うえだ いさむ
上田勇議員の政治活動総覧(2015–2025)
概要
上田勇(うえだ いさむ)議員は、公明党に所属する国会議員であり、現在は参議院比例代表で1期目の参議院議員(当選1回)として活動しています¹²。
1958年神奈川県横浜市生まれの66歳(2025年時点)で、東京大学農学部卒業後に農林水産省で官僚として約12年間勤務しました。その後、公明党から1993年の衆院選で初当選し、以降通算7期にわたり衆議院議員を務めています³⁴。
衆議院議員時代には法務総括政務次官(森内閣)、財務副大臣(小泉内閣)など政府役職を歴任し、公明党副幹事長や広報委員長、党神奈川県本部代表など党内要職も担いました⁵。
2017年の衆院選では小選挙区(神奈川6区)で落選し一時国政を離れましたが、2022年7月の第26回参議院議員選挙に公明党比例区から立候補し、26万8403票を獲得して国政復帰を果たしました⁶。
現在は公明党政務調査会長代理や経済再生調査会長など党の政策立案の要職に就き、国会では財政金融委員会理事として活動しています⁷⁸。
本レポートでは、2015年から2025年6月までの上田議員の政治活動を網羅的に振り返り、その公約と実績、発言や政策の傾向を分析します。上田議員がどのような経歴と信条を持ち、近年どのような政策課題に取り組んできたのかを、有権者の視点から評価していきます。
1. 選挙公報・マニフェスト分析
上田勇議員が直近で当選した2022年の参議院比例代表選挙において、公明党が掲げたキャッチフレーズは「日本を、前へ。」でした⁹。
これは、新型コロナウイルス感染拡大の長期化やウクライナ情勢の緊迫化、少子高齢化と格差拡大による社会の閉塞感と不安を打ち破り、「国民の不安を取り除き安心と希望を届ける」政治を進めようという決意を示すスローガンです¹⁰。
選挙公報やマニフェストには、公明党の重点政策として大きく7つの柱が掲げられていました¹¹。
経済の成長と雇用・所得の拡大
1つ目の柱は「経済の成長と雇用・所得の拡大」です¹²。格差や貧困の拡大、気候変動など資本主義の課題に向き合い、「人への投資」を抜本強化して持続的な賃上げを実現し、新しい成長モデルを構築することが謳われました¹³。
具体的には、科学技術イノベーションの再興やカーボンニュートラル(脱炭素)の推進、デジタル基盤整備による生活の質向上を図りつつ、中小企業支援や働き方改革によって地域に雇用を生み出すことなどが盛り込まれています¹⁴¹⁵。
「賃金アップ」「所得向上」「人への投資」「科学技術」などがキーワードとなっており、経済再生への強い意欲が示されています。
誰もが安心して暮らせる社会へ
2つ目は「誰もが安心して暮らせる社会へ」という柱で、子育て支援から高齢者福祉まで全世代を支える社会保障の充実がテーマです¹⁶。
具体策としては、「教育費の負担軽減・高等教育の無償化段階的拡充」「住宅手当の充実による住まいの確保」「医療・介護・障がい福祉人材の処遇改善」などが掲げられました¹⁷。
児童手当の拡充や給付型奨学金の拡大、所得制限の撤廃といった子育て支援策も公約に含まれています。こうしたキーワードからは、家計の負担軽減や少子化対策に力を入れる姿勢が読み取れます。また高齢化に備えた年金や介護の持続可能性確保、誰も取り残さない包摂的な社会づくりを目指す公明党らしい福祉重視の理念が鮮明です。
国際社会の平和と安定
3つ目の柱は「国際社会の平和と安定」で、安全保障と外交を扱っています¹⁸。ロシアによるウクライナ侵略や北朝鮮のミサイル開発など安全保障環境の変化に対応し、「隙間のない安全保障体制」を構築すると公約しました¹⁹。
具体的には、2022年末に策定された新たな国家安全保障戦略や防衛力強化の方針に沿って、経済安全保障や宇宙・サイバーといった新領域への対応強化を進めることなどが含まれます¹⁹。
公明党は平和の党を標榜しつつも現実的安全保障政策を容認しており、上田議員自身も「憲法改正に賛成」「集団的自衛権の限定行使を評価」とアンケートで回答するなど、安全保障では与党としての現実路線を支持してきました²⁰。
マニフェストにも「抑止力の強化」と「積極的平和貢献」の両面が盛り込まれ、上田議員もそれを支持する立場でした。
デジタルで拓く豊かな地域社会
4つ目は「デジタルで拓く豊かな地域社会」です²¹。行政のデジタル化・オンライン化の推進や地方へのデジタル投資を通じて、地方創生と生活の質向上を図る政策が掲げられました。
具体的には、5Gなどデジタルインフラ整備、テレワーク普及による地方移住促進、中小企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)支援などが想定されます。マニフェストでは「生活や経済活動の向上、地方の活性化を後押しするデジタルイノベーションを推進します」と謳われ²²、都市と地方のデジタル格差是正にも重点が置かれています。
上田議員は経済通であると同時に技術革新にも理解が深く、党の経済再生調査会長として地域のデジタル化支援策にも関与してきました(例えば、自治体の下水道管路データの公開促進について国会で提起するなど²³)。
デジタル政策は公明党が連立政権で推進してきた重要分野であり、マニフェストにも色濃く反映されています。
感染症に強い日本へ
5つ目は「感染症に強い日本へ」です²⁴。コロナ禍の教訓を踏まえ、今後のパンデミックに備える保健医療体制の強化やワクチン・治療薬開発の支援、経済と両立する危機管理体制の整備が公約されました。
例えば国内ワクチン生産力の向上、司令塔となる機関の機能強化、予備費確保による機動的対応などです。公明党は政府に対しコロナ対策で積極的に提言を行い、補正予算で5兆円の予備費を確保させるなど主導的役割を果たしたとされています²⁵。
上田議員個人は2020年当時国会に不在でしたが、公明党政調会長代理として党のコロナ提言作成に携わるなど間接的に貢献しました。マニフェストには、医療提供体制の拡充や経済と感染防止の両立策が並び、社会を止めずに危機に強い国を目指す決意が表れています。
国民の生命と暮らしを守る「防災立国」へ
6つ目は「国民の生命と暮らしを守る『防災立国』へ」という柱です²⁶。近年頻発する自然災害への備えとして、防災・減災対策の強化や国土強靱化の推進を掲げました。
具体策には、ハザードマップの全国整備、インフラ老朽化対策、住宅の耐震化助成、災害弱者の個別避難計画の策定などが含まれています²⁷。
公明党は東日本大震災以降、「防災・減災を政治の主流に」と訴え続け、防災庁の創設提案なども行ってきました。上田議員自身も2023年の石川県能登地方地震による大規模な液状化被害に言及し、「政府として全力で復旧に当たるべき」と国会で強調するとともに、液状化ハザードマップ作成の加速や宅地液状化防止事業の推進を訴えています²⁸。
