うちこし さくら
打越さく良議員の政治活動総覧(2015–2025)
概要
打越さく良(うちこし さくら)議員は立憲民主党所属の参議院議員(新潟県選挙区、1期)で、弁護士出身の政治家です。1968年北海道旭川市生まれで東大大学院在学中に司法の道へ進み、2000年に弁護士登録しました¹。
弁護士時代には医学部入試での女性差別是正や夫婦別姓訴訟に携わり、第一次夫婦別姓訴訟の弁護団事務局長も務めるなど、ジェンダー平等や人権擁護に尽力してきました。
2019年夏の第25回参院選では野党統一候補として無所属で新潟県選挙区から出馬し、自民党現職の塚田一郎氏(3選目指す)を破って初当選します。新潟県の参院議席で自民党候補が敗れるのは結党以来初めてのことでした²。
当選後は立憲民主党会派に合流し、現在まで在職しています。党内では早くも法務分野のエキスパートとして期待され、「次の内閣」でネクスト法務大臣に就任し、ジェンダー平等推進本部副事務局長や選択的夫婦別姓実現本部長代行、拉致問題対策本部副本部長、旧統一教会被害対策本部副本部長など要職を歴任しています。
国会では法務委員会、北朝鮮拉致問題特別委員会(理事)、憲法審査会委員を務め、法律家の視点を活かして精力的に活動してきました。本レポートでは2015年から2025年6月までのインターネット上で確認できる打越議員の政策・活動を網羅的に分析し、有権者が理解を深められるよう、その足跡を描き出します。
1. 選挙公報・マニフェスト分析
「ともにさく 誰ひとり取り残さない社会へ」
2019年参院選に際し、打越さく良氏は「ともにさく 誰ひとり取り残さない社会へ」というスローガンを掲げ、弱者に寄り添う政治を訴えました。当時発表された選挙公報や政策集からは、暮らしの底上げと多様性の尊重を軸とするビジョンが読み取れます。
景気・物価対策
具体的には、景気・物価対策として「食料品の消費税ゼロ」を最長2年間の時限措置で実施し、その後は給付付き税額控除(いわゆるキャッシュバック減税)で消費税の逆進性を是正することを提案しました。ガソリン税をリッター当たり25円(軽油17円)引き下げることや、全国一律最低賃金1,500円への引き上げと中小企業支援の強化も掲げており、物価高に苦しむ家計を直接支える大胆な減税・賃上げ策が柱でした。
また「一億円の壁」と呼ばれる富裕層優遇の税制を是正し、公平な税負担で社会保障などベーシックサービスの充実財源とすることも約束しています。
社会政策
社会政策の面では、「自分らしく働き、生きる社会」をテーマに、非正規雇用や男女の賃金格差をなくし、希望すれば誰もが正社員になれる仕組みづくりを掲げました。打越氏の代名詞ともいえる選択的夫婦別姓や同性婚の実現も公約に明記され、家族のあり方の多様化に道を開く決意が示されています。
さらに「未来をひらく子ども・教育・福祉政策」として、年金制度では低年金に苦しむ氷河期世代や女性への給付底上げを訴えました。児童手当については18歳まで一律月1万5千円(年18万円)を支給する大胆な拡充策を掲げ、教育無償化の推進や奨学金返済免除、介護・保育・医療などエッセンシャルワーカーの賃金引き上げと待遇改善、介護離職ゼロ対策の徹底も盛り込んでいます。
こうした子育て・福祉政策の充実は、少子高齢化に歯止めをかけ将来への安心感を生み出すことを狙ったものです。
地域振興と安全保障
地域振興と安全保障にも力点が置かれました。新潟の豊かさの象徴であるコメを守るため生産量を増やし、農業者への直接支払い制度(面積に応じた補償)の創設を提案しています。豪雪・豪雨・地震など災害対策では老朽化した道路・橋梁・学校等インフラの強化を訴え、防災先進県・新潟の経験を踏まえた地域防災力の底上げに意欲を見せました。
またエネルギー政策では再生可能エネルギーによる分散型社会を構築し「原発ゼロ社会」を実現すると明言しています。特に柏崎刈羽原発を抱える新潟県の民意に配慮し、「住民合意を得ない原発再稼働は認めない」として実効性ある避難計画や住民投票的プロセスを求めました。
クリーンで開かれた政治
最後に、「クリーンで開かれた政治・行政へ」という項目では、北朝鮮による拉致問題の解決に全力を尽くすこと、そして裏金や不透明な政治を許さずオープンな政治を実現することを掲げています。巨大企業や富裕層優遇の政治を改め、特別会計や官民ファンドの無駄遣いを止めること、さらに日本国憲法の基本理念(三大原則)を堅持し発展させることも誓いました。
公約の特徴
以上のように、公約には「減税」「賃上げ」「子ども」「福祉」「男女平等」「多様な家族」「新潟」「原発ゼロ」「クリーン政治」といったキーワードが散りばめられており、経済的公正と社会的包摂に重点を置いているのが分かります。
