もりや たかし
森屋隆議員の政治活動総覧(2015–2025)
概要
森屋隆(もりや たかし、1967年6月28日生まれ)は、労働組合運動出身の政治家で、立憲民主党所属の参議院議員(比例区、1期)です^2。高校卒業後に西東京バス株式会社で運転士・整備士として働き始め、生来の真面目さで職場の信頼を集めました^4。
1998年からバス労組の執行委員を務め、以後日本私鉄労働組合総連合会(私鉄総連)の交通対策局長など労働界の要職を歴任し、公共交通の安全と労働者の権利擁護に尽力してきました^5。
民主党から要請を受けて2016年参院選に初挑戦し、比例区で約10万2千票を獲得するも僅差で落選します^6。その後、民進党の分裂を経て支持母体の私鉄総連とともに立憲民主党に合流し、2019年参院選に比例代表から再出馬。104,339票を得て、立憲民主党の比例候補8人中5番目で念願の初当選を果たしました^7。
以後、国土交通委員会や行政監視委員会で活動し、参議院では国土交通委理事などを務めています^8。党内では企業・団体交流委員会副委員長として労組や業界団体とのパイプ役を担い、さらに立憲民主党大阪府連では代表代行兼政策調査会長を務めるなど、地方組織の強化にも関与しています^9。
本レポートでは、2015年から2025年6月までの10年間にわたる森屋議員の政治活動を網羅的に分析し、その公約と実績、発言傾向や政策的スタンスを明らかにします。
1. 選挙公報・マニフェスト分析
森屋隆議員が直近の選挙で掲げたマニフェストには、彼の政治理念と優先課題が端的に表れています。スローガンとしては公式サイト冒頭に「働く者が報われる社会、平和で安心して暮らせる社会の実現へ」と掲げられ^10、すべての人々が安心して笑顔で暮らせる社会を目指す決意を示しています。具体的な政策の柱は大きく5本立てでした。
働いても生活が楽にならない現状の打破
1つ目は「働いても生活が楽にならない現状の打破」です。森屋氏は全国で増加するワーキングプアや非正規雇用労働者の困窮に強い危機感を抱き、「行き過ぎた雇用の規制緩和」により労働者の4割が非正規となった現状を是正すると訴えました^11。
アベノミクスで景気が回復と言われても富裕層しか恩恵を受けていない、と彼は指摘し、額に汗して働けば生活が向上する当たり前の社会を取り戻すと誓っています^13。具体策として賃金の底上げや正社員化の促進、長時間労働の是正など労働環境改善を掲げました。
男女の格差是正と女性の活躍推進
2つ目は「男女の格差是正と女性がいきいき活躍できる仕組み作り」です。2016年施行の女性活躍推進法に触れつつも、多くの働く女性が不安定な非正規雇用に置かれ低賃金に苦しんでいるとして、この現状を改善し男女格差をなくすと約束しました^14。
育児と仕事を両立できる環境整備や、同一労働同一賃金の徹底などを通じ「すべての女性が活躍できる持続可能な社会」を目指すとしています^15。
平和主義の堅持
3つ目は「すべての基本は平和」という平和主義の訴えでした。森屋氏は自身の平和観を鮮明にし、国内外の戦争やテロの悲劇に言及するとともに、在日米軍基地の過度な負担が沖縄県に集中している現状を問題視しました^16。
辺野古への新基地建設も「根本的な解決にならない」と断じ、基地の整理縮小による安全で平和な沖縄を取り戻すと主張しています^17。さらに、2015年に強行採決された安保関連法(集団的自衛権の解禁)は「憲法違反」であり日本を「戦争のできる国」に舵切ったものだと批判^18。戦後70年以上守ってきた平和の大切さを未来に引き継ぐため、戦争法制の見直しを訴えました。
人間らしく生きられるルールづくり
4つ目は「人間らしく生きられるルールづくり」です。少子高齢化で社会保障財源が厳しい中でも、人々の将来不安を解消するため教育格差や雇用格差を是正し、「人への投資」を最重視すると宣言しました^19。
「競争ばかりでなく人を大切にする仕組みと人と人との力合わせが経済発展の原動力になる」とし、一人ひとりが安定した幸せな人生を送れる社会を目指すとしています^20。
公共交通政策の充実
5つ目の柱が「人と暮らしをつなぐ交通運輸をめざす」という公共交通政策です。自身が長年公共交通の現場を歩いた経験から、人口減少・超高齢社会で地域交通の果たす役割はますます重要だと強調しました^21。
