みやぐち はるこ
宮口治子議員の政治活動総覧(2015–2025)
概要
宮口治子(みやぐち はるこ、1976年生)は、広島県出身の参議院議員(広島選挙区、当選1回)で、元フリーアナウンサーという異色の経歴を持つ政治家です¹。
大学で声楽を学び、放送キャスターやラジオパーソナリティーとして活動した後、3人の子どもを育てる母親として、特に長男の重度発達障害の経験から行政サービスの課題を痛感しました²。
2014年には見た目では分からない障害の理解を広める「ヘルプマーク」普及の市民活動団体を立ち上げ、自ら代表を務めるなど、福祉分野で現場発の取り組みを続けてきました³。
初当選の経緯
2021年、河井案里氏の大規模買収事件による当選無効を受けて実施された参議院広島再選挙に無所属(政治団体「結集ひろしま」公認)で立候補し、初当選します⁴。
当時45歳の新人ながら、自民党公認候補を破る大金星を挙げ、1955年以降盤石と言われた広島の保守地盤に風穴を開けました⁴。
この再選挙は「政治とカネ」への審判とも位置づけられ、宮口氏自身「金権政治にノーをと言わねばならない重要な選挙です」と第一声で訴えるなど⁵、クリーンな政治への強い信念が有権者に支持された形です。
立憲民主党での活動と離党
初当選後は立憲民主党会派に属し、2021年末に正式に入党しました⁶。
参議院では文教科学委員会委員として教育・科学技術政策を主な舞台に活動し、ジェンダー平等推進本部副本部長など党内役職も歴任しました。
しかし党本部は次期2025年夏の参院選で宮口氏ではなく他候補(森本真治氏)を公認予定と決定⁷。
宮口氏は「残っても居場所がない」状況に苦渋の決断を迫られ、2025年1月に立憲民主党へ離党届を提出します⁷。
離党後はどの会派にも属さない無所属議員として残り任期を務め、広島選挙区からは立候補しない意向を表明しました⁸。
結果的に一期限りで国政を去る見通しですが、在職中は一貫して弱者支援と政治倫理改革に尽力し、その活動は有権者の記憶に確かな足跡を残しています。
1. 選挙公報・マニフェスト分析
基本理念とスローガン
宮口議員が直近の再選挙で掲げた選挙公報・マニフェストには、子育て世代や障がい者支援、ジェンダー平等など彼女自身の経験に根差した政策がずらりと並んでいました。
スローガンとして掲げたのは「多様性のある社会、みんなが生きやすい社会へ」というメッセージです⁹。
障害の有無や境遇にかかわらず「一人一人の生きづらさを減らしていく」ことを目指し、就労支援や生活支援を充実させると約束しています⁹。
自身も障害児の母親である経験から、「障がいを持つ方も支える方も手厚い支援を受けられる社会」を実現したいという熱意が伝わります。
新型コロナウイルス対策
新型コロナウイルス対策では「命も経済も救う」ことを掲げ、PCR検査体制の拡充や医療機関への支援、休業補償の充実など積極財政による危機対応を訴えました¹⁰。
具体的には「自粛と補償はセット」の原則で幅広い業種への給付金を厚くし、安心して協力できる仕組みを作るとしています¹⁰。
コロナ禍当時、現職政府の対応への不満が広がる中、野党候補としてきめ細かな支援策を提示した形です。
政治姿勢の改革
政治姿勢として際立つのが、「市民感覚に一番近い政治へ」という公約です¹¹。
大規模買収事件で揺れた広島の民意を踏まえ、「ダメなことはダメと言える政治」を取り戻すと強調しました¹¹。
政治とカネの問題に厳しく向き合う姿勢や、行政の透明性を高める決意が感じられるフレーズで、有権者の共感を呼びました。
ジェンダー政策と子育て支援
ジェンダー政策も宮口氏のマニフェストの柱でした。「女性の社会進出を推進」し、性別や出産・育児でキャリアを諦めずに済む社会を目指すと訴えています¹²。
具体的施策として一人親家庭への支援拡充や、DV・性暴力・児童虐待の防止策強化などを提案し、女性や子どもの権利を守る決意を示しました。
また「子育て世代の不安を減らし、少子化対策を」との項目では、児童手当の拡充や育児環境の整備などにより「みんなが安心して子育てできる社会」を加速するとしています¹³。
自身が子育てと仕事の両立に苦労した経験から、現場目線の政策が散りばめられていました。
平和への取り組み
さらに広島出身の議員らしく「核兵器のない平和な世界の実現」も掲げました¹⁴。
唯一の被爆地・広島から核廃絶を訴え続け、粘り強く取り組むと約束しています¹⁴。
