うめむら みずほ
梅村みずほ議員の政治活動総覧(2015–2025)
概要
梅村みずほ氏(1978年9月10日生まれ)は、日本の政治家であり元フリーアナウンサー・タレントである。2019年の第25回参議院通常選挙で日本維新の会公認の新人候補として大阪府選挙区から立候補し、約72万票を獲得して初当選した(改選数4名中トップ当選)¹ ²。現在まで当選1回、在職期間は2019年7月から継続中である。
参議院では当選後、文教科学委員や法務委員などを務め、2025年6月時点では財政金融委員会に所属している³。党歴としては、当選時から日本維新の会に属し、党内では教育や家族政策に注力する若手議員として頭角を現した。
2022年8月には松井一郎代表の後任を決める維新代表選に立候補し、全国的知名度のない新人ながら積極果敢に政策を訴えたものの、馬場伸幸氏に敗れている⁴。その後も積極的に国会論戦に参加していたが、2023年5月に入管施設で死亡した被収容者(ウィシュマさん)をめぐる国会発言が事実に基づかない不適切発言として批判を浴び、党から6か月の党員資格停止処分を受けるという試練も経験した⁵。
2025年夏の参院選に向けては大阪選挙区で2期目を目指し党公認を目指していたが、党内予備選で敗れ公認を得られなかったため、同年4月に維新を離党した⁶。離党に際して梅村氏は「党のガバナンス不全」を理由に挙げ⁷、無所属議員となった後は一人会派「令月会」を結成して活動している⁷。
経歴・背景
愛知県名古屋市に生まれ、愛媛・山口・滋賀・富山と各地で育った梅村氏は、富山県立呉羽高等学校、立命館大学文学部を卒業後、2001年に旅行会社JTBに就職した経歴を持つ⁸。2003年にアナウンサーへ転身し、大阪・京都を拠点にリポーターやキャスターとして活躍、さらに2017年からは「話し方教室」を運営しコミュニケーション講師を務めるなど、多様な職歴を積んできた⁸。
プライベートでは2児の母であり、子育て中の一般市民の目線から政治参加を決意したと述べている⁹。こうした背景から、政治家としては子ども・教育分野や家庭問題への関心が強く、「お母さん目線の政治」「子どもたちが安心して暮らせる日本」を掲げているのが特徴である。
本レポートでは、2015年から2025年6月までのインターネット等で確認可能な梅村みずほ議員の政治活動実績を総覧し、有権者が同氏の歩みとスタンスを立体的に理解できるよう分析する。選挙公約の内容と国会活動の実績、立法への関与、発言傾向、党内外での役割、政治資金や諸問題、さらにはSNSでの情報発信まで、事実に基づき網羅的に記述する。
梅村氏の政治家像を、華やかな経歴だけでなく具体的な政策行動とその成果・課題を交えて描写し、有権者の適切な評価に資する包括的資料とすることを目的とする。
1. 選挙公報・マニフェスト分析
梅村みずほ氏が掲げた最新の選挙公約を振り返ると、その核には一貫して「子育て・教育支援」が据えられている。初当選を果たした2019年参院選(令和元年7月)の選挙公報では、スローガンとして「子どもたちが安心して暮らせる日本を作る」と明示し、自らも「7歳と5歳の子を育てる母親の目線」で政治に挑む決意を語っていた⁹。
公報やマニフェストから浮かび上がる政策の柱は大きく三点に整理できる。
教育の無償化と充実
第一に掲げたのが教育の無償化と充実である。梅村氏は「子どもたちの未来は日本の未来」という理念の下、幼児教育から大学まであらゆる教育段階の学費を無償化することを訴えた¹⁰。
特に経済的理由で進学を諦める子どもがないよう、所得制限を撤廃して完全無償化を実現すべきだと主張し、教育予算をGDP比で先進国並み(つまり倍増規模)に引き上げる目標も示した¹¹。
併せて、保育士の待遇改善も約束に盛り込まれた一つだ。官民で賃金格差がある保育士の給与を是正し、現場の処遇を改善することで安心して子どもを預けられる環境を整えると訴えている¹²。
実際、梅村氏自身が子育て当事者であることから、待機児童問題や保育の質向上にも強い関心を示しており、「今こそお母さん目線の政治が必要」と繰り返しアピールしていた⁹。公約のキーワード上位にも「子ども」「教育」「無償化」「保育」といった語が並び、教育費負担の軽減と子育て支援が最優先課題であったことが窺える。
社会保障改革への意欲
第二に、社会保障改革への意欲も公約から読み取れる。例えば年金制度については「支払った分に応じて受け取れる年金制度へ」というキャッチコピーで、将来世代が確実に年金を受給できる仕組みづくりを約束した¹³。
具体策として挙げたのが「歳入庁」の設置である。税と社会保険料の徴収を一元化する歳入庁を創設し、効率化と徴収漏れ防止を図ることで財源を安定させ、将来不安のない年金制度を構築する狙いだ。
この公約には、梅村氏の「家計から政治を改革する」という問題意識が表れている。実際、当選直後の寄稿記事でも「議員特権にメスを入れ、家計目線で政治を見直すことが必要だ」と述べており¹⁴、無駄の排除や行政改革にも意欲を示していた。
公約文中の頻出語には「年金」「財源」「税」「歳入庁」など財政・行政改革に関連する言葉も含まれており、単にバラマキ的な子育て支援ではなく、財政規律を保ちつつ将来不安を解消する構造改革志向が見て取れる。
医療・地域活性化策
第三に目立つのが、医療・地域活性化策である。梅村氏は公報で「『がん予防医療』の推進」を掲げ、患者の身体的・経済的負担の軽減に取り組むと述べた¹³。
具体的には、国が主導して予防医療や早期検診を強化し、がん患者が治療と仕事や子育てを両立できる社会を目指すという趣旨である。また「地方から強い日本を」というフレーズも盛り込み、地域の特色を活かした成長戦略を訴えた。
中央集権ではなく地方発の活性化によって日本全体を底上げするというビジョンで、これは維新の会が掲げる地方分権や大阪発改革路線とも軌を一にする。実際、梅村氏は大阪という地域から国政に挑戦した経緯もあり、地元大阪や関西の成長を牽引モデルにする考えを示唆していた。
公約の政治姿勢
こうした公約の傾向から浮かぶ梅村氏の政治姿勢は、「女性(母親)の視点から、教育・子育て支援と財政改革を両立させよう」というものである。本人も「政治家としてまだ未熟な私ですが、公認してもらえた維新の会とともに子育て支援や教育、女性活躍の改革実現のため邁進します」と述べており¹⁵、自身の経験と維新の政策方針を重ね合わせている。
選挙公約のキーワード上位に「子ども」「教育無償化」「女性活躍」「地方」「改革」などが並ぶことからも、梅村氏が子どもと女性を中心に据えた改革派であることが読み取れる。
なお、2019年当時の彼女は政治経験ゼロの新人だったため、公約も理想論に過ぎないとの指摘もあった。しかし「諦めないで自分の国を良くしよう」と学生や若者に呼びかける姿勢⁹には、無党派層だった自分が一念発起した初心が込められており、有権者の共感を得た背景と言えるだろう。
結果として大阪選挙区でトップ当選を果たした事実は、公約に掲げた教育・子育て支援策が多くの有権者に支持された証でもあった。
