こいけ あきら
小池晃議員の政治活動総覧(2015–2025)
概要
小池晃(こいけ・あきら)議員は日本共産党所属の参議院議員であり、党書記局長(ナンバー2)を務めるベテラン政治家です¹。1960年東京都世田谷区生まれ、東北大学医学部卒の医師でもあります²。
全日本民主医療機関連合会で地域医療に携わった経歴を持ち、「いのちをまもる政治」を掲げて1998年参院選に初当選しました³。参院比例代表で通算4回当選(1998年、2004年、2013年、2019年)し、2010年に一度議席を失いましたが2013年に国政復帰し現在まで在職しています⁴。
2016年から日本共産党書記局長として党の政策全般を取り仕切り、野党共闘や国会論戦の先頭に立ってきました。本レポートでは、2015年から2025年までの10年間に焦点を当て、小池議員の公約・立法活動から国会発言、党内外での活動、政治資金、SNS発信まで網羅的に分析します。有権者が議員の歩みを立体的に把握できるよう、事実に基づき丁寧に記述します。
1. 選挙公報・マニフェスト分析
2022年参院選での主要公約
小池晃議員は直近の2022年7月の参院選(比例代表)で、日本共産党の掲げる公約を先頭に訴えました。選挙公報のスローガンには「いのちまもる政治を今こそ。」「沖縄に新基地はつくらせない。」「市民とともに政治を動かす。」といった力強い言葉が並び、コロナ禍での命と暮らしの支援、米軍新基地建設反対、市民連携による政治改革を前面に押し出しました⁵。
平和・安全保障政策
マニフェストの柱は平和と社会保障です。憲法改悪に断固反対し、安保法制(戦争法)の廃止など「9条守れ」を貫く姿勢を明確にしています⁶。防衛費倍増にも反対し、敵基地攻撃能力保有は「専守防衛を投げ捨て"戦争する国"に逆行する無法なもの」と批判しています⁶。
外交では東南アジア諸国連合(ASEAN)との協調による東アジアの平和構築や、唯一の戦争被爆国として核兵器禁止条約への参加・核廃絶の先頭に立つこと、そして沖縄・辺野古の新基地建設中止を訴えています⁷⁸。
経済・税制政策
経済政策では家計第一を掲げ、消費税の5%への緊急減税を明示しました⁹。その財源として大企業優遇を是正し、法人税を安倍政権以前の税率(28%)に戻すことや⁹、富裕層への所得税・住民税の最高税率引き上げ(55%→65%)を提案しています⁹。
内部留保をため込む大企業には一時的課税を行い、その資金で賃上げとグリーン投資を促すとしました¹⁰。労働政策では最低賃金1500円の実現を掲げ、具体的な賃上げ支援策も提示しました⁹。
環境・エネルギー政策
エネルギー・環境では2030年までに石炭火力と原発ゼロを目標に掲げ、同年までにCO2を50~60%削減する積極的な脱炭素政策を打ち出しました⁹¹¹。
社会保障・教育政策
社会保障と教育の充実も大きな柱です。物価高騰下で年金削減を中止し、75歳以上医療費窓口負担2倍化の撤回、病床削減計画の停止など高齢者医療を守る公約を掲げました¹²。保健所を充実させ感染症対策力を強化することや、大学・専門学校の学費半額(将来的に無償化)、入学金廃止、給付型奨学金の拡充など大胆な教育無償化ビジョンも示しています¹³。
義務教育の教材費や給食費の無償化、18歳までの子ども医療費無料化、全ての子どもに手当を支給する制度拡充など、子育て支援策も網羅されました¹⁴。
ジェンダー・人権政策
ジェンダー平等や人権分野の公約にも力点があります。企業に男女の賃金格差開示と是正計画の義務付けを提案し、選択的夫婦別姓の導入や同性婚を可能にする民法改正、LGBT平等法の制定など多様性を尊重する法整備を約束しました¹⁵。
「痴漢ゼロ」を政治の重要課題と位置付け、実態調査や加害根絶策の推進、「生理の貧困」をなくすための生理用品の低廉提供など、社会問題にも踏み込んだ政策を掲げています¹⁶。
こうしたキーワードからは、小池議員(および共産党)が平和主義・福祉充実・格差是正・多様性尊重を軸に据えていることが読み取れます。実際、選挙戦でも「くらしに希望を」「ブレない平和の党」と強調し、市民と野党の共闘による政権交代で公約実現を目指すと訴えていました。
頻出キーワード上位にも「憲法」「消費税」「社会保障」「暮らし」「平和」「賃上げ」「原発ゼロ」「ジェンダー」といった言葉が並び、小池議員の政治姿勢を象徴しています。それらは党の綱領に基づく一貫した主張であり、有権者に対し「弱者に寄り添い平和を守る」政治家像を印象付けるものでした。