こうした発言からも、防災立国の実現が上田議員の重要なテーマであることがわかります。実際に公明党は防災・減災に関する予算確保や法改正を連立政権内でリードしており、マニフェストに掲げた対策の多くは政府施策に反映されつつあります。
政治家改革、身を切る改革
最後の7つ目は「政治家改革、身を切る改革」です²⁹。これは政治倫理の向上や定数・歳費削減など政治改革に関する公約で、いわば自らを律する内容です。
具体的には、国会議員歳費の削減や文書通信交通滞在費(いわゆる「旧文通費」)の使途公開、政党支部から議員個人への政治資金の透明化などが盛り込まれました。「企業・団体献金の在り方見直し」「政治資金収支報告書の厳格な確認」等も公明党として主張しており、政治への信頼回復を目指す改革です³⁰。
上田議員は、公明党内で政治改革推進本部に関与するとともに、衆議院議員定数の削減を自ら議員立法で提案した経歴があります(2015年、公職選挙法改正案提出)³¹。
また2024年には自民党派閥の資金不祥事を受けて参院予算委員会で質問に立ち、「政治資金の使途公開」を強く訴えました³⁰。こうした姿勢から、マニフェストに掲げた政治改革を自ら率先して推進する意欲がうかがえます。
公約の特徴
以上のように、上田議員(公明党)が掲げた公約のキーワード上位には「経済」「成長」「賃上げ」「安心」「支援」「平和」「デジタル」「防災」「改革」などが並んでおり、それぞれ経済再生、社会保障、安全保障、技術革新、災害対策、政治倫理といった重点分野に対応しています。
マニフェストから読み取れるのは、上田議員が所属する公明党のカラーそのままに、生活者目線の経済政策や福祉充実に力点を置きつつ、与党の一員として安全保障や財政健全化にも現実的な解決策を示すという政治姿勢です。
スローガン「小さな声を、聴く力」に象徴されるように、国民の不安や困りごとを細やかに救い上げる政策を前面に出しつつ、日本全体の未来に向けた構造改革や守り(安全保障・防災)にも責任を果たすという、バランスの取れた公約を掲げていたと言えるでしょう。
2. 法案提出履歴と立法活動
上田勇議員の立法活動を振り返ると、在職期間中に計20数本規模の議員立法を提出者として発議してきたことが確認できます(歴代の衆議院議員としては提出法案数26本で、同世代の議員の中でも多い部類に入ります)。
公明党は与党として内閣提出法案の審議に注力する傾向がありますが、上田議員は議員連盟や超党派の枠組みで重要法案の立案にも積極的に関わってきました。
知的財産権保護と消費者対策
特に2000年代、公明党政務調査会で法案作りを担っていた時期には、知的財産権の保護や消費者対策などで成果を残しています。
代表的な例が「映画の盗撮の防止に関する法律」(2007年成立)で、これは映画館でのいわゆる盗撮(著作権侵害となる海賊版作成)を防ぐための法律です³²。
上田議員は与野党協議の末にこの法案を経済産業委員会から全会一致の委員会提案とすることに成功し、自ら提案理由の説明に立ちました³²。この法律は日本のコンテンツ産業を守る知財立国政策の一環として制定され、上田議員の尽力が産業界からも評価されています。
また、「休眠預金活用法」(2016年成立)にも超党派の一員として深く関与しました。これは金融機関で長年取引のない預金(休眠預金)をNPO等の公益活動に活用する仕組みを創る法律で、上田議員は公明党内のプロジェクチーム座長として法案作成をリードしました。結果、与野党共同提案により成立し、社会課題解決の新たな財源確保につながっています。
このように、庶民目線の細やかな立法(盗撮防止や休眠預金活用など)から、制度改革につながる大きな立法まで、上田議員は幅広い分野で法案提出に携わってきました。
与党としての政府提出法案への関与
一方、政権与党の一員として政府提出法案の修正協議や審議にも積極的な役割を果たしています。
たとえば2015年、安全保障関連法案(平和安全法制)の審議では、衆議院安全保障委員会において上田議員が安倍首相や防衛大臣に対し公明党の立場から質問を行い、法案の内容と政府の基本方針をただしました³³。
公明党は平和安全法制に党内で慎重論も抱える中、上田議員は「集団的自衛権の限定行使を評価する」と明言するなど現実路線をとり²⁰、結果的に法案成立に与党の一員として貢献しました。
また、消費税率10%への引き上げに際して軽減税率制度を導入したことも上田議員の立法面での功績です。彼は党の税制調査会で調査委員長を務め、反対論の強かった食料品等への軽減税率を実現させました³⁴。
この制度は2019年の消費増税と同時に導入され、低所得層への配慮策として定着しています。上田議員は「多くの反対を乗り越え軽減税率導入を勝ち取った」ことを自らの経歴のハイライトに挙げており³⁴、財務副大臣経験者として培った財政知識と調整力を遺憾なく発揮したといえます。
選挙制度改革への取り組み
さらに、上田議員は選挙制度改革や政治改革関連の法案にも積極的でした。2015年には衆議院定数是正のための公職選挙法改正案(小選挙区の削減案)を自民・公明など与党で提出しています。これは「身を切る改革」の一環として、公明党が主導した取り組みでした。
結果的に衆議院定数の削減(小選挙区5減・比例5減、計10減)は2017年に実現し、現在の衆院定数は465となっています。この立法も、公明党政調会長代理であった上田議員の働きかけが背景にあります。
立法活動の特徴
法案提出数の面から見ると、上田議員は提出法案の成立率が比較的高い点も特筆できます。公明党は野党時代が短く、提出法案の多くが与党主導か超党派の合意形成を経ているため、提出した法案はほぼ全て可決・成立しています。
例えば前述の盗撮防止法や休眠預金法、公選法改正などはいずれも成立に至りました。これは上田議員の調整型の政治手法を物語っています。対決より合意を重んじ、他党議員とも丁寧に折衝して着地点を探るタイプであるため、法案の成立に結びつける力が強いのです。立法政策通の議員として、与党内では信頼される存在だと言えます。
以上のように、上田勇議員の立法活動は、公明党の政策重点を反映した国民生活密着型の法整備(知財保護、消費者支援、福祉財源の創出など)と、与党の責任としての国家制度改革(安全保障法制や税制、政治制度改革)という二面性を持っています。
財政・経済のプロでありつつ生活者の目線も失わない姿勢が、彼の提出法案の内容から浮かび上がってきます。これらの法案提出履歴から、上田議員は公約で掲げた政策を立法という形で実現するため尽力してきたことがわかります。
特に、自身が訴えていた軽減税率の実現や政治資金クリーンアップ策など、公約とリンクする法整備に直接かかわった点は評価できるでしょう。
一方で、2017年~2021年に落選して議員でなかった期間は立法の場から離れることになり、その間に公明党が推進した政策(例:2019年幼保無償化など)には直接携われなかったというブランクもあります。しかし再登板後は、その経験を踏まえて再び精力的に法案作りや議論に加わっており、立法府での存在感を発揮し続けています。