鉄道・バス・タクシー・トラックなど地域を結ぶ交通網は「なくてはならない存在」であり、高齢者や地域住民の生活を支える公共交通機関を守り、安全・安心で利用しやすい移動手段を充実させると約束しています^22。
以上のように森屋議員のマニフェストは「働く人」「平和」「格差」「公共交通」といったキーワードが頻出し^11、労働者福祉の向上と平和主義、社会的弱者への目配りに軸足を置いていることが分かります。実際、上位の公約キーワードを見ると「非正規」「賃金」「平和」「沖縄」「交通」「安全」などが並び、労働現場の現実への問題意識と反戦・平和への信念、そして自身の専門分野である交通政策への熱意が浮き彫りです。
これら重点分野に関する具体的施策を物語的に提示することで、有権者に「働く者が大切にされる安心社会をつくる」という一貫した政治姿勢を示したと言えるでしょう。
2. 法案提出履歴と立法活動
森屋隆議員の立法活動を振り返ると、野党議員として限られた立場ながらも、主に自身の専門領域で積極的に政策提案に関与してきたことが分かります。2019年の初当選から2025年までに、森屋氏が提出者または共同提出者となった議員立法は数件確認できます。
交通政策基本法の一部改正
その中でも特に成果につながったのが、2022年末の「交通政策基本法の一部改正」です。地域公共交通の維持・再生を目的としたこの議員立法は、超党派で協議され参議院国土交通委員会で賛成多数により可決されました(本会議でも可決成立)と報じられています^24。
改正案には地方の鉄道・バス路線を守るため国の責務を強化する条項が盛り込まれ、森屋氏ら野党議員の粘り強い提案が結実した形です。自身も委員を務める国土交通委員会では、法案審議の過程で提言を反映させるべく奔走し、2024年6月には公共工事品質確保促進法改正案に対する附帯決議を森屋氏が起草・提出しました。
これは談合防止や地域建設業者の担い手確保等について政府への注文を付けたもので、委員会で全会一致で採択され政府も真摯に受け止める意向を示しました^25。こうした附帯決議の成立は、与野党の垣根を越えて森屋氏の主張を政策に反映させた一例と言えます。
ライドシェア解禁への対応
一方、野党として政府提出法案に対峙する場面でも、森屋議員は存在感を発揮しました。とりわけ自身の専門とする公共交通や労働分野の法案では鋭い視点で問題提起を行っています。
例えば2023年秋、政府が進めようとしたライドシェア解禁の動きに対し、森屋氏は同僚議員とともに参議院に「ライドシェアが地域公共交通等にもたらす影響に関する質問主意書」を提出しました^26。この質問主意書では、世界各国の配車サービス導入に伴う犯罪事例や規制状況を詳細に問い質し、安易な規制緩和に警鐘を鳴らしています。
実際、ライドシェア解禁を巡っては超党派の「タクシー政策議員連盟」で森屋氏が事務局長を務め、安全軽視への懸念を集約した提言を政府に突き付けるなど、法整備段階から積極的にブレーキをかける役回りを担いました^27。
カスタマーハラスメント対策法案
また2025年4月には「カスタマーハラスメント対策法案」を立憲民主党・国民民主党の共同提案で参議院に提出しています^28。この法案は、悪質なクレーム等で労働者の就業環境が害されることを防ぐため事業者に対策を義務づける内容で、森屋氏自身も提出者の一人に名を連ねました^29。
サービス業従事者の命と心を守る狙いのこの試みは、政府案には盛り込まれない労働安全衛生法上の枠組みを活用する点が特徴で、森屋氏ら野党の労働政策の専門性が発揮されています^30。
全体として森屋議員は、一議員としての法案提出数自体は多くないものの、公共交通や労働者保護といった自身の掲げる政策課題に即した立法措置に注力してきました。その成立率を見ると、与党多数の国会において可決に漕ぎ着けたものは限られますが、前述の交通政策基本法改正のように実現例もあります。
また、可決に至らなかった法案についても提出を通じて世論喚起や政府への圧力という役割を果たしています。森屋氏は「対案なき反対」に陥らぬよう、自ら積極的に立法を試みる姿勢を示しており、これは組合出身議員らしい政策本位のアプローチと言えるでしょう。
法案提出以外にも、質疑の場で附帯決議を引き出したり^25、関連法の見直しを促す質問主意書を送付する^26など、多様な立法手段を駆使して政策実現を模索する様子がうかがえます。総じて森屋議員の立法活動は、野党の1年生議員という制約の中で、自身の公約領域に絞って着実に成果を上げようとする堅実な歩みであったと言えます。
