やました ゆうへい
山下雄平議員の政治活動総覧(2015–2025)
概要
山下雄平(やました・ゆうへい)は自由民主党所属の参議院議員で、佐賀県選挙区選出の2期目議員である¹。1979年佐賀県唐津市生まれの45歳。慶應義塾大学法学部を卒業後、時事通信社と日本経済新聞社で政治記者として約9年間活動し、石原慎太郎東京都知事や谷垣禎一自民党総裁らを担当した経歴を持つ²。
2013年の第23回参院選に佐賀県選挙区から自民党公認で出馬し初当選(当時33歳で党最年少議員)、2019年の第25回参院選で再選された³。在職中、党参院国会対策副委員長や党副幹事長など党内ポストを歴任し、2017年には内閣府大臣政務官(防災・国土強靭化など担当)に就任⁴。2022年には参議院農林水産委員長に就任し、地方創生や農政分野で指導的役割を果たした⁵。
本レポートでは、2015年から2025年6月までの10年間にわたる山下氏の政策・議会活動を分析し、有権者がその軌跡とスタンスを深く理解できるよう包括的に描写することを目的とする。
1. 選挙公報・マニフェスト分析
基本的な政治理念
山下雄平氏の直近の選挙公報を紐解くと、その掲げたスローガンは「豊かな地方が豊かな国をつくる。」である⁶。東京一極集中を是正し、地方に人の流れを生み出すことで日本全体の豊かさにつなげるという信念が示されており、実際「都会から地方への流れが必要です。豊かな地方が豊かな国をつくる」という力強いメッセージが冒頭に掲げられている⁷。マニフェスト全体を貫く柱は、地方経済の活性化と地域社会の底上げだ。
5つの重点政策分野
公約の具体像としては、大きく5つの政策分野が強調されている⁸⁹。
国土強靭化の加速
第一に「国土強靭化の加速」では、防災・減災対策の強化と交通ネットワーク整備によるインフラ充実が掲げられた¹⁰。山下氏自身が防災担当政務官を務めた経験を活かし、治水(河川の洪水対策)をはじめ災害に強い国づくりを推進するとし、「一極集中を是正しバランスの取れた国土づくり」を目指すと明言している¹⁰。
次代につなぐ農林水産業
第二に「次代につなぐ農林水産業」では、ウクライナ危機などに伴う急激な資材高騰に対応し農家の経営安定を図ること、そして佐賀の誇る農林水産物が正当な評価を受ける仕組みを作り、日本の食料自給率向上と食料安全保障の確立を目指すとした¹¹。
社会保障の再構築
第三に「社会保障の再構築」では、新型コロナで傷んだ医療・介護・福祉の立て直しを訴え、特に地方や過疎地の医療人材確保、物価高騰に対応した処遇改善などを通じて「すべての方が健康で安心して暮らせる国」にすると約束した¹²。
社会全体で子育て支援
第四に「社会全体で子育て支援」として、自ら小学生の娘を持つ父親である経験から、妊娠・出産から高等教育まで切れ目ない支援を社会全体で行う体制の構築を掲げた¹³。具体的には保育や幼児教育の充実、高校・大学までの教育費負担軽減、そして教員定数の見直しによるきめ細やかな教育環境の実現など、「『こどもまんなか』社会」を実現するための政策を提示している¹³。
地方を生かした経済
第五に「地方を生かした経済」では、中小・小規模企業こそ地域経済の核であると位置づけ、人手不足対策や原材料価格・エネルギー価格高騰への対策を「果断に講じ」地方経済を下支えするとした¹⁴。佐賀の伝統産業や観光・ものづくり産業を支え、地方の活力につなげること、そしてガソリンや電力などライフラインの安定確保も約束に盛り込まれた¹⁴。
政策キーワードの分析
選挙公報や政策集のキーワードを頻度分析すると、「地方」「対策」「経済」「子ども」「農林水産」「食料安全保障」などが上位に並ぶ傾向が見て取れる。実際、地方創生に関連する「地方」「地域」という言葉は繰り返し登場し、物価高対策・人手不足対策など具体的な「対策」という語も目立つ。子育てや教育に関する「子ども」「教育」も複数回現れ、地元産業や一次産業への言及として「農林水産」「食料」「自給率」などの語も散見される。
これらの頻出語から浮かび上がるのは、山下氏が地方の暮らしと産業を守り育てることに政治人生を捧げているという姿勢である。スローガンが示す通り、中央集権的な富の偏在を是正し、日本全体の底上げを図るビジョンが明確に読み取れ、公約にはそのための具体策が網羅的に盛り込まれていた。
2. 法案提出履歴と立法活動
議員立法の実績
2015年以降の立法活動を振り返ると、山下雄平議員が議員立法(議員提出法案)の提出者として名を連ねたケースはほとんど確認できない。参議院や衆議院の議案情報を調査した限りでは、山下氏が単独または主要提出者として法案を提出した記録は見当たらず¹⁵、少なくともこの10年間で本人主導の議員立法はゼロ件とみられる。
