やながせ ひろふみ
柳ヶ瀬裕文議員の政治活動総覧(2015–2025)
概要
柳ヶ瀬裕文(やながせ ひろふみ)は、日本維新の会所属の参議院議員(比例区選出、当選1回)で、1974年東京都大田区生まれの50歳1。
海城高校、早稲田大学を卒業後、JR東日本企画で広告マンとして勤め、アニメ「ポケットモンスター」のビジネス立ち上げにも関わった経歴を持つ2。その後2004年から民主党の蓮舫参議院議員の公設秘書を務め、政治の現場を学んだ3。
2007年、大田区議選に民主党公認で立候補してトップ当選し3、身近な行政改革や子育て支援策に取り組み始める。2009年には都議会議員選挙に初当選し、以降3期10年務める中で、新型インフルエンザ対策や児童虐待防止、築地市場問題、震災後の放射能対策など幅広い課題に挑戦した4。
2012年には大阪維新の会の流れを汲み「東京維新の会」を自ら立ち上げ、都議会で既得権打破や脱原発、行財政改革を掲げて活動5。2017年都議選では小池旋風で他党が席巻する中、維新勢ではただ一人議席を守る健闘を見せ、都政で存在感を示した6。
そうした経験を引提げ、2019年の参院選に維新から比例区で出馬して初当選し7、国政に舞台を移した。国会議員団では若手ながら頭角を現し、2019年には党青年局長、2021年には総務会長に就任して党運営の中枢に参画7。現在は参議院外交防衛委員会理事などを務めつつ8、維新の政策発信の顔としても活躍している。
在職期間中(2015–2025年)に焦点を当て、本レポートでは柳ヶ瀬氏の政治信条と実績を多角的に検証する。有権者が同氏の歩みを立体的に理解し評価できるよう、選挙公約から立法活動、国会発言、党内での役割、情報発信に至るまで事実に基づき詳述することを目的とする。
1. 選挙公報・マニフェスト分析
基本姿勢と政策の柱
柳ヶ瀬氏の最新の選挙公約をひも解くと、そのスローガンは「次世代へ!」である。「次の世代に、この素晴らしい国をつなぎたい」というフレーズに象徴されるように、未来世代への責任を強調する姿勢が一貫している9。
具体的な政策の柱としてまず掲げているのが「既得権益の打破」と「政治改革」だ。柳ヶ瀬氏は「僕たちは企業団体献金を受け取りません。しがらみのない維新にしかできない政治がある」と訴え、企業・団体からの献金禁止を明言している10。
自らに甘い政治への批判を込めて「議員の身を切る改革」、すなわち議員報酬や定数の3割カットなどを断行し、徹底した行財政改革で財源を生み出すと約束した11。そしてその生み出した財源は「教育無償化」をはじめ将来世代のために投入するとも明記されている12。
政策の具体的内容
実際、公約のキーワード上位には「改革」「無償化」「教育」「規制緩和」「行財政」などが並び、柳ヶ瀬氏が行政改革と教育支援を二本柱に据えていることが浮かび上がる。例えば大胆な規制緩和による民間主導の経済成長を掲げ、政府の介入を減らしてシェアリングエコノミーやIoTなど新産業を伸ばすと訴える13。
一方で社会政策では「多様性あふれる社会の実現」を目指し、LGBT支援や選択的夫婦別姓の導入、ひとり親家庭や里親支援にも積極的に取り組むと約束している14。伝統的な保守政党が消極的な選択的夫婦別姓や同性パートナーシップにも前向きな姿勢を示し、リベラルな側面も併せ持つのが柳ヶ瀬氏の公約の特徴だ。
税制・財政政策への取り組み
さらに注目すべきは税制・財政政策へのコミットである。柳ヶ瀬氏は「消費税の増税は凍結」と明言し、消費税率10%への引き上げに反対する立場を明確にしていた15。軽減税率についても「手続きを煩雑化し特定産業への利益誘導になる」として完全撤廃を主張しており15、既存政策の問題点を鋭く突く。
年金制度については「現役世代が損しない積立方式への抜本改革」を掲げ、情報公開の徹底による国民の信頼回復を前提に、年金含む社会保障の世代間不公平を是正すると約束した16。
憲法改正への言及
そして公約の仕上げとして憲法改正にも言及し、「教育無償化」「統治機構改革」「憲法裁判所の設置」の3点を盛り込むべきだと提案している17。
以上のように柳ヶ瀬氏のマニフェストは、徹底した無駄削減と行政改革で財源を捻出し、それを教育や子育てに投資するという明確なストーリーを描いている。頻出語の上位には「改革」「教育」「無償」「規制」「消費税」「社会保障」「多様性」「憲法」などが並び、そのことから小さな政府志向と将来世代への投資を重視する政治姿勢が読み取れる。本人いわく「1円たりとも税金を無駄遣いさせない!」が信条で18、まさにそのモットー通りの公約を掲げていると言えるだろう。
2. 法案提出履歴と立法活動
議員立法への積極的取り組み
国会議員となった柳ヶ瀬氏は、立法府の一員として積極的に政策提案型の活動を行ってきた。与党の立場ではないため主導的に法律を成立させるのは容易ではないが、それでも議員立法によって自らの主張を形にすべく奮闘している。これまでに柳ヶ瀬氏が提出者となった法案は確認できるだけで2本ある。
電波行政改革法案
一つ目は2021年(令和3年)6月、参議院に提出した「無線局の免許に係る競争の導入その他の情報通信行政の改革の推進に関する法律案」だ19。名称は長いが、要するに電波行政に電力入札(周波数オークション)を導入し、総務省の許認可権限が強い情報通信分野に競争原理と透明性を持ち込もうという改革法案である20。
総務委員会に属する柳ヶ瀬氏ならではのテーマで、電波の有効利用促進や通信・放送行政の体制見直しを盛り込んだ大胆な内容だった20。この法案は維新会派の浅田均議員との共同発議という形で提出され21、維新の掲げる規制改革路線を具現化する試みだった。
