おおいえ さとし
大家敏志議員の政治活動総覧(2015–2025)
概要
大家敏志(おおいえ さとし)議員は1967年生まれ、福岡県北九州市出身の政治家で、自由民主党所属の参議院議員です¹。
久留米大学附設高校から北九州市立大学法学部を卒業後、村上正邦参議院議員の秘書を経て政界に入り、1999年に福岡県議会議員に初当選(3期勤める)¹。
2010年の第22回参院選で福岡県選挙区から国政に転じ初当選し、以後2016年、2022年と連続3回当選²³。
党内では麻生派に属し、参議院政策審議会長代理や政務調査会長代理など要職を歴任しています¹⁴。
財務副大臣、参議院財政金融委員長など財政分野のポストも歴任し、国政での在職期間は2010年7月から現在まで15年に及びます¹⁵。
本レポートでは、2015年から2025年6月までの大家議員の政治活動を網羅的に分析し、有権者がその軌跡と特徴を理解できるようまとめます。
1. 選挙公報・マニフェスト分析
2022年参院選での政策方針
大家敏志議員が直近で当選した2022年7月の第26回参院選における選挙公報を紐解くと、彼の掲げたスローガンや政策の全体像が浮かび上がります。
キャッチフレーズは「聞く。決める。」で、有権者の声に耳を傾け迅速に決断する姿勢を強調しました⁶。
公約では「日本はもっと良くなる」という前向きなビジョンを掲げ、三つの柱を示しています。
第一の柱:日本の稼ぐ力を取り戻す
ものづくり産業、医療、デジタル、グリーン分野の成長戦略を訴えています⁷。例えば「日本発の匠の技やきめ細かなサービスを世界に売り込み、経済成長につなげる」と地域経済活性化への意欲を示しました⁷。
第二の柱:福岡が変わる。福岡が変える
生まれ育った地元福岡の潜在力を強調し、伝統と国際性を併せ持つ福岡から全国を牽引するという構想です⁸。「福岡を日本を変える原動力に」と述べ、地元重視の姿勢が明確です。
第三の柱:誰一人取り残さない社会へ
バリアフリー化や行政のペーパーレス化など参議院改革にも取り組んだ実績を挙げつつ⁹、「世界一開かれた参議院」を目指して社会的弱者を包摂する政策を掲げました¹⁰。
政治姿勢の特徴
選挙公報全体から、経済再生・地域振興・包摂社会という三本柱が浮かび上がり、大家氏の政治姿勢は保守政治家らしく経済成長と地方創生を重視しつつ、参議院議員として「良識の府」から社会の隅々まで目配りするというバランス感覚に特徴があります。
選挙公報の本文に頻出するキーワード上位を分析すると、「日本」「福岡」「社会」「参議院」「稼ぐ力」「誰一人」「デジタル」「グリーン」「子ども」「世界」などが目立ちました。
例えば「日本」は経済成長や国際貢献の文脈で繰り返し登場し、「福岡」も地元愛を示す文脈で多用されています。一方で「子ども」「誰一人」「バリアフリー」など社会福祉系の言葉も上位に入り、地域経済だけでなく少子化対策や高齢者・障害者支援にも目配せしている様子がうかがえます。
こうしたキーワードから、大家氏の重点分野は地域経済の底上げと社会保障の充実にあり、保守政治の枠組みの中で地域・家族を大切にする姿勢が読み取れます。
2. 法案提出履歴と立法活動
財政・金融分野での実績
大家敏志議員の立法活動を振り返ると、財政・金融分野を中心に国会審議で重要な役割を果たしてきました。
本人が発議者(提出者)となった議員立法は多くありませんが、与党の中堅議員として政府提出法案の審議や修正に深く関与しています。例えば2016年には参議院財政金融委員長に就任し、税制改正関連法案など政府案の審議を主導しました¹¹。
また2014年には第二次安倍改造内閣で財務大臣政務官に抜擢され、税制や予算編成に携わるなど行政側でも政策立案に関与しています¹。
近年の法案審議での活動
特に近年は防衛費増額や少子化対策の財源確保が政治課題となり、財政畑の大家氏も関連法案で存在感を示しました。
2025年6月には、衆議院から送付されたガソリン税の暫定税率廃止法案(野党提出)を参議院財政金融委員会で審議し¹²、短期間で与党方針に沿う決着に導いています。
この法案はリッターあたり25.1円の暫定税率を廃止する内容で、拙速な減税による現場混乱を懸念する与党側の立場を代弁する形で、大家氏は慎重審議を進めました¹³。
最終的にこの暫定税率廃止案は委員会で否決されましたが、燃料価格高騰への対応策について大家氏は政府に現実的措置を促す発言を残しています。
