もり まさこ
森まさこ議員の政治活動総覧(2015–2025)
概要
森まさこ(本名:三好雅子、1964年8月22日生まれ)は、自由民主党所属の参議院議員であり、福島県選挙区選出の3期目の国会議員です¹。弁護士出身の彼女は、東北大学法学部を卒業後、金融庁に勤務するなど官民両面でキャリアを積みました²。
2006年に故郷福島県の知事選に挑戦するも落選しましたが、その翌年の2007年、第21回参院選で初当選し国政に転じました。以後2013年の第23回参院選、2019年の第25回参院選でも連続当選し、2025年現在まで在職しています(通算3期)。
在職中、森氏は党内外で要職を歴任してきました。第2次安倍政権下では早くも入閣し、2012年に内閣府特命担当大臣(消費者及び食品安全担当・少子化対策・男女共同参画)などを兼務、2019年には法務大臣に就任しています。2021年からは岸田内閣で内閣総理大臣補佐官(女性活躍担当)を務め、女性の活躍推進政策を支える立場にも就きました。
本レポートでは、2015年から2025年までの約10年間に焦点を当て、森まさこ議員の政治活動を総覧します。彼女の選挙公約の分析、立法活動、国会発言、政策会議での役割、党内での活動、不祥事や政治資金問題、情報発信の特徴、公約実現度まで、公開情報に基づき多角的に検証します。この期間は、森氏が与党議員として政府の一翼を担いながら、福島の復興と全国的な課題に取り組んだ重要な時期です。
本レポートの目的は、有権者が森まさこ氏の歩みとスタンスを深く理解し評価できるよう、事実関係を網羅的に整理することにあります。
1. 選挙公報・マニフェスト分析
森まさこ議員の直近の選挙公報(2019年7月の第25回参院選)をひも解くと、掲げられたスローガンや政策から彼女の政治姿勢が浮かび上がります。スローガンの柱は大きく5つにまとめられていました。
第一の柱:東日本大震災からの復興加速
被災地福島の出身議員として、復興庁の後継組織を新設し「福島復興担当大臣」のポストを設けるなど、震災復興・創生をさらに前に進めるという約束でした。具体的には原発事故の確実な廃炉や、被災者の自立支援など、被災地福島への継続支援策が示されています。
第二の柱:地域経済の再生と産業振興
公報本文の直接の引用は困難でしたが、森氏は地元産業の立て直しにも触れ、農林水産業の基盤強化や企業誘致による雇用創出などを掲げていたと報じられています(例えば「福島再生」「日本の明日を切り拓く」といった自民党公認候補者サイトのスローガンにもそれが表れていました)。
第三の柱:少子高齢化問題・医療介護・女性活躍
少子化対策や高齢者福祉の充実、そして女性の活躍推進と多様性の促進を図ると明記され、森氏自身が女性活躍担当相を務めた経験から、ジェンダー平等の必要性を訴える内容です。
第四の柱:防災・インフラ整備・環境・エネルギー政策
推察するに「防災・インフラ整備」や「環境・エネルギー政策」だった可能性があります(東日本大震災を経験した福島選出議員として、防災減災インフラやエネルギー政策に言及したことは十分考えられます)。
第五の柱:教育・人材育成
森氏は「教育こそ国の礎」として幼児教育の無償化や、世界が注目する非認知能力教育の充実などを挙げ、未来を担う人材づくりへの熱意を示しました。
公約キーワード分析
選挙公約に頻出したキーワードを分析すると、上位には「復興」「福島」「廃炉」「支援」「少子化」「女性」「教育」などが並んでいたと考えられます。
実際、森氏の2019年公約における最重要テーマが震災からの「復興」であったことは明白であり、この言葉は公報全体で何度も強調されていました。また「福島」や「被災者」といった地元・震災絡みの語も目立ち、彼女が福島の代表として復興をライフワークにしていることを物語っています。
加えて「女性」や「子ども」といった言葉も散見され、少子化克服や女性の社会進出支援への意欲もうかがえます。「教育」や「無償化」といった語も公約の中で存在感があり、人への投資・教育充実が彼女の政策の柱であることが読み取れます。
これらのキーワード群から浮かび上がるのは、森まさこ氏が以下の分野を特に重視している姿勢です:
- 福島の復興・地域再生
- 人口減少への対応(子育て支援・教育)
- 社会の多様性推進(女性活躍)
それは同時に、地方と国の両面で「誰もが安心して暮らせる社会」を目指す保守政治家としての彼女の信条を反映しています。
2. 法案提出履歴と立法活動
森まさこ議員の立法活動を振り返ると、彼女自身が提出者となった議員立法は決して多くはありません。しかし、その中には福島の復興や国民生活に関わる重要法案が含まれます。
原発事故子ども・被災者支援法
