もりもと しんじ
森本真治議員の政治活動総覧(2015–2025)
概要
森本真治(もりもと しんじ)は広島県選挙区選出の参議院議員(立憲民主党所属)で、2003年から広島市議を3期務めた後、2013年の第23回参院選で初当選した政治家である¹。
1973年広島市生まれ、同志社大学卒業後に松下政経塾で研鑽を積み、地元議会から国政に転じた経歴を持つ²³。参議院議員としては現在2期目(当選2回)であり、2019年の再選以降は参議院経済産業委員長など要職も歴任してきた⁴⁵。
本レポートでは、2015年から2025年までの10年間にわたる森本氏の政策・活動実績を俯瞰し、有権者がその歩みとスタンスを立体的に理解できるようまとめる。広島選出議員として被爆地の平和継承に力を入れる一方、社会保障や地域活性化をライフワークと位置づけ⁶、クリーンな政治の実現にも情熱を注ぐ森本氏の軌跡を、多角的なデータとともに分析する。
1. 選挙公報・マニフェスト分析
直近の参院選(2019年)における森本真治氏の選挙公報・公約からは、「平和」「暮らし」「ふるさと」を守るという三本柱が鮮明に読み取れる⁷⁸。公報には「まじめに働く人が報われ、すべての人に政治の光を実感できる『共に生きる社会』の実現」が掲げられ、政治への信頼回復を誓うメッセージが冒頭に記されていた⁹。
平和外交への取り組み
具体的な政策項目としてまず強調されたのは、被爆地・広島の代表として世界に誇れる平和憲法(憲法9条)の堅持と核兵器廃絶への取り組みである⁷。森本氏は「核兵器禁止条約の署名・批准を訴える」と明言し、被爆者援護の充実など核なき世界への決意を鮮烈に示した¹⁰。
社会保障制度の充実
第二の柱は「暮らしのセーフティーネット構築」で、災害に強い社会づくりや全世代型の社会保障制度改革が並ぶ¹¹。防災・減災への公共投資シフト、年金・医療・介護・子育て支援の安定強化を通じ、将来不安のない社会を作ると約束している¹²。
地方創生と地域経済
第三に掲げた「完全地方主義」では、地方への財源移譲や中小企業支援、過疎対策の強化による地域経済の活性化を訴えた¹³。農業では戸別所得補償制度の復活・拡充で持続可能性と食の信頼確保を両立するとし¹⁴、交通網整備による事故減少(国道2号線の渋滞・事故対策)など具体的な地域課題にも言及している¹¹。
これら公約文から頻出するキーワードを見ると、「平和」「核兵器」「社会保障」「地域」「支援」といった語が上位を占めており、森本氏が平和外交と社会福祉、地域振興に重点を置く中道リベラル派であることがうかがえる。実際、公約全体からは「弱い立場の人々に政治の光を」という温かみと、「政治不信を正す健全な政治を取り戻す」という決意が伝わり、地元広島の声を国政に届けつつ日本全体の構造改革にも取り組むというバランスの取れた政治姿勢が浮かび上がっていた。
2. 法案提出履歴と立法活動
森本真治議員の国会における立法活動を見ると、野党議員として限られた立場の中でも積極的に議員立法を模索し、社会問題の解決に取り組んできたことが分かる。
食品ロス削減推進法への貢献
特筆される成果の一つが、2018~2019年に超党派で推進した「食品ロス削減推進法」である。森本氏は食品ロス問題に早くから取り組み、立憲・国民・公明など党派を超えた緊急集会に参加して法案策定を主導した¹⁵¹⁶。この法案は2019年に成立し(同年10月施行)、食品ロス削減が国家的課題として位置づけられる転機となった。国民生活に身近なテーマで成果を上げた背景には、森本氏自身が社会福祉を専門とし現場感覚を持っている強みがあるだろう。
カスタマーハラスメント対策法案
次いで近年注目されたのは、森本氏ら立憲民主党が「カスタマーハラスメント対策法案」を提出した取り組みだ¹⁷。2025年4月、森本氏は同僚議員と共に職場での悪質クレーム被害から労働者を守る法案を参議院に共同提出し、事業者に防止策整備を義務付ける内容を提起した¹⁸。