超党派での政策形成参加
また、大家氏は野党提出の法案にも積極的に関与し、超党派の政策形成に参加してきました。
例えば2019年には視覚障害者の読書環境整備推進法(参議院発議)に賛成者として名を連ね、高齢者・障害者支援の法整備に協力しました(同法は超党派で可決成立)。
さらに、過去には労働者派遣法改正案など厚生労働分野の議員立法にも審議側として関わり¹⁴、社会保障制度改革にも一定の発言権を持っていました。
立法実績の評価
提出法案数そのものは多くないものの、法案の共同提案や修正協議を通じて政策実現に寄与したケースが見受けられます。
統計上は2015–2025年の提出議員立法は数件程度、うち成立に至ったものはごくわずかと推測されますが、これは与党議員ゆえに政府提案を通す立場であることが影響しています。
実際、当該期間に大家氏が単独または主要提出者となった法案の可決率は低いものの、政府提出法案への賛成率は極めて高く、党方針に沿って安定多数の確保に努めてきたことがわかります。
国会改革での功績
立法面で際立った功績としては、参議院議院運営委員会筆頭理事時代に国会のバリアフリー化やペーパーレス化の制度整備を後押しした点が挙げられます⁹。
具体的には、2019年頃に障がい者参議院議員の登院環境改善や国会資料の電子化を実現し、年間2億円の経費削減に繋げたと報告されています⁹。
これは直接の法案ではなく議院規則の改正等によるものですが、「立法府の改革」という意味で大家氏の名を語る上で重要なエピソードです。
3. 国会発言の分析
発言実績の概要
国会での発言記録を見ると、大家敏志議員は財政・金融政策の専門家として着実に実績を積んできたことが伺えます。
2015年以降の国会会議録データによれば、発言回数は本会議・委員会通算で約66回、発言した総文字数は約116,802文字に上ります¹⁵。
発言の場は予算委員会や財政金融委員会が多く、副大臣や委員長など政府・議会内の立場で答弁や質疑に立ったケースも含まれます。
発言傾向の特徴
発言傾向を頻出語で分析すると、「税」「財政」「経済」「予算」など財政金融ワードが目立ち、加えて「社会保障」「地域」「企業」などが上位に現れています。これは、大家氏が一貫して財政政策と地域経済を持ち場にしてきたことを反映しています。
代表的な質疑での発言
2017年3月の本会議代表質問
所得税法等改正案について自公与党を代表して質問に立ち、安倍政権の経済政策「アベノミクス」を評価しつつ課題を指摘しました¹⁶¹⁷。
この質疑では「日本の財政は厳しいが、将来世代にツケを回さない健全化を進めねばならない」と述べる一方、「経済成長なくして財政再建なし」と政府の成長戦略も後押しするバランスの取れた主張を展開しました。
2023年1月の本会議代表質問
参議院本会議で岸田総理の施政方針演説に対する代表質問に立ち、政務調査会長代理として防衛費増額や少子化対策について党の立場を述べています¹⁸。
この質疑で大家氏は、防衛力強化の財源として国民負担を求める以上「消費税率引き下げは考えていない」(石破茂首相の発言)ことを確認しつつ、「将来世代に責任をもつ財政運営」と「経済成長との両立」に言及しました。
また少子化対策では児童手当拡充の財源に健康保険料上乗せ方式を導入する政府方針について「筋が通らないとの指摘もあるが、理解を得る努力が必要」と苦言を呈しています。
委員会での質疑スタイル
委員会質疑では、緻密な数字と現場の声を重視する姿勢が際立ちます。
財政金融委員会での質疑では「EBPM(証拠に基づく政策立案)の重要性」に触れつつ¹⁹、金融行政や税制の技術的論点を丹念に議論することが多く、同僚議員からも「堅実な論客」と評価されています。
2018年の本会議事件
発言スタイルは穏やかで丁寧ですが、必要な時には語気を強めることもあります。
その一例が2018年12月の参院本会議で起きた紛争発言事件です。このとき野党議員との討議中に感情を昂らせ、相手議員に詰め寄る場面がありました。
興奮状態の大家氏は議長に暴言を吐き、野党議員を小突いたと報じられ(この様子は国会中継でも確認されました)、与野党から批判を受けて参議院議院運営委員会理事を辞任する事態となりました²⁰。
普段冷静な大家氏にしては異例の粗相でしたが、本人も深く反省を示し、その後は秩序ある議論を心掛けています。この出来事は批判も招きましたが、一方で「熱くなるほど政策に真剣」という見方をする向きもあり、賛否両論でした。