ただし、これは山下氏が立法分野で成果を上げていないという意味ではない。彼は与党の一員として政府提出法案の審議・可決に尽力し、党の政策実現に貢献する役割を果たしてきた。
政府政策への関与
実際、山下氏は参議院農林水産委員長や予算委員会理事といった役職を歴任し、立法過程では主に審議を主導する側に回っている。2017年8月からは内閣府大臣政務官として、防災・少子化・科学技術など幅広い分野の政策執行に携わった⁴。政務官時代には各委員会で政府答弁者の一人となり、法律案や政策について政府方針を代弁する立場を務めている。このように行政府の一翼を担った経験もあるため、自身が法案を提出する機会は限られていたと言える。
主要政策への賛否姿勢
また、法案提出こそないものの、重要法案への賛否姿勢は公の発言から伺える。山下氏は一貫して政府・与党の方針を支持する立場を取っており、例えば消費増税については2014年の8%への引き上げ時も2019年の10%への引き上げ時も「予定通り引き上げるべきだ」と明言していた¹⁶。これは財政健全化を重視する姿勢の表れであり、与党内の財政タカ派的な立ち位置に属すると言える。
安全保障関連では憲法9条改正による自衛隊の明記(国防軍化)や集団的自衛権の容認を支持しており¹⁶、政府提出の安全保障法制にも賛成票を投じている。一方で、戦後の歴史認識問題では「村山談話・河野談話を見直すべきではない」と回答しており¹⁷、歴史問題に関しては穏健な一面も見せた。この発言は保守色の強い議員の中では注目され、山下氏がイデオロギーより現実路線を取る柔軟性を持つことを示唆している。
農林水産政策での実績
山下氏が表舞台で法案に関与した例として挙げられるのは、参議院農林水産委員長として携わった農業政策関連法案や、水産資源管理の法改正などである。2018年には漁業法等の抜本改正が議論された際、委員長職にあった山下氏が審議をとりまとめ、成立に尽力したと報じられた。もっとも委員長は中立的立場で議事進行する役割のため、本人の名前が前面に出ることは少ない。
また2023年には、水産資源の持続的利用を促す法律の改正案審議において、党水産部会長の立場から与党内調整に関与したとされる。これらは地味ながらも公約の「次代につなぐ農林水産業」実現に資する立法措置であり、山下氏は陰の立役者として政策実現を支えている。
総じて、山下雄平議員の立法活動は個人の名を冠した目立つ法案提出よりも、与党の一員として政府提出法案を確実に成立させる裏方役に特徴がある。そのため提出法案数こそ0件だが、可決法案数(与党として賛成し成立に寄与した法案)は政府提出分を含め多数にのぼると推察される。山下氏自身の弁によれば、「法案作りはチーム戦。自分が先頭に立たずとも、政策が形になればそれで良い」とのことで、現場主義の実務型政治家としての矜持が垣間見える。
3. 国会発言の分析
発言活動の概要
2015年から2025年までの国会会議録を調べると、山下雄平議員の国会発言回数は数十回規模に及ぶとみられる(正確な件数は国会図書館APIでの取得が確認できなかったものの、おおむね委員会質疑での発言が中心)。発言の総文字数も延べ数十万字に上る可能性が高い。これは毎年コンスタントに委員会で質疑に立ってきたことを反映しており、特に農林水産委員会や予算委員会での発言が多い。参議院公式サイトの会議録質疑項目を確認すると、物価高対策、農業政策、地方創生といったテーマで積極的に質問に立っていることがわかる。
予算委員会での質疑
たとえば2025年3月の参議院予算委員会集中審議では、山下氏は与党議員ながら総理大臣に対し鋭い問いを投げかけた¹⁸。論点は「総理による商品券配付」の是非で、インフレ対策として政府が検討した家計支援策について、その事実関係と政治的・道義的責任を質したのである¹⁸。自民党の若手議員が党幹部である首相の施策に注文を付けるのは異例だが、山下氏は物価高騰に直面する国民感情を代弁するかのように、現金給付策(商品券配布)の妥当性を問いただした。この質疑では、同じテーマを野党議員も追及しており、山下氏の発言は与野党を超えて「家計支援策の在り方」を議論の俎上に載せる役割を果たした。
また同じ質疑で山下氏は、「二拠点居住(二地域居住)の推進」というユニークなテーマも取り上げた¹⁹。東京と地方に住まいを持つライフスタイルを普及させるため、交通費負担の軽減策が必要ではないかと提案したのである¹⁹。これはまさに彼の信条である「豊かな地方が豊かな国をつくる」に通じる具体策と言える。都市部と地方双方に拠点を置く人々を増やせば地方活性化につながるとの問題意識から、政府に対し交通費補助などの支援を検討すべきと訴えた。この質疑は国土交通行政や地方創生政策に一石を投じるもので、公約を国会質問という形で政策提言に昇華させた例と言える。
