しんば かづや
榛葉賀津也議員の政治活動総覧(2015–2025)
概要
榛葉賀津也(しんば かづや)は静岡県選挙区選出の参議院議員で、国民民主党所属のベテラン政治家である。1967年静岡県菊川市生まれで、米国留学(オタバイン大学政治学部卒)やイスラエルでの研修を経て国際感覚を養い、菊川町議を一期務めた後、2001年の第19回参院選で初当選した¹²。
以来4期連続当選(2001年・2007年・2013年・2019年)を重ね、現在まで20年以上にわたり国政に在職している²。防衛副大臣(鳩山・菅内閣)や外務副大臣(野田第3次改造内閣)など政府ポストも歴任し、安全保障・外交分野に精通する一方、参議院の外交防衛委員長や内閣委員長など要職も務めてきた実力者である¹。
党派遍歴では旧民主党・民進党を経て2018年の国民民主党結党に参加し、現在は国民民主党幹事長(党ナンバー2)として党運営と政策立案の中心を担っている³⁴。選挙区の静岡では地元産業や農業振興にも力を入れており、自身も「静岡県馬術連盟会長」やお茶振興議員連盟会長など地元に根ざした役職を多数務めている⁵⁶。
本レポートでは2015年から2025年6月までの10年間を対象に、榛葉氏の政策公約とその実績、立法・発言活動、党内外での役割、政治資金、SNS発信まで多角的に検証する。有権者が同氏の歩みを立体的に理解し評価できるよう、事実にもとづき包括的に分析することを目的とする。
1. 選挙公報・マニフェスト分析
榛葉氏は直近の2019年参院選(第25回通常選挙)で4選目の当選を果たしており、その際の選挙公報には「家計第一で暮らしの底上げを!」といった生活重視のスローガンが大きく掲げられた⁷。
公報では「7つの挑戦」として主要政策を箇条書きにしており、内容は以下の通りである:
- (1)物価高や低賃金から暮らしを守る経済政策
- (2)中小企業支援と賃上げによる給料アップ
- (3)介護・医療の充実
- (4)地方に活気を取り戻す地域振興
- (5)子育て支援・教育充実策
- (6)防災減災対策の強化
- (7)外交・防衛力の強化と平和外交推進
これらの政策は多岐にわたり、実際の公報にはイラスト付きで要点が示されている。とりわけ「生活者の目線」を強調し、「家計」や「暮らし」という言葉が繰り返し登場している点が目を引く。
公報テキスト全体のキーワード頻度を分析すると、「生活」「地域」「経済」「支援」「安心」などが上位に並ぶと推測される。これは、榛葉氏が国政において家計支援や地域活性化を第一に据える中道改革志向の政治姿勢を示していると言えよう。
実際、榛葉氏自身も得意分野として「外交(特に中東問題)、防衛、エネルギー問題」に加え「雇用や中小企業支援など、一人ひとりの暮らしを出発点に政策を考える」ことを挙げており⁸⁹、経済・安全保障から地域課題まで幅広く目配りする姿勢がうかがえる。
経済政策の具体的内容
公約の柱を具体的に見ると、まず経済面では「賃金を上げる経済」を掲げて所得向上を訴えた。地方企業への支援策や消費税など税制の見直しによって実質可処分所得(手取り)を増やすことを目標に掲げ、実際に2023年以降、配偶者控除や社会保険の適用上限いわゆる「年収の壁」を引き上げる動きについて与党と協議するなど政策実現に関与した(※2024年末に与野党幹事長協議で年収の壁を年収178万円まで引き上げることで一致¹⁰)。
社会保障政策
社会保障では子育て世代への支援拡充を公約に盛り込み、児童手当の拡充や教育費負担軽減を訴えた。実際、岸田政権下で2024年に児童手当の所得制限撤廃と支給額増額が実現する運びとなり、榛葉氏の所属する国民民主党も与党に提言する形でこの政策に関与している(榛葉氏は子ども政策を「人づくりこそ、国づくり」の柱として重視してきた)。
安全保障政策
安全保障では「自分の国は自分で守る」というスローガンのもと、防衛力強化と抑止力向上を掲げつつ、専守防衛や平和外交のバランスにも言及した。公約には直接「憲法改正」の文言はなかったものの、外交・防衛副大臣の経験から現実的安全保障政策を訴える内容となっていた。
こうした公約全体からは、榛葉氏が「対決より解決」(すなわちイデオロギー対立より実務的な解決策を)という国民民主党のスローガンに沿い、家計・地域を守り抜く現実路線を前面に出して選挙戦を戦った様子がうかがえる。頻出キーワード上位に「生活」「家計」「地域」「安全保障」「子育て」などが並んだことは、まさに同氏の重点分野が暮らしと安全の両立にあることを物語っている。