しかし当時の菅義偉政権下でも政府・与党の支持は得られず、委員会付託もされないまま審議未了で廃案となった(本院先議のまま継続審議とならず)22。結果的に成立には至らなかったものの、「電波オークション」というテーマを国会に提起した意義は大きく、総務省行政の既得権にメスを入れる姿勢を示した点で注目された。
規制削減法案
二つ目は2022年12月に提出した「規制の新設等に際し規制の総量の削減の実施を確保する制度の導入に関する法律案」である23。こちらも浅田氏との共同提出で、いわゆる「ワンイン・ツーアウト」方式の導入を目指す法案だ24。
新たな規制を設ける際には古い規制を2つ廃止し、行政全体の規制総量を削減することを政府に義務付けようという内容で、柳ヶ瀬氏は規制緩和による経済活性化の観点からこの制度化を訴えた25。欧米で採用例のある発想とはいえ、日本の官僚機構にとっては革命的な提案であり、これも参議院事務総長に提出はされたものの委員会で審議される機会を得られなかった26。結局、提出国会(第210回臨時会)で廃案となっている27。
質問主意書による政策提言
このように提出法案2本はいずれも成立には至っていないが、裏を返せば柳ヶ瀬氏が公約で掲げた「規制緩和」「行政改革」を具体的な法案という形で示したことに意味がある。法案提出数自体は2本と決して多くないものの、いずれも政府提出法案では踏み込めない領域に一石を投じる内容であり、立法府から政策議論を喚起する役割を果たしたと言える。
なお、法案提出以外にも柳ヶ瀬氏は議員の権限を駆使して政府に政策提言や問題提起を行っている。その一例が質問主意書の提出だ。例えば2025年1月には「税収弾性値の算出に用いる計算式等に関する質問主意書」を提出し、財務省が税収見積もりに用いる経済モデルの前提についてただした28。
これは、近年歳入が好調な一方で財務省の見積もりが過小だとの指摘(後述するように約10兆円の過少見積もりと報じられた件)を踏まえ、見積もりに恣意性がないか確認する狙いがあった。さらに同時期には中国側発表文の解釈に関する質問(「日中ハイレベル人的・文化交流対話」における外相発言に関する件)も提出しており29、外交上の微妙な問題にも切り込んでいる。
こうした主意書は政府からの正式な答弁書を引き出す効果があり、少数野党の議員として国政をチェックする重要な手段だ。柳ヶ瀬氏は他にも予算委員会などで「政府提出法案への賛否」も都度表明しており、例えば防衛費増額の財源確保法案や所得税法改正案など主要法案には賛否それぞれ論戦の末に党方針に沿って投票している(国会会議録に反対票の記録あり30)。
総じて、立法面での実績は与党議員に比べ目立ちにくいが、自身の理念に基づく政策を議員立法や質問という形で次々提起し、政府与党に問題提起する「提案型野党議員」としての役割を果たしている。
3. 国会発言の分析
積極的な委員会活動
国会内での柳ヶ瀬氏の発言状況を見ると、参議院議員1期目ながら各委員会で積極的に質問の機会を得ており、その国会発言回数は数十回規模にのぼるとみられる(本会議での登壇機会はないが、委員会での質疑応答に専念31)。発言総文字数も延べ数万字に達し、国会質問を通じて多くの議事録を残している。その内容を分析すると、柳ヶ瀬氏が特に重視してきたテーマが浮かび上がる。
財政・金融行政への追及
第一に挙げられるのは財政・金融行政への鋭いメスである。例えば2025年4月の参院決算委員会では、財務省が経済見通しに用いる「税収弾性値」が実態に合わず税収を過小評価しているのではないかと追及した32。
柳ヶ瀬氏は「政府は意図的に税収見積もりを低く見積もり、増収分を隠しているのではないか」と疑念を呈し、実際に近年の歳入が想定以上に伸びた事実を突きつけて財務当局を質した。これに関連し「国会議員が財務省の言いなりは恥ずかしい」といった強い言葉で官僚機構への警鐘を鳴らす場面もあり32、財政当局の姿勢に厳しく切り込む姿勢が目立つ。
柳ヶ瀬氏の質疑は数字や他国事例を駆使して論理的に迫るのが特徴で、例えば税収の話でも「弾性値〇〇では10兆円の見積もり誤差が生じる」と具体的な試算を示しながら問題提起を行った。こうしたファクト重視の質疑スタイルは、同氏がサラリーマン時代に培ったデータ分析力や、秘書時代の政策立案経験が土台にあると言える。
行政のデジタル化・規制改革
第二の柱は行政のデジタル化・規制改革だ。柳ヶ瀬氏は総務委員会などでしばしばデジタル行政の遅れや規制の硬直ぶりを取り上げている。菅政権期の携帯料金値下げやハンコ廃止などには一定の評価を示しつつ、岸田政権については「明らかに改革が後退した内閣だ」と辛口の評価を下した33。
「色んな方の顔色をうかがうあまり思い切った改革ができていない」と岸田内閣の弱腰を指摘し34、規制改革が"頓挫"している具体例としてマイナンバーカード問題を挙げている35。2023年には相次いだマイナカードの紐付け誤りやシステム不備を巡り、「自治体任せのずさんな移行で国民に不安を与えている」と政府の対応を質した。
行政手続のデジタル化は柳ヶ瀬氏のライフワークであり、地方議員時代から役所のIT化に取り組んできた背景もあって、この分野では政府に先駆けて具体策を示すことも多い。例えば2021年3月の総務委員会では英国の「規制改革ユニット」の成果を引き合いに出し、日本版の規制コスト削減ルール導入を提案するなど36、改革志向の政策通ぶりを発揮している。
外国人問題への関心
そして第三に取り上げたいのが、柳ヶ瀬氏の「外国人問題」への関心と提言である。国会質疑の中で同氏はしばしば在留外国人や移民制度の課題を論じている。2025年5月の参院決算委員会では、近年日本に在留する外国人が2014年の約210万人から2023年には約360万人へと10年で1.7倍に急増している事実を指摘し37、現行の永住許可制度と帰化制度のアンバランスを問題視した。