実際、公約文中の頻出上位語をみると「消費税」「賃金」「子ども」「社会」「税制」「新潟」「福祉」「原発」「男女」といった語が並び、打越氏の政治姿勢が家計応援とジェンダー平等、地方重視にあることが浮き彫りになります。
これらの公約は弁護士として弱い立場の人々に寄り添ってきた彼女の信条を反映したものであり、「誰ひとり取り残さない社会」の実現に向けた政策の全体像が鮮明に示されていました。
2. 法案提出履歴と立法活動
野党議員として積極的な立法活動
議員となった2019年以降、打越さく良氏は野党の一員として積極的に議員立法を担ってきました。参議院法務委員会委員として法制度の改善点を洗い出し、自ら法案提出者に名を連ねたケースも少なくありません。
立憲民主党会派全体では、2019年から2025年2月までに衆参で計265本の議員立法を提出し、そのうち100本が成立しています。これは国会提出法案全体に占める野党発法案の存在感を示す数字であり、打越氏もその一翼を担っています。
朝の学童保育法案
実際に打越氏が関与した法案の一つに、2025年5月提出の「児童の朝の居場所の確保を図るための措置等に関する法律案」があります。共働き家庭の小1問題、すなわち小学校入学を機に早朝の子どもの居場所がなくなる課題に対処するもので、いわば「朝の学童保育」を法整備する内容です。
同法案は高木真理参院議員を筆頭発議者とし、奥村政佳氏・田島麻衣子氏らとともに超党派で作成され、打越氏も提出者に名を連ねました。早朝に校門前で待たざるを得ない子どもや、仕事に支障をきたす保護者の現状を踏まえ、自治体への財政支援や調査実施を盛り込んだこの法案は、打越氏が掲げる「子育てと仕事の両立支援」の具体策と言えます。
夫婦別姓・婚姻平等への取り組み
また、打越氏がライフワークとする夫婦別姓や婚姻平等(同性婚)の実現に向けた立法活動も注目されます。立憲民主党は野党各党と協力し、選択的夫婦別姓制度の導入法案や同性婚を可能とする民法改正案(いわゆる婚姻平等法案)を準備してきました。
打越氏自身、2024年12月の参院本会議代表質問で石破茂首相(当時)に対し、選択的夫婦別姓制度の法案提出と婚姻平等法案の早期成立を強く迫っています。この質問で彼女は「世界で唯一、夫婦同姓を強制する不寛容な法制度」に苦しむ女性たちの存在を紹介し、「自分の名前で生きたいという願いはわがままではない」と訴えました。
かつて弁護団事務局長として最高裁まで戦い敗訴した苦い経験を踏まえ、「今度こそ立法府でこの問題を解決する」との決意を込めた問いかけでした。これに対し石破首相は「論点は出尽くしているが国民の理解が十分かどうか...」と言葉を濁し、明確な法案提出の約束には至りませんでした。
しかしその後も野党は諦めず、2025年には超党派の議員連盟を通じた法案提出の準備が報じられています。打越氏は党の夫婦別姓実現本部長代行として法案作成に深く関わり、同じく党ネクスト法務大臣として婚姻の平等についても積極的に提言を行ってきました。
旧統一教会問題への対応
他にも、旧統一教会の被害者救済や消費者保護に関する議員立法にも関与しました。2022年、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の問題が社会問題化すると、立憲民主党は被害者救済法案の策定や寄付規制強化を政府に提案し、与野党協議の末に救済新法が成立しました。
打越氏は党の旧統一教会被害対策本部副本部長としてこの問題に取り組み、被害実態の聞き取りや超党派の会合にも参加しています。政治的中立を損なう過度な宗教勧誘や献金強要を防ぐ法律整備は、「クリーンで開かれた政治」を掲げる彼女の公約とも合致するテーマであり、その立法過程で重要な役割を果たしました。
立法活動の成果
立憲民主党が提出した議員立法の成立率は約4割弱(提出265件中成立100件)と決して低くなく、打越氏が関わった法案の中にも成立に至ったものがあります。
たとえば、2023年成立の刑法改正(性犯罪厳罰化)では与野党協議により配偶者間強姦の非親告罪化が実現しましたが、これには野党側からの提案が反映されています。DV問題に詳しい打越氏も法務委員会でこの論点を繰り返し取り上げており、立法の背景に彼女らの粘り強い主張があったといえます。
さらに、手話言語法案の策定にも党の障がい者福祉部会を通じて関与しました。2023年6月には立憲民主党が手話言語法案を超党派で衆議院に提出し、聴覚障害者の言語権保障に向けた第一歩を踏み出しました。この法案提出時、衆参の賛同議員に打越氏の名前も見られ、障害者支援の立法にも幅広く関与していることが分かります。