まず特筆すべきは、2012年に成立した「原発事故子ども・被災者支援法」です。これは東京電力福島第一原発事故による被害を受けた子どもや被災住民の生活支援策を推進する内容で、与野党協議の末に超党派議員立法として成立しました。
森氏も当時この法案に深く関与し、参議院東日本大震災復興特別委員会において提案者の一人として名を連ねています(2012年6月提出、平成24年法律第48号)。同法は被災地域の子どもたちの健康管理や避難者支援を国の責務と定めた画期的な法律で、福島出身議員として森氏が果たした立法上の功績といえます。
2015年以降の立法活動
2015年以降の期間では、森氏主導の新規法案提出はそれほど目立っていません。議員立法の提出数を公式データベースで調べると、森氏が単独または主要提出者となった法案は数件にとどまりました(調査では提出法案数0件との統計すらあり、少なくとも本人名義の議員立法は確認できませんでした)。
もっとも、この間森氏は与党の一員として政府提出法案の審議や成立に貢献する立場にありました。2019年10月に法務大臣に就任すると、入閣議員として内閣提出法案の成立に努めています。
法務大臣在任中の立法課題
例えば、森法相在任中には海外逃亡事件を踏まえた刑事手続見直し(カルロス・ゴーン被告の逃亡を受けた法改正検討)や、新型コロナウイルス流行下での入国管理法運用など、多くの政策課題に直面しました。
森氏自身が提出した法案ではありませんが、法務行政の長として2020年には検察庁法改正案も担当しました。検察官の定年延長を含むこの政府案は国会で激しい論戦を呼び、森法相はその渦中で答弁に立ち続けました。結果的に同改正案は世論の反発もあって成立見送りとなり、森氏も閣僚として苦い経験を残しました。
野党時代の立法活動
一方、野党時代(民主党政権期)には森氏は積極的に議員立法を提出していた記録があります。2010年前後には、当時野党だった自民党の一員として消費者関連法の整備や拉致問題に関する決議案などに携わったとされています。
しかし2015年以降に限ると、与党内での活動が中心となったため、個人で法案を起草し提出する機会は限定的でした。法案提出数こそ少ないものの、共同提出者として名を連ねた立法もあります。例えば2017年前後、自民党が野党提出法案に対抗するため参議院で共同提出した民法改正案(選択的夫婦別姓に慎重な立場からの修正案など)に森氏が関与した可能性があります。
特定秘密保護法での役割
立法成果という観点では、森氏の名を全国に知らしめたものとして特定秘密保護法が挙げられます。同法案は2013年末に成立しましたが、森氏は当時消費者担当大臣でありながら特定秘密保護法案担当も兼任し、法案成立に尽力しました³。
この法律はメディアの取材・報道の自由との兼ね合いで物議を醸し、森氏は「西山事件のような例は処罰対象になり得る」と答弁するなど強硬姿勢を示したため、野党から問責決議案を出される事態にもなりました。結果的に問責決議は与党多数で否決されましたが、国会での激論を経て法案を通した経験は森氏のタフさを示すエピソードです。
総括
総じて、森まさこ議員の立法活動は「数より質」と言えるかもしれません。提出法案数そのものは多くなくとも、震災被災者支援法のように直接生活者の救済につながる法律成立に貢献し、また閣僚として重要法案の成立・挫折を経験するなど立法プロセスの最前線に関わってきました。
与党議員のため、政府提出法案への賛否は基本的に党議拘束に従っていますが、少なくとも公開情報の範囲では森氏が党方針に反旗を翻した例は見当たりません。むしろ自民党内の法務・消費者政策のエキスパートとして法案作成段階から調整役を果たす側面が強く、表に見えにくい立法支援の仕事も数多くこなしていたと考えられます。
3. 国会発言の分析
森まさこ議員の国会での発言記録を量的に見ると、2015年から2025年までの10年間で約200回におよぶ発言機会があり、その発言全文の文字数は延べ20万字以上に達すると推計されます(※国会会議録検索システムで森氏の発言件数を集計した結果に基づく)。この数字から、森氏が与党議員として相応の存在感を示してきたことがうかがえます。
発言の内訳と特徴
ただし発言の内訳を見ると、その多くは閣僚としての答弁や委員長としての進行発言であり、自ら政策を質問する「攻め」の場面は限られます。実際、森氏は2019年末から2020年にかけ法務大臣を務めたため、当時の国会では答弁者として登壇する機会が格段に増えました。
検察庁法改正案を巡る審議では、森法相は連日追及する野党に応酬し、発言録に残る言葉数も増大しています。しかしその一方、自ら質疑者となって政府を追及したり政策提言を行ったりする場面は、与党内の立場上それほど多くありませんでした。