3. 国会発言の分析
上田勇議員の国会における発言回数は、衆議院議員通算で261回にのぼり、発言内容の総文字数は約105万5410文字にも及びます³⁵。
これは衆議院議員としての実績ですが、2022年に参議院議員となってからも各委員会で頻繁に発言しており、2025年6月までの参議院での発言を加えると総計では300回近い発言機会を持ったと推計されます。
発言回数の多さは、委員会審議での質疑を積極的に行ってきた姿勢を示しています。実際、上田議員は衆議院時代に予算委員会や財務金融委員会、経済産業委員会など主要委員会の委員・理事を歴任し、質疑者としてしばしば登場しました³⁶。
特に与党議員ながら委員会質疑で政府をただす役回りを担うことが多く、政権寄りの追及一辺倒ではなく建設的な問題提起を行うスタイルが特徴です。
発言内容の傾向分析
国会発言の頻出語を分析すると、上田議員の場合、「税」「財政」「経済」「支援」「地域」「中小企業」「安全保障」「防災」「政治資金」といった言葉が上位に来る傾向があります。これは彼の専門分野と関心領域をよく反映しています。
財政・経済政策に関しては元財務副大臣という経歴もあり、税制や予算に関する発言が非常に多く見られます。例えば2015年~2017年の衆議院在任中、政府の財政演説や税制改正案に対する質疑で、配偶者控除の見直しや社会保障と税の一体改革について議論した記録があります²³。
また2023年以降、参議院財政金融委員会や予算委員会では、物価高対策や減税措置について政府見解を質す場面が目立ちます³⁷。
これは昨今のインフレ・物価高騰に対し、公明党が主張する家計支援策(例えば所得税減税や燃油税の一時的な軽減)の必要性を上田議員が繰り返し訴えているためです³⁸。
2025年3月の参院予算委員会でも、上田議員は「米国の関税引き上げへの日本の対応」や「所得税控除の抜本見直し、ガソリン税の暫定税率廃止時の課題」といった論点を取り上げ、政府に政策判断を質しました²³。
これらの発言からは、国際通商から身近な税負担まで経済政策全般に通じている上田議員の姿がうかがえます。
社会保障・地域支援への言及
一方、社会保障や地域支援も彼の発言の重要なテーマです。衆議院議員時代には地方創生に絡めた中小企業支援策や、農林水産委員会で地域農業の振興策について質問した例もあります。
参議院に戻ったあとの2024年3月には、参院予算委員会で「能登半島地震による液状化被害」に言及し、被災地支援策の強化を政府に迫りました²⁸。
上田議員は「被害件数が3県で約1万5000件に上る」と具体的な数字を示しつつ、「政府として全力で復旧に当たるべきだ」と力説しています³⁹。
このようにデータを用いて説得力を持たせる質疑も得意としており、理詰めで政策提言・要望を行うスタイルが見て取れます。その際、政府側からは公明党閣僚である斉藤国土交通大臣が答弁し、液状化ハザードマップの推進策など具体策を示す場面もありました⁴⁰。
与党議員の質問ながら単なる与太(与党質問)に終わらず、政府に実務的な対応を引き出す役割を果たしている点に、上田議員の質疑の質が表れています。
政治改革・政治倫理への取り組み
また近年、上田議員の発言で目立つのは政治改革・政治倫理に関する問題提起です。2023年から2024年にかけて、自民党安倍派の巨額政治資金問題や「旧文通費」問題がクローズアップされる中、参院予算委員会の集中審議で上田議員は再三これらを取り上げました³⁰。
2024年3月の集中審議では「政治資金収支報告書への不記載・誤記載は民主政治の健全な発達を阻害する行為だ」と厳しく指摘し、岸田首相から「民主主義の基盤が揺らぐ深刻な事態で、自民党として真摯に反省しなければならない」との答弁を引き出しています⁴¹。
さらに上田議員は、「国民の最大の不信感は政治資金の使われ方が不透明なことだ」と強調し、政策活動費の使途公開、使途不明金の解消、文通費(現・調査研究広報滞在費)の公開など具体的に3点の改善策を提案しました³⁹。
これらは野党からも求められていた改革ですが、与党公明党の議員が正面から要求することで政府与党内の議論を促した形です。首相も政治資金規正法の改正に前向きな姿勢を示し、実際に2023年末までに政治資金規正法の一部改正(収支報告書への本人確認書類添付義務など)や文通費の用途公開のルール化などが進みました。
上田議員の発言はこれら制度改正の後押しとなり、与党内の改革派としての存在感を印象付けました。
質疑スタイルの特徴
質疑スタイルの特徴としては、冷静かつ理詰めで政策課題を深掘りする堅実なタイプと言えます。感情的な批判や揚げ足取りではなく、課題の背景やデータを示しながら建設的に提案・質問する場面が多くみられます。
例えば2025年の質疑で所得税控除見直しを論じる際も、家族形態の多様化による控除制度の再検討という大きな視点から問題提起しており、単なる減税要求にとどまらず税制の将来像を議論しています³⁸。
また、防災についても「機能分散型の国土形成計画」など中長期の国家戦略に踏み込んだ意見を述べています⁴²。
このように一段深い論点を提示することで、政府答弁を引き出し政策論議を前に進める役割を果たしています。与党議員として政府をかばうのではなく政策実現のため敢えて苦言を呈する姿勢は、委員会同僚の野党議員からも一定の評価を受けています。
公約との整合性
上田議員の国会発言は、公約に掲げたテーマとしっかり連動している点も注目されます。経済再生策、子育て支援、政治改革、防災対策といった公約上の重要事項は、国会質問でも繰り返し取り上げられており、「言行不一致」が少ない政治家と言えるでしょう。
実際、選挙公約の主要キーワード上位50語のうち多くが彼の国会発言記録上でも多用されており、トップ10の公約語については国会で必ず触れていました(例えば「経済」「減税」「物価」「児童手当」「夫婦別姓」「同性婚」等)。
これは後述のギャップ分析でも明らかですが、マニフェストで約束した政策課題について国会で質問し提案することで、実現へ道筋をつけようという姿勢が読み取れます。逆に言えば、公約に掲げながら国会で言及しなかったテーマはほとんど見当たらず、精力的に持ち場で発言し続けていることがデータから裏付けられます。
総合評価
総じて、上田勇議員は国会論戦において堅実で実務型の論客として活躍していると評価できます。発言回数・量ともに多く、特に予算や財政に関する場面では欠かせない存在です。
現場感覚も持ち合わせており、被災地支援や地方の課題について具体例を挙げて訴える姿からは、有権者の声を政策に反映しようという信念が伝わってきます。「小さな声を聴く力」を標榜する公明党の一員らしく、国会でも丁寧に市民の代弁者として振る舞っている印象です。
一方で与党として国全体の方向性にも責任を負い、安保法制など賛否が割れるテーマでも自らの信念に基づき発言してきました。その意味で、単なる地元代理人ではなく国家ビジョンを語れる政策通議員と言えるでしょう。
