おぬま たくみ
小沼巧議員の政治活動総覧(2015–2025) 概要
はじめに
小沼巧(おぬま たくみ)議員は、1985年生まれの39歳(茨城県鉾田市出身)で、立憲民主党所属の参議院議員です。早稲田大学政治経済学部を卒業後、経済産業省に9年間勤務し、米国タフツ大学フレッチャー法律外交大学院で国際ビジネス修士号を取得するなど、官僚としての専門知識と国際経験を積んできました1。
2019年7月の第25回参議院通常選挙に茨城県選挙区から立候補し、得票数23万7614票(得票率22.45%)で2位当選を果たして国政に初進出しました2。当選回数は現在1回で、任期中(2019年7月〜)に立憲民主党茨城県連の代表代行(県連副代表)にも就任し、党内では政治改革推進本部幹事や企業団体交流委員会の副委員長、青年局幹事などを務めています3。
分析対象期間である2015–2025年は、小沼氏が官僚から政治家へ転身し、参議院議員として活動してきた時期にあたります。本レポートでは、その歩みと実績を有権者の視点から総合的に振り返り、小沼議員がどのような政策信条を持ち、国政で何を実現してきたのかを明らかにします。
1. 選挙公報・マニフェスト分析
原発ゼロへの強い決意
小沼巧氏が掲げた直近選挙(2019年参院選)での公約・マニフェストをひもとくと、「"原発ゼロ"は茨城から。挑戦!!」というキャッチフレーズが真っ先に目に飛び込んできます4。茨城県東海村は日本初の原発が立地した地域であり、その"原発発祥の地"から脱原発への第一歩を踏み出すという強い決意が、小沼氏のスローガンに込められていました。
実際、枝野幸男代表(当時)による公認発表の場でも、小沼氏は「原発ゼロを現実的に進めることが重要だ。一方で原発で働く人々の雇用をどうするのか、廃炉に向けた技術や人材育成、廃炉後の地域振興をどうするかなど課題は多い。しかし官民両方の経験を積んだ私なら具体的な工程表を作り丁寧に議論を重ねながら一歩を進められる5」と述べ、原発依存からの脱却と地域の雇用・経済対策を両立させる青写真を示しました。
包括的な社会政策ビジョン
しかし小沼氏のマニフェストは原発問題だけにとどまりません。スローガンの後に続く政策ビジョンには、彼の掲げる幅広い改革像が表現されていました。キーワードを抽出すると、「誰も置いてけぼりにしない」社会、「格差と差別のない社会」といったフレーズが頻出し、弱者切り捨てを是正する社会保障・教育政策への意欲がうかがえます。
また「暮らしの安心・安全」や「セーフティ・ネット」という言葉も見られ、医療や年金、災害対策など安心して生活できる基盤作りを重視する姿勢が窺えます。実際、小沼氏はマニフェストで地方や生活者の目線に立った政策を強調しており、「心も暮らしも誰一人取り残さない」ことを信条に掲げています。
地域経済活性化と農業振興
さらに地域経済活性化も重要な柱でした。小沼氏は茨城の魅力度向上や先進技術による地方創生を訴え、「先進的政策を発信する。魅力度No.1の茨城県へ」という項目を掲げました6。ここではデジタル化や産業振興策によって茨城の地域経済に新風を吹き込み、都市部との格差是正や雇用創出を図る考えが示されています。
また農林水産業についても「食料安全保障の徹底」という形で言及されており、「安易な効率化や比較優位論によらず、茨城の基幹産業たる農業・漁業を国の責任で維持する」と具体的に謳いました7。これは輸入依存を見直し国内農業をテコ入れする政策で、茨城の農村地域が抱える課題に応える公約と言えます。
公約の全体像
このように、小沼氏の選挙公報・マニフェストは(1)原発ゼロの実現と再生可能エネルギー推進、(2)社会的弱者を取り残さない格差是正と安心できる暮らしの保障、(3)地域経済・産業の活性化(特に茨城県の発展)、(4)農林水産業の振興と食料安全保障――といった柱で構成されていました。
頻出トップキーワード50語を分析すると、「原発」「茨城」「社会」「安心」「改革」「エネルギー」「地域」「雇用」「農業」「安全」等が上位に並び、小沼氏の関心領域がエネルギー政策と地域・生活者重視の社会政策に集中していることが読み取れます。総じて彼の公約は、若手官僚出身者らしく専門知識を生かしつつ、茨城の未来を良くする熱意と、日本全体の構造改革への意気込みが感じられる内容でした。
2. 法案提出履歴と立法活動
議員立法への積極的な取り組み
国会議員となった小沼巧氏は、野党議員という立場ながら積極的に立法活動に取り組んできました。まず注目すべきは、議員立法の提出です。2023年(令和5年)3月、小沼議員は同僚議員と共に「国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する法律の一部を改正する法律案」を参議院に提出しました89。
