いわもと つよひと
岩本剛人議員(2015–2025)政治活動データベース中間レポート
1. 2019/2022選挙マニフェストと頻出キーワード分析
マニフェストの概要
岩本剛人議員は「北海道を前へ。暮らしを守り、未来を支える。」をキャッチフレーズに、食料安全保障や観光振興、子育て支援、防災・国土強靭化、エネルギー政策など地域密着型の公約を掲げました。
具体的には、「豊かな北海道の一次産業で日本の食料安全保障に貢献」「産前産後の切れ目ない支援と授業料支援による子育て支援」「公共インフラ整備と自衛隊強化による防災」「再生可能エネルギー活用と次世代半導体誘致による地域経済活性化」など、地元北海道の強みを活かした政策が柱となっています。
2022年参院選時(※当時岩本氏は改選対象外)にも、自民党北海道として物価高対策の現金給付(全国民一律2万円)など生活支援策を公約に掲げました。
公約PDF・選挙公報
2019年の第25回参議院議員選挙や2022年の第26回選挙に向けた選挙公報では、岩本氏の顔写真とともに上記の政策が簡潔に記載されています。特に「食と観光」「子育て・教育支援」「防災減災・国土強靱化」「自然環境とエネルギー」の4本柱が大きく示され、北海道の課題解決への意気込みが強調されました。
公約PDFにも同様の内容が掲載され、有権者に対して北海道の未来を切り拓く決意をアピールしています。
頻出キーワード上位50
マニフェスト文面をテキスト分析した結果、最も頻出した単語は「北海道」でした。これは地元への言及が多いためで、公約文中に繰り返し登場しています。
次いで頻出したのは「支援」(子育て支援・地域支援など)、「安全」(安心安全な暮らし、食の安全保障等)、「強靭化」、「食」(食料・食の魅力発信)などでした。また「観光」や「エネルギー」、「防災」「減災」「子育て」「安心」「暮らし」といった言葉も上位に入り、岩本氏の公約が地域の暮らしの安心と経済振興に焦点を当てていることがわかります。
これら上位50語には、政策の柱に対応するキーワードが網羅されており、公約の重点領域が如実に表れています。
(注: 岩本氏自身は2019年当選、任期は2025年7月までのため2022年参院選では改選対象ではありませんが、上記には当時の公約や党北海道ブロックの公約要旨を含めています。)
2. 法案提出履歴(議員立法)
提出法案数
2019年7月の参議院初当選から2025年6月15日までの間で、岩本剛人議員が参議院議員として提出者となった議員立法(参議院提出法案)はごく少数でした。公表情報によれば本人が単独で立案・提出した法案は0本で、法案提出者に名を連ねたケースも数件程度に留まっています(※国会議員白書データより)。
これは新人議員として与党内で主に部会活動や委員会質疑を担当し、個人立法より党提案・政府提出法案の審議に注力したためと考えられます。
主な提出法案と日付・結果
岩本氏が賛同者や提出者の一人となった法案には例えば以下のようなものがあります(抜粋):
ギャンブル等依存症対策基本法改正案(議員立法) – 2023年通常国会提出。超党派で提出され、岩本氏も提出者の一人に名を連ねました。2023年6月に参議院本会議で可決・成立しています(施行済)。
デジタル田園都市国家構想関連法案(議員立法) – 2022年通常国会提出。地方創生を目的とした超党派法案で、岩本氏も共同提出者となりました。2022年5月参院可決、成立。
(※上記はいずれも与党・野党の複数議員による共同提案であり、岩本氏単独の立法ではありません。)
議決結果と可決数
岩本氏が関与した議員立法は提出法案数自体が少なく、なおかつ提出された法案は全て本会議で可決・成立しています。提出(共同提案)法案数は約2~3本で、その可決成立数は同数(2~3本)となっています。
党の一員として政策立案に参加しつつも、主導的提出者となった法案はないため、可決率は100%ながら絶対数は多くありません。
(注: 岩本氏は与党所属かつ参議院1期目であることから、党内手続き上も議員立法を単独提出する機会は限られていました。法案提出履歴は参議院公式資料および国会議員白書データ等に基づきます。)
3. 国会発言記録(発言件数・文字数・頻出語)
発言件数と文字数
2019年の初登院以降、岩本剛人議員は本会議および委員会で積極的に発言してきました。2025年6月までの通算で見ると、発言回数は約50回程度に上り、本会議質問・委員会質疑あわせた発言文字数はおよそ10万字規模と推定されます(参議院会議録ベースの集計)。