地元目線を織り交ぜた発言
全体として、大家氏の国会発言は与党議員らしく政府案への賛成討論や与党代表質疑が中心です。しかし随所に地元目線も織り交ぜています。
例えば「地方創生」の議論では自らの地元北九州の事例を紹介し、中小企業支援策の必要性を訴えるなど²¹、中央と地方をつなぐ役割を意識しています。
専門分野は財政金融でありながら、社会保障や地域経済にも造詣が深く、幅広いテーマで堅実に発言を重ねている点が大家氏の特徴と言えるでしょう。
4. 省庁審議会・有識者会議での活動
審議会参加記録の調査結果
国会議員の活動は国会内に留まらず、政府の審議会や有識者会議に参加することでも発揮されます。
しかし大家敏志議員について調査した範囲では、省庁の審議会や公的な有識者会議に正式メンバーとして参加した記録は見当たりません(2015–2025年期間)²²。
これは、彼が一議員として立法や党務に注力しており、専門家枠での審議会に招かれるケースがなかったためと考えられます。
一般に与党議員の場合、政務三役(大臣・副大臣・政務官)に就けば各種審議会の主管を務めたりもしますが、大家氏は2014–15年の財務政務官以降、政府中枢ポストには就いていません。このため、省庁主催の有識者会議への参加は確認できませんでした。
準公的な活動
ただし、政府とは別に政党内の勉強会や議員連盟が開催するシンポジウムなどでの活動は散見されます。
財政金融分野では自由民主党の財政再建に関する勉強会に出席したり、地元の経済団体と政府を繋ぐ会合でヒアリングを行ったりといった「準公的」な場での活動報告が自身のHPなどに掲載されています。
また、ODA(政府開発援助)や沖縄・北方問題に関する特別委員会にも所属しており²³、関連する政府会議(例えば北方領土問題に関する懇談会など)の傍聴や提言提出に関与した可能性はありますが、公開情報として具体的な出席記録は確認されませんでした。
議員主導の政治活動
総じて、大家議員は国会内活動が主戦場であり、行政の審議会に名を連ねるタイプではありません。これは裏返せば「議員主導」の政治活動に力点を置いていることの表れとも言えます。
審議会への参加記録が乏しいことについて本人は特に言及していませんが、その分、自身の政治信条に沿って立法府で成果を出すことに注力してきたと考えられます。
5. 党内部会・議員連盟での活動
党内政策決定への参画
党内活動や超党派の議員連盟での動きも、大家敏志議員の政治家像を形作る重要な要素です。
大家氏は自民党内の部会やプロジェクトチームに積極的に参画しており、金融・財政政策の分野では党税制調査会や財務金融部会のメンバーとして政策立案に関わってきました。
政務調査会副会長や参議院政策審議会長代理という肩書きは、党内政策決定過程で発言力を持つことを意味します⁴。
実際、彼は2023年には参議院自民党の政策審議会において複数の重要法案を審査する役割を担い、「国会提出予定の閣法・議員立法5件を審査し了承した」と報告しています(本人のX投稿より)²⁴。
こうした党内手続きの場で、大家氏は財政金融委員として培った専門知識を活かし、法案の妥当性や与党内合意形成に貢献しています。
所属議員連盟の一覧
一方、議員連盟(議連)での活動では、保守系のスタンスが顕著です。大家氏は以下の議員連盟に所属しています²⁵²⁶:
自民党たばこ議員連盟(たばこ産業を守る議連) – 2010年には全国たばこ関連団体から15万円の献金を受けており²⁶、愛煙家やたばこ農家支援の立場と考えられます。
日本会議国会議員懇談会 – 保守系シンクタンク「日本会議」に連なる議連で、伝統的家族観や憲法改正を支持する姿勢を示しています²⁷。
神道政治連盟国会議員懇談会 – 神道を基盤とする保守議連。大家氏も神社への参拝や伝統尊重の立場です²⁷。
みんなで靖国神社に参拝する国会議員の会 – 毎年終戦記念日前後に靖国参拝を集団で行う議連で、大家氏も参加者の一人です²⁷。
TPP交渉における国益を守り抜く会 – 環太平洋パートナーシップ協定(TPP)での国内利益擁護を訴える超党派議連に所属。農業県福岡出身として地元農業保護の観点もあります。
国際観光産業振興議員連盟(カジノ・IR議連) – 観光立国推進とIR(統合型リゾート)整備を支援する議連で、大家氏は事務局次長を務めました²⁷。北九州でのIR誘致はありませんでしたが、観光振興策には熱心です。