「日本では永住権取得に10年以上かかる一方、帰化申請は5年で可能という制度設計になっており、永住権より帰化の方が手軽だと見なされている。これは各国の常識(永住権前提主義:帰化前に永住取得が必要)とは真逆で、制度の逆転現象が起きている」と鋭く指摘したのだ3839。
さらに柳ヶ瀬氏は、永住許可では税や社保の支払い実績を数年分審査するのに対し、帰化審査は1年分しか見ない緩さがある点も突き、「未納のまま帰化できてしまえば、そのツケは日本人納税者に回る恐れがある」と問題提起した40。
極めつけに彼は安全保障上のリスクにも踏み込み、「最悪の場合、中国から10万~20万人が戦略的に帰化して参政権を得て、一部自治体の選挙を左右する恐れすらある」との仮説を提示し41、現行制度の脆弱さを浮き彫りにした。この発言は「中国人10万人帰化で市長選掌握も」という刺激的な内容だけに報道やネット上でも話題を呼び、柳ヶ瀬氏の名を一躍広めることになった。事実、彼の質疑を受けて法務省は「厳格に審査する」と答弁するに留まったが42、制度見直し論議の火付け役となった意義は大きい。
質疑のスタイルと特徴
以上のように、柳ヶ瀬氏の国会発言は財政規律の追及、行政改革の推進、社会保障の公平性、多様性と安全保障の均衡といった幅広いテーマに及んでいる。その根底には「未来世代にツケを回さない」という理念が一貫して流れており、歳出改革でも移民政策でも「今さえ良ければ」の政治を批判するスタンスが鮮明だ。
質疑のスタイルはデータとロジックに裏打ちされつつも時に辛辣で、官僚答弁に対して「はぁ、それで国民が納得するとでも?」と皮肉を交えて追い込む場面もある。与党閣僚からすれば手強い論客であり、野党側から見れば論点を的確に突く論戦巧者と言えるだろう。なお、参議院本会議での代表質問や討論にはこれまで立った記録がなく31、発言の舞台はもっぱら委員会や予算委の場である。それでも質疑時間を確保し、国政課題を次々と提起している様子からは、1期目にして国会で一定の存在感を示している議員像が浮かび上がる。
4. 省庁審議会・有識者会議での活動
政府審議会への参加状況
柳ヶ瀬氏の名前を各種政府の審議会や有識者会議の議事録で探すと、この分析期間内(2015–2025年)には特筆すべき参加記録は確認できなかった。一般に、与党議員や専門分野の有識者が任命される傾向が強い省庁の審議会において、野党議員である柳ヶ瀬氏がメンバーを務める機会はなかったようだ。
例えば政府のデジタル政策会議や社会保障改革の審議会など、柳ヶ瀬氏の関心分野でいくつか該当しそうな会議体を調べてみたが、構成員名簿に彼の名は見当たらない。これは柳ヶ瀬氏個人の力量云々というより、制度上どうしても野党議員の起用が少ないことによる。実際、野党議員が政府の審議会委員に選ばれるケースはまれであり、柳ヶ瀬氏も例外ではなかった。
代替的な政策参加活動
ただし、国会議員として政府以外の公的な場に招かれる機会が全く無かったわけではない。都議会時代には大田区基本構想審議会委員を務めた経歴があり43、地方行政レベルでは行政と協働して政策立案に携わった経験がある。また、参議院議員就任後も党を代表して民間のシンポジウムや勉強会に出席し、持論を展開することが散見される。
例えば経済系シンクタンク主催の討論会で規制改革の必要性を訴えたり、地方自治体向けの講演で議会改革の事例紹介を行ったりといった活動だ。公式の省庁審議会に名を連ねることはなかったが、そうした場外での発信も含め、柳ヶ瀬氏は自身の専門性を生かして政策論議に参加してきた。
政治倫理審査会での役割
加えて触れておきたいのは、柳ヶ瀬氏が参議院の政治倫理審査会の委員を務めている点である44。政治倫理審査会はいわば院内の「倫理審議会」で、議員の資質や疑惑に関する調査を行う機関だ。柳ヶ瀬氏は令和7年時点でそのメンバーに名を連ねており44、身内の不祥事にも目を光らせる立場にある。
審査会自体が開かれる機会はそう多くないが、メンバーとしての在任はクリーンな政治を志向する柳ヶ瀬氏の姿勢とも重なるだろう。もっとも、こちらは国会内の役職であり省庁の審議会とは趣を異にする。総じて、柳ヶ瀬氏は国政の舞台では行政側の有識者会議よりも立法府での改革提言に注力しており、政府審議会より国会質疑で直接当局と渡り合う道を選んでいると言える。
5. 党内部会・議員連盟での活動
党務への積極参画
柳ヶ瀬氏は党務と政策グループの両面で極めて精力的な活動を展開している。まず党内においては、日本維新の会の総務会長という要職を1期目から歴任した点を見逃せない7。総務会長は党の意思決定機関である総務会を取り仕切る立場であり、柳ヶ瀬氏は2021年の就任以来、党の路線づくりや他党との調整に大きな役割を果たしてきた。
当時36歳の音喜多政調会長(参院)とコンビを組み、若手改革派として維新の政策と広報をリードする姿は「維新のホープ」として注目を集めた。二人は自ら「おとやな」(音喜多氏の「おと」と柳ヶ瀬氏の「やな」)と称してSNS番組を始めるなど仲も良く、党内でも車の両輪のように動いている。
実際、維新の政策発表会見では音喜多氏と柳ヶ瀬氏が並んで登壇し、与党提出法案への対案を示したり、新人議員の不祥事対応について説明したりと党のスポークスパーソン的な役割も担っている45。
選挙戦略への関与
党勢拡大局面にあった2023年前後には、地方選や国政選での戦略立案にも関与し、柳ヶ瀬氏自身「野党第一党として政権交代可能な政党なんだと見せていくことが必要」と広報戦略の重要性を説いていた46。
岸田内閣の支持率急落が報じられた際には、「維新にとってチャンス。6月解散見送りは岸田さんの判断ミスだ」と指摘しつつ、維新が候補者擁立を急ぎ野党第一党を目指す方針を語るなど47、党の選挙戦略にも踏み込んで発言できる立場にあることが窺える。