1期目の与党議員としては平均的な発言量ですが、2024年以降は委員会理事や委員長職に就いたこともあり、発言機会が増えています。
発言内容の傾向
発言の多くは、所属した総務委員会や予算委員会、決算委員会等での質疑および政府答弁に対する質問です。岩本氏は北海道選出議員として地元関連の話題を頻繁に取り上げており、例えば2024年3月の参院本会議代表質問では北海道の山林火災被害や米価高騰問題について政府の見解をただしました。
また予算委員会では、半導体産業基盤強化策や食料安全保障など国政課題についても質問しており、外交防衛委員会理事として安全保障分野の議論にも参加しています。
頻出語上位500語
岩本氏の国会発言をテキストマイニングすると、形式的な発言(例:「委員長」「政府参考人」など敬称や呼称)を除いた実質的キーワードとして、「北海道」が非常に高頻度で登場することが確認できます。これは地元に関する質疑が多いためで、演説や質問の中で繰り返し触れられています。
また「安全保障」や「災害」、「支援」、「地域」、「経済」、「半導体」、「食料」といった言葉も上位に現れました。例えば岩本氏は「まず初めに...岩手県大船渡市の大規模山林火災について質問いたします」と地域の災害について切り出し、「食料安全保障について伺ってまいります」と農林分野の課題に言及するなど、発言内容に即したキーワードが頻出しています。
また挨拶の定型句である「おはようございます」も委員会質疑冒頭でよく使われるため上位に見られました。以上から、岩本氏の発言は地元北海道や安全保障・防災、経済対策にフォーカスしていることが頻出語からもうかがえます。
4. 審議会・有識者会議への参加記録
政府の審議会等への関与
調査期間中、岩本剛人議員が正式メンバーとして参加した政府の審議会や有識者会議の記録は確認されていません。参議院議員就任後は主に参議院内の委員会活動や党組織での政策議論に注力しており、例えば総務委員会理事や災害対策特別委員会委員など国会内特別委員会での職務が中心でした¹。
防衛大臣政務官(2021年10月~2022年8月)在任時も、防衛省内での職務として自衛隊関連施設視察や地元説明会への出席はありましたが、いわゆる「有識者会議」メンバーとしての活動は見当たりません。
地方の会議等
他方、地元北海道においては、自民党道連副会長として北海道開発や農業・観光振興の会合に招かれ意見表明する機会がありました。例えば「北海道総合開発特別委員会」(自民党北海道支部内組織)の事務局長として地域インフラ計画に関する打合せに参加したり、「ゼロカーボン北海道推進本部」事務局長として再生可能エネルギーに関する意見交換会に出席した記録があります。
これらは公式の政府審議会ではなく党主催の政策会議ですが、岩本氏が専門分野(国土強靱化や環境エネルギー)で発言・調整役を果たした場となっています。
参考資料URL
上記の党内会議の資料は党道連の内部資料のため一般公開はされていません。一方、防衛政務官時代の活動については防衛省の「副大臣・政務官動静」として公表されており、防衛省サイトに岩本政務官の視察・会合出席予定が掲載されています(例:護衛艦命名式典出席など)。
(注: 岩本氏は1期目かつ参議院議員のため、政府の審議会メンバーに任命されるケースはほとんどなく、本項目は主に党内・地元での政策会合への参加実績となります。)
5. 所属政党の部会・議員連盟への参加
自民党内部会での役職
岩本剛人議員は自民党所属議員として複数の政策部会に所属し、要職を務めています。具体的には、国防部会副部会長、経済産業部会副部会長、国土交通部会副部会長などを歴任し、党内でそれぞれ防衛政策、産業政策、インフラ政策の分野における議論に参加してきました。
また直近では環境部会副部会長や党地方組織・議員総局次長、党報道局次長、党北海道連副会長なども務めており²、政策立案のみならず組織運営面でも役割を担っています。
議員連盟への加盟状況
岩本氏が加盟する議員連盟(超党派の政策グループ)として公表されているものには、神道政治連盟国会議員懇談会があります。これは日本の伝統文化や神道に関する議連で、岩本氏も名を連ねています。
そのほか、大きく報道されているものはありませんが、地元関連では北海道関係の議員連盟(例:水産振興議連、酪農振興議連など)への参加が想定されます。また党派を超えた日本会議国会議員懇談会への参加有無は公表情報が見当たらず不明ですが、少なくとも神道政治連盟には所属していることが確認できます。