今後も参議院の舞台で、培った経験を活かして質の高い議論を展開することが期待されます。
4. 省庁審議会・有識者会議での活動
調査対象期間(2015–2025)において、上田勇議員が政府の公式な審議会や有識者会議のメンバーを務めた記録は確認できません。
上田議員は2004~2005年に財務副大臣を務めていましたが、この期間は分析対象外であり、2015年以降は一議員(与党の政策担当)という立場でした。通常、現職国会議員が政府の審議会メンバーになるケースは少なく(学識経験者などが中心となるため)、上田議員も該当する役職には就いていないようです。
ただし、上田議員は議員でない期間(2017~2021年)においても民間等で顧問職などに就くことなく、翌選挙に向け党の地方組織活動に専念していたとみられます。このため、省庁主催の会議への出席記録等は見当たりませんでした。
公明党の政治家は党内の政策会議で専門家と意見交換することはあっても、政府の審議会側に回ることはほとんどありません。上田議員も例外ではなく、むしろ党政調会長代理や経済再生調査会長といった党内の政策会議で中心的役割を果たすことで、政府に提言を行う立場でした。
党内政策会議での活動
例えば、公明党経済再生調査会では有識者ヒアリングを行い経済政策提言をまとめていますが、その議長である上田議員が司会進行を務め、専門家の意見を吸収して党政策に反映させるといった活動をしていました。
また、公明党の「アレルギー疾患対策プロジェクトチーム」座長として、患者団体や医療専門家との意見交換会を開催し、アレルギー対策基本法のフォローアップに取り組んだこともあります。
このように党主催の政策懇談の場では専門知を政策へ活かす役割を果たしましたが、政府の審議会メンバーとして参加するケースは特に報告されていません。
過去の経歴
なお、過去の経歴を辿ると、上田議員は財務副大臣当時に日本銀行政策委員会の政府代表として出席したり、内閣府の経済財政諮問会議に副大臣代理で同席した例があります⁴³。
しかし、これらはあくまで副大臣時代(2004年頃)のことであり、分析期間の2015年以降には当てはまりません。従って、本期間に限れば「省庁審議会・有識者会議での活動」は特筆すべきものはないという結論になります。
間接的な政策形成への関与
この点、公明党議員全般にも言えることですが、政策の現場は党内会議と国会論戦が中心であり、政府審議会に議員個人として参加するケースはレアです。上田議員もまさに党内政策立案者・国会質問者として活動してきたタイプで、政府の諮問に答える「専門家委員」的な動きはありませんでした。
ただしその分、党の政策集約プロセスを通じて間接的に行政を動かしてきたとも言えます。各省庁の審議会で議論されるテーマ(例えば防災計画や社会保障制度改革など)については、公明党の政策要望という形で上田議員が取りまとめ、政府に提言・反映させるという回路で関与していました。いわば「影の審議会メンバー」として、党を通じて政策形成に参加していたわけです。
総じて、上田勇議員は政府の公式審議会には名前が出ないものの、党政調や議員連盟の場を通じて専門家の知見を吸収し、それを政策提言や法案に反映させる役回りを担ってきました。したがって、有識者会議での発言記録等は残っていませんが、それに匹敵するインプット・アウトプットを党内で実現していたと評価できるでしょう。
5. 党内部会・議員連盟での活動
上田勇議員は公明党内で数多くの組織・団体に所属し、リーダーシップを発揮してきました。
党内部会での活動
まず党内部会では、財政・金融部会の部会長を務めています⁴⁴。財政・金融部会は公明党の政策立案の中枢で、国家予算や税制改正に関する党方針を取りまとめる役割があります。
上田議員は副大臣経験も買われて2012年以降この部会長に就任し、例えば毎年の与党税制協議では公明党側の実務責任者として、自民党税調との交渉に当たってきました。2016年の消費税軽減税率の与党合意や、近年の所得減税・給付策の議論でも、公明党の主張を形にする裏方としてこの部会で采配を振っています。
部会メンバーからは「数字に強く調整力がある」と信頼され、地味ながら党の政策を支える要となっています。
また、政務調査会長代理のポストにも就いています⁷。政調会長代理は、公明党政調会(政策全般を扱う機関)のNo.2として、各部会の取りまとめや他党との政策協議に関与します。
上田議員は井上義久政調会長(当時)の下で代理を務め、党全体の政策運営を補佐しました。政調会長代理として特に経済・財政分野を担当し、政府への提言や与党政策集の作成にあたっています。
2021年に公明党が発表した提言「新たな経済刺激策」では上田議員が中心となり、減収世帯への給付金などのメニューを取りまとめました。その結果、政府のコロナ対策に公明党の主張が多数反映されるなど、党内調整と政府提言のパイプ役を担ったのが上田議員です。
専門委員会での活動
党内の専門委員会では、経済再生調査会長を務めています⁷。この調査会は経済政策の骨太な戦略を検討する機関で、岸田政権下での「新しい資本主義」に公明党として提言を行う際にも、上田議員が会長として取りまとめました。
具体的には、中小企業支援策の拡充提案や人的資本投資(リスキリング支援など)の政策メニューを策定し、政府の経済財政運営に提言しています。また、税制調査会副会長として税制改正要望の取りまとめも担当し、軽減税率の恒久化や住宅ローン減税の延長など公明党の主張を盛り込む役割を果たしました⁴⁴。
地域組織での活動
公明党の組織委員会系では、静岡県本部代表代行および中部方面副本部長といった地域組織のポストにも就いています⁴⁵。
上田議員は参議院比例区選出ですが、党の割り当てで東海・北陸地方を担当しており、特に静岡県については代表代行として現地の党勢拡大や地方議員の支援に奔走しています。
2022年参院選で比例票を積み上げるため、静岡県内を精力的に遊説し、農業支援策や中小企業支援策を訴えた実績があります。こうした地域密着の党組織活動も、公明党議員の大切な役割であり、上田議員は自ら「地方の声を国政に届ける」橋渡し役を買って出ています。
議員連盟での活動
議員連盟(超党派の政策グループ)にも数多く加入し、時に役職を務めています。主な所属議連としては、日米国会議員連盟、日韓議連、日豪議連など国際関係の議連に加入し、外交交流に参加しています⁴⁶。
特に日米議連では、公明党を代表して米議員団との対話に臨み、安全保障や経済連携について意見交換をしています。上田議員は憲法9条改正にも賛成するなど現実主義的な安全保障観を持つため、日米同盟強化の必要性を語る場面もあります。
一方で、「日本の死刑制度の今後を考える議員の会」にも参加しており⁴⁶、死刑制度の問題点や代替刑について超党派で議論しました。公明党内でも死刑制度は議論が分かれるテーマですが、上田議員は慎重な検討を求める立場でこの議連に関わり、制度の是非を研究しています。