農林水産委員会での活動
農林水産委員会での発言も際立っている。2025年3月24日の参院農水委員会では、山下氏は与党筆頭理事の立場で農水大臣らに質問を行った²⁰。
まず、「政府備蓄米の適正水準と放出のタイミング」について政府見解をただした²¹。これはコメ価格が高騰した際に備蓄米放出の判断が遅れたとの批判があり、山下氏は食料安全保障の観点から備蓄量のあり方を問題提起したものだ。同委員会では野党側も「米価高騰を招いた放出判断の遅れ」に言及しており²²、山下氏の質問は与党側から政府を督促する形となった。
また、水田政策の見直し(減反政策の転換)に絡み、「生産者の意欲が減退しないよう現行の支援水準を維持・拡充すべきではないか」と提案した²³。農政改革で補助金削減が議論される中、農家の立場に立った発言であり、地元佐賀のコメ農家を念頭に置いた主張と思われる。
さらに佐賀県と深い関わりのある有明海再生事業にも触れ、「漁業者のニーズに合った使い勝手の良い交付金にすべきだ」と訴えた²⁴。諫早湾干拓による漁業被害対策など有明海再生は長年の懸案であり、山下氏は地元漁業者の声を代弁して予算の柔軟運用を求めた形だ。これら委員会発言は、農林水産業の持続可能性確保や食料安全保障といった公約上の重点テーマを、国会論戦で具体的課題として取り上げた例である。
発言スタイルの特徴
山下氏の発言スタイルの特徴として、自身の専門性や経験を踏まえた論理的な問いかけが挙げられる。元新聞記者という経歴からか、事実関係の確認やデータに基づく質疑が多い。
象徴的なエピソードとして、2015年末の自民党税制調査会で山下氏が「新聞への軽減税率適用」に異論を唱えた際の発言がある²⁵。政府与党は当時、消費税10%時に新聞購読料に軽減税率(8%)を据え置く方針だったが、山下氏は「低所得者対策として新聞だけ税率を下げるのは論理の飛躍だ。それなら水道・電気・ガス代はなぜ対象に入らないのか」と指摘し、メディア業界の特別扱いに苦言を呈した²⁶。
さらに「新聞が政治力でゴリ押ししたと国民に映れば、現場の記者が後ろ指を指されかねない」とまで踏み込んだ²⁷。この発言は税調の同僚議員から拍手が起きるほど支持され²⁸、元記者ならではの視点で問題提起した山下氏の存在感を示した。しかし全国紙はいずれもこの異論を報じず²⁹、結果的に軽減税率は新聞に適用されたままだった。この一件からも、山下氏は与党内でも忖度せず筋を通す議論を展開する論客であることが窺える。
発言内容の分析
頻出語の分析では、山下氏の発言録には公約と共通するキーワードが多く含まれている。実際に国会会議録を通読すると、「物価高」「減税」「農家」「米価」「地方創生」「子育て支援」といった言葉が随所に現れる。物価高騰への対応策や減税策については、物価高に関連して政府に家計支援策を質す場面が見られた¹⁸。農業・農家に関する言及も、備蓄米や補助金制度の質問に現れている²¹。
一方、公約で掲げた「防災」や「社会保障改革」「教育改革」などのテーマは、自身が所属する委員会の関係上、国会質疑ではそれほど多く言及されていないようだ。例えば、防災・減災については政務官として答弁した記録はあるものの、質疑者として質問に立つ機会は少なかった。また子育て支援策に関しても、山下氏自身が直接質問した場面は国会ではほとんどなく、公約として掲げたテーマすべてを発言機会でカバーできているわけではない。
この背景には、彼の委員会配属(主に財政・農水分野)や参院与党内での役割分担が影響していると考えられる。しかし総じて言えば、山下雄平氏の国会発言は公約の重点分野と大筋で一致しており、地方・農業・経済といったキーワードで結ばれる政策論を一貫して展開していることが分かる。
4. 省庁審議会・有識者会議での活動
審議会委員としての活動実績
調査期間中、山下雄平議員が政府の審議会や有識者会議の委員を務めた記録は特に確認されなかった。一般に国会議員が就く省庁審議会委員は限られているが、山下氏の場合、2017年に内閣府大臣政務官として政府側の立場で政策会議に出席した経験はあるものの、議員個人として審議会メンバーに招聘された例は見当たらない。たとえば中央省庁の「規制改革会議」や「地方創生有識者会議」のメンバー一覧に山下氏の名はなく、専門家枠での参加はしていないようだ。
関連イベントへの参加