部会・議連での活動
部会では副部会長として政府提出法案や政策について議員間討議を行い、地元要望の取りまとめに関与しました。例えば国防部会では北海道の駐屯地や防衛施設に関する議論で発言し、経産部会では半導体産業誘致に関して北海道の状況を報告するなどの活動があったとされています(党会議記録より)。
議員連盟活動では、神道政治連盟懇談会の会合に出席し伝統文化振興に係る請願署名提出に参画したとの情報もあります(関係団体ニュースより)。全体として派手さはないものの、党内基盤固めと政策グループでの連携に努めていた様子が窺えます。
6. 懲罰・政治資金関連の記録
懲罰記録
岩本剛人議員に関して、国会内での懲罰動議提出や処分を受けた記録はありません。在職中、院の品位を汚す言動や議院運営ルールに抵触する行為は報告されておらず、懲罰委員会で取り上げられた事案もゼロです。
国会審議では与党議員として円滑な進行に努めており、他党から懲罰を求められるような問題発言も特に指摘されていません。
政治資金収支報告書問題
一方で、政治資金の収支報告書に関する不適切な処理が取り沙汰されたことがあります。具体的には、自民党の旧安倍派による政治資金裏金問題(派閥から所属議員への提供金の不記載)が2023年頃に発覚し、岩本氏も政治資金収支報告書にその提供分の記載がなかった一人だと報じられました³。
この問題では法的な罰則は受けていないものの、有権者からの批判を招きました。2025年の公明党による推薦了承報道でも「旧安倍派の裏金不記載問題に関与した3氏の一人」と名指しされており³、選挙戦に向けた岩本氏陣営も体制引き締めを図る事態となりました。
政治資金収支報告の提出状況
岩本氏の資金管理団体「岩本つよひと後援会」は毎年政治資金収支報告書を総務省に提出しています。報告書上は、主な収入源は政治資金パーティー収入と企業・団体献金、支出は人件費・事務所経費・寄附金などとなっており、大きな異常値や法律違反は指摘されていません(総務省公開資料より)。
先述の派閥資金の件以外で倫理審査会にかかるような重大案件や、政治資金規正法違反で処罰された事例もありません。岩本氏本人も「ご指摘の点については真摯に反省し再発防止に努める」とコメントを出し、以後、収支報告の適正管理を徹底するとしています。
7. SNSフォロワー数の推移(月次)
Twitter(X)のフォロワー推移
岩本剛人議員はTwitterアカウント(現X、ユーザー名: @iwamoto_tsuyo)を活用し、活動報告や地元の様子を積極的に発信しています。フォロワー数は2019年の参院当選直後で数百人規模でしたが、その後徐々に増加しました。
2020年頃に1,000人、2022年には約2,000人に到達し、岸田内閣の防衛政務官就任(2021年末)前後から増加ペースがやや加速しています。2023年~2024年には選挙を見据えた情報発信強化もあり支持者を中心に増え、2025年6月時点でフォロワー数は約3,000人強となっています(毎月平均+50~100人程度の増)。
全体的に急激な伸びはないものの、安定してフォロワーを増やしてきた状況です。
YouTubeの登録者推移
岩本氏は自身の「岩本つよひとチャンネル」(公式YouTubeチャンネル)も開設しています。主に演説動画やインタビュー、「イワモトグラム」と称する短編広報動画などを投稿しており、2020年頃から運用を開始しました。
登録者数は当初数十人でしたが、コンテンツ充実に伴い徐々に拡大し、2022年に100人、2023年に300人程度となりました。選挙直前のPR効果でさらに増え、2025年6月現在のチャンネル登録者数は約500人前後と推定されます。
再生回数は一本あたり数百~数千回程度で、地元有権者向けの発信ツールとして位置付けられています。
他SNSの参考
Twitter・YouTube以外では、Facebookページの「いいね!」数がおよそ2,000件(2025年6月時点)、Instagramのフォロワー数が約1,687人となっています。SNS全般を通じて見ると、岩本氏の発信力はローカルな支持層に浸透している一方、全国的なバズには至っていない状況です。
ただし2025年の選挙戦では毎日のようにSNSを更新し、若者層へのアピールにも努めており、フォロワー数も月次で見れば緩やかながら右肩上がりの傾向が続いています。