総じて、小池議員のマニフェストは国民生活を底上げし平和と人権を守る政策で固められており、その語り口からは専門家としての論理的説得力と同時に庶民目線の温かみが感じられます。
2. 法案提出履歴と立法活動
積極的な議員立法への取り組み
少数野党の立場ながら、小池議員は積極的に議員立法に取り組んできました。2015年以降に彼が提出者となった法案は約35本に上り、歴代参議院議員中でも提出数上位に入ります¹⁷。
内容は共産党の政策方針と軌を一にするもので、消費税減税法案や年金削減中止法案、給付型奨学金創設法案など社会保障・税制の改革案が目立ちます。例えば2019年には、消費税率引き上げを凍結し減税する法案を他野党と共同提出して政府に迫りました(与党の反対で廃案)。
また、森友・加計学園問題を受けた行政監視強化法案や、政治分野の男女共同参画推進法の改正案(選択的夫婦別姓の導入を含む)など、当時の政治課題に応じた提案も行っています。これらはいずれも党単独または超党派で提出されていますが、与党多数の壁の前に可決・成立したものは極めて少数でした(提出35本中、成立は数本程度にとどまると見られます)。
野党提出法案は委員会で審議入りさえ叶わないケースも多く、小池議員自身「少数会派の提案が葬られる現状を変えねば」と悔しさを滲ませています。
超党派合意による立法成果
もっとも、小池議員の立法活動が全て実らなかったわけではありません。超党派の合意によって成立した立法も存在します。その一つが2019年成立の「旧優生保護法下で不妊手術を受けた被害者への一時金支給法」です¹⁸。
優生手術被害者の救済を目的に超党派議員連盟で法案をとりまとめ、被害当事者の長年の悲願だった補償法案が満場一致で可決・成立しました¹⁹。小池議員の所属する共産党も提案者の一角を担い、彼自身も議論に参画しました。この法律は衆参両院で全会一致・異論なく可決され(参議院本会議の投票結果:賛成229、反対0)¹⁹、与野党協力で立法が実現した好例となりました。
また現在、第二次世界大戦中の空襲被害者救済法案についても超党派で合意が成立しつつあります。小池議員は2025年の参院厚生労働委員会で「戦後80年の今年こそ空襲被害者に一時金支給の救済法を制定すべきだ」と政府に迫り²⁰、法案成立に消極的な厚労省の姿勢を「妨害だ」と厳しく批判しました²⁰。この法案も超党派議員連盟で準備されており、小池議員は被害者団体の声を背景に成立へ尽力しています。
文化・社会的弱者支援の立法活動
さらに小池議員は、文化や社会的弱者を支える法整備にも関わっています。コロナ禍では落語家や演芸場を守るため、自民党議員らと超党派で「寄席文化を守る議員連盟」を立ち上げ、休業に追い込まれた寄席への支援拡充を政府に要請しました²¹²²。
実際に2021年2月、加藤官房長官や萩生田文科相に対し議連として支援強化を申し入れ、「『寄席』は日本の宝。コロナ禍だからこそ笑いが必要だ」と小池議員も訴えています²³。この要請に政府側も理解を示し、文化芸術分野への補助拡大策が表明されました²²。
また受動喫煙防止対策でも、東京五輪を見据えた非喫煙促進法の議員連盟に参画し、飲食店等での禁煙強化策を提言しました(2018年の健康増進法改正に一部反映)。こうした活動は法案提出という形に限らず超党派の議員連盟で政策を動かす取り組みですが、立法府の一員として成果を上げた事例と言えます。
立法スタイルの特徴
総じて、小池議員の立法スタイルは「野党の論理」を立法化するものです。政府与党の法案には反対するだけでなく、代案となる法案を示すことで対案路線を明確にしてきました。法案成立数こそ与党議員に比べ少ないものの、その提出過程で政府答弁を引き出し問題点を炙り出すなど、アジェンダ設定型の役割を果たしています。
また、与野党協調が可能なテーマ(被害者救済や文化支援など)では柔軟に共同歩調を取り、実現へ粘り強く動いている点も注目されます。提出法案35本のうち可決成立したのはごく僅かですが、それらは彼の地道な努力の積み重ねによるものです。
3. 国会発言の分析
活発な国会論戦
小池晃議員は国会で極めて活発に発言してきました。2015年から2025年までの国会質疑での発言回数は約477回に上り、発言文字数は累計約273万字にも達します²⁴。これは参議院議員中でもトップクラスの水準であり、発言量の多さ(文字数では第15位)からも彼の論戦ぶりが際立っていることがわかります²⁴。