3. 国会発言の分析
森屋隆議員は国会における質疑・発言でも、そのバックグラウンドを色濃く反映したテーマに集中して取り組んできました。2019年の初登院以降、参議院本会議や委員会での発言回数は延べ50回以上に上るとみられます(本会議代表質問1回、委員会質疑数十回など)。
その内訳を見ると、発言の大半は所属する国土交通委員会での質疑や、党の割当てで登壇した予算委員会での質問となっています。特に予算委では2022年以降、毎年のように一般質疑の機会に恵まれ、森屋氏はそのたびごとに公共交通や労働政策に関する論点を政府にぶつけてきました。
発言の頻出テーマ
森屋議員の発言内容をキーワード分析すると、「公共交通」「安全」「労働条件」「地方」「現場」などが上位に現れます。これはまさに彼の専門性と問題意識を反映するものです。
たとえば2022年3月の参院予算委員会一般質疑では、彼は(1)地域公共交通の危機、(2)公共交通労働者の待遇改善、(3)ガソリン税のトリガー条項凍結解除、(4)物流業界の厳しい状況、(5)EVバス導入促進――といった項目を次々に取り上げました^31。
国土交通大臣に対してコロナ禍で乗合バス事業が大幅赤字に陥っている現状をただし、十分な財政支援を求める一方、岸田総理の「皆さんの収入を増やす」という答弁を引き合いに出して「交通労働者の待遇改善は政権の主要課題なのか」と迫るなど、現場目線と政策論を織り交ぜた巧みな質疑を展開しました^32。
またトラック運送業者の倒産増加に触れて「燃料高騰で今後さらに厳しくなる」と危機感を示すなど^33、運輸産業の実情を熟知した者ならではの指摘を行っています。
発言のスタイル
森屋氏の質疑スタイルは、終始具体的かつ実直です。自ら「バス運転手だった立場から...」と前置きして安全軽視の問題を語る場面もあり^34、自身の経験を踏まえた説得力で官僚や閣僚に迫ります。
2024年3月の予算委集中審議では、自民党の政治資金スキャンダルに絡み「国民は誰がキーパーソンか理解している。本人による説明を求めている」と述べ、下村博文元大臣ら疑惑議員が自ら参院の政治倫理審査会で説明するよう岸田総理に要求しました^35。
総理が及び腰な答弁に終始すると、森屋氏はすかさずオンライン形式の政治資金パーティーが収支報告書で「その他事業」と偽装されている実態を指摘し、「高い利益率で不透明な資金集めをフル活用している。国民は納得するだろうか」と痛烈に批判しています^36。
このように厳しい追及も辞さない一方で、同じ質疑で彼は政府が進めるライドシェア解禁に話題を移し、「車やドライバーの安全、事故時の責任、労働条件の3点が大事だ」との国交相答弁に同意したうえで「スタートありきで現場視察も検証もなく進めている」と政権の姿勢を批判しました^1。
さらにパブリックコメント手続きが形骸化している問題を河野規制改革相や松本総務相に質し、過去に「募集と同時に当初案のまま省令改正する"なんちゃってパブコメ"があった」と暴露する場面もありました^1。最後は「バスやトラックの運転手がなぜ足りないのか総理が考えないと、いくら(政策を)用意しても堂々巡りだ」と締めくくり^37、安全・労働条件軽視への強い怒りと根本的解決の必要性を訴えました。
このように森屋議員の発言は具体的事例と数字を駆使しつつ、働く人の視点を常に軸に据えている点が特徴です。答弁を引き出す際には与党の公約や過去の発言を巧みに引用して矛盾を突くなど^38、野党議員として周到な準備が感じられます。
存在感と影響力
参議院における森屋隆議員の存在感は、決して派手さこそないものの、委員会では信頼される実務派として評価されています。質疑時間もしっかり使い切り、質問主意書の提出も行うなど、1期目ながら積極的な姿勢を示しています。
発言の文字数合計は数十万字規模に及び、なかでも「公共交通」「安全」「労働」「地域」「予算」などの言葉が繰り返し登場する一方で、外交・安保分野のキーワードはほとんど見られませんでした(例えば彼の公約にあった「沖縄」「平和」といった語は国会発言では確認できず)。
これは、森屋氏が自身の専門分野に注力し、委員会の所管外のテーマについては安易に言及しない慎重さを持つことを意味します。同時に、裏を返せば安全保障や憲法問題で前面に立つ機会がなく影響力は限定的とも言えます。
