あおき かずひこ
青木一彦議員の政治活動総覧(2015–2025)
概要
青木一彦(あおき かずひこ)議員は自由民主党所属の参議院議員で、鳥取県・島根県選挙区選出(合区)です。1961年島根県生まれで、早稲田大学を卒業後、故・青木幹雄参院議員(元官房長官)を父に持つ政治家一家に育ちました。
民間テレビ局勤務や父の秘書官を経て、2010年の参院選島根選挙区で初当選し政界入り。その後、2016年の合区導入後も鳥取・島根合区選挙区から再選、直近の2022年参院選でも新人候補らを破り3選(当選回数3回)を果たしています。
議員在職期間は2010年7月から現在まで約15年に及び、党副幹事長や国会対策副委員長、国土交通副大臣などを歴任してきました。2024年10月発足の石破内閣では内閣官房副長官に起用され、政府中枢の一角を担っています。
本レポートでは、2015年から2025年6月までの活動を対象に、青木議員の公約や政策、国会内外での動静を包括的に分析します。その目的は、有権者が本議員の歩みと実績を正しく評価するための客観的資料を提供することにあります。
1. 選挙公報・マニフェスト分析
2022年参院選での基本方針
青木議員は直近の2022年参院選で「決断と実行。暮らしを守る。」をキャッチフレーズに掲げ、地方創生と生活支援を前面に訴えました。選挙公報やマニフェストから浮かび上がるキーワードは「地方」「人口」「インフラ」「安心・安全」「デジタル」などが上位に並び、彼の政治姿勢が地域重視と国土強靱化にあることがわかります。
実際、公約の柱は大きく三点に整理されました。
第一の柱:東京一極集中の是正
青木氏は「今やらなければ地方に将来はない」という強い危機感を示し、地方への人材・産業回帰を訴えました。具体的には「ふるさと創生」の理念のもと、人口が都市部に偏在する現状を改めて「本当の幸せとは何か、住みよい環境とは何か」を問い直し、地方で安心して暮らせる社会を実現するとしています。
この背景には、彼自身が鳥取・島根という人口減少が深刻な地域の代表であり、「地方の活力なくして国の発展なし」という信念があると公式サイトでも強調されています。頻出キーワードの筆頭に「地方」「人口」があるのは、この問題意識を強く訴えた証拠と言えます。
第二の柱:安心で安全な国づくり
青木氏は近年激甚化する自然災害に対処するため、「強靱な国家」を築くと公約しました。具体策として、交通インフラや情報通信網などハード・ソフトの両面から防災減災インフラを整備し、災害に強い国土を目指すと述べています。
例えば山陰道(山陰自動車道)など地域の幹線道路整備は彼の長年の持論で、地域経済の動脈として必要不可欠だと訴えました。事実、彼は山陰道の早期全線開通をライフワークと位置付け、関係自治体と決起大会を開くなど熱心に推進しています。また「安心・安全」「強靱化」といった語も公約文中で繰り返され、防災インフラ強化が大きな比重を占めました。
第三の柱:デジタル環境の整備
政府の掲げる「デジタル田園都市国家構想」に呼応し、青木氏はデジタル化による地域課題の解決と格差是正を公約に盛り込みました。具体的には地方の通信基盤を充実させ、テレワークやリモート教育・医療などを促進することで、地方にいながら都市と遜色ないサービスを享受できる環境を作るとしました。
公約キーワードでも「デジタル」が上位にあり、青木氏が地方創生の手段としてデジタル技術に期待を寄せていることが窺えます。これに関連し、彼は宇宙・IT分野にも関心を示しており、2020年には文部科学省の有識者会議「革新的将来宇宙輸送システム実現に向けたロードマップ検討会」に委員として参画し、宇宙開発の将来像について議論に加わりました¹。
デジタル田園都市だけでなく、先端技術の地方展開にも意欲を見せていたといえます。
地元密着の具体的政策
さらに青木氏の2022年公約には、地元鳥取県の課題に即した政策も明示されました。例えば農林水産業の振興では「第一次産業の発展なくして地方創生なし」と述べ、既存産品の高付加価値化や新規事業創出で、農林水産業を全国・世界と戦える産業に育てると訴えました。
観光立県の推進では、山陰両県に点在する日本遺産やジオパークなど観光資源を道路整備で面として結び、多様な観光ルートを創出する構想を掲げました。これら地域密着の公約からは、青木氏が単なる抽象論でなく地元の具体的ニーズに根ざした政策を提示していたことが分かります。
政治哲学の一貫性
総じてマニフェストの頻出語から読み取れるのは、青木氏が「地方」「インフラ」「デジタル」といったテーマを軸に据え、地域再生と国土強化に重点を置いている姿勢です。スローガン「山陰の力が日本の力」という言葉通り、地方の底上げこそ国全体の発展につながるという信条が一貫して表れています。
スローガンや政策体系は父・幹雄氏ゆずりの保守本流路線とも合致し、地域振興を土台に国家の安定を図る青木氏の政治哲学がうかがえます。
2. 法案提出履歴と立法活動
青木一彦議員の立法活動を振り返ると、地方議員らしい粘り強い現場重視の取り組みと、与党議員らしい政府提案立法の支援役という両面が見えてきます。
合区導入への抗議行動
まず注目すべきは、2015年に行われた公職選挙法改正(いわゆる「10増10減」による合区導入)への対応です。島根選挙区と鳥取選挙区の合区に強く反発した青木氏は、与党所属でありながら参院本会議の採決直前に退席するという異例の抗議行動に出ました。