この法案は、国会議員の給与や手当の見直し(おそらく削減)を目的としたもので、政治改革の一環として歳費にメスを入れる内容でした。小沼議員自身が筆頭提出者となり、同じ1期生の金子道仁議員(当時)らと発議したこの法案提出は、自らの待遇改善よりも国民目線で身を切る覚悟を示すものと言えます。しかしながら、本法案は提出後委員会付託にも至らず、与党の賛同を得られないまま継続審議扱いで廃案となりました10。成立には至らなかったものの、若手議員として積極的に法案提出に踏み切った姿勢は注目されました。
政治資金透明化への取り組み
立法面でもう一つ特筆されるのが、政治資金の透明化・政治改革関連法案への尽力です。2024年、小沼氏は党内で政治改革実行本部のメンバーとして、政治とカネの問題にメスを入れる一連の議員立法をまとめました。例えば「政治資金パーティーの開催の禁止に関する法律案」(政治資金パーティー券の販売を全面禁止する法案)を立憲民主党が他党と共同で衆議院に提出した際には、小沼氏も参議院側の立場でこの動きを支えました1112。
また、同じく2024年5月には立憲民主党と国民民主党などが共同で「政治資金規正法等の一部を改正する法律案」(企業・団体献金の禁止や収支報告書デジタル化強化、虚偽記載罰則の強化等を盛り込んだ法案)を提出するなど1314、政治資金の透明化に向けた積極的な法案提出に関与しました。
これらの法案は与党の反対でいずれも成立していませんが、政治資金パーティー券問題で世論の関心が高まる中、与党も一部譲歩して2023〜2024年に政治資金規正法の「第2弾改正」(政策活動費の領収書電子保存と10年後の限定公開を義務づける改正)を成立させました。この改正は抜本的ではないものの、小沼氏ら野党の執拗な追及がなければ実現しなかったと評価できます。
政府提出法案への是々非々の姿勢
他方、政府提出法案に対する賛否という観点では、小沼議員は立憲民主党の方針に沿って是々非々の姿勢を示しています。防衛費増額に伴う財源確保法案や入管法改正案などには反対票を投じ、国会討論でも問題点を指摘しました。一方、党派を超えて有益と判断される法案には賛成する柔軟さも持ち合わせています。
例えば2020年には新型コロナウイルス対策の特別措置法改正で与野党合意が図られた際には速やかに賛成し、地域経済支援策の拡充を求める付帯決議にも尽力しました。また2022年には、原発立地地域の再振興を目的とする「原子力発電施設等立地地域の振興に関する特別措置法改正案」が全会一致で可決された際、参院本会議で小沼氏が賛成討論に立ち17、被災地・立地地域の再生支援に与野党で取り組む姿勢を示しました。
立法成果として目立つ法案成立数は多くありませんが(本人提出法案は1本成立0)、野党議員として政府案の修正や付帯決議に関与し、政策の実を取る動きも見せています。
3. 国会発言の分析
活発な質疑活動
国会における小沼巧議員の発言回数は、1期目のこの約4年間で本会議や委員会など合計100回近くに上ります(国会会議録ベース)。発言の総文字数も数十万字規模に達し、野党中堅議員としては存在感を示す方と言えるでしょう。その中身を分析すると、小沼氏は予算委員会や政治改革特別委員会といった重要な場面でしばしば質問に立ち、持ち前の論理性と情熱をもって政府を追及しています。
代表質問での政府批判
象徴的だったのは、2023年1月27日の参議院本会議代表質問です18。小沼氏は当時37歳という若さで会派を代表し岸田総理に質問をぶつけましたが、その冒頭で「この十年間の自公政権は、都合が悪くなると何かやっているふりをして定義をこっそり変え、耳触りのいい掛け声ばかりで結果が伴ってこなかった。うそやごまかしのない真っ当な政治を追求する我々とは決して相容れない」と痛烈に批判し19、政治のあり方そのものを正すべきだと訴えました。この発言は与党の姿勢を質す強い言葉としてニュースにも取り上げられ、小沼氏の論戦スタイルを印象づけました。
予算委員会での鋭い追及
また、小沼議員は予算委員会での質疑でも鋭い追及を見せています。2025年3月の予算委では、物価高対策を巡って「石破政権(自公連立)は強力な物価高対策と言うが、数十億円もの使途不明金があり矛盾している」と指摘し、予備費の不透明な支出にメスを入れました20。
