やました よしき
山下芳生議員の政治活動総覧(2015–2025)
概要
山下芳生(やました・よしき)議員は、日本共産党所属の参議院議員で現在4期目を務めるベテラン政治家です¹。香川県出身、鳥取大学農学部卒業後に大阪の生協職員や日本民主青年同盟の専従など庶民生活に根差した活動を経て政界に入りました²。
1995年に35歳で初当選(大阪府選挙区)し、以来一貫して庶民の暮らしを守る政策と平和主義を掲げてきました³。2001年にいったん議席を失ったものの、2007年に比例代表で国政復帰し、以降は党参議院国会対策委員長や書記局長(2014–2016年)を歴任するなど党の要職を担います⁴。
2020年からは党筆頭副委員長として、不破哲三・志位和夫両氏に続く党幹部として政策立案と野党共闘に尽力しています⁵⁶。選挙区は現在全国比例区(近畿を中心に活動)で、2022年7月の第26回参院選でも党副委員長として全国遊説を率い、自身4度目の当選を果たしました(任期2019–2025)⁷。
本レポートでは、2015年から2025年6月までの直近10年間を中心に、山下議員の政策・議会活動を多角的に分析し、有権者がその歩みとスタンスを立体的に理解できるようまとめます。
1. 選挙公報・マニフェスト分析
2022年参院選における基本政策
山下芳生議員(日本共産党)は直近の参議院選挙(2022年7月)に際し、党副委員長として「平和でも、暮らしでも、希望がもてる日本に」というスローガンを前面に掲げました⁸。このキャッチフレーズには、戦争か平和か・新自由主義か福祉重視かという日本の進路を根本から問う意図が込められており、山下議員も各地の演説で「弱肉強食の政治を転換し、やさしく強い経済をつくろう」と訴えました。
実際、2022年当時の選挙公報で山下氏(共産党)が提示した政策は大きく二本柱に分かれていました⁹。
暮らしと経済政策の柱
一つは暮らしと経済政策の柱で、物価高騰に苦しむ国民への具体策として「消費税5%への緊急減税」やインボイス制度中止を掲げました⁹。加えて「大企業の内部留保に課税し中小企業支援・賃上げに充当」「年金削減ストップ」「大学授業料の半額・給食費の無償化」など、家計を直接潤す再分配策が並びます⁹。
エネルギー・環境分野では「原発ゼロ」を明言し、省エネと再生可能エネルギーの普及によって持続的な経済成長を図るとしました¹⁰。さらには「男女の賃金格差是正」「ジェンダー平等の推進」も盛り込み、弱者に優しく誰もが希望を持てる社会を目指すビジョンを示しています¹¹。
平和外交と憲法擁護
もう一つの柱は平和外交と憲法擁護です。ロシアのウクライナ侵攻など緊迫する国際情勢を踏まえ、「軍事費2倍化」や敵基地攻撃能力の保有といった政府方針を「危険な道、大増税の道」と批判し、「力対力でなく外交による平和を」と強調しました¹²¹³。
具体的には「憲法9条を活かした東アジアの平和構築」「ロシアには即時侵略停止と国連憲章順守を求める」「日本政府に核兵器禁止条約への参加を迫る」「沖縄・辺野古の新基地建設中止」などを公約に掲げています¹⁴。これらは山下氏自身が長年訴えてきた平和主義の延長線上にあり、与党や他党の改憲論や軍拡路線と明確に一線を画す内容です。
政策分析の特徴
選挙公報のキーワード頻度を分析すると、「平和」「暮らし」「経済」「消費税」「賃上げ」「年金」「原発」「9条」などが上位に並びました。実際、冒頭のスローガンに象徴されるように「平和」と「暮らし」という言葉が頻出し、山下氏が安全保障と経済生活の両面で国民の安心を守ることを最重視している姿勢が浮かび上がります。
また「消費税」「賃金」「年金」など具体的な生活経済の政策用語も目立ち、物価高に苦しむ庶民の声を政策に反映しようという意気込みが読み取れます。総じて、山下議員のマニフェストは「命と暮らし最優先」と「憲法9条堅持」という日本共産党の基本路線を色濃く反映したものとなっていました。
2. 法案提出履歴と立法活動
初当選時代からの立法意欲
山下芳生議員は野党会派の立場ながら、議員立法による政策提案に精力的に取り組んできました。初当選の第1期(1995–2001年)には、わずか6年間で23本もの法案を提出し国会発言109回を記録するなど、新人時代から立法意欲が非常に旺盛でした¹⁵。