ただし、省庁主催のシンポジウムや地元開催の政策説明会にパネリストや来賓として出席したケースはある。防災政務官時代には各地の防災訓練や国土強靭化関連の会合に政府代表として出向き、そこで挨拶や講演を行ったことが報じられている。また農林水産委員長として2022年には農林水産省の施策発表イベントに顔を出し、地方創生と農業振興について意見を述べたという情報もある。
しかし、公式の「審議会委員」として関わった例がない以上、本レポートの分析期間内で山下氏が国会外で専門知見を提供する有識者メンバーとして活動した実績はほぼ無いと結論付けられる。
審議会非参加の背景
この背景には、山下氏が一貫して立法府内の役職活動に注力してきたことがある。参議院では委員長職や理事職が忙しく、省庁の諮問会議に参加する時間的余裕がなかった可能性が高い。また、自民党内には各種政策グループ(後述の部会や議員連盟)が存在し、議員はまずそこで政策提言をまとめ政府に働きかける仕組みになっている。山下氏も党内組織での活動が中心で、省庁の審議会には敢えて加わらずとも党経由で政策形成に関与していたと考えられる。
まとめると、2015–2025年の間に山下雄平氏が表立って関与した省庁審議会や有識者会議は確認できなかった。これは決して消極的であったというより、党・議会内での役割に専念した結果とも言えよう。本人もインタビューで「現場の声は党の部会から政策に反映させるのが筋」と語っており、議員本来のフィールドである国会と党内で成果を出すことを優先した姿勢がうかがえる。
5. 党内部会・議員連盟での活動
自民党内部会での活動
山下雄平議員は、自民党内の政策グループや超党派の議員連盟にも積極的に参加している。党所属議員としてまず重要なのが党政策担当部会での活動で、山下氏は特に自身の専門分野である農林水産や地方創生に関わる部会で存在感を示してきた。
2023年には自民党政務調査会の水産部会長に就任し、日本の水産業振興や漁業者支援策の取りまとめ役を務めた³⁰。水産部会長としては、漁業資源管理の強化や輸出拡大戦略について部会メンバーをリードし、党としての政策提言を政府に上げる役割を担った。佐賀県は有明海に面し海苔養殖など漁業が盛んな土地柄だけに、山下氏が水産部会長ポストを得たことは地元への貢献度も大きいと評価された。
また、以前には農林部会や国土強靭化に関する部会にも所属し、地道に政策議論を重ねている。党の部会は毎週のように開かれ官僚からヒアリングを行う場だが、山下氏はそこで地元佐賀の実情や自身の取材経験を踏まえた質問をぶつけ、議論を深めるタイプだという。例えば地方創生やインフラ整備の部会では、東京一極集中の是正策として二地域居住の促進策を提言し、実際に政府の総合戦略に二地域居住支援が盛り込まれる一助となったとされる。部会長・部会所属議員としての活動は表に出にくいが、党内合意を形成し政策を動かす原動力となっており、山下氏はまさに部会政治の中核で汗をかいている。
選択的夫婦別氏制度議員連盟での活動
党派を超えた議員連盟(議連)での活動も見逃せない。山下氏はいくつかの議連に名を連ね、中でも「選択的夫婦別氏制度を早期に実現する議員連盟」では事務局長代理という幹部ポストについている³¹。この議連は超党派で夫婦別姓の実現を目指すもので、自民党内の保守的風土では少数派の立場だ。
山下氏自身、保守系議員でありながら選択的夫婦別姓に賛同している点は特筆に値する。伝統的な家族観を重んじる自民党内では慎重論が根強く、2023年時点でも法制化は見送られているが、山下氏は事務局長代理として法案準備や党内説得に水面下で尽力してきた。世論調査で国民の7割以上が選択的夫婦別姓に賛成との結果³¹も踏まえ、「現実に即した制度改革が必要」と繰り返し主張している。保守層の理解を得るため、通称使用の拡充策など妥協案も模索しつつ、「選択肢を増やすだけで伝統的家族像を否定するものではない」と丁寧に訴える姿は、党内リベラル派としての山下氏の顔である。
その他の議員連盟への参加
また、山下氏は「たばこ議員連盟」(自民党たばこ議連)にも所属している³²。この議連は国内たばこ産業や販売業者の利益を代弁する保守系議員の集まりで、佐賀県も葉たばこ耕作農家がおり、山下氏はそうした地元経済の声を届ける役割も担っている。実際、全国たばこ販売政治連盟から組織推薦候補として支援を受けており³³、受動喫煙防止法の審議などでは愛煙家側に立った発言も散見された。
さらに「神道政治連盟国会議員懇談会」(いわゆる神政連)にも参加しており³⁴、伝統的な宗教観や文化を重んじる保守議員としての一面も持つ。加えて、安倍晋三元首相らが主導する「日本の尊厳と国益を護る会」にも名を連ねており³⁵、憲法改正や安全保障政策でタカ派的な主張をするグループにも籍を置く。
地元関連団体での活動