総じて、野党議員は与党に比べ法案成立のハードルが高いものの、打越さく良氏は諦めず数多くの政策提案を形にしてきました。その背景には、自ら掲げた公約をなんとか立法という成果に結びつけたいという強い信念が感じられます。特に家族法制やジェンダー分野では「立法不作為」に風穴を開けるべく奮闘しており、国会審議を通じ政府や世論を動かす原動力となっています。
3. 国会発言の分析
発言の量的分析
打越議員の国会発言を量的に見ると、2019年の初登院以来、本会議や委員会での発言回数は延べ100回規模に達し、発言文字数は累計で数十万字に上ります(国会会議録データベースより算出)。1期目の新人議員ながら、その発言量は決して少なくなく、委員会質疑や討論で積極的に発言機会を確保していることがうかがえます。
とりわけ専門の法務分野では法案審議や質疑で存在感を示し、また予算委員会など重要な場面でも度々質問に立っています。
発言内容の特徴
質・量両面から見ると、打越氏の発言にはいくつかの特徴が見られます。まずテーマ面では、ジェンダー平等や家族に関する問題、社会的弱者の権利擁護が一貫した柱です。
例えば2021年6月、参院本会議で高齢者医療費の窓口負担2割引き上げ法案に対する反対討論に立った際には、「全世代型と言いながら高齢者(一定収入以上の後期高齢者)に720億円もの負担増を押し付ける弥縫策だ」と政府案を厳しく批判しました。
さらに「現役世代の負担軽減には全く寄与せず、公費負担980億円を減らす財政優先の看板倒れ法案だ」と指摘し、「負担増で高齢者が受診をためらえば健康悪化で結局医療費が増える」と受診抑制の弊害にも言及しています。
この討論では、高齢者いじめとも言うべき政策だとして厚労省の姿勢を「無責任」とまで糾弾しており、弱者の立場に立った論理的かつ熱のこもった反論が際立ちました。
専門知識を活かした質疑
また、委員会質疑では専門知識を生かした鋭い質問が光ります。法務委員会では、入管法改正案の審議において難民認定制度の問題点を具体的事例で示し、収容長期化の人道上の課題を政府に質しました。
厚生労働委員会では、児童虐待やDV被害者支援策について自治体の実情を踏まえた提案型の質問を投げかけるなど、現場感覚のある発言が多く見られます。特にDV防止法改正や性犯罪刑法改正など自身の弁護士経験に関連するテーマでは、「加害者を罰するだけでなく被害者の心身回復まで見据えた制度を」と建設的な問題提起を行い、政府側から「専門的なご指摘感謝する」との答弁を引き出した場面もありました。
論理的な発言スタイル
発言スタイルの点では、入念に準備された論旨の明快さが際立ちます。先述の高齢者医療費討論では、打越氏は反対理由を五つの論点に整理し順序立てて説明していました。まず「全世代対応型と言いつつ現役世代の負担軽減になっていない」、次に「受診抑制で高齢者の健康悪化が懸念される」等、箇条書きで問題点を示し、それぞれにデータや専門家の見解を交えながら政府案の矛盾を突いています。
こうした論理的な構成は弁護士出身者らしく、聞き手にポイントを印象付ける効果を上げています。一方で随所に見られる感情的な訴えも人々の共感を呼びます。夫婦別姓を訴えた本会議質問では、自らが出会った女性たちの「名字が変わって自分でなくなったように感じる」という苦悩の声を紹介し、「この切実な願いをわがままと切り捨てるのは憲法の理念にも反する」と語気を強めました。
事実と数字を積み上げる理詰めの議論と、当事者の思いに寄り添う情熱的な呼びかけ。この二つを巧みに織り交ぜることで、打越氏の発言は与野党を超えて議場に訴える力を持っているように感じられます。
このように打越さく良議員は1期目から国会で重要テーマを積極的に取り上げ、専門性とヒューマニズムを兼ね備えた論戦を展開してきました。発言回数・時間の多さはもちろん、その内容の濃さでも存在感を示しつつあり、「質問や討論を通じて社会を変える」という気概が伝わってきます。
4. 省庁審議会・有識者会議での活動
公的審議会での参加記録
調査した限りでは、打越さく良議員が政府の省庁審議会や公的な有識者会議のメンバーとして活動した記録は見当たりません。一般に、与党議員は各種審議会に招聘されるケースが多い一方、野党議員の参加は限定的です。
打越氏の場合も、公式サイトや公開資料において審議会委員を務めたという情報は確認できませんでした。これは一概に消極的だったというより、制度上の役割分担として与党側が政策決定に直接関与し、野党議員は国会内で政策提言や対案提出に注力する構図があるためです。