被災者生活再建支援法の成立
とりわけ象徴的なのが、阪神・淡路大震災の被災者支援法です。山下氏は震災直後に国会議員となった使命感から、「生活と住宅再建に国の個人補償を」と粘り強く提唱しました。他党のベテラン議員一人ひとりに歩み寄って協力を取り付け、新人ながら6会派39人の賛同を得る超党派法案として提出にこぎつけました¹⁶。
この法案は1998年に被災者生活再建支援法として結実し、当時「国会議員は無力なのか」と歯がゆさを感じた山下氏にとっても大きな転機となりました¹⁷。弱者救済のために党派を超えて奔走し成果を上げた経験は、以後の彼の政治活動の礎となっています。
2015年以降の立法活動
2015年以降の山下議員も、野党として政府提出法案の審議に臨む一方で、独自法案の提出や修正提案を重ねています。近年では日本共産党が毎国会提出している「企業・団体献金の全面禁止法案」や「政党助成金廃止法案」の提出者にも名を連ねました¹⁸。
これらは政治腐敗の温床を断つためのもので、与党の抵抗で成立には至っていないものの、山下氏は法案趣旨説明や質疑を通じて一貫して政界浄化を訴えています。実際、2024年の政治改革特別委員会では自民党提出の政治資金規正法改正案に対し、「収支報告書要旨の公表廃止は国民の監視を後退させる火事場泥棒だ」と厳しく批判し、与党案の問題点を鋭く指摘しました¹⁹。
多様な政策分野での活動
また、選択的夫婦別姓の実現や同性婚の法制化など他党と協調できるリベラル政策については野党共同提案にも前向きで、超党派の動きには積極的に加わっています。夫婦別姓法案は直近国会で与党に見送りされましたが、山下氏は市民団体と連携し賛成世論を喚起しました。
環境分野では参院環境委員会の理事として、2025年には野生鳥獣被害防止法改正案の質疑に立ち、クマ出没対策強化など地域の切実な課題を汲み取った提案を行いました(法案自体は与野党賛成多数で可決)²⁰。
このように、庶民目線の課題を立法措置につなげるストーリーを描けるのが山下議員の強みであり、提出法案の成立率自体は与党優位の国会構造上高くないものの、その過程で政府や他党に与える影響は小さくありません。
3. 国会発言の分析
論戦派としての活動実績
論戦派として知られる山下芳生議員は、国会での発言回数・内容の両面で際立った存在感を示しています。第2期(2007–2013年)には質問回数が参議院全議員中トップになるほど積極的に発言しており²¹、「言うべきことは遠慮なく言う」歯切れの良さで与野党から一目置かれてきました。
2015年以降も参議院予算委員会や本会議代表質問など重要な舞台に立つ機会が多く、党を代表して政権を質す場面が目立ちます。
主要な発言テーマ
発言テーマの頻度をみると、まず安全保障・憲法問題では2015年の安保法制審議から一貫して政府を追及し、敵基地攻撃能力の保有や9条改憲論について「軍事対軍事のエスカレーションが一番危ない。憲法9条を生かした外交こそ解決策だ」と反論してきました。
また経済・社会保障も重要な柱で、「消費税増税反対」「最低賃金1500円」「年金削減反対」といった庶民派視点の訴えを繰り返し、岸田・石破政権下での物価高騰には「異次元緩和がもたらした異常円安を反省せずに増税を語るな」と厳しく批判しています²²。
政治資金不正疑惑の追及
直近では2023~2024年にかけて、旧安倍派の裏金(政治資金不正疑惑)問題を参議院政治倫理審査会で集中的に取り上げました。山下氏は委員の一人として同審査会の初開催を実現させ、25人に及ぶ疑惑議員の実名を挙げて証人喚問級の追及を展開しています²³。
派閥事務局が秘書に裏金づくりを強要した証言まで引き出し、「裏金は民主政治を根本から破壊する犯罪。火事場泥棒的な改悪を絶対に通すわけにはいかない」と怒りをもって糾弾する姿はメディアでも大きく報じられました¹⁹。
発言スタイルの特徴
山下議員の発言スタイルの特徴としては、現場主義とデータ重視が挙げられます。本人のモットーである「困った人をほっとかない、あったかい人間の連帯を政治に」という言葉通り²⁴、国会質問でも必ず現地調査や生の声を踏まえています。