しかし、交通・労働政策に関しては与党議員からも現場事情に通じた論客として一目置かれる存在であり、質疑を通じて政府答弁や施策の軌道修正を促した例も少なくありません。総じて森屋議員の国会発言から浮かび上がるのは、「生活者と働く者の代弁者」として地に足の着いた議論を重ねる姿であり、その誠実な取り組みは徐々に国政の場で影響力を増しているように見受けられます。
4. 省庁審議会・有識者会議での活動
2015年以降の期間について調査した限りでは、森屋隆議員が政府の審議会や有識者会議のメンバーを務めた記録は確認できません。一般に、国家政策の有識者会議には学識経験者や民間専門家が選ばれることが多く、現職国会議員が参加する例は限られます。
森屋氏の場合、国会議員になる前は労働組合役員として国土交通省の各種協議の場に要望を伝える立場ではありましたが、議員就任後に特定の省庁審議会の委員を委嘱されたという情報は見当たりませんでした。
強いて言えば、党所属議員として政府からヒアリングに呼ばれる場面(たとえば国交省や厚労省との意見交換会など)に出席することはありますが、それらは正式な諮問会議とは異なります。2024年12月には全日本海員組合から「海運・船員政策の諸課題」に関する要望を受ける意見交換会に党代表団の一員として参加しています^39が、これも党側のヒアリング対応です。
したがって、森屋議員はこの10年間、立法府での活動に専念しており省庁の審議会メンバー等を務める機会はなかったと言えるでしょう。その背景には、国会対策や自身の専門分野で手一杯で他の役職に手が回らないという事情もあるかもしれません。今後、経験を積めば専門知識を買われ政府の委員会委員に招かれる可能性もありますが、少なくとも本分析期間中にはそのような活動実績は確認されませんでした。
5. 政党部会・議員連盟での活動
森屋隆議員は労組出身という経歴から、政党内の労働政策部会や団体渉外の分野で重要な役割を担っています。前述の通り、立憲民主党では「企業・団体交流委員会」の副委員長に就任し、各種団体とのパイプ役として党政策への意見反映に努めています^9。
労働組合との連携
実際、2024年12月には企業団体交流委員長の大島敦衆院議員らと共に全日本海員組合から政策要望をヒアリングし、海難事故対策や船員養成予算拡充、カボタージュ規制堅持など現場の声を政策提言に活かす場を設けました^40。
森屋氏自身、私鉄総連の組織内議員として労働組合との連携は密であり、連合(日本労働組合総連合会)や各産業別労組の会合に積極的に参加しています。例えば全日本自動車交通労働組合連合会(全自交労連)の大会に来賓として招かれ挨拶したり^41、私鉄総連の中央委員会で組織内議員としてスピーチを行うなど、常に労働現場の声を政治に届ける活動を続けています^42。
こうした場では、石破茂首相(仮定)の下で急遽総選挙となった状況にも触れ「党幹部が来られない中、自分が全力で声を上げる」と述べるなど、組合員との信頼関係を築きながら士気を高める役割も果たしています^43。
タクシー政策議員連盟での活動
また、森屋氏は超党派の議員連盟でも活発に活動しています。中でも重要なのが「タクシー政策議員連盟」で、彼は事務局長としてこの議連を取り仕切っています^27。
この議連はライドシェア解禁問題への対応を議題に、与野党の国会議員101名(秘書含む)という大規模な超党派集団となっており、森屋氏は運輸労連・全タク連など業界団体とも連携しながら、安全・雇用を守る観点から議論を主導しました^44。
2023年10月の緊急総会では辻元清美議連会長(立民)と共に議論を進行し、政府への質問主意書提出や関係者ヒアリングを経て「ライドシェア法制化の検討中止」を強く求める決議をまとめています^27。森屋氏はこの議連活動を通じ、タクシー・ハイヤー業界の労働者や事業者の声を束ねて国会内で政策提言に反映させる要となりました。
平和・人権関連議員連盟
さらに、森屋議員は安全保障や人権に関する議員連盟でも存在感を示しています。核軍縮・平和議連の趣旨に賛同し、2018年には被爆者国際署名に賛同、ICAN議員誓約にも署名しています^46。