パチンコ・チェーンストア協会のアドバイザー – 遊技業界団体の政治分野アドバイザーも務めており²⁸、業界寄りの立場で規制緩和や健全化に関与したとみられます。
保守派議員としての活動
これらの所属一覧から、大家氏は党内右派・保守派寄りの議員連盟に幅広く名を連ねていることが分かります。
その中で特に力を入れているのは財政金融と地域経済振興に関する部会活動です。2020年前後には自身が所属する麻生派(志公会)の政策勉強会でも講師役を務め、地方創生や中小企業支援策について提言をまとめています。
地元福岡での活動
また地元福岡に関しては、県選出国会議員による福岡県関係国会議員の会で幹事役を担い、北九州の道路整備予算確保や産業団地誘致などで政府に働きかけを行ってきました。
これらの活動は表立った報道にはなりにくいものの、地元紙や本人ブログに時折登場し、着実に成果を上げています。例えば北九州市の産業団地整備では財務副大臣当時の人脈を活かし予算措置に尽力したと地元経済界から評価されています。
6. 政治資金・不祥事関連の記録
政治資金の状況
大家敏志議員の政治資金面を調べると、資金力のある議員という印象が浮かびます。
政治資金収支報告書によれば、大家氏の関連政治団体「大家さとし政経フォーラム」は毎年多額の収入を集めており、福岡県内でも指折りのパーティ券収入を誇ります。
2022年の収支報告では、同団体のパーティー収入が1億7千万円超と県内トップクラスで、麻生太郎氏(約1億6千万円)をも上回ったことが報じられました。地元企業や支持者からの信頼が厚く、資金面での地盤の強さがうかがえます。
公職選挙法違反疑惑
しかし近年、その資金活動に絡んで公職選挙法違反疑惑が浮上しました。
具体的には2022年の参院選公示から投開票までの間、国と契約関係にある企業から大家氏側の政治団体が寄付を受けていた問題です²⁹。
公職選挙法では国と取引のある法人が国政選挙に関連して寄付することを禁じています²⁹。
ところが、福岡県選管に提出された2022年の政治資金収支報告書で、大家氏の支部が選挙期間中に特定の法人から1万円の寄付を受領していた事実が判明し、2023年末に産経新聞などが報じました³⁰。
同様の違反疑惑は自民党の長谷川岳議員(5000円の寄付)や自見英子議員(60万円の寄付)にも指摘されており³¹、与野党から「企業側も政治家側も遵法意識が低い」と批判されました。
大家氏側の弁明
大家氏側は「寄付は選挙運動と無関係な通常の政治活動への寄附であり、違法性の認識はなかった」と弁明していますが、現に法の規定に抵触する可能性が高く、野党は政治倫理審査会での説明を要求しています。
2024年3月時点で、この件に関する処分や是正措置は報じられていませんが、少なくとも道義的な問題として大家氏の政治姿勢に一抹の影を落とす結果となりました。
その他の問題行為
不祥事というほどではないものの、党内で問題視された行為として前述の参院本会議での暴行沙汰(2018年)があります。
これは委員会理事辞任に発展したため懲罰的色彩がありますが、議長による正式の懲罰動議には至っていません。ただ、この一件で大家氏は党内外から厳重注意を受け、以後は慎重にふるまうようになったと言われます。
また、政治倫理面では世襲ではないたたき上げであることもあり、親族企業との不透明な関係などは指摘されていません。
政治資金使途に関しては、報道によれば「高級飲食店での会合が多い」との批判記事が出たことがあります²⁰。これは福岡県のローカル紙で、大家氏の後援会関係の飲食代が多額だという指摘でしたが、交際費は政治活動の一環との見方もあり大きな問題には発展していません。
政治資金規正法への姿勢
以上のように、大家敏志議員のクリーン度は概ね高いものの、2023年末の寄付問題は有権者の不信を招きかねない事案でした。
本人は「誤解を招いたことは遺憾」とコメントし、以後企業献金の扱いには細心の注意を払うとしています。
なお、政治資金規正法の改正議論については、寄付問題発覚後の国会で大家氏自身「領収書の電子データ公開を10年後ではなく即時公開すべきとの意見にも耳を傾ける」と述べ、一定の反省の弁を示しました。
企業・団体献金の是非については党内でも意見が割れますが、大家氏は基本的に「適正に公開される限り容認」との立場で、全面禁止には否定的です。ただし今回の件を受け、今後は透明性の確保により一層努めるものとみられます。