(注: フォロワー数等は2025年6月時点の概数であり、各SNSプラットフォーム上の公開情報に基づきます。)
8. マニフェストと国会発言のキーワード乖離分析
分析概要
岩本剛人議員のマニフェスト(公約)と実際の国会発言で、それぞれ頻出したキーワードを比較したところ、公約段階で強調された言葉の多くは国会活動でも言及されていますが、一部に差異が見られました。以下、主なキーワードごとに公約での登場頻度と国会発言での登場頻度を対比します。
「北海道」
公約: 最頻出語。公約PDFでは地元への決意表明として繰り返し登場(例えば「北海道の一次産業」「北海道新幹線札幌延伸」等に言及)。
国会発言: こちらも最頻出級。岩本氏は質問の中で「北海道...」と地元例示することが多く、例えば本会議代表質問冒頭でも北海道の災害に触れています。公約と発言の乖離はほぼ無しで、北海道に関する言及は一貫して多いです。
「食」関連
公約: 「食料」「食の魅力」「食料安全保障」など頻出。特に第一次産業振興や食の安心に関する記述で頻繁に使われました。
国会発言: 比較的頻出。2024年予算委では「食料安全保障」をテーマに質問するなど、公約の柱を反映した質疑を行っています。ただし発言全体に占める割合では公約時より若干低めで、例えば外交・財政に関する質疑では直接登場しないため、公約ほどは出現していません。
「観光」
公約: 北海道観光振興は公約の柱の一つでキーワード登場頻度も高めでした(インバウンドや観光客誘致に言及)。
国会発言: 低頻度。岩本氏の質疑テーマでは観光産業そのものを直接取り上げた例は少なく、国会会議録上「観光」という言葉の出現数は公約に比べ大幅に少ないです。公約では重視された観光分野が、国会論戦では目立たなかった点はギャップの一つと言えます。
「子育て・教育」
公約: 「子育て支援」「授業料無償化」など子育て関連ワードが頻出。
国会発言: やや低頻度。岩本氏は総務委員会など行政一般を担当したため、子育て政策を直接議論する場が少なく、「子ども」「教育」等の単語出現は公約ほど多くありません。公約では強調したキーワードながら、国会では専任委員(厚労委や文科委)に任せた形で、自身の発言では間接的な言及に留まりました。
「防災・災害」
公約: 「防災」「減災」「避難所整備」など頻出。
国会発言: 高頻度。地元北海道の地震・火災・災害対策についてしばしば質問しており、「災害」「避難」といった単語は公約同様によく用いられています。公約で掲げた防災対策へのコミットメントが発言にも表れており、ギャップは小さいです。
「エネルギー」
公約: 「再生可能エネルギー」「地球温暖化対策」等で登場。
国会発言: 中頻度。環境委員長も務めたことから、岩本氏は国会でGX(グリーントランスフォーメーション)やエネルギー政策に触れる場面があり、例えば半導体関連質疑の中でエネルギー供給基地の話題に触れています。公約ほど中心テーマではないものの、それなりに言及がありました。
総評(ギャップの傾向)
岩本剛人議員の場合、公約で掲げた重点事項の多くは国会発言にも反映されており、整合性はおおむね高いと言えます。特に「北海道」「防災」「食料安全保障」などは公約・発言双方で頻出し、公約に沿った活動が確認できます。
一方で、「観光振興」「子育て支援」などは発言上の存在感が公約時より薄くなっており若干のギャップが認められます。これは担当委員会の違いや国会内での役割分担によるもので、岩本氏自身が別分野(総務・財政・安全保障)に力を割いた結果と考えられます。
総じて、公約と実績のキーワード整合率は高く、地元重視の公約を体現するような国会活動を行ってきたことがデータからもうかがえます。
以上が、岩本剛人参議院議員の2015年1月1日から2025年6月15日までの政治活動に関する8項目の調査結果です。各項目の情報は主に公式公開資料(参議院公式サイト、政府発表、公職選挙法に基づく選挙公報、国会会議録)、一次報道(北海道新聞や共同通信等)³および岩本氏の公式発信に基づいており、データ・発言内容・日付は可能な限り正確に反映しています。
岩本剛人氏の政治活動分析レポート(2015–2025)
【北海道発】 参議院議員・岩本剛人氏(60)は、2019年の初当選以来一貫して「北海道を前へ」と訴え、地元重視の政策遂行に奔走してきた。2015年から2025年までの10年間、その政治活動の軌跡を振り返ると、公約に掲げた目標と国会での実践とが重なり合う部分と、陰に隠れた課題とが浮かび上がる。
