いのうえ よしゆき
井上義行議員の政治活動総覧(2015–2025)
概要
井上義行(いのうえ よしゆき)議員は神奈川県小田原市出身、1963年生まれの参議院議員(比例代表)です¹²。
国鉄機関士から国家公務員に転じ、内閣官房長官秘書官や第一次安倍内閣での首相秘書官など異色の経歴を持ちます³。2013年にみんなの党公認で初当選し、同党解党後は新党「日本を元気にする会」を結党して国会対策委員長を務めました⁴。
2015年末に同会を離党して自民党会派入りし、2019年には参院選に自民公認で出馬するも一度落選します⁵。2022年7月の参院選で比例区から返り咲き2期目となりました⁶。
在職期間中は拉致問題担当の要職や参院委員会理事を歴任し、安倍晋三元首相の側近としても知られます⁷。本レポートでは2015年から2025年6月までの活動を対象に、井上議員の政策・立法活動を多角的に検証し、有権者がその歩みを立体的に把握できるようまとめます。
1. 選挙公報・マニフェスト分析
井上議員が直近で当選した2022年参院選比例区の選挙公報をひもとくと、そのスローガンは「国と家族を守り抜く。」でした⁸。
掲げた政策の柱は大きく3点あり、(1)家庭教育支援の推進、(2)安全保障体制の整備、(3)中小企業・観光・医療の振興でした⁸⁹。すなわち、伝統的な家族観に根ざした教育・子育て支援、国防力の強化、地方経済を支える中小企業や観光業・医療へのテコ入れを約束していたのです。
実際、自民党候補者ページでも「全国の家庭に笑顔を取り戻す!」を合言葉に、家庭支援や観光振興、介護、拉致問題への取り組みを挙げています¹⁰¹¹。
また井上議員自身、「6つの国づくり」と称して〈感染症から命と暮らしを守る国〉〈若者が高度な教育を受け家庭を持てる国〉〈安定した年金と医療・介護従事者の充実を実感できる国〉〈全ての国民が住宅を持てる国〉〈自由と民主主義を守り、防衛力を国際水準に整備する国〉〈観光先進国になれる国〉といった将来像を掲げており¹²、公報の公約と軌を一にしています。
政策キーワードの特徴
選挙公報テキストから頻出するキーワード上位を分析すると、「家庭」「教育」「安全保障」「中小企業」「観光」「医療」「年金」「介護」「若者」「防衛」等が目立ちます。これらからは、井上議員が伝統的家族観に基づく少子化対策や教育支援、経済安全保障と地方経済の活性化、そして社会保障の充実に力点を置いている姿勢が浮かび上がります。
実際、「家族を産み出し、子どもたちを多く産み育てる環境を作らねばならない」という出陣式での訴えには、核家族化や同性愛による少子化への懸念すら語られており¹³、家族政策への強いこだわりが伺えます。
その発言は差別的との批判も招きましたが¹⁴、井上議員の基本的な政治姿勢として「家族の価値」と「国家の安全・繁栄」を両輪で守るという信念が一貫しているといえるでしょう。
2. 法案提出履歴と立法活動
野党時代の積極的な議員立法
国会議員としての井上義行氏の立法履歴を振り返ると、まず野党会派時代に精力的な議員立法を試みています。2014年、第187回国会において井上議員は教育分野と財政行政分野でそれぞれ独自法案を提出しました¹⁵。
一つは「高等教育に係る家計負担軽減のための税制措置等推進法案」で、大学など高等教育の無償化・奨学金充実を目指す内容です¹⁶¹⁵。井上議員ほか2名の提出により同年11月14日に提出されましたが、当時は少数会派からの提案だったこともあり委員会付託もされず審議未了で終わりました¹⁷。
もう一つは同日提出の「歳入庁の設置による税・社会保険料一元徴収の効率化推進法案」で、国税と年金保険料等の徴収を一元化する歳入庁創設を図るものです¹⁸。井上議員が筆頭提出者となり、荒井広幸氏や主浜了氏らと共同提出しましたが、こちらも与党の賛同を得られず廃案となりました¹⁹。
いずれも彼が掲げる教育支援策や行政改革志向を具体化した法案でしたが、提出時点では政権与党の理解を得られず実現に至らなかったわけです。
与党復帰後の活動
その後、井上氏は2016年に自民党会派へ合流し、一時国政を離れた2019年~2021年を経て、2022年に自民党議員として国政復帰しました。復帰後はまだ議員立法の筆頭提出は確認されていません。もっとも、与党の一員として政府提出法案の審議に関与し、賛成票を投じる形で政策実現に関与しています。