とりわけ予算委員会や厚生労働委員会などで政府を追及する場面が多く、その歯切れの良い質問と豊富なデータ提示で知られます。医師出身らしい論理的な質問運びと、時にユーモアを交えつつ核心を突く切り返しで、与党閣僚を追い詰めるシーンもしばしば報道されます。野党の論客として「政府にとって最も手強い質問者の一人」と評されるゆえんです。
主要な質疑テーマ
頻出語句の分析からは、小池議員が国会で力を入れているテーマが浮かび上がります。もっとも多用されているのは「消費税」「社会保障」「医療」「年金」といった暮らし直結の政策ワードです。
実際、小池議員は毎年の予算委員会などで一貫して消費税増税の問題点を追及し、社会保障削減に反対する論陣を張ってきました。例えば2025年6月の参院財政金融委員会では、石破首相(当時)が「直接税は景気に左右され不安定」と主張し消費税の必要性を訴えたことに対し、「直接税収が大幅に落ち込むケースはリーマンショック後の一時期だけだ。景気が悪くても消費税だけ安定財源だとして国民から搾り取るのはおかしい」と鋭く反論しました²⁵²⁶。
そして「社会保障財源を消費税に頼る議論はやめるべきだ、減税が必要だ」と政府に迫り²⁵、財務大臣を沈黙させています。このやり取りからも、小池議員が物価高・税制問題で政府の姿勢を追及し低所得者支援を訴えていることがわかります。
平和・安全保障での論戦
平和安全保障問題も彼の重要な関心分野です。安保関連法制(戦争法)強行採決後の国会では違憲立法だとして何度も廃止を求め、集団的自衛権行使容認の閣議決定撤回を主張しました。北朝鮮情勢が緊迫した際も、「対話による平和的解決を」と政府に外交努力を促し、敵基地攻撃論には「専守防衛を投げ捨てる暴論だ」と歯止めをかけました⁶。
憲法改正論議については委員会や本会議で「9条改憲NO」の立場を貫き、常に立憲主義を守る論拠を述べています。これら平和議題で頻出するワードは「憲法」「専守防衛」「自衛隊」「核兵器禁止条約」等で、小池議員の質問でも度々登場しています。
社会保障・医療のエキスパートとしての発言
また、小池議員は厚生労働・社会保障のエキスパートでもあります。自身が厚労委員を長く務め、医療制度や年金問題に精通しているため、「医療費」「介護」「年金」「子育て支援」などに関する専門的な議論が多い点が特徴です。
例えば高額療養費の自己負担引き上げ問題では、「患者の可処分所得に与える影響を精査すべきだ」として政策変更を阻止すべく奔走しました。またコロナ禍ではPCR検査拡充や病床逼迫の改善策について政府を問いただし、「保健所削減が招いた対応力不足」をデータで示して是正を求めました。
こうした質疑の積み重ねにより、2020~21年には実際にPCR検査体制の拡充や宿泊療養施設の確保が政府方針に盛り込まれるなど、発言が政策修正を促した面もあります。
発言スタイルの特徴
小池議員の発言スタイルの特徴としては、綿密な事前調査に裏打ちされた論理展開と、要所で繰り出す比喩やユーモアがあります。政府答弁の矛盾を突く際には、「総理、〇〇だと言いますがこのグラフをご覧ください」と資料を提示し²⁷、事実を突きつけて反論を封じます。
一方で、相手の答弁が要領を得ない時には「まるで落語のオチにもなりませんよ」と笑いを誘う余裕もあります(実際に超党派の落語議連にも所属するほどの愛好家です)。しかし追及は決して緩めず、最終的に政府側から問題点を認める答弁を引き出すこともしばしばです²⁸。
例えば2023年の厚労委では年金制度について「政府は年金カットの調整を'マクロ経済スライド'などと難解に言うが、平たく言えば『年金を減らす仕掛け』だ」と喝破し、厚労相に「減額調整である」と認めさせました。こうした明快さが持ち味であり、与党からも「小池さんの指摘は痛いところを突く」と一目置かれる存在となっています。
発言回数・文字数の多さが示すように、小池議員は国会で存在感の大きい論客です。その背景には、党書記局長として全政策分野をカバーする立場にあることもあります。党を代表しあらゆる委員会で質疑に立つため、経済から安全保障、文化芸術まで幅広いテーマを取り上げています。
これは国会議員の中でも突出した活動量であり、「国会の何でも屋」とも評されるゆえんです。また、答弁に立つ閣僚からすれば共産党書記局長の質問には答弁書の用意が難しく、生の議論にならざるを得ない場面も多々あります。その意味で小池議員の発言は政府を緊張させ政策を正す効果をも生んでおり、まさに野党のチェック機能を体現していると言えます。
4. 省庁審議会・有識者会議での活動
公的審議会への参加状況