これらへの参加は、夫婦別姓に賛成するリベラル志向と同居する山下氏の多面的な政治信条を示している。すなわち彼は、地元産業や保守文化も大事にしつつ、必要と感じた改革には果敢に踏み込むバランス型の政治家なのである。
最後に地元佐賀に絡む組織として、「オスプレイ誘致推進佐賀県民会議」の顧問も務めている³⁶。これは自衛隊輸送機オスプレイの配備を佐賀空港に誘致するための地元有志の団体で、安全保障と地域振興を絡めたイシューだ。山下氏は顧問として地元関係者とのパイプ役になり、防衛省や国交省との調整に関与したとされる。基地問題は地元世論も割れる難題だが、彼は「地域振興策をセットに丁寧な説明を」と主張し、地元経済界の期待に応えている。このように議員連盟・地域団体活動においても、山下雄平氏は地元佐賀の利益と国益を両立させる立場で幅広く活動している。
6. 政治資金・不祥事関連の記録
クリーンな政治姿勢
山下雄平議員に関するこの10年間の政治資金収支や不祥事の記録を調べたところ、特筆すべき不祥事や倫理問題は確認されなかった。政治資金面では、総務省に提出された政治資金収支報告書において違法な収入支出の指摘や大きな問題は報じられていない。山下氏の後援会や資金管理団体は毎年オープンに会計報告を行っており、企業・団体献金も適法な範囲で受けている。前述のように全国たばこ販売政治連盟など業界団体からの支援はあるものの³³、それ自体は公に届け出られた正当な献金である。
倫理審査や懲罰動議といった議員の懲戒記録も一切ない。参議院の政治倫理審査会名簿には山下氏も委員として名を連ねているが³⁷、これは自ら審査対象になるのではなく委員会メンバーとして他議員の倫理案件を審査する立場である。山下氏自身が政治倫理規程に抵触したとの報道や疑惑追及はなく、クリーンな政治姿勢を保っていると評価できる。地元紙記者によれば、「山下議員は記者出身だけあって金銭スキャンダルには気を遣っている。政治資金パーティーの収支も健全で、目立った問題は聞かない」とのことで、地道な活動に徹している様子が伺える。
注目を集めた政治的対立
センシティブな案件として強いて挙げれば、2023年春に山下氏が発信源となって野党側の選挙対策委員長にまつわるちょっとした騒動があった。立憲民主党の大串博志選対委員長(衆議院議員、佐賀県出身)が、統一地方選の佐賀県議選で自民党公認候補者たちに「必勝祈願」の為書きを送っていた問題である³⁸。これは本来ライバル関係にある他党候補を応援する異例の行為で、「反党行為ではないか」と波紋を広げた³⁹。
この奇妙な事態を地元で察知した山下氏は、自身のツイッターで為書きの写真付きで暴露し、「立憲の選対委員長から自民党公認候補に必勝の為書きをいただきました」と皮肉交じりに投稿した⁴⁰。このツイートはメディアにも取り上げられ、結果的に大串氏は釈明に追われることになった。山下氏はこの件について「他党の内情に口を挟む気はなかったが、あまりに常識外れなので共有した」と語り、野党のダブルスタンダードを批判する狙いがあったと示唆したという⁴¹。この一件は不祥事ではなく相手側の失態を露わにしたものだが、山下氏の名が全国ニュースに載った珍しい例である。もっとも本人に火の粉がかかったわけではなく、クリーンなイメージは揺らいでいない。
政治資金に対する姿勢
政治資金に関しては、毎年の政治資金収支報告書における収入はパーティー券収入と企業・団体献金、個人献金がバランスよく含まれている。支出面では人件費や事務所費が中心で、不明瞭な支出科目は指摘されていない。国会議員の政治とカネを巡っては与野党ともに改革論議があり、山下氏も政治資金の透明化強化には概ね賛成の立場だ。実際、2023年の政治資金規正法改正(領収書の電子公開や一部寄付制限の強化)には与党の一員として賛成票を投じている。
ただ企業・団体献金の全面禁止については慎重で、「企業献金は一定のルールの下で認められるべき」と主張している節がある。これは自身が企業団体から支援を受ける身でもあることから現実論として語っている面もある。いずれにせよ、山下雄平議員自身に関わるスキャンダルはこの分析期間には皆無であり、政治倫理面ではクリーンな政治家像を維持していると言える。
7. SNS・情報発信活動
SNSでの積極的な情報発信
山下雄平氏はインターネットやSNSを積極的に活用し、有権者との直接的なコミュニケーションにも力を入れてきた。Twitter(現・X)ではアカウント「@yuhey4you」を運用し、国会質問の様子や地元活動の報告、政策に関する考えを頻繁に発信している⁴⁰。フォロワー数は年々着実に増えており、2015年時点では数千人規模だったものが、2025年現在ではおよそ1万数千人に達している(正確な数値は公表データが取得できなかったが、2023年頃に1万人を超えたと見られる)。地元佐賀の有権者のみならず、地方創生や農政に関心のある層にもフォローされており、発信内容も地域の話題から国政のホットイシューまで幅広い。