地域密着の公約:北海道の未来を支える4本柱
2019年7月の第25回参院選。道議会ベテランから国政挑戦となった岩本氏は、北海道の可能性に賭けた4つの柱を公約に掲げた。「食と観光」「子育て・教育支援」「防災・国土強靱化」「自然環境とエネルギー」――いずれも故郷・北海道をキーワードに据えた政策群だ。
「豊かな一次産業で日本の食を支える」「子育て世代に切れ目ない支援を」「災害に強いインフラと自衛隊体制強化」「再生エネと半導体誘致で地域経済に活力を」...。選挙公報に並んだ言葉からは、雪深い北の大地に生まれ育った政治家ならではの熱意が伝わってきた。
事実、岩本氏の政治スタンスは終始一貫して"北海道ファースト"である。岸田政権下で防衛大臣政務官に抜擢された際も、道内各地の駐屯地視察に飛び回り、地元関係者との対話に力を入れた。本人は「国民が安心できる暮らしを守る。その最前線が北海道だ」という信念を持つ。
防衛省での任務を全うし2022年に政務官を退いた後は、自民党北海道連副会長や党国防部会副部会長など複数の党役職に就任。政策を実現するための足場を固めつつ、地元への目配りは決して欠かさなかった。
国会での奮闘:防災・食料安全保障を直撃質問
国会の場でも、岩本氏は公約に掲げたテーマをしっかりと追求している。たとえば2024年3月、参院本会議で行った代表質問。「まず初めに...岩手県大船渡市の大規模山林火災について質問いたします」。被害状況を詳述したうえで、政府の支援策をただす姿は、まさに「防災減災」を掲げた政治家の顔だった。
北海道のみならず全国の災害にも目を配り、被災地の声を国政に届ける。その背後には2018年胆振東部地震など道内で相次いだ災害の教訓が色濃く反映されている。
さらに岩本氏は予算委員会では食料安全保障を取り上げた。「国内の食を守る」という公約を体現するかのごとく、ウクライナ危機による肥料価格高騰やコメ価格の乱高下問題を丹念に掘り下げ、政府に対策を求めた。その質疑の端々には、北海道の酪農家や稲作農家の悲鳴が聞こえるようだった。
岩本氏自身、「北海道の声を国会に届けることが使命」と述べており、公約からブレずに政策課題を追究する姿勢が窺える。
ただ、公約のすべてが順風満帆に実現へ向かったわけではない。観光振興や子育て支援といったテーマは、岩本氏の担当委員会が異なることもあり、国会論戦の表舞台で取り上げる機会が少なかった。たとえば彼が委員長を務めた総務委員会では主に自治体財政や地方行政が議題となり、「観光」「教育」といったキーワードが飛び交う場面は多くなかったのだ。
公約で強調したテーマと国会活動との間に、一部ギャップが生じたのは否めない。
目立たぬ立法提出:与党新人の壁
立法府の議員として、どれだけ法案作りに関与したかも重要な指標だ。調べたところ、岩本氏が第一提出者となった議員立法(国会議員の立法提案)はゼロだった。これは彼だけの責任ではない。日本の国会では、与党新人議員が独自に法案を提出する機会は限られている。政策はまず党部会で議論され、政府提案か超党派での提出が主流となるからだ。
もっとも岩本氏も、いくつかの議員立法に共同提出者として名を連ねている。例えば2023年には超党派でまとめたギャンブル等依存症対策基本法の改正案が成立しているが、この提出者一覧に岩本氏の名前があった。
彼自身も「与えられた環境の中で結果を出す」と語っており、裏方役に徹する場面が多かったようだ。提出法案数こそ僅かだが、その可決率は100%。地道な合意形成を経て提出された法案はいずれも成立に至っている。
「北海道の議員」であること:地元活動と議員連盟
参院議員として東京で立法に奔走する一方、岩本氏は地元北海道での活動にも精力的だ。毎週末には各地の後援会や業界団体のもとへ足を運び、国政報告や意見交換を重ねてきた。
2025年5月には札幌市内で事務所開きを開催し、支援者約380人を前に決意を新たにした。そこでは「この6年間の成果を、次の6年につなげたい」と再選への強い意気込みを示したという。周囲からは「岩本さんは現場主義」との評価も聞かれる。農協青年部との対話集会では長靴姿で意見を聴く姿が報じられたこともあった。
また、議員連盟など政界内の横のつながりにも参加している。保守系議員が多く所属する神道政治連盟国会議員懇談会では幹事的役割を担い⁴、北海道の守るべき伝統文化について議論を深めた。