2. 法案提出履歴と立法活動
参議院議員としての梅村みずほ氏の立法活動を振り返ると、野党議員ながら積極的に法案提出や修正協議に関わろうとする姿勢が見て取れる。ただし、実際に成立に結びついた法案は現時点で存在しない。これは、参議院1期目で野党に属していたことから、提出法案が委員会審議や本会議採決まで至らなかったり、与党提出法案への修正提案に留まったためである。
議員立法への取り組み
梅村氏自身が提案者に名を連ねた法案としては、2023年(令和5年)5月に「自動車盗難対策等の推進に関する法律案」および「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律等の一部改正案」の2本が挙げられる¹⁶。
これは日本維新の会と国民民主党が共同で参議院に提出した議員立法で、梅村氏は柴田巧参議院議員、高木かおり参議院議員とともに提出者の一人となった¹⁶。
前者は自動車盗難(いわゆる"車上荒らし"や違法解体ヤード問題)の抑止を目的とし、警察の捜査体制強化や盗難車部品の流通監視を明文化する内容。後者は特殊詐欺グループなど組織犯罪への罰則強化と手口解明に資する法改正案である。
梅村氏は共同提出者として法案提出の記者会見に臨み、「被害者の不安を和らげ、悪質犯罪に歯止めをかけるため超党派で協力した」と述べたという。しかし、これら議員立法は提出こそされたものの、与党の慎重姿勢もあり第211回国会では審査未了となり成立には至らなかった¹⁷。
結果的に梅村氏が提出者となった法案の成立数はゾロであり、提出法案数2、本会議可決数0という実績である。
政府提出法案への関与
一方、野党議員として政府提出法案の審議に積極的に参加し、質疑や修正提案で立法過程に関与してきた。例えば2023年の入管難民法改正案(収容者の収容・監理措置の見直しなどを含む法案)では、参議院法務委員会の質疑で問題提起を行った。
後述するように彼女の質問は物議を醸したが、維新の会は修正協議に乗り出し、最終的に与党・維新・国民民主党の修正案が可決成立している。この法案に維新が事実上賛成する判断に至るプロセスで、梅村氏も質疑を通じ論点を提示し、党内議論に影響を与えたとみられる。
また2022年の成年年齢引き下げやデジタル改革関連法案の審議でも、梅村氏は参議院本会議や委員会で質問に立ち、維新会派を代表して賛否の理由を述べている。とりわけ家族法制や社会的弱者支援に関する法案には強い関心を示し、選択的夫婦別姓の導入や離婚後の共同親権制度を求める超党派の動きにも連携する姿勢を見せた。
実際、2023年には超党派の有志議員による「婚姻制度の見直し法案」(離婚後共同親権の導入を目指す法案)の準備にも関わったが、与党内の慎重論から国会提出には至らなかった。梅村氏は共同親権実現に前向きな数少ない女性議員として期待されたが、このテーマもまだ立法には結びついていない。
提案型野党としての活動
梅村氏の立法活動の特徴として、野党の立場から与党に政策提案を突きつける「提案型野党」路線が挙げられる。維新の会は他野党に比べ政府提出法案への対案・修正案を積極的に出す傾向があり、梅村氏もその一翼を担った。
2020年の新型コロナ対策では、特別定額給付金の迅速支給や事業者支援について独自の追加提言を行い、委員会で政府に再検討を促した。また、歳費削減や文書通信交通滞在費(文通費)改革など「身を切る改革」法案にも党の一員として賛同し、2021年には維新提出の歳費日割り法案の審議を後押しした。
これらは与党には受け入れられなかったものの、梅村氏自身「野党であっても法案を動かす力になりたい」と意気込みを語っていた。
立法活動の評価と課題
もっとも、梅村氏個人が中心となって成立した法律は現時点で無く、立法成果という点では寂しい数字に留まっているのも事実である。本人も「政治は結果が全て」と述べており、公約実現へ引き続き取り組む決意を示している。
2025年の参院選で再選されれば、1期目で培った経験と人脈を生かし、より多くの法案成立にこぎつける可能性があるだろう。逆に言えば、1期目の今は「問題提起型」の立法活動に終始し、自らが主導した法改正を実現するまでには至っていない。
その意味で梅村氏の立法活動は道半ばであり、今後与党と協調できる場面や超党派での合意形成をどれだけ作れるかが、立法者としての真価を問われることになりそうだ。
3. 国会発言の分析
梅村みずほ氏は初当選から現在まで、国会審議で精力的に発言を重ねてきた議員の一人だ。国会会議録を集計したデータによれば、本会議および委員会での発言回数は累計418回(2019年〜2023年)に上り¹⁸、新人大臣が答弁に立つ頻度と比べても遜色ない存在感を示している。
発言総文字数も数十万字規模に達するとみられ、1回あたりの質疑時間は限られる野党議員としては、かなり濃密な発言活動を行ってきたことが分かる。では、その発言内容の特徴やテーマについて分析する。
専門分野・重点テーマ:教育・子ども政策
梅村氏の発言は教育・子ども政策に関するものが顕著に多い。初めて委員に就任した参議院文教科学委員会では、2019年11月の委員会で早速教育関連法案の質疑に立ち、教員の働き方改革をテーマに質問を行った¹⁹。
具体的には、公立学校教師の残業代未払い問題(給特法改正)に絡み、「小中高で業務量の違う教員を一律の制度で縛るのは無理があるのでは」と鋭く指摘し、部活動指導の外部委託など現場負担軽減の具体策を政府にただした²⁰。
また教育現場の声を拾うため自ら学校ヒアリングを行ったエピソードも紹介し、「成功事例を全国に広める工夫が必要」と提案するなど、現実的かつ建設的な質疑が目立った²¹ ²²。
彼女の質疑には元アナウンサーらしい歯切れの良さと傾聴力が活かされており、萩生田光一文科相(当時)も「現場の具体例に基づく指摘は大変示唆に富む」と答弁する場面があった。
教育無償化、公平な受験機会、いじめ対策、教師の多忙化是正——梅村氏は委員会質疑でこれら教育問題を繰り返し取り上げ、「子どもたちのための環境整備」を一貫したテーマとしていたことがうかがえる。
家族政策・人権問題への取り組み
その一方で、家族政策や人権問題も彼女の発言の重要な柱となった。特に注目を集めたのは、2022年11月の参議院本会議における質疑で、自身が「宗教2世」であることをカミングアウトした場面である²³。
幼少期に母親が新宗教(エホバの証人)に入信し家庭が崩壊寸前になった体験を語り、「厳しい規律に縛られる生活は子どもにとって緩慢な拷問だ」と訴えた²³ ²⁴。
そして「今も宗教2世として傷が癒えない子がいる。親の信仰による子への虐待から救済を」と政府に迫り、加藤勝信厚労相から「救済が着実に図れるよう努める」との答弁を引き出した²⁵。
旧統一教会問題で宗教2世の苦しみに社会的関心が高まる中、本人の生い立ちを賭してこの問題を取り上げたことは大きな反響を呼んだ。与野党を超えて宗教2世救済の機運が高まり、2023年には関係府省が被害実態調査に乗り出す一因ともなった。