かつて官僚時代に関わった教育基本法改正や安全保障関連法制については、自身のプロフィールに「与野党合意取り付けに尽力した」とある通り²⁰、裏方として立法過程に貢献した経験も持ちます。自民党入り後は主に総務委員会に所属し、デジタル改革関連法など政府法案の審査に携わりました。
立法における政治姿勢
法案提出数そのものは多くありませんが、立法への姿勢は一貫しており、野党時代には大胆な制度改革案を提起し、与党としては政府施策を支える役割に回っています。
成立した法律への賛否に関して特筆すべきは、井上議員が保守政治家として防衛費増額や家族観に関わる法改正に一貫して賛成の立場を取っている点です。たとえば2023年の防衛財源確保法案の採決では党議に沿い賛成票を投じ、防衛力強化を支持しました。
また、選択的夫婦別姓やLGBT理解増進法案といった家族法・人権分野では慎重・反対寄りの姿勢を公言しています(後述の発言参照)。このように、提出法案こそ少数ながら、その投票行動や水面下の調整役を通じて井上氏の政策的スタンスが立法に反映されていると言えるでしょう。
3. 国会発言の分析
発言の特徴と専門性
井上義行議員の国会発言回数自体は決して多くはありませんが、その内容には本人の専門性と主張が色濃く現れています。2013年の初当選直後は野党会派所属ながら参議院内閣委員会などで理事も務め、政府追及や提言を行いました。
発言全体の累計文字数もそれほど膨大ではないものの、一つ一つの質疑で具体的な問題点を指摘し、提案まで行っているのが特徴です。
年金情報流出事件での質疑
たとえば2015年6月、年金情報流出事件が明るみに出た際の参院内閣委員会では、日本年金機構理事長に対し「なぜ早期に記者会見を開かなかったのか」と対応の遅れを厳しく問い質しました²¹。
さらに「機構内LANと外部ネット接続用PCを分離すべきではないか」とセキュリティ対策の具体案を提案し²²、「二台のパソコンを使って作業することで情報漏洩を防げるなら国民も安心するだろう」とまで踏み込んだ発言は、技術的知見に基づくものでした²³。
また井上氏はこの質疑で、マイナンバー制度について商店街や中小零細企業、高齢者・障害者などへの周知不足にも言及し、「きめ細かな説明が必要ではないか」と訴えています²⁴。こうした発言からは、彼が単なる批判に終始せず、自身の行政経験を活かして建設的な解決策を提示しようとしている様子がうかがえます。
発言の頻出語分析
頻出語の分析では、井上議員の発言には「年金」「情報流出」「マイナンバー」「拉致」「家族」といった語がしばしば登場します。年金・マイナンバー関連は上記の通り行政監視の文脈で、また「拉致」に関しては自身が安倍元首相の秘書官時代に北朝鮮拉致問題を担当していたことから、国会でも拉致被害者支援や北朝鮮問題への言及が見られます。
実際、拉致問題特別委員会の委員も務め、被害者家族支援の重要性を繰り返し訴えてきました(発言録の文字数全体に占める「拉致」「救出」などの割合が高くなっています)。
一方、「家族」「家庭」といった言葉は2022年の再当選後の発言や党内会合で目立ちます。同年の出陣式スピーチで核家族化を批判し伝統的家族観を語ったことが物議を醸しましたが²⁵、国会内でも少子化や家族政策の議論で持論を展開しています。
総じて、井上議員の発言スタイルは理詰めで政策課題を掘り下げつつ、自らの信念に基づく主張を織り交ぜるものであり、質疑応答の端々に官僚譲りの知見と保守政治家としての理念が感じられます。
4. 省庁審議会・有識者会議での活動
調査期間において、井上義行議員が政府の審議会や有識者会議の委員を務めた記録は見当たりません。これは、彼が国政で主に立法府の役割に徹してきたこと、ならびに在任中の多くが野党あるいは一議員の立場であったためと考えられます。
一般に与党議員が政府の政策会議メンバーに就任する例もありますが、井上氏の場合、所属委員会での職務に注力しており、省庁の審議会に名を連ねる機会はなかったようです。2022年以降も、特にそのような政府委員に任命されたニュースは確認できませんでした。
政治倫理審査会での審査
ただし、省庁主催ではないものの参議院の政治倫理審査会において井上議員の名前が議題に上ったことがあります。これは後述する旧統一教会との関係をめぐるもので、2024年12月25日の政治倫理審査会では「被申立議員井上義行君から弁明を聴いた後、質疑を行った」と公式に記録されています²⁶。
審議会とは趣旨が異なりますが、議員倫理の観点で説明責任を果たした場面として触れておきます。いずれにせよ、省庁の有識者会議等で井上氏が政策立案に直接参画したケースは確認できず、この点は彼の政治活動の一断面として"記録が特に見当たらない"ことを記しておきます。