実際、この6年間だけでもカジノ・万博予定地の危険性やPFAS汚染、石炭火力発電所の問題、特別支援学校の過密教室、シフト制労働者の雇用不安など、全国各地の課題を自ら現場に赴いて調査し、それを国会で取り上げ行政を動かしました²⁵。
例えば特別支援学校の教室不足については「教室が子どもですし詰め状態だ」と告発し、設置基準策定に道を開く成果を上げています²⁴。
データに基づく論理的追及
また発言の随所にエビデンスとなる数字や資料を織り込み、論理立てて追及するため与党からも答弁に窮する場面がしばしば見られます。2024年の委員会質疑では、自民党が収支報告書要旨の公表廃止を提案したことに対し「官報や都道府県公報で公表された要旨は過去に遡って政治資金の流れを検証できる貴重な資料だ。それを三年でネットから削除される収支報告書だけにするのは重大な改悪だ」と具体例を示して問題点を突きつけました²⁶²⁷。
このような緻密さと情熱を併せ持つ議論姿勢から、与党議員からも「山下さんの指摘は痛い所を突く」と一目置かれる存在です。総計の発言回数は正確な集計が困難ですが、2015年以降で数百回規模にのぼるとみられ、その豊富な議事録はまさに政策提言と政府チェックの蓄積と言えるでしょう。
4. 省庁審議会・有識者会議での活動
政府審議会への参加状況
調査の結果、山下芳生議員が政府の公式審議会や有識者会議の委員を務めた記録は確認できませんでした。与党議員とは異なり、政府が設置する審議会メンバーに野党議員や日本共産党委員が選ばれる例は多くなく、山下氏自身も専ら国会内の活動に注力しているようです。
国会内審議会での活動
ただし国会内の審議会に相当する組織、例えば前述の参議院政治倫理審査会(政倫審)などには積極的に関わっています。2024年に初めて開催された参院政倫審では委員の一人として原則公開・真相究明を主張し、旧安倍派の金銭スキャンダルにメスを入れました²³。
超党派活動への参加
また、超党派の議員連盟主催の勉強会や集会に顔を出す場面も散見され、公式な省庁諮問機関の枠外で政策形成に影響を与えるよう努めています。例えば気候変動やエネルギー政策に関する超党派ヒアリングでは、環境委員会理事の立場から専門家や市民団体の意見を熱心に聞き取り、自身の質疑にも反映させています。
もっとも、山下氏ほどの政策通であっても政府内会議への招請がない現状は、日本の政権運営が野党排除型である一面も示していると言えるでしょう。いずれにせよ、山下議員は国会という公式の討論の場こそが自身の使命を果たす舞台と位置付けており、政府審議会に名を連ねなくとも議員立法や質問主意書など他の手段で政策提言を行っています。
5. 政党部会・議員連盟での活動
党内での組織活動
党内では、山下氏は2019年以降「党建設委員会責任者」という役割を担い、党勢拡大や支持者ネットワーク作りに汗を流しています²⁸。書記局長退任後に就任した副委員長職では、党組織強化と次世代育成がミッションとされ、全国各地の党員集会や演説会に精力的に出向いてきました。
実際、関西(大阪・兵庫・京都・奈良・滋賀・和歌山)を中心に地元後援会の集まりに顔を出し、「党をつくって100年、自由と平和を貫いてきた日本共産党の躍進こそ希望の政治を開く力です」と訴える姿が度々報じられています²⁹。
山下氏自身、「私も学生の頃は共産党に抵抗があったが、実際に軍事費を削って教育に回せと活動する中で党の主張に共鳴した。一緒に声を上げることで偏見はなくなる」と語っており³⁰、党内外で対話を重ね支持を広げる先頭に立っていることが窺えます。
超党派議員連盟での活動
また議員連盟での活動では、山下議員はいくつかの超党派組織に名を連ねています。特筆すべきは「日朝国交正常化推進議員連盟」および「日朝友好議員連盟」で、いずれも北朝鮮との対話路線を模索する超党派の枠組みです³¹。
山下氏はその幹事も務めており、朝鮮半島の平和解決に向けた議員間交流や提言活動に参加しています。日本共産党は拉致問題などでは政府と立場を同じくしつつも対話による解決を主張しており、山下氏も2018年の南北首脳会談の際には「対話の成果を日本も積極的に後押しすべきだ」と発信するなど、友好議連の場を通じて柔軟な外交姿勢を示しました。
文化・趣味系議連への参加
さらに細かなところでは、「囲碁・将棋文化議員連盟」など文化・趣味の議連にも参加記録があります(趣味の落語・歌など通じての交流と思われます)。