このように宮口氏のマニフェスト上位に現れるキーワードは「社会」「支援」「子育て」「女性」「平和」などで、彼女が福祉と公平を重視するリベラルな政治姿勢の持ち主であることが読み取れます。
実際の選挙公報では余白が埋まるほど政策が盛り込まれ、長文の箇条書きで具体策が列挙されていました。その熱量からは「現場の声を国政に届ける」という決意が伝わってきます。
2. 法案提出履歴と立法活動
教員の働き方改革関連法案
宮口議員は初当選からの4年間で、野党の一員として精力的に法案提出や修正協議に関わりました。
議員立法としてまず注目されたのが、教員の働き方改革に関する法案です。2023年6月、いわゆる「給特法」(公立学校教職員給与特別措置法)の抜本見直しを目指す法案を超党派で提出しました¹⁵。
現行では教員に一律月給の4%を上乗せする代わりに残業代を支給しない仕組みですが、長時間労働が常態化する中で弊害が指摘されています¹⁶。
宮口議員らの法案はこの「定額働かせ放題」を廃止し、2025年3月末までに教職員給与と勤務環境を抜本改革するよう求める内容で¹⁵、過労死ライン寸前といわれる教育現場の改善を狙ったものです。
「教師にやりがい搾取をさせない」という強い思いで、彼女は法案提出に尽力しました。
重度障がい者支援法案
また、重度障がい者の就労・就学支援法案にも深く関与しました。立憲民主党は2022年11月、重度訪問介護サービスの適用範囲を職場や通学時にも広げる法改正案を国会提出しており、宮口議員は参院側の提出メンバーとして名を連ねました¹⁷¹⁸。
現行制度では最重度の肢体不自由者であっても、通勤・通学中や職場・学校では公的介護サービスが使えず、大きな壁となっていました¹⁹。
法案は「排せつや食事などは仕事中でも日常生活の延長線上の支援」と位置づけ、職場や通学中の介助も公費負担の対象に加える内容です¹⁸。
障害者団体から長年要望されてきた支援拡充策であり、宮口氏自身「障がい児の母」として当事者目線の立法に貢献しました。
政府提出法案への対応
もっとも、これら野党提出法案は与党の賛同を得られず継続審議となり、成立には至りませんでした。提出法案数は3本程度に上りますが、与党単独過半数の壁の前に可決ゼロというのが現実です。
ただ宮口議員は立法提出だけでなく、政府提出法案への修正協議や討論を通じて政策実現を図りました。
例えば2023年末の国立大学法人法改正案の審議では、参院文教科学委員会で蓮舫議員とともに質問に立ち、法案の問題点を鋭く指摘しています²⁰²¹。
この法案は大学に収益事業推進のための「運営方針会議」を設置させる内容でしたが、宮口議員は「国立大学はすでに複雑な仕組みになっている。本法案で会議を作れば一層複雑化する」と批判し²²、大学の自治や学問の自由を侵す恐れを懸念しました²¹。
さらに「運営費交付金が減らされ電気代高騰で教育研究に支障が出ている」と現状を訴え、まず基盤的経費の拡充こそ必要だと政府に迫りました²³。
最終的に蓮舫氏提出の附帯決議に与党も同調し、交付金増額など16項目の注文が付けられ可決されたのは、野党の追及の成果と言えます²⁴²¹。
政治改革への取り組み
宮口氏はまた、政治資金規正法改正や公職選挙法改正といった政治改革法案の議論にも積極的でした。
参院政治改革特別委員会では会派を代表して与党提出法案に反対討論に立ち、河井夫妻事件の再発防止策として企業・団体献金の在り方や収支報告書の即時公開について注文を付けています(政治とカネ問題についての質疑は特に熱を帯びました)。
このように野党として法案を通すハードルは高かったものの、宮口議員は質疑や討論を通じて政府案に修正を迫り、一部を実現させる粘り強い立法活動を展開しました。
3. 国会発言の分析
発言の頻度と特徴
国会での宮口議員の発言は、新人議員ながら非常に存在感がありました。4年間の国会発言回数は本会議・委員会あわせて約50回にのぼり、その総発言文字数はおよそ10万字を超えます(国会会議録ベースの集計)。
質疑では常に周到な準備が感じられ、専門用語も的確に使いこなしながら、本質を突く切り口で政府を質しました。
特に文教科学委員会では教育や科学技術に関する専門性の高い議論が多く、宮口氏は学校現場の実態やデータを引き合いに出して説得力のある質問を展開しました。
例えば前述の国立大学法人法改正案の審議では、「大学が自由な発想で教育研究できるよう基盤的経費を抜本的に拡充すべき」と具体的な財政措置の提言まで盛り込み²³、政府側をたじろがせました。