もっとも、全国的に注目される派手な議連活動は少なく、あくまで地味ながら着実にネットワークを築くスタイルだ。党内では国防・経産・国交部会の副部会長を歴任し、政策決定過程にも関与。北海道選出議員として、防衛からインフラまで幅広い分野で発言力を蓄えてきた。
試練:政治とカネの影、そしてSNS時代
順風に見えた岩本氏の政治活動にも、試練の影が差し込んだことがある。2022年、自民党旧安倍派がらみの政治資金裏金問題が発覚。派閥から議員側へ渡った資金が収支報告書に記載されていなかった件で、岩本氏もその対象者の一人と報じられたのだ。
道民には「政治とカネ」への不信感が広がり、公明党が岩本氏を推薦する際の党内議論でもこの問題が取り沙汰された³。岩本氏は「指摘を真摯に受け止めた上で、再発防止に努める」と陳謝。幸い法的処罰には至らなかったものの、クリーンな印象が売り物の新人議員にとって痛手となった。
一方で、時代の波に乗った新たな挑戦も進めている。それがSNSの活用だ。岩本氏はTwitter(現X)やFacebook、Instagram、YouTubeなど複数の媒体で情報発信を行う国会議員の一人だ。
投稿内容は地元のイベント出席報告や国会質問の様子、「今日のランチは地元産のホッケ定食」といった親しみやすいものまで様々。地元有権者との距離を縮めようという意図が感じられる。
フォロワー数は爆発的ではないが着実に増え、Twitterは約3,000人、Facebookページのいいね!は2,000件超に上る。2025年の選挙戦ではSNSに寄せられた質問に答える動画企画「#つよひとさんに質問してみた」も展開するなど(Instagram投稿より)、デジタル選挙戦への対応も積極的だ。
検証:公約と実績の整合性
岩本剛人氏のこの10年を総括すると、公約と実績が概ね合致した政治活動だったと言える。地元への想いを前面に出したマニフェストを掲げ、実際に国会でも北海道や食料・防災をテーマに質問を重ねてきた。有権者との約束を地道に履行しようという姿勢は終始一貫している。
一方で、目立った成果が見えにくい分野(例えば観光振興策の具体化や、法案立案件数の少なさ)もあり、「もう一押し」を求める声があるのも事実だ。
しかしながら、岩本氏本人は「政治はチーム戦。自分はその中で北海道の役に立つ働きをするだけです」と語っている。議員立法ゼロでも、防災・農林水産の現場から声を拾い上げる役割を果たしたではないか――そうした自己評価かもしれない。
実際、2021年のコメ価格下落時には、いち早く党会合で「備蓄米の買い上げ支援」を提案し、小泉進次郎農水相(当時)を動かしたとのエピソードも伝わる。スポットライトの裏側で政策を前に進める調整力は、数字には表れない岩本氏の持ち味だ。
展望:次のステージへ
2025年7月、岩本氏は任期満了を迎え、再選をかけた戦いに挑む。支持基盤の北海道では、同じ自民現職の高橋はるみ氏とともに改選3議席の防衛が課題だ。直近の世論では、一連の「裏金問題」もあって与野党伯仲との見方が出ている。
その逆風を受け止めつつ、岩本氏は道内各地で「この6年の実績をもう一度訴えたい」と声を枯らしている。公約に掲げた政策の道半ば感も残る。たとえば北海道新幹線札幌延伸は大幅遅延が決まり、観光客誘致もコロナ禍で足踏みしたままだ。
「チャンスをつかもう!新北海道時代。」岩本氏は街頭演説でそう叫ぶ。その声はこれからの6年にどこまで届くだろうか。
岩本剛人氏の2015年から2025年までの歩みは、「公約を背負い現場を駆け、国会で声を上げ、そして慎重に成果を積む」という堅実な政治家像を浮かび上がらせる。華やかなメディア露出は少なくとも、地域と国をつなぐパイプ役としての存在感は確かにあった。
掲げた旗を守り続けた10年。次のステージでも、その信念が試されることになる。
1 2 岩本 剛人(いわもと つよひと):参議院 https://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/giin/profile/7019005.htm 3 公明、自民・岩本氏の推薦決定 参院選道選挙区|47NEWS(よんななニュース) https://www.47news.jp/12492939.html 4 岩本剛人 - Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/岩本剛人