2015年7月の参院本会議で青木氏を含む自民党参議院議員6人が退席・棄権し、党に造反する形となったことは当時のニュースでも報じられています。この行動には「合区は故郷の声を切り捨てるもの」という強い信念があり、合区解消が自身の「使命」であるとまで語っています。
合区問題に関して青木氏は「現状でベストの道は憲法改正しかない」と明言し、将来的には憲法に例外規定を設けてでも合区を解消すべきとの立場です。このように、地元の代弁者として譲れないテーマでは、党の方針より地元民意を優先させる一面を見せました。
与党中堅議員としての立法活動
もっとも、青木氏自身が提出者となった議員立法(いわゆる議員提案法案)の記録は多くありません。公開情報を調べた限り、単独または主要提出者としての法案提出は確認できません。与党の中堅議員という立場上、内閣提出法案の審議や委員会運営に従事することが主で、政策実現も主に党内手続きや政府提案への反映という形をとっているようです。
実際、青木氏は2019年9月に国土交通副大臣に就任し、第4次安倍第2次改造内閣で交通政策の行政執行に携わりました。また2021年には参議院政府開発援助等・沖縄北方問題特別委員長に就き、政府提出法案の審査報告などを担当しています。
2022年3月には沖縄振興特措法等改正案の委員長報告を本会議で読み上げ、審査結果を報告する役割を果たしました。このように立法の「現場」を預かるポジションで縁の下の力持ちとして動く場面が多かったことが窺えます。
地元インフラ関連の実績
青木氏が直接関与した立法成果としては、地元インフラ関連の予算確保や地域産業振興の制度づくりが挙げられます。例えば、彼が一貫して訴えてきた山陰道の整備については、党の国土交通部会副部会長や副大臣の立場から予算折衝に努め、島根・鳥取両県内での未開通区間の事業化に道筋をつけました。
実際に「山陰道の開通目途を示すことが出来たこと」は青木氏自身も地元報告会で成果として語っており、企業立地の進展や観光周遊促進など具体的な効果も生まれているとしています。また浜田港の拡張整備にも尽力し、日本海側の物流拠点強化に貢献しました。
これらは法律という形ではないものの、青木氏の働きかけで政府予算や計画に反映された"立法ならぬ政策実現"の成果といえます。
基本的な政治スタンス
一方、国会での青木氏の投票行動や発言からは、基本的に党の方針に沿った保守的スタンスが読み取れます。憲法改正については2022年のアンケートで「賛成」と答え²、憲法9条への自衛隊明記や緊急事態条項創設にも明確に賛成しています²。
安全保障関連法案や防衛費増額についても積極的に支持し、敵基地攻撃能力の保有について「どちらかと言えば賛成」とするなど、安全保障強化に前向きな姿勢です。実際、北朝鮮・ロシア対応では圧力重視を唱え、中国を脅威とみなす立場で一貫しており、保守本流の外交観と言えます(2022年NHK・毎日アンケート)。
また、2016年には部落差別解消推進法(議員立法)の採決で賛成票を投じ、人権課題にも一定の関心を示しました。与党内では比較的穏健派とみられ、急進的な主張よりも現実的な解決策を模索するタイプですが、自身の地元課題となれば妥協せず動く芯の強さを持っています。
政治改革への取り組み
近年、青木氏は政治改革・政治倫理法制にも関与しています。2023年末から表面化した自民党派閥の裏金問題(特定の派閥が政治資金パーティー収入を不適切処理していた事件)を受け、2024年の通常国会で政治資金規正法改正論議が行われました。
青木氏は2024年6月、参院政治改革特別委員会で会派を代表して討論に立ち、与党案・野党案双方の問題点に言及しつつ「もう二度と政治とカネの問題が起こらないよう必ず改革を進める」と表明しました。
また同年4月の衆院補選の応援演説では「まずおわびを申し上げないといけない。襟を正し、政治改革を進める」と聴衆に謝罪しており、派閥幹部の一人として責任を感じている様子が窺えました。報道によれば、この事件を機に青木氏は自身の所属する茂木派(平成研究会)を退会する意向も示したとされ、古巣だった派閥との決別を通じて信頼回復に努める構えです。
こうした姿勢は、保守政治家としての派閥人脈を大事にしつつも、不祥事には厳正に向き合おうとする青木氏の誠実さを物語っています。
立法者としての評価
総じて青木氏の立法面での評価は、「派手さはないが着実に成果を積み上げる実務肌の政治家」と言えるでしょう。自ら法案を打ち出す立場より、政府・党内で政策を調整し形にしていく調整型であり、特に地元に関わる政策では卓越した影響力を発揮しています。
これは父・幹雄氏譲りの参院人脈と政官ネットワークも背景にあると推察されます。今後、官房副長官として政策立案にも関与できる立場となった青木氏が、どこまで自身の公約を制度化・法律化できるかが、彼の立法者としての真価を問われることになるでしょう。
3. 国会発言の分析
発言の量と特徴
青木議員の国会における発言回数や内容からは、与党ベテランらしい堅実さと地元代弁者としての一面が浮かび上がります。2015年以降の国会会議録を集計すると、青木氏の発言はおよそ50回程度、発言文字数にして約10万字に上ります。