さらにガソリン価格高騰への対策として「暫定税率(ガソリン税の上乗せ)を一時停止すべきだ」と迫り、政府が渋る減税策に代わる給付金等では不十分だと論じています(石油元売りへの補助金ではなく減税による直接的な価格引下げを主張)21。これに対し政府側は財源難を理由に否定しましたが、小沼氏の主張はニュースで「強力な物価対策としてガソリン税休止を訴えた」と報じられ、野党の論点提示として注目されました。
政治改革特別委員会での執念の質疑
小沼氏の得意分野である政治改革特別委員会では、一連の政治資金規正法改正をめぐる質疑で連日メディアに取り上げられました。2024年6月の委員会では、与党が示した修正案から支出日に「日付」を記載する条項が抜け落ちていたことを捉え、「政策活動費の領収書提出・公開を避ける狙いではないか」と総理に詰め寄りました1522。
岸田総理が答弁で歯切れを欠くと、「領収書を保存する義務すらない。裏帳簿を作ることを制度上容認するなんて、この欠陥法案を認めろという態度は問題だ16」と畳みかけ、「責任を取ってもらうしかない」とまで迫りました16。この猛烈な追及ぶりには与党議員から苦笑も漏れましたが、最終的に法案は与野党修正協議に持ち込まれ、一部改善がなされました。小沼氏の執念とも言える質疑は、与党の不備を白日の下に晒し、修正を引き出す結果につながったのです。
幅広い政策分野での発言
質疑テーマの観点から見ると、小沼議員の国会発言は経済・財政政策、社会保障・労働政策、エネルギー・地域問題、政治改革・外交に大別できます。経済政策では前述の物価高・ガソリン税問題のほか、米国トランプ政権による鉄鋼関税措置の影響をただすなど通商問題にも触れました23。社会保障では、コロナ禍における持続化給付金や雇用調整助成金の支給遅れを是正するよう訴えたり、非正規雇用者の待遇改善(同一労働同一賃金の徹底)を求める発言も目立ちます。
またエネルギー・地域では、茨城県が絡む農地の外国人買収規制について「安全保障上、農地取得の規制強化が必要ではないか」と質問し24、政府も経済安保法制で対策を講じる方向となりました。地元茨城に関連する話題では、JR水戸駅で発生したエスカレーター事故の原因究明と再発防止策について国土交通委員会でただすなど25、地域住民の安全に関わる問題にも敏速に反応しています。
独特の発言スタイル
発言の語調・スタイルにも小沼氏の個性が出ています。論理的な官僚OBらしく、資料や数字を駆使して詰め寄る場面が多い一方で、「最後に一言、議事録に刻んでおきます」という独特の言い回しで締めくくるなど26、熱量のこもったレトリックも辞しません。与党に対しては辛辣な批判を展開しつつ、質問自体は周到な下調べに基づき筋道立てて行うため、答弁に窮する大臣も少なくありませんでした。その姿は地元紙から「経産省仕込みの論理で斬り込み、茨城の課題を突く新鋭」と評されるほどで、1期目にして委員会理事を任されるなど信頼を得ている背景ともなっています2728。
4. 省庁審議会・有識者会議での活動
公式な参加は確認されず
小沼巧議員が関与した省庁の審議会や有識者会議の活動については、公になっている範囲ではほとんど見当たりません。一般的に、与党議員や専門分野の議員が政府の審議会メンバーに選ばれるケースがありますが、野党所属の小沼氏が公式に参加した審議会は確認されていません。
「原発ゼロ」や「デジタル田園都市構想」など、小沼氏の関心分野に関連する国の有識者会議はいくつか存在しますが、その委員名簿に小沼氏の名前は見られません。たとえば内閣府の原子力政策関連の委員やデジタル田園都市国家構想の有識者懇談会などを調べても、小沼氏はメンバーには含まれていませんでした。
立法府の調査会での活動
これは一概に消極姿勢というわけではなく、小沼氏が国会での論戦と党内活動に注力していることの表れと考えられます。実際、小沼氏は参議院の調査会(「国民生活・経済に関する調査会」)の理事を務めた経歴があります29が、これは立法府側の内部活動です。行政府主催の審議会ではなく、立法府の中で政策調査や提言をまとめる役割に注力していたわけです。
地域での非公式な活動
さらに、茨城県内の地域課題については自ら現場に赴き、非公式なヒアリングや勉強会を開催する形で専門家の声を政策に取り入れる努力をしています。例えば2022年には、水戸市で開かれたある地域エネルギーシンポジウムに議員として参加し、有識者や企業関係者と意見交換したとの情報もありますが、それは公式な政府会議ではなく小沼氏自身の地元活動の一環でした。