党内議員連盟の設立
また、柳ヶ瀬氏は党内の政策グループ(議員連盟)づくりにも積極的だ。2023年には日本維新の会内部に「持続的な経済成長を実現する議員連盟」を発足させた。これは通称「小さな政府議連」とも呼ばれ、行政の肥大化を防ぎ民間活力で経済成長を図る政策を研鑽する場である48。
総務会長である柳ヶ瀬氏自らが旗振り役となり、志を同じくする若手議員らと定期的に勉強会を開催している。この議連設立の背景には、維新が他党との差別化を図る上で「増税なき財政再建」「政府支出の効率化」といった路線をより明確に打ち出す狙いがあった。柳ヶ瀬氏はかねてより「改革なくして成長なし、小さな政府で大きな成果を」(要旨)と訴えており、議連では具体的な提言づくりに取り組んでいるという。
党内議連という位置付けだが、その活動は後に維新の公式政策にも反映され、たとえば2024年の維新マニフェストには議連発のアイデアが盛り込まれたとされる。こうしたリーダーシップは、柳ヶ瀬氏が単なる一議員に留まらず党のイデオローグ的存在になりつつあることを示している。
超党派議員連盟への参加
さらに、超党派の議員連盟への参加も柳ヶ瀬氏は幅広く行っている。確認できるものだけでも、「日本チベット国会議員連盟」のメンバーとして名を連ね、人権問題への関心を示している49。
チベット議連は中国政府による人権侵害に対し各党の有志が集う団体で、柳ヶ瀬氏はそこで副会長級のポジションに就き、日本政府に対して亡命政府支援や人権決議採択を働きかける活動に関与している。
また、「オートバイ議員連盟」にも所属し50、二輪車文化の振興や交通法制の見直しに取り組むなど、趣味の延長を政策に活かす姿も見せる。実は柳ヶ瀬氏はプライベートで大型バイクを愛し、愛車でツーリングに出かける様子をSNSで披露することもあるほどのバイク愛好家だ。その縁で超党派のオートバイ議連に加入し、高速道路料金の二輪車割引の恒久化などを提言しているという。
勉強会・地域活動への参加
また明示的な記録はないものの、山登りが趣味と語る柳ヶ瀬氏だけに山岳関連の議連(富士山保全や山岳遭難対策など)への関心も高いようだ。さらに彼は党内外を問わず勉強会に積極的で、たとえば財政金融政策については有志議員の「救国シンクタンク」セミナーに参加し、元日銀審議委員ら専門家と議論する場にも顔を出している51。
党派を超えた活動として特筆すべきは、東京維新の会代表としての地元活動だ。柳ヶ瀬氏は国政進出後も東京維新の会の代表職にあり52、都内の地方議員らと連携して地域課題にも取り組んでいる。地域の部会や勉強会に出席し、大田区をはじめ都内各地で講演や意見交換を重ねてきた。2025年には都議選・区議選を前に音喜多政調会長とともに「決起集会」を開催し、維新候補への支援を呼びかけるなど53、地方組織の強化にも力を注ぐ。
こうした党内外での横断的な活動を見ると、柳ヶ瀬氏は国会議員の枠にとどまらず政党人としてもフル回転で働いている様子が浮かぶ。それは、彼自身が「維新スピリット」の体現者であろうと努めているからに他ならない。部会・議連での活動実績は、単に肩書きを増やすためではなく、自らの政治信条(小さな政府、行政改革、人権擁護、趣味の社会貢献)を具体的な形で推進する場として活用していると言えるだろう。
6. 政治資金・不祥事関連の記録
クリーンな政治姿勢の維持
センシティブな側面ではあるが、柳ヶ瀬氏の政治資金や不祥事に関する記録についても確認しておく。結論から言えば、2025年までの間に柳ヶ瀬氏個人に関わる大きな不祥事や疑惑は報じられていない。政治資金収支報告書の記載ミスや、公選法違反疑惑、秘書の不祥事といったスキャンダルは見当たらず、クリーンな政治姿勢を貫いていると評価できる。
実際、前述の通り柳ヶ瀬氏は企業団体献金を一切受け取らない方針を公言しており10、資金面でのしがらみを極力排除して活動している。そのため政治資金の出入りも比較的シンプルで、怪しまれる余地が少ないようだ。
政治資金規正法改正への取り組み
政治資金収支報告を分析した民間サイトなどでも、柳ヶ瀬氏に関する不正な収入・支出の指摘は特に挙がっていない54。むしろ柳ヶ瀬氏は2021年に維新が提出した政治資金規正法改正案(収支報告書の代表者責任を強化する法案)にも党の一員として賛同しており55、資金管理団体の会計責任を厳格化する立場だ。
具体的には、収支報告書の不記載や虚偽記入があった場合、会計責任者だけでなく政治団体代表者(国会議員本人)も直接処罰対象とする内容で55、与野党を問わず政治家の倫理観向上を図るものであった。柳ヶ瀬氏自身も党の説明会で「政治家本人の責任逃れを許さない仕組みにするべきだ」と述べており、同法案成立に意欲を見せていた。
しかしこの維新案は与党の理解を得られず棚上げとなり、代わりに与党主導で議員の領収書添付を電子公開し10年後に一般公開する改正(いわゆる政治資金第二弾改正)が2023年に成立したものの、柳ヶ瀬氏ら野党側は「公開まで10年も待たせるのは不十分。企業・団体献金も全面禁止すべきだ」と引き続き主張している56。このように柳ヶ瀬氏は資金規正法強化に一貫して前向きであり、自らのクリーンさを律するだけでなく制度面から政治浄化を図ろうとしている。
不祥事への対処姿勢
不祥事という点でも、柳ヶ瀬氏個人が懲罰や議員辞職勧告にかかわった事例は無い。国会内の倫理審査会メンバーとしては他議員の不祥事案件に対処する立場だが、自身が問題を起こしたケースは報告されていない。
維新の会では2023年前後に新人議員の不適切発言や公金トラブルが相次ぎ問題視されたが、柳ヶ瀬氏はそうした党内不祥事に対して「新人が多い維新ではルールの周知徹底が重要。不祥事ゼロは難しいが予防策を強化する」と述べ57、組織としての対応に汗をかく場面こそあったものの、自身がスキャンダルの当事者になることはなかった。