2022年4月には超党派の「核兵器先制不使用を求める日米プログレッシブ議連の共同書簡」に連名で参加し、アメリカ政府に核先制不使用政策を求める立場を表明しました^46。これは森屋氏の平和主義的信条が党派を超えた活動にも及んでいる例と言えます。
また、LGBTQ平等法や選択的夫婦別姓の実現を目指す議連にも立民会派の一員として名を連ね、党内のジェンダー平等推進本部とも連携しているようです(直接の発言記録は少ないものの、党の政策方針として支持)。
総じて森屋隆議員の党内外活動は、労働組合や業界団体との太いパイプを生かした調整役と、超党派で共感できる課題に粘り強く取り組む実務家という二面が際立っています。組織内議員として現場の代弁者となり、議員連盟では与野党の橋渡し役となる――地道ながら政治の潤滑油としての働きで評価を得ていると言えるでしょう。
6. 政治資金・不祥事関連の記録
森屋隆議員に関して、この10年間で目立った不祥事や懲罰事例は報告されていません。政治資金の私的流用や収支報告書の虚偽記載といったスキャンダルも特に報道されておらず、クリーンな政治姿勢を貫いていると見られます。
実際、主要紙のデータベースや政府公表資料を調べても、森屋氏個人に関する懲罰動議や倫理審査会案件は確認できませんでした。
政治資金の透明性
政治資金面では、労働組合出身議員らしく支援団体からの資金提供が中心となっています。毎日新聞の調査報道によれば、立憲民主党など野党系の組織内議員に労組・関連団体が拠出した寄付金の中で、森屋氏の後援団体である「私鉄交通政策研究会」から森屋氏本人に対し100万円の寄付があったことが報じられています^47。
他の多くの議員には組合献金がほとんどない中で、森屋氏は明確に労組からの資金支援を受けている例として挙げられていました^47。これはあくまで合法かつ公開された寄付であり、不正の疑義があるものではありません。むしろ組織内議員として労組側から活動資金の提供を受けるのは当然の構図とも言えます。
森屋氏の資金管理団体の収支報告を見ても、企業・団体献金より個人献金や労組関連の後援会収入が主で、収入規模も大きくはありません(初当選直後の2019年は政治資金パーティー収入もなく質素なものです)。
政治とカネ問題への追及
森屋議員自身がクリーンな政治家である一方、国会では政治とカネの問題を厳しく追及する論陣を張ってきました。2024年3月8日の参院予算委員会集中審議では、自民党議員の不透明な資金処理問題を取り上げ、「国民はキーパーソンが誰か理解しており説明を求めている」として当事者による説明責任を強く要求しています^35。
具体的には下村博文元文科相らの名前を挙げ、参議院の政治倫理審査会で自ら説明すべきだと迫りました^35。またコロナ禍でのオンライン形式の資金集めパーティーが収支報告で「政治資金パーティー」と記載されず「その他事業」として処理されていた問題に触れ「極めて利益率が高く透明性の低い手法だ。国民は納得しないだろう」と糾弾し^36、与党の資金隠し的手法を追求しました。
この質疑に対し岸田総理は「説明責任を果たさねばならない」と答えるに留まりましたが^48、森屋氏は続けて「企業・団体献金やパーティー券収入のあり方」に踏み込んだ質問も行っています^49。
2023年には政治資金規正法改正案の審議で、違法献金に対する政治家本人への罰則強化や企業献金の禁止、領収書の全面公開義務化などについて専門家の意見を引き出し、森屋氏自身も「抜け穴を塞がなければ国民の信頼は得られない」と持論を展開しました^49。
要するに、森屋隆議員は自身のクリーンさを堅持しつつ他者の不正には厳しく臨む姿勢を示しています。幸いなことに彼自身のスキャンダルは皆無であり、有権者の信頼を裏切るような行為は見当たりませんでした。
強いて課題を挙げれば、政治資金面での地盤が労組頼みであるため一般有権者からの資金集め力には限りがある点ですが、そのぶん業界や組合の支持は盤石とも言えます。森屋氏は今後も政治資金の透明化や企業献金規制の強化を主張し続けるでしょうし、自ら率先して説明責任を果たすことでクリーンな政治の実践者たらんとしているように見受けられます。
7. SNS・情報発信活動
森屋隆議員は現代の政治家らしく、SNSやインターネットを通じた情報発信にも取り組んでいます。ただしそのスタイルは他の一部政治家のような攻撃的・扇情的発信ではなく、地道な活動報告型と言えるでしょう。
Twitter(X)での活動