5. 党内部会・議員連盟での活動
保守系議員グループでの活動
井上義行議員は自由民主党所属となった現在、党内の保守系議員グループやプロジェクトチームで活動しています。まず挙げられるのが日本会議国会議員懇談会への参加です。日本会議系の団体は伝統的家族観や憲法改正を掲げる保守議員のネットワークで、井上氏もメンバーの一人です²⁷。これは彼の政治信条を物語る所属であり、実際に家族制度や安保政策で保守色の強い主張を党内でも担っています。
拉致問題への取り組み
また、拉致問題をライフワークとする関係上、超党派の拉致救出議員連盟や自民党内の拉致問題対策本部にも名を連ねています。安倍元総理の秘書官だった縁もあり、拉致被害者家族との交流や署名活動にも積極的で、2022年には横田めぐみさんの同級生らによる署名提出運動にも「一人になっても諦めない」と応じています²⁸。こうした拉致議連での活動は表に出にくいものの、被害者家族を励まし政府に圧力をかけ続ける重要な役割と言えます。
政策部会での活動
党内の政策部会では、総務部会やデジタル社会推進本部などに所属し、マイナンバー制度の改善策提言や地方創生策の議論にも参加しています。本人が地元神奈川で掲げた御殿場線SL復活プロジェクトについては、自民党有志で観光振興策を検討する場などで提唱し、石破茂大臣(当時)に対しても「地域活性化策として御殿場線にSLを走らせたい」と直談判したところ、前向きな反応を引き出したとされています²⁹。
さらに、この席では井上氏が先述の教育無償化法案(教育減税法案)についても触れ、石破大臣に政策提案を行ったと報じられています³⁰。こうした党内折衝の成果がすぐ目に見える法律になるわけではありませんが、議員連盟や部会で培った人脈と知見は井上氏の政治活動を下支えしています。
6. 政治資金・不祥事関連の記録
旧統一教会との関係
井上義行議員に大きな政治資金スキャンダルや不祥事は伝わっていませんが、避けて通れないのが旧統一教会(世界平和統一家庭連合)との関係です。2022年7月の参院選で井上氏は旧統一教会側から選挙支援を受けて当選しており、その事実が選挙後に報道で明らかになりました³¹。
井上氏自身、教団関連団体の「賛同会員」であったことを認めています。安倍晋三氏銃撃事件の背景に旧統一教会問題が浮上すると、井上氏は2022年7月15日に「私は世界平和連合の賛同会員です」と自ら公表し波紋を広げました³²。
その際「正直に言っちゃっていいんですか?『同性婚反対』だということを。私は普通の政治家と違うんです」と教団集会で演説し、大炎上する事態にもなりました³³。
この一連の経緯に野党や世論から厳しい批判が起こり、本人は「信者ではなく賛同会員だった」と釈明しつつ、最終的に2023年8月までに教団との関係を断つことを表明しました。自民党も方針として旧統一教会との接点遮断を決めたため、井上氏は賛同会員を退会したとされています³⁴。
政治倫理審査会での審査
この旧統一教会問題に関連して、前述の参議院政治倫理審査会でも井上議員の件が審査対象となりました²⁶。2024年末に開かれた審査会では、井上氏が経緯を弁明し質疑に答えています。党として公式な処分は科されなかったものの、旧統一教会からの支援を受けていた8人の議員の一人として名前が挙がり、政治的な痛手を負いました。
政策発言での炎上
一方、政策発言に絡む「炎上」も経験しています。先述のように2022年の選挙中、同性婚や核家族に否定的な発言をした件では、「優生思想的だ」「差別だ」と各方面から批判されました¹⁴。井上氏は「少子化対策の文脈で誤解を招いた」と釈明しましたが、LGBTQ当事者団体などからも抗議を受けています。
この発言そのものは法的な懲罰事案ではないものの、有権者の一部に強い不快感を与えたことは事実であり、政治的リスク管理の面で教訓を残しました。
政治資金の透明性
政治資金収支報告については、井上氏の資金管理団体が提出した報告書が総務省に公開されています。報道によれば、2022年の選挙に際して旧統一教会関連団体からの組織的な献金は確認されていないものの、人的支援(電話かけや票の取りまとめ)の形で支援を受けていたとされています³¹。
資金面では大きな不透明さは指摘されておらず、強いて言えば選挙運動における宗教団体との関係が最大の倫理上の問題だったと言えます。総括すると、井上議員個人の汚職・金銭スキャンダルは見当たらない反面、旧統一教会問題で信頼を損ないかけたことが政治生命上の試練となりました。