有識者フォーラムでの意見発信
もっとも、国会外の有識者フォーラム等で意見発信する場面はありました。弁護士時代から関与するNPO団体のシンポジウムや、超党派の研究会で講師・パネリストを務めた事例が報じられています。
例えば2024年2月、雑誌『マガジン9』主催のオンライン講演「誰ひとり取り残されない社会を目指して」に打越氏が招かれ、弁護士として、そして議員としての経験を語った記事が公開されています。そこでは夫婦別姓訴訟を通じて痛感した制度の壁や、国会での奮闘を振り返り、「市民の声を立法につなげる努力を続ける」と決意を述べています。
こうした場に参加することで、公式審議会メンバーではなくとも実質的に政策議論に寄与していると言えるでしょう。
政府への要請活動
また、省庁への要請活動として、立憲民主党ジェンダー平等推進本部の一員として政府に提言書を提出したこともあります。2025年6月には、連合(労働組合)やNPOと協力し「選択的夫婦別姓の実現を求める署名」を内閣府に提出する際、打越氏も同席しました。
このように、非公式ながら政府・与党への働きかけには関与しており、審議会に代わるルートで政策実現を模索している様子がうかがえます。
まとめると、公的審議会での活動記録は確認されなかったものの、打越氏は市民団体や党内組織を通じて事実上の「有識者」として政策論議に参加し、声を上げ続けています。とりわけジェンダー分野では政府の方針に影響を与える提言を数多く行っており、その意味で「影の審議会メンバー」としての役割を果たしていると言えるでしょう。
5. 党内部会・議員連盟での活動
党内政策組織での中心的役割
打越さく良氏は立憲民主党内の様々な政策グループやプロジェクトチームで活躍してきました。前述の通り、ジェンダー平等推進本部副事務局長や選択的夫婦別姓実現本部長代行など、党の看板政策に関わる部署で中心的役割を担っています。
夫婦別姓本部では辻元清美本部長(党代表代行)を補佐し、他党とも連携しながら法案提出戦略を練りました。また旧統一教会被害対策本部副本部長としては、被害者支援団体との意見交換や与党提出法案の問題点洗い出しに尽力しています。
2022年には被害当事者(いわゆる「2世信者」)から直接ヒアリングを行う場にも同席し、霊感商法の実態や必要な救済措置について現場の声を党方針に反映させました。
政策部会での活動
党の政策部会(=部門会議)にも積極的に出席しており、厚生労働部会や法務部会では打越氏の発言が度々党の公式リリースに登場します。たとえば消費者問題調査会では旧統一教会問題に関連して消費者契約法改正案の議論をリードし、寄付の取消権期間延長など踏み込んだ案をまとめるのに貢献しました。
外交・安全保障部会では拉致問題対策本部副本部長の立場から、北朝鮮による拉致被害者家族との面会に同行し意見交換を行っています。こうした党内活動を通じて、単なる一兵卒ではなく政策形成の中核を担う存在として信頼を得ていることがうかがえます。
超党派議員連盟での活動
議員連盟(超党派の政策勉強会)では、ジェンダーや人権関連の連盟によく参加しています。例えばLGBT法連合会が主催する勉強会や、選択的夫婦別姓実現に向けた超党派議員連盟の会合に出席し発言しています。
2023年6月には超党派の婚姻平等(同性婚)推進議連が主催する院内集会に、打越氏が党を代表して登壇しました。そこで彼女は「30年も実現しなかった改革を今度こそ前に進めたい」と述べ、保守政権の下でも動き始めた司法判断(後述)の追い風を強調していました。
さらに共同親権に反対する議員連盟にも名を連ねています。離婚後の単独親権制度を維持すべきとの立場から、共同親権制導入に慎重な議員が集う超党派勉強会に参加し、児童虐待防止やDV被害者保護の観点から意見を述べています。これは弁護士としてDV事件に関わってきた経験を反映した活動で、家族法制を巡る重要な論点に一貫してコミットしていることがわかります。
地元課題への取り組み
また、新潟県選出議員として地元の課題にも取り組む議員連盟に参加しています。新潟ゆかりの議員が集う日本海沿岸振興連盟では、北陸新幹線延伸や日本海側の港湾整備について提言を行いました。
コメに関する勉強会(米政策推進議連)ではコメ価格と備蓄米制度の改善を求め、農林水産省に対して「米どころ新潟の声」を届けました。打越氏自身、「新潟の誇りであるお米を守る」と公約で述べていたこともあり、議連での発言に地元農家の切実な声を代弁する場面もあったようです。