Twitter(現・X)ではアカウント「@pru_moriya」を開設しており、私鉄総連(Private Railway Union)の略称をハンドルネームに入れるあたりに彼の出自がうかがえます。フォロワー数は2025年6月時点で約1,550人と決して多くはありませんが^50、投稿内容は主に地方の労組支部や交通事業者への訪問報告、国会質疑の告知、地元(東京西多摩)や全国各地での街頭活動の様子などが中心です。
例えば「熊本電鉄の営業所や車両基地を訪問し意見交換した」「京王バス労組の定期大会で挨拶した」といったツイートが並び^51、労働現場を精力的に回る姿が伝わってきます。
Twitterでは専門用語も交えつつ現場の写真を添付しており、派手さはないものの彼の人柄や活動範囲を知ることができる内容です。また、国会質疑の前には「明日○時から予算委員会で質問に立ちます」と告知し、質疑後には動画リンクを貼るなど、支持者に向けて活動をリアルタイムで報告する工夫も見られます。
YouTubeチャンネル
YouTubeでは、森屋議員本人や後援会が運営する「もりやたかしチャンネル」があり、登録者数は約1,050人です^52。ここには参議院委員会での質疑映像や政策トーク動画がアップロードされています。
再生回数は数百回規模のものが多くバズることは稀ですが、内容は濃く、例えば「予算委員会で港湾運送料金の問題を追及する質疑(2025/3/10)」の動画や^53、地元西多摩地域のローカル鉄道である大井川鐵道の再建について社長と語り合う対談動画^54などが公開されています。
さらに立憲民主党公式のYouTube企画「ルームツアー」では森屋氏の議員会館事務所が紹介され、趣味で集めたバス・電車グッズが所狭しと並ぶ様子が映し出されました^55。控えめな森屋氏もこの動画では「これは○○鉄道のヘッドマークで...」と笑顔でコレクションを紹介し、鉄道好き・乗り物好きな一面が垣間見えます。そうした親しみやすい人柄も、SNSや動画を通じて徐々にファンを増やしている要因でしょう。
情報発信戦略の特徴
森屋議員の情報発信戦略は、大衆迎合的な発言で注目を集めるタイプではなく、支持基盤である労組関係者や地域住民への丁寧な報告に重点を置いているようです。フォロワー数・登録者数こそ数千人規模と控えめですが、逆に言えば実際に彼と接点のある人々が主な受け手となっており、濃密なコミュニケーションが図られているとも言えます。
Twitterではリプライにもできる限り目を通し、街頭活動の予定などもマメに知らせています。特筆すべきは、彼の投稿内容からは誹謗中傷や極端な表現が一切見られないことで、常に穏やかで誠実な語り口です。この点は、同じSNS空間でも炎上を恐れず強い言葉を発する政治家とは一線を画しています。
森屋氏の場合、「炎上商法」ではなく信頼醸成型の情報発信を貫いているため、爆発的なフォロワー増加はないものの安定した支持層の共感を得ているようです。
今後、次の選挙に向けてSNS活用を強化する余地はありますが、森屋議員の性格からすれば派手な演出ではなく地道な発信を続けるでしょう。実際、2025年現在も「働く仲間、公共交通産業に携わる仲間、そして地域の仲間のためにより一層がんばる。Twitterはこの程度の投稿頻度ですが引き続きよろしくお願いします」といった年末の挨拶を残しています^56。
この控えめなメッセージには、支持者への感謝とともに、自身の歩調で着実に歩む決意が表れています。つまりSNSでも彼は飾らない「現場の代弁者」そのままの姿なのです。
8. 公約実現度の検証
最後に、森屋隆議員のマニフェスト(公約)に掲げた目標が、どの程度現実の政策に反映・実現されたかを検証します。結論から言えば、森屋氏の公約は一部が実現へ前進したものの、依然道半ばの課題が多い状況です。ただし、その要因として本人の努力不足というよりは野党議員としての影響力の限界や、構造的に長期を要する問題が多いことが挙げられます。
雇用格差の是正と生活向上
まず「雇用格差の是正と生活向上」という公約について。非正規雇用の待遇改善や賃上げは森屋氏の最重視課題でしたが、2020年代を通じて日本全体の非正規率は依然高止まりし、ワーキングプア問題も解消されていません。