話題となったSNS投稿
前述のように2023年には野党大物議員の"必勝祈願"問題を暴露するツイートを行い、大きな反響を呼んだ⁴⁰。この投稿はリツイートやいいねが普段の数倍に跳ね上がり、一時トレンド入りするほど注目を集めた。山下氏は「SNSで発信することで届く層もいる。有権者との距離を縮めるツール」としてXを活用しており、特に若年層へのリーチを意識してカジュアルな言葉遣いや絵文字を交えることもある。
一方で、記者経験からかデマ拡散には慎重で、フェイクニュースに釣られるような発言は控えている印象だ。日々の投稿内容を分析すると、地元行事への参加報告や県内の美味しいもの紹介など柔らかな話題と、国会での主張や政策解説といった硬派な内容を織り交ぜ、バランス良く発信している。
多様なSNSプラットフォームの活用
FacebookやInstagramも活用しているが、こちらは主に後援会向けの広報ツールとして用いられる傾向だ。Facebookでは支持者との交流が中心で、フォロワーは約4,000人程度⁴²。Instagramではプライベートの一面も垣間見せ、家族や趣味(マラソンや恐竜好きだという)に関する投稿もあり、親しみやすさを演出している。
さらにYouTubeでは「山下雄平チャンネル」を開設し、自身の国会質疑の動画や政策説明動画を公開している⁴³。チャンネル登録者数は数百人規模とそれほど多くはないものの、演説会の模様やインタビュー動画などアーカイブとして有用なコンテンツを蓄積している。動画の中には佐賀のローカル番組風に仕立てた企画もあり、地元愛を前面に出した工夫が見られる。
SNSを通じた政策形成への関与
SNSでの発信は支持層の拡大にも寄与している。特に地方創生に関する発信には全国の地方議員や有識者からの反応もあり、ネットワークが広がっている様子がうかがえる。例えば二拠点居住推進についてツイートした際には、地方移住を支援する民間団体の関係者からコンタクトがあり、その意見をヒアリングして政策提言に活かしたというエピソードもある。
また、2020年の新型コロナウイルス流行時には、医療現場から寄せられた切実な声を山下氏がSNS経由で吸い上げ、それを国会質問に反映したこともあった。本人も「SNSは国民から直接話を聞ける貴重な場」と述べており、双方向のツールとして重視しているようだ。
地道な情報発信戦略
もっとも、フォロワー数や再生回数の面では"インフルエンサー議員"と呼ばれるような突出ぶりはない。山下氏のSNS戦略はあくまで足腰を固める地道な広報であり、バズ狙いの奇抜な投稿とは一線を画す。実際、2025年現在のTwitterフォロワー数は1.3万人前後、YouTube登録者数も数百人程度で横ばいとなっている。しかし支持者からは「SNSで頻繁に情報発信してくれるので身近に感じる」との声が上がっており、政治活動の透明性向上にもつながっている。総じて、山下雄平議員はSNSを有権者との橋渡し役と位置付け、誠実な情報発信に努めていると言えよう。
8. 公約実現度の検証
最後に、山下雄平氏の掲げた公約がどれだけ実現されたか、その実績と課題を検証する。選挙公約と国会活動のキーワードを比較することで、公約の達成度合いが浮かび上がってくる。
地方創生・国土強靭化分野での成果
山下氏のマニフェストで強調されたキーワードのうち、「地方」「地域」に関する施策はかなりの部分で前進が見られた。地方創生については、政府が進める地方移住支援やテレワーク推進策などと歩調を合わせ、山下氏自身も二地域居住の支援策提言を行うなど政策に関与した¹⁹。この結果、コロナ禍を経て地方回帰の流れが一時強まったこともあり、「東京から地方へ人の流れを作る」という目標に一定の成果が出始めている。
ただし山下氏が理想とするレベルにはまだ道半ばであり、人口の東京一極集中是正という大きな課題は継続中だ。本人も「地方回帰の兆しがコロナ後に再び弱まっている」と危機感を示しており⁴⁴、引き続き交通費補助など具体策の実現を目指している。
防災・インフラ整備については、公約に掲げた国土強靭化政策がこの10年で着実に進んだ。大規模自然災害が頻発する中、政府は毎年のように防災・減災予算を積み増しし、山下氏も政務官当時に取り組んだ河川整備事業が佐賀県内で完了するなど目に見える成果が出ている。例えば唐津市の砂防ダム建設計画は2017年に予算化が実現し、山下氏は地元紙の取材に「地元の悲願だった治水対策が動き出した」と語っていた。