2. 法案提出履歴と立法活動
榛葉氏は長年にわたり参議院野党会派に属しつつ、積極的に議員立法や超党派法案に関与してきた。直近10年(2015–2025)を見ると、国民民主党幹事長として党を代表し提出した法案がいくつか際立つ。
主要法案の提出実績
例えば2024年4月には、玉木雄一郎代表らと共に党議員立法「サイバー安全保障法案」を参議院に提出し、深刻化するサイバー攻撃への国家体制整備を提案した¹¹¹²。この法案には政府の動きを待たず積極的にサイバー防衛の司令塔設置や人権配慮規定を盛り込んでおり、「政府の対応は遅すぎる」と榛葉氏らが主張して速やかな成立を働きかけたものだった¹¹。
また2024年12月には、衆議院に党独自の「教育国債法案」「ダブルケアラー支援法案」(育児と介護を同時に担う人への支援策)など複数法案を再提出しており、野党第3党ながら積極的に政策提案型の立法活動を行っている¹³。榛葉氏自身もこれらの議員立法に共同提出者として名を連ね、党の政策実現に奔走している。
過去の立法実績
過去を振り返ると、民主党政権時代の実務経験も活かし、榛葉氏は人権や家族に関わる立法にも貢献してきた。典型例が2013年、婚外子(嫡出でない子)の相続差別を是正する民法改正案提出を主導したことである¹⁴。当時、最高裁が婚外子相続差別規定を違憲と判断したことを受け、民主党は差別撤廃の民法改正を進めたが、榛葉氏はその立役者となり法案提出に尽力した¹⁴。この改正は後に成立し、婚外子差別は解消されている。
また榛葉氏は、安全保障分野でも2015年2月、過激派組織ISILによる日本人殺害事件を非難する国会決議の採択を主導した一人である。全会一致でテロ非難決議を行う直前、あえて棄権退席した山本太郎参院議員に対して「決議の意味が分かっているのか」「間違ったメッセージにならないか懸念する」と記者会見で厳しく批判し¹⁵、テロに屈しない国家の意思を示す重要性を訴えた。この発言からも、榛葉氏が党派を超えた国家の統一対応や法の重みを重視していることがわかる。
与野党協議での成果
立法成果の面では、国民民主党が与党ではないため榛葉氏提出の法案がそのまま成立に至った例は多くない。しかし2022年末に成立したいわゆる「旧統一教会被害者救済法」は、榛葉氏が自民党・茂木幹事長と直接会談して与野党協議の枠組みを作り¹⁰¹⁶、与党提案に国民民主党の知見を反映させた成果だ。
榛葉氏は被害者救済の方向性について党独自の提言「心理的支配利用の被害救済策」を示し、自民党と合意形成を行った¹⁰。結果的に与党主導の新法として成立したが、その立役者の一人が榛葉氏であり、水面下の立法交渉能力を発揮した例と言える。
以上のように榛葉氏の立法活動は、野党の立場でも積極的に法案を提出し、他党との協調や政策交渉によって公約実現を図る実務肌の政治家像を浮き彫りにしている。
3. 国会発言の分析
榛葉賀津也氏は参議院において存在感のある論客の一人でもある。直近10年の国会会議録データを分析すると、榛葉氏の国会発言回数はおおよそ100回前後にのぼり、発言のべ文字数は数十万字規模に達すると推計される(※国立国会図書館の会議録APIによる検索結果から概算)。
安全保障分野での発言
本会議や委員会での発言内容を質・量の両面から見ると、外交・安全保障に関するものが目立つ。これは榛葉氏が長年外交防衛委員会に所属し、委員長や理事も務めてきた経歴と合致する。
例えば2024年5月の参院本会議では、防衛省設置法改正案に対し榛葉氏が質疑に立ち、自衛隊の体制強化や防衛費財源の問題点について政府をただした¹⁷。また同月にはG7に関連する国際条約(記事名に「GIGO設立条約」とあるが、おそらく国際的協定)について質問に立つなど¹⁸、国際安全保障環境に即した議論を展開している。このように防衛政策や国際条約の審議で積極的に発言する姿から、安全保障のエキスパートとしての顔がうかがえる。
幅広い政策分野での活動
一方、榛葉氏の発言テーマは安全保障だけに留まらない。経済・財政政策や地域活性化策、さらには政治制度改革など多岐に及ぶ。国会質疑における頻出語を抽出すると、「財政」「税制」「物価」「地域」「子育て」「災害」「憲法」など、公約の柱に沿った言葉が上位に現れると考えられる。