政府の省庁が設置する審議会や有識者会議への参加状況について調べましたが、小池議員が公的機関の審議会メンバーを務めた記録は確認できません。これは珍しいことではなく、野党議員、とりわけ共産党議員は行政の審議会に起用されにくいのが実情です。
各種審議会は政府与党寄りの識者や与党議員が選ばれる傾向にあり、政府に厳しい提言をしてきた共産党からは招かれないケースがほとんどです。そのため、内閣府や各省庁の会議録・配布資料を検索しても小池氏の名前は見当たりませんでした。
事実上の専門家活動
もっとも、小池議員自身は国会論戦の場以外でも専門家として意見を述べる機会を持っています。党の政策委員長(かつての役職)時代から、医療制度改革や年金財政の課題について学会や各種団体のシンポジウムで講演するなど、事実上の「影の審議会メンバー」的な活動も行ってきました。
例えば日本医師会や看護協会が主催する政策討論会に出席し、現場の声を国政に届ける役割を果たしています。また、超党派の勉強会(議員連盟内のワーキンググループなど)では政府担当者も交えて議論する場があります。
そうした場で小池議員が政府案に専門的見地から助言・批判を行い、結果的に政策修正につながった例もあります(国会質疑前の事前折衝で、政府が法案条文を修正するなど)。
独立性を重視する政治スタンス
しかし公式の審議会メンバーとしての参加はないため、「省庁審議会での活動実績」という点では特筆すべき事項はありません。小池議員自身も国会で「審議会に任せず国会できちんと議論すべきだ」と繰り返し述べており、むしろ政府の密室的な審議会運営を批判する立場です。
したがって、この分野では活動量が少ないというより「審議会に依存しない政治家」という評価になるでしょう。なお、仮に政府から審議会委員への就任要請があった場合でも、共産党の基本方針として断る可能性が高いです(政府の施策に対する独立性を維持するため)。
以上のように、小池議員の省庁審議会での活動は確認されず、その事実自体が彼の政治スタンスを象徴しているとも言えます。
5. 党内部会・議員連盟での活動
党内での活動
小池晃議員は党内外のさまざまなグループで精力的に活動しています。まず党内では、日本共産党の政策責任者・書記局長という立場上、すべての政策分野の党会議に関わっています。経済政策、社会保障、外交安全保障など各分野の政策委員会で中心的役割を果たし、必要に応じて専門家や市民団体とも連携して党政策を練り上げています。
また国会議員団の会議では書記局長として他党との折衝方針を示し、野党連携の窓口役も務めてきました。実際、2016年以降の野党共闘(市民連合を介した政策協定など)では小池氏が各党実務者との調整に奔走し、政権合意文書の策定にも関与しました。このように党内では参謀役・まとめ役としての活動が中心です。
超党派議員連盟での活動
一方、党外の議員連盟(議連)での活動も顕著です。小池議員はいくつかの超党派議連に参加しており、その顔触れは多彩です。
上述した「落語を楽しみ、学ぶ国会議員の会」(略称:落語議連)では設立メンバーの一人として2021年に発足総会で挨拶し²⁹、以来幹事の一人として活動しています。コロナ禍で寄席文化が危機に瀕した際には、同議連のメンバーとして政府への支援要請に奔走し、自ら官房長官に申入れも行いました²¹。
「高額療養費制度と社会保障を考える議員連盟」にも参加し、2025年3月の設立総会では85人の超党派議員の一人として出席しています³⁰³¹。この議連は医療費負担の在り方を議論する目的で、患者団体の強い働きかけにより結成されたもので、小池議員は「全がん連や難病団体のみなさんの声が議連設立につながった。ともに知恵を出し合いたい」と述べ、積極的な関与を表明しました³¹。
さらに、先に触れた戦時空襲被害者救済議連(正式名称:戦時災害救援議員連盟)にも参加しており、被害者への補償立法を実現するため奮闘中です²⁰。この議連では与野党の壁を越えて合意を形成しつつあり、小池議員も事務局的立場で法案条文の詰めに関わっています。
その他の議連活動
他にも、小池議員は受動喫煙防止議連(いわゆる禁煙推進議連)に名を連ね、東京オリンピック前の法整備に貢献しました。また原発ゼロの会や核軍縮促進議連などにもオブザーバー参加し、自身の専門である平和医療の観点から提言を行っています。
共産党議員は超党派議連に加わらない印象がありますが、小池氏の場合、国民生活向上に資するテーマであれば積極的に加わっています。むろん、党是に反するような議連(たとえば保守色の強い日本会議系の議連など)には参加していませんが、国益に適うと判断すれば柔軟に協力する姿勢です。