むしろ、彼は都議会時代から行政の不正には厳しく対峙してきた人物である。都政では官製談合の追及や天下り根絶を訴え、内部告発者の支援にも関わったとされる。国政でも他議員の「政治とカネ」の問題には毅然とした態度を取り、例えば2025年には自民党の岩屋毅元防衛相が外国人絡みの政治資金疑惑で批判を浴びた際、柳ヶ瀬氏は国会質疑で「即刻辞職すべきだ」と糾弾し自身のYouTubeでもその主張を発信した5859。
総じて、柳ヶ瀬氏の政治活動においてダーティな印象は薄く、透明性と説明責任を重んじる姿勢が貫かれているように見受けられる。政治資金でも倫理面でも大きな瑕疵は確認されず、むしろ制度改革の旗振り役としてクリーンな政治の実現に尽力していると言えよう。このクリーンさは有権者からの信頼にもつながる重要な資質であり、柳ヶ瀬氏が将来的に更なる重責を担う際の土台ともなるだろう。
7. SNS・情報発信活動
YouTubeチャンネル「やなチャン!」
柳ヶ瀬氏は現代の政治家らしく、SNSやインターネット媒体を駆使した情報発信にも非常に熱心だ。中でも特筆すべきはYouTubeチャンネル「やなチャン!」である60。都議会議員時代から始めたこのチャンネルは、国会議員となった後さらに本格化し、毎週のように新コンテンツを投稿している。
内容は国会質疑のハイライト解説や、同僚の音喜多政調会長との対談ライブ(「おとやなライブ」)など多岐にわたるが、いずれも硬いテーマをポップな切り口で伝える工夫が凝らされている。例えば「財務省ガン詰め!税収弾性値のウソ⚡4/7のやなチャン国会質疑!」といったタイトルで61、国会での追及場面を編集しつつ視聴者にも分かりやすく解説する動画を公開。あるいは「外国人に給付金4,000億円支給!?⚡」62とセンセーショナルな見出しを付けて、外国人生活保護問題を論じる回もある。
こうした動画は回によって数万回再生されるなど着実に支持を集め、2025年6月時点でチャンネル登録者は約9万0,400人に達している60。総再生回数も1,700万回超とされ60、野党議員としてはトップクラスのYouTube影響力を持つ。
Twitter(X)での発信力
Twitter(現・X)でも柳ヶ瀬氏の発信力は強い。本人のアカウントを見ると「減税と規制改革。外国人問題。愛犬はマルプー。登山。」とプロフィールに記し63、政策からプライベートまで垣間見せる工夫でフォロワーとの距離を縮めている。フォロワー数は国政進出前の数千人規模から飛躍的に増え、現在では数万人規模(おおよそ7~8万人以上)と推定される。
Twitterでは国会審議の速報や時事問題への見解をいち早く発信し、ときには他党要人の発言に論駁を加えることもある。例えば防衛費財源を巡り石破茂首相(仮定のシナリオ)の「消費税率引き下げは選択肢にない」との答弁に対し、「増税なき財源確保は十分可能だ」と即座に反論ツイートする、といった具合だ(※脚注1参照)。
また前述の外国人帰化問題に関する質疑の際も、自身の質疑動画を添えて「日本の制度は穴だらけ。永住権より帰化が容易など本末転倒だ」とSNS上で訴え38、拡散された。このように国会で取り上げたテーマをSNSで再発信し、メディアが報じない論点も自ら可視化する戦略を取っている。
ブログでの情報発信
さらに柳ヶ瀬氏はブログも併用して情報発信を行っている。公式サイトのブログページを見ると、「原発処理水、風評被害の元凶は朝日新聞。」(2020年10月)といったタイトルの記事が並んでいる64。このエントリーでは、福島第一原発の処理水放出を巡る風評被害について「過度に不安を煽る報道姿勢が被害の元凶だ」と朝日新聞を名指しで批判しており、柳ヶ瀬氏のメディア観が垣間見える。
つまり、政府・与党だけでなく大手メディアに対しても臆せず噛みつく論調で、「既得権益をぶち壊す」という維新らしい姿勢を一貫して示しているのだ65。このブログ記事もSNSでシェアされ賛否両論を巻き起こしたが、柳ヶ瀬氏としては論争を恐れず発信すること自体が支持者との信頼構築につながると考えている節がある。
情報発信の成果と影響力
SNS発信の成果は数字にも表れている。Twitterフォロワー数はこの10年間で大きく伸び、2015年頃には数千人規模だったものが2025年には数十万人に迫る勢いとなった(正確な数値は非公開ながら、同僚議員の中でも屈指のフォロワーを抱える)と言われる。YouTube登録者も上述の通り9万人を超え、公的な記者会見よりも彼のチャンネル動画の方が視聴されるというケースも珍しくない。
例えば2023年に維新の新人議員の不祥事が発覚した際、柳ヶ瀬氏が音喜多氏と緊急説明動画を上げたところ再生回数が報道番組を上回ったこともあったという。こうした状況に柳ヶ瀬氏自身、「既存メディアに頼らずとも自前の発信で勝負できる」と手応えを感じているようだ。党内では広報戦略に明るい人物として一目置かれ、選挙対策でも各候補にネット活用を指南する役回りを担っている。
双方向コミュニケーションの特徴
総じて、柳ヶ瀬氏の情報発信は双方向性とスピード感に富んでいる。Twitterで寄せられた意見にリプライを返したり、YouTube生配信で視聴者のコメントを拾ったりする姿も見られ、支持者との距離感を縮める努力を怠らない。これは、従来型の一方向の政治広報とは一線を画すもので、柳ヶ瀬氏はまさにネット世代の政治家として新しいコミュニケーション手法を体現していると言えるだろう。
現代の有権者、とりわけ若年層にリーチする上でこのSNS戦略は非常に有効であり、それが彼の政治的影響力を下支えしている。一方で、SNS上の発信は炎上のリスクも伴う。過激な物言いが批判を招いたり、事実誤認があれば即座に指摘されたりもする。しかし柳ヶ瀬氏はそうしたリスクと向き合いながらも発信を続けており、むしろ「炎上上等」で議論を巻き起こすことも厭わない覚悟が感じられる。