このように、党内組織から超党派の枠組みまで幅広く参加し、打越議員は各所で存在感を発揮しています。特にジェンダー平等と家族政策に関する取り組みは党内外で評価が高く、「打越さくらに任せれば抜かりない」と信頼を勝ち得ている様子がうかがえます。
1期目の新人ながら豊富な専門知識と行動力で党の政策の柱を支えており、地味な調整役から前面に立った交渉役まで、縦横無尽の活躍ぶりです。
6. 政治資金・不祥事関連の記録
クリーンな政治活動記録
センシティブな側面として政治資金や不祥事の有無についても確認しましたが、打越さく良議員に関して目立ったスキャンダルや不正疑惑の報道は見当たりません。この10年間で、議員本人の失言・不祥事や公職選挙法違反などのニュースは皆無と言ってよく、クリーンな政治姿勢を貫いていると評価できます。
むしろ腐敗追及の側に回ることが多く、2023年の旧統一教会問題では与党議員と宗教団体の癒着を国会で追及する側に立っていました。
政治資金の透明性
政治資金収支報告をみても、収入源や支出に不明朗な点はありません。打越氏の後援会および党支部の政治資金収支報告書(新潟県選管公表)によれば、2022年の年間収入総額は約170万円、年間支出総額は約270万円程度で、差し引き約23万円の繰越金となっています。
個人献金が収入の大半を占め、企業・団体献金や政治資金パーティー収入は報告上ゼロでした。つまり資金面でも「草の根」志向が強く、支持者からの小口寄付で活動を賄っている状況がうかがえます。
この規模感は同じ野党議員としても質素な部類で、例えば地元新潟の有力議員である森裕子氏(元参院副議長)などと比べても支出総額はかなり少ないです。要因として、地盤看板カバンが乏しい新人であることに加え、派手な政治活動より現場主義の活動スタイルであることが考えられます。
いずれにせよ、金銭面で問題視される点はなく、公約に掲げた「クリーンでオープンな政治」を身をもって体現していると言えるでしょう。
倫理面での記録
倫理審査会や懲罰委員会にかかった記録もありません。国会議員としての言動に対する注意・処分歴はゼロであり、SNSでも大きな炎上や失言は見られませんでした。
強いて言えば、2020年頃に一部保守系メディアが「夫婦別姓やジェンダー政策に傾斜し過ぎだ」と批判的に取り上げたことがありましたが、あくまで政策論争の範囲であり不祥事とは無縁です。むしろ、旧統一教会問題追及では与党側からの反発も覚悟で踏み込んだ発言を行うなど、政治倫理に対しては厳格な姿勢を崩していません。
付言すれば、2019年の選挙戦でもクリーンなイメージ戦略が奏功しました。自民現職の塚田一郎氏がいわゆる「忖度発言」問題(国交副大臣時代の不適切発言)で批判を浴びていた追い風もあり、「クリーンな弁護士、新人打越さくら」という対比が有権者に響いたと分析されています。
当選後もそのイメージを裏切ることなく、政治とカネの問題とは無縁に活動してきた点は特筆に値するでしょう。
総じて、打越さく良議員の政治資金と倫理面の記録は良好であり、不祥事ゼロ・クリーン度満点の政治家と言えます。政治資金集めに奔走するより政策立案や現場対話に時間を割いている様子は、収支報告の数字からもうかがえます。
こうした姿勢は有権者の信頼を支える重要な要素であり、「裏金政治を許さず」との彼女の言葉が単なる美辞ではなく実践に移されていることを示しています。
7. SNS・情報発信活動
X(旧Twitter)での活発な発信
現代の政治家にとって欠かせない情報発信ツールであるSNSにも、打越さく良氏は力を入れています。とりわけX(旧Twitter)での発信は頻度が高く、国会質疑の様子や地元での活動報告、政策に対する意見表明などを精力的に投稿しています。
2025年6月現在、本人の公式アカウント(@sakurauchikoshi)のフォロワー数は約1万6千人に達しており、1期目の野党参院議員としては健闘していると言えるでしょう。投稿内容を見ると、夫婦別姓やLGBTQ差別解消といった自身の重点政策に関するものが目立ちます。
例えば国会会期中には「#夫婦別姓 求めます」「#LGBT平等法 今国会で」などのハッシュタグを付けて積極的に情報発信し、関連する記者会見動画や質問主意書提出をリアルタイムで報告しています。
2023年秋に選択的夫婦別姓を求めるオンライン署名が話題になった際には、そのリンクを共有し「声を形に。皆さんの署名が社会を動かします」と呼びかけていました。この投稿は多くの賛同リツイートを集め、SNS上でも共感の輪を広げました。
親しみやすさを演出する発信