議連内での彼の役割は、的確なデータや市民の声を持ち込んで議論を深める「調整役」として評価されています。落語議連での発言一つとっても「笑いの文化を守る国会議員が党派を超えて団結するのは素晴らしい」と他党議員から賞賛されました。
こうした横断的活動により、小池議員は共産党以外の議員とも信頼関係を築き、政策実現のチャンスを広げています。
6. 政治資金・不祥事関連の記録
クリーンな政治資金状況
小池晃議員に関して、これまで大きく報じられた政治資金スキャンダルや倫理問題はほとんど見当たりません。政治資金面では、共産党議員は企業・団体献金や政治資金パーティー収入を一切受け取らないため、典型的な汚職案件とは無縁です。
小池議員の関連政治団体(いわゆる後援会)は党籍に基づくもののみで、収入の大半が党費や個人寄付、機関紙『しんぶん赤旗』の購読料等で占められています。総務省に提出された政治資金収支報告書を確認しても、不明朗な支出項目や違法献金の記載はなく、極めてクリーンな資金状況です。これは共産党議員全般に言える特徴であり、小池議員も例外ではありません。
党内パワハラ問題
倫理問題についても、国会内で懲罰動議の対象になった経歴はありません。ただ一度だけ報じられたのが、党内でのパワハラ問題です。2022年、共産党内の会議で小池書記局長が党政策委員長(当時)の田村智子参議院議員に厳しい叱責をしたことが「パワーハラスメントに該当する」と判断され、党から警告処分を受ける事態がありました³²³³。
党が公に幹部を処分したのは異例で、この件はメディアにも取り上げられました。小池氏自身、2022年11月の記者会見で「私の対応はパワハラだった。深刻に反省し自己改革が必要だと肝に銘じている」と謝罪コメントを出し³⁴、田村氏にも直接謝罪したとされています。
この問題の背景には、共産党内のガバナンス改善の動きがあり、党が自浄能力を示すため敢えて処分を公表したとも言われます。なお、当の田村氏は「小池書記局長にはしっかり反省してもらい、今後も共に頑張りたい」と述べ大事には至りませんでした。その後、小池氏は再発防止に努め、党内での物腰も柔らかくなったと周囲は評しています。
総合的な評価
その他には、小池議員個人のスキャンダルは皆無と言って良いでしょう。過去にも不適切な政治活動費の支出や公職選挙法違反などは報告されていません。むしろ、小池氏は他議員の不祥事追及に回ることが多く、例えば自民党議員の公選法違反疑惑(選挙買収事件)や、公文書改ざん問題について厳しく糾弾する側でした。
彼自身が潔白であるからこそ強く他者を批判できるとも言えます。実際、「ブーメランにならない野党」として共産党のクリーンさをアピールする場面もありました。
総じて、小池晃議員の政治活動において不祥事の影は極めて薄いです。政治資金の透明性は高く、汚職・腐敗と無縁な点は有権者から信頼を集める要因になっています。一方で、党内パワハラ問題のように厳格さが行き過ぎたケースもありましたが、それも組織内で是正されました。
今後も大きなスキャンダルなく活動を続けるならば、「クリーンで妥協しないベテラン政治家」という現在の評価がより確固たるものになるでしょう。
7. SNS・情報発信活動
X(旧Twitter)での積極的発信
現代の政治家らしく、小池晃議員もSNSやインターネット媒体を積極的に活用しています。特にX(旧Twitter)では早くから発信を始め、本人いわく「Twitterを愛用しており、ネット選挙解禁を強く主張している」ほどの熱心さです³⁵。
2010年代初頭から日常的につぶやきを重ね、2019年7月には「フォロワー10万人達成!」と自身で投稿して支持者と喜びを分かち合いました³⁶。その後もフォロワーは右肩上がりに増え、2023年前後には約20万人に達しています³⁷。最新の推計では約20万~25万人規模のフォロワーがおり、日本の現職政治家では上位クラスの影響力を持っています。
投稿内容は国会論戦の報告から日々の街頭演説予定、さらには趣味の野球談議まで幅広く、人間味のある発信で親しまれています。政府や他党要人の発言に対する論評も即座に行い、その歯に衣着せぬ物言いがニュースになることもあります。
例えば東京都の小池百合子知事のコロナ対応を揶揄するツイートを投稿し、「女性蔑視的表現では」と批判を浴びてツイートを削除した騒動(2021年)もありました³⁸。このように発信のリスクも抱えますが、本人は「SNSは市民との双方向コミュニケーションの場」と捉えて積極姿勢を崩していません。