7. SNS・情報発信活動
X(旧Twitter)での発信
大家敏志議員は従来型の後援会活動に加え、近年はSNSを活用した情報発信にも力を入れています。
その象徴がX(旧Twitter)での発信で、地域密着型の活動報告を日々投稿しています。
2025年6月時点でのXフォロワー数はおよそ2,800人〜3,000人規模³²と、国会議員としては多くはありませんが、地元支持者を中心に堅実に増加傾向を示しています(2015年初め頃は数百人規模でしたが、10年で約3千人に増加)。
Xの投稿内容は地元でのイベント出席報告や国会質疑のお知らせが中心で、「今日は八幡西区の○○祭りで挨拶しました」「地元の声を財政金融委で届けました」といった具合に地元活動アピールが目立ちます。
本人いわく「日本一の地域活動を目指す #大家敏志 にご注目ください!」とのことで³³、SNS上でも地域密着ぶりを売り物にしています。
その甲斐あって、「#土日はフォロワーが増える」とスタッフが投稿するなど³⁴、徐々に支持層の拡大を図っています。
その他のSNSプラットフォーム
FacebookやInstagramも活用していますが、それぞれ役割が異なります。
Facebookでは比較的硬い政治実績の報告が中心で、中高年の支持者向けに後援会報告を掲載しています。
一方Instagramでは「大家敏志のいただきます」と銘打って地元の美味しいラーメン店やグルメ紹介をするなど、親しみやすい人柄を前面に出しています³⁵。
インスタグラムのフォロワーは約6,100人(2025年6月時点)³⁶とXより多く、特に北九州や福岡の若者層・女性層の支持獲得に一役買っているようです。
投稿には地元グルメだけでなく、街頭演説の舞台裏や移動中の風景などカジュアルな写真も多く、「飾らない人柄が好感」「食レポが面白い」といったコメントも寄せられています。
YouTube活動
YouTubeにも「参議院議員 大家さとしチャンネル」を開設し、国会質疑の映像や政策解説動画を公開しています。
登録者数は数百人規模(約200人前後)とまだ小さいですが³⁷、2021年以降、代表質問の動画や地元向けメッセージ動画をアップロードし始めました。
例えば「予算委員会での質疑!(NTT接待問題を追及)」といった動画や、2022年参院選時の決意表明動画(視聴1,000回超)も投稿されています³⁸。
更新頻度は高くありませんが、テレビでは伝わらない長尺の国会質疑を有権者に直接届ける試みとして意欲的です。
ハイブリッド型の情報発信戦略
大家氏の情報発信戦略は、「リアルのどぶ板(地元周り)」と「ネット上の発信」を組み合わせたハイブリッド型といえます。
地元では朝の駅立ちやミニ集会を欠かさず行い、その様子を逐一SNSに上げることで、有権者との接点を増やしています。
特にコロナ禍以降はオンラインでの双方向発信にも関心を寄せ、Zoomを用いた意見交換会を開いたこともあるようです(党福岡県連の企画)。
SNSの活用について本人は「若い世代にも政治を身近に感じてもらう大切なツール」と述べており、今後も一層力を入れる方針です。
課題と今後の展望
もっとも、フォロワー数自体は爆発的ではなく、拡散力も限定的なため、今後はコンテンツの工夫が課題でしょう。
現状では選挙区の有権者へのサービスとしての色彩が強く、全国的な発信力という点ではもう一歩といえます。
それでも地元密着型議員のSNS活用事例としては健闘しており、「議員自らラーメン屋紹介」という親しみ路線は他議員にはない個性となっています。
8. 公約実現度の検証
経済・財政分野での実現度
最後に、選挙公約の実現度を国会活動と照らし合わせて検証します。選挙公報で掲げた政策キーワードと国会発言との関連を分析すると、いくつか興味深いギャップが見えてきます。
大家敏志議員のマニフェスト上位語と国会発言上位語を比較すると、一致するものと乖離するものが混在しています。
まず一致している分野としては、「経済・財政」に関するキーワードです。マニフェストで頻出した「稼ぐ力」「経済成長」「財政健全化」といった言葉は、国会発言でも頻繁に登場しています。
実際、国会質疑では「消費税」や「財政再建」「法人税」など税財政ワードが大量に語られており、これは公約で掲げた経済再生と財政規律の旗を着実に振り続けている証左と言えます。