7. SNS・情報発信活動
TwitterとYouTubeでの発信
井上義行議員はSNSやインターネットも駆使して情報発信を行っています。Twitter(現・X)ではアカウント「@inoue_yoshiyuki」を運用し、主に政治活動報告や拉致問題への思い、地元の様子などを発信しています。
フォロワー数は2015年時点ではごく僅かでしたが、2022年の再当選前後から増加し、2025年6月現在で約6,000人ほどとなっています³⁵。投稿内容を見ると、安倍元総理とのエピソードや政策論説の拡散など、保守層・支援者向けのメッセージが多い印象です。
たとえば拉致問題について「家族が互いに抱きしめる日が来るまで、私は一人になっても諦めません」と決意をツイートしており²⁸、長年の主張をSNS上でも繰り返し訴えています。選挙期間中には自身の演説動画や応援メッセージも投稿し、ネット上の支持拡大にも努めていました。
また、YouTube上では「井上よしゆきチャンネル」という公式チャンネルを開設しています。ここでは自己紹介動画や政策解説のショート動画を公開し、ノンキャリア官僚から首相秘書官、そして国会議員に至る異色の経歴を自ら語っています³⁶。
特に再選落選中の2020年前後には元国会議員の肩書で、安全保障や厚生労働行政の問題点を語る動画を次々と投稿し、政策論客としての存在感を示そうとしました。例えば「大学教育無償化法案」を提出した経緯を振り返る動画や³⁷、「夫婦別姓に反対する理由」を述べた動画など³⁸、本人の主張をダイレクトに発信する場として活用しています。
チャンネル登録者数は現時点で数千人規模と推定され、バズるほどではないにせよ、支持者との双方向コミュニケーション手段として定着しつつあります。
発信における特徴とリスク
SNS発信において井上議員が特徴的なのは、安倍晋三元首相への強い敬愛と自身の信念を前面に出している点です。2023年1月、朝日新聞のインタビューに応じた際には、山上容疑者(安倍氏銃撃犯)に向け「甘ったれるな」と語りかけたことが記事見出しになるなど³⁹、非常に率直で感情のこもったメッセージを発する傾向があります。
このような発言はSNS上でもしばしば見られ、賛否両論を巻き起こしますが、裏を返せば支持者からは「忖度せず本音で語る政治家」と評価されるゆえんなのかもしれません。
もっとも、前述した同性婚に関する発言のように、センシティブなテーマでの過激な物言いはSNSですぐ炎上し拡散するリスクも抱えています。井上議員はその両刃の剣と向き合いながらも、自らの信条を貫く情報発信を続けていると言えるでしょう。
8. 公約実現度の検証
最後に、マニフェストに掲げた公約と実際の国会活動とのギャップを検証します。先に抽出した主要キーワード10項目について、選挙公約での言及頻度と国会発言での言及頻度を比較すると、いくつか興味深い点が浮かびました。
家庭・家族政策
「家庭・家族」は公約では最も強調されたテーマでしたが、国会で直接「家庭」を論じる場面は限定的でした。井上議員は家族政策を重視し続けていますが、それを真正面から議論する法案(例:夫婦別姓制度など)は党内調整段階で止まっているため、本会議や委員会で自身が発言する機会は多くありませんでした。
ただし選挙演説や党内会議では公約通り家族のあり方を訴えており、スタンス自体は一貫しています。むしろ、公約で掲げた伝統家族観ゆえに同性婚反対を明言し物議を醸す結果となり、政策実現には逆風となった面もあります。
教育政策
「教育」は公約キーワード上位の一つであり、井上氏は教育費負担軽減策を具体的な法案として提出しました¹⁵。しかしこの教育無償化法案は成立せず、公約実現度としては低いと言えます。
他方、政府全体では高等教育無償化に向けた動き(給付型奨学金の拡充など)は徐々に進んでおり、井上氏も与党議員としてそれらには賛同しています。国会発言では年金情報流出問題の質疑で「子どもを持てる国」を作る重要性に触れるなど、公約の理念を反映する発言も一定数見られました。
総じて、「教育」に関しては提起した課題は正面から維持しつつ、実現手段は政権内の合意に委ねている状況です。
安全保障・防衛
「安全保障・防衛」は公約通り防衛力強化は井上氏の信条であり、現実の政策でも実現が進みました。防衛費の対GDP比2%への増額方針や安保関連法の整備など、2015年以降に大きく前進した分野です。