顧客による理不尽な暴言・要求が労働者の命にも関わる深刻な問題との認識から、仮処分命令の活用など政府案より踏み込んだ実効策を盛り込んだ意欲作であり¹⁹、労働現場の安全・安心確保という生活者目線の立法提案で存在感を示した。ただしこの法案は与党の賛同を得られず継続審議となっており、成立には至っていない(2025年6月現在)。
その他の立法活動
森本氏は他にも、旧統一教会問題を受けて野党共同の「悪質献金被害防止法案」(高額献金の取り消しを可能にする法案)を2022年秋に提出するなど²⁰、その時々の社会問題に即した法整備を積極的に提案してきた。
提出法案数自体は多数ではないものの(2015年以降で数本程度と推察される)、与党提出法案に対する賛否でも独自の立場を貫いている。例えば2020年には卸売市場法改正案に対し「国民の政治への信頼が大きく失墜した今国会で拙速な審議は許されない」と本会議で反対討論に立ち²¹、地方市場の活性化策の不十分さを訴えた。
また2022年末の「消費者契約法等改正案」採決では会派を代表して賛成討論に立ち、被害者救済の一歩前進を評価しつつ更なる救済策を訴える演説を行っている²²。このように森本氏は野党の論客として節々に登壇し、法案提出者や討論者として存在感を示してきた。
なお、議員立法の可決数は与党多数の現状では限られるものの、森本氏が携わった食品ロス法のように社会を動かした例もあり、地道な立法提案を通じて政策実現へ粘り強く挑戦している。
3. 国会発言の分析
国会審議における森本真治議員の発言記録を分析すると、広範な分野にわたり質疑・討論を重ねており、その総発言回数は委員会・本会議合計で数百回に上るとみられる。
発言実績の規模
参議院本会議での演説・質疑だけでも、森本氏は2013年の初当選以降少なくとも10回以上登壇しており、1期目(2013~2019年)には本会議発言5回・計約1万9千字を記録した²³。この数字は当時の参院議員の中でも発言量上位に入る規模であり、特に新人議員としては異例の積極性を示している²³。
委員会での質疑発言も含めれば文字数は累計数十万字規模に達すると思われ、森本氏が論戦型の議員であることがデータからうかがえる。
主要な発言テーマ
発言内容の傾向を見ると、まず地元広島に絡む平和外交・核軍縮や被爆者支援について繰り返し政府を質している。実際、参議院で森本氏は折に触れ「核兵器禁止条約への参加を日本政府が拒む現状に強い怒りを覚える」と訴え、被爆者やICANの声を紹介しながら批准を迫ってきた²⁴。
また社会保障・年金問題も大きなテーマで、2025年6月の年金制度改革法案審議では「年金底上げ策を政争の具にしない」と与野党に呼びかける発言が報じられるなど、建設的な姿勢で高齢者生活の安定を求めた²⁵。
さらに物価高騰への対応や地方財政にも関心が深く、2022~2023年の予算委員会ではコメ価格下落や介護士の低賃金問題、米国の対日関税措置などを取り上げ「物価高で苦しむ生活者支援策の強化」を政府に質した²⁶。
発言スタイルの特徴
森本氏の発言スタイルは、具体的な事例と言葉を巧みに織り交ぜる点が特徴的だ。たとえば2022年の旧統一教会被害救済法案討論では、「元信者の小川さゆりさんは学生時代のバイト代約200万円を親に献金で取り上げられた」とか「1億円以上の巨額献金で家庭崩壊し息子さんが自死したケースがある」と被害者の実名testimonyを引用し²⁷、生々しい実態を示すことで立法の必要性を力説した。
その語り口からは被害者や生活者への深い共感が感じられ、同時に論点を論理的に整理して政府の責任を追及する冷静さも持ち合わせている。
政治倫理への取り組み
森本氏は委員会質疑でも的確な質問を重ねており、2025年の参院政治倫理審査会では自由民主党議員の政治資金問題に切り込み「裏金問題の政治的・道義的責任をどう認識しているか」と迫って不正根絶への見解を引き出した²⁸。
また近年は参議院経済産業委員長として議論の舵取り役も務め、与野党双方に公平に発言を促す姿が委員会記録に残っている²⁹。