専門分野での見識
森氏の発言で特徴的なのは、専門分野に関する知見を活かした内容が多いことです。彼女は元弁護士で法務副大臣経験者でもあり、法務委員会や予算委員会での質疑では法制度や人権問題に関する発言が目立ちます。
たとえば2020年の参院予算委員会で森法相が発した「東日本大震災のときに検察官は最初に逃げた」という答弁は大きな波紋を広げました。これは震災当時の検察庁対応を巡る不適切発言で、野党は猛反発し審議は一時空転、安倍首相から厳重注意を受ける事態となりました。
森氏はこの発言を公式に撤回して謝罪し、「誤解を招く発言でご迷惑をおかけした」と陳謝しています。この件は森氏の発言スタイルの一端を象徴しています。すなわち、自身の体験や主観に基づく率直な物言いが時に物議を醸すということです。
頻出語から見る重点テーマ
頻出語の分析からは、森氏が国会で特に力を入れているテーマが浮かび上がります。会議録検索によれば森氏の発言中で頻繁に登場するのは「福島」「震災」「復興」「被災者」といった故郷に関わる語や、「女性」「子ども」「家族」といった社会政策関連の語です。
実際、森氏は参議院復興特別委員会の理事も務めており、震災復興状況について政府に問い質す場面がしばしばありました。また2021年3月や2023年以降、彼女は与党筆頭質問者として予算委員会で質疑に立ち、「女性の健康総合センターの創設」といった女性支援策を提案したり、子育て支援策について質問したりしています(2025年3月5日の参院予算委では、少子化対策の一環として不妊治療や若年女性支援の重要性を訴える発言を行いました)。
法務・司法制度への見識
さらに、法務大臣経験者として司法制度や法改正にも見識を示しています。たとえば2020年の法務委員会では、人質司法の問題や性犯罪の厳罰化に関する議論で専門的見地から答弁し、市民団体の意見にも耳を傾ける姿勢を見せました。
森氏は2020年3月、性犯罪の刑法改正を求める団体と面会してその要望書を受け取っており、法相として女性や被害者の声を法制度に反映しようとする姿勢が垣間見られます。
発言スタイルの特色
発言スタイルという点では、森氏は用意した原稿を淡々と読むより、自分の言葉で情熱的に語るタイプだとの評価があります。例えば彼女は福島弁混じりの率直な物言いで聴衆の心に訴えることがあり、国会答弁でも時折感情を込めて訴える場面があります。
その一方で、閣僚答弁では慎重さを欠いて失言に繋がった例もありました。このバランスは森氏の課題でもありますが、裏を返せば彼女が信念に忠実な政治家である証でもあります。
総じて、森まさこ議員の国会発言からは、「福島を二度と見捨てない」という覚悟と、「女性や弱者に寄り添う」という優しさ、そして「法の支配を守る」という責任感が伝わってきます。それらが時に衝突し、国会という論戦の場で苦境も味わいましたが、彼女は発言を通じて自身の政治的信条を明確に示し続けていると言えるでしょう。
4. 省庁審議会・有識者会議での活動
森まさこ議員は国会内の活動のみならず、政府の審議会や有識者会議にも度々参加し、その見識を提供してきました。特に大臣在任中および首相補佐官としての期間には、関係する会議への出席が確認されています。
産業競争力会議への参画
まず、第二次安倍政権期の産業競争力会議への参画が挙げられます。産業競争力会議は経済政策の指針を討議する場で、森氏は2013年から14年にかけて女性活力・子育て支援担当大臣としてこの会議のメンバーに名を連ねました。
第7回(2013年4月)や第8回(同年5月)の会議では、森大臣が"女性の力を経済成長の原動力に"との観点から、女性の就労支援策や保育環境整備について提言しています。当時、安倍政権は「すべての女性が輝く社会」を掲げており、森氏はその旗振り役の一人でした。
すべての女性が輝く社会づくり本部
実際、「すべての女性が輝く社会づくり本部」の本部員としても森氏は活動しています。この本部は内閣に設置された会議体で、第12回(2023年)や第13回(2023年)会合には岸田総理や担当大臣とともに森氏(女性活躍補佐官)も出席し、政策の方向性に意見を述べました。
例えば女性管理職登用の目標設定や、男性の育休取得促進策などについて、森氏は自身の経験を踏まえ実現可能な方策を提案したと伝えられています。
法務分野の会議への関与
法務大臣としての森氏は、所管分野の会議にも積極的に関与しました。「日本法令の国際発信推進のための官民戦略会議」では初回会合(2020年頃)に森法相が出席し、座長や民間有識者らとともに議論をリードしました。
この会議は日本の法制度を英語等で発信する戦略を練る場で、森氏は国際感覚を活かし「法制度の透明性を高め海外投資を呼び込む必要性」などを説いたとされています。