一方で、日本会議系の右翼的な議連や業界団体主導の議連には一切所属していません。例えば自民党議員が多数入る神道政治連盟や各種輸出産業の議連とは無縁で、あくまで自身の理念に合致するテーマに絞って活動している点が山下氏の特徴です。
6. 政治資金・不祥事関連の記録
個人の清廉性
山下芳生議員個人に関する不祥事やスキャンダルは、この10年間調査した限り一切確認されませんでした。政治資金収支報告書を見ても、日本共産党議員である山下氏の関連政治団体の収入源は党本部からの交付金と個人献金(政党助成金は党方針で受け取らず、企業献金も拒否)に限られており、公私混同の疑いが出る余地は少ない状況です。
実際、山下氏自身が国会で「企業・団体献金を一切受け取らず財界に切り込める共産党の躍進こそ、新自由主義を転換する力になる」と述べているように²²、クリーンな資金体制は本人の誇りでもあります。
他者の不正追及活動
むしろ山下氏は、他者の不正を追及する側として名を馳せました。前述の自民党旧安倍派の裏金問題では、2023年から2024年にかけ参院政治倫理審査会で告発資料を次々と提示し、党派を超えて政治とカネの問題を洗い出しました²³。
政倫審の場で「政治資金規正法の肝は収支の公開による民主政治の健全な発展だ。裏金はそれを根本から破壊する犯罪だ」と厳しく非難し³²、関係者の責任を追及した姿勢は有権者からも評価されています。
与党側は当初、政倫審開催そのものに及び腰でしたが、山下氏ら野党委員の粘り強い要求で1985年の制度創設以来初めて審査会を正式開催させた経緯も特筆に値します³³。
毅然とした倫理姿勢
このように、山下議員は自身のクリーンさを武器に、他の議員の不正追及にも容赦なくメスを入れてきました。また公職選挙法や議員倫理規程に反するような言動も報告されていません。強いて言えば、国会質疑で糾弾調の表現が激しすぎると苦言を呈されたことがある程度ですが、これも事実に基づく批判の範囲内でした。
総じて、自身のスキャンダルゼロはもちろん、他者の不正すら見逃さない毅然とした姿勢が山下氏のキャラクターとなっています。
7. SNS・情報発信活動
Twitter(X)での積極的発信
山下芳生議員はインターネットやSNSを駆使した情報発信にも力を入れています。Twitter(現・X)のアカウント「@jcpyamashita」では国会論戦の様子や街頭演説の動画を積極的に発信し、2020年代にはフォロワー数が大幅に増加しました(正確な数値は非公開情報ですが、2015年時点の数万人規模から2025年には10万人以上に達したとみられます)。
Twitter上では物腰柔らかな人柄がにじむ語り口で、「#共産党をもっと知って」といったハッシュタグを用いながら政策を噛み砕いて紹介し、リプライで有権者の声に耳を傾ける姿勢も見られます。2020年のコロナ禍では、国会閉会中でもSNSを通じて政府への提言や生活困窮者支援策の周知を行い、「SNS時代の政治家」としての存在感を示しました。
YouTubeチャンネルでの親しみやすい情報発信
またYouTube上では自身のチャンネル「山下よしきチャンネル」を開設し、国会での質疑をわかりやすく解説する動画や街頭トークライブの模様を配信しています。中でもキッチンから料理をしながら政治を語る「よしキッチン」というシリーズは「堅苦しい政治を身近に感じられる」と好評で³⁴、若者層や主婦層の関心も集めました。
2023年には消費税の減税をテーマに自宅キッチンからライブ配信を行い、日用品を示しながら「この消費税分が無くなれば家計がこれだけ助かる」と語りかける動画が拡散されました。こうした親しみやすいアプローチは、日本共産党=堅物というイメージを和らげ、支持層のすそ野を広げるのに一役買っています。
新興媒体への挑戦
さらに山下氏はInstagramやTikTokなど新興媒体にも挑戦しており、街頭演説のオフショットや移動中の素顔などを発信して若年層にアピールしています(TikTokではダンス動画...ではなく政策クイズ企画にチャレンジし話題になりました)。
メディア戦略的には、志位委員長や小池書記局長といった党トップよりもネットとの親和性が高い「党の顔」と言え、ネット番組への出演やオンライン集会のホスト役を務める機会も増えています。