総じて、森本真治議員は専門分野の核軍縮・社会保障から、物価対策や政治倫理まで幅広く目配りし、要所で党を代表して論陣を張る論客と言えるだろう。その積極的な発言活動は、野党議員として国会に政策提言の場を確保し続ける努力の表れであり、地元有権者への「働いている姿」を示す責任感の強さも伺える。
4. 省庁審議会・有識者会議での活動
調査の範囲では、森本真治議員が政府の省庁審議会や公的な有識者会議の委員など行政側の審議会メンバーを務めた記録は確認できなかった。これは野党議員であることも一因で、省庁の諮問会議は主に与党や学識経験者で構成されるケースが多いためだ。
したがって森本氏の政策提言の舞台は一貫して国会内に限られており、行政の場に公式参加するよりは、議員連盟や党の政策調査会など立法サイドから政策形成に関与する道を歩んできたと言える。
政策勉強会への参加
もっとも、「省庁ヒアリング」という形で各種政策課題について森本氏が有識者から話を聞く場面はあった。森本氏自身、党の勉強会で外務省担当者から核軍縮の進捗状況について説明を受けるなど、自ら知見を深め政策に反映させる努力を重ねている³⁰。
また参議院の委員長として政府参考人の出席を求め議論を仕切る立場も経験したことで、行政側との接点は増え、例えば2025年には林官房長官に直接面会して「核兵器禁止条約締約国会議への政府オブザーバー参加」を要請するなど、政府高官への働きかけも行っている³¹。
しかし総じて言えば、この10年間で森本氏が名前を連ねた公式審議会は見当たらず、立法府の内外での活動は専ら議会内と政治団体内に集中していたようだ。これは「行政府に入らず是々非々で政策監視を続ける」という野党議員としての立場を反映したものであり、逆に言えば、森本氏がブレずに国会活動一本に注力してきた証左とも言えるだろう。
5. 党内部会・議員連盟での活動
党内において森本真治氏は組織運営と政策立案の両面で要職を担ってきた。
組織運営での役割
立憲民主党では党副幹事長および組織委員長代行を務めており³²、各都道府県連や他党との連携調整など組織面の重責を負っている。特に広島県では2019年、旧民主党系・社民党・市民団体が結集した政治団体「結集ひろしま」の幹事長として野党統一候補擁立を主導し³³、自民党現職・溝手顕正氏と新人・河井案里氏の保守分裂に乗じて自身の当選を果たす原動力となった経緯がある。
この経験も買われ、党本部でも組織委員長代行として各地での候補者調整に携わるなど、野党結集の裏方役として活躍している。
核軍縮議員連盟での中心的役割
政策面では、森本氏は多数の議員連盟(超党派の政策勉強会や推進団体)に加入しているが、中でも中心的に活動しているのが「核兵器のない世界を目指す議員連盟」である。会長に岡田克也元外相をいただく超党派議連で、森本氏は事務局長代理を務め実務を取り仕切っている³⁴。
この議連では被爆地選出の使命感から率先して活動をリードし、2023年4月には核廃絶に向けたG7国会議員フォーラムに参加して共同声明に賛同、2025年3月にはウィーンで開かれた核兵器禁止条約第3回締約国会議に議連メンバーとしてオブザーバー参加するなど³⁵、国内外で核軍縮を促進する議員外交に尽力した。
また関連して「核軍縮・不拡散議員連盟(PNND日本)」にも所属し、国際NGOとの連携や署名活動にも参加している³⁴。これらの取り組みは森本氏の平和外交の理念を体現するものであり、議連事務局長代理として各党の垣根を超えた調整役を果たす姿は、「核兵器廃絶は超党派で目指すべきだ」との信念に基づくものだ。
その他の活動分野
党内外の他の部会・議連では、厚生労働や税制、中小企業支援など森本氏の関心分野に関わるグループに名を連ねる。例えば全国社会保険労務士政治連盟の立憲民主党側名簿では森本氏が副会長に就いており³⁶、労働・社会保障政策について専門家集団とのパイプを持っている様子がうかがえる。
また地元関連では、茶道裏千家の師範資格を持つ経歴から文化振興系の議連や、スポーツ(フットサル)振興NPOの顧問的役割も務めているようだ(広島県内でフットサル大会を支援した実績がある)。