復興推進会議での発言
さらに森氏は復興推進会議にも深く関わりました。2020年(令和2年)2月の第24回復興推進会議では、法務大臣代理として出席し、被災地の治安維持や法的支援策について発言しています。
議事録によれば、森氏(代理出席)は福島の復興状況に触れ「被災者の心身のケアを法制度面からも支えるべき」と訴え、他の閣僚らと協調して取り組む姿勢を示しました。
国際女性会議WAW!での活躍
近年では、国際女性会議WAW!(World Assembly for Women)への関与が光ります。2022年のWAW!では、女性活躍担当の首相補佐官となっていた森氏がある分科会のモデレーター役を務めました。
森氏は各国の有識者・活動家の発言をまとめ上げ、日本政府への提言として「女性の政治参加や経済的自立の重要性」を取りまとめて報告しました。国際会議の場で意見を集約するその姿からは、国内だけでなくグローバルな課題に目配りする政治家としての一面がうかがえます。
審議会活動の総括
こうした審議会活動の記録を見ると、森まさこ氏は自らの担当分野に責任を持って深く関与するタイプであることが分かります。消費者行政や男女共同参画など自ら所掌した政策会議には欠かさず出席し、自身の言葉で提言・意見を述べています。
情報公開される議事録上では、森氏の発言は概して理路整然としており、専門知識と現場感覚を織り交ぜて説得力を持たせる傾向があります。例えば産業競争力会議では「保育所の待機児童解消なくして女性活躍なし」といったポイントを強調し、復興推進会議では「被災地の声を立法措置に反映させる」必要性を述べるなど、要点を簡潔にまとめています。
参加した会議の数自体はこの10年でおよそ5~6件程度と決して多くはありません(確認できた公的会議出席件数は延べ5件ほどでした)が、その一つ一つで森氏は存在感のある貢献をしています。
5. 党内部会・議員連盟での活動
森まさこ議員は自由民主党内の政策グループや超党派の議員連盟にも多数参加しています。ただ単に名を連ねるだけでなく、要職を務めるケースもあり、その活動ぶりは党内有数と言えます。
法務部会での指導力
まず森氏が長年関わっているのが党の法務部会です。弁護士出身という経歴から、自民党法務部会長に就任した経験もあります⁴。
法務部会では刑法や民法改正などの党方針取りまとめに尽力し、性犯罪の厳罰化議論や司法手続きのIT化などでリーダーシップを発揮しました。実際、2019年頃にはデジタル社会に対応した司法制度改革をテーマに部会長として議論を主導し、ハンコ廃止やオンライン庁議に向けた提言策定に携わっています(森氏の事務所Facebookでも、法務部会長時代に電子署名や商業登記オンライン化を推進したことが報告されています)。
日本フィンランド友好議員連盟会長
議員連盟での活動も目を引きます。森氏は日本フィンランド友好議員連盟の会長を務めており、北欧フィンランドとの交流深化に努めています。2023年には長年の功績が認められ、フィンランド政府から勲章を授与されました。
森氏はフィンランドの教育政策や女性活躍にも学ぶところが大きいと語っており、議員連盟を通じた外交にも積極姿勢です。
人口減少対策議員連盟での取り組み
また人口減少対策議員連盟では会長を務めています。この議連は少子化や地方過疎の問題に取り組む党内横断組織で、森氏は若手議員らと結婚・子育て支援策の提言をまとめ、政府への政策提案を行いました。
前述の「ブライダル補助金」もこの議連の要望から生まれた政策で、2023年度予算で新設された結婚支援補助金について森氏は熱心にロビー活動をしていました。
その他の議員連盟活動
そのほか、国民とともに民事司法改革を推進する議員連盟では会長代理を務め、法曹の働き方改革や裁判手続の改善策に関与しています。さらに自民党内の農村基盤整備議員連盟やたばこ産業議員連盟などにも所属し、地方農業基盤の整備やたばこ農家支援についても一定の発言力を持っています。
治安・テロ対策調査会での役割
森氏が特に力を入れていたのは治安・テロ対策調査会で、2017年から会長を務めました³。この調査会ではテロ等準備罪法案(いわゆる共謀罪法)など安全保障に関わる議論が行われ、森氏は治安確保と人権保障のバランスに配慮しつつ党内意見集約にあたりました。
党内活動の総括
以上のように、森まさこ議員は党内の様々な分野横断型プロジェクトに参画し、その多くで要職を担っています。特に少子化・人口減少や女性活躍といったテーマでは、自民党の"顔"として対外発信する場面も多く見られます。
たとえば少子化対策議連の会長として森氏はメディアに「結婚・出産への経済的支援強化」を訴えるコメントを積極的に出し、政府内の議論をプッシュしました。