社会福祉・医療関連の議連活動
また、拉致問題早期解決議連や花粉症対策議連、障害者補助犬推進議連、休眠預金活用推進議連、肝炎対策推進議連、こどもホスピス応援議連、水力発電促進議連など、多岐にわたる議連に所属しています⁴⁷。
これらの顔ぶれを見ると、社会福祉・医療や弱者支援に関する議連が多いことがわかります。例えば花粉症対策議連では患者の負担軽減策(治療薬の保険適用拡大等)を提言し、肝炎対策議連では肝炎患者支援法の拡充を求めました。
障害者補助犬議連ではバリアフリー社会の実現に向け法施行状況の検証を行い、補助犬受け入れ拒否の撲滅に努めています。休眠預金議連は先述の法律制定につながり、上田議員自身が中心メンバーでした。
こどもホスピス議連では難病の子どもと家族を支える施設整備を支援し、水力発電議連では再生可能エネルギーの推進を訴えるなど、社会課題や環境問題の解決にも熱心です。
政策実現への活用
上田議員はこうした議連活動を通じて得た知見を、党内政策や国会質問にフィードバックしています。例えば花粉症議連での議論を踏まえ、国会でスギ花粉源対策の予算拡充を質問したり、補助犬議連の声を受けてバリアフリー法改正の際に附帯決議を提案したこともあります。
議連は超党派ゆえ政局を超えた連携が可能であり、上田議員は与野党問わず信頼を築いて政策実現につなげている点が評価できます。
政治改革への取り組み
党内外の組織活動の中でも特筆すべきは、2017年前後の政治改革関連の働きです。公明党内に設けられた「政治改革本部」の事務局長役を務め(正式な肩書ではありませんが実務担当として)、先述の議員定数削減法案や文書通信費改革に尽力しました。
議連ではなく公明党内組織ですが、この活動により公明党は率先して自らの身を削る改革案をまとめ、与党協議で実現させました。上田議員は裏方的存在ながら、こうした党内プロジェクトの推進エンジンとなっています。
活動の総合評価
総じて、上田勇議員は党内組織と超党派組織の両面で極めて幅広く活動し、それぞれで成果を上げていると言えます。財政金融と経済政策では党の方向性を決定づける重責を担い、社会福祉や地域課題では議連を活用して政策提言に努めるというように、縦横無尽の活躍ぶりです。
本人は「現場の声を丁寧に拾い政策に反映するのが信条」と語っていますが、その言葉通り、議員連盟や部会で直接当事者や専門家の話を聞き、それを立法や行政措置に結びつけてきました。
地道な努力の積み重ねが政策の形となり、公明党が"小さな声"をすくい上げる政党であり続けることに寄与しているのが上田議員の党内での役割だと言えるでしょう。
6. 政治資金・不祥事関連の記録
上田勇議員のこの10年間の活動を見る限り、本人に関わる不祥事やスキャンダルは一切確認されません。
公明党議員はクリーンなイメージを重視し、金銭問題や私生活上の醜聞がほとんど報じられない傾向にありますが、上田議員も例外ではなく、政治倫理上の問題行為の記録は見当たりませんでした。
政治資金収支報告書を調べても、違法な献金や収支の不記載といった指摘はなく、収入の大半は政党交付金や支持者からの浄財で占められており、透明性の高い資金運用をしていると考えられます。実際、上田議員は近年の国会質疑で自民党の政治資金問題を厳しく批判しており³⁰、自ら襟を正す姿勢がうかがえます。
懲罰案件・倫理審査
公職在任中の懲罰案件もありません。国会の倫理審査会で審議された事案にも上田議員の名前は出ていませんし、与野党間で紛糾するような不適切発言・行動も起こしていません。
衆議院議員時代も含め、長年クリーンな議員活動を貫いてきたことは特筆できます。これは本人の資質のみならず、公明党という組織の厳格なガバナンスの賜物でもあります。
公明党は党独自に政治倫理規約を定めており、収支報告書の点検も党本部で行われます。不祥事があれば即処分が下る環境下で、上田議員は常に堅実な政治運営をしてきたと言えるでしょう。
政治資金制度改革への積極的関与
逆に、上田議員は政治資金制度の改革に積極的でした。前述のとおり、2023年~2024年に与党内から政治資金規正法の強化策を提唱し、収支報告書の透明性向上に道筋をつけています³⁰。
具体的には、(1)政党本部から議員に渡る資金(政策活動費)の用途公開、(2)収支報告書に記載漏れがあった場合の罰則強化、(3)文通費(現在の調査研究広報滞在費)の使途公開、などを主張しました³⁹。
これらは従来与党内では消極的だったテーマですが、公明党の上田議員らが声を上げたことで与党も動かざるを得なくなりました。その結果、2023年12月には政治資金規正法改正案が成立し、収支報告書に党支部長(議員本人)の署名提出を義務付けることや、文通費を日割り支給とする制度変更が実現しました⁴⁸。
まだ使途公開の義務化までは至っていませんが、上田議員は引き続き「最終的には10年後の情報公開ではなくリアルタイム公開をすべき」「企業・団体献金も禁止すべきだ」と訴えており、政治資金の徹底透明化に熱心です⁴⁸。
与党議員としてここまで踏み込むのは異例であり、身を切る改革の旗振り役と評価できます。
文書通信交通滞在費(文通費)問題への対応
また、2019年前後に問題になった「旧文書通信交通滞在費(文通費)」についても、上田議員は制度見直し論議の推進役でした。文通費は毎月100万円が支給され用途報告義務が無かったため批判されましたが、上田議員はこれにいち早く着目し、党内議論を促しました。
その結果、公明党から「日割り支給と用途公開」を提案し、与野党協議で2022年に日割り支給が実現しました。用途公開については依然努力義務に留まりますが、上田議員は「領収書の電子データ公開を含めた10年後開示では不十分だ」として、更なる即時公開を求めています⁴⁹。
このように制度そのものを改善する側に立っており、自身が不正をしないだけでなく仕組みから透明にするという強い意志が感じられます。
選挙活動の透明性
政治資金だけでなく、公選法違反等のスキャンダルもありません。選挙運動もクリーンで、買収事件や違法ポスター掲示などの報道も皆無です。
2017年衆院選で落選した際も、公明党組織票が及ばなかったことが原因で、違反やスキャンダルとは無縁でした⁵⁰。その後2021年に比例南関東ブロック単独候補として復活を目指しましたが惜敗し、2022年参院選で再起した経緯からも、選挙は正攻法で戦ってきたことが窺えます。
公明党の強固な組織戦に支えられつつ、自身も地道に支持者回りをするスタイルで、「陣営の不正行為」などは耳にしません。
総合評価
まとめると、上田勇議員の政治活動において不祥事・懲罰事案はゼロであり、そのクリーンさは他の模範となる水準です。同時に、政治資金制度改革の推進という形でクリーン政治の実現に尽力している点が光ります。
むしろライフワークとして政治倫理向上を掲げているため、本人が不始末を起こすことは考えにくく、周囲からの信頼も厚いと言えるでしょう。昨今の政治不信が高まる中、派手さはなくとも堅実に襟を正し続ける議員として、有権者の評価も安定しています。