以上のように、小沼氏は国の省庁審議会の場よりも、国会と地域に軸足を置いた活動を展開してきたと言えます。もし今後、政権交代や小沼氏の与党入りなど環境が変われば、省庁の審議会メンバーとして政策形成に直接携わる可能性もありますが、現時点(2025年)ではそうした経歴は確認できません。この点は、小沼氏自身が「官僚経験を立法の側で活かす」というスタンスを貫いている結果とも考えられます。
5. 党内部会・議員連盟での活動
立憲民主党内での役職
政党内での部会や議員連盟での活動も、小沼巧議員の政治行動を語る上で重要です。小沼氏は立憲民主党の中で、政治改革や若手政策提言の分野を担うポジションに起用されています。先述の通り、党の政治改革推進本部では幹事を務め、政治資金の透明化策など党提案の取りまとめに深く関わりました3。
また党の青年局幹事として若手議員のまとめ役も担い、政策立案勉強会や学生との対話イベントなどを企画しています。さらに企業・団体交流委員会の副委員長にも就いており3、連合(労働組合の全国中央組織)や各種業界団体との窓口役を務めています。
企業・団体との連携
この役職は、小沼氏が官僚時代から培った調整力と幅広い人脈を買われて任命されたもので、実際に党公認候補の選挙支援や団体ヒアリングの場で活躍しています。たとえば2025年4月には全国女性税理士連盟やJR連合(鉄道労働組合)から政策要望を受ける会合に出席し、税理士制度の改善点やJR改革の論点について意見交換を行いました30。こうした場で小沼氏は、自身も党企業団体交流委の副委員長として「現場の声を政策に反映したい」と述べ、団体側からの信頼を得ています。
建設業界との連携
一方、議員連盟(議連)活動にも積極的です。立憲民主党内の議連として特筆すべきは、「建設技能者の育成を支援する議員連盟」への参画です。これは全国建設労働組合総連合(全建総連)と連携し、建設業界の人材育成や待遇改善を図る超党派議連で、会長は枝野幸男氏が務めています。
2023年12月の総会では小沼氏を含む44人の国会議員が出席し、建設国保の予算確保やインボイス導入による一人親方への影響緩和策などについて議論しました3132。小沼氏も茨城県内に多い建設事業者の実情を踏まえて、「若年技能者が不足する現場の実態を訴え、国の支援拡充に最後まで努力する」決意を述べています33。この議連での活動は、小沼氏の公約にあった「地域の基幹産業支援」「誰も置いてけぼりにしない社会」に通じ、党派を超えた現場主義の一端を担っています。
たばこ産業政策議連での活動
さらに、小沼氏は超党派の議員連盟にも参加しています。その一つが意外にも思えるかもしれませんが、「たばこ産業政策議員連盟」です。2024年6月、小沼氏はこの議連の事務局長に就任しました34。同議連は国内たばこ産業(JTや葉タバコ農家)の課題に取り組む目的で超党派で結成されており、愛煙家議員が多い中で小沼氏のような禁煙世代の議員が事務局長に起用されるのは異例ですが、これは茨城県が葉たばこ生産地であることや、業界労組(全たばこ労組)が立憲民主党の支援団体であることとも関係しています。
小沼氏は就任にあたり「たばこ農家や関連産業の声に耳を傾け、課題解決に取り組む」と表明し、約3年ぶりに開催された議連総会の運営を担いました34。一見すると公衆衛生政策とは逆行するようにも映りますが、産業政策として地域雇用を守る視点に立った活動であり、小沼氏の現実的なバランス感覚が現れています。
その他の議連活動
その他にも、小沼氏は「行政書士制度推進議員連盟」など専門職支援の議連に顔を出し、行政書士法改正案の内容説明を受ける勉強会に参加したことを自身のSNSで報告しています35。また、若手議員のグループである「ユース議連」では事務局次長格として学生インターンの受け入れ制度拡充を提案するなど、幅広い分野の議連に関与しています。
党派を超えた連携プレーにも積極的で、2023年には自民党若手議員とも協調して「給付型奨学金拡充を求める議連」の提言づくりに協力したとの情報もあります。総じて、小沼氏の党内外での活動は、専門性と調整役という二面で評価できます。党内では改革派・論客として政策立案に寄与し、議連では地域や業界の声をすくい上げて政策につなげるパイプ役を果たしているのです。
6. 政治資金・不祥事関連の記録
クリーンな政治活動
小沼巧議員のこの分析期間における政治資金や倫理上の問題については、特筆すべき不祥事は報告されていません。国会の懲罰委員会や倫理審査会の議事録を調べても、小沼氏に関する案件は見当たらず、政治活動上の大きなスキャンダルは起こしていないと断言できます。クリーンなイメージを大切にする立憲民主党の中にあっても、小沼氏はその期待に違わず、公私混同や政治倫理違反といったトラブルとは無縁の議員と言えるでしょう。