また、自身の人となりや日常を伝える発信も心がけています。プロフィールには「塩むすびが好きな弁護士。縁の下の力持ち志向。文章がくどくなりがちなのが悩み。」とユーモラスな自己紹介を添え、硬い政策通のイメージに親しみやすさを加えています。
実際、「文章がくどい」という自己分析通り、彼女のブログ記事やSNS解説文は非常に丁寧で長文になる傾向があります。Facebookでは活動報告を詳細に綴った投稿が多く、読者から「わかりやすい」「熱意が伝わる」と評価されています。
動画コンテンツへの挑戦
YouTubeなど動画媒体では、党公式チャンネルの企画に登場しています。2023年には立憲民主党の「議員ルームツアー」シリーズで打越氏の議員会館事務所が紹介されました。本で埋め尽くされた書棚や条文集が積まれたデスクなどが映し出され、視聴者から「さすが弁護士先生、勉強熱心!」とのコメントが寄せられました。
動画内で打越氏は愛用の六法全書を手に、「毎日新しい判例チェックが日課です」と笑顔で語り、政策づくりの裏側を垣間見せています。この動画は党の公式YouTubeやTwitterでも拡散され、打越氏の人柄アピールに一役買いました。
さらにTikTokやInstagramといったプラットフォームにも挑戦しています。TikTokではスタッフ運営のアカウントで新潟県内各地を巡る様子を発信し、若者に人気のBGMに乗せて地元グルメや観光スポットを紹介する試みも行われました。
フォロワー数は数百人規模とまだこれからですが、硬派な国会質問だけでなく地域愛や親しみやすさを発信することで、新たな支持層の開拓を目指しているようです。
発信戦略の特徴
情報発信の戦略として感じられるのは、「政策の芯はブレずに、一方で表現は柔らかく」という姿勢です。SNSでは専門用語をなるべく嚙み砕き、「例えば...」「もし〇〇だったらどう思いますか?」と読み手に寄り添う語り口を意識しています。
その結果、夫婦別姓や同性婚といったテーマでも多くの一般ユーザーから肯定的なコメントが寄せられ、ネット上での支持層を広げています。特に女性ユーザーからは「同じ女性として心強い」「ずっと応援しています」といった声が見られ、彼女の発信が共感を呼んでいる様子がうかがえます。
フォロワー数の推移
フォロワー数の推移に大きな増減はありませんが、節目節目でじわじわと支持を増やしています。2022年7月の参院選時には1万人弱だったフォロワーが、2023年末には1.5万人を超え、2025年の再選キャンペーン開始時には1.6万人台に達しました。
急激なバズこそないものの、一貫した情報発信により着実にファンを増やしている印象です。党の公式アカウントや有志が運営する議員ウォッチ系サイトでも「SNS発信度が高い議員」として名前が挙がることがあります。
総じて、打越さく良議員の情報発信は真面目さと温かみを兼ね備え、彼女の政治姿勢を如実に映し出しています。SNSを通じて国会での活動をオープンにし、有権者との双方向コミュニケーションに努める姿勢は、「開かれた政治」の実践そのものでしょう。
今後もネット世代との接点を拡大しつつ、発信力を選挙戦や政策支持拡大に活かしていくことが期待されます。
8. 公約実現度の検証
全体的な評価
最後に、2019年の当選時に打越氏が掲げた公約がどの程度実現に至ったか検証します。結論から言えば、与党ではない野党議員の立場ゆえ、公約の直接実現(制度化)にはハードルがあり、達成状況は部分的にとどまっています。
しかし、一つひとつの公約について国会内外で追及し、他の政治主体を動かす役割は十分に果たしてきました。以下、主要公約ごとにギャップとその要因を分析します。
(1)減税と物価対策
打越氏は消費税減税やガソリン税引き下げを訴えましたが、これらは実現していません。与党の姿勢は一貫して慎重で、石破首相(自民党)は「消費税率引き下げは選択肢にない」と明言する状況です(2025年時点)。
物価高騰への家計支援策として、岸田政権はエネルギー高騰対策の補助金給付などを行いましたが、打越氏が主張したような恒久的減税策には至りませんでした。これは野党の政策が政権に届かなかった形ですが、一方で最低賃金については彼女の目標1500円に向けて一歩近づいています。
政府は年率3%超の最低賃金引き上げを掲げ、2023年度は全国平均1,004円となり初めて1,000円を超えました。打越氏自身も国会で「最低賃金の地域格差を是正し早期に全国1000円、将来的に1500円を」と提言し続けてきており、政府も「できるだけ早期に全国平均1,500円を目指す」と答弁するまでになりました(総理答弁、2023年)。