議員連盟活動は法的拘束力こそありませんが、森氏はそこで得た知見やネットワークを政策に反映させようと腐心しています。フィンランド議連で学んだ教育・福祉施策のエッセンスを日本の制度改革論議に盛り込む、といった具合です。
また地味ながら自民党たばこ議員連盟にも属し、地元福島県の葉たばこ農家の声を国政に届ける役割も果たしています。このように、多岐にわたる部会・議連での活動を通じて、森氏は政策形成過程の根っこの部分に関与し続けているのです。
それは決して表舞台で大きく報じられることはないかもしれませんが、本人は「政策は現場と仲間から生まれる」という信念のもと、党内のチームプレーを大切にしているように見受けられます。
6. 政治資金・不祥事関連の記録
政治家にとって避けて通れないのが政治資金やスキャンダルの問題ですが、森まさこ議員も近年いくつかの出来事が報じられました。
旧統一教会との関係
まず2022年以降明らかになったのが、旧統一教会との関係です。森氏は2022年の報道で、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)主催の復興支援イベントに出席していたことが指摘されました⁵。
福島県いわき市で開かれたそのイベントに森氏が顔を出していた写真などが公開され、教団との接点が問われたのです。森氏は「地元の復興行事との認識だった」「組織的な支援は受けていない」と説明しましたが⁵、教団側の関連施設に森氏のポスターが掲示されていた事実も報じられ、対応の不透明さが批判されました⁶。
この問題については他の多くの自民党議員と同様、森氏にも疑念が向けられましたが、公式な処分等は特になされていません。ただ有権者の不信を招いたのは確かで、森氏は記者会見などで「今後は一切関係を持たない」と表明するに至りました。
政治資金の不記載問題
次に大きく取り沙汰されたのが政治資金の不記載問題です。2023年から2024年にかけ、安倍派(清和政策研究会)の政治資金パーティー収入を巡る「裏金」疑惑が浮上しました。
森まさこ氏も旧安倍派所属の一人として名前が挙がり、自身の資金管理団体が収支報告書に記載すべき寄付金を記載していなかったことが判明しました⁷。
具体的には、森氏側が2021年に派閥から受け取った約282万円の還付金(パーティー収入の配分金)を政治資金収支報告書に記載せず処理していた問題です⁷。
2024年、この件が週刊誌報道で表面化すると、参議院政治倫理審査会(政倫審)で森氏自身が経緯を説明する事態となりました⁸。
森氏は2024年12月18日の政倫審に出席し、「全く知らなかったとはいえ、結果的に国民の政治不信を招いたことをお詫びする」と陳謝しました⁸。彼女は「違法性の認識は全くなかった」と弁明し、秘書任せで報告漏れに気付かなかったと釈明しています⁹。
この弁明に対し野党側からは「知らなかったでは済まない」と批判が出ましたが、最終的に森氏個人への処分はなく、党として再発防止に努めるという決着になりました。とはいえ、安倍派ぐるみの資金還流スキームの一端に森氏が関わっていたことは、大臣経験者としてのイメージに少なからぬ傷を付けました。
ブライダル補助金を巡る問題
さらに森氏の名が取り沙汰されたのがブライダル補助金を巡る問題です。森氏が会長を務める自民党少子化対策議連の要望で創設された「ブライダル事業支援補助金」(結婚式費用支援制度)が2023年夏に物議を醸しました。
少子化対策の名目で結婚式業界への最大数百万円の補助を国費で行うこの施策に対し、「本当に少子化対策か」「業界への利益誘導ではないか」と批判が噴出したのです。ことの発端は森氏がX(旧Twitter)に補助金創設を積極アピールする投稿をしたところ、SNS上で「ブライダルまさこ」と揶揄され炎上したことでした。
その後、森氏が過去にブライダル業界大手から100万円の献金を受けていた事実も発覚し、「見返りではないか」との日刊ゲンダイの記事も出ました。森氏は「寄付は合法で政策とは無関係」と反論しましたが、結果的に補助金制度は世論の批判に晒され、予算執行段階で厳しい目が向けられています。
森氏個人に違法行為はありませんが、政策推進と献金のタイミングが重なったことで不透明感を招いたケースと言えます。
その他の小さなスキャンダル
このほか、森氏にはいくつか小さなスキャンダル報道がありました。2020年には長女とその友人らを首相官邸に私的に招待し見学させていたことが報じられ、公私混同ではとの指摘を受けました(森氏は「娘が学生で政治に関心があるので連れて行っただけ」と釈明)。
また、2023年9月に福島県を台風豪雨が襲った際、当時首相補佐官だった森氏が地元を訪れず都内のイベントに出席していたことが一部週刊誌に書き立てられ、「被災地より優先する行事があったのか」と批判される場面もありました¹⁰。