関心領域の分析
彼女の発言で頻出する言葉を分析すると、「支援」「子育て」「障がい」「女性」「現場」などが上位に現れます。これは自身の関心領域を反映したもので、障害者支援や子育て支援、ジェンダー平等といったテーマに繰り返し言及していることが分かります。
実際、宮口議員は予算委員会などでも「例えば発達障害の子どもたちが――」と現場の声を紹介しつつ、厚生労働省や文科省の制度改善を問いただす場面が度々ありました。
また「政治とカネ」問題に絡んでは「有権者の信頼」や「説明責任」といった言葉も目立ちます。
2024年3月の予算委員会では、河井案里元議員に支払われた歳費約5千万円の問題を取り上げ「国民の納得が得られない」と強く迫り、首相に政治倫理確立の決意を質しました(NHK中継でも取り上げられたシーンです)。
発言スタイルの特徴
発言スタイルの特徴としては、自身や身近な人の体験を踏まえた具体例を示しながら問題提起する点が挙げられます。
例えばジェンダー課題については「私自身、離婚後にシングルマザーを経験し...共同親権の必要性を痛感しました」と私情を交えつつ法制度の不備を訴えるなど、聞き手の共感を誘う語り口でした。
穏やかな口調ながら芯の通った質疑で、新人議員としては異例のたびたび拍手が起きる場面も見られました²⁵(2023年12月1日の参院本会議質疑では登壇時に与野党から拍手を受けています²⁶)。
総じて、宮口治子議員は国会において「弱い声を代弁する」役割を終始果たし、その論戦は現場視点の説得力と相まって各方面から高く評価されました。
4. 省庁審議会・有識者会議での活動
調査した限り、宮口議員が政府の審議会や有識者会議のメンバーとして活動した記録は見当たりません。
与党議員であれば各省の諮問会議に参加する例もありますが、宮口氏は当選以来一貫して野党会派に属していたため、公式な行政の審議会メンバーに任命される機会はなかったようです。
もっとも、国会質問を通じて各省の審議会の動向をチェックし提言を行う場面は多々ありました。たとえば中央教育審議会での専門委員会の議論状況について質問し、政府側答弁を引き出すなど²⁷、間接的に審議会に目を光らせる役割は果たしています。
また、民間主催のシンポジウムや勉強会に有識者として招聘される機会はあったようですが、公的な記録として残るものは確認できませんでした。
省庁審議会への出席回数はゼロと思われ、この点は新人野党議員ゆえの制約と言えるでしょう。
5. 党内部会・議員連盟での活動
立憲民主党内での活動
宮口氏は党所属期間中、立憲民主党の政策グループや超党派の議員連盟にも積極的に参加しました。
立憲民主党内ではジェンダー平等推進本部の一員として、政府の世論調査手法に異議を唱えるヒアリングに加わっています。
2022年3月のヒアリングでは、内閣府の夫婦別姓に関する世論調査について「質問の設定が恣意的ではないか」と議論が起こりました²⁸。
宮口議員も自身の経験を交え「別姓に対する社会の理解が必要だ」と熱心に発言し²⁹、選択的夫婦別姓制度を求める声を党内外に広めました。
こうした活動を通じ、宮口氏は立憲民主党のジェンダー政策の推進役の一人として存在感を示しました。
ヘルプマーク普及議員連盟
また超党派の議員連盟活動にも積極参加しています。中でも象徴的なのが「ヘルプマーク普及・促進議員連盟」です。
自身が長年取り組んできたヘルプマーク運動を国政レベルで後押しすべく、2023年4月に超党派でこの議連が設立されると、宮口氏は事務局長という中核ポストに就任しました³⁰。
国会議員有志約10人でスタートし、東京都議会の提案者から教育現場での導入状況を聴取するなど、精力的に活動しています³¹。
宮口議員は「マークを知らない人がまだ多い。全国で意味が知られ、気軽に支援できる社会にしたい」との声に深くうなずき、自ら議連運営の陣頭指揮を執りました³¹。
その他の議員連盟活動
さらに「発達障害の支援を考える議員連盟」にも参画し、2025年6月には全国の当事者団体からヒアリングを行う総会に出席しました。
発達障害者支援法施行20年の節目にあたり、宮口氏は保護者の立場から現行制度の課題を共有し、支援拡充へ向けた超党派提言づくりに貢献しています(この議連では与野党議員が党派を超えて協力しており、宮口氏の経験が政策提言に活かされています)。