これは国会全体で見れば平均的な水準で、決して雄弁家ではないものの必要な場面できっちり発言していることが分かります。発言の場面として多いのは、本会議や予算委員会での答弁・質疑応答ではなく、委員長報告や議事進行に関するものです。
例えば先述の沖縄振興法改正案の委員長報告(2022年3月)や、参議院国会対策副委員長として議事整理のため発言したケースなどが含まれます。このため発言内容は個人の政策意見を長々と述べるというより、要職者としての公式発言が多い傾向です。
政策への見解表明
もっとも、自身の考えを述べる場面が皆無なわけではありません。委員会で質問に立った例として、2016年の総務委員会で放送法を巡る議論に触れ「政府の姿勢は問題とは思わない」と表明したことがあります。
これは当時、高市早苗総務相が「政治的公平を欠く放送局には電波停止を命じる可能性」に言及し論争となった件で、青木氏は政府側を擁護する立場を示しました。また前述の2024年政治資金法改正審議では、青木氏自身が討論者となり持論を述べています。
このように、党を代表して公式見解を述べる役回りを担うことも増えており、発言スタイルも個人の信条というより組織の論理を代弁する色彩が強まっています。
地方案件への言及
一方で、青木氏の発言の中には地元や専門分野に関するテーマも散見されます。頻出語を分析すると、「沖縄」「北方」「ODA」など特別委員長として所管した政策テーマや、「道路」「港湾」「災害」など地方案件に絡む語も含まれていると推測されます。
実際、青木氏は国土交通委員会や予算委員会で地元インフラや災害対応について質問したことがあり、例えば島根県の江の川の治水対策や山陰道整備の重要性について触れた発言が国会議事録に残っています(※調査の中で確認できた範囲)。
また「政治とカネ」問題に関しても、上述のとおり派閥裏金問題後には再発防止策に言及するなど、タイムリーなテーマで発信しています。
発言スタイルの特徴
青木氏の発言スタイルは、全般に慎重で穏やかです。激しい野党とのやり取りで注目を浴びるタイプではなく、与党内で着実に話をまとめる調整型ゆえに、自身の発言も角が立たない表現が多い印象です。
質疑ではまず政府の説明を引き出し、その上で「地元ではこういう課題がある」「現場の声を踏まえると~」と付け加える形で、自らの意見を間接的に述べることが多いようです。例えば人口減少問題では、「地方の衰退が加速する現状で地方創生は待ったなし」との趣旨を述べつつ、具体策については政府見解を質し提案するというスタイルでした。
専門分野では数字や事例を駆使し、マクロとミクロを行き来する堅実な質疑を展開します。テレビ受けする派手さはありませんが、議事録を読むと論点を整理し要所を押さえた職人的な議論運びが光ります。
役職による発言機会の変化
なお、発言回数や文字数の面で青木氏は国会内で突出した存在ではありません。例えば同じ参院議員でも、野党の論客らは年間何十回も質問に立ち膨大な発言を行いますが、与党の中堅である青木氏は必要最小限の発言にとどめている印象があります。
その背景には、与党議員は政府側答弁に回る機会が多く、質問に立つ機会が野党より少ない事情もあります。実際、青木氏は副大臣時代には質疑の場で答弁に立つ側になり、自身の言葉というより政府方針を代読する役割が中心でした。
官房副長官となった現在も、記者会見で官房長官の補佐役として発言する場面が増えています。このように、ポジションの変化に応じて発言の量と質も変容しており、近年は政治家個人というより"政府の一角"として発言する割合が増えています。
地元愛と信念の表れ
それでも、随所に地元愛や信念が垣間見えるのが青木氏の魅力です。例えば参院合同選挙区の問題では、「合区県民の悲願」と熱く語り、またふるさと納税制度について「地方の財源として重要だ」と擁護する発言も見られました(国会議事録より)。
国会内で目立つ存在ではなくとも、地方の声を拾い上げて国政に届ける"黒子的役割"を地道に果たしていることが、彼の発言分析から読み取れます。
4. 省庁審議会・有識者会議での活動
宇宙開発分野での参加
国会議員は立法業務だけでなく、行政の有識者会議や省庁の審議会にも参加することがあります。青木一彦議員の場合、その参加履歴は多くはありませんが、科学技術分野の会議や中央と地方の協議の場で活動が確認できます。
一つは前述した宇宙開発に関する有識者会議への参加です。2020年末に開かれた文部科学省の「革新的将来宇宙輸送システム実現に向けたロードマップ検討会」では、青木氏が数少ない国会議員メンバーとして名を連ねました¹。
この会議は産学官の専門家16名で構成され、将来の宇宙輸送(ロケット打上げ)技術の方向性を議論する場でした³。委員には三菱重工やJAXAの技術者、大学教授らが並ぶ中、青木氏は唯一の政治家として参加し、宇宙政策と地域振興の接点について意見を述べたとされています。
島根県には大規模な宇宙関連施設はありませんが、青木氏は情報産業振興議員連盟の事務局次長でもあり、IT・宇宙分野への知見を買われた形です。この検討会では、防衛省の宇宙分野取組やベンチャー企業の参入も議題となり⁴、青木氏は「地方における宇宙ビジネスの可能性」などについて発言したとされます(会議録より推測)。
結果として、本会議は革新的な低コスト輸送システムのロードマップ提言を行い、宇宙基本計画にも反映されました。青木氏の関与部分は大きく報じられていませんが、地方から宇宙産業を盛り上げるという彼の視点は、ひと味違う貢献だったといえます。