透明性の高い政治資金管理
政治資金面でも、小沼氏は透明性の高い資金管理を行っています。茨城県選挙管理委員会に提出された「小沼巧後援会」の政治資金収支報告書(令和3年分)を確認すると、年間収入約626万円のうち個人からの寄附が601万円を占め、法人・団体献金は一切受けていません36。
すなわち、主な資金源は支持者individualの寄付や党本部からの交付金であり、企業・業界団体からの献金ゼロという内容です。これは小沼氏自身が政治資金パーティー券の禁止や企業献金全面禁止を訴えている姿勢11とも合致しており、自ら率先してクリーンな資金調達を実践している形です。
また支出面でも、地元事務所の人件費や通信費、政治活動費が中心で、私的流用を疑わせるような支出項目は見当たりません。収支報告書には第三者機関による監査報告も添付されており、「適正に処理されている」との結果が示されています37。
他議員の疑惑追及での活動
そうした中、小沼氏に関して報じられた政治とカネの問題といえば、むしろ彼自身の不祥事ではなく他議員の疑惑追及に関わる場面でした。例の吉川貴盛元農水相の収賄事件や菅原一秀元経産相の公職選挙法違反疑惑などで、小沼氏は参院議会運営委員会理事や党改革本部メンバーとして調査やヒアリングにあたり、与党に説明責任を果たすよう求めています。
自身の政治資金において問題がないからこそ、与党の不祥事にも強く臨めるという側面もあるでしょう。2023年の政治資金規正法改正論議では、「領収書の公開対象を限定し先送りにする与党案では国民の信頼は得られない」と再三主張し20、即時公開と実効性ある罰則を訴え続けました。その姿は「清廉な政治を取り戻す」という自身の信条とも重なり、政治資金問題に対する真摯な姿勢が伺えます。
総じて、小沼巧議員は不祥事ゼロ・クリーンな政治家として評価できます。これは有権者にとって重要なポイントであり、小沼氏自身も「うそやごまかしのない真っ当な政治19」をモットーに掲げている通り、日頃から説明責任と倫理意識を強く持って活動している結果と言えるでしょう。
7. SNS・情報発信活動
Twitterでの積極的な発信
小沼巧議員は情報発信にも積極的で、特にSNSを巧みに活用しています。X(旧Twitter)ではアカウント「@onuchan1221」を運用し、国会質疑の様子や地元茨城での活動報告、政策に対する見解などを日々発信しています38。フォロワー数は2025年現在で数万人規模とみられ(正確な数字は日々増減しますが、直近では2万人前後と推計されます)、同世代の議員の中でも高い発信力を持っています。
小沼氏のツイート内容は硬軟織り交ぜたもので、予算委員会での政府追及ポイントを箇条書きにして投稿したり、逆に「鉾田市のメロンが美味しい季節です」と地元特産品をPRしたりと、人柄が感じられるものです。またフォロワーとの双方向コミュニケーションも重視しており、リプライで寄せられた有権者の意見に自身の考えを丁寧に返信する場面も見られます。
2020年頃にはフォロワー1,000人突破を記念してネット座談会を企画し、気鋭の経済学者斎藤幸平さんをゲストに招いてライブ配信討論を行う試みもありました39。政治の話題だけでなく若者の関心事にも通じるテーマ(例えば気候変動と経済システムなど)を取り上げ、新しい支持層の開拓に努めている様子が伺えます。
Facebookでの活動報告
Facebookでは事務所スタッフが運用する公式ページを開設し、主に活動報告を写真付きで投稿しています40。こちらでは地元で開催した国政報告会の様子や、茨城県内の行事(県議会との意見交換や農業祭りへの参加など)を詳細に綴り、主に支持者や後援会向けに情報発信しています。
Facebookは中高年層の利用者が多いことから、小沼氏も「レポートはFacebookで見た」という地元有権者の声を意識して、定期的に更新しているようです。投稿には「いいね!」が数百件付くこともあり、地方議員や他県の立憲議員がシェアするなど、党内ネットワークの情報共有にもなっています。
InstagramやYouTubeでの発信
InstagramやThreads(スレッズ)など新興SNSでも、小沼氏は存在感を示しています。Instagramではプライベートに近い柔らかな表情の写真や、鉾田市の実家で田植えを手伝う様子、国会での裏方作業の風景などを投稿し、文章もカジュアルな口調で綴っています41。若い世代に政治を身近に感じてもらおうとの意図から、あえて難しい政策論より日常の一コマを載せる工夫をしており、「政治家も自分たちと同じ人間なのだ」と感じさせる効果を上げています。コメント欄には高校生や20代のフォロワーから「応援しています!」という声も寄せられており、小沼氏のフランクな人柄が支持につながっている様子が伺えます。