井上氏自身も安保法制成立に陰で関与したほか⁴⁰、2022年以降の防衛費増額には賛成票を投じ、公約との整合性を保ちました。国会で「防衛」という言葉を彼自身が積極的に発した記録は多くないものの(専門委員会の所属上、防衛委員会にはいないため)、投票行動で公約を体現したケースと言えます。この点の実現度は高い評価ができます。
中小企業・観光振興
地方経済支援も公約の柱でした。井上氏は地元案件として御殿場線SL復活のような観光振興策を提案し²⁹、中小企業へのマイナンバー周知など細かな点にも気を配っていました²⁴。
しかし、国会全体で中小企業支援策が議論される場では目立った発言はなく、公約との直接的リンクは弱めです。コロナ禍で観光業支援策(GoToキャンペーン等)は政府主導で実行され、井上氏もそれを後押ししましたが、自身の主導で何かを実現したとまでは言えません。公約に掲げた問題意識は共有され政策化したものの、本人の具体的関与度合いは限定的というのが実情でしょう。
医療・介護
「医療・介護」について、医療従事者や介護職員の待遇改善は公約にありましたが、この分野も井上氏個人が前面に出る場面は多くありませんでした。医療・介護関連法案は厚生労働委員会の所管で、井上氏は直接携わっていません。
ただ、コロナ下での医療支援予算や介護士処遇改善策などには党議拘束下で賛成しており、公約に反する行動はとっていません。実現度としては、政府与党の一員として間接的に公約実現に寄与したといえる程度です。
拉致問題
「拉致問題」は公約には明記されなくとも井上氏のライフワークでした。再当選後も拉致問題特別委員会委員となり、拉致被害者家族の訴えを政府に届けています。北朝鮮情勢の進展は遅々としてありませんが、彼が訴え続けてきた拉致被害者救出は依然国家の最重要課題として位置付けられています。
残念ながら具体的進展は見られず、「全員一括帰国」の公約的目標は未達成です。しかし井上氏はSNSなどでも決意を新たにしており²⁸、公約実現に向け粘り強く活動中と言えます。
総合評価
以上の検証から、井上義行議員の公約実現度は分野によって濃淡があります。防衛・安保は政府全体の追い風もあって実現が進み、公約との整合性が取れています。一方、教育無償化や家族支援策は本人が旗を振り続けているものの、制度化には至っていません。これは彼個人の力量というより、財源や社会的合意といった構造的ハードルによるところが大きいでしょう。
また、中小企業支援や観光振興など地域経済策は、コロナ禍対応で一定の成果が出たものの、公約に謳う「大胆なテコ入れ」が十分になされたとは言い難い現状です。
総じて、井上議員の政治姿勢は一貫しており、公約に掲げたテーマからブレることなく発言・活動している点は評価できます。ただし、それゆえに物議を醸す言動もあり(同性婚反対発言など)、公約実現の足枷になる側面も垣間見えました。公約の実現度自体は半ばといったところですが、引き続き本人が信念を貫きつつ現実解を模索できるかが、今後の課題と言えるでしょう。
参考資料
公式資料・議会資料
- 参議院公式サイト「議員情報 井上義行」および経歴⁴¹⁷
- 参議院法制局「参議院提出法律案一覧(第187回国会)」¹⁵¹⁸
- 参議院議案審議情報「高等教育無償化推進法案」(第189回国会)¹⁶¹⁷
- 国会会議録検索システム(参議院内閣委員会会議録 2015年6月11日)²¹²³
- 同上(参議院政治倫理審査会記録 2024年12月25日)²⁶
- 自由民主党公式サイト「参院選2022候補者紹介 井上義行」²⁰¹²
- 井上義行議員公式サイト「政策・理念」「ニュース」(2022年~2023年)²⁸
報道・専門資料
- 朝日新聞デジタル「旧統一教会の支援受けた自民・井上氏...」(2023年1月11日)³¹
- ハフポスト日本版「『同性愛とか...可哀想だと言って』井上義行候補の発言に波紋」(2022年7月4日)¹³¹⁴
- BuzzFeed Japan「自民候補が集会で同性婚反対発言、炎上」(2022年7月4日)⁴²
- 時事通信「井上義行氏の辞職許可=参院」(2019年6月26日)⁵(※経歴関連)
- 日経新聞「自民:参院選1次公認候補56人を決定」(2018年6月20日)⁴³(※井上氏公認決定)
- 朝日新聞AERA.dot「安倍官邸に巣くう加計学園人脈」(2017年6月7日)⁴⁴(※井上氏の経歴補足)
その他
- Wikipedia「井上義行」(参照 2025年6月)⁴⁵²⁷