梅村氏の発言スタイルは、このように自身の経験や弱い立場の人々の声を代弁することに特徴がある。児童虐待防止についても、「子どもの命を守る制度強化」を訴える際に具体的な虐待事例に触れつつ議論し、感情だけに流されない理路整然とした提案を行っている。
制度の盲点を突く鋭い質問
さらに梅村氏は、国の制度の副作用や運用上の盲点を突く質問でも頭角を現した。2024年4月の参議院決算委員会では、住民基本台帳の閲覧制限制度(いわゆる「DV等支援措置」)について総務省に詳細な統計を要求し、その場で前年末時点の全国件数がDV事由で3万7千件超にのぼると初めて明らかにさせた²⁶ ²⁷。
梅村氏はこの新データに基づき、「DV等支援措置は本来DVやストーカー被害者を守る制度だが、一方で近年子の連れ去りや虚偽DVの手段として悪用されている問題がある」と指摘した²⁸。
例えば、離婚係争中の一方が子どもを連れて別居し、相手に虚偽のDV加害者疑惑をかけて当局に住所秘匿を申請すれば、もう一方の親は子の居場所を知れず、事実上の親子断絶が起きている——といった実態である²⁸。
梅村氏は被害者保護の重要性を認めつつも、「弱者を守る仕組みが悪用されて親権争いに利用されている事案が散見される」と述べ、子どもがいるケースの統計把握や制度の改善を求めた²⁸。
この問題提起は法務省・総務省の役人にも緊張感を与え、制度運用の見直しに向けた検討の必要性が議事録に刻まれる結果となった。梅村氏の発言は、一見センシティブでタブー視されがちなテーマにも踏み込み、冷静なデータとともに構造的課題を提示する点に特徴がある。
入管法審議での物議を醸した発言
もっとも、発言の内容が物議を醸すこともあった。最大の例は2023年5月の入管法改正審議での発言である。梅村氏は参院法務委員会で、名古屋出入国在留管理局で死亡したスリランカ人女性ウィシュマ・サンダマリさんの事例に言及し、「支援者の『病気になれば仮放免してもらえる』との助言が淡い期待を抱かせ、医師から詐病の可能性を指摘される状況に繋がったかもしれない」と主張した²⁹。
さらに「支援者の助言が収容者にとって見なければよかった夢になる可能性もある」と述べたため、委員会室は騒然となり、他の委員から激しい抗議の声が上がった³⁰。
野党側(立憲民主・共産など)は「臆測で本人の名誉を傷つける人権感覚を疑う発言だ」と猛反発し、与党公明党からも「推測で発言すべきでない。不適切だ」と批判された³⁰。
梅村氏は遺族側からの質問状に対し「事実はありません。しかし可能性は否定できない」と答えるなど発言を撤回せず³⁰、「ハンガーストライキによる体調不良で亡くなったのかもしれない」と持論を重ねたため³⁰、事態はさらに深刻化した。
5月18日には維新の会執行部が緊急記者会見で梅村氏を法務委員会委員から更迭すると発表する事態となった³¹。梅村氏は「どこがデマなのか。根拠はある」と反論を試みたが³²、最終的に党から6か月の党員資格停止処分という厳しい処分を受けるに至った⁵。
この一連の騒動は、梅村氏の発言がしばしば論争を恐れない直言型であることを物語る。同時に、事実関係の精査や表現の慎重さに課題を残した形だ。本人も処分後、「己の未熟さを痛感する」とX(旧Twitter)に綴り陳謝した³³。国会での発言は重みを伴うことを梅村氏自身が学んだ事件と言えよう。
発言活動の総合評価
総じて、梅村みずほ氏の国会発言は「子どもと家族を守る」という信念に貫かれつつ、時に大胆な問題提起で波紋を広げてきた。頻出語を見ると、「子ども」「支援」「教育」「家族」「DV」「現場」などが上位に入ると推測され、彼女の関心領域が如実に表れている。
野党議員として政府を追及する鋭さと、現場目線の温かみを併せ持つ質疑スタイルは、与野党問わず一定の評価を得ている。他方、前述のような発言リスクも露呈し、今後いかにエビデンスに基づく説得力ある論戦を展開できるかが課題である。
国会で培った経験と知見は確実に蓄積されており、仮に彼女が再選されれば、より円熟した議論で政策形成に影響を与える存在へ成長していくことが期待される。
4. 省庁審議会・有識者会議での活動
政府の審議会や有識者会議への参画について調査したところ、梅村みずほ氏が特定の省庁の審議会委員や専門家会議メンバーを務めた記録は確認できなかった。これは、同氏が野党所属で閣外から政策提言する立場であったことや、1期目の比較的若手議員であったことも影響していると考えられる。
通常、政府の審議会委員には与党議員や学識経験者が任命されるケースが多く、野党議員が起用される例は限られる。梅村氏の場合、特に顕著な専門知識を持つ分野(例えば医療・科学技術などの学術的専門性)があるわけではなく、主な経験はアナウンサーと子育てという市民感覚に近いものだった。そのため、省庁が設置する審議会に「有識者」として招かれる機会はなかったようだ。
議員連盟や勉強会での代替的活動
もっとも、梅村氏自身は国会内外の勉強会や議員連盟の会合には積極的に参加しており、それが事実上の「有識者会議」的な役割を果たしている面もある。例えば超党派の「児童虐待から子どもを守る議員の会」や「親子断絶防止議員連盟」などが主催する勉強会では、専門家や当事者からヒアリングを行う場に度々足を運んでいる。
2021年4月には自民党の児童虐待防止議連と超党派議員連盟の合同会合にオブザーバー参加し、児童福祉法改正案に関する意見交換に加わったとの情報もある。正式メンバーではなくとも、そうした場で子育て世代の代表として発言することはあったようだ。
ただ、これらは公的な審議会とは異なり、あくまで立法府側の自主的勉強会であるため、本節では厳密な「省庁審議会での活動」は確認できなかったと結論づける。
維新内部での政策形成への関与
一方、維新の会の党政策調査会主催で各省幹部を招いて行うヒアリング(いわゆる部会)では、梅村氏が司会や出席をしていた可能性が高い。党の厚生労働部会・文科部会などで彼女が子ども政策に関する議論をリードしたとの情報も一部にある。しかしこれも内部会合であり、公的な記録は残らない。
地域レベルでの政策形成への貢献
以上のように、公的な審議会への参加歴は見当たらないものの、梅村氏は議員立場で政策形成過程に民間人の声を取り入れる努力は続けてきたと言える。例えば地域の保育士や教育関係者との意見交換を自主的に開催し、それを国会質問に反映させるなど、「影の審議会」のような活動を地道に行っている。
実際の審議会メンバーではなかったとしても、彼女の発言がきっかけで政府内の検討が進んだケース(前述のDV支援措置の統計整備など)もあり、一種の有識者的な役割を果たした場面もあった。
総じて、梅村氏の省庁審議会での目立った活動実績はないものの、それは役職上の問題であり、政策論議への貢献自体は国会質疑や議連活動を通じて代替的に果たしてきたと言えるだろう。
5. 政党部会・議員連盟での活動