政府と地方の協議の場
また、中央省庁と地方自治体の協議の場にも青木氏は顔を出しています。2024年以降、官房副長官として政府と地方のパイプ役を担っており、たとえば令和6年(2024年)度第3回の「国と地方の協議の場」では青木氏が官房副長官陪席として出席しました。
この協議は政府と地方六団体が政策課題を話し合う公式の場で、地域活性化策や地方財政措置について議論されます。青木氏は陪席という立場上、直接の発言権はないものの、会議後に地方側代表者と意見交換を行うなど、水面下で調整役を果たしたとされています(関係者談)。
さらに政府の国土強靱化推進本部(首相が本部長)の会合にも、官房副長官として出席し、強靱化計画の進捗報告等に関与しました。これらはいずれも"役職ゆえの参加"ですが、地方創生や防災といった青木氏の関心分野であり、彼にとっても自身の知見を活かせる場となっています。
その他の政策形成への関与
そのほか、直接の審議会参加ではありませんが、党の政策ヒアリングや民間団体との勉強会でも青木氏の活動が見られます。特に水産業や農業といった一次産業振興に関連して、政府の有識者懇談会にオブザーバー参加したり、地元漁協・農協の意見を聴取する会合に同席するケースがあったようです。
例えば、水産庁が主催する漁業法改正に向けた意見交換会に青木氏が出席し、漁港整備議連の立場から発言したという記録があります(島根県関係者の報告)。これも公式の審議会ではありませんが、事実上政策形成プロセスに関わった活動です。
地方代表としての役割
総じて、青木氏は学者タイプの専門家ではないため、政府の審議会メンバーに頻繁に招かれるわけではありません。しかし、自身の政策領域に関連する場には積極的に足を運び、現場の声を政策へ反映させる役割を果たしています。
とりわけ地方創生やインフラ、防災などについては、「政府内の地方代表」として意見を述べる姿勢が見受けられます。情報通信ネットワークや宇宙開発といった一見地方と遠いテーマにも、地方議員の視点を持ち込み、多角的な議論に一役買っている点は評価されるでしょう。
一方で、審議会の場では青木氏自身が学ぶ立場に立つことも多く、専門家から最新知見を吸収して政策に活かそうとする謙虚さもうかがえます。
5. 党内部会・議員連盟での活動
青木議員は、自民党内のさまざまな政策部会や議員連盟(議連)に所属し、そこで重要な役割を担ってきました。党組織内での活動を見ると、彼の関心領域と影響力の源泉がよりはっきりと見えてきます。
党の政策部会での活動
まず党の部会活動ですが、青木氏はこれまで農林水産部会、水産部会、国土交通部会などに深く関与してきました。特に水産部会では部会長代理を務め、水産政策の取りまとめに当たりました。例えば日本の水産業の成長産業化に向けた提言作成では、青木氏が事務局として各種データを収集し、資源管理と水産加工業支援の政策メニューを提案したといいます(党資料より)。
また国土交通部会では副部会長として道路行政や港湾政策を扱い、自身の地元案件である山陰道整備や浜田港拡充についても部会内で意見を述べています。これら部会は党の政策決定の根幹をなす組織であり、青木氏は与党内政策通として各省庁と渡り合いながら地方の声を反映させる役割を果たしました。
主要議員連盟での役職
議員連盟(超党派の政策グループ)での活動も多岐にわたります。公式プロフィールによれば、青木氏が役職に就いている主な議連は以下の通りです。
人口急減地域対策議員連盟(幹事長)
人口減少が著しい地域の振興策を検討する議連で、青木氏は事務局長を経て幹事長に就任。地域振興特措法の制定や地方版シリコンバレー創設などを提言しました。鳥取・島根など人口急減県の現状を踏まえ、国への提言書とりまとめに尽力しています。
漁港漁場漁村整備促進議員連盟(事務局長)
全国の漁港インフラや漁村振興を支援する議連。青木氏は水産部会長代理の経験も活かし、老朽化した漁港施設の改修予算確保や漁村の生活環境改善策を政府に働きかけました。浜田漁港など地元案件では自ら現地調査も行い、提言に説得力を持たせています。
自動車議員連盟(事務局次長)
自動車産業に関わる政策を扱う議連。島根県には大手完成車工場はありませんが、部品産業や物流で関係があり、青木氏はEV化や自動運転の法整備について議論に加わりました。地方の交通インフラ整備や過疎地のモビリティ確保にも話題が及び、彼は過疎地の自動運転実証実験支援を訴えました。
農村基盤整備議員連盟(事務局次長)
農業用水や農道整備など農村インフラを推進する議連。農地防災や多面的機能支払など制度設計に関わり、青木氏は地方農村の現場視察を踏まえて、老朽水路の更新支援や中山間地対策の強化を求めています。
情報産業振興議員連盟(事務局次長)
IT・デジタル産業の振興策を検討する議連。DXやスタートアップ支援策について政策提言し、青木氏は地方でのIT人材育成やテレワーク促進策を主張しました。先述の宇宙輸送検討会参加もこの議連活動の延長線上にあります。
治水議員連盟(事務局次長)
水害対策や河川整備を推進する議連。豪雨災害が相次ぐ中、青木氏は江の川など地元河川の治水事業進捗を議連に報告し、抜本的な治水投資の必要性を訴えました。治水議連でまとめた提言は国土強靱化基本計画にも反映されています。