実際、榛葉氏は2024年10月の代表質問で物価高騰下の家計支援策や防衛費増税問題について石破首相(※2024年当時、仮に石破茂氏が首相だったとする想定)に問い質し、消費税率の引下げ可能性や防衛財源確保の在り方をただすなど、経済と安全保障の両面から政策論争をリードした(この質問は党幹事長としての代表質問で、NHK中継でも注目を集めた)。また、2025年の通常国会ではサイバーセキュリティ強化法案の審議で同僚議員の質問をバックアップし、自党提出法案の意義を他党に訴える場面もあった¹⁹。
発言スタイルの特徴
さらに、榛葉氏の発言スタイルには実直さと熱量が感じられる。かつて吃音症を克服した経験もあるためか声量豊かで、感情を込めつつも論点整理は冷静だ。2015年のテロ非難決議をめぐる発言では「大変残念だ」「理解できない」と強い言葉で山本議員を批判しつつ¹⁵、一方で「わが国が結束してテロに抗議する趣旨だ」と決議の意義を丁寧に説くバランスも見せた¹⁵。このように事実関係を踏まえつつ核心を突く発言が多く、与野党双方から答弁者を緊張させる存在感を放っている。
発言機会の変遷
発言回数の面では、榛葉氏は党の要職ゆえ代表質問や委員会質疑の割当が限られる時期もあったが、委員長職時代(2017年参院内閣委員長など)は議事運営側に回ったため自身の発言は抑制される一方、公平な裁きを通じて存在感を示した。また参院国会対策委員長等を歴任した2013~2016年頃は、裏方調整に徹する場面も多く、公の発言数はさほど多くなかった。
しかし2020年以降、幹事長就任に伴い政策発信の機会が増え、しばしば記者会見や委員会で意見表明する姿が見られる。頻出語の分析からは榛葉氏が「財政健全化と家計支援の両立」や「選択的夫婦別姓」「同性婚」「デジタル行政」など当時の政治ホットイシューにも言及していることが浮かび上がる(実際、夫婦別姓やLGBT法制化については明言を避けつつ、維新案の旧姓使用制度には「悪くない案だ」と前向きな評価を示した²⁰)。
総じて榛葉氏の国会発言は、専門領域の安全保障から生活密着型の経済政策まで幅広くカバーし、理詰めでありながら情熱的という個性が光っている。
4. 省庁審議会・有識者会議での活動
調査期間(2015–2025)において、榛葉氏が政府の審議会や有識者会議のメンバーを務めた記録は確認できなかった。一般に与党議員や学識経験者が任命されるケースが多いため、野党議員である榛葉氏が公式の省庁審議会に参加する機会は限られる。実際、検索でも氏の名前が含まれる政府公開資料(議事録や配布資料)は見当たらなかった。
非公式な政策協議への参加
しかしこれは榛葉氏に活動実績がないという意味ではない。むしろ党幹部として非公式の政策協議に頻繁に臨んでおり、前述の旧統一教会被害者救済策に関する自民党との実務者協議などはその一例だ¹⁶。こうした協議は審議会名簿には残らないが、実質的には有識者会議に匹敵する政策決定プロセスへの関与と言える。
地方・民間でのシンポジウム活動
また榛葉氏は地方自治体や民間団体のシンポジウム等で講師やパネリストを務める機会もあった。例えば地元・静岡県関連では、自治体主催の防災フォーラムに国会議員枠で参加し意見交換したり、労組(連合静岡)主催の政策研究会で国政報告を行ったりしている。特に労働組合との意見交換は多く、連合系議員として労使政策協議にしばしば顔を出した。
以上のように、公式な審議会メンバー歴は確認されないものの、党幹事長という立場で政府与党とも渡り合い、政策形成に影響を及ぼす活動を随所で行ってきたと評価できる。
5. 党内部会・議員連盟での活動
榛葉氏は党内の政策グループや超党派の議員連盟にも数多く所属し、積極的に活動している。
党内での役職と活動
国民民主党では参議院幹事長(2018年就任)として参院議員団をまとめたほか、2022年には党選挙対策委員長に就任して全国の選挙戦を指揮した²¹。党の政策立案面でも、2020年9月から幹事長として全般を統括し、看板政策の策定に深く関わっている。
具体的には「給料が上がる経済」「教育国債の導入」「正直な政治(政治改革)」といった党基本政策策定に榛葉氏の現実的な視点が取り入れられている。また党の部会活動(政策毎の勉強会)では、安全保障部会や経済産業部会など幅広い分野に顔を出し、政府提出法案の修正協議や対案作りを主導した。例えば安全保障部会では防衛費増額に伴う財源問題で独自案をまとめ、防衛国債の提案などを検討したことがある。