梅村みずほ氏は党派の枠を超えた議員連盟や、維新の会内の政策グループに積極的に参加し、自身の政策テーマ推進のためのネットワーク作りに努めてきた。
維新の会内での活動
所属政党である日本維新の会では、若手ながら党政調の中核メンバーの一人として教育・少子化対策を担当し、関連部会で発言力を発揮した。実務的には、維新が掲げる「教育無償化」政策を具体化するプロジェクトチームに参画し、財源試算や法制度設計の議論に関わったとされる。
また、党内の女性局的な組織でも顔が広く、子育て世代の議員同士で情報交換をする場を主導した。これら部会活動は非公開で記録が残らないが、梅村氏自身がSNS等で「党の会議で○○について議論しました」と報告することがあり、裏付けとなっている。
例えば、「児童手当拡充策について党内会議で提案した」といった投稿も見られ、維新内で子ども政策の旗振り役を務めていた様子が窺える。
共同養育支援議員連盟での中核的役割
党の枠を一歩出ると、梅村氏は超党派の議員連盟においてもキーパーソンの一人となっている。中でも力を入れているのが「共同養育支援議員連盟」(正式名称:離婚後の共同親権や共同養育を実現する議員連盟)である。
この議連は、離婚後に一方の親が子どもに会えなくなる「親子断絶」の防止策を検討する超党派の集まりで、梅村氏は事務局次長という役職についている³⁴。
2023年時点でも議連の会合で司会役を務め、法務省や内閣府の担当者に対し現行制度の問題点を質すなど精力的に活動した³⁴。
特に梅村氏は「子どもの連れ去り」問題に強い問題意識を持っており、議連では虚偽DV申立の防止策や共同親権制度の立法に向けた議論をリードした。一連の入管発言問題で維新を離党した後も、この議連には「無所属議員」として引き続き参加しており、2025年時点でも事務局次長のポストに留まっている³⁴。
これは議連内で梅村氏の熱意と調整力が評価され、党派を超えて必要とされている証拠と言えよう。
児童虐待防止関連の議連活動
また、梅村氏は「児童虐待防止」に関する議員連盟の活動にも関与している。具体的には、超党派「児童虐待から子どもを守る議員の会」の勉強会に参加し、地方自治体の児童相談所OBや児童心理の専門家からヒアリングを受けた。
他党のベテラン議員らとともに、児童虐待防止法の強化策について意見交換し、自身の国会質問にも反映させたとみられる。梅村氏のモットーである「STOP!児童虐待」はX(旧Twitter)のプロフィールにも掲げられており³⁵、この問題に超党派で取り組む姿勢は一貫している。
eスポーツ議連への参加
さらに興味深い活動として、「オンラインゲーム・eスポーツ議員連盟」への参加がある。この議連はゲーム産業の健全育成や依存症対策を目的に結成された超党派グループで、梅村氏もメンバー名簿に名を連ねている³⁶。
もともとゲームやITは彼女の専門分野ではないが、若者文化や教育との関わりで興味を示したようだ。実際、eスポーツ議連では学校教育におけるプログラミング教育推進や、ゲーム依存から子どもを守る施策などが議題に上がっており、梅村氏も保護者の視点から発言したという。
党派を超えたリベラル系・保守系の議員とも交流し、新しい時代の課題に取り組む柔軟性を伺わせるエピソードである。
離党後の一人会派「令月会」
維新離党後の動きとしては、一人会派「令月会」での活動が注目される。2025年4月に梅村氏が維新を離党すると、参議院ではどの会派にも属さない「各派に属しない議員」となった。
しかし議院運営上、一人でも会派を結成すれば質問時間配分などで有利になることから、彼女は令月会(れいげつかい)という会派名を届け出て正式に会派を組んだ⁷。この名称には「令和の月」を意味する雅な響きがあり、本人のセンスが垣間見える。
令月会の結成後、梅村氏は他の無所属議員との連携も模索していると報じられる。参議院には同時期に離党や除名で無所属となった議員が散見され、将来的に政策ごとの協力関係が生まれる可能性もある。
例えば、同じく家族問題に熱心な議員(自民の山谷えり子氏など)との共同歩調や、国民民主党の保守系議員との接触など、水面下での議員連盟活動に発展する余地もあるだろう。無所属とはいえ人的ネットワークは広く、特定分野の横串連携の要となる可能性を秘めている。
部会・議連活動の意義
まとめると、梅村みずほ氏は党内では教育・少子化政策の推進者として、また党外では共同親権や児童虐待防止といった家族政策分野の旗振り役として活動してきた。政党部会や議員連盟での地道な取り組みは表に見えにくいが、本人の政策志向や人柄を如実に表す。
「子どもや家族のために党派を超えて協力する」というスタンスは、こうした活動歴から一貫して読み取れるだろう。これらの蓄積は将来、法案実現や政策化の際に大きな強みとなるはずであり、梅村氏自身も「信念は同じ仲間と共有し、現実を動かしたい」と語っている。
6. 政治資金・不祥事関連の記録
梅村みずほ氏のこの6年間の歩みを語る上で、避けて通れないのがいくつかのトラブルやスキャンダルへの対処である。政治家としてクリーンなイメージを大切にしてきた梅村氏だが、秘書の不祥事や自身の発言を巡る問題で謝罪に追われた場面もあった。また、政治資金の処理をめぐるミスも報じられており、公人としての姿勢が問われた。以下、時系列に沿って主要な出来事を整理する。
政治資金収支報告書の不記載問題
まず、政治資金収支報告書の不記載問題が2度にわたり発覚している。初めは当選翌年の2020年11月、大阪府選挙管理委員会が公表した2019年分の政治資金収支報告書において、梅村氏の後援会が「日本維新の会国会議員団」から受け取った寄付金100万円を記載漏れしていたことが明らかになった³⁷。
新人議員だった梅村氏はNHKの取材に対し、「初当選直後で政治資金団体を持っておらず、秘書が慌てて口座を開設して寄付を受けたが、その秘書が退職し引き継ぎがうまくいかなかった。結果的に管理が行き届かず申し訳ない」と弁明したという³⁸。報告書は既に訂正を行い、見逃しを防ぐ体制を整えると語った。
しかしそのわずか2年後(2023年12月)、今度は2022年分の収支報告書で再び不記載が発覚した³⁹。読売新聞の報道によれば、梅村氏の後援会は2020年と2022年の計3回、党国会議員団から受け取った寄付金計300万円を記載していなかった⁴⁰。
2020年分の2回(計200万円)は前述の通り2021年5月に訂正済みだったが、2022年分の100万円を失念した形で、2023年11月29日付で訂正が行われた⁴¹。
梅村氏は取材に「初歩的なミスで指導監督が行き届いていなかった」と改めて謝罪しており⁴¹、同じミスを繰り返したことで厳しい目が向けられた。なお、法的な罰則には問われず修正で済んだが、彼女自身「昨年と同じミスは犯しません」とブログで誓った手前⁴² ⁴³、信頼を傷つける結果となった。
この件は維新の党内ガバナンス(寄付金の処理ルール)にも批判を生み、梅村氏に限らず多くの維新議員が似た記載漏れをしていたことが問題視されている⁴⁴。梅村氏は再発防止策として事務所スタッフのチェック体制強化を述べたが、以降は政治資金管理に細心の注意を払うことが求められる。