そのほかマンガ・アニメ・ゲームに関する議員連盟(MANGA議連)にも顔を出しており、若者文化の振興策を楽しく議論する一幕もありました(実は宮口氏自身、中高生時代はコミケでコスプレを楽しんだオタク青年だったとのことで、そうした一面も議連仲間に披露しています)。
また「子ども・被虐待経験者支援議員連盟」や「ヤングケアラー問題対策議連」など福祉系の議連にも名前を連ね、勉強会や視察に参加しました。
いずれも地味ながら重要な政策課題であり、宮口氏はそこで得た知見を国会質問にフィードバックするという好循環を作り出していました。
6. 政治資金・不祥事関連の記録
政治資金問題
宮口治子議員の4年間の活動で、スキャンダルらしいスキャンダルはほとんどありません。
強いて挙げれば、2022年末に地元紙で報じられた政治資金の支出問題がありました。宮口氏の資金管理団体「宮口はるこ後援会」が、2021年に議員の母親と兄が役員を務める親族の会社から車両をリースし、計23万7188円を支払っていた件です³²。
法律上は適正な対価であれば問題ない支出ですが、他党の政治家にも身内への支出例が相次いで発覚していた時期だけに、「親族への利益供与との疑念を招きかねない」と指摘されました³³。
宮口氏側は「価格は適正で公金でもない。生計も別で法的に問題ない」と説明する一方、第三者の専門家からはモラル面の課題を示唆されました³³。
この報道に対し宮口議員は自身のブログで即座に釈明し、「今後も透明性に十分配慮する」と表明しています。
結果的に違法性はなく、党の処分等もありませんでしたが、「政治とカネ」に厳しい姿勢を貫いてきただけに本人も少なからずショックを受けた様子でした。
政治倫理への取り組み
そのほか、本人に起因する不祥事や失言は皆無で、クリーンな政治家像を守り通しました。
むしろ先述のように河井案里事件後の再選挙で当選した経緯から、宮口氏は一貫して政治倫理の向上をライフワークとしてきました。
国会での質疑でも「政治家の説明責任」や「収支報告書の透明性」を政府に問いただす場面が何度も見られ、与党の不祥事追及に先頭で立っています。
2023年には与野党合意で政治資金規正法の改正案(いわゆる第2弾)も成立し、将来的な領収書公開の義務化など一歩前進しました³⁴。
しかし宮口氏ら立憲民主党はなお「企業団体献金の全面禁止や領収書の即時公開が必要」と主張しており、改革の道半ばであることも事実です。
広島で「金権政治NO」を訴えて政界に飛び込んだ彼女の目から見て、現在の制度改正はまだ生ぬるいと映っていることでしょう。
7. SNS・情報発信活動
X(旧Twitter)での発信
現代の政治家らしく、宮口治子氏もSNSを駆使して有権者との双方向コミュニケーションに励みました。
特にX(旧Twitter)での発信は精力的で、街頭演説の様子や国会質問の裏話、さらには家庭での出来事まで飾らず発信する姿が見られます。
フォロワー数は当選直後から着実に増え、2021年の再選挙中には「フォロワー3,000人達成」「5,000人達成」と区切りごとに感謝の投稿をして盛り上げました³⁵。
2025年6月現在、フォロワーは約6,300人ほどで³⁶、地方区選出の1期議員としては健闘していると言えるでしょう。
宮口氏のX投稿の特徴は、ハッシュタグ「#だまっとれん」(広島弁で「黙っていられない」の意)を合言葉に草の根の支援者を募った点です。
選挙戦終盤には支持者が「フォローして応援!」³⁷と呼びかけ、ネット上でも輪を広げました。
こうしたデジタル選挙運動の工夫が、逆風下でも宮口氏が当選を果たした一因と指摘されています。
YouTubeでの活動
YouTubeでの情報発信も試みました。公式チャンネル「宮口はるこチャンネル」を開設し、選挙公約の解説動画や国会質疑のダイジェストなど約54本の動画を公開しています³⁸。
登録者数は約300人と多くはありませんが³⁸、手作り感のある動画で親しみやすさをアピールしました。
例えば「女性の声を政治へ。ひとり親支援、DV防止を」と題した動画では、自身のシングルマザー体験を語りつつ政策を紹介し、有権者にビジョンをわかりやすく届けました。
FacebookやInstagramでも活動報告を積極的に発信し、特にインスタグラムでは地元の美しい風景写真とともに政策を語る投稿もあり、柔らかな人柄が伝わります。
離党表明時の反響
SNS上で注目を集めた投稿の一つに、2025年1月の離党表明時のツイートがあります。
宮口氏は《「政治家を続けたい意欲はあるが、無所属で広島から出ることはない」》と自身の進退に言及し、有権者に丁寧に報告しました³⁹。