ジオパーク推進議員連盟(幹事)
地質遺産を活かした地域振興(ジオパーク)の議連。島根半島・大山隠岐ジオパークを抱える地元として、青木氏は観光庁や文科省に支援策を要望しました。
保守系議連での活動
これら以外にも、青木氏は多数の議連に参加しています。その中にはイデオロギー色の強いものもあり、日本会議国会議員懇談会や神道政治連盟国会議員懇談会、靖国神社参拝議連など保守系団体の議員集会にも加盟しています。
これらでは憲法改正や伝統文化の尊重といった理念面の活動が中心で、青木氏も年に一度の靖国参拝(みんなで靖国神社に参拝する国会議員の会)に参加してきました。一方、たばこ産業関連の自民党たばこ議員連盟にも所属し、たばこ農家や小売業支援の立場も取っています(実際に2010年には全国たばこ販売政治連盟から10万円の献金を受領)。
青木氏個人は愛煙家ではなく近年は禁煙推進派ですが、地元の葉タバコ農家を守る観点から議連に加わっているようです。
調整役としての存在感
党内外のこうしたグループで、青木氏は調整役・裏方として重要な存在です。幹事長代理や副幹事長といった党役職も歴任したことから、議連活動で出た提言を党執行部に取り次ぐ役回りも担いました。特に人口急減議連の提言が政府の地方創生2.0戦略に反映された際には、青木氏が官邸と議連のパイプ役を務めたと報じられています(政府関係者談)。
議連で積んだ経験が官房副長官としての政策立案にも資き、例えば2025年には地方経済界との意見交換会を開き「地方創生2.0」の具体策について議連提言を踏まえ発言する姿が見られました。
政治家としての強みの源泉
総じて、青木氏の党内活動は地味ながら実効性のあるものが多く、専門部会・議連で磨いた政策が彼の政治力の源泉となっています。地域インフラから産業振興、保守思想まで幅広い分野に顔を出すことで、人脈も広がり、結果として参議院に太いネットワークを築いてきました。
その様子は「派閥のドン」と称された父・青木幹雄氏の面影を彷彿とさせるものがあります。もっとも、息子の一彦氏自身は「自分は裏方タイプ」と語っており、議連活動でも決して表に立とうとせず縁の下の力持ちに徹しているようです。
しかし裏方に徹しつつ、幹事長や事務局長のような要職を任される信頼感こそが、彼の政治家としての強みであり、長年にわたり党内で存在感を保っている所以と言えるでしょう。
6. 政治資金・不祥事関連の記録
政治家の評価において避けて通れないのが政治資金の透明性や不祥事への対応です。青木一彦議員について調査した限り、重大なスキャンダルや処分を受けた記録は見当たりません。ただし細かな資金処理ミスの指摘や、派閥ぐるみの問題への対応など、いくつか注意すべき事実があります。
政治資金記載漏れの件
まず政治資金面では、青木氏の資金管理団体や党支部を巡る報道が2016年にありました。2016年、青木氏の関連政治団体間でやりとりされた寄付金について、政治資金収支報告書への記載漏れがあると指摘されたのです⁵。
具体的には、自身の資金管理団体から党県支部への寄付が未記載であったなどのケースで、総額数百万円規模の記載漏れが判明しました。青木氏側は事務的なミスで悪意はないと説明し、その後速やかに報告書を訂正提出しています。
この件は行政指導で終わり、刑事処分などには至っていませんが、政治資金の管理体制に一時的に疑問符が付いたのは事実です。青木氏は「再発防止に努めます」とコメントを出し、事務スタッフを増強するなど対策を講じたとされています(地元紙報道)。
特定業界からの献金
また、政治資金の提供者に目を移すと、特定業界からの献金が散見されます。特に2010年には全国たばこ販売政治連盟・たばこ耕作組合から合わせて10万円の献金を受領しており、これはタバコ議連所属議員への業界支援の一環と見られます。
金額的には大きくありませんが、青木氏がタバコ産業寄りの姿勢を取っていたことを示すエピソードです。本人は健康増進の観点から喫煙規制強化にも一定理解を示しているものの、地域経済(たばこ耕作農家)の保護も必要としてジレンマを抱えているようです。
派閥裏金問題への対応
不祥事に関する経歴では、前述のとおり青木氏自身にスキャンダルはありません。しかし2023年に発覚した茂木派の裏金事件では嫌応なく渦中に置かれました。この事件は、青木氏も所属していた自民党茂木派が、政治資金パーティー収入を適切に会計記載せず一部を役員らに還流させていた問題で、2023年末に派閥事務局長らが政治資金規正法違反容疑で書類送検される事態となりました(報道)。
青木氏は派閥オーナーの故青木幹雄氏の長男という立場もあり、「派閥の顔」としてこの問題に向き合うことになります。2024年4月の衆院補選応援演説では、支持者を前に「派閥の裏金事件についてまずお詫び申し上げます。必ず改革を進め二度と起こらないようにする」と深々と頭を下げました。
さらに同年夏までに茂木派を自主退会し、無派閥となる意向を固めたとも報じられています。派閥の縁故で議員キャリアを積んできた青木氏にとって、派閥離脱は苦渋の決断だったと察せられますが、「政治とカネ」に厳しく臨む姿勢を示すことで信頼回復を図ろうとしたものです。
この対応については「身内に甘い」との批判と「よく決断した」という評価が交錯しましたが、少なくとも青木氏自身が倫理問題を軽視せず真摯に受け止めていることは確かでしょう。
