛同者として名を連ね、議員立法による社会問題解決にも一定の貢献をしました。
環境政務官としての法案関与
さらに、2016年には環境政務官として政府提出の環境関連法案の立案と国会審議に携わり、南西諸島のサンゴ礁保全策強化にも関与しています。
参議院議員としての立法関与
参議院議員となった2021年以降も、個人立法の提出こそないものの、国会対策副委員長として与党の法案審議を取り仕切り、法案成立に陰ながら貢献しています。特に2023年には防衛費財源確保法案や子育て支援関連法案など重要法案の採決取りまとめに尽力し、与党内協議でも調整役を果たしました。
また、防衛省と米軍の駐留経費に関する特別協定の承認案など、安全保障分野の法案審議では党代表質問者に指名され、本会議壇上から政府に質問する大役も担いました。こうした経験は彼女の立法府での発言力向上につながっています。
全体として比嘉議員は、オーナーシップを取った法案提出よりも与党内の調整役・専門分野でのブレーンとして立法過程に関わり、結果的に自身の政策志向を実現する道を歩んでいると言えるでしょう。
3. 国会発言の分析
衆議院議員時代の発言
国会での発言回数や内容からは、比嘉議員の存在感と専門性が浮き彫りになります。衆議院議員時代、彼女は本会議での登壇機会こそありませんでしたが、委員会では沖縄や医療分野に関する質疑で発言しています。特に沖縄選出議員として、地元経済や米軍基地問題について政府見解をただす場面も見られました。
2015年から2017年にかけては消費者問題特別委員会や予算委員会で政府に対する質問を行い、沖縄の振興策や基地負担軽減策について言及しています(2015年7月9日消費者問題特委など)。
環境政務官時代の発言
環境政務官在任中は政府側答弁者として質問に応じる立場になり、2016年8月5日の就任会見では「歯科医師としての経験から環境行政にも新たな視点を提供したい」と抱負を語りました。
参議院での発言増加
参議院に移ってからは発言機会が飛躍的に増え、2022年3月には本会議代表質問デビューを果たしています¹。このとき比嘉議員は与党を代表し、在日米軍駐留経費に関する日米特別協定について政府に質問を行いました。沖縄出身の彼女が安全保障案件で質問に立ったことは注目を集め、自身も「自民・公明を代表して...質問いたします」と堂々と切り出して政府方針をただしています。
さらに2025年1月には、第217回国会で石破茂首相の施政方針演説等に対する代表質問という大役も担い、戦後80年を迎える日本の課題について包括的な質疑を行いました。
発言内容の傾向
発言内容の傾向を見ると、頻出語は「医療」「歯科」「社会保障」「沖縄」「基地」などであり、彼女が専門の医療政策と地元沖縄の問題を二本柱に据えていることが分かります。例えば参議院予算委員会では岸田首相に対し「令和6年の歯科診療報酬改定で歯科医療の評価引き上げを」と直言し、歯科医師の立場から医療予算の充実を訴えました。
また決算委員会では歯科口腔保健の重要性に言及し、全世代型社会保障における予防歯科の役割を強調しています。
発言回数の変化
発言総文字数も衆院時代は少なかったものの、参院で委員長職に就いてからは議事進行発言も含め急増しました。厚生労働委員長として毎週のように委員会で発言しているため、形式的な発言を含めれば直近数年の発言回数は数百回規模に上ります。委員長発言は議事上のものが中心ですが、それでも「本日は○○法案の審査のため...」と議事を進める一言一言が積み重なり、発言記録の文字数も相当量にのぼっています。
専門知識に裏打ちされた発言
こうした数字の陰で、質疑での彼女の言葉は常に具体的で専門知識に裏打ちされている点が特徴です。歯科医療の現場例を引き合いに出して政策提言するスタイルは説得力があり、「平均寿命世界一の日本を支える歯科の役割」を力説する様子が国会中継でもしばしば映し出されています。
総じて比嘉議員は、与党議員として堅実に持ち場をこなしつつ、自分の得意分野では積極的に発言し存在感を示すというバランス型の国会活動を展開していると言えるでしょう。
4. 省庁審議会・有識者会議での活動
環境政務官時代の審議会参加
比嘉奈津美氏は国会議員としてだけでなく、省庁の審議会や政府の有識者会議にも関与してきました。まず顕著なのは環境大臣政務官を務めた時期(2016–2017)で、環境省が主催する会議に政府代表として出席しています。