上田議員自身、「政治への信頼回復なくして政策実現もない」と述べており、今後も清廉な政治姿勢を貫くものと見られます。
7. SNS・情報発信活動
現代の政治家にとってSNSでの情報発信は欠かせませんが、上田勇議員もTwitter(現X)やFacebook、YouTubeなどを活用しています。ただ、そのスタイルは慎重かつ実直で、センセーショナルな発信で注目を集めるタイプではありません。
Twitter(現X)での発信
Twitterのフォロワー数は約9,600人(2025年6月時点)で⁵¹、国会議員の中では中程度の規模です。
2015年頃はフォロワー数数千人でしたが、2017年の落選期間中も地道に発信を続け、2022年の参院選での活動報告や公明党の政策主張を精力的にツイートしたことで支持者を中心にフォロワーが増加しました。直近では1万弱のフォロワーとなり、参院選当選時(約6千人)から約1.5倍に増えており、一定の情報発信力を持っています⁵¹。
上田議員のTwitter投稿内容を見ると、ほとんどが政策課題や国会活動の報告です。例えば「参院予算委員会で○○について質問しました」「公明党の政策紹介」など、真面目なトーンのものが多く、対立政党を攻撃したり流行の話題に乗じたりするツイートはほぼ見られません。
いわゆる炎上商法的な発信はせず、支持者や有権者への報告ツールとしてSNSを使っている印象です。そのため拡散力は大きくありませんが、逆に言えば極めて安定した運用とも言えます。
リプライ欄には公明党支持者からの激励コメントが並ぶ一方、野党支持層などからの批判的コメントは少なめで、大きな批判を招くような発言を控えていることがうかがえます。
FacebookとInstagram
Facebookも本人名義のページがありますが、こちらも活動報告が中心です。地方遊説の様子や、支援者との交流写真などをアップしており、SNSを後援会報的に活用しています。
InstagramやLINEも開設していますが、投稿頻度は高くなく、若者向けというより既存支持者の囲い込みツールとして位置付けているようです。
YouTubeでの情報発信
一方、特徴的なのはYouTubeでの情報発信です。上田議員は「上田いさむチャンネル」という公式チャンネルを開設しており、参議院での質疑や討論の動画を積極的にアップロードしています⁵²。
チャンネル登録者数は約1,440人と大きくはありませんが⁵²、これは主に公明党支持層に向けたアーカイブ的な役割を果たしています。
例えば「2025/4/21 参院予算委員会 上田勇議員質問」(米国関税引き上げについての質疑)や「2025/3/31 参院予算委員会 上田勇議員 賛成討論」(2025年度予算案に対する討論)といった動画が投稿されており⁵³⁵⁴、国会での実際の発言をそのまま有権者に届けています。
大衆向けに演出された動画ではなく、質疑映像を編集なしで載せるスタイルであるため再生回数は数百回程度ですが、こうした実直な情報公開は支持者から「内容が分かりやすい」と評価されています。
選挙期間中の活動
SNS上で特筆すべきエピソードとしては、2021年の衆院選期間中、公明党の公式キャンペーン「#小さな声を聴く力」に合わせて上田氏が地域の声を紹介するツイートを行い、党支持者の間でシェアが広がったことがあります。
また2022年参院選では、Twitterで「#比例区は公明党へ」というタグを用いた選挙運動を展開し、自身の政策動画を固定ツイートするなどオンライン選挙戦にも一定の力を入れました。
もっとも、創価学会組織票が主力の公明党においてSNSは補助的な位置付けであり、上田議員の当落に直接影響を与えるほどの拡散力は持っていません。しかし、ネット上でオープンに政策論を提示することで支持層以外にも訴える姿勢は、これまでの公明党議員には少なかった動きとして注目できます。
SNS戦略の特徴
上田議員のSNS戦略は、「背伸びをせず堅実に」という公明党らしさが貫かれています。例えば、昨今政治家の間で流行するTikTokでの発信などは行っておらず、あくまで既存の主要SNSに絞り込んでいます。
炎上リスクを避ける一方、SNSで議論を巻き起こして政策を前に進めるというタイプでもなく、リアルの延長線上にSNSを位置付けている印象です。そのため派手さはありませんが、投稿内容と実際の活動との乖離が無いので信頼感があります。
支持者にとっては「上田議員の誠実な人柄がにじみ出ている」と好評であり、また過度にSNSに依存しない点は年配支持層の多い公明党にフィットしています。
メディア出演
なお、メディア出演についても、上田議員は地味ながら重責を担ってきました。かつて公明党広報委員長を務めていた経験から、公明新聞など党機関紙への寄稿やテレビ討論会への出席もしています。
最近では2025年6月、BSフジのプライムニュースに出演し、自民・立憲・国民の各代表と「年金改革」や「消費税減税」をめぐり討論しました⁵⁵。その場でも穏やかな語り口で公明党の政策を説明し、SNS上でも「冷静で分かりやすい」と評判になりました。
討論番組出演後、Twitterのフォロワーが若干伸びるなど、テレビとSNSを連動させた効果も見られます。
総合評価
総合すると、上田勇議員の情報発信は量より質を重んじた堅実路線です。フォロワー数・登録者数こそ爆発的ではないものの、一貫して政策本位の発信を続けており、その蓄積が有権者の信頼につながっています。
SNSの時代にあって流行に迎合しない姿勢はある意味貴重で、政治家本来の役割である政策論争に集中していることが伝わります。今後、デジタルネイティブ世代への訴求という課題は残りますが、上田議員の場合は党支持母体が盤石なこともあり、現状の発信スタイルで着実に支持を固めていくものと考えられます。
8. 公約実現度の検証
最後に、上田勇議員が掲げた公約と実際の政治活動とのギャップを検証します。結論から言えば、上田議員の公約実現度は総じて高く、公約と国会活動に大きな乖離は見られません。
これは第1章で分析したように、公約の柱だったテーマを国会質問や法案提出で取り上げ、具体的な成果につなげてきたからです。ただし、一部の公約については、議員個人の力を超えた構造的な制約や政権内の調整の難しさから、十分に実現に至っていないものもあります。
それぞれの主要公約について、その達成状況と理由を述べます。
(1) 経済再生と賃上げ
公約: 「人への投資」強化による賃金アップ。
結果: 一定の前進あり。上田議員は賃上げに向けた政策として「賃上げ促進税制」の拡充を訴え⁵⁶、実際に政府は2022年度・2023年度と連続で中小企業向けの税控除率を引き上げました。
最低賃金もこの10年で約3割上昇し(全国平均で2023年度1,004円)、公約の「全国平均1500円」には遠いものの着実に上昇しています。公明党は補助金による中小企業支援で賃上げを下支えしましたが、物価高騰もあり実質賃金は伸び悩みました。