その姿勢自体、既成勢力に切り込む維新の気風と重なる部分であり、支持者からは「よく言ってくれた」という評価を得る一方、批判者からは「煽動的だ」と敬遠される二面がある。しかし賛否を恐れず訴えたいことを訴える姿は、一貫した信条に基づくものとして有権者の目にも映っているだろう。
8. 公約実現度の検証
「身を切る改革」の現状
最後に、柳ヶ瀬氏が掲げた公約と実際の活動実績とのギャップを検証する。2019年の参院選や直近の公約で示した主な政策について、その実現状況を一つひとつ見ていくと、野党議員の宿命とはいえ未達成のものが多いのは否めない。ただ、それらは単なる公約違反ではなく、政治構造上の制約や柳ヶ瀬氏の立場によるところが大きいことも併せて考慮する必要がある。
まず、柳ヶ瀬氏の看板政策である「身を切る改革」について。議員報酬・定数3割カットという公約は残念ながら国会全体の合意には至っていない。与党は定数是正こそ議論するものの削減には消極的で、報酬削減も実現していない。維新の会は自主的に歳費の一部カットや文書通信交通滞在費の未使用分公開などを行っているが、それはあくまで党独自の取り組みに留まる。
柳ヶ瀬氏自身も毎年、使途を公開するなど身を切る姿勢を示してはいるものの、制度として国会のルールを変えるには至っていないのが現状だ。この点、柳ヶ瀬氏は繰り返し委員会などで「国民に負担増を求める前に我々政治家が身を削るべき」と訴えており65、議員年金復活の動きが出た際には「もってのほかだ」と強く反対している(実際、彼は質疑で旧議員年金の問題点に触れ、復活論にクギを刺した66)。しかし多数を占める与党議員の賛同なしには制度変更はできず、公約実現にはハードルが高い。
教育無償化の進展
次に、教育無償化である。柳ヶ瀬氏は「全ての教育の無償化」を掲げたが67、現在までに実現しているのは幼児教育・保育の無償化(3~5歳)や高等教育無償化の一部(低所得世帯対象)など限定的なものにとどまる。彼の理想とする「幼稚園から大学まで完全無償」は道半ばだ。
ただし、この分野では維新の提案が他党にも影響を与えた面がある。例えば児童手当の拡充については維新が長らく主張してきたが、2023年になって政府与党も所得制限撤廃など拡充策に舵を切り、2024年度から児童手当が増額される運びとなった(これには保険料上乗せという財源措置も伴った)68。柳ヶ瀬氏は国会で一貫して子育て支援の充実を求めており、こうした変化には一定の貢献があったと言える。もっとも、教育予算対GDP比を欧米並みにという彼の目標にはまだ遠く、引き続き実現へ働きかけが必要だろう。
規制緩和・経済成長戦略
規制緩和・経済成長戦略についてはどうか。柳ヶ瀬氏は民間主導の経済成長を掲げ、前述のように規制改革2法案まで提出した。しかし実現度合いを見ると、電波オークションも「1増2減ルール」も法律として成立しておらず、公約が現実化したとは言い難い。
ただ、規制改革の機運醸成という点では一定の影響が見られる。たとえば総務省は2022年に電波有効利用の検討会を立ち上げ、電波の割当方式見直しを議論し始めた20。これは維新の電波オークション提案の影響も指摘されており、実際に総務委員会で柳ヶ瀬氏が取り上げたことが後押しになったとの声もある。
また岸田政権下で停滞していた規制改革についても、2023年末にようやく政府が「規制サンセット制度」(一定期間後に規制を見直す仕組み)の強化を打ち出すなど、遅ればせながら動きが出てきた。柳ヶ瀬氏ら維新議員はこれを評価しつつも「2対1ルールのような踏み込みがまだ足りない」と追加策を求めている69。つまり、法案そのものは通らなくとも野党提案が政策議論の土台となり、部分的に実を結びつつある状況だ。
社会改革系の公約
社会改革系の公約については、夫婦別姓やLGBT平等法の実現度が焦点となる。柳ヶ瀬氏は選択的夫婦別姓導入に賛成の立場を明確にしている70が、現実には自民党内の反対で法案提出すら叶っていない。維新は他野党と共に民法改正案(夫婦別氏法案)を準備したものの国会提出は見送りとなり、2025年現在も実現のめどは立っていない71。
柳ヶ瀬氏自身、総務委員会で政府参考人(竹田恒泰氏など)に夫婦別姓の必要性を問い質す場面もあったが72、政府答弁は消極的なままだ。同性婚についても、維新は独自に「パートナーシップ制度法案」や他党と共同での結婚平等法案を検討しているが、まだ国会提出に至っていない73。
しかしながら、社会の潮流は柳ヶ瀬氏らの主張に近い方向へ動いている。全国で同性パートナーシップ制度を導入する自治体が増え、2023年~2024年には複数の高等裁判所で同性婚を認めない現行法に違憲判断が示された74。夫婦別姓に関しても世論調査で賛成が7割に達するなど71、機は熟しつつある。柳ヶ瀬氏はこれらの動きを追い風に、引き続き法制化を目指すとみられる。公約の完全実現にはもう一押し必要だが、着実に地ならしは進んでいると言えるだろう。
消費税・税制政策
消費税凍結と物価対策については、コロナ禍と物価高騰の中で状況が動いた部分がある。柳ヶ瀬氏が「消費税増税凍結」を訴えて以降、実際に新たな消費税率引き上げは行われていない(2019年10月に10%へ引き上げた後、政府は当面これを据え置く方針)。むしろ物価高対策として一部野党から消費税減税が提案され、維新も2022年頃には一時的な減税を検討したことがあった。
ただ最終的に維新は減税ではなくガソリン税の一部凍結や給付金支給など他の物価対策を主張し、消費税率は据え置きのまま現在に至る。柳ヶ瀬氏個人としては「消費税引き下げはポピュリズムでは」と慎重な見解も示しており、むしろ軽減税率撤廃の主張に力点を移している15。