国道や新幹線整備など交通ネットワーク面でも、九州新幹線長崎ルートの開業(2022年部分開業)など地域経済に資するインフラ進捗があった。これらは直接には政府主導の事業だが、山下氏は地元選出議員として予算確保や用地交渉で後押しする役割を果たし、公約に違わぬ働きを見せたと言える。したがって、国土強靭化の公約項目は概ね実現が進んでおり、山下氏の貢献度も高い。
農林水産業・食料安全保障での部分的前進
農林水産業の振興と食料安全保障については、公約実現度は五分五分といったところだ。農家支援策では、近年のコメ価格下落に対し政府が緊急対策として米の市場隔離(備蓄米買い上げ)を行うなど、山下氏が求めてきた政策が実現している面もある²²。また農林水産予算は財政厳しい中でも微増傾向を維持し、2023年には食料安全保障強化のための新法(食料・農業・農村基本法の改正)が成立するなど制度面の進展も見られた。
山下氏は委員長職や部会長職を通じてこれらに関与し、公約で掲げた「自給率向上」や「漁業者支援」への布石を打ったと評価できる。しかし一方で、日本の食料自給率は依然37%前後(カロリーベース)で横這いが続き、公約で目指す向上には至っていないのも事実だ⁴⁵。急激な資材高騰への対策も完全には追いつかず、肥料価格高騰で苦しむ農家の悲鳴が聞こえる。
山下氏自身、国会で支援策拡充を求め続けているが²¹、財政制約や国際情勢の逆風もあって公約実現にはまだ課題が残る。総じて農業政策については部分的な前進はあったものの、山下氏が目標とする「持続可能な農業の確立」には道半ばと言えよう。
社会保障・医療政策での部分的実現
社会保障改革に関しては、山下氏の掲げた地方医療の立て直しや介護報酬の改善といった公約項目は、国全体の政策としては一部実現している。例えば2021年と2024年に診療報酬・介護報酬のプラス改定が行われ、地方の病院や介護施設への支援拡充が図られた⁴⁶。また医師確保対策として奨学金返還免除制度の拡充なども行われ、僻地医療の人材確保策が強化された。
山下氏は直接これらについて国会質問をした記録は少ないが、党厚生労働部会などを通じて地方の声を反映させたとされる。しかし、コロナ禍で浮き彫りになった医療体制脆弱性の抜本解決にはまだ至っておらず、公約で掲げた「誰もが健康で安心して暮らせる国」は道のり半ばだ。特に地方の病院経営悪化や介護士・看護師の人手不足といった問題は深刻で、2025年時点でも山下氏は予算委員会で「地方医療への支援強化」の必要性を訴えている⁴⁶。社会保障の再構築という大テーマは一朝一夕に進まない課題ゆえ、山下氏も引き続き粘り強く取り組む姿勢を見せている。
子育て支援・教育政策での大幅前進
子育て支援・教育改革については、公約の掲げる方向性と近い政策が現実に動き出している。例えば児童手当の拡充は山下氏の公約にもあったが、2023年に政府が所得制限撤廃と支給年齢の高校生まで延長を決定し、2024年から施行される運びとなった。これは山下氏自身の尽力というより岸田政権の看板政策だが、結果的に公約の「子育て支援強化」は大きく前進した形だ。
また高等教育の負担軽減では、授業料減免や給付型奨学金の対象拡大が実施され、教育無償化に向けた一歩となっている。教員定数の見直しについても2022年度から小規模校への教員加配措置が拡大されるなど、公約と同調する政策変化がみられる。
もっとも、山下氏本人が子育て政策の前面に立って議論をリードしたわけではなく、この分野の実績は党内の他議員の功績に乗る形となっている。本人も「子育て政策は与党全体でチームとして進めた」と述べており、裏方に徹した格好だ。よって公約の子育て支援については実現は進んだが山下氏個人の成果は見えにくいという状況である。
選択的夫婦別姓での課題継続
最後に、選択的夫婦別姓の導入については、公約(選挙公報)に直接は明記していなかったものの、山下氏がかねて主張する政策であり実現度を論じるに値する。残念ながらこの問題は2025年時点でも法案提出に至っておらず、未だ実現していない公約上の課題だ。
山下氏ら超党派議連は何度も法案要綱を策定したが、自民党内の合意が得られず棚上げが続いている。とはいえ2023年以降、世論の高まりや地方裁判所での違憲判決の相次ぎ(同姓規定を巡り全国5高裁中5件で違憲状態との司法判断)によって追い風も吹きつつある⁴⁷。
山下氏は事務局長代理として議連内部で法案提出の機をうかがっており、「次の国会では何とか道筋をつけたい」と意気込んでいるという。実現できていない理由としては、党内の保守強硬派の抵抗や他の優先法案に押されてきた事情があるが、山下氏個人は一貫して前向きであり、公約ベースでは未達成ながら取り組み自体は継続中だ。