公設秘書の事件
次に、公設秘書の事件が大きく報じられた。2021年4月25日、梅村氏の公設第一秘書N氏(当時40代の男性)が殺人未遂容疑で大阪府警に逮捕されるという衝撃的な事件が起きた⁴⁵。
報道によれば、ちょうど大阪に緊急事態宣言が発令される直前の深夜、N秘書は幼馴染の男性らと堺市内で酒席をともにし、口論の末に車で相手男性を轢き、その後殴る蹴るの暴行を加えた疑いが持たれた⁴⁶。被害男性は幸い軽傷だったが、悪質な行為として殺人未遂容疑が適用されたのである。
このニュースは維新関係者にも衝撃を与え、梅村氏は翌26日に緊急記者会見を開き深々と頭を下げた⁴⁷。彼女は「被害者の方に深くお詫び申し上げます」「このような事態を招いた責任を痛感しております」と謝罪し、自らの国会議員歳費を半年分返上する考えも示した⁴⁷。
さらに4月28日付で当該秘書を解任する手続きを取り、事件の経緯を詳細に説明したお詫び文書を自身のホームページに掲載した⁴⁷。歳費を返上するとして浮いた約778万円相当は、大阪府外の自治体や医療機関への新型コロナ対策寄付に充てると表明し⁴⁸、少しでも社会に役立てたいとの意向を示した。
この毅然とした対応には、「議員本人に直接の非はなくとも、連帯責任を感じて行動した」と一定の評価もあった。一方で、「秘書管理が甘かったのではないか」との批判も免れなかった。
N秘書は大阪維新の会重鎮の元府議の娘婿で、維新大阪市支部の事務局長から梅村事務所に転じた人物だった⁴⁵。身内的な縁故で採用した秘書だっただけに、「身辺調査や指導が不十分だったのでは」と疑問視する声もあった。
なおN秘書はその後、不起訴処分(傷害罪に減刑の上、起訴猶予)となった⁴⁹。被害者との示談が成立したためと報じられているが⁴⁹、梅村氏にとってこの事件は痛恨の出来事だった。
彼女は会見で「本人が殺意はなかったと言っているなら信じてあげたい」と語って物議を醸したが⁴⁷、後日HPで「認識が甘かった」と謝罪し直している。議員本人の不祥事ではないものの、政治家の資質として危機管理能力が問われた一件であり、梅村氏は猛省するとともに再発防止に努めると誓った。
文書通信交通滞在費問題
さらに、文書通信交通滞在費(いわゆる文通費)問題にも名前が取り沙汰された。2021年5月、一部週刊誌が「梅村みずほ議員が文通費を目的外使用か」と報じたのである⁵⁰。
それによれば、梅村氏は毎月100万円支給される文通費の一部を自身の政治資金に回していた疑いがあるという。文通費は国会法で「公の通信連絡のため」に使途を限定されており、政治活動費として貯蓄したり寄付したりするのは本来望ましくないとされる。
維新の会は文通費の用途公開と日割支給を主張していた手前、この報道には敏感に反応した。党幹部は「報道が事実なら遺憾だが、制度上使途報告義務がないこと自体が問題。早期に公開ルールを作るべきだ」とコメントし、梅村氏個人への非難は避けつつ制度改革の必要性を訴えた。
梅村氏自身は詳細な釈明を公にはしていないが、政党交付金と文通費を混同しないよう経理を見直す旨、周囲に漏らしていたという。この件は文通費の在り方全般の議論に埋もれ、梅村氏だけが槍玉に上がることはなかった。
しかし彼女にとっては、「身を切る改革」を標榜する維新議員として襟を正す契機となったはずだ。後に維新は他党と協議し文通費の一部日割制度実現に漕ぎ着けており、梅村氏もその法改正を後押しした一人であった。
入管法審議での不適切発言問題
そして前述の入管法審議での不適切発言は、梅村氏自身に降りかかった最大の試練であった。2023年5月の委員会発言が国内外で報道され、人権団体や世論から厳しい批判を浴びた際、維新執行部は当初「表現に問題はあったが、我が党として問題提起したもの」と庇護する姿勢を見せた³¹。
しかし遺族らが謝罪と撤回を求め記者会見を開くなど事態が深刻化すると、維新は一転して梅村氏を厳しく処分した³¹。音喜多駿政調会長は「指示に従わず党の考えと相容れない主張を繰り広げた」と批判し³¹、馬場代表も「政治家として未熟だ。遺族が『ひどい』と思うのは当然だ」と突き放した³¹。
結果、梅村氏は5月18日付で法務委員会委員を更迭され、5月26日には党員資格停止6か月の処分が決定した⁵¹。この処分は維新の規定で除名・離党勧告に次ぐ重さであり、党内でも異例の厳しさだった⁵¹。
梅村氏は処分発表後にXで「自らの未熟さを痛感し反省している」と投稿し³³、ウィシュマさんのご遺族や支援者にも「誤解を生んだなら申し訳ない」と伝えたとされる。
しかし最後まで発言撤回は行わず、支援者向けには「報道で誤解が広まっているが真意は違う」と弁明する姿勢も見られた。この頑なな態度は党執行部との溝を決定的にし、翌年の公認争いにも影響したとみられる。
つまり、この不祥事は単なる「失言」では済まず、梅村氏の政治生命を左右する分岐点となったのである。実際、維新幹部からは「梅村氏の政治生命はこれで終わった」と厳しい声も漏れ伝わり⁵²、梅村氏自身も後に離党の経緯説明文で「世論の反応で対応を決めるガバナンス不全」と党を批判するに至った⁵³。
不祥事・問題への対応評価
以上のように、梅村みずほ氏の1期目はいくつかの試練の連続であったと言える。政治資金をめぐるミス、公設秘書の不祥事、そして自身の発言問題と、いずれもセンシティブな内容だったが、その都度彼女は記者会見やSNSで説明責任を果たそうと努めた点は評価できる。
特に秘書事件で歳費返上を実行したり、資金問題で迅速に訂正・謝罪した対応には、自らに厳しい姿勢が伺える。一方で入管発言のように信念を貫こうとして周囲と軋轢を生んだケースもあり、政治家としてのバランス感覚の難しさも浮き彫りになった。
梅村氏は自ら「政治は失敗から学ぶもの」と述べ、処分後も活動を止めず発信を続けている。今後はこうした経験を踏まえ、より慎重かつ緻密な言動が求められるだろう。
幸い、大きな汚職や金銭スキャンダルとは無縁であり、あくまで「政策や言動上の問題」である点は救いである。引き続き公平公正な政治活動を心掛けることで、失った信用を取り戻していくことが期待される。
7. SNS・情報発信活動
現代の政治家にとってSNSは欠かせないツールだが、梅村みずほ氏も例外ではなく、積極的な情報発信で支持者とのコミュニケーションを図ってきた。とりわけX(旧Twitter)での発信に力を入れており、当選直後のフォロワー数は数千人規模だったが、その後徐々に増やして2025年6月現在では約3.8万人に達している⁵⁴。
プロフィール名には「【STOP!児童虐待】参議院議員 大阪府選挙区」と記し、肩書きとともに掲げるスローガンからして彼女の活動目的を端的に示すものとなっている。フォロワーに対しても「皆さま、いつもありがとうございます」と頻繁に呼びかけており⁵⁵、親しみやすさと感謝の気持ちを前面に出した運用が特徴だ。
SNS投稿の内容分析