ただ、最低賃金は毎年着実に引き上げられ、2023年度には全国平均で時給1,000円を超える水準となりました(森屋氏の公約では「最低賃金1,500円をめざす」とありました)。この賃上げ傾向自体は政府主導ではありますが、森屋氏も予算委員会で岸田総理に対し「交通労働者の待遇改善は主要課題か」と質すなど継続的に圧力をかけており^38、その問題提起は一定の役割を果たしたと言えます。
また、コロナ禍で困窮する労働者支援としてガソリン税のトリガー条項凍結解除を訴えた件では、2022年当時政府は及び腰でしたが^57、その後代替策となる燃料補助金制度が導入され実質的な減税効果が出ました。これも野党の再三の追及が一因となったものです。
もっとも非正規労働者の正社員化促進など構造的課題は依然残されており、森屋氏の公約が「達成」されたとは言い難い状況です。本人も法案提出などで道筋をつけようとしましたが、実現には引き続き長い戦いが必要でしょう。
男女格差の解消と女性活躍推進
次に「男女格差の解消と女性活躍推進」です。森屋氏は選択的夫婦別姓制度の導入やジェンダー平等社会を目指す立場ですが、2025年現在これら制度改革は実現していません。世論調査では夫婦別姓賛成が過半を占める状況ながら、自民党内の慎重論もあり法案提出は見送られたままです。
しかし、森屋氏の所属する立憲民主党は毎国会ごとに選択的夫婦別姓法案を準備し議論の土壌を耕していますし、森屋氏自身もジェンダー平等推進本部に名を連ね署名活動に参加するなど地道な取り組みを続けています。
女性の社会進出に関しては、彼が公約で触れた非正規女性労働者の待遇改善はまだ道半ばです。一方、政府も2023年には出産・子育て支援策を大幅拡充し児童手当を拡充するとともに、企業の男女賃金格差開示を義務付けるなど一部前進が見られます。
森屋氏の公約の趣旨は「男女の格差をなくす制度整備」でしたが、この点では現政権下で限定的ながら動きがありました。ただ、それらは与党主導の施策であり森屋氏個人の貢献度を測るのは難しいところです。今後、彼自身がジェンダー関連法案の提出者となるなど、より直接的な形で公約実現に関与できるかが問われるでしょう。
平和の維持と基地負担軽減
「平和の維持と基地負担軽減」に関する公約は、実現度という観点では厳しい結果です。森屋氏が違憲と批判した安全保障関連法は撤回されることなく運用が続き、防衛費は大幅増額されました。沖縄の米軍基地問題も、辺野古新基地建設は森屋氏の反対にもかかわらず工事が進行しています。
森屋氏自身、外交・安保委員会には所属しておらず直接これらを止める術は持ちませんでしたが、野党の一員として防衛費増税の問題点を訴えたり、国会決議などで平和主義を主張する役割は果たしてきました。
例えば2022年の参議院本会議で可決された「ロシアのウクライナ侵略非難決議」採択に際しては立憲民主党議員団として賛成し、人道支援を訴える立場に立ちました。
しかし公約で掲げた「戦争のできる国への舵を元に戻す」という大望は、与党の力学の前で実現できていません。森屋氏の平和への信念は変わらずとも、現実の政策を転換させるには政権交代レベルの変化が必要であり、公約実現のハードルは高かったと言えます。
社会保障の立て直しと人への投資
「社会保障の立て直しと人への投資」という公約については、一部に成果が見られます。例えば高等教育無償化については所得制限付きながら授業料減免制度が拡充され、児童手当も2024年10月から支給対象年齢の拡大と所得制限撤廃が実施される見通しです(岸田政権の少子化対策の一環)^32。
これらは森屋氏の公約で言う「人への投資」の方向性と合致します。森屋氏自身、予算委員会などで「将来世代への投資なくして国の発展なし」という趣旨の発言を重ねており、公約がブレていないことは評価できます。
とはいえ年金や医療など社会保障制度全般の財源問題は依然深刻で、森屋氏の掲げたような大胆な改革(消費税に頼らない財源確保策など)は実現していません。彼は野党の立場から政府予算案の問題点を指摘し続け、2022年度予算案審議では「公共交通維持の予算をしっかり確保せよ」と訴え^32、2025年度予算案でも組合を通じ交通関係予算の拡充を要請しています^58。
公約に掲げた「人を大切にする仕組みづくり」は、部分的には政府施策にも反映され始めましたが、まだまだ道のりは長く、森屋氏の奮闘が求められる分野です。
公共交通の充実と交通運輸の未来づくり
最後に「公共交通の充実と交通運輸の未来づくり」です。これは森屋議員が最も力を注いだ公約であり、それだけに成果も挙がっています。