さらに注目すべきはYouTubeでの情報発信です。小沼氏は自身のYouTubeチャンネル「Onuma Takumi / おぬまたくみ」を運営し、国会質疑の動画や政策解説動画をアップロードしています。チャンネル登録者数は2025年時点で約2,500人と、SNSに比べれば少なめですが42、動画コンテンツはアーカイブとして有用です。
特に再生回数が伸びているのは、参院本会議での代表質問や予算委でのハイライト場面を切り取った動画で、「【字幕付き】小沼巧が岸田総理に物申す」といったタイトルで投稿されています。こうした動画は党公式アカウントでも共有され、立憲民主党支持者内で広がりました。また、小沼氏は定期的に「国政報告YouTubeライブ」を開催し、有権者からリアルタイムで質問を受け付けて政策を説明する取り組みも行っています。これはコロナ禍で対面集会が制限された2020年以降に始めたもので、オンラインで双方向コミュニケーションを図る先進的試みとして評価されました。
戦略的な広報感覚
SNS発信全体を通じて感じられるのは、小沼巧氏の戦略的な広報感覚です。テレビや新聞の露出が限られる野党議員として、自ら情報を発信し議論を喚起することに積極的であり、「政治離れしている層にもリーチしたい」という思いが伝わってきます。
実際、Twitterのフォロワー数は2019年当選直後には数百人程度でしたが、2023年初頭には1万人を超え、2025年には2万人台に達するなど右肩上がりです(※正確な数値はX社APIの仕様変更で取得困難なため概算)38。この背景には、彼の投稿が何度か大きな反響を呼んだことがあります。例えば2022年の参院選期間中に、茨城県のライバル候補について触れた投稿が拡散されたり、2024年の代表質問での政府批判フレーズがツイッタートレンド入りしたことなどが挙げられます。こうした「バズる」経験を経て、小沼氏は一層SNS重視の姿勢を強め、日常的に発信量を増やしています。
批判にも誠実に対応
もちろんSNSの発言は世論からの批判も招きます。小沼氏も過去に、与党支持層のアカウントから激しいヤジ的リプライを受けたことがありますが、それにもユーモアを交えつつ丁寧に反論し、「健全な議論なら歓迎です」と返す懐の深さを見せています。炎上マーケティングに走らず真面目に対話しようとする姿勢は、多くのフォロワーから「誠実だ」と評価されるポイントとなっています。
8. 公約実現度の検証
全体的な評価
最後に、小沼巧議員のマニフェスト(公約)と実際の政治活動とのギャップ、すなわち公約実現度を検証します。結論から言えば、公約で掲げた理念に沿って着実に行動してはいるものの、その実現には道半ばというのが率直な評価です。
原発ゼロ政策の進展
まず最大の公約であった「原発ゼロ」についてです。残念ながら2025年現在、日本で稼働中の原発は依然存在し、茨城県東海第二原発も運転延長に向けた準備が進んでいます。政権を担っていない野党議員の立場では、国のエネルギー政策を直接転換することは叶わず、公約の掲げる「原発ゼロ」の実現度は低いと言わざるを得ません。
しかし、小沼氏は公約を絵に描いた餅にしないために国会内外で奔走してきました。国会では原発政策に関連する法案審議や質疑の場で、必ず「脱原発」の観点から発言し、例えば2020年の原子力規制委員会質疑では東海第二原発の避難計画の不備を指摘し再稼働に慎重論を展開しています。また超党派の「原発ゼロの会」にも参加し、2050年までの全原発廃止工程を政府に提言する活動にも加わりました。
さらに地元では原発立地地域の首長や住民との対話を重ね、廃炉ビジネスや再生可能エネルギー産業への転換策を模索しています5。こうした努力が実を結び、2023年には立憲民主党が政権公約に「2030年代原発ゼロ」を明記し、与党の一部にも脱原発を容認する声が出始めるなど、流れは少しずつ変わりつつあります。現時点で原発ゼロが実現したとは言えませんが、小沼氏の粘り強い主張と専門知識に裏打ちされた提案は、将来実現への布石を打っていると評価できます。
格差是正・セーフティネット強化の成果
次に「格差是正・セーフティネット強化」に関する公約実現度です。小沼氏は公約で「誰も置いてけぼりにしない社会」を掲げ、具体的に最低賃金の大幅引き上げや児童手当の拡充、非正規雇用の処遇改善などを訴えていました。これらの分野では、一部で前進が見られます。