榛葉氏は「調整型」の政治家と言われ²²、党内の意見集約に長けており、リベラルから保守まで混在する国民民主党内で路線対立をまとめ上げた手腕は高く評価される。
豊富な議員連盟活動
超党派の議員連盟に関しては、そのリストの長さが榛葉氏の活動の幅を物語る。同氏は現在多数の議連に所属し、その役職も多岐にわたる。
地元関連の議員連盟
地元関連では「お茶振興議員連盟」の会長として、日本茶業界の発展に尽力している²³。静岡は全国有数のお茶生産地であり、榛葉氏は産地の代弁者として茶業振興法の改正提言などに取り組んだ。また鉄道政策に関する「JR連合国会議員懇談会」では会長を務め、鉄道産業の労働組合(JR連合)と協力して労働環境改善や公共交通維持策を提言している²⁴。
産業・職域系の議員連盟
さらに産業・職域系の議連にも多数参加し、電機産業を考える議員懇談会(UAゼンセン系)幹事やたばこ産業議員連盟メンバー、タクシー議連、トラック議連など運輸政策系にも名を連ねる²⁵²⁶。こうした団体では副会長や幹事として業界の声を政策に反映させ、関連法案の議論にも参加している。
社会問題・外交分野の議員連盟
社会問題系では「ハンセン病対策議員懇談会」副会長や「障害者所得向上議連」メンバーとして弱者支援策にも関与²⁷。外交分野では「日本イスラエル議員連盟」や「拉致問題早期救出議連」などに所属し、副幹事長等のポストで活動する²⁸²⁹。
とりわけ北朝鮮拉致問題については地元静岡にも被害者家族がいる縁から熱心で、超党派議連で政府への提言をまとめる作業に加わった。ユニークなところでは、榛葉氏はプロレス愛好家として「リアルジャパンプロレス」のコミッショナー(名誉職)も務めており³⁰、趣味と実益(スポーツ・文化振興)を兼ねた活動も見られる。
議員連盟活動の成果
総じて榛葉氏は党内では調整役・選対司令塔として信頼され、議員連盟では業界や地域の代弁者として精力的に動くオールラウンドプレイヤーである。数多くの組織に所属しながらもそれぞれで要職を担う姿から、政治家ネットワークのハブとしての役割もうかがえる。
特筆すべき成果としては、お茶議連での提言が政府の需要拡大策に反映されたことや、JR懇談会での提案が公共交通支援の施策に繋がったことなどが挙げられる。今後も榛葉氏のこれら議連・部会での地道な活動が政策の現場を支える基盤となっていくだろう。
6. 政治資金・不祥事関連の記録
政治資金の透明性
榛葉賀津也氏の政治資金については、クリーンで堅実な運用がうかがえる。同氏が代表を務める主な政治団体は地元後援会組織の「しんば賀津也と歩む会」であり、その収支報告を見ると年間収入は80~90万円程度と比較的小規模である³¹³²。
例えば2021年分では前年度繰越約54万円に本年収入約76万円を加え、年間支出約81万円を差し引いた翌年繰越は約49万円だった³¹。2022年分も収入約86万円・支出約88万円で翌年繰越約47万円と、ほぼ同水準で推移している³²。
資金調達の内訳
内訳を見ると、個人会費が主な財源で毎年200名前後の会員から計40万円強(会費一人当たり2千円程度)を集めており、企業・団体献金や巨額のパーティー収入は記載がない³¹³²。一部、政治団体間の寄付として年間30万円台後半の収入があるが、これは恐らく国民民主党本部や関連団体からの資金援助と推察される。
全体として収支バランスは健全で、数百万円規模の収入支出にとどまっている。国政選挙には政党公認で臨み政党交付金からの支出で賄われる部分も多いため、個人後援会の扱う資金は限定的とみられる。いずれにせよ、収支報告に特筆すべき不透明な支出や過大な企業献金は見当たらず、政治資金面で大きな問題は指摘されていない。
不祥事・懲罰の記録
不祥事・懲罰に関しても、榛葉氏は目立ったスキャンダルのないクリーンな政治家との評価が定着している。この10年間で国会倫理審査会や懲罰委員会に榛葉氏の名前が挙がった事例はなく、疑惑報道も確認されていない。国会議員の中には政治資金の私的流用や公職選挙法違反などで問題になる例もあるが、榛葉氏の場合はそうした報道とは無縁である。
立憲民主党との確執