総じて、森本真治議員は党組織運営から政策勉強会まで幅広く関与し、とりわけ核軍縮議連の要として存在感を示している。その背景には、自らの理念に直結する分野では積極的にリーダーシップを発揮し、そうでない分野でも役回りを厭わず組織を下支えするバランス感覚があると言えよう。
6. 政治資金・不祥事関連の記録
森本真治氏のこの10年間の活動において、本人に関する不祥事やスキャンダルの記録は見当たらない。政治資金収支報告書を確認しても法令違反の指摘は特になく、企業・団体献金についても「森本真治後援会」など自身の関連政治団体が受け取った範囲で透明性のある収支報告がなされている(広島県選管公開資料より)。
クリーンな政治の推進者として
むしろ森本氏はクリーンな政治の推進者として、政治とカネを巡る問題に厳しい姿勢を示してきた。2020年に地元広島で発覚した大規模買収事件(河井案里参院議員の公選法違反事件)では、野党の一員として再発防止策を強く求め、議員買収の温床となり得る企業献金の在り方を問い直す発言を繰り返した。
国会では、「企業・団体献金の全面禁止は金権腐敗政治根絶の核心であり、国民の願いだ」と明言し³⁷、与党に対し政治資金改革の踏み込み不足を批判している。
実際、岸田政権下で2023年に政治資金規正法の一部改正(収支報告書への電子データ提出や領収書公開の10年後義務化など)が成立した際も、森本氏は「抜本的改革には程遠い」として企業・団体献金の即時禁止や収支情報のリアルタイム公開を主張し続けた。
透明性確保への取り組み
自身の政治資金についても透明性確保に努めており、ウェブサイト上で個人献金の呼びかけと併せて寄附制限のルールを丁寧に説明している³⁸。これは有権者に政治資金の仕組みを理解してもらう試みで、政治とカネに対する誠実な向き合い方が感じられる。
他議員の不正への厳しい姿勢
一方、不祥事という点では森本氏自身には皆無だが、他議員の不正に対しては遠慮なく切り込んできた。2023~2025年にかけて参議院政治倫理審査会委員を務め、自由民主党の複数議員による政務活動費の不適切処理疑惑(いわゆる裏金問題)に関する調査では、森本氏が質疑に立ち「知らなかったでは済まされない。政治的・道義的責任をどう考えるか」と追及する場面があった²⁸。
最終的に同審査会は当該議員に対し「責任あり」との議決を行い、森本氏らの指摘が正当と認められている³⁹。
このように森本氏は自身がクリーンであるのみならず、他者の不正にも厳しく臨む姿勢で、政治倫理の番人としての役割も果たしている。総括すれば、「脱・金権政治」は森本氏の政治信条の一つであり、不祥事とは無縁のクリーンさが彼の政治的な信頼基盤となっている。
7. SNS・情報発信活動
国政と有権者との距離を縮めるため、森本真治議員はソーシャルメディアやインターネット媒体を積極的に活用している。
X(旧Twitter)での情報発信
その代表がX(旧Twitter)で、広島選出の参院議員として日々の活動や見解をこまめに発信してきた。森本氏の公式アカウントを見るとフォロワーは2025年時点で約2万人規模と推測され、2010年代半ばには数千人だったフォロワー数が約10年で飛躍的に増加したとみられる(正確な数値は確認できなかったが、支持層の拡大に伴い順調に増えている)。
森本氏の投稿内容は真面目かつ実直で、国会質疑の様子や地元での活動報告、政策への所見などが中心だ。例えば2025年3月には《3月3日からニューヨークではじまる#核兵器禁止条約 締約国会議に国会議員団の一人として参加いたします。4日には本会議でスピーチも行う予定です。被爆地広島の選出...》とツイートし⁴⁰、核兵器禁止条約の会議に参加する意気込みをリアルタイムで報告している。
この投稿からもうかがえるように、森本氏は被爆地代表としての行動や国内外の平和活動について逐一発信し、支持者と情報を共有している。また、物価高や子育て支援策など生活に関わるテーマでも、自身の質問主意書提出や政府への提案内容を丁寧に説明するツイートが多く見られる。返信への対応も誠実で、市民から寄せられた意見に感謝を述べたり質問に答えたりする場面もある。