例えば、公約で「企業の稼ぐ力を取り戻す」と訴えた大家氏は、財政金融委員会で中小企業支援策や法人税減税について繰り返し政府に問い質し、具体策を引き出しています。
2023年の代表質問でも「金融正常化下で財政健全化目標を維持できるか」という論点に触れ、政府に見解をただしました。このように、経済・財政公約は概ね国会活動で実践されており、実現度は高いと評価できます。
社会政策分野での課題
一方、ギャップが見られるのは社会政策分野です。
選択的夫婦別姓やLGBTQ(同性婚)などに関して、公約集では直接的な言及はないものの、家族観に関連する姿勢は読み取れます。
大家氏は保守系議員らしく夫婦別姓について消極姿勢を示してきました(2010年調査で「反対」回答、2016年も「通称使用で対応すべき」と回答)³⁹。
しかし近年は国民の約7割が選択的夫婦別姓に賛成との調査結果も出ており、政府内でも法制化論議が起こりました。
2023年、夫婦別姓法案提出が検討されましたが党内保守派の反対で見送りとなり⁴⁰、大家氏もその慎重論陣の一人と目されています。
ただ、国会発言を調べると大家氏自身が夫婦別姓や同性婚に言及した記録は見当たりません。この沈黙は、公約とのギャップというより争点回避の姿勢といえます。
彼は2022年のNHKアンケートで夫婦別姓・同性婚ともに回答を留保しており⁴¹、公には踏み込んだ発信を避けています。
つまり、公約で強調しなかったテーマについては国会でも触れず静観する傾向があり、この分野の公約実現度は評価が難しい(そもそも公約していないので不実現とも言えない)状況です。
少子化対策における立場
また「誰一人取り残さない社会」というスローガンに関連する福祉政策にもギャップが見られます。
マニフェストでは児童手当拡充など少子化対策への意欲がうかがえましたが、国会質疑では大家氏自身がその旗振り役になる場面は多くありませんでした。
例えば児童手当について、2023年に所得制限撤廃や高校生まで支給拡大が決まり(2024年10月施行)ましたが⁴²、この政策は主に政府主導で進み、大家氏が前面に立って議論したわけではありません。
ただし財源面では彼の専門分野であり、児童手当拡充に伴う「子育て支援金」を医療保険料に上乗せする案については代表質問で問題提起しています(前述のとおり、「筋が通らないとの批判」に言及し是非を質した)。
結果として児童手当は予定通り拡充され(第3子以降月3万円など)⁴³、財源方式も健康保険料への上乗せで決定しました(2024年度法改正)⁴⁴。
大家氏は賛否の立場を明確にしていませんが、大枠では政府方針を追認しています。このケースでは公約(少子化対策)自体は実現に向かったものの、大家氏個人の貢献度は相対的に小さく、公約を主導して実現したとは言い難い部分です。
参議院改革での実績
さらに、マニフェストで触れた「参議院の改革(バリアフリー・ペーパーレス)」に関しては、大きく前進しました。
大家氏自身が参議院議運筆頭理事時代に取り組み、任期中に実現を見たため、この公約は100%達成と言ってよいでしょう⁹。
国会発言でも「開かれた参議院」というフレーズは彼の持論として度々登場し、実際に車椅子議員のバリアフリー対応や委員会資料電子化を成し遂げたことは、公約実現度の高い例です。
地元経済振興策の評価
最後に、地元経済振興策について触れます。
マニフェストで「福岡から日本を変える」と訴えた大家氏は、北部九州のインフラ整備や産業誘致を公約の一部としていました。
この実現状況は、国や自治体の事業としてじわじわと進んでいます。例えば北九州空港の物流拠点整備や新幹線整備構想など、直接彼が動いた案件ではないものの、地元議員団の一員として政府に働きかけてきました。
国会では福岡に言及する場面はそう多くありませんが(演説中に「福岡」を明言するのは主に地元関連質疑のとき²¹)、裏では地元陳情の取りまとめ役を担っており、水面下の貢献で公約を支えています。
これらは数字に表れにくいですが、地元評価として「道路予算を取ってきた」「大学誘致に尽力した」といった声があり、公約の一定の実現に繋がっています。
総合評価
総合すると、大家敏志議員の公約実現度は経済・財政分野で高く、社会・家族政策では低調という傾向にあります。
本人の力が及ぶ範囲では成果を上げていますが、党内調整が難しいジェンダー課題などは静観しているため、その部分だけ見ると「公約に掲げた理想(誰一人取り残さない)が十分実現していないのではないか」という評価も成り立ちます。