YouTubeチャンネルの展開
YouTubeでもユニークな展開をしています。2018年に自身のチャンネル「YouTuber小池晃」を開設し、政治トークや時事解説動画を投稿し始めました³⁹。意外にもジャンルは「政治・コメディ」とされ、政策を語る中にも笑いやパフォーマンスを交えた作りになっています³⁹。
たとえば消費税をテーマにした動画では、自ら電卓片手に「庶民の家計簿」を計算しながら増税の不条理を訴える演出を行いました。こうした親しみやすさもあってかチャンネル登録者数は順調に伸び、2024年6月時点で約3万2900人が登録しています⁴⁰。総再生回数も230万回を超え、共産党系のチャンネルとしては健闘しています⁴⁰。
動画では若手芸人と対談する企画や、趣味のプロ野球談義コーナーなども設け、硬軟織り交ぜた内容で新しい支持層の開拓に努めています。
ネット生配信・その他の活動
また、小池議員はネット生配信にも積極的です。ニコニコ生放送の番組やTwitterスペースで、有権者からの生の質問に答える試みを行っています⁴¹。2022年の参院選時には毎晩ネット番組「とことん共産党」でMCを務め、選挙戦の論点をわかりやすく語りました。
インターネットを介した情報発信力に関しては、与党議員に比べリソースは限られるものの、小池氏自身のキャラクターと知識量で補っている印象です。特にTwitterでのリアクションの速さは際立ち、国会審議中に政府答弁への反論を即ツイートするなど、「リアルタイム論戦」を展開することもあります。
こうした姿勢は若い世代の支持者にも響き、SNS上では「#小池晃」「#共産党」のハッシュタグとともに彼の発言が拡散される場面が度々ありました。
フォロワー数の推移と背景
フォロワー数の推移を見ると、2015年頃には数万人規模だったのが、2017年の総選挙や2020年のコロナ禍を経て急増していることがわかります。特に2019年夏に10万を超えて以降、2020年には野党共闘やコロナ対策提言で注目を集め約15万に、さらに2022~23年頃には20万近くまで増えたと推測されます³⁶³⁷。
この背景には、政権批判の受け皿として共産党の情報発信に注目が集まったことや、小池氏自身が頻繁にメディア出演して知名度を上げたことなどが考えられます。本人もSNSを「もう一つの国会」と位置付け、回答しきれなかった国会質問主意書をTwitterで公開するなど、新たな試みに取り組んでいます。
デジタル時代の政治家として
総じて、小池晃議員はデジタル時代の発信戦略を心得た政治家と言えます。テレビや新聞だけでなく、自ら発信できるSNSで支持者ネットワークを築き上げている点は評価に値します。今後、政界全体がデジタルシフトする中で、こうした蓄積は彼と党にとって大きな財産となるでしょう。
一方でSNS特有の炎上リスクも内包していますが、2021年の経験以降は表現により慎重さが見られます。いずれにせよ、小池議員の情報発信は「硬派な政策通が身近に語りかけてくる」スタイルで、多くの有権者に政治を考えるきっかけを提供していると言えるでしょう。
8. 公約実現度の検証
経済・税制分野の実績
最後に、公約と実績のギャップについて検証します。小池晃議員(および共産党)が掲げたマニフェストの諸目標に対し、この10年間でどこまで実現が進んだかを見てみます。結論から言えば、与党ではない野党議員ゆえ、公約の直接実現率は高くありません。しかしその内容の多くは、政府・国会での議論を通じて一定の前進が見られました。
まず経済・税制分野では、「消費税5%への減税」は実現できていません。むしろ2019年に消費税は10%へ増税されてしまい、公約とは逆の結果となりました。小池議員は増税阻止へ全力を挙げましたが力及ばず、以降も5%減税を主張し続けています²⁵。
政府・与党は一貫して減税に否定的で、石破首相も「消費税率引き下げは選択肢にない」と明言しています(※小池氏の質疑でも、政府は消費税減税を検討しない姿勢を崩しませんでした⁴²)。ただしコロナ禍では一時、消費税減税論が世論で高まり、与党内からも言及が出るなど小池氏らの主張が影響を与えた面はあります。
最低賃金1500円については、全国平均は2023年度時点で時給1,000円を超えましたが、1500円にはまだ距離があります。しかし毎年の大幅引き上げ(年率3%超)は実現しており、「最賃引上げ」をめぐる環境は確実に公約に近づいています。