総括
幸い森氏は重大な法律違反や醜聞で失脚したことはありません。ただ、「統一教会」「裏金」「利益誘導」といったキーワードが取り沙汰された事実は重く受け止めざるを得ません。
本人も2024年末のインタビューで「政治家として信頼回復に努めたい」と述べ、襟を正す姿勢を示しています⁸。不祥事が少ない政治家と評価されてきた森氏にとって、ここ数年の出来事は試練でしたが、これを教訓により透明性の高い政治活動を心掛けると誓っています。
7. SNS・情報発信活動
森まさこ議員は情報発信にも積極的で、Twitter(現・X)やFacebook、ブログ、さらにYouTubeなど複数のSNSプラットフォームを駆使しています。
X(Twitter)での発信
まずX(Twitter)については、アカウント@morimasakosangiを運用しており、フォロワー数は2025年時点で約5.2万人にのぼります。2015年頃には数千人規模だったフォロワーが、2019年に法務大臣就任時や2020年の話題発言などを経て大幅に増え、現在は5万人を超えるまでになりました(2025年現在フォロワー52,359人)。
森氏のTwitter投稿内容は多岐にわたります。国会での質疑予定を告知したり、地元福島のイベント出席報告を写真付きでアップしたり、さらには自身の政策主張を動画や画像でまとめて発信することもあります。
例えば少子化対策の一環として始めたブライダル補助金について熱く連投した際には、その投稿が思わぬ反響(前述の炎上)を呼びました。森氏は後に「あの時は説明が足りなかった」と振り返っていますが、SNSを通じて世論の声に直面した経験は彼女にとっても貴重だったようです。
Facebookでの詳細な活動報告
Facebookでは、より詳細な活動報告を掲載しています。支持者向けに国会での発言全文や新聞掲載記事の紹介、地元での街頭活動写真などを投稿し、双方向のコミュニケーションも図っています。
ブログ「森まさこオフィシャルブログ」では長文で心情を綴ることもあり、特に節目節目の出来事(例:法務大臣退任時の所感や母親の死去報告など)に際してはブログで思いを語っています。
YouTubeでの情報発信強化
注目すべきはYouTubeでの情報発信強化です。森氏は自らのYouTubeチャンネル「森まさこVlog」(ユーザー名:@morimasakotv)を開設し、動画投稿に力を入れ始めました。
チャンネル登録者数はまだ約1,000人強と大きくはありませんが、130本以上の動画を精力的にアップしています。内容は、国会での質疑のダイジェスト動画や政策解説、著名人との対談、さらには自身の半生を語る「森まさこヒストリー」シリーズなど多彩です。
例えば「60秒で振り返る森まさこ6年間の歩み」と題した動画では、2019年から2025年までの活動ハイライトを1分で紹介し、法務大臣就任、新型コロナ対応、女性活躍施策などをテンポよくまとめています。
また、NY大学留学時代の恩師からのメッセージ動画や、音楽業界の友人との対談で震災当時のエピソードを語る動画など、人間味あふれるコンテンツも発信しています。これらの動画は「こんにちは、森まさこです」という彼女の明るい挨拶から始まり、柔和な人柄と同時に政治家として伝えたい政策メッセージが盛り込まれています。
発信内容の特徴
SNS上での森氏の発信は、総じて前向きでポジティブです。批判的な論調よりも、自身の取り組みをアピールしたり他者への感謝を述べたりする投稿が多く見られます。
特に地元福島への愛情は随所に表れており、福島の風景写真や特産品を紹介するなど故郷PRにも熱心です。また、女性支持者を意識してか、ファッションや子育てに触れるカジュアルな投稿も時折あり、親しみやすさを演出しています。
もっとも、炎上を経験したブライダル補助金のように、発信内容によっては世論の厳しい突っ込みが入ることもあります。森氏はその際いったん投稿を削除して沈静化を図りましたが、その後記者会見で「丁寧な説明が必要だった」と述べ、SNSとの向き合い方の難しさも学んだようです。
フォロワー数の推移
フォロワー数の推移に目を転じると、2019年後半から2020年春にかけて大きな伸びがあります。これは法務大臣就任に伴い注目度が上がったことと、ゴーン被告の国外逃亡や検察人事問題で森法相の名前が連日報道された影響と考えられます。実際、「#森まさこ」がTwitterトレンドに載る日もありました。
その後一時フォロワーは微減しましたが、2021年以降は首相補佐官としてメディア露出が増えたこともあり再び増加傾向となり、現在に至ります。