例えば2016年~2017年に沖縄県でサンゴ礁の白化被害が深刻化した際、環境省は「サンゴ大規模白化緊急対策会議」を開催しましたが、比嘉政務官はこの場に出席して冒頭挨拶を行い、関係者を激励しています。南国沖縄育ちの議員ならではの思いも込め、「皆様、おはようございます。...貴重なサンゴ資源を守るため全力で取り組みます」と述べたとされます。
男女共同参画会議への参加
また2017年5月には内閣府の男女共同参画会議(第52回会合)に環境政務官として参加しました。同会議には副大臣・政務官級がオブザーバー参加し各省の取組を共有しますが、比嘉氏も防衛政務官らと共に列席し、女性活躍や男女平等施策について意見交換しました。
沖縄振興審議会での活動
環境省以外にも、彼女は国交省所管の「沖縄県振興審議会」に歯科医師会の有識者として招かれた経歴があります。沖縄振興審議会の平成23年4月会合では委員の一人として「歯科医療の立場から離島医療に貢献したい」と意見を述べています。これは政界進出前の活動ですが、専門知識を政策提言に活かした例と言えます。
政務官退任後の活動
分析期間内(2015–2025)では、政務官退任後こそ公式に政府審議会メンバーを務めた記録は多くありませんが、2023年には政府が進める全世代型社会保障構築会議に参考人として呼ばれ、歯科医療充実に関する提言を非公式に伝えたとも報じられました。
全体として比嘉氏は、大臣政務官時代に培った行政のネットワークを活かしつつ、自らの医療分野の知見を行政の場にも届けようと努めています。参加記録が少ないのは裏を返せば不祥事等で表沙汰になる問題がなくクリーンである証拠とも言え、与えられた役割で堅実に職責を果たしたと評価できます。
5. 党内部会・議員連盟での活動
自民党内での部会活動
党内活動に目を転じると、比嘉奈津美議員はいくつかの重要な部会や議員連盟(議連)に参加し積極的な役割を担ってきました。まず、自民党の政策立案の基本単位である部会では、彼女は厚生労働部会や沖縄振興調査会などに所属し、専門知識を提供しています。
歯科医師として医療系部会では歯科医療の現状を訴え、診療報酬改定時には「歯科医療機関への物価高騰対策支援」を求める要望を部会長の萩生田光一氏らに提出する場にも同席しました。
女性局での活動
また、女性局次長として党女性局の活動にも深く関わっています。2024年や2025年の女性局役員会では幹部の一人として会議を主導し、新局長の松川るい氏のもとで女性政策の企画立案に携わりました。全国各種女性団体との意見交換会やウーマノミクス推進の会議にも同席し、沖縄出身の女性議員として地域女性の声を中央に届けています。
議員連盟での活動
さらに、複数の議員連盟に所属し、その活動を通じて政策を前進させています。特筆すべきは国際観光産業振興議員連盟、通称「IR議連」です。日本にカジノを含む統合型リゾートを推進するこの超党派議連には、自民党内の観光政策推進派として参加し、2016年末のIR推進法成立に賛成票を投じました。沖縄はIR誘致の議論もあった土地柄であり、観光産業振興を掲げる比嘉氏は党の立場としてIR解禁を後押ししたことになります。
TPP関連の勉強会参加
また、TPP交渉における国益を守る会という党内グループにも参加していました。これは2013年前後に結成された勉強会で、TPP(環太平洋経済連携協定)交渉で日本の農林水産業や医療制度を守ることを目的にしています。歯科医療分野でも混合診療の是非などTPPに絡む論点があり、比嘉氏は医療専門の立場から発言し、国民皆保険の堅持を訴えました。
その他の議員グループ
同様に、日本を明るくする会という議員グループにも所属し、美しい国づくりや道徳教育推進といった保守系議員の活動に参加しています。この会は旧統一教会系との関係もうわさされますが、比嘉氏自身は地方の奉仕活動など前向きな趣旨で関わっていたようです。
総じて、彼女は党内では専門性を活かす政策グループと地元・保守系の団結グループの双方に属し、政策形成から選挙応援まで幅広く活動しています。その姿は決して派手ではないものの、与党内で着実に信頼を築き仲間と協調して成果を上げる「調整型」の政治家像を示しています。
6. 政治資金・不祥事関連の記録