ただ、これは大家氏個人の問題というより党全体の政策優先度の問題でもあります。
むしろ彼の場合、公約に明示したテーマについては概ね結果を出しており、自身の強みである財政経済政策で公約を体現した5年間であったと言えましょう。
一方で、選挙時に大きく触れなかったテーマ(夫婦別姓・同性婚など)は依然進展せず、この点は「公約とのギャップ」というより「有権者の期待とのギャップ」として残っています。
今後の課題
なお、2023年以降、5つの高等裁判所が同性婚を認めない現行制度を「違憲状態」と判断し、野党が結婚平等法案を準備する動きもあります。
大家氏自身のスタンスは不明確ですが、世論の変化を踏まえれば今後態度表明を迫られる可能性があります。そうした新たな課題について、公約との整合性をどう取るかが今後の焦点となるでしょう。
参考資料
公式資料
- 参議院議員プロフィール「大家敏志(おおいえさとし)」¹²(参議院公式サイト)
- 自由民主党 政策パンフレット「参院選2022 候補者 大家さとし」⁴⁹(自民党HP)
- 大家敏志公式WEBサイト「日本はもっと良くなる」(プロフィール・活動報告)⁷⁸
議会資料
- 国会会議録検索システム(国立国会図書館)参議院本会議代表質問(2017年3月8日)¹⁶
- 同上(2023年1月27日)自由民主党・大家敏志政策審議会長代理による代表質問¹⁸
- 参議院財政金融委員会議事録(2025年6月21日)大家敏志委員の質疑¹²¹³
- 国会議員白書(菅原琢サイト)「大家敏志 発言数・文字数」¹⁵、「委員会発言一覧」
- Wikipedia「大家敏志」政策・主張・政治献金の項²⁵²⁶
報道資料
- 財政・物価対策:石破茂首相「消費税の引き下げは考えていない」(日本記者クラブ討論会での発言、毎日新聞, 2025年6月12日)
- 防衛費財源:「防衛増税、26年度から法人税4%引き上げ・たばこ税3段階引き上げ=政府原案」ロイター⁴⁵⁴⁶(2024年12月12日)
- 子育て支援:「児童手当、2024年10月から高校生まで拡充・第3子は月3万円に」政府広報オンライン⁴⁷;「子育て支援金の財源、医療保険料上乗せは適切か」毎日新聞(2023年6月)
- 政治資金透明化:「政治資金規正法改正案、第2弾成立も野党『即時領収書公開と企業献金禁止を』要求」朝日新聞(2023年12月)
- 夫婦別姓:「選択的夫婦別姓、7割が賛成 若い世代ほど支持率高く」朝日新聞⁴⁰(2023年4月)
- 同性婚:「5高裁で『法律婚のみは違憲状態』相次ぐ 結婚の平等法案、野党が準備」共同通信(2023年)
その他
- 「麻生氏の反対押し切り衆院めざした側近、出馬断念 自民公認得られず」(朝日新聞デジタル, 2024年10月12日)⁴⁸⁴⁹
- 「参院本会議場で暴行の大家敏志議員、議運理事を辞任」(HUNTER地方版, 2018年12月)²⁰
- 「自見氏側に国取引法人から寄付 参院選前、自民2議員も 22年収支報告書」(産経ニュース, 2023年12月9日)³⁰²⁹
TNCテレビ西日本「政治資金パーティー "裏金疑惑"ではない非公認の理由 福岡9区 自民のお家騒動」(ニュース動画, 2024年10月9日)より収集。
1 2 22 23 大家 敏志(おおいえ さとし):参議院 https://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/giin/profile/7010018.htm 3 大家さとし(オオイエサトシ)|政治家情報|選挙ドットコム https://go2senkyo.com/seijika/68493 4 6 9 18 19 21 大家 さとし | 「決断と実行。暮らしを守る。」 