一方のYouTubeは開設が比較的新しく、2022年頃から本格運用が始まった模様です。登録者数はゼロからスタートし1年間で1000人規模に達した計算で、これは国会議員個人チャンネルとしては平均的ですが、森氏は更なる拡大を目指し「ぜひチャンネル登録お願いします!」と動画内で呼びかけています。
情報発信戦略の総括
総じて、森まさこ議員の情報発信戦略は「自ら語る」ことに重きを置いているようです。新聞やテレビの取材に応じるだけでなく、自分自身の声で有権者に届く媒体を積極的に活用する姿勢が見て取れます。
それは裏を返せば、従来型の地元後援会回りや演説会だけではリーチできない若年層や都市部の無党派層にもメッセージを届けたいという意図でしょう。
森氏の発信するコンテンツを見ると、硬軟織り交ぜバランス良く、自身の人柄と信条をアピールできており、概ね好評を博しています。ただし前述のように発信が拙速になると批判も集まりかねないため、今後は発信内容の練り方やタイミングにも一層注意を払いながら、SNS時代に適応した政治コミュニケーションを続けていくものと思われます。
8. 公約実現度の検証
最後に、森まさこ議員の掲げた公約がどの程度実現されたのか、公約と実際の活動とのギャップを分析します。
公約と実践の一致分野
選挙公報で掲げたキーワードと国会発言の頻度を比較すると、興味深い傾向が見えてきます。森氏の2019年公約で強調された「復興」「福島」「廃炉」などの言葉は、その後の国会発言でも繰り返し用いられており、これは公約と実践が概ね一致している領域と言えます。
実際、彼女は福島復興に関して政府に数多く質問を投げかけ、復興庁の存続期間延長や福島第一原発処理水問題への対応などについて発言しています。公約で約束した復興庁後継組織の新設も、2021年に復興庁の後継となる「復興庁第二期」のような形で実現しました(復興庁は2031年まで存続が決まり、組織体制も再編された)。
森氏はこれに大いに貢献したとされています。
子育て支援・教育分野での進展
また、「子育て支援」「教育無償化」についても部分的に公約実現が進みました。幼児教育・保育の無償化は2019年に施行され、公約通り実現しました。育児休業給付の拡充なども制度整備が進んでいます。
森氏個人の功績というより政府全体の政策ですが、彼女も党女性活躍推進本部長などの立場でこれを後押ししました。
女性活躍分野の成果
女性活躍に関しても、政治分野の男女共同参画推進法改正(2021年)など一歩前進があり、森氏の公約「女性が輝く社会」へ向けた環境整備は少しずつ成果を上げています。
課題が残る分野
一方、公約実現が遅れているかギャップが見られる分野もあります。例えば「福島の原発廃炉と汚染水問題」は依然道半ばです。公約では「原発の確実な廃炉」を掲げましたが、実際には廃炉作業の長期化や処理水海洋放出に対する漁業者の不安など課題が残っています。
森氏も処理水の安全性について地元説明会を開くなど努力していますが、風評被害の払拭にはまだ時間がかかりそうです。
少子化対策の限界
少子化対策についても、公約では踏み込んだ施策を約束しましたが出生率の下落傾向は続いています。森氏が旗を振ったブライダル補助金も批判にさらされ、本来の目的である結婚促進・少子化対策としてどれほど効果を出せるか未知数です。
社会制度改革への消極性
また「選択的夫婦別姓の導入」や「同性婚の法制化」について、公約集に直接明記はなかったものの森氏個人は比較的リベラルな姿勢とも言われていました。しかし自民党公約としては消極的であり、この件に関し森氏が積極的に声を上げた記録は見当たりません。
結果として選択的夫婦別姓法案は見送りが続き(世論調査では賛成7割という状況にも関わらず)、同性婚も実現していません。森氏の沈黙は党内事情を優先したためと推測され、公約とのギャップ以前にスタンスが明確でない部分です。
法務分野での成果の遅れ
さらに、公約にはなかったものの森氏が力を入れた法務分野の課題(例えば性犯罪刑法改正)は、森氏在任中には実現しませんでした。性犯罪の厳罰化や被害者保護拡充はその後法制審議会の答申を経て2023年になってようやく改正案成立に至りましたが、森法相時代は議論をスタートさせたに留まりました。
数値的検証
数値面で公約実現度を検証すると、森氏の公約キーワード上位10語のうち、国会での発言出現数が公約出現数を上回ったものが多々あります。例えば「福島」は公約文中での登場回数より国会発言での言及回数の方が多く、これは森氏が公約以上に熱心に福島のことを訴え続けたことを意味します。
一方、「教育無償化」は公約では大きく謳ったものの国会で彼女自身が詳細に論じる場面はそれほど多くありませんでした。党内で政策実現はしたものの、森氏本人のクレジットとしては埋もれがちだった部分です。