派閥パーティー券問題
比嘉奈津美議員に関する政治資金やスキャンダル面の記録は、大きな不祥事こそありませんが、いくつか報じられた事例があります。一つは派閥の政治資金パーティー券に絡む問題です。2023年、自民党茂木派が会派議員に課しているパーティー券販売ノルマを巡り、比嘉議員がノルマ超過分の2万円を派閥から"キックバック"として受け取っていたことが琉球新報に報じられました。
茂木派ではノルマ以上に券を売った議員に超過分を還元していたとみられ、比嘉氏も2022年に2万円を受領し、政治資金収支報告書の「その他の寄付」欄に記載していました。金額は僅少であり政治資金規正法上も問題のない処理とはいえ、「派閥からのキックバック」という刺激的な見出しとなり、他の沖縄選出議員(西銘恒三郎氏や宮崎政久氏ら)は「そのような返金はない」と回答しているだけに、派閥ぐるみの資金慣行が透けて見えるとして注目されました。比嘉事務所は「適法に記載しており問題ない」としていますが、クリーンなイメージの彼女にとってはやや苦い報道となりました。
旧統一教会との関係
もう一つは、旧統一教会(世界平和統一家庭連合)との関係を指摘された件です。2022年に旧統一教会と政治家の関係が社会問題化する中、自民党が追加調査を行った結果、比嘉奈津美参院議員が過去に教団関連の会合に出席し挨拶していたことが明らかになりました。
具体的には2017年10月の衆院選直前、沖縄市内で開かれた教団関連団体の「必勝祈願激励会」に候補者として招かれ、壇上でマイクを握る比嘉氏の写真がネット上に残っていました。写真の背後には文鮮明教祖夫妻の肖像が掲げられており、当時衆院議員だった比嘉氏が教団行事に参加していたことを示唆しています。
この件について2022年10月に記者から直撃された彼女は、「そこが統一教会だとは知らずに選挙応援で回った。後から知った」「(肖像は)見ても分からなかった」と釈明しました。実際、自民党本部の公表でも「関連団体の会合に本人が出席し挨拶した」とされています。比嘉氏の説明通り当時は認識がなかった可能性もありますが、結果的に名前が公表された12人の議員の一人となり、教団との接点リストに加わる形となりました。
その他の政治資金状況
この問題以外には、大きなスキャンダルや倫理問題の露呈はありません。政治資金収支報告を見ても、彼女の後援会(「比嘉奈津美○○県後援会」)は全国各地にあり、歯科医師連盟からの組織献金や後援会パーティー収入などが適切に計上されています。
強いて言えば、2019年参院選で次点に終わった際、日本歯科医師連盟が組織内候補として擁立したにもかかわらず落選したことで「力不足」を謝罪したエピソードがありました。しかしこれも不祥事ではなく、支持団体への経緯報告に過ぎません。
総じて、比嘉議員は政治とカネの面では大過なく、公私混同や不適切支出の話題も出ていません。不用意に名前が出てしまった旧統一教会の件も迅速に説明責任を果たし、大事には至りませんでした。全体として「クリーンで堅実な政治姿勢」を守っていると言え、これまでのところ有権者の信頼を揺るがす致命的スキャンダルは確認されていません。
7. SNS・情報発信活動
SNSアカウントの開設と運営
現代の政治家にとって情報発信は欠かせませんが、比嘉奈津美議員もSNSを活用して支持者との交流や活動報告を行っています。彼女は衆院議員時代には目立ったSNS発信をしていませんでしたが、参院繰上当選直後の2021年11月にTwitter(現X)アカウントを開設しました。
アカウント名は@natsumikan1003(ニックネームの「なつみかん」に由来)で、プロフィールには「参議院議員(自民党/比例代表)沖縄県沖縄市出身。福岡歯科大卒業...」と記載されています。
フォロワー数の推移
フォロワー数は開始当初は数百人程度でしたが、その後徐々に増え、2025年6月時点で約1,500人に達しています(※2023年末時点の確認で1,300~1,500人規模)。国会議員の中では決して多い方ではありませんが、比例代表の新人議員としては堅実な数字です。
デンタルミーティングの積極的な報告
投稿内容はほとんどが活動報告で、特に目立つのは全国各地で開催する「デンタルミーティング(DM)」の様子です。比嘉氏は日本歯科医師連盟の組織内候補であるため、任期中も全国の歯科医師会・歯科技工士会を巡り支持固めの集会=デンタルミーティングを精力的に行っています。