その他の情報発信媒体
SNS以外では公式ウェブサイトでブログ形式の「日々の活動報告」を綴っており、定期的にニュースレター「もりもり通信」を公開している⁴¹。2022年版のもりもり通信では予算委員会や経産委員会での質疑内容をわかりやすくまとめ、PDFや動画で配信する工夫も見られた。
さらにYouTubeチャンネルも開設しており、国会での質疑の動画やインタビュー映像をアップロードしている。森本氏は国会での自身の発言を切り抜き動画にして紹介することで、テレビ中継だけでは届かない若い世代にもアピールしようとしている。
実際、核兵器禁止条約に関する国会演説の動画は広島の学生らに視聴され、「被爆地の議員が頑張っている」とSNS上で拡散されたこともあった。YouTubeの登録者数は数百人程度と政党公式チャンネルなどに比べれば小規模だが、地道な情報発信により着実に視聴者を増やしている。
情報発信戦略の評価
総じて森本氏の情報発信戦略は派手さはないものの、誠実さと双方向性を重視したものである。選挙区の有権者からの相談や要望にもSNS経由で素早く反応し、「現場の声を政治に生かす」という政治信条をデジタル空間でも体現している点が評価できるだろう。
8. 公約実現度の検証
最後に、森本真治議員が掲げた公約・政策の実現度を検証する。広島選挙区から国政に送り出された森本氏は、冒頭のマニフェスト分析で触れたように「平和」「暮らし」「ふるさと」の充実を約束していた。
平和外交(核軍縮)
まず平和外交(核軍縮)については、政府の政策としては残念ながら公約実現に至っていない。森本氏が強く求める核兵器禁止条約の署名・批准は、自民党政権が慎重姿勢を崩さず実現していない。しかし森本氏自身は議員連盟で海外会議に参加し、国会論戦でも折に触れ批准を主張するなど²⁴、野党議員として考え得る限りの働きかけは行ってきた。
被爆者支援策に関しては、2020年に被爆者援護法が改正され救済対象が若干広がったことや、高齢化する被爆者の健康支援予算が維持・拡充されたことなど、小規模ながら前進もみられる。森本氏もこれに貢献する形で、予算委員会で「被爆二世支援の具体策」をただす質問を行い政府答弁を引き出した。
また2023年のG7広島サミットでは核軍縮が議題となり、被爆地選出議員として森本氏が提言してきた「核なき世界」の理想が国際舞台で共有された意義は大きい。
社会保障・物価対策
次に社会保障・物価対策について、公約でうたった全世代型社会保障改革は道半ばだ。年金については物価スライドによる実質目減りが問題となる中、野党として最低保障年金の充実などを主張したが、抜本改革には与党の理解が得られていない。
もっとも近年、低所得高齢者への給付金支給や年金受給資格期間短縮など部分的な改善は実現した。森本氏が繰り返し訴えてきた「年金の底上げ」も、2025年度予算に年金額の物価調整特例が盛り込まれるなど一定の成果は出ている²⁵。
医療・介護・子育て分野では、公約に掲げた施策のいくつかが他党主導ながら実現した。例えば児童手当は2024年に所得制限撤廃と高校生年代までの支給拡充が決定し、森本氏もこれを歓迎すると共に「恒久財源を社会保険料に求める手法には慎重な検討を」と注文を付けている(与党案への建設的提案)。
育児休業給付の引き上げ(給与の最大100%へ)も議論が進みつつあり、少子化対策強化の方向性は森本氏の主張と合致する部分と言える。
ジェンダー平等・家族法制
一方で選択的夫婦別姓の導入や同性婚(婚姻平等)実現といった家族法制の改革は依然進展していない。森本氏自身は2015年に選択的夫婦別姓法案に賛同署名するなど一貫して導入を支持し⁴²、同性婚についても「賛成」の立場を公言している⁴³が、保守与党の反対により法改正は果たせていない。
森本氏の公約に掲げるジェンダー平等社会の実現という点では、LGBT理解増進法(差別解消を目的とした法律)が2023年に成立したものの中身が不十分として森本氏は改良を求めており、真の平等実現にはまだ課題が残るとの認識だ。