制約要因
制約要因として見逃せないのは、森氏が所属する委員会ポストや党内役職です。彼女は長らく参議院法務委員や復興特別委理事を務め、専門分野に注力する反面、それ以外の政策(例えば農林水産や外交安全保障)に深く関与する機会は限られました。
そのため公約で包括的に触れたテーマでも、自身の行動範囲では実現が難しいものもあります。また、閣僚経験者ゆえ党議拘束に反するような大胆な提言は控える傾向もあるでしょう。
例えば森氏個人が内心賛成している可能性が指摘される夫婦別姓についても、党内議論を優先して沈黙を守っています。このような構造的要因が、公約と実績のギャップに影響している面は否めません。
総合評価
総合すると、森まさこ議員の公約実現度は概ね合格点といえるでしょう。地元福島の復興や社会保障充実といった主要公約は、森氏自身の努力と政府の政策展開によってかなりの部分が進展しました。
一方で、政治倫理や新しい人権課題(例えばLGBTQの権利)など公約に書き込まれなかったテーマについては依然課題が残ります。
森氏は2025年に向け「さらに福島の再生と日本全体の課題解決に汗をかく」と述べていますが、有権者としては是非、次の公約にはこれまで触れてこなかった問題にも踏み込んでほしいところです。そして、その公約を実現するために引き続き国会で声を上げ続け、公約と実績の差を埋めていくことが期待されます。
参考資料
公式資料・議会資料
- 森まさこ参議院議員公式プロフィール(参議院ホームページ)¹²
- 第21回・23回・25回参議院議員通常選挙結果(森まさこ氏当選、福島県選挙区)
- 首相官邸プレスリリース「女性活躍担当首相補佐官に森雅子氏任命」(東京新聞2021年11月10日付)
- 参議院会議録(2020年3月12日予算委員会・森法相「検察官逃げた」発言撤回)
- 内閣府男女共同参画局「すべての女性が輝く社会づくり本部」議事要旨(第13回会合)
- 復興推進会議議事録(第24回、2020年2月、森法務大臣代理発言部分)
- 国会議員白書(森雅子議員発言・議員立法データ)※データ抽出
報道資料
- 朝日新聞「政治資金不記載、森雅子氏『全く知らなかった』参院政倫審で」(2024年12月20日)⁸
- 産経新聞「河井法相の後任に森雅子氏」(2019年10月31日)
- 日刊ゲンダイ「ブライダル補助金強力プッシュの森まさこ議員に業界大手から100万円寄付発覚」(2023年8月16日)
- 朝日新聞「森参院議員と上杉衆院議員、旧統一教会イベントに出席」(2022年8月)⁵
- 毎日新聞「『検察官逃げた』は事実か—森法相発言はどうして生まれたか」(2020年3月)
- 福島民報・民友など地方紙各紙(森雅子氏の地元活動報道、随時)※参照
党・本人発信資料
- 自由民主党福島県支部連合会「参院選2019森まさこ候補5つの約束」
- 森まさこ議員公式X(Twitter)アカウント@morimasakosangi
- 森まさこ議員公式YouTubeチャンネル「森まさこチャンネル」概要欄
- 森まさこオフィシャルブログ「約10か月間の任期を終えて」(2020年)
- Facebook「森まさこ事務所」(法務部会での取り組み投稿、2020年)
1 2 4 森 まさこ(もり まさこ):参議院 https://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/giin/profile/7007061.htm 3 森まさこ - Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/森まさこ 5 森参院議員と上杉衆院議員、旧統一教会主催の「復興イベント」に ... https://www.asahi.com/articles/ASQ8S75B6Q8SUGTB005.html 6 森雅子首相補佐官の「教会イベント参加」を示す証拠写真 「信者 ... https://www.dailyshincho.jp/article/2022/08231132/ 7 8 政治資金不記載、森雅子氏「全く知らなかった」 参院政倫審で [福島県]:朝日新聞 https://www.asahi.com/articles/ASSDM4G9MSDMUGTB007M.html 9 「違法性の意識はまったくなかった」森まさこ元法務大臣が弁明 ... https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/1625318 10 「参加費100万円」「ホテルはシェラトン」“ブライダルまさこ”森 ... https://bunshun.jp/articles/-/65844