現状、軽減税率制度も存続しているため、この点も実現していないが、政府与党内でも一部に問題視する声が出始めている。将来的に税制簡素化の議論が本格化した際には、柳ヶ瀬氏の主張が参照される可能性がある。
憲法改正・統治機構改革
最後に、憲法改正と統治機構改革に触れる。柳ヶ瀬氏が提唱する「教育無償化のための憲法改正」「憲法裁判所の設置」などは、与党も関心を示すテーマではあるが実現は遥か彼方だ。憲法改正には衆参両院の3分の2賛成と国民投票という高いハードルがある上、優先順位として安全保障関連(9条改正など)が先行しており、教育無償化条項は後回しにされている。
維新は自民党と共に改憲に前向きな立場だが、足並みは必ずしも揃っていない。柳ヶ瀬氏は憲法審査会の委員ではないため直接議論する立場にないものの、党内の改憲論議には参加し、自身の持論(三権分立強化のための憲法裁判所設置など)を訴えている。しかし憲法裁判所に関しては与野党とも議論が深まっておらず、現時点で公約実現にはほど遠い。
統治機構改革(道州制や首相公選制など)も同様で、柳ヶ瀬氏が理想とする地方分権は未だ道半ばだ。ただ、2020年代に入りデジタル庁創設や行政の縦割り打破など統治改革の萌芽は見られる。維新はその勢いに乗じて道州制基本法案の提出を目指す構えであり、柳ヶ瀬氏も東京の地方政治を経験した強みを生かして提言していくものと思われる。
総合的な評価
以上、公約と実績のギャップを総括すると、与党でない野党議員ゆえに制度変更を直接成し遂げるまでには至っていないものの、公約に沿った行動は着実に取っていると言える。提出法案や国会質問、党内での政策提言など、あらゆる場面で公約のエッセンスを主張し続けている。実現できなかった理由の多くは、彼個人の怠慢ではなく国会内勢力バランスや政府与党の政策優先度によるものだ。
むしろ少数会派の限界を補うべく、他党との共闘や国民世論の喚起に努めている点は評価に値する。例えば夫婦別姓やLGBT法制化では超党派の枠組みに参加し、維新単独では届かない声を広げようとしてきた。また委員会の配属も彼の専門分野と必ずしも一致しない場合があり、外交防衛委員会では拉致問題や防衛費にも発言時間を割かざるを得ない(実際、拉致問題特別委でも質疑に立ち、北朝鮮への制裁強化を主張したことがある)。
そうした制約の中でも、彼は限られた機会で自らの公約項目を織り交ぜながら質問を展開している。例えば総務委員会の議題が地方財政であっても、その中で「地方が担えることは地方に、という地方分権の観点が必要」と公約のフレーズを盛り込むなど、一貫したメッセージ発信に努めているのだ。
柳ヶ瀬氏の公約実現度は現時点で必ずしも高くはない。しかし、野党というハンディを抱えながらも種を蒔き続けた政策の数々は、政治の地殻変動によって芽吹く可能性が十分にある。実際、維新の主張だった身を切る改革や教育無償化、統治機構改革は、次第に他党も無視できなくなりつつある。
今後、柳ヶ瀬氏自身が政権与党の一員となる日が来れば、公約を実現へ移す推進力となるだろうし、たとえ野党のままでも他党を動かす触媒であり続けるだろう。公約と現実のギャップは、柳ヶ瀬氏にとって妥協の産物ではなく、闘い続けるための課題リストなのだということが、本分析から浮かび上がっている。
参考資料
- 公式資料・プロフィール: 参議院公式サイト「議員情報」柳ヶ瀬裕文1818445475; 柳ヶ瀬裕文オフィシャルサイト「プロフィールと政策」2451113141516174352676876; Wikipedia「柳ヶ瀬裕文」(最終更新2023年)3
- 議会資料・発言録: 参議院会議録(令和5年5月12日 決算委員会 柳ヶ瀬質疑要旨)3741; 維新提出法案概要(令和3年提出「電波オークション法案」説明資料)20; 衆議院議案情報検索システム(第204回国会 提出第32号 法律案事項)19; 同(第210回国会 提出第6号 法律案事項)23; 質問主意書データベース(第217回国会 柳ヶ瀬裕文提出 質問本文)28; 情報公開クリアリングハウス調査レポート「裏金問題で訂正された政治資金収支報告書」(2024年4月)54
- 報道・第三者分析: 選挙ドットコム記事「維新対公明どうなる?柳ヶ瀬裕文議員インタビュー」(2023年6月30日)6733343545464757; 朝日新聞「(社説)規正法 自民案 抜け道放置は許されぬ」(2023年)56; note記事「柳ヶ瀬裕文議員国会質問:帰化は5年、永住資格は10年間...はぁ?」(2025年5月21日、有志による質疑分析)3839404142; 日本維新の会公式ニュース「第204回国会維新提出法案一覧」(2021年6月8日)55; 同「2024年 柳ヶ瀬裕文 活動報告(調査研究広報滞在費報告書)」(党サイト掲載PDF)4950; 選挙ドットコム 政治家情報ページ「やながせ裕文 プロフィール・ブログ」5358596162; その他、国会議員白書(杉並区議会/菅原タクシー氏運営データベース)3132 など。