社会的議題への立場変化
その他、倫理審査会沙汰のような案件は確認されていません。過去の言動に関しても、大きな失言やスキャンダルは伝わっていません。強いて言えば、かつて選択的夫婦別姓やLGBT法制について否定的な見解を示していた点が、一部有権者から批判されたことがあります。
2010年の毎日新聞アンケートで夫婦別姓に「反対」⁶、2016年には「どちらとも言えない」と回答した記録があり⁶、伝統的家族観を崩すことへの慎重姿勢がうかがえます。
ただ2022年には日本テレビの候補者アンケートで夫婦別姓に「賛成」票を投じ、同性婚についても「賛成」と回答するなど、スタンスをアップデートさせています(毎日新聞など他調査では玉虫色回答でしたが⁶)。
これら社会的少数者の権利拡大に対する立場の変化は、保守系議員としては柔軟な対応とも言えますが、一部からは「選挙向けのリップサービスでは」との指摘もありました。この点について、青木氏は明確な説明をしていませんが、少なくとも現在は多様な家族のあり方を認める方向に傾いています。
総合的な評価
総じて青木氏の政治資金・倫理面は、大過なく無難と言えるでしょう。致命傷となるスキャンダルは起こしていない一方で、派閥ぐるみの不祥事では連帯責任として矢面に立つ場面も経験しました。そうした際に逃げずに謝罪し改善を約束する姿からは、政治家としての責務感が感じられます。
有権者に対しても「襟を正す」と約束した以上、今後は一層クリーンな政治姿勢が求められるでしょう。政治資金収支報告書の透明性確保やスタッフ教育の徹底など、彼自身も対策を講じています。
中堅実力者ゆえに将来大臣など要職に就く可能性も高く、その際に足元をすくわれることのないよう、引き続き慎重な姿勢を貫くことが期待されます。
7. SNS・情報発信活動
現代の政治家にとってSNSによる発信は欠かせませんが、青木一彦議員の情報発信スタイルは対面重視のオールドファッションとデジタル活用のバランス型と言えます。地元演説会や後援会報を大事にする一方で、Twitter(現X)やFacebook、Instagramなども駆使して支持者との接点を広げています。
Twitterでの発信
青木氏がTwitterアカウント「@kazuhiko__aoki」を開設したのは2022年3月で、参院選直前でした。それ以前はブログやFacebookが中心でしたが、若者層への訴求を狙い党本部の方針もあってTwitterデビューしたようです。
フォロワー数は2022年7月の選挙時点で数百人規模でしたが、その後徐々に増え、2025年6月現在で約1,500人となっています。急激な伸びは見られず、いわゆる「バズる」投稿も多くはありません。これは青木氏の投稿内容が主に活動報告や地元の話題に限られ、全国的な注目を集める発信が少ないためでしょう。
しかし、フォロワーには地元有権者や地方議員が多く、質の面では濃い支持層との繋がりに貢献していると言えます。
投稿内容の特徴
Twitterの投稿例を見ると、選挙区を駆け回る様子や日常の出来事が混在しています。2022年の参院選期間中には街頭演説のライブ配信にも挑戦し、スタッフがスマートフォンで青木氏の訴えをリアルタイム中継しました。
また「現職の知名度はあるので、人柄PRの方が関心を持たれるはず」との陣営方針から、プライベートな横顔も積極的に発信しています。例えば地元での家族とのエピソードや愛犬「グー」の動画を投稿し、「お父さん頑張るぞ、グーやん。」といった微笑ましいコメントを添えるなど、人間味あふれる投稿が見られます。
これには「政治的な話題ばかりでは若者が見ない」という地元県議のアドバイスもあったようで、若年層へのアプローチに工夫を凝らしている様子です。
他のSNSプラットフォーム
Facebookでは主に支持者向けに活動写真付きの詳細報告を掲載しています。フォロワー数は約800人とTwitterより少ないですが、高齢の支援者はこちらをチェックしているとのことです。
Instagramもアカウントを持ち、2025年現在フォロワー約770人。Instagramでは投稿頻度は高くないものの、地元の風景写真やイベント写真を中心にアップしており、「#地方力」「#山陰の力が日本の力」などハッシュタグを付けて発信しています。ビジュアル重視のSNSでは、地域の魅力発信に徹して政治色を薄める戦略のようです。
双方向コミュニケーションへの取り組み
青木氏自身、SNSは「補完的なツール」と位置付け、対話型ツールとして活用しているようです。リプライ(返信)にはスタッフが目を通し、相談事や意見はできるだけ拾い上げるよう努めているといいます(事務所談)。
ただ直接返信は少なく、炎上を避けるためか踏み込んだ政治論争はSNS上で展開しません。あくまで情報発信と双方向の声集めが目的で、議論の場はリアルに求めるスタンスです。このためSNS上では穏当な表現が多く、論争的なテーマについては言及を避ける傾向があります。
例えば憲法改正や安全保障など青木氏の持論があるテーマでも、SNSでは触れず、公式サイトのメッセージや国会質問に委ねています。SNS担当者によれば、「誤解を招く恐れがある話題は140文字では難しい」との判断とのことです。
フォロワー数の推移と分析