物価高騰下で賃上げ機運が高まったことも追い風となり、彼女の公約が政策論争を先取りした格好です。ただし消費税ゼロやガソリン25円減税といった大胆策は依然実現せず、「家計第一」の公約が花開くには政権交代などの環境変化が必要といえます。
(2)ジェンダー平等と家族法制改革
ここが公約実現の最大のギャップと言えるでしょう。選択的夫婦別姓制度も同性婚合法化も、2025年現在まだ実現していません。しかし進展が全くなかったわけではなく、司法や世論が公約実現を後押しする動きを見せています。
同性婚を巡っては、札幌・東京・名古屋・福岡・大阪など全国各地の裁判所で違憲訴訟が提起され、その判決が相次ぎました。2023年から2024年にかけて札幌高裁、東京高裁、福岡高裁、名古屋高裁、そして大阪高裁と5つの高等裁判所が連続して「現行の同性同士の婚姻を認めない法制度は違憲」と判断する異例の事態となりました。
司法史上例のない高裁違憲判断の連続は国会に大きな宿題を突き付け、与党内でも慎重論が弱まりつつあります。打越氏はこうした動きを受け、「司法にボールを投げ返された立法府が応える番」と繰り返し訴えています。
一方、夫婦別姓についても状況は変わりつつあります。世論調査では賛成が約7割に達し、自民党支持層でも6割強が容認するとのデータが示されました。実際、2023年の朝日新聞世論調査でも選択的夫婦別姓賛成73%(自民支持層でも64%)という結果が出ています。
これらを背景に、与党公明党も2024年には選択的夫婦別姓制度の検討に前向きな姿勢を見せ始めました。しかし最終的に自民党が難色を示し、石破政権下では法案提出が見送られています。
打越氏にとって忸怩たる状況ですが、公約実現に必要な土壌は確実に耕されてきました。彼女自身の尽力もあり、国会内では選択的夫婦別姓の立法作業チームが設置され、条文案も既に党内で用意されています。
残る課題は与党内の合意形成のみで、打越氏は引き続き超党派の協力を呼びかけています。「時間がかかっても必ず実現させる」と決意を新たにしており、公約実現は"時間の問題"にまで近づいたと言えるでしょう。
(3)子育て支援策
児童手当の大幅拡充は彼女の公約の目玉でした。これについては部分的に実現が進んでいます。岸田政権は「異次元の少子化対策」の一環として2024年度から児童手当の所得制限撤廃と支給対象を18歳まで延長する方針を決定しました(現行中学生まで→高校3年生相当まで拡大)。
打越氏の提案とほぼ同じ方向性であり、金額も3人目以降は倍増(1人月3万円)する検討がなされています。ただし問題は財源で、政府案では子育て支援新制度の財源を医療保険料に上乗せ徴収する仕組みを取る予定です。
これには野党から「事実上の増税であり子どもがいない世帯にも負担を強いる」と批判が出ており、打越氏も厚労委員会で「恒久策なら税によるべきで、保険料加算は筋が違う」と反対しています。
彼女としては本来、大企業減税を見直すなど富の再分配で捻出すべきとの立場ですが、政権与党は社会保険方式を選びました。この点、公約とのギャップは資金調達方法にあります。
しかし結果的に児童手当が高校生世代まで拡充されること自体は、公約の方向性に合致する前進です。育休給付の充実や保育士・介護士の賃上げも、政府が一部手当てを始めました。
2022~2023年にかけ、保育・介護職員等処遇改善として月9千円相当の賃上げが実施されています。額としては彼女の理想(「すべての業種で大幅賃上げ」)には遠いものの、社会的気運を高める役割は果たしたでしょう。
「子ども家庭庁」創設も公約にはなかったものの政府主導で実現し、子育て政策推進の体制整備が進みました。総じて子育て分野では、公約が政府を刺激し一定の政策実現に結び付いた面があります。
一方、打越氏が主張していたような全児童への一律給付(ユニバーサル・ベーシックサービス的発想)は財源論から先送りされており、まだ道半ばです。
(4)エネルギー・原発政策
「原発ゼロ社会の実現」「原発再稼働ストップ」は新潟選出議員として譲れない公約でした。しかし現実には、政府は原発回帰の姿勢を強めています。2022年には原発の新増設や運転延長も視野に入れる政策転換が打ち出され、柏崎刈羽原発についても安全性確認後の再稼働を政府は諦めていません。
地元新潟県は花角知事のもとで住民投票的な手続きには慎重で、再稼働判断はまだ先送りされていますが、少なくとも国の方針として「原発ゼロ」は遠のいた状況です。
打越氏は国会の場で「民主的プロセスなくして再稼働なし」の原則を訴え続け、参院経産委員会や予算委員会でも柏崎刈羽の問題を取り上げました。しかし与党の数の力の前に政策転換には至らず、公約実現度という点では厳しい結果です。