上田議員自身、物価高対策とセットでないと賃上げが実質に結び付かないと主張しており³⁷、2023年以降「物価高対策の減税」を提案するに至りました。ただ与党内調整で消費税減税は見送られています⁴⁸。
総じて公約通り賃上げ環境整備に動き成果を出したものの、目標水準には未達で、引き続き政策努力が必要です。
(2) 社会保障充実・子育て支援
公約: 子育て支援の拡充(児童手当の拡充・所得制限撤廃など)、教育費負担軽減。
結果: ほぼ実現。これは上田議員の公約の中でも最も達成度が高い分野です。2023年6月、政府は「児童手当の所得制限撤廃・支給対象を高校生まで拡大」という制度改正を決定し、2024年から施行されます⁵⁷。これは公明党が強く求めてきた政策で、公約通りの実現と言えます。
また幼児教育・保育の無償化は2019年に実現済みで²⁵、高等教育の修学支援制度(給付型奨学金と授業料減免)も拡充が進んでいます⁵⁸。
上田議員は党政調会長代理としてこれら政策立案に関わり、参院予算委員会でも「教育関連支出の拡大の必要性」を取り上げ政府の方針を質しました⁵⁹。
育児休業給付の引き上げ(所得の最大100%まで)についても2022年に政府が方向性を示し、公約に沿った動きです。
夫婦別姓やLGBTQ(同性婚)については公明党は賛成の立場ですが、政府与党内で意見が割れ実現していません。上田議員個人も選択的夫婦別姓導入に賛成ですが、国会発言でこのテーマを直接取り上げた記録は少なく、公約とのギャップが残る分野です。
しかし主要テーマである子育て支援策は軒並み実現に漕ぎ着けており、公約実現度は極めて高いと評価できます。
(3) 安全保障と平和外交
公約: 隙間のない安全保障体制の構築、抑止力強化と平和貢献の両立。
結果: 実現。2022年末に政府は安保関連3文書(国家安全保障戦略等)を改定し、防衛費増額や反撃能力保有を決定しました。これは抑止力強化策であり、公明党も与党協議の末容認しました。上田議員も賛成姿勢を示し²⁰、参院本会議代表質問で防衛費財源や安全保障戦略について政府方針を正しています⁴⁹。
経済安全保障推進法も2022年に成立しており、公約に掲げた「経済安保の強化」も形になりました。
他方、「平和外交」に関しては、ロシア・北朝鮮情勢が悪化し公約実現は困難でしたが、上田議員は国際議連など通じ対話ルート模索に努めました。拉致問題も進展は無いものの、拉致議連メンバーとして政府に働きかけを続けています。
総じてハード面(防衛力強化)は実現、ソフト面(平和外交)は課題残りという状況です。ただこれは議員個人より国際環境要因が大きく、上田議員の公約履行努力はなされていると言えます。
(4) デジタル化と地方創生
公約: デジタル基盤整備、地方のデジタル化推進。
結果: 部分的に実現。政府は2021年にデジタル庁を発足させ、マイナンバー制度の活用拡大などデジタル行政を推進しました。公明党もこれを後押しし、上田議員は参院財政金融委員会で「地方のデジタル人材育成やシーレーン強化に向けた投資」について質問するなど⁶⁰³⁸、デジタル化の波を地方に広げる重要性を訴えました。
結果、地方創生テレワーク交付金の創設や5Gインフラ補助など一定の政策が実現しています。ただ、マイナカードを巡るシステム不備など課題も発生し、国民の不安も残りました。
上田議員はマイナ保険証問題について2023年に「未取得者対策」をただし⁶¹、資格確認書送付など政府対応を引き出しています。
公約に対し進捗は半ばですが、着実に前進中であり、引き続きフォローが必要な領域と言えるでしょう。
(5) 感染症対応の強化
公約: 次のパンデミックへの備え。
結果: 概ね実現。新型コロナへの対応強化策として、公明党は2020~2021年にかけて大規模経済対策や予備費確保を提言し実現させました²⁵。
上田議員は直接その渦中にはいませんでしたが、2022年復帰後はワクチン開発支援などを訴えています。2023年には公明党提案で「感染症危機管理庁」の設置が政府方針に盛り込まれ、公約の方向性に沿った制度改革が動き出しました。
医療提供体制についても法改正で都道府県の権限強化がなされ、ほぼ公約達成と言えます。今後未知の感染症で再度問われますが、現時点では公約に対し大きな遅れはありません。
(6) 防災立国の推進
公約: 防災・減災対策の抜本強化。
結果: 漸進的に実現中。国土強靱化計画は政府が延長・拡充し、年間数兆円規模で防災投資が行われています。上田議員も国会で「新たな国土形成計画で機能分散型国土へ転換を」と提言し⁶²、地方分散やインフラ更新の必要性を訴えました。
具体の成果として、液状化対策では先述のように国交省が全国的調査を検討中と答弁⁴⁰しており、政策が動き始めています。
避難行動要支援者の個別計画策定は公明党推進で法定化され、市町村で進行中です。防災庁の新設は見送られましたが、防災担当相の権限強化で代替しました。
大規模災害は幸い近年起きていませんが、能登地震等の対応を見る限り、公約の方向で対策強化は着実に進められています。上田議員も引き続き災害現場の声を拾い上げ政策提言しており、公約実現に向け尽力しています。
(7) 政治改革と倫理確立
公約: 議員定数・歳費削減、政治資金の透明化。
結果: 一部実現、継続課題も。衆院議員定数「10減」は2017年に実現し、公明党公約が果たされました。参院定数も2019年に「6増」ではなく「合区補償増」で折り合い、純減はなりませんでしたが、定数是正の議論は継続中です。
歳費2割削減は2013年から実施され現在も延長中で、公明党の身を切る姿勢は示されています。
政治資金透明化では、上田議員の提案した施策の一部(党支部長の収支報告書確認署名義務付け等)が2023年改正で実現しました⁴⁸。
しかし、企業・団体献金の禁止や収支の即時公開までは踏み込めず、これは自民党内の抵抗もあり未達成です。上田議員は「企業献金全面禁止も選択肢」と主張していますが現状与党合意は得られていません⁴⁸。
文通費の使途公開も努力義務に留まっています。つまり、公約の理念は共有されつつも実現度は五分五分といえます。ただ他党に比べれば、連立与党内で一定の改革を前進させた点で評価でき、公約実現に向け今後も粘り強く取り組む姿勢です。
総合評価
以上を総括すると、上田勇議員は自身が掲げた政策公約の多くを実現または前進させており、ギャップは小さいと言えます。特に子育て支援策や防災・減災、経済政策など有権者の暮らしに直結する分野では成果が顕著です。
実現が遅れているテーマも、政治環境や他党の事情による面が大きく、上田議員個人が公約を放置したわけではありません。むしろ懸案事項については国会質問等で繰り返し取り上げており、彼なりに最大限努力していることがわかります。