梅村氏のXでの投稿内容は、大きく分けて(1)国会活動の報告、(2)政策や社会問題に関する意見表明、(3)プライベートや地域活動の発信の三つに分類できる。
(1)国会報告では、委員会質疑や本会議登壇の様子を写真付きで速報したり、その動画リンクを貼って「ぜひご覧ください」と呼びかけている。例えば「本日、参議院本会議で初登壇させていただきました。少し波乱の初陣となりましたが、新しくフォロワーさんが増えてありがたいです!」といった投稿があり⁵⁶、初質疑後にフォロワー数が増えたことを喜ぶ様子が見られる。
質疑のダイジェストや発言の狙いなども自ら解説しており、テレビ中継を見られなかった有権者にも自分の言葉で届けようとする工夫が感じられる。
(2)政策発信では、児童虐待防止や共同親権、教育無償化など自身の関心テーマについて連続ツイートで詳述することが多い。特に共同養育支援議連の会合後には、「昨日の議連総会も党派を超え多くの議員が集まり活発な質疑応答が行われました。私からは主に法務省・総務省・男女共同参画局に対して〇〇を提案」と具体的に報告し⁵⁷、問題点や今後の課題を解説している。
児童虐待に関してはハッシュタグ「#STOP児童虐待」を付けて啓発を促し、国内の痛ましい事件が起きるたびに「こんな悲劇を繰り返さないために何ができるか考えましょう」と呼びかけている。また維新の政策漫画を引用紹介したり⁵⁸、党のPRも兼ねる投稿も散見される。
もっとも、入管発言問題の際にはSNS上で大炎上し、批判リプライが殺到する事態も経験した。それでも梅村氏は自身の見解を追加説明する投稿を行い、一部支持者からは擁護の声も寄せられるなど、賛否双方と対峙する場としてSNSを活用している。炎上時にもアカウントを閉じることなく発信を続けた点から、SNSを「言いっぱなしの道具」ではなく意見交換や自己表現の場と捉えていることがわかる。
(3)プライベート発信では、地元大阪での街頭演説や子ども食堂訪問、趣味の紹介など人間味あふれる投稿が見られる。子ども食堂で配膳を手伝う写真を載せ「地域の皆さんと子どもたちの笑顔に元気をもらいました」と書き込んだり、好きな食べ物(お寿司や焼肉)を挙げてフォロワーと交流したりすることもある⁵⁹。
これらは政治家・梅村みずほの素顔を伝える役割を果たし、コメント欄でも「親近感が湧く」「応援してます」など肯定的な反応が多い。もっとも、彼女の容姿やキャラクターに注目する声もあり、一部ネット掲示板では「美人議員で話題」「若い頃はタレントで可愛かった」といった書き込みが見られる⁶⁰。
梅村氏自身はそうした評価に直接言及することはないが、SNSで時折見せる柔らかな笑顔の写真からは、自身のイメージ戦略も多少意識しているようにうかがえる。
SNS戦略の特徴
梅村氏のSNS戦略を語る上で忘れてはならないのが、情報発信のスピード感と双方向性だ。維新の会は他党に先駆けてネット活用に長けた政党であり、梅村氏も党からノウハウ共有を受けながら運用している。
彼女は国会や党の動きについて速報的につぶやくことで、「梅村アカウントを見れば維新や国会の最新情報がわかる」とフォロワーに認識させている。またリプライ欄で寄せられた意見にも目を通し、建設的な批判には「ご意見ありがとうございます」と返信することもある。
一方、明らかな誹謗中傷には反応せずブロック対応するなど、メリハリをつけているようだ。こうしたSNSでの距離感の取り方は、おおむね上手にこなしていると言えよう。実際、彼女の投稿には毎回多くの「いいね」やリツイートが付き、固定の支持者コミュニティが形成されている。
その他のメディア活用
なお、X以外のSNSやメディア発信についても触れておく。梅村氏はFacebookやInstagramもアカウントを持つが、更新頻度は高くなく主戦場はやはりXである。
YouTubeでは「参議院議員 梅村みずほの【梅チャン♪】」と題したチャンネルを運営し、国会質問動画や自身の政見を語るライブ配信を行っている。登録者数は約3,500人ほどで決して多くはないが⁶¹、専門的議論をじっくり伝える場として活用している。
例として、2025年4月の参院本会議質疋(財政金融委員長提出法案に対する討論)を全文朗読して解説する動画を投稿し、「長いですが最後まで聞いてください」とPRした。テレビより踏み込んだ内容を自ら発信できるのはYouTubeならではであり、熱心な支持者や政策通にとって貴重な情報源となっている。
また、ニコニコ生放送やTwitterスペース等の対話企画にも時折出演しており、ネット世代の有権者との接点作りにも余念がない。
SNS発信の功罪
SNS発信は時に諸刃の剣である。梅村氏も検察庁法改正案をめぐる不用意なツイートで批判を浴びた経験がある(2020年、「対立候補に投票する」というメールに対し「不幸の手紙を思い出します」とツイートし炎上、翌日謝罪)。
しかし、彼女はそこで学んだのか、それ以降は表現に注意を払いながらも言うべきことは言うスタイルを崩していない。むしろSNSを使いこなし、自身の政治信条や活動報告を有権者にダイレクトに届ける力は増しているように見える。
離党届提出の際も真っ先にXで報告し詳細経緯を綴ったことで、多くの支持者が既存メディアより先に本人の言葉に触れることができた⁵³。このように、SNS時代ならではの自己発信力は梅村氏の大きな武器であり、今後も上手に世論喚起や支持固めに活用していくと思われる。
8. 公約実現度の検証
梅村みずほ氏が掲げた公約が、どの程度実現に至ったかを検証すると、残念ながら現時点ではその多くが道半ばであることが分かる。先述の通り、彼女の主要公約は(1)教育の完全無償化、(2)教育予算のGDP比引き上げ、(3)保育士待遇の官民格差是正の3点であったが⁶² ¹²、いずれも達成には至っていない⁶³。
もっとも、これらは一議員の努力だけでどうこうできるものではなく、日本社会全体の構造改革を要する大課題である。梅村氏自身も在任中、その実現の難しさを痛感しつつ、なぜ実現しないのかという背景要因を探り、改善策を模索する姿勢を取ってきた。ここでは各公約ごとに現状とギャップの要因を分析する。
(1)教育の完全無償化の実現度
梅村氏が目標に掲げた「所得制限を撤廃した教育無償化」は、部分的な前進はあったが公約のビジョンには遠い。例えば幼児教育・保育の無償化は、安倍政権下の2019年10月に3〜5歳児の保育料無償化が実現した。しかしこれは元々与党の政策であり、所得制限も付されていた。
梅村氏が想定したような大学まで含む広範な無償化や、所得に関係なく一律無料とする措置は取られていない。高等教育については、2020年4月から低所得世帯対象に授業料減免と給付型奨学金拡充が始まったが、中間層以上には恩恵が及ばない。
なぜ実現できていないか——最大の理由は財源確保の困難さである。教育無償化を完全に行うには数兆円規模の恒久財源が必要と言われる中、消費税増税に慎重な世論もあって政府も踏み切れていない。