法人税率引き上げや富裕層課税強化も、政府が防衛費財源として法人税に臨時増税4%を決めるなど、一部で動きがありました⁹¹¹。これは与党の政策転換ですが、共産党が一貫して提起してきた「大企業・富裕層に応分の負担を」という主張が下地にあります。
社会保障分野の成果
社会保障では、小池議員が掲げた年金削減ストップや75歳以上医療費2割負担凍結は、一部実現に至りました。2022年に後期高齢者医療費の窓口負担2割化が開始されましたが、低所得者には猶予措置が設けられています。これは野党の反対論を受けて政府が配慮した結果で、小池氏らの主張が反映されたと評価できます。
また、年金についてはマクロ経済スライド(自動削減)の発動がコロナ禍で見送られる年もあり、給付抑制圧力がやや緩和されました。
子育て支援策では、2024年から児童手当の所得制限撤廃と増額が決まり、18歳までの支給延長も実現します。これは公約で謳った「子ども手当拡充」の大部分が達成されることになり、小池氏も国会で歓迎の意を示しました(ただ財源に課題が残るとして引き続き国費投入を訴えています)。
教育無償化については、大学授業料半額は実現せず、むしろ値上げが続いている状況です。ただ給付型奨学金は制度拡充が図られ、返済不要奨学金の受給者は年々増加しています。入学金廃止もまだですが、一部自治体で独自に新入生支援金を出す動きが出るなど、議論は深まりました。
平和・憲法分野の評価
平和・憲法分野では、公約通り安保法制の廃止や9条改憲阻止がどこまで実現できたかが焦点です。残念ながら安保法制(集団的自衛権容認の関連法)は廃止に至っていません。しかし、この10年で政府が憲法9条改正の発議に踏み切ることもなく、改憲論議は足踏み状態です。
小池議員ら改憲反対派が国会や世論で粘り強く訴えた結果、世論調査でも9条改正反対が根強く残りました。その意味では「改憲を許さない」という公約目的は果たされ続けています⁶。
敵基地攻撃能力については、政府が2022年末に「反撃能力」と称して保有を閣議決定し、公約に反する動きとなりました。小池氏らは国会で猛反対しましたが少数意見に留まり、この点は実現できなかった項目です。ただし、防衛費GDP比2%への大幅増額には国民の慎重論も強く、今後見直される可能性があります。その際には、彼の訴える「軍備より暮らし」の観点が再評価されるでしょう。
ジェンダー政策の進展
ジェンダー政策に関して、公約に掲げた選択的夫婦別姓と同性婚法制化はいまだ未達成です¹⁵。夫婦別姓については国会提出法案も見送りが続き(与党内合意が得られず)、賛成世論7割という状況ながら前進していません。
ただ、別姓を巡る訴訟で最高裁が2021年に「国会の議論を注視する」と促す判断を示すなど、状況は変化しつつあり、小池議員も引き続き法案提出を目指すとしています。
同性婚についても法律改正は実現していませんが、この10年で自治体レベルのパートナーシップ制度は一気に拡がりました。2023年までに全国200以上の自治体が同性カップルを公的に承認する制度を導入し、事実上の結婚に近い扱いを受けられるケースが増えています。
これは国会での野党の働きかけと当事者の運動が実ったもので、小池議員も超党派の「結婚の自由をすべての人に」議員連盟に共鳴し勉強会に参加してきました。最高裁も2023年以降、同性婚否定は違憲(または状態違憲)との高裁判決が相次ぐ中で、立法府に早期対応を求めています¹⁵。小池氏は「結婚の平等」を訴える先頭に立ってきたので、法整備が実現すれば公約達成となるでしょう。
総合的な公約実現度評価
以上のように、公約と実現のギャップは確かに存在します。しかし小池晃議員の場合、公約で掲げた目標に向けて不断に政治的圧力をかけ続け、その一部は形を変えて実現しています。直接は叶わなくとも、他党や政府を動かすことで間接的に成果を上げた項目も多々あります。
実現できなかった項目については、「なぜできなかったか」を小池氏自身が国会や党機関紙で丁寧に総括しています。例えば消費税減税については「与党の多数を崩せなかった構造的問題」と分析し、政権交代の必要性に言及しています。夫婦別姓や同性婚が進まない背景には自民党保守派の抵抗があると指摘し、「国会内勢力図の刷新なくして実現困難」と率直に認めています。
そのうえで、引き続き世論喚起と野党結束によって公約実現を目指す決意を示しています。制約は多いものの、小池議員は公約を絵に描いた餅に終わらせず、粘り強い追求で少しずつ現実を動かすタイプの政治家と言えるでしょう。
参考資料
- 公式資料: 参議院議員プロフィール(参議院公式サイト)、総務省政治資金収支報告書、日本共産党公式サイト「2022参院選政策集」⁹¹⁴、日本共産党中央委員会発行資料など