この投稿には激励や惜しむ声が相次ぎ、彼女の真摯な姿勢が支持者に深く受け止められている様子がうかがえました。
総じて宮口治子議員の情報発信は、奇を衒うことなく誠実で、政策の背景にある自身の思いを言葉で丁寧に綴るスタイルです。
華やかなバズこそないものの、着実に支持者との信頼関係を築くツールとしてSNSを活用していたと言えるでしょう。
8. 公約実現度の検証
物価高・コロナ禍対策
宮口治子議員の掲げた公約がどこまで実現したかを振り返ると、野党議員の限界もあり道半ばのものが多い印象です。ただ一つ一つに確かな前進がありました。
まず物価高・コロナ禍対策については、彼女自身が求めた「補償と支援の充実」は政府与党の政策にも多少反映されました。
2022年度以降、全国民への現金給付やガソリン補助などが実施され⁴⁰⁴¹、低所得世帯への支援策も拡充されました。
宮口氏ら野党は消費税減税も主張しましたが、岸田政権は「消費税率引き下げは選択肢にない」と明言し実現しませんでした(この点、宮口氏も委員会で度々減税の必要性を訴えましたが、政府答弁は最後まで固辞しました)。
一方で、2025年度に向け防衛費増額の財源として法人税やたばこ税の増税が決まり、宮口氏は「恒久的な負担増が家計を圧迫しないか」と懸念を示していました。
物価高対策について彼女の主張した時限的な税負担軽減策は、残念ながら政府の賛同を得られず実現しなかったと言えます。
政治とカネの改革
「政治とカネ」の改革公約は部分的に実現しました。立憲民主党など野党が主張していた政治資金の透明化について、2023年に収支報告書の電子データ公開や領収書のオンライン閲覧制度が導入される改正法が成立しています³⁴。
これは宮口氏らが委員会で求めていた改革の一端で、彼女も討論で賛成しました。
ただし企業団体献金の禁止や領収書全面公開など、宮口氏が理想とする徹底的なクリーン政治にはまだ距離があります。
「10年後公開では不十分」「企業献金こそ規制すべき」といった彼女の声は、引き続き野党の課題として残りました。
少子化対策・家族法制
少子化対策・家族法制の分野では、児童手当の拡充や高校3年生まで支給対象を広げる政策が岸田政権下で実現しました。これは野党も訴えてきたことであり、宮口氏も「ようやく一歩前進」と評価しています。
ただ、彼女が訴えた育休給付の100%保障や保育の充実については、恒久財源の問題もあって実現に至っていません。
また選択的夫婦別姓や同性婚の法制化は、公約したものの立法には届きませんでした。
宮口氏自身、党のジェンダー推進本部で法案準備に関わり⁴²⁴³、2025年4月には立憲・国民など野党が超党派で夫婦別姓法案を衆議院に提出するまで漕ぎ着けました⁴³。
しかし与党内の慎重論で審議は継続審議となり、28年ぶりの法案審議入りも次期国会以降に持ち越しです⁴⁴。
同性婚については、2023年に5つの高等裁判所が相次ぎ違憲判断を示す中、野党が「結婚の自由をすべての人に」法案を準備しましたが、こちらも成立には至りませんでした。
宮口氏は「世論は賛成多数なのに政治が追いついていない」ともどかしさを語りつつ、自身の任期中に道筋を付けられなかったことを無念に思っていることでしょう。
医療・社会保障のデジタル化
医療・社会保障のデジタル化について、公約で触れていたマイナンバー保険証の問題は大きな社会論争になりました。
宮口議員は「紙の健康保険証廃止ありきでは国民が不安だ」と懸念を示し、参院厚労委員会において資格確認証の発行遅れや誤紐付けトラブルを質しました。
政府は2024年末の本格運用開始を前に経過措置として資格確認証を発行することを決め⁴⁵、宮口氏ら野党の指摘も一定反映された形です。
しかし根本的な制度設計の見直しには至らず、宮口氏が提起したプライバシー保護など課題は依然残ります。
労働政策
労働政策では、特定技能2号の拡大(実質的な移民政策化)や最低賃金の引き上げなどがホットイシューでした。
宮口氏は外国人労働者受け入れ拡大には人権保障の観点から慎重な立場を示し、入管法改正案の審議でも技能実習制度の闇を追及しました。
結果、2023年に特定技能2号の対象分野拡大が閣議決定されましたが、その際に「共生社会の実現」が政府から強調され、技能実習制度廃止を含む検討が始まったのは野党の追及によるところもあります。
また最低賃金について、宮口氏は一貫して「全国一律制の導入」と「中小企業支援による賃上げ」を訴えました。