彼女のX投稿には「○月○日、○○県○○市でDMを開催。多くの歯科関係者にお集まりいただき意見交換」といった報告が連日並び、まさに日本中を東奔西走して歯科関係者の声を聴いている様子が伝わります。
政策成果のアピール
その合間には国会質問の動画クリップや、自身が関与した施策(例えば「国民皆歯科健診」が骨太方針に盛り込まれた件)の報告も投稿し、専門分野で成果を出している点をアピールしています。
Facebook・YouTubeでの情報発信
一方、Facebookでも「ひがなつみ」の名前で公式ページを運営しており、2025年時点で「いいね!」が約1,600件。こちらも地元沖縄の話題や国会活動写真を定期的にアップしています。
さらに、YouTubeでは自身のチャンネル「ひがチャンネル」を開設し、2025年現在で登録者100人強ながら計10本以上の動画を公開しています。内容は選挙中の街頭演説映像や、「なつみの部屋」と題した対談風動画などで、歯科業界の著名人や党同僚議員をゲストに政策談義をする企画もあります。再生回数はいずれも数千回程度ですが、コアな支持者に向けて肉声で訴える場として活用しているようです。
情報発信の特徴と評価
総じて比嘉議員の情報発信は堅実で専門色が強く、バズ狙いの派手さはありません。しかし、それがかえって彼女の実直さや政策本位の姿勢を表現しており、フォロワーからは「現場目線の発信が信頼できる」との声も聞かれます。
特に歯科関係者にはSNSを通じて直接働きかけ、「皆さんの声を政策に活かします」というメッセージを繰り返し届けている点が特徴です。2025年の次期参院選に向け、SNS上での支持固めにも力を入れている最中であり、今後フォロワー数や発信力がどこまで伸びるか注目されます。
8. 公約実現度の検証
公約の実現状況概観
比嘉奈津美議員が掲げたマニフェストの実現状況を検証すると、歯科医療政策の前進という観点で一定の成果と課題が見えてきます。彼女の直近公約の柱であった7つの政策公約(国民皆保険の維持、歯科医療の適正評価、生涯歯科健診の実現、歯科衛生士の職域拡大・復職支援・予防給付充実、歯科技工士の地位向上など)について、それぞれ国政での進捗を見てみましょう。
国民皆保険制度の堅持
まず「国民皆保険制度を守る」という点では、公約通り一貫して皆保険体制の堅持を主張し続けました。岸田政権下で医療保険制度の見直し議論が起きた際も、比嘉氏は与党内で「混合診療の拡大には慎重に」「保険適用範囲は安易に縮小すべきでない」と訴え、皆保険の堅持に寄与しています。大きな制度変更は行われておらず、この公約は現状維持という形で守られていると言えます。
歯科医療の適正評価
次に「歯科医療の適正評価」については、令和6年度(2024年度)の診療報酬改定で歯科報酬本体が+0.88%のプラス改定となり、わずかながら評価改善が実現しました。比嘉議員自身、2023年の参院決算委員会で岸田首相に直接「次回改定で歯科の評価引き上げを」と求めており、その直後の改定で基本診療料や在宅歯科医療の点数が引き上げられています。まだ「低すぎる」との声は根強いものの、彼女の働きかけが一定の成果に結びついたと評価できるでしょう。
生涯歯科健診の実現
公約の目玉であった「生涯を通じた歯科健診の実現」については、大きな前進がありました。2022年に政府が掲げた「骨太の方針」に「全世代での歯科健診推進」が盛り込まれ、さらに2023年6月には関連法として歯科健診法案が試案段階ながら議論に上りました。
比嘉議員は学会主催の会合で「国民皆歯科健診」の必要性を講演し、この政策を政府方針に入れるべく奔走。その結果、2023年末には政府が「職場や学校での定期歯科健診の拡充」に予算措置を講じるところまで漕ぎ着けました。法律としての制度化は今後ですが、公約に掲げた方向性が国の政策議題として正式に採り上げられた意義は大きく、実現度は高いといえます。
歯科衛生士関連施策
「歯科衛生士の職域拡大と復職支援、予防給付の実現」については、関連する動きが徐々に進んでいます。2022年に歯科衛生士の資格取得後の定着率向上策が厚労省検討会で議論され、2024年度予算案には復職支援研修の拡充費用が盛り込まれました。また介護現場での口腔ケア推進に歯科衛生士を活用する施策も地域単位で始まっています。