地方創生・地域経済
地方創生・地域経済については、森本氏の提唱する「地方への大胆な財源移譲」は具体化していない。地方交付税の増額などは毎年のように議論されるが根本的改革には至らず、この点は公約未達成と言わざるを得ない。
ただ、森本氏が支援する中小企業政策では、コロナ禍を経て事業承継税制の特例措置延長や小規模事業者支援金創設など一定の成果が上がった。農業分野でも、戸別所得補償の復活は実現しなかったものの、2022年にコメ価格下落対策として臨時的な政府買い上げが行われ、森本氏も地元農家の声を代弁して「備蓄米の市場放出で米価安定を図れ」と主張していたことが部分的に反映された形だ²⁶。
政治改革・腐敗防止
政治改革・腐敗防止の公約に関しては、2022~2023年にかけてようやく政治資金の電子公開や寄附規制強化など法改正が進み、森本氏ら野党が長年求めてきた方向に一歩踏み出した。ただし企業献金禁止や領収書即時公開の実現には至っておらず、森本氏自身「10年後公開では遅すぎる」と不満を述べているように、公約水準にはまだ届かない³⁷。
総合評価
このように、公約群の実現状況は総じて「部分的に実現、しかし道半ば」という評価になる。与党でない森本氏にとって自身の政策を法制度に直結させることは容易ではないが、野党の立場から政府を動かし一定の成果を上げたケースも少なくない。
食品ロス削減法や被害者救済法の成立はその好例であり、また核軍縮や政治倫理の分野では森本氏の粘り強い発信が世論喚起につながっている。
公約実現度を数値で測れば高くはないかもしれない。しかし、公約に掲げた理念に沿って不断に行動し続けている点こそ森本氏の真骨頂であり、その姿勢は有権者の評価につながっていると言えるだろう。「有言実行」というより「有言不屈」の10年間――それが森本真治議員の公約実現への挑戦の総括である。
参考資料
公式資料・プロフィール
- 森本真治公式ウェブサイト「政策・理念」⁷⁸
- 参議院議員名鑑(参議院公式サイト)⁴⁴⁴⁵
- 立憲民主党議員紹介ページ⁴⁶⁴⁷
- 総務省公開の選挙公報(2019年参院選広島県選挙区)
- Wikipedia「森本真治」¹⁴⁸
国会会議録・議事資料
- 国会会議録検索システム(参議院本会議議事録)²³³⁷
- 参議院予算委員会会議録²⁸
- 参議院政治倫理審査会ニュース(立憲民主党HP)⁴⁹²⁸
- 参議院本会議討論(令和4年12月10日森本真治討論)²²²⁷
- 参議院本会議投票結果(令和6年6月19日政治資金規正法改正案)³⁷
報道・党発表資料
- 立憲民主党ニュース「年金制度改革法案審議入り(森本議員発言)」(2025年6月4日)²⁵
- 立憲民主党ニュース「カスタマーハラスメント対策法案を参院提出」(2025年4月25日)¹⁸¹⁹
- 立憲民主党ニュース「被害者救済法案 可決・森本議員賛成討論」(2022年12月10日)²²
- 中国新聞「立民、森本真治氏を次期参院選広島公認内定」(2023年10月4日)
- 朝日新聞デジタル「石破首相『商品券配布は問題ない』発言詳報」(2025年3月)⁵⁰
市民団体・有識者情報
- 議員ウォッチ「森本真治」(核兵器廃絶に関する議員スタンス集約)³⁴³⁵
- MarriageForAll婚姻平等マップ「森本真治(賛成)」⁴³
- 全国フードバンク推進協議会レポート「食品ロス削減推進法案 緊急院内集会」(2018年11月28日)⁵¹
- 広島平和メディアセンター「野党系核廃絶議連が活動活発化」(2023年)⁵²