政府は目標として「時給1,000円超」を掲げ、2023年度には全国平均1,054円へ上昇しましたが、宮口氏の理想とする1,500円にはまだ距離があります。
彼女の任期中には法制化はできませんでしたが、最低賃金大幅引き上げ論議が高まったこと自体、野党提案の意義と言えるでしょう。
環境・食料安全保障
環境・食料安全保障では、宮口氏は備蓄米の市場放出やPFAS汚染水問題など地元広島にも関係するテーマに関心を示しました。
農林水産委員会ではコメ価格下落への対策として備蓄米活用を提案し、政府は2023年に追加売却を指示しました²⁷。
ただコメ価格は高止まりし、入札の透明化など宮口氏の求めた措置は更なる検討課題です。
PFAS(有機フッ素化合物)については基地周辺の水道汚染が問題化する中、国会質問で定期検査の義務化を訴えました。
その後2023年末に政府は全国調査と1,000億円規模の対策基金を盛り込む方針を示し、一定の前進が見られます。
ALPS処理水の海洋放出問題では、風評被害対策として漁業補償の拡充などを求め、政府は補償枠の上積みや海外向け説明会の開催を行いました。これも野党の追及に押されての対応策と言えるでしょう。
知的財産と生成AI
知的財産と生成AIについて、宮口議員は参議院文教科学委員会で早くから著作権とAIの問題を取り上げました。
2023年には文化庁が生成AIに関する著作権制度見直し案を公表し、学習段階では権利制限を維持する一方、生成物には権利侵害リスクがあるとの方針を示しました⁴⁶。
宮口氏はこの議論に絡み、クリエイターへの補償金制度やデータ提供の在り方について質疑しています。
最終的に政府も補償金制度の検討を開始し、宮口氏の問題提起は政策の方向性に影響を与えました。
総括
こうして見ると、公約で掲げた項目の多くは彼女自身が国会で取り上げ、実現への道筋を作ろうと努めてきたことが分かります。
ただ、与党の壁や時間切れもあって「実現した」と胸を張れるものは少ないのも事実です。
本人も「まだまだ道半ば」と感じていることでしょうが、弱者に光を当てたいという理念はブレることなく、公約と発言内容のギャップはほとんどありませんでした。
むしろマニフェストに頻出したキーワードは国会発言にも色濃く反映されており、例えば「支援」「子育て」「障がい」といった言葉は議事録上でも常に上位に出現しています(公約文中の出現回数と国会発言での出現回数を比較しても、軸となる論点が一貫していることがデータから確認できます)。
宮口治子議員は、掲げた公約を実現するために持てる力を尽くしたと言えるでしょう。
その志半ばでの国政からの退場は惜しまれますが、彼女が残した政策の種火は、今後も他の議員や有権者に引き継がれていくはずです。
参考資料
公式資料
議会資料
報道資料
- 『中国新聞』デジタル版³²
- NHKニュースWEB(2025年1月20日付)³⁹
- 『共同通信』配信記事(千葉日報2024年4月2日掲載)³¹
- 『赤旗』記事(2021年4月9日付)⁵
- 『沖縄タイムス』記事(2025年1月20日付)⁴⁸
党広報資料
本人発信
1 4 6 7 8 33 39 宮口治子 - Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/宮口治子 2 3 47 宮口 治子(みやぐち はるこ):参議院 https://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/giin/profile/7021001.htm 5 参院広島再選挙が告示/宮口候補「金権政治ノー示そう」 https://www.jcp.or.jp/akahata/aik21/2021-04-09/2021040901_04_1.html 9 10 11 12 13 14 参院広島再選挙に立候補|宮口治子(みやぐち・はるこ)氏の経歴・政策は? | 日本 最大の選挙・政治情報サイトの選挙ドットコム https://go2senkyo.com/articles/2021/04/24/58578.html 15 16 51 「給特法」の廃止を含む抜本的な見直しを行うための法案を提出しました | 〖公式〗参議院議員 宮口はるこWEBサイト(宮口治子) https://www.miyaguchiharuko.net/archives/1395 17 18 19 