予防歯科の公的給付については、2022年の診療報酬改定で「う蝕・歯周病重症化予防の管理料」が新設されるなど、予防重視の流れが出てきました。これは比嘉氏が公約で掲げた「公的予防給付を実現」に通じるもので、完全ではないにせよ一歩前進といえます。
歯科技工士の地位向上
最後に「歯科技工士の地位向上」ですが、こちらは道半ばです。歯科技工士の待遇改善や人材確保は業界の長年の課題であり、比嘉議員も技工士学校の副校長経験者として声を上げています。2023年には超党派で歯科技工士支援策の議論が行われ、国家資格の周知や医科歯科連携での技工士参画推進などが提言されました。
具体的な立法措置には至っていませんが、厚労省は2025年に向け技工士の働き方改革検討会を設置予定で、比嘉氏もこれを後押ししています。公約実現まではもうひと息ですが、問題提起はなされており今後に期待がかかります。
総合評価
総合すると、比嘉奈津美議員の公約実現度は概ね良好です。とりわけ歯科健診の制度化という大きな公約は政府方針化に成功しつつあり、政権与党の一員として公約を具体的政策に昇華させる力を示しました。
一方で、歯科医療報酬の抜本的引き上げや、歯科人材(衛生士・技工士)の待遇改善など、時間を要する課題も残っています。これらについて比嘉氏自身「道半ば」と認めており、今後も委員会質疑や党内提言を通じて粘り強く取り組む構えです。
背景には、参議院厚生労働委員長として直接法案提出はしにくい立場もありますが、その分専門分野で政策をリードする役割を果たしています。2015年以降の10年間を振り返れば、公約に掲げた方向性から大きく外れることなく、徐々にではあっても確実に政策を前に進めていることがわかります。
専門家政治家として公約実現にコミットし、有権者との約束を実直に果たそうと努力している点は評価できるでしょう。
参考資料
公式資料
- 参議院議員紹介ページ「比嘉奈津美」(参議院公式サイト)
- 自民党公式サイト「参議院議員 比嘉奈津美 プロフィール・経歴」
- 比嘉奈津美議員 公式Webサイト「ひがなつみ」(政策・メッセージ等)
- 衆議院・参議院会議録(国会会議録検索システム)
- 総務省 政治資金収支報告書(各都道府県選管)
議会資料
- 国会議員白書「比嘉奈津美 衆議院議員・参議院議員 活動記録」
- 参議院本会議議事録(令和4年3月18日第208回国会本会議)¹
- 参議院厚生労働委員会議事録(令和6年5月7日第213回国会)
- 環境省「サンゴ大規模白化緊急対策会議 議事録」(2017年)
- 男女共同参画会議議事録(2017年5月25日)
報道資料
- 琉球新報「比嘉氏が派閥から2万円キックバック」(2023年12月7日)
- TBSニュース23「旧統一教会と接点が明らかになった議員を直撃」(2022年10月4日放送)
- 毎日新聞「旧統一教会 自民12人追加公表」(2022年10月1日)
- ホワイトクロスニュース「比嘉奈津美氏が診療報酬改定の財源確保を言及」(2022年10月)
- 日本歯科医師連盟プレスリリース「次期参院選比例は比嘉奈津美氏を組織支援」(2018年)
- 沖縄タイムス「比嘉奈津美氏が繰り上げ当選へ」(2021年10月20日)
- 選挙ドットコム「今夏改選を迎える比嘉奈津美議員を囲むシンポジウム」(2024年)
- NHK選挙WEB「2019参院選 比例 自由民主党 名簿」(2019年7月)²
その他
- 国会議員映像検索システム(政策研究大学院大学)「比嘉奈津美 議員審議映像」
- 自民党ニュース「第217回国会 比嘉奈津美議員代表質問」(2025年1月29日)
- Twitter(X)比嘉奈津美公式アカウント(@natsumikan1003)
- YouTube「ひがチャンネル」(比嘉奈津美公式)
1 第208回国会 参議院 本会議 第8号 令和4年3月18日 | テキスト表示 | 国会会議録検索システム シンプ ル表示 https://kokkai.ndl.go.jp/simple/detail?minId=120815254X00820220318&spkNum=32 2 比嘉奈津美 - Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/比嘉奈津美