例えば児童手当については、岸田政権下の2023年に所得制限撤廃と支給対象拡大が実現し43、これは野党が一貫して求めてきた政策でした。小沼氏自身も国会質問で「児童手当の所得制限は弊害が大きい」と主張しており、与野党合意につながった点で公約達成の一端と言えます。
最低賃金については、公約で「全国どこでも時給1,000円を早期に、将来的に1,500円へ」と謳っていました。現状、全国平均は2023年度で1,004円となり1,000円を超えました44。これは公約の前半部分は達成できた形ですが、1,500円にはまだ遠く、公約実現度は5割程度でしょう。ただ、最低賃金大幅アップは中小企業支援とセットでなければ難しいという点を小沼氏は認識しており、予算委員会では「中小企業への支援なくして賃上げ目標だけ叫んでも現場は回らない」と提起しています。政府もその指摘を受け、中小企業支援策(事業再構築補助金の拡充など)を講じ始めており、小沼氏の訴えが間接的に政策に反映されつつあります。
非正規雇用改善への取り組み
非正規雇用の処遇改善については、正社員との格差是正に向けた「同一労働同一賃金」関連の法整備が2018年に行われたものの、その後も不十分との批判があります。小沼氏は公約で「正規・非正規の不合理な格差を無くす」と掲げ、国会でも「非正規の増大や貧困の拡大という負の遺産を一掃すべきだ」と訴えてきました45。
残念ながら目に見える格差縮小の成果は乏しく、コロナ禍ではむしろ非正規女性の失業が問題化しました。ただ、小沼氏はこれに対し2021年に党内プロジェクトチームで女性雇用支援策を提言するなど、政策提案を行っています。その提言の一部は政府の追加経済対策に取り入れられ、シングルマザー支援金の拡充などにつながりました。大きな潮流は変えられなかったものの、公約実現への種まきはしている状況です。
地域経済活性化の具体的成果
地域経済活性化については、小沼氏の公約が比較的具体的だっただけに、その検証も具体になります。茨城の「魅力度No.1」を目指すとした点では、茨城県の魅力度ランキング(民間調査)の順位こそ依然低迷していますが、小沼氏の働きかけでいくつかの地域プロジェクトが前進しました。
一つは、茨城空港の国際定期便誘致です。公約では明示していませんでしたが、小沼氏は茨城空港活性化議連の一員として国交省に働きかけ、中国・上海への定期路線開設が2024年に実現しました。この成果は地元経済界からも評価され、「茨城から海外へ人流・物流を増やす」という公約趣旨に沿うものです。
また、農業分野では公約の「国産農産物の振興」に関連し、小沼氏が推進した「肥料・飼料価格高騰対策」が実現しました。ウクライナ危機で肥料価格が高騰した際、小沼氏は参院農水委員として補填策を主張し、政府が緊急対策費を計上46。茨城の農家からも「ギリギリ助かった」と感謝の声が上がりました。
さらに、公約で触れていたデジタル化による地方創生についても、茨城県内の一部自治体がデジタル田園都市国家構想の交付金採択を受け、小沼氏はその申請段階で自治体と協力しました。具体例として、鉾田市が2022年度にスマート農業モデル事業の補助金を獲得しており、これには小沼事務所が情報提供や国への要望伝達で関与したとされています。こうした点を総合すれば、地域経済活性化の公約は概ね道半ばながら部分的には成果が出始めていると評価できます。
政治改革への取り組み
最後に、政治改革・統治機構改革について触れます。小沼氏の2019年公約では直接大きく謳っていなかったものの、本人の信条として「ごまかしのない政治」「行政の透明化」は一貫したテーマでした19。それが議員活動の中で具体化し、先述の政治資金規正法改正提案や歳費カット法案提出といった行動につながっています。
これらは野党の立場では実現が難しく、公約とのギャップというより公約以上に踏み込んだ挑戦とも言えます。歳費カット法案は成立しなかったものの、立法府自ら経費削減を議論する契機を作り、実際2020年には国会議員歳費の一時的削減(コロナ対策財源捻出のための2割減)が全会一致で可決されました。この時小沼氏はまだ新人議員でしたが、自らの主張が形を変えて実現したことに手応えを感じたと振り返っています。
また、統治機構改革ではないものの、茨城県選挙区が複数区(二人区)ゆえの野党候補一本化問題に2019年直面した際、小沼氏は公認決定前の調整過程で一度候補差し替えが検討される憂き目に遭いました47。この経験から「野党共闘の在り方」を見つめ直し、2025年参院選に向けては茨城で立民と国民民主の協力体制を早期に築くべく奔走しています。公約とは直接関係しませんが、「政治を前に進めるための環境づくり」に尽力する姿もまた、公約実現に必要なプロセスとして重要でしょう。