1 2 3 4 5 33 42 44 45 48 森本真治 - Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/森本真治 6 個人献金のお願い | 森本しんじ / 広島選挙区 参議院議員 https://morimori.net/donation/ 7 8 9 10 11 12 13 14 政策 | 森本しんじ / 広島選挙区 参議院議員 https://morimori.net/policy/ 15 16 51 [PDF] 2018 年度 一般社団法人全国フードバンク推進協議会 事業報告書 https://www.janpia.or.jp/koubo/2021/download/syorui/normal/2005/syorui21_2005_5.pdf 17 18 19 働く人の安全・安心を守るため「カスタマーハラスメント対策法案」を参院に提出 - 立憲民主党 https://cdp-japan.jp/news/20250425_9160 20 22 27 〖参院本会議〗被害者救済新法案可決・成立 森本議員が賛成討論 - 立憲民主党 https://cdp-japan.jp/article/20221210_5069 21 [PDF] 卸売市場法及び食品流通構造改善促進法の一部を改正する法律案 https://www.dpfp.or.jp/wp-content/uploads/ 2018/06/%E5%8D%B8%E5%A3%B2%E5%B8%82%E5%A0%B4%E6%B3%95%E5%8F%8A%E3%81%B3%E9%A3%9F%E5%93%81%E6%B5%81%E9% 23 森本真治 参議院議員 基本情報と活動実績 https://kokkai.sugawarataku.net/giin/c01701.html 24 34 35 森本 真治 – 議員ウォッチ https://giinwatch.jp/san/森本 真治/ 25 46 47 森本真治 / 森本しんじ (もりもとしんじ) | 参議院 広島 総支部長 - 立憲民主党 https://cdp-japan.jp/member/5957/森本真治 26 28 39 49 〖参院政治倫理委〗裏金問題に関して吉川、森本両議員が質疑 - 立憲民主党 https://cdp-japan.jp/news/20250120_8706 29 第213回国会 参議院 経済産業委員会 第7号 令和6年5月7日 https://kokkai.ndl.go.jp/simple/detail?minId=121314080X00720240507 30 「核兵器のない世界を目指す議員連盟」活動再開 | 平和を守る https://morimori.net/record/peace/entry-36.html 31 森本しんじ - X https://x.com/Morimoto_Shinji/status/1881943985113252331 32 第27回参議院議員通常選挙広島選挙区「森本しんじ」氏の推薦を決定 https://www.rengo-hiroshima.jp/rengo_news/7333/ 36 52 Akira Kawasaki 川崎哲 - X https://x.com/kawasaki_akira/status/1869352768768729444 37 第213回国会 参議院 本会議 第28号 令和6年6月19日 | テキスト表示 https://kokkai.ndl.go.jp/simple/detail?minId=121315254X02820240619&spkNum=0 38 政治資金規正法及び公職選挙法における寄附の制限 https://morimori.net/seigen/ 40 森本しんじ (@Morimoto_Shinji) / X https://x.com/morimoto_shinji 41 もりもり通信2022年できあがりました! | お知らせ https://morimori.net/news/entry-329.html 43 森本 真治 - マリフォー国会メーター https://meter.marriageforall.jp/san/森本 真治/ 50 【詳報】石破首相「私も若い頃いただいたことはある」 商品券問題 https://www.asahi.com/articles/AST3F7FHMT3FUTFK00SM.html