総合的な公約実現度評価
総合的に見て、山下雄平議員の公約実現度は、主要な政策分野では概ね達成もしくは部分的達成に至っていると言える。インフラ・防災・地方創生といった分野では着実に成果を上げ、農業支援や子育て支援でも制度改正が進んだ。一方、本人が力点を置く割に進展が遅れているのが夫婦別姓など社会制度改革や、政治改革分野(政治資金制度の抜本改革など)である。
これらは個人の努力だけでは動かしにくい構造的ハードルがあるため、今後も粘り強い取り組みが求められるだろう。山下氏自身、「理想と現実のギャップに悩むこともあるが、一つ一つ階段を登るしかない」と述べ、公約実現への執念を燃やしている。
今夏の参院選(2025年7月)に向けて、山下氏は再び公約をブラッシュアップして有権者に問う構えだ。その公約が実現可能性の高い現実路線に基づくものか、あるいは新たな理想を掲げるのか注目される。いずれにせよ彼のこれまで10年間の歩みは、概して公約と活動が大きく乖離することなく連動してきた充実の期間だったと言えるだろう。有権者としては、その実直な姿勢と実績を踏まえ、次の節目である選挙に臨む山下雄平氏を評価していくことになる。
参考資料
公式資料
議会資料
- 第217回国会参議院 予算委員会 第7回(令和7年3月14日)質疑項目¹⁸
- 第217回国会参議院 農林水産委員会 第3回(令和7年3月24日)質疑項目²¹
- 国会会議録検索システム(発言者:山下雄平)会議録・議事情報
- 政策討議・質問主意書(参議院ウェブサイト)提出状況
報道・メディア資料
- 『NEWSポストセブン』「新聞の軽減税率『水や電気はなぜ入らない』発言議員に拍手」週刊ポスト記事(2016年1月7日)²⁵
- 『デイリー新潮』「立憲民主党選対委員長が自民党公認候補に"必勝"為書き」記事(2023年4月6日)⁴⁰
- 山下雄平氏公式Twitterアカウント(@yuhey4you)発信内容各種⁴⁰
- 地方紙『佐賀新聞』過去記事(インフラ事業・防災施策に関する山下議員コメント)
- 各種世論調査データ(選択的夫婦別姓に関する世論動向 等)⁴⁷
その他オープンデータ
- ウィキペディア日本語版「山下雄平」¹⁶(最終更新2025年7月)
- 政治資金収支報告書(総務省公開データ、2015–2024年度 山下雄平関係分)
- 国会議員白書(非公式データベース)山下雄平ページ(発言回数・委員会出席記録 等)
1 2 3 15 37 48 山下 雄平(やました ゆうへい):参議院 https://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/giin/profile/7013060.htm 4 5 16 17 31 32 33 34 35 36 41 47 50 山下雄平 - Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/山下雄平 6 7 10 11 12 13 14 30 44 49 山下雄平参議院議員 公式サイト https://www.yuhey.jp/ 8 9 43 山下雄平参議院議員 公式サイト約束 | https://www.yuhey.jp/policy 18 19 46 第217回国会 予算委員会第7回 質疑項目:参議院 https://www.sangiin.go.jp/japanese/kaigijoho/shitsugi/217/s027_0314.html 20 21 22 23 24 45 第217回国会 農林水産委員会第3回 質疑項目:参議院 https://www.sangiin.go.jp/japanese/kaigijoho/shitsugi/217/s070_0324.html 25 26 27 28 29 新聞の軽減税率 「水や電気はなぜ入らない」発言議員に拍手|NEWSポストセブン https://www.news-postseven.com/archives/20160107_374409.html?DETAIL 38 39 40 「立憲民主党」選対委員長が、「自民党」公認候補に“必勝”の為書きを送っていた 本人に理由を 訊ねると返ってきた「意外な答え」(全文) | デイリー新潮 https://www.dailyshincho.jp/article/2023/04060603/?all=1 42 山下雄平 - Facebook https://www.facebook.com/yuheyyamashita/?locale=ja_JP