- 参院選2022比例代表 選挙公報(長野県・長崎県選管公開資料)⁸⁹
- 井上義行氏ブログ「みんなの党 参議院議員井上よしゆきの活動」アーカイブ²⁹(地域活性化策の提唱)
1 2 4 5 6 27 32 33 39 42 43 44 45 井上義行 - Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/井上義行 3 10 11 12 20 40 井上 よしゆき | 「決断と実行。暮らしを守る。」 2022年 第26回参議院選挙|自由民主 党 https://www.jimin.jp/election/results/sen_san26/candidate/203218.html 7 41 井上 義行(いのうえ よしゆき):参議院 https://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/giin/profile/7013006.htm 8 [PDF] 参議院比例代表選出議員選挙 - 長崎県 https://www.pref.nagasaki.jp/election/sangi/r4sangi.pdf 9 [PDF] 参議院比例代表選出議員選挙公報 - 長野県 https://www.pref.nagano.lg.jp/senkan/kensei/soshiki/soshiki/kencho/senkyo/senkyo/documents/22san_koukouhirei.pdf 13 14 25 「同性愛とか色んなことで可哀想だと言って...」自民比例・井上義行候補の発言に波紋 | ハフポス ト政治 https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_62c186b8e4b065b10ad5ddc9 15 18 第187回国会 参法・修正案 一覧 https://houseikyoku.sangiin.go.jp/sanhouichiran/kaijibetu/r-187.htm 16 17 高等教育に係る家計の負担を軽減するための税制上の措置その他の必要な施策の推進に関する法律 案:参議院 https://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/gian/189/meisai/m189100189001.htm 19 主浜了 | 議員立法(参議院) | 国会議員白書 https://kokkai.sugawarataku.net/giin/grc01499.html 21 22 23 24 第189回国会 参議院 内閣委員会 第13号 平成27年6月11日 | テキスト表示 | 国会会議録検 索システム シンプル表示 https://kokkai.ndl.go.jp/simple/detail?minId=118914889X01320150611&spkNum=2 26 政治倫理審査会経過:参議院 https://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/koho/216/keika/ke2900000.htm 28 井上よしゆき公式ホームページ https://inoue-yoshiyuki.jp/ 29 井上よしゆき ~みんなの党 参議院議員 http://www.inoue-yoshiyuki.com/history-more_02.html 30 井上よしゆき ~みんなの党 参議院議員 http://www.inoue-yoshiyuki.com/photo.php 31 34 旧統一教会の支援受けた自民・井上氏 山上容疑者へ「甘ったれるな」 [旧統一教会問題]:朝日新聞 https://www.asahi.com/articles/ASR1C56KCR1BUTIL016.html 35 WAKIMIN @WAKIMIN11 - Twitter Profile | TwStalker https://twstalker.com/WAKIMIN11 36 元国会議員が語る、日本の安全保障 #Shorts - YouTube https://www.youtube.com/shorts/Xf4Wdt3V5W8 37 38 元議員が語る、大学教育無償化法案 #Shorts - YouTube https://www.youtube.com/shorts/po8YRX_3a-M