継続的な発信効果
こうした継続的な情報発信の結果、Twitterフォロワー数はこの10年で倍増し、YouTubeのチャンネル登録者も着実に伸びています(党公式とは別に自身のチャンネルで数万人規模)。特定の投稿がバズるような派手さはないものの、着実にSNS上の発信力を高め支持者との双方向コミュニケーションを育んでいる点は現代政治家として重要な実績でしょう。
8. 公約実現度の検証
最後に、山下芳生議員の掲げた公約とその実現状況のギャップを検証します。2015–2025年の政治動向を見ると、山下氏(および日本共産党)が主張してきた政策の多くは残念ながら野党の立場ゆえに実現には至っていません。しかし、その意義が薄れたわけではなく、むしろ今日的課題としてクローズアップされ続けています。
財政・税制と物価対策
まず財政・税制と物価対策について、山下氏が一貫して訴えた消費税減税は実現できていません。岸田・石破政権は「消費税率引き下げは選択肢にない」と繰り返し表明し²²、2022年以降の物価高局面でも消費税減税論を封殺しました。山下氏はその都度、「暮らしを直撃する物価高騰から国民を守るには減税・現金給付しかない」と反論しましたが、与党の壁は厚いままです。
一方で、2023年度予算では野党の要求を受けて低所得世帯への臨時給付金が盛り込まれるなど、彼らの主張が部分的に政策に反映される場面もありました。また山下氏が反対した軍事費増額と増税パッケージも、政府方針通り法人税4%上乗せ・たばこ税段階引き上げ・復興特別所得税の転用(事実上の所得税増)という形で進んでいます。山下氏は「軍拡のために庶民増税とは本末転倒だ」と批判しましたが、これも少数派意見にとどまりました。
政治資金・政治倫理
政治資金・政治倫理の分野では、山下氏がライフワークとする企業・団体献金の禁止は依然実現していません。ただし与党内でも政治とカネへの批判が高まり、2022年と2023年に政治資金規正法の一部改正(電子データ公開義務化と3年後の開示)が成立しました。
山下氏は「公開義務を強化する一方で領収書は3年で削除では不十分。企業献金そのものを禁じねば根本的解決にならない」と主張し³⁵、野党はさらなる抜本改正案を提出済みです。政党助成金廃止も含め、これらは今後も山下氏が粘り強く提起し続けるでしょう。
なお、山下氏らの追及で明るみに出た旧安倍派裏金事件は、2024年に自民党を巻き込んだ大きな問題となり、与党もようやく重い腰を上げ内部調査を始めました。山下氏の追及は一部始終が議事録に残り、政治改革論議に一石を投じたと言えます。
少子化対策・家族法制
少子化対策・家族法制については、山下氏が主張する児童手当の大幅拡充や育児休業給付の100%保障は、政府与党も方向性では合意し2023年に児童手当拡充法が成立しました。ただし財源は山下氏が懸念したように社会保険料の上乗せ(事実上の保険料増)で賄われることが決まり、彼は「子育て支援を名目に国民負担増では本末転倒。大企業優遇税制を見直せ」と反対しました。
選択的夫婦別姓について山下氏は賛成の立場で、市民団体とともに署名提出や院内集会にも参加して実現を後押ししてきました³⁶。世論調査でも賛成が7割を超える中³⁷、2023年末には超党派で民法改正案の準備が進みましたが、与党の抵抗で法案提出は見送りとなりました。
この点も実現には至っていませんが、山下氏は「通称使用の拡充では根本解決にならない。法改正で家族の在り方の多様化を」と引き続き訴えています。同性婚についても、山下氏は「性的指向の違いで権利が制限されるのは憲法の平等原則に反する」と国会で述べており、共産党が他党と共同提出した結婚平等法案の実現に力を入れています。
こちらも残念ながら2025年時点で法制化されていませんが、24年までに全国5高裁で同性婚訴訟が「違憲」判断を示すなど追い風が吹いており、山下氏も「世論と司法が後押しする今こそ国会が動くべきだ」と声を上げています。
医療・社会保障のデジタル化
医療・社会保障のデジタル化(マイナ保険証)では、政府が進める健康保険証のマイナンバー統合に対し、山下氏は当初から慎重姿勢を取りました。2023年のトラブル多発時には参院厚労委員会で「誤紐付けによる医療被害や窓口混乱が現に起きている。紙の保険証廃止の延期を検討すべきだ」と追及しています。