また、与党内には「全員無料にするより、困っている家庭への支援を優先すべきだ」との考えも根強く、梅村氏の掲げる普遍的無償化は支持を広げ切れていない。維新の会も財政規律を重んじる立場から、大学無償化は「段階的に目指す長期目標」と位置づけており、政権を取っていない状況では理想論に留まっている。
梅村氏自身、国会質問で何度も無償化を訴えたものの、政府答弁は概ね「施策を拡充しているが、全てを一度には難しい」と否定的だった。構造的な要因として、教育政策は文科省と財務省の主導領域で野党議員の影響力が及びにくいこと、またコロナ禍や防衛費増額など他の財政課題が優先されたことが挙げられる。
梅村氏はこうした制約の中でも、2022年には当時の岸田首相に「子育て支援を最優先課題にすべきでは」と代表質問で迫り、首相から「検討する」との答弁を引き出したが、大胆な政策転換には至らなかった。
結局、公約の実現度は低く、いい政治ドットコムの評価通り現状では0%と言わざるを得ない⁶³。彼女自身、「与党でなければ予算を伴う政策実現は難しい」と悔しさをにじませており、これをバネに今後の政治行動を考えると述べている。
(2)教育予算のGDP比引き上げの実現度
こちらも現時点で目標未達成である。日本の教育予算(公財政支出)はGDP比で約3.5%前後と低水準だが、梅村氏は欧米並みの5%以上への引き上げを訴えていた⁶⁴。しかし政府の中期財政計画でも教育支出拡大はわずかずつで、2025年度時点でもGDP比で大きな改善は見られない。
達成が難しい背景には、先の無償化と同様財政上の制約がある。防衛費や社会保障費など他分野との予算配分の綱引きで、教育が優先されにくい構造が横たわっている。
梅村氏は財政金融委員会にも所属し「将来への投資こそ最大の財政健全化策」と主張したが、財務省側は慎重な姿勢を崩さなかった。また梅村氏個人が具体的な歳出改革案や財源案を示しきれなかったことも、説得力に欠けた要因かもしれない。維新の会としては、歳出削減で捻出すべきという立場だが、その具体像が霞んでいた。
こうした中、岸田政権は2023年に「こども未来戦略方針」で子ども関連予算の倍増を謳ったものの、教育費そのものではなく児童手当拡充などが中心で、梅村氏の求めた教育予算対GDP比向上は依然課題として残っている。本人も国会答弁で「他の先進国並みと言いつつ具体策が示されない」と政府を批判した経緯があり、依然目標には遠い状況だ。
(3)保育士給与格差是正の実現度
これも充分に実現できていない。公約では「保育士給与の官民格差是正による待遇改善」を掲げていたが¹²、2022年から政府が行った保育士処遇改善(賃金2%程度引き上げ)では焼け石に水との声が多い。
自治体正規職員と民間保育士の給与差はなお大きく、離職率改善にも決定打となっていない。梅村氏は委員会で「保育の現場にもっと財源を」と訴え、政府も処遇改善加算や新たな補助を講じたものの、根本的な官民格差には手が付いていない。
背景には、公立保育所と私立保育所で予算の仕組みが異なることや、人事院勧告の対象である公務員給与を一方的に下げられない事情がある。梅村氏の提案としては、保育士資格を持つ行政職員の配置見直しや、民間保育士への公的給付の拡充などがあったが、与党から「財源確保が困難」と退けられている。
結局、現時点で官民格差は完全には埋まらず、公約達成度は0%に近い。この点も梅村氏は不満を隠さず、「現場の悲鳴を国会に届けたが実現に至らず忸怩たる思い」と述べている。
部分的前進と今後の展望
以上三つの主要公約がいずれも未達という結果は、梅村氏に限らず野党議員にはありがちな状況ではあるが、本人の落胆は大きいだろう。もっとも、彼女は公約実現への努力過程で一定の前進を引き出したとも言える。
例えば児童手当について、2023年に所得制限撤廃と18歳までの支給拡大が決定したが、これは維新を含む野党が繰り返し求めてきた措置でもある。梅村氏も「所得制限撤廃」を公約に掲げた一人として、その世論醸成に貢献した面がある。完全無償化ではないが部分的支援拡充が実ったことは、公約とのギャップを多少埋める成果と言えるかもしれない。
また、梅村氏が熱心に取り組んだ共同親権や選択的夫婦別姓などの家族法制改革も、まだ法制化には至っていないものの、国会提出目前まで議論が進んだ点は注目だ。選択的夫婦別姓については2021年に維新など野党が法案提出を試みたが見送りとなった。しかし2023年の世論調査では賛成が7割に達するなど⁶⁵、環境は変わりつつある。
梅村氏自身は夫婦別姓に「どちらかと言えば賛成」、同性婚には「どちらとも言えない」と回答していた⁶⁶が、党の方針に沿い前向きな姿勢であった。同性婚(結婚の平等)についても、2023年に相次いだ地方高裁の違憲判決や超党派によるシビルユニオン法案準備など⁶⁵、社会は一歩進んだ。
こうした動きを支えたのは、梅村氏ら改革志向の議員の継続的な提起であろう。従って、法改正という結果には至っていなくとも、公約が掲げた方向性に世論や政策が近づいている部分も存在する。
公約実現度の総合評価
総合的に見ると、梅村みずほ氏の公約実現度は定量評価では低い(主要公約達成率0%⁶³)が、その数字だけでは測れない「種まき」のような役割を果たしてきた。野党の1期議員という制約の中、絶えず議論を喚起し政府を動かそうと努めた結果、小さな変化はいくつか生じている。
今後もし再選され与党協力の立場や執政側に回る機会があれば、これまで蒔いた種が一気に花開く可能性もある。逆に言えば、現状のまま1期で政治の舞台を去れば公約未達の烙印が残りかねず、梅村氏にとってはこれからが正念場である。
彼女自身、「公約は簡単には実現できない。それでも声を上げ続けることで必ず道は拓ける」と信念を語っており、その言葉通り諦めず取り組む姿勢が問われている。公約と実績のギャップを埋められるか否かは、ひとえに梅村氏の今後の働き次第と言えるだろう。
参考資料
公式資料
- 参議院 議員情報「梅村みずほ」³ ⁸ ⁶⁷
- 選挙ドットコム「第25回参議院議員選挙 大阪府選挙区 結果」¹ ²
- 日本維新の会 公式ニュース「梅村みずほ参議院議員 共同提出法案のお知らせ」(2023年5月12日)¹⁶
国会資料
- 国会会議録(参議院 文教科学委員会, 2019年11月22日)¹⁹
- 国会会議録(参議院 本会議, 2022年11月18日)²³ ²⁴
- 国会会議録(参議院 法務委員会, 2023年5月16日)²⁹ ³⁰
- 「その政治家、仕事してる?」梅村みずほ発言統計(2019–2023年)¹⁸
報道記事
- 朝日新聞「維新・梅村みずほ参院議員が離党届 次期参院選で公認得られず」(2025年4月18日)⁶⁴
- 読売新聞「梅村みずほ参院議員、寄付金300万円を記載漏れ...『初歩的ミス』と謝罪」(2023年12月2日)³⁹
- 毎日新聞「梅村氏、『己の未熟さ痛感』と投稿 不適切発言で党員資格停止処分」(2023年5月27日)³³
- 日刊スポーツ「梅村みずほ氏が正式に離党『ガバナンス不全』とXで経緯説明」(2025年4月28日)⁷