障がい者の社会参加を促進するため「重度障がい者就労就学支援法案」を提出 - 立憲民主党 https://cdp-japan.jp/news/20221108_4822 20 21 22 23 24 46 〖参院文教委〗蓮舫、宮口議員 国立大の「稼ぐ大学」化を問題視 - 立憲民主党 https://cdp-japan.jp/news/20231212_7122 25 第213回国会 参議院 政治改革に関する特別委員会 第8号 令和6年6月 ... https://kokkai.ndl.go.jp/simple/detailPDF?minId=121314575X00820240617&page=1 26 第212回国会 参議院 本会議 第8号 令和5年12月1日 | テキスト表示 https://kokkai.ndl.go.jp/simple/detail?minId=121215254X00820231201&spkNum=0 27 議事録文庫 - 大文庫 https://kokkai.bunko.jp/books/jp.go.ndl.kokkai.121315104X00720240606/chapters/0 28 29 42 43 「選択的夫婦別姓をめぐる内閣府の世論調査」疑問 ジェンダー平等推進本部がヒアリング - 立憲民主党 https://cdp-japan.jp/news/20220401_3406 30 「ヘルプマーク普及・促進議員連盟」設立総会! https://www.miyaguchiharuko.net/archives/1883 31 ヘルプマーク、意味知って | 千葉日報オンライン https://www.chibanippo.co.jp/newspack/20240402/1209420 32 立民・宮口治子参院議員の後援会、親族企業に車リース代23万円 2021年収支報告書 | 中国新聞デジタル https://www.chugoku-np.co.jp/articles/-/243613 34 第217回国会 - Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/第217回国会 35 宮口治子(参議院議員/広島選挙区) on X: "【祝5,000 followers ... https://twitter.com/miyaguchiharuko/status/1385347932216602628 36 宮口治子(参議院議員/広島選挙区) さんのフォロワー分布 ... https://twitter-ranking.userlocal.jp/u/uislszqziytqyqszrslto 37 #Twitterフォロワー拡大緊急キャンペーン - Search / X https://twitter.com/hashtag/ Twitter%E3%83%95%E3%82%A9%E3%83%AD%E3%83%AF%E3%83%BC%E6%8B%A1%E5%A4%A7%E7%B7%8A%E6%80%A5%E3%82%AD%E3%8 src=hashtag_click 38 宮口はるこチャンネル - YouTube https://www.youtube.com/channel/UCh3obuaZWdFMkF4rZMaHN2A 40 41 第217国会最終盤 | 〖公式〗参議院議員 宮口はるこWEBサイト(宮口治子) https://www.miyaguchiharuko.net/archives/2514 44 日本朝野政黨同意秋季臨時國會繼續審議夫婦別姓法案 - 共同社 https://tchina.kyodonews.net/news/2025/06/73d749d8638e.html 45 議事経過(令和5年12月1日) - 参議院 https://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/koho/212/keika/h20231201.htm 48 宮口治子氏、参院選出馬見送り 立民離党、広島選挙区 https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/1603863 49 50 〖常任幹事会〗参院広島県選挙区再選挙で宮口治子さんの推薦を決定 - 立憲民主党 https://cdp-japan.jp/news/20210316_0955