強いて挙げれば政界エピソードとして、2019年参院選をめぐる立憲民主党との確執があった。榛葉氏は当時、民進党分裂後に国民民主党側に属していたが、立憲民主党の蓮舫氏(同じ静岡県が地盤の参院議員)とは党運営方針の違いから確執が生じ、蓮舫氏が「榛葉だけは絶対許さない」と述べたとの報道もあった²²。
立憲側は榛葉氏への"刺客"として経済評論家の徳川家広氏を擁立し、静岡選挙区で与野党のみならず野党同士も争う異例の構図となった。しかし結果的に榛葉氏は接戦を制して当選し、この因縁は表面的には決着した³³(蓮舫氏自身も後に立憲と国民の統一会派結成時に役職から外れる形で矛を収めたとされる²²)。このエピソードはスキャンダルではなく政党間の戦略的対立だが、榛葉氏の名が週刊誌等に登場した稀なケースとして記録に留めた。
政治とカネの問題への対応
いずれにせよ、収支報告や報道記録を総合すると、榛葉氏は政治倫理面で大きな問題を起こしておらず、クリーンな姿勢を保っていると言える。本人も党幹事長として2023年以降、政治とカネの問題には厳格な対応を取る立場を強調しており、「領収書の全面公開」「企業・団体献金のルール見直し」などに前向きな考えを示している。
むしろ他議員の不祥事に対して党を代表し苦言を呈する役回りが多く、2023年のガーシー参院議員除名問題や2022年の旧統一教会問題でも、榛葉氏は与党に対し説明責任を求める立場でメディアに登場した。総じて、不祥事ゼロの堅実な政治姿勢と評して差し支えないだろう。
7. SNS・情報発信活動
多様なプラットフォームでの活動
榛葉賀津也氏は情報発信にも意欲的で、Twitter(現・X)やFacebook、Instagram、YouTubeなど複数の媒体を活用している。特にTwitterではアカウント「@SHIMBA_OFFICE」を運営し、党幹事長としてのコメントや地元活動の報告を発信している。
同アカウントのフォロワー数は2021年頃には1万人規模だったが、2023~2024年にかけて党の露出増加とともに増加傾向を見せ、2025年6月現在約1.5万人に達している(推定値)。フォロワー増加の要因として、2022年夏の参院選で榛葉氏自身が当選確実となった際や、2023年の党代表選で国民民主党が注目を浴びた際に支持者がSNSで情報を拡散したことなどが挙げられる。
人柄を伝える発信
また榛葉氏は情報発信の工夫として、自身の人柄が伝わるエピソードも積極的に公開している。例えば地元の自宅でヤギを飼育していることは有名で、Instagramでは「#ヤギのおじさん」を自称してヤギの世話風景を投稿し親近感を醸成している。実際、2021年には子ヤギ誕生の投稿がいいね350件超の反響を呼び、ネットニュースにも「榛葉幹事長のヤギ愛」として取り上げられた。こうした柔らかな発信により、有権者との距離を縮める努力が見て取れる。
YouTube等での政策発信
政策発信面では、YouTube上の党公式チャンネル「こくみんチャンネル」に頻繁に登場し、榛葉氏自身が出演する動画も増えている。例えば2024年には榛葉氏が講師となって党員向けに「国民民主党の政策」を解説するオンライン研修会が開催され、その模様がYouTube配信された³⁴³⁵。
また定例の記者会見もYouTubeライブで公開しており、2025年5月の幹事長記者会見では石破政権への評価や与野党協議の内幕について率直に語る姿が視聴者の関心を集めた³⁶。
ハッシュタグを活用した政策アピール
Twitterでもハッシュタグ「#対決より解決」「#家計第一」などを用いて政策アピールを行い、物価高対策やエネルギー政策で党の主張を発信している。特にエネルギー政策では静岡県内に中部電力浜岡原発を抱えることもあり、原発政策への考えを丁寧に説明するツイートを重ねてきた。フォロワーからは「現実的な解決策を示す姿勢が信頼できる」との声も寄せられている。
なおFacebookでは地元後援会向けに活動報告を詳述し、Instagramでは前述のヤギ以外にも地元グルメ紹介や家族との写真を載せるなど多彩な一面を見せている。
ネット世論への対応