まず、新型コロナで危機に陥った地方公共交通を巡っては、政府が臨時の補助金や自治体支援策を打ち出し、幹線バス路線維持のための交付金を創設するなど一定の施策が講じられました。森屋氏は予算委員会でコロナ禍のバス事業者の惨状を訴え、国交相から「赤字増加を把握している」との答弁を引き出した上で「引き続き予算確保して支援せよ」と強く求めています^32。
その甲斐もあってか、2020~2021年度にかけてバス・鉄道事業者支援の補正予算が計上されました。また、2022年の交通政策基本法改正により、地域公共交通の維持向上が国の責務として明記されたことは公約実現への大きな一歩です^24。
森屋氏が掲げた「利用しやすく安全・安心な交通運輸をめざす」という理念は、この法律改正によって初めて具体的な政策の裏付けを得たと言えます。
さらに、懸案だったライドシェア(白タク)問題では、2023年に政府が一部地域で実証実験解禁を試みましたが、森屋氏らの反対運動もあって全面解禁には至っていません^1。議員連盟での活動や質問主意書提出を通じ、安全軽視のライドシェアには依然慎重論が強いことを示し、乱暴な規制緩和を思い留まらせた点は、公約「公共交通の安全確保」に沿う成果でしょう。
もっとも、地方では鉄道路線の廃止やバス減便が相次ぎ、交通弱者の問題は深刻化しています。森屋氏の尽力にもかかわらず、公共交通を取り巻く逆風は強く、公約の完全実現には至っていません。ただ、2025年現在、国会でこの問題を粘り強く提起し続ける議員の一人として森屋氏が認知されていること自体、公約推進の原動力となっています。
総合評価
以上の検証を総合すると、森屋隆議員の公約実現度は部分的な前進はあれど概ねこれからという評価になります。特に労働者待遇改善や平和主義の実現など大テーマは、一議員の努力だけでは成就困難であり、引き続き国民的議論と政治状況の変化が必要です。
しかし、公共交通政策のように彼が専門性を発揮できる分野では立法措置や予算措置に具体的な成果が見られ、公約とのギャップを埋めつつあります。
国会発言において公約のキーワードがどれだけ使われたか分析すると、「交通」「安全」「労働」といった言葉は演説・質疑の中で頻出し^1、森屋氏が一貫して公約の延長線上で活動していることが裏付けられます。
一方、「沖縄」「憲法改正」「同性婚」等の言葉は森屋氏の発言では確認されず、公約に掲げながら具体的関与が及ばなかった領域もあります。これは前述の通り委員会配置や党内役割の影響であり、森屋氏自身の意欲が失われたわけではありません。
むしろ本人は「与えられた持ち場で成果を出す」ことに注力してきた印象で、公約全般に目配りしつつも優先順位を付けて取り組んできたと評価できます。その結果、公約と実績との間に生じたギャップは、現時点では埋まっていない部分が多いものの、森屋氏のブレない姿勢は終始一貫しており、有権者との約束をこれからも追求し続けるであろうことが示唆されています。
参考資料
公式資料・選挙関連
国会会議録・議会資料
- 参議院予算委員会 集中審議 森屋隆質疑 (2024年3月8日) 立憲民主党ニュース記事(発言内容詳細)^35^34
- 参議院予算委員会 一般質疑 森屋隆質疑 (2022年3月1日) 立憲民主党ニュース記事^31
- 参議院国土交通委員会 議事録 (2024年6月11日) 森屋隆提出の附帯決議案 採択部分^25
- 参議院 質問主意書「ライドシェアが地域公共交通等にもたらす影響に関する質問主意書」提出情報 (第212回国会、2023年10月20日)^26
政党・本人サイト・労組資料
- 森屋隆公式ウェブサイト「政策:5つの約束」(マニフェスト全文)^11^22
- 立憲民主党公式サイト「森屋隆 議員情報」(党内役職・経歴)^9
- 立憲民主党ニュース「カスタマーハラスメント対策法案を参院に提出」(2025年4月25日)^28
- 私鉄総連『交通政策ニュース タクシー政策議員連盟総会』PDF(2023年11月1日、森屋氏事務局長)^27
- 立憲民主党ニュース「全日本海員組合より申し入れを受け意見交換」(2024年12月20日)^39
- 森屋隆公式Twitterアカウント @pru_moriya(投稿抜粋)^51
- 森屋隆後援会チャンネル(YouTube)登録者数・動画一覧^52