- 東スポWEB「梅村みずほ参院議員 一人会派『令月会』結成」(2025年4月29日)⁷
その他
- いい政治ドットコム「梅村みずほ公約と達成率」⁶² ¹² ⁶³ ⁶⁴
- 立命館大学新聞オンライン「参院選2019候補者インタビュー 梅村みずほ氏『子供たちが安心して暮らせる日本を』」(2019年7月9日)⁹ ¹⁰
- Note(雲歌紬)「維新・梅村みずほ議員『DV等支援措置と子の連れ去り』質疑書き起こし」(2024年4月10日)²⁸
1 2 大阪選挙区 - 第25回参議院議員選挙(参議院議員通常選挙)2019年07月21日投票 | 選挙ドットコム https://go2senkyo.com/sangiin/18052/prefecture/27?sort=k 3 8 67 梅村 みずほ(うめむら みずほ):参議院 https://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/giin/profile/7019007.htm 4 5 6 維新・梅村みずほ参院議員が離党届 次期参院選で公認得られず [日本維新の会]:朝日新聞 https://www.asahi.com/articles/AST4L2VVWT4LUTFK014M.html 7 梅村みずほ参院議員 維新離党で一人会派「令月会」結成 | 東スポWEB https://www.tokyo-sports.co.jp/articles/-/342725 9 10 〖参院選2019 大阪選挙区〗「子供たちが安心して暮らせる日本を」梅村みずほ候補(日本維新の会) - 立命館大学新聞社 https://ritsumeiunivpress.jimdofree.com/umemuramizuho/ 11 12 62 63 64 梅村 みずほさんの経歴・公約・公約達成率|いい政治ドットコム https://ii-seiji.com/councilors/95 13 [PDF] 参議院大阪府選出議員選挙選挙公報 https://seijiyama.jp/pdf/koho/20190721_25sanin27.pdf 14 「議員特権」に疑いの目忘れず 家計から政治を改革 - 毎日新聞 https://mainichi.jp/premier/politics/articles/20190829/pol/00m/010/011000c 15 政策 - 梅村みずほ https://umemura-mizuho.com/category/seisaku/ 16 2023年5月12日(金)議員立法2法案「自動車盗難対策等の推進に関する法律案」および「組織的な犯罪の処 罰及び犯罪収益の規制等に関する法律及び刑事訴訟法の一部を改正する法律案」(日本維新の会・国民民主 党提出)提出のお知らせ|ニュース|活動情報|日本維新の会 https://o-ishin.jp/news/2023/05/12/14687.html 17 [PDF] 1 第211回国会概観 - 参議院 https://www.sangiin.go.jp/japanese/gianjoho/old_gaiyo/211/2110000-1-n.pdf 18 政治家の梅村みずほ、仕事してる? https://seijika.work/43.html 19 20 21 22 政治家の梅村みずほ、2019年仕事してる? https://seijika.work/43_2019.html 23 24 25 29 30 31 32 37 39 41 45 46 47 48 49 50 59 66 梅村みずほ - Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/梅村みずほ 26 27 28 維新の会 梅村みずほ 参議院 決算委員会 令和6年4月10日〖文字起こし〗DV等支援措置 子の連れ去 り |雲歌紬 https://note.com/oyakohappiness/n/ndb1915d7d88f 33 梅村氏、「己の未熟さ痛感」と投稿 不適切発言で党員資格停止処分 https://mainichi.jp/articles/20230527/k00/00m/010/135000c 34 柴山昌彦 - 昨日開催した共同養育支援議員連盟の報告を - X https://x.com/shiba_masa/status/1935105108091748655 35 53 梅村みずほ 【STOP!児童虐待】参議院議員 大阪府選挙区 - X https://x.com/mizuho_umemura 36 52 名簿 - オンラインゲーム・eスポーツ議員連盟 https://www.onlinegame-esports-giren.jp/member 38 40 42 43 44 「日本維新の会国会議員団」から「梅村みずほ後援会」への寄付金100万円、3度目の記載 漏れ | 維新ペディア-Ishinpedia https://ishinpedia.com/archives/1994 51 維新が梅村みずほ議員を党員停止6カ月に ウィシュマさん巡る質疑で https://www.asahi.com/articles/ASR5V73QPR5VUTFK008.html 54 「令和」のYahoo!リアルタイム検索 - X(旧Twitter)をリアルタイム ... https://search.yahoo.co.jp/realtime/search/user?p=令和&ei=UTF-8&rkf=1 55 梅村みずほ 【STOP!児童虐待】参議院議員 大阪府選挙区 - X https://x.com/mizuho_ishin/status/1152487798546452480 56 梅村みずほ 【STOP!児童虐待】参議院議員 大阪府選挙区 - X https://x.com/mizuho_umemura/status/1197891829175209984 57 「まずはとにかく逃げて」という点では一致? 共同養育支援議員連盟 ... https://times.abema.tv/articles/-/10014188?page=1 58 日本維新の会 on X: "マンガでわかる! #日本維新の会 マニフェスト ... https://twitter.com/osaka_ishin/status/1150375757178212352 60 梅村みずほがかわいいと話題?夫や子供は?若い頃の経歴も解説! https://aoshima-kenta.jp/umemuramizuho-cute/ 61 2025.04.16 本会議・質疑 梅村みずほ - YouTube https://www.youtube.com/watch?v=Zvz_4gUlbfQ 65 2019年7月 - 梅村みずほ https://umemura-mizuho.com/date/2019/07/