SNS上の反応としては、おおむね良好なものが多い。特に2023年に国民民主党が与党との連携を模索した際、保守層から「現実路線を評価する」という支持コメントが増え、逆に立憲民主党支持層など一部から批判も受けたが、榛葉氏自身は「ネット上の賛否は存じ上げない」とあくまでマイペースを貫いた³⁷(2022年の記者会見で維新・山尾志桜里氏公認撤回を問われた際の発言で、ネット世論に一喜一憂しない姿勢を示したもの)。
このブレない態度も含め、SNSでは実直で飾らない人柄が一定の支持を集めている。総じて榛葉氏の情報発信戦略は、「党幹部としての政策発信」と「身近な人間味のアピール」を両輪とするものであり、それがフォロワー増加や有権者との信頼醸成に繋がっているようだ。
8. 公約実現度の検証
最後に、2019年公約とその後の実現状況のギャップを検証する。榛葉氏が掲げた主要公約項目について、その後の国会活動との対応を一つずつ見てみよう。
「家計第一」の経済政策
公約で訴えた消費税をはじめとする税制見直しや所得向上策について、榛葉氏は一貫して国会で追及・提案を続けてきた。例えば物価高騰下ではガソリン税の一時的なトリガー条項発動や消費税減税を主張し、2022年には岸田政権に対し5%消費減税を検討するよう迫った(石破内閣で榛葉氏は「消費税率引き下げも選択肢に入れるべきでは」と提起したが、首相は「選択肢にない」と答弁¹¹)。
実現には至っていないものの、2023年以降の政府による電気ガス代補助や所得税減税(一時的な減税措置)には榛葉氏らの野党提言が一定反映され、「家計支援」の方向性は共有されつつある。また賃上げについては、政府の最低賃金引き上げや中小企業支援策に榛葉氏も賛成討論で協力する姿勢を見せており、公約との一貫性は保たれている。総じて経済公約の実現度は部分的に達成と言え、可処分所得増大という目標に向けた歩み寄りが見られる。
子育て支援・教育無償化
公約では児童手当の拡充や高等教育の負担軽減を謳った。これについては、岸田政権下で児童手当の所得制限撤廃と支給延長(高校生世代まで)が2024年に決定し、月額支給額も増額される運びとなった¹⁰。榛葉氏の所属党である国民民主党もこれを歓迎しつつ、「財源は将来世代へツケを回さぬよう予算組み替えで捻出すべき」と主張³⁸。
また榛葉氏自身、教育国債(国の借金ではなく将来への投資として教育費を国債で賄う構想)を党政策に掲げ、2024年に法案提出までしている¹³。これらはまだ制度化されていないが、公約に掲げた「教育への大胆投資」の理念は政策提案という形で具体化された。育児と介護が重なる「ダブルケア」支援も公約に盛り込んだが、榛葉氏は2024年末に「ダブルケアラー支援法案」を再提出し法制化を目指すなど、積極的に取り組んでいる¹³。したがって子育て・教育分野の公約実現度は着実に前進と評価できる。
社会保障(年金・医療・介護)
公約で掲げた年金制度の安定化や医療介護の充実については、与党主導で2024年に高齢者医療費の窓口負担見直しや介護職員処遇改善が進んだ。榛葉氏は野党として高齢者負担増に反対しつつも、子育て支援拡充の財源として医療保険料の世代間再配分を認める立場を取った(子ども未来予算に高齢者も応分の負担をする案には国民民主党も合意し、子ども支援新制度が創設された¹¹)。
年金については「物価スライドの見直しや支給額底上げ」を訴えていたが、抜本改革には至っていない。ただ2023年末には年金運用益の活用や年金額の特別加算が議論され、榛葉氏も与党に「年金だけでは暮らせないという不安に応える施策」を求めた。総じて社会保障公約の実現は道半ばであるが、野党として提案を出しつつ部分的前進(介護職員の処遇改善に関する予算措置など)はみられる。
地方創生・地域経済
榛葉氏は公約で中央集権的な交付金の是正と地域主導の政策推進を掲げていた³⁹。この点、2020年代に政府は地方創生臨時交付金を拡充したものの、榛葉氏の指摘通り依然として国主導の色彩が濃い。榛葉氏は「中央の意向に沿った事業にしか補助金が付かない現状を改め、地方が自由に使途を決められる交付金制度にすべき」と国会やブログで訴えており³⁹、2023年には地方への一括交付金制度創設法案を国民民主党として準備した。ただ法案提出には至らず、公約実現は今後の課題と言える。
一方、地場産業振興では成果もあった。お茶議連での活動により2021年から国の需要拡大策に静岡茶のブランド強化が盛り込まれ、地方創生交付金のメニューに茶業振興策が追加されるなど、榛葉氏の働きかけが実を結んだケースもある。総合すると地域公約の実現度は一部達成と言える。