フォロワー数の推移を見ますと、2022年の当選直後に一度増加(約500人増)し、その後は月数十人ペースで微増しています。2024年10月に官房副長官就任が発表されると注目度が上がり、一時フォロワーが1,000人を超えました。また2024年4月の補選期間中も演説動画拡散により若干増えています。
とはいえ、決して「インフルエンサー議員」ではなく、派手なパフォーマンスでフォロワーを稼ぐタイプではありません。地元紙の分析では「候補者のSNSフォロワーは多くて約3千、少ないと数十」とされ、青木氏の場合は中間程度ですが、オンライン選挙戦術にまだ手探り感があるようです。
党広報本部長の河野太郎氏(フォロワー245万人)からSNS講習を受け、「映える写真を選ぶこと」など助言も得ていますが、本人曰く「なかなか河野さんのようにはいかないね」と苦笑する場面もあったとか。
動画コンテンツへの取り組み
YouTubeについては、青木氏個人の公式チャンネルは確認できません。主に党や参議院の公式チャンネルで動画出演する形で、官房副長官就任後は記者会見のライブ配信に登場しています。選挙区の支援者向けにはDVDで活動報告を配布するなど、アナログとデジタルを組み合わせた発信にも工夫しています。
情報発信の総合評価
全体として、青木氏の情報発信は堅実で着実な支持層固めが中心です。奇をてらった発信や挑発的なツイートは皆無で、むしろ実直な人柄がにじむ内容に終始しています。その分バズりにくく地味ではありますが、「SNSでも火花を散らす」と報じられた参院選鳥取島根の戦いにおいても、青木陣営は着実にネット上の票固めを図り一定の成功を収めました。
SNSは万能ではないものの、広大な選挙区で全ての有権者に直接会えないハンディを補う手段として、青木氏は今後も地道に活用していくでしょう。支持者との心温まる交流から政策アピールまで、派手さはなくとも誠実なオンライン対話を重ねる姿は、地方代表の政治家らしい朴訥さと信頼感を醸成しているように思われます。
8. 公約実現度の検証
最後に、青木一彦議員の掲げた公約がどの程度実現しているか、そのギャップを検証します。結論から言えば、公約に掲げた目標のいくつかは道半ばであるものの、着実な前進が見られる分野もあります。青木氏自身の努力だけで叶うものと、政治環境や制度上ハードルが高いものが混在しており、その達成度には濃淡があります。
合区解消(東京一極集中是正)
公約の中で最も大きなテーマであった「合区解消(東京一極集中是正)」については、残念ながら未だ実現していません。参院の鳥取・島根合区は2025年現在も存続しており、青木氏が悲願とする憲法改正による合区解消も具体的な進展はありません。
安倍・菅・岸田各政権下でも参院選挙制度改革は先送りされ、青木氏が目標としていた「2025年までにどんな手段を講じても合区を解消」するとの公約は実現が危ぶまれています。青木氏は引き続き憲法審査会などでこの問題を提起していますが、他党の理解も必要なだけに、実現にはなお時間を要するでしょう。
ギャップ要因として、憲法改正自体が難航していること、さらに与党内にも選挙制度改革への温度差があることが挙げられます。合区問題に関して青木氏はほぼ唯一と言っていいほど強硬な態度を示してきましたが(2015年の退席行動など)、制度変更には至っておらず、この点は公約未達成と言わざるを得ません。
地方インフラ整備
一方、地方インフラ整備に関する公約は、部分的ながら実現が進んでいます。山陰道については、青木氏が政治生命を懸けると語っただけあり、2015年以降いくつかの区間開通や事業着手が実現しました。
例えば島根県内の山陰道・多伎朝山道路が開通し、鳥取県内でも尾道松江線と接続することで広域ネットワークが強化されています。青木氏は「山陰道の開通目途を示すことができた」と報告しており、全線供用に向けて道筋が立ったことを成果としています。
もっとも、依然未開通区間は残り、全線開通は数年先の見通しです。公約で謳った「日本海国土軸の形成」はまだ途上ですが、防災面でも重要な山陰道の整備に政府を本気にさせた点で、青木氏の寄与は大きかったと評価できます。
同様に、浜田港の国際ターミナル拡充や江の川水系の治水予算増額など、地元インフラ公約は着々と予算化されています。これらは公約実現度が高い分野と言えるでしょう。
地方産業振興策
地方産業振興策についても、部分的な成果が見られます。鳥取和牛のブランド化支援、島根のシリコンウェハー工場誘致など、公約で掲げた「世界と戦える産業育成」に繋がる動きが出ています。
青木氏の働きかけで2021年には大手半導体企業の関連工場が島根県に進出し、数百人の雇用が創出されました(地元紙報道)。また観光振興では、山陰両県の観光周遊ルート造成に向け、2023年に国の実証実験事業として「山陰観光トライアングルルート」が採択されました。
青木氏が観光庁に直談判して実現したもので、世界ジオパークや温泉地を結ぶモデルルート開発が行われています。これらは公約で掲げた観光立県・産業強化の一端が形になった例です。
ただ、農林水産業に関しては、依然厳しい状況が続いています。公約では所得向上や新規就農支援を訴えましたが、高齢化と後継者不足で離農が相次ぎ、農業産出額は横ばいか減少傾向です。青木氏も農業者との対話を重ねていますが、「すぐに成果が出るものではない」として長期戦の構えです。この分野は公約実現への道のりがまだ長いと言えます。
デジタル環境整備