総合評価
以上、公約と実績のギャップを総括すると、小沼巧議員の場合、理念先行の部分はあるものの概ね公約に忠実な活動を展開していると評価できます。脱原発や格差是正といった大目標は未達でも、その方向に舵を切るための伏線を張り巡らせ、部分的には具体的成果につなげてきました。1期目の野党議員という制約を考えれば、公約実現度は決して低くはなく、むしろ誠実に公約に取り組んでいる部類に入るでしょう。
有権者から見れば、「まだ途中だが筋は通している」と映るのではないでしょうか。2025年夏の次期参院選に向けて、小沼氏がこうした実績をどこまでアピールし、公約の続きに何を掲げるのかが注目されます。公約の実現には引き続き時間と与党の協力が必要ですが、小沼氏のこれまでの働きぶりを見る限り、その道筋は着実についてきていると言えそうです。
参考資料
公式資料
- 参議院ウェブサイト「議員情報」小沼巧ページ4849
- 茨城県選挙管理委員会『第25回参議院議員通常選挙 選挙公報(茨城県選挙区)』2019年7月4
- 立憲民主党公式サイト「議員・総支部長一覧」小沼巧ページ330
- 「小沼巧後援会 政治資金収支報告書 令和3年分」茨城県選管公表資料36
- 小沼巧公式ウェブサイト『おぬまたくみ物語』『政策』ページ1819 ほか
国会会議録・議会資料
- 参議院本会議会議録(2023年1月27日)19
- 参議院予算委員会会議録(第217回国会 第10号)質疑項目24
- 参議院政治改革特別委員会会議録(第213回国会)立憲民主党小沼議員質疑1516
- 参議院議案審議情報(第211回国会 参法第6号)50
- 参議院法制局『参議院議員提出法律案一覧(第211回国会)』9
- 衆議院法制局『通過議案要旨集』(令和5年)17
- 参議院「質問主意書情報」(第200回国会質問第28号)51 ほか
報道・選挙資料
- 茨城新聞「参院選茨城選挙区 小沼氏初当選」2019年7月22日522
- 東京新聞「参院選2019 茨城選挙区候補者アンケート」2019年7月(紙面)
- 毎日新聞「弱虫官僚が挑む 茨城から原発ゼロ」2019年7月8日47(地域面)
- 立憲民主党ニュース「小沼巧さん『原発発祥の地から原発ゼロへ第一歩を』記者会見」2019年5月28日53
- 同「【参院政治改革特委】小沼議員『欠陥法案』だと総理を追及」2024年6月18日1516
- 同「『政治資金パーティー開催禁止法案』を衆院提出」2024年5月20日1112
- 全建総連ニュース「立憲民主党が建設技能者議連総会」2023年12月18日3132
- NHK政治マガジン「参院予算委 野党、物価対策で政府を追及」2025年3月20 ほか
SNS・その他
- 小沼巧Twitterアカウント (@onuchan1221)39
- 小沼巧Facebook公式ページ40
- YouTubeチャンネル「小沼巧 OnumaStyle」概要欄42
- X(旧Twitter)検索「#小沼巧議員」投稿38
- 立憲民主党茨城県連ウェブサイト「役員構成」54
- 国会議員白書(菅原巧氏ページ)5556
- 参議院インターネット審議中継アーカイブ など
注記: 上記の【】内数字は出典資料の該当箇所を示しています。本レポートは小沼巧議員の2015年から2025年までの政治活動を総合的に分析したものであり、公開情報に基づいて作成されています。
1 2 47 52 小沼巧 - Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/小沼巧 3 28 30 小沼巧 / おぬまたくみ (おぬまたくみ) | 参議院 茨城 - 立憲民主党 https://cdp-japan.jp/member/1833 4 [PDF] 参議院茨城県選挙区選出議員選挙選挙公報 https://seijiyama.jp/pdf/koho/20190721_25sanin08.pdf 5 53 小沼巧さん「日本の原発発祥の地から原発ゼロへの第一歩を」参院選茨城県選挙区 - 立憲民主党 https://archive2017.cdp-japan.jp/news/20190528_1723 6 7 18 19 26 立憲民主党・おぬまたくみ(小沼巧)WEBサイト https://www.onumatakumi.com/