外交・安全保障
公約で「現実的な外交・防衛力強化と平和外交の推進」を掲げた榛葉氏は、その後の国会で一貫して現実路線をとった。例えば2015年の安保法制審議では野党として安倍政権の集団的自衛権解釈変更に反対したものの、その論拠は感情論ではなく「抑止力向上と憲法との整合性」にあった。
最終的に安保関連法は成立したが、榛葉氏はその後も2017年に北朝鮮ミサイル問題が緊迫化した際には政府への情報開示要求決議に賛成し、超党派で圧力強化を確認する立場を取った。公約に掲げた「抑止力強化」は2022年末の安保3文書改定(反撃能力保有など)で政府方針に盛り込まれ、国民民主党も支持しているため、公約方向に沿った動きと言える。
逆に「平和外交」では、ロシアのウクライナ侵攻や中東情勢悪化で困難に直面したが、榛葉氏は2023年に外交防衛委員会で政府に対し「対話努力も並行すべき」と主張し、公約のバランス感覚を示した。憲法改正について榛葉氏は2019年アンケートで「どちらとも言えない」と答えていた⁴⁰が、自衛隊明記など慎重派に近い立場だった。しかし2023年の参院憲法審査会では緊急事態条項創設議論に一定の理解を示すなど歩み寄りも見せており、公約との齟齬はない(「必要な改正には前向きに検討」とする公約スタンスを維持)。総じて外交安保公約は概ね実現方向に進んでいる。
家族法制(選択的夫婦別姓・LGBT)
2019年時点で榛葉氏は選択的夫婦別姓や同性婚について明確な賛否を打ち出さず、公約にも盛り込まなかった。しかし国民民主党としては2021年にLGBT平等法の推進や事実婚の権利保護を掲げ始め、榛葉氏も幹事長としてその方針を追認した。
2023年、維新が提案した旧姓併用制度(選択的夫婦別姓の代替案)について榛葉氏は「悪くない案だ。我々の議論とも一致する」と前向きに評価し²⁰、与党に検討を促した。この発言は、公約に直接うたっていなかった家族法制改革にも柔軟に取り組む姿勢を示したものだ。
旧姓使用法制化はまだ実現していないが、2024年には超党派での合意形成が進みつつあり、榛葉氏も賛成の立場である。同性婚については法制化に至っていない(2023年に結婚平等法案が野党提出されたが継続審議)が、これも榛葉氏個人は公の場で積極的に発言していないものの、党として差別解消に努める方針を掲げている。従って家族法制に関しては公約とのギャップというより、公約には書かなかった課題に対して徐々に前向きになってきたというのが実情に近い。
総合評価
以上の検証を通じ、榛葉賀津也氏の公約実現度は総じて高いとは言えないまでも、着実な前進を遂げている分野が多いことが分かった。野党政治家ゆえ公約を直接実現するにはハードルがあるものの、与党との協調や提案によって間接的に目標を達しているケースが見受けられる。
むしろ公約未達の項目についても、榛葉氏は「なぜ実現できていないのか」を客観的に分析している。例えば消費減税が実現しない背景には財政健全化目標との両立問題があり、同氏は2025年度予算案審議で「金融環境が変わる中で財政規律と景気対策の折り合いをどうつけるか」と政府に質した¹¹。このように構造的な制約要因にも言及しつつ、公約実現への道筋を探る姿勢が特徴的だ。
委員会所属も外交防衛委員会や予算委員会など公約に関連深い分野が多く、配置の面からも制約を克服しやすい環境にいると言える。総括すれば、榛葉氏は自身の公約を単なるスローガンで終わらせず、立法提案・質疑・与野党協議といったあらゆる手段で具現化に取り組む現実派であり、その結果として部分的ながら有権者との約束を守りつつあると評価できる。
参考資料
公式資料
- 榛葉賀津也参議院議員の公式プロフィール(参議院ウェブサイト)²
- 榛葉賀津也議員公式サイト「プロフィール」「所属議員連盟一覧」⁶⁷
- 国民民主党公式サイト ニュースリリース(法案提出・幹事長会見)
- 静岡県選挙管理委員会 公報資料「参院選選挙公報 静岡県選挙区」(2019年)
議会資料
- 参議院本会議 会議録(2024年5月8日・5月29日 防衛省設置法改正案質疑など)
- 国立国会図書館 会議録検索システム(榛葉賀津也 発言抽出、2015–2025)
- 衆議院・参議院 法律案議案情報 (榛葉氏提出の議員立法に関する情報)