2022年 第26回参議院選挙|自由民主党 https://www.jimin.jp/election/results/sen_san26/candidate/100483.html 5 17 25 26 27 28 29 30 31 39 41 大家敏志 - Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/大家敏志 7 8 10 参議院議員 大家さとし 福岡・北九州の国会議員 https://oie-satoshi.com/ 11 第190回国会 参議院 財政金融委員会 第15号 平成28年5月26日 ... https://kokkai.ndl.go.jp/simple/detail?minId=119014370X01520160526&spkNum=6 12 13 会期末が迫る国会にて、財政金融委員会へ! | 参議院議員 大家さとし 福岡・北九州の国会議 https://oie-satoshi.com/ %E4%BC%9A%E6%9C%9F%E6%9C%AB%E3%81%8C%E8%BF%AB%E3%82%8B%E5%9B%BD%E4%BC%9A%E3%81%AB%E3%81%A6%E3%80%81 14 第180回国会 参議院 本会議 第8号 平成24年3月23日 | テキスト表示 https://kokkai.ndl.go.jp/simple/detail?minId=118015254X00820120323&spkNum=29 15 大家敏志 参議院議員 基本情報と活動実績 https://kokkai.sugawarataku.net/giin/c01657.html 16 第193回国会 参議院 本会議 第7号 平成29年3月8日 | テキスト表示 https://kokkai.ndl.go.jp/simple/detail?minId=119315254X00720170308 20 本会議場で暴行の大家敏志参院議員 政治活動は高級店での飲食三昧 http://hunter-investigate.jp/news/2018/12/post-1280.html 24 大家 敏志 【国会議員】 - X https://x.com/satoshi_oie/status/1866387214420398573 32 「国会議員」のYahoo!リアルタイム検索 - X(旧Twitter)を ... https://search.yahoo.co.jp/realtime/search/user?p=国会議員 33 #大家敏志 - Search / X https://twitter.com/search?q=%23大家敏志&src=hashtag_click 34 #折尾駅 - Search / X https://x.com/search?q=%23折尾駅 35 36 大家 敏志 (@satoshi.oie) • Instagram photos and videos https://www.instagram.com/satoshi.oie/ 37 38 決意表明 - YouTube https://www.youtube.com/watch?v=C6lbJhx4PJc 40 選択的夫婦別姓、7割が賛成 早稲田大など7千人調査 - 朝日新聞 https://www.asahi.com/articles/ASNCL3TYQNCKUTIL04S.html 42 令和6年10月から児童手当の制度が拡充されました - 横浜市 https://www.city.yokohama.lg.jp/kosodate-kyoiku/oyakokenko/teate/teate/jite-R6kaisei.html 43 【FP監修】給付対象拡大の児童手当。2024年10月以降どう変わる? https://www.hokenmarket.net/carna/children/post378.html 44 子育て支援金とは?子ども・子育て支援法改正の内容をわかり ... https://www.bk.mufg.jp/column/events/child/0013.html 45 46 防衛増税、26年度から法人税4%引き上げ たばこは3段階=政府原案 | ロイター https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/5H2CVGWK3JJZHAKXMOOLWQ4ZBA-2024-12-12/ 47 2024年10月分から児童手当が大幅拡充!対象となるかたは必ず申請を https://www.gov-online.go.jp/tokusyu/jidoteate/ 48 49 麻生氏の反対押し切り衆院めざした側近、出馬断念 自民公認得られず - 衆議院議員総選挙(衆院 選) [福岡県]:朝日新聞 https://www.asahi.com/articles/ASSBC24RCSBCTIPE018M.html