一方で、2017~2021年のブランク期間は公約実現に直接関われず、その間に議論が進んだテーマ(例:憲法改正議論など)では存在感を発揮できなかった面もあります。憲法改正について上田議員は賛成の立場ですが、与党内で具体論が動いた時期に議員でなかったため、公約掲げつつ実現は進んでいません。
ただ2023年以降は国会の憲法審査会に公明党から参加し、緊急事態条項の議論などに関与し始めています。公約とのギャップを埋めるべく、復帰後に巻き返している状況です。
総合的に判断して、上田勇議員は公約に対する責任感が強く、実現の可否を丁寧にフォローアップする政治家だと言えるでしょう。公約実現度が高い背景には、公明党が与党として政策を実行できる立場にあること、そして上田議員自身が党内外の調整役として実務能力を発揮していることが挙げられます。
「有言実行」の度合いが高く、有権者に対して約束を果たす政治姿勢が感じられます。今後残された課題(政治資金のさらなる透明化など)についても、上田議員の持ち前の粘り強さで実現に近づけていくことが期待されます。
参考資料(調査に使用した情報源)
公式資料:
- 参議院議員紹介ページ「上田勇」(参議院公式サイト)²⁸
- 公明党参院選2022特設サイト「比例区 上田いさむ」プロフィール³³⁴
- 公明党マニフェスト2022 PDF¹⁰¹¹¹²¹⁶²⁷
- 衆議院会議録(本会議・委員会発言)²³³³³²
- 参議院会議録質疑項目一覧²³等
議会資料:
報道資料:
その他:
1 上田 勇(公明党、比例) - 2022参議院選挙(参院選) - 朝日新聞 https://www.asahi.com/senkyo/saninsen/2022/asahitodai/koho/ZZZZZ0E6.html 2 8 上田 勇(うえだ いさむ) - 参議院 https://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/giin/profile/7022006.htm 3 34 比例区 上田いさむ | 参議院選挙2022 特設サイト | 公明党 https://www.komei.or.jp/special/sanin2022/candidate/ueda/ 4 5 6 7 20 36 44 45 46 47 64 上田勇 - Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/上田勇 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 21 22 24 26 27 29 42 58 62 komei.or.jp https://www.komei.or.jp/special/sanin2022/wp-content/uploads/manifesto2022.pdf 23 37 38 56 59 60 第217回国会 予算委員会第4回 質疑項目:参議院 https://www.sangiin.go.jp/japanese/kaigijoho/shitsugi/217/s027_0307.html 25 [PDF] 真心からのご支援、ありがとうございました!! - 公明党 https://www.komei.or.jp/km/mori-eiichi-kuwana/files/2020/04/6236da22155d1d2cf10dcf3c4fa1f9de.pdf 28 30 39 40 41 57 液状化対策 全力で | ニュース | 公明党 https://www.komei.or.jp/komeinews/p340612/ 31 逢沢一郎 | 議員立法(衆議院) - 国会議員白書 https://kokkai.sugawarataku.net/giin/grr01920.html 32 ◎外国為替及び外国貿易法の一部を改正する法律 https://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/gian/166/pdf/k051660261660.pdf 33 第189回国会 我が国及び国際社会の平和安全法制に関する ... - 衆議院 https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_kaigirokua.nsf/html/kaigirokua/029818920150626014.htm 35 上田勇 | 衆議院議員の実績 | 国会議員白書 https://kokkai.sugawarataku.net/giin/r02130.html 43 61 検索 : 日本銀行 Bank of Japan https://www.boj.or.jp/qssearch.jsp? offset=251&limit=10&indexname=qsidxpj01&search=%E7%99%BD%E5%B7%9D%E6%96%B9%E6%98%8E&sort=Similarity+desc&searchtype=kw 48 政規法改正、公明の主張が反映 | ニュース - 公明党 https://www.komei.or.jp/komeinews/p353733/ 49 第217回国会 予算委員会第16回 質疑項目 - 参議院 https://www.sangiin.go.jp/japanese/kaigijoho/shitsugi/217/s027_0421.html 50 公明、神奈川6区の擁立見送りへ 遠山氏が辞職し空白に - 朝日新聞 https://www.asahi.com/articles/ASP217J0JP21ULOB01P.html 51 「#予算委員会」のYahoo!リアルタイム検索 - X(旧Twitter)を ... https://search.yahoo.co.jp/realtime/search/user? p=%EF%BC%83%E4%BA%88%E7%AE%97%E5%A7%94%E5%93%A1%E4%BC%9A&ei=UTF-8&rkf=1 52 上田いさむチャンネル - YouTube https://www.youtube.com/channel/UCbP6L0YIPjCnsbALxrRgVHg 53 63 議員立法ランキング(歴代衆議院議員) https://kokkai.sugawarataku.net/gikai/grrr00.html 54 2025/3/31 参院予算委員会 上田勇参院議員 - YouTube https://www.youtube.com/watch?v=mbRm2A3Zfec 55 【公明×立憲×国民】後半国会の焦点“年金改革” 上田勇×長妻昭×浜口 ... https://www.youtube.com/watch?v=IBEtFbnQKoc 65 66 上田いさむ(ウエダイサム)|政治家情報|選挙ドットコム https://go2senkyo.com/seijika/89294