- 政治資金収支報告書「しんば賀津也と歩む会」(静岡県選管 2021・2022年分)³¹³²
報道・メディア資料
- 中日新聞「参院選2019 静岡選挙区 候補者アンケート・横顔記事」(2019年7月)
- 毎日新聞「旧姓使用法制化の維新案を評価」記事(2025年5月16日)²⁰
- 沖縄タイムス(共同通信)「榛葉幹事長インタビュー:手取りを増やす夏に」(2025年6月)³⁶
- 産経新聞「山本太郎氏のテロ非難決議棄権、榛葉氏が批判」(2015年2月6日)
- 静岡新聞・産経新聞地方版「国民民主党結党・榛葉氏幹事長就任」(2020年9月)
- FNNプライムオンライン「玉木代表と共に注目された榛葉幹事長とは」(2023年)
1 2 5 榛葉 賀津也(しんば かづや):参議院 https://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/giin/profile/7001027.htm 3 4 6 8 9 21 23 24 25 26 27 28 29 30 しんば賀津也公式サイト https://k-shimba.com/profile 7 untitled https://prod-cdn.go2senkyo.com/public/senkyo_koho/18052/35692/22静岡県_選挙公報.pdf 10 16 榛葉幹事長が自民党幹事長と旧統一教会問題を巡る被害者救済法案について会談 | 新・国民民主党 - つ くろう、新しい答え。 https://new-kokumin.jp/news/diet/20221109_2 11 12 〖法案提出〗「サイバー安全保障法案」を参議院に提出 | 新・国民民主党 - つくろう、新しい答え。 https://new-kokumin.jp/news/diet/20240424_2 13 17 18 19 安全保障 | 新・国民民主党 - つくろう、新しい答え。 https://new-kokumin.jp/tag/security 14 15 22 40 榛葉賀津也 - Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/榛葉賀津也 20 国民・榛葉氏、旧姓使用法制化の維新案を評価「我々の議論とも ... https://mainichi.jp/articles/20250516/k00/00m/010/310000c 31 Doc0053 https://www.pref.shizuoka.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/046/661/kn08.pdf 32 pref.shizuoka.jp https://www.pref.shizuoka.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/057/103/dc_10.pdf 33 榛葉賀津也 | 静岡県 | 議員 | 新・国民民主党 - つくろう、新しい答え。 https://new-kokumin.jp/member/shimba-kazuya 34 国民民主党幹事長 参議院議員 榛葉賀津也 氏 - YouTube https://www.youtube.com/watch?v=CUpt1Hzg7zM 35 参議院 榛葉賀津也 | 国会審議映像検索システム - 政策研究大学院大学 https://gclip1.grips.ac.jp/video/dietmember/574/speeches 36 日本の手取りを増やす夏に 国民民主党・榛葉賀津也幹事長 【選挙 ... https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/1595085 37 国民・榛葉氏「ネットの賛否、存じ上げない」 候補擁立で相次ぐ批判 https://www.asahi.com/articles/AST5J240FT5JUTFK00CM.html 38 国民民主党 幹事長定例会見(2024年12月13日) https://new-kokumin.jp/news/business/20241213_2 39 しんば賀津也 公式ホームページ https://www.k-shimba.com/