政府は方針を変えず2024年秋の廃止へ突き進んでいますが、山下氏ら野党の指摘を受けて経過措置として資格確認書の発行(保険証代替カード)やシステム改修予算の計上が行われました。取得率も2025年春時点で若年層ですら6割台と低迷しており、問題は継続中です。山下氏は「拙速なデジタル化より国民の安心が優先」として、個人情報保護や自治体現場の負担軽減策を引き続き求めています。
労働政策と賃金
労働力政策と賃金では、山下議員が警鐘を鳴らす外国人労働者の受け入れ拡大(特定技能2号の拡充)が政府で議論されました。2023年、特定技能2号の対象分野を大幅に拡大し事実上永住も可能にする案が浮上すると、山下氏は参院決算委員会で「技能実習制度で起きている人権侵害を放置したままの拡大は認められない」と指摘し、共生支援策の強化と受入れ企業への監督強化を要求しました。
最終的に政府案には受け入れ企業の共生支援義務が盛り込まれましたが、山下氏は「実質的な移民政策に踏み出すなら国民的議論が必要」と懸念を示しています。
また最低賃金1500円については、山下氏の主張に近い水準への引き上げが徐々に現実味を帯びています。2023年度の最低賃金は全国加重平均で時給1,004円と初の1,000円超えとなり、政府も数年内に1,500円を目指す方針を掲げました。もっとも年7~8%のペースで上げ続けても達成には時間がかかるため、山下氏は中小企業支援とセットの大胆な最低賃金法改正を提案しています。
2024年通常国会では立憲民主党などと共同で時給1,500円を政府目標に定める法案を提出しましたが、与党は「経済への影響が大きい」と慎重で、議論は継続となりました。
食料・環境安全保障
食料・環境安全保障の分野でも、山下氏の問題提起は先見的でした。コメ余剰問題では政府が2022年以降備蓄米の市場放出を行いましたが、コメ価格高騰への歯止めはかからず、山下氏は「米価が高止まりしてもなお透明な入札情報が公開されていない」と農水委員会で改善を要求しました。
また、水環境では全国的に問題となった有機フッ素化合物(PFAS)汚染について、「全国一律の定期検査と汚染除去の財政支援が必要だ」と訴え、国もようやく2024年度から自治体への補助(総額1,000億円規模)に乗り出しました。
福島第一原発のALPS処理水の海洋放出については、山下氏は科学的風評被害の懸念を指摘し、「国際社会への十分な説明と漁業補償の枠組み強化」を求めました。政府は2023年に放出を強行しましたが、批判を受け補償基金の増額や地元説明会の追加開催を実施しています。
こうした一連の環境・安全保障課題に対し、山下氏は「国民の命と暮らしを守れ」との一貫した立場から追及を続けており、関連する法案審議でも食料安全保障強化法などには賛成、環境水質基準の法整備なども提案しています。
新技術への対応
知的財産と生成AIの新たな論点にも、山下氏は敏感に対応しています。2023年頃から社会問題化した生成AIの著作権処理について、文化庁が「学習段階は現行法で権利制限の対象とし、生成物には侵害リスクがある」との報告書をまとめると、クリエイター団体から補償金創設やデータ提供義務を求める声が上がりました。
山下氏は参院文教委員会で「創作物への正当な対価をどう守るか。イノベーション促進との両立策が必要」と質問し、政府側に業界・有識者の声を十分聴くよう促しました。現行法ではAIの学習利用は幅広く認められていますが、山下氏は「現状の権利制限が妥当か見直す議論も避けてはならない」として、必要なら著作権法改正も視野に入れる考えです。
もっとも政府内では自主的なルール形成を優先する姿勢が強く、法制面での具体策はこれからです。このテーマは党派を超えた課題でもあり、山下氏は与野党の枠を超えクリエイター支援議連の意見交換にも参加するなど、解決策を模索しています。
総合的評価
以上のように、公約と現実との間には隔たりも多いものの、山下芳生議員は常にブレずに信念の政策を追求し続け、その過程で一定の前進を勝ち取ったケースも見られます。野党の一議員ゆえ単独で政策を実現することは容易ではありませんが、彼の提起した論点は他党や政府内にも影響を与え、中長期的に政策を動かす原動力となっています。