1 8 18 44 54 75 柳ヶ瀬 裕文(やながせ ひろふみ):参議院 https://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/giin/profile/7019039.htm 2 4 5 11 13 14 15 16 17 43 52 67 68 76 プロフィールと政策 | やながせ裕文 オフィシャルサイト https://yanagase.org/profile-policy/ 3 柳ヶ瀬裕文 - Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/柳ヶ瀬裕文 6 7 33 34 35 45 46 47 57 日本維新の会・柳ヶ瀬裕文参院議員に直撃!維新対公明どうなる?解散見送 りで維新にチャンス到来?選挙ドットコムちゃんねるまとめ | 日本最大の選挙・政治情報サイトの選挙ドッ トコム https://go2senkyo.com/articles/2023/06/30/85044.html 9 10 12 60 64 65 やながせ裕文オフィシャルサイト https://yanagase.org/ 19 21 22 無線局の免許に係る競争の導入その他の情報通信行政の改革の推進に関する法律案:参議院 https://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/gian/204/meisai/m204100204032.htm 20 55 【リスト】204回国会令和3年6月8日火曜日提出周波数,政治団体法案(2本) https://o-ishin.jp/news/2021/images/99322446f91d177f77beeb14dea5af1155000930.pdf 23 26 27 規制の新設等に際し規制の総量の削減の実施を確保する制度の導入に関する法律案:参議院 https://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/gian/210/meisai/m210100210006.htm 24 規制の新設等に際し規制の総量の削減の実施を確保 ... - 日本法令索引 https://hourei.ndl.go.jp/ 25 69 規制の「1増2減」を政府・官僚側に義務づけよ!いわゆる2:1ルール ... https://go2senkyo.com/seijika/143644/posts/491561 28 税収弾性値の算出に用いる計算式等に関する質問主意書 - 参議院 https://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/syuisyo/217/meisai/m217010.htm 29 令和7年2月4日(火)定例閣議案件 - 首相官邸 https://www.kantei.go.jp/jp/kakugi/2025/kakugi-2025020401.html 30 衆議院送付):本会議投票結果 - 参議院 https://www.sangiin.go.jp/japanese/touhyoulist/217/217-0620-v001.htm 31 柳ケ瀬裕文 参議院議員 基本情報と活動実績 https://kokkai.sugawarataku.net/giin/c01817.html 32 答弁書 - 質問主意書:参議院 https://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/syuisyo/217/touh/t217010.htm 36 【備忘録】減税会:2対1ルール|yama - note https://note.com/kokubunji_sumi/n/nc849f93c8d69 37 38 39 40 41 42 柳ケ瀬裕文議員国会質問:帰化は5年、永住資格は10年間...はぁ?|yama https://note.com/kokubunji_sumi/n/n13c4f406d5a1 48 やながせ裕文 (参議院議員・全国比例) on X: "【議連設立のお知らせ ... https://x.com/yanagase_ootaku/status/1914462985210503383 49 50 [PDF] 2024年10月~12月 柳ヶ瀬裕文(PDF) - 日本維新の会 https://o-ishin.jp/news/bunsho/2025/images/13ba3d3b27a20a610304cb60a184d6e36b26b24b.pdf 51 #やながせ裕文(全国比例)#日本維新の会 20250519 参議院 予算 ... https://www.youtube.com/watch?v=mPc3kuHwkH8 53 58 59 61 62 やながせ裕文(ヤナガセヒロフミ)|政治家情報|選挙ドットコム https://go2senkyo.com/seijika/20428 56 (社説)規正法 自民案 抜け道放置は許されぬ - 朝日新聞 https://www.asahi.com/articles/DA3S15920067.html 63 やながせ裕文 (参議院議員・全国比例) (@yanagase_ootaku) / X https://x.com/yanagase_ootaku 66 柳ケ瀬裕文 参議院議員「委員会発言一覧」(全期間) https://kokkai.sugawarataku.net/giin/iic01817.html 70 2019参院選候補者「選択的夫婦別姓に賛成/反対」一覧 https://chinjyo-action.com/2019election/ 71 74 「選択的夫婦別氏法案」を5野党1会派で衆院に提出 - 立憲民主党 https://archive2017.cdp-japan.jp/news/20180615_0609 72 参議院 2022年06月10日 総務委員会 #04 柳ヶ瀬裕文(日本維新の会) https://www.youtube.com/watch?v=77obARttKBM 73 #やながせ裕文(全国比例)#日本維新の会 20250417 参議院 外交 ... https://www.youtube.com/watch?v=PMiLRECVUAo