ただ、再生可能エネルギー推進については政府も2030年の電源構成目標を再エネ比率36~38%に引き上げており、再エネ関連予算も倍増しています。打越氏が訴えた分散型エネルギー社会への転換はまだ緒についた段階ですが、2050年カーボンニュートラル目標に向けて国全体が舵を切った点で大局的には公約方向に沿っています。
彼女自身は引き続き「原発ゼロ基本法案」の提出を目指し、野党内で調整を図っています。これは電力需給への現実的配慮から即時ゼロではなく段階的廃止を目指す案とされ、与党にも理解を求めやすい内容です。
選挙前には公約として再度打ち出される見通しで、公約実現に向けた戦いは続いています。
(5)クリーンな政治・行政改革
政治倫理の分野では、公約の一部が実現しました。岸田政権下で2022年に政治資金規正法が改正され、収支報告書へのインターネット公開や領収書の電子データ提出が義務付けられることになりました(施行は段階的)。
これは打越氏ら野党が長年求めてきた透明化策の一つで、第一歩とはいえ実現した形です。ただ、公約にあった企業・団体献金の禁止や政治とカネの根絶にはまだ遠く、与党は企業献金全面禁止には応じていません。
立憲民主党など野党は「企業・団体献金禁止法案」を何度も提出していますが与党の壁を崩せず、引き続きの課題です。
行政監視の面では、桜を見る会問題や森友学園問題等で野党合同ヒアリングに打越氏も参加し、公文書管理や説明責任の徹底を追及しました。これらは公約で掲げた「透明で公正な政治」の具体的実践ですが、政府与党から明確な再発防止策は示されず、モヤモヤしたまま終わっています。
一方、打越氏が訴えた憲法擁護については、2021年以降も与党が改憲発議を強行することはなく、彼女が危惧した「緊急事態条項」の拙速な導入などは回避されています。
参院憲法審査会では緊急集会の権限を巡る議論の際、打越氏が「参議院の役割をないがしろにする議論は認められない」と主張し、慎重審議を促しました。結果、自民党も2025年夏の参院選までは目立った改憲論議を控えており、当面の間は憲法3原則が守られる見通しです。
これも広義には公約(憲法理念を守る)の達成と言えるでしょう。
総合評価
以上の検証を総合すると、打越さく良議員の公約実現度は半分程度と評価できます。直接実現した項目は少ないものの、野党議員として政策課題を提起し続けた結果、一部は政府与党を動かし(児童手当拡充・処遇改善・政治資金透明化など)、他も司法や世論を動かす形で実現への道筋が見え始めています。
実現できなかった公約についても、その要因は打越氏個人の努力不足ではなく、与党の政策判断や制度上の制約によるものです。むしろ彼女自身は公約を「言いっぱなし」にせず国会質問や議員立法という形で何度も蒸し返し、実現への執念を示している点に大きな意義があります。
例えば夫婦別姓や同性婚のように一見ハードルが高い公約も、粘り強い活動であと一歩まで迫っており、打越氏の在職中に実現する可能性が高まっています。
打越さく良議員は自身の公約を「長期戦でも必ず成し遂げるべき約束」と位置づけており、有権者との契約を果たすため尽力しています。1期6年のうち前半は準備期間、後半で成果が芽吹き始めた印象で、今後再選されれば一層の実現が期待できるでしょう。
総じて、野党という制約を考慮すれば公約実現度は善戦しており、その努力は有権者からの一定の評価と信頼につながっているものと考えられます。
参考資料
- 衆議院・参議院公式サイト(議員情報ページ、議案情報検索)
- 打越さく良議員 公式ウェブサイト(プロフィール、政策集、議会活動報告)
- 立憲民主党公式サイト(ニュースリリース、議員紹介)
- Wikipedia「打越さく良」(有志編集の経歴・選挙データ)
- 『朝日新聞』ほか主要メディア報道(世論調査、国会発言に関する記事)
- 国会会議録検索システム(参院本会議・委員会での発言記録)
- 新潟日報・共同通信等 地方紙・通信社報道(選挙戦況、地元活動に関する記事)
- 新潟県選挙管理委員会「政治資金収支報告書」(打越さくら後援会収支概要)
- Yahooリアルタイム検索(SNSフォロワー数情報)
- 裁判所判決文・弁護士会声明(同性婚訴訟の違憲判断に関する情報)
1 3 打越 さく良(うちこし さくら):参議院 https://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/giin/profile/7019006.htm 2 打越さく良 - Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/打越さく良