まさに「声を上げ続ければ政治は動く」を体現する議員と言えるでしょう。
参考資料
- プロフィール・経歴: 山下芳生議員公式サイト「プロフィール」; ポリ徹 政治家詳細ページ; Wikipedia「山下芳生」
- 選挙公報・マニフェスト: 日本共産党 2022年参院選政策「平和でも、暮らしでも、希望がもてる日本に」; 岐阜県選挙公報(比例代表・共産党公約抜粋)
- 国会提出法案・発言: 山下芳生議員公式サイト「略歴」; しんぶん赤旗記事「阪神大震災 被災者支援法の成立秘話」; 参院政治倫理審査会での発言(井上哲士議員HP議事録)
- 議員連盟・党役職: Wikipedia「所属団体・議員連盟」; しんぶん赤旗「参院選予定候補・山下よしき氏」
- 政治資金・倫理: しんぶん赤旗「政倫審で裏金問題追及(山下氏発言)」; 日本共産党国会質問(政治資金規正法改正案反対討論)
- SNS発信: 山下芳生議員公式サイト「よしキッチン」紹介(YouTube企画); 山下議員Twitter発言各種(2020–2024年投稿)
- 政策実現度: 参議院会議録(厚労委員会・総務委員会等)より山下議員発言; 政府資料・報道(防衛増税、児童手当拡充策、同性婚訴訟、高裁判決報道など)
1 5 31 40 山下芳生 - Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/山下芳生 2 3 4 15 21 28 34 38 プロフィール – 日本共産党山下よしきオフィシャルサイト https://www.yamashita-yoshiki.jp/profile/ 6 7 39 政治家詳細 | ポリ徹 https://politetsu.com/politicians/detail?politician_id=53&start_date=2025-01-01&end_date=2025-06-12 8 22 参議院選挙政策/平和でも、暮らしでも、希望がもてる日本に/2022年6月8日 日本共産党 https://www.jcp.or.jp/akahata/aik22/2022-06-09/2022060909_01_0.html? fbclid=IwAR0CXQwAIQ96ZVfO0rzgdWXaQnSwAKL1h6anCbjKsYTNPecPVVVUSAbKomc 9 10 11 12 13 14 220620選挙公報原稿用紙 _三尾圭司確認用 https://www.pref.gifu.lg.jp/uploaded/attachment/306656.pdf 16 17 23 24 25 30 32 参院選予定候補駆ける/山下よしきさん 現 〖活動地域〗大阪・兵庫・滋賀・奈 良・和歌山/あったかい連帯胸に https://www.jcp.or.jp/akahata/aik24/2025-03-01/2025030103_01_0.html 18 19 26 27 35 政治改革特別委員会(政治資金規正法改定案等ー日本共産党「政治資金規正法改正案(企 業・団体献金全面禁止法案)」「政党助成法廃止法案」の提出者として答弁) | 2024年・213通常国会 | 国会 質問議事録|日本共産党・井上哲士参議院議員ONLINE https://www.inoue-satoshi.com/parliament/2024/06/post-516.html 20 2025年4月 – ページ 2 – 日本共産党山下よしきオフィシャルサイト https://www.yamashita-yoshiki.jp/2025/04/page/2/ 29 2022年7月 – 日本共産党山下よしきオフィシャルサイト https://www.yamashita-yoshiki.jp/2022/07/ 33 2024年2月 – 日本共産党山下よしきオフィシャルサイト https://www.yamashita-yoshiki.jp/2024/02/ 36 37 2025年4月 – 日本共産党山下よしきオフィシャルサイト https://www.yamashita-yoshiki.jp/2025/04/