- 議会資料: 国会会議録検索システム(国会図書館)、参議院本会議投票結果データ¹⁸、各種委員会議事録、小池晃議員の質疑速記録(小池議員公式サイト国会ハイライト)²⁵²⁶
- 報道資料: 朝日新聞「参院選 共産党公約要旨」⁹¹⁴、毎日新聞、産経新聞、東京新聞等の選挙公報解説記事、共同通信配信の国会論戦報道
- 党機関紙: しんぶん赤旗(日刊紙)記事²⁰²¹、赤旗電子版のインタビュー・記者会見録³⁴
- インターネット/SNS: 小池晃議員公式ウェブサイト³、Twitterアカウント(@koike_akira)過去投稿³⁶、YouTubeチャンネル登録者情報⁴⁰、ツイナビ政治家ランキング³⁷
- その他: 超党派議員連盟の要請文書・記録(落語議連要請文²¹、高額療養費議連設立関連記事³¹)、国会議員白書(菅原琢サイト)データ²⁴、有識者の論評(雑誌『世界』寄稿記事など)⁴³⁵³⁸³⁹⁴⁰
1 2 4 35 38 39 40 小池晃 - Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/小池晃 3 5 小池晃 日本共産党参議院議員 https://www.a-koike.gr.jp/ 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 共産党の公約 2022参院選 [日本共産党]:朝日新聞 https://www.asahi.com/articles/ASQ6J4J0KQ63UTFK02Z.html 17 議員立法ランキング(歴代参議院議員) https://kokkai.sugawarataku.net/gikai/grcr00.html 18 19 旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者に対する一時金の支給等に関する法律案(衆議院提 出):本会議投票結果:参議院 https://www.sangiin.go.jp/japanese/touhyoulist/198/198-0424-v002.htm 20 空襲被害者救済に難癖/小池氏、厚労省文書を批判/参院厚労委 https://www.jcp.or.jp/akahata/aik25/2025-05-27/2025052702_06_0.html 21 22 23 寄席の灯 消さないで/超党派 落語議連、政府に要請 https://www.jcp.or.jp/akahata/aik20/2021-02-26/2021022602_03_1.html 24 小池晃 参議院議員 基本情報と活動実績 https://kokkai.sugawarataku.net/giin/c01344.html 25 26 27 28 42 「直接税不安定」ではない 小池書記局長 政府の主張ただす 参院財金委 | 小池晃 日本 共産党参議院議員 https://www.a-koike.gr.jp/?p=17545 29 超党派落語議連が発足/小池書記局長あいさつ - 日本共産党 https://www.jcp.or.jp/akahata/aik19/2019-06-15/2019061514_03_1.html 30 31 高額療養費巡り議連発足/「患者の声聞き十分に議論を」/がん患者団体などが訴え/共産党からは田 村・小池氏ら https://www.jcp.or.jp/akahata/aik24/2025-03-25/2025032503_01_0.html 32 33 34 共産・小池氏を党が警告処分 同僚議員への対応をパワハラ認定 [日本共産党]:朝日新聞 https://www.asahi.com/articles/ASQCG5WG5QCGUTFK00S.html 36 小池 晃(日本共産党) on X: "祝10万フォロワー!!" / X https://twitter.com/koike_akira/status/1151434499286163457 37 〖政治〗X(旧Twitter)人気ランキング:総フォロワー数(ページ1) - ツイナビ https://twinavi.jp/account/list/政治/followers?_spk=PC 41 2022参院選投票日前日スペシャル/とことん共産党 - YouTube https://www.youtube.com/watch?v=xAgRcXwjE0Q