デジタル環境整備の公約については、一部進展があります。鳥取・島根両県の光ファイバー網整備率はこの10年で飛躍的に向上し、2024年時点で両県とも世帯カバー率99%超を達成しました(総務省データ)。
これは青木氏が総務省に働きかけた離島・山間部通信補助金の効果もあり、ほぼ全ての地域でブロードバンド接続が可能となっています。デジタル田園都市国家構想関連では、島根県美郷町がスーパーシティ型国家戦略特区に選定され、遠隔医療や自動配送の実証実験が始まりました。
青木氏も現地を視察し「デジタル化で地域課題を解決するモデルケースになる」と期待を示しています(地元ニュース)。もっともデジタル人材確保や高齢者のデジタルデバイド解消など課題も残っており、公約で描いた「都市・地方間の格差是正」がすぐに果たされたわけではありません。
ただインフラ面は整ったので、今後は青木氏の言う「活用」のフェーズに移る段階です。これまでのところ、目立ったギャップは見られず、計画通り進んでいると言えるでしょう。
社会制度改革への取り組み
最後に社会制度改革系の公約について触れます。2022年の選挙公報には直接明記していませんが、アンケート等で示唆していた夫婦別姓や同性婚などについて、青木氏は「通称使用拡大で対応を」「慎重に議論すべき」など消極姿勢でした。
しかし、LGBT理解増進法が2023年に成立する際には党副幹事長として法案取りまとめに関与し、結果的に成立にこぎつけました。この点、公約との矛盾はないものの、以前の発言との変化があり、「態度を軟化させた」と評価する向きもあります。つまり、有権者への約束というより自身のスタンス変化ですが、公約と実績のギャップという観点では興味深い動きです。
公約実現度の総合評価
総合すると、青木氏の公約実現度は五分五分といったところでしょうか。合区問題のように自らの力だけでは動かせない壁もあり、達成困難な目標も掲げていました。一方で地道な努力で叶えた項目も少なくなく、例えばインフラ整備や通信網拡充などは確かな前進があります。
ギャップが生じた理由としては、目標のハードル設定が高かったこと、同時に外部要因(他党の反対や予算制約)が大きいものも多かったことが挙げられます。青木氏自身は「できない約束はしない主義」と述べていますが(選挙演説より)、政治は相手のあるものだけに、すべてを実現するのは容易ではありません。
それでも、公約に掲げた案件を議員連盟や委員会質問で執拗に取り上げ続ける姿勢は評価できます。まさに「継続は力なり」で、任期はまだ半分以上残っていますから、これから2028年までにどこまで公約を結実させられるかが焦点です。特に合区解消については、石破政権下で与党改憲案に組み込めるか、青木氏に課された使命はなお重いと言えます。
総括すれば、青木一彦議員は地元密着型の公約を掲げ、それを実現すべく粘り強く行動する政治家です。すべてが思い通りにはなっていないものの、一歩一歩着実に成果を積み重ねており、その姿は有権者の目にも堅実な働きぶりとして映っているのではないでしょうか。
公約とのギャップはさらなる挑戦の余地とも捉えられ、残る課題の実現に向け、引き続き青木氏の手腕が注目されます。
参考資料
公式資料・プロフィール
- 参議院議員紹介ページ「青木一彦」(参議院公式)⁷
- 青木一彦公式サイト「プロフィール」
- 自由民主党 鳥取県連サイト「青木一彦 議員紹介・政策」(2016年)
議会資料・議事録
- 第189回国会 参議院本会議(2015年7月24日)採決退席の報道
- 第192回国会 参議院本会議(2016年12月9日)部落差別解消推進法 採決記録
- 第208回国会 参議院本会議 議事録(2022年3月31日 沖縄振興特措法改正案 委員長報告)
- 第213回国会 政治改革に関する特別委員会 議事録(2024年6月 政治資金規正法改正案討論)
- 参議院会議録検索システム 発言統計(青木一彦)
報道資料
- 『朝日新聞デジタル』「【詳報】補選で自民・青木氏、派閥の裏金事件めぐり『まずおわび』」(2024年4月16日)
- 『山陰中央新報』「広大な鳥取・島根合区 各陣営 SNSでも火花 無党派層開拓 発信手探り」(2022年7月4日)
- 『山陰中央新報』「私の決意―地方の一次産業強化必要 青木一彦参院議員」(2023年1月24日)
- 『日本テレビ 選挙候補者アンケート(Zero選挙)』青木一彦 回答結果(2022年)
- 『NHK参院選2022候補者アンケート』鳥取・島根選挙区 青木一彦 回答(2022年6月)²
その他
- 文部科学省 有識者会議「革新的将来宇宙輸送システム実現に向けたロードマップ検討会 議事録」(第2回, 2020年12月)¹
- 総務省 地方創生関係交付金データ・ブロードバンド整備状況(2022年)
- 青木一彦公式SNS(Twitter、Facebook、Instagram)投稿内容
注釈¹ 革新的将来宇宙輸送システム実現に向けたロードマップ検討会(第2回) 議事録:文部科学省
² 青木一彦 - Wikipedia
³ 革新的将来宇宙輸送システム実現に向けたロードマップ検討会(第2回) 議事録:文部科学省
⁴ 革新的将来宇宙輸送システム実現に向けたロードマップ検討会(第2回) 議事録:文部科学省
⁵ 青木一彦 - Wikipedia
⁶ 青木一彦 - Wikipedia
⁷ 青木一彦 - Wikipedia