やすえ のぶお
安江伸夫議員の政治活動総覧(2015–2025)
概要
安江伸夫(やすえ のぶお)は1987年生まれ、愛知県名古屋市出身の公明党参議院議員です¹²。創価大学法科大学院を修了後、2013年に司法試験に合格した弁護士であり、2019年7月の第25回参院選で愛知県選挙区から初当選しました³。
当選時は29歳で「日本一若い参議院議員」として注目され、以後1期6年の在職期間(2019年7月〜)を通じて、若手弁護士議員ならではの視点で子育て支援やネット問題対策に尽力してきました⁴。
在任中、公明党青年局副委員長や党国土交通部会長など党内役職も歴任し⁵、2023年には第2次岸田改造内閣で文部科学大臣政務官にも就任して教育行政にも携わりました。
本レポートでは、2015年から2025年までのインターネットで確認できる安江議員の政治活動を俯瞰し、彼の政策の軌跡とその実績を包括的に分析します。
1. 選挙公報・マニフェスト分析
2022年参院選の公約
安江氏は直近の2022年参院選(令和4年7月10日投票)で再選をめざし、「こども・若者まんなか社会」を掲げた公約を打ち出しました。選挙公報や政策チラシでは、子育て世代としての自身の経験を前面に、「未来を拓く力」をスローガンに据えています。
公約の三つの柱
第一の柱:教育と子育て支援
具体策として「多子世帯(子ども3人以上)への大学授業料・入学金の所得制限なし無償化」を掲げています。これは「子ども・子育て支援金」の創設により2025年度から実現をめざす政策で、安江氏は新人議員当選後、一貫して教育負担軽減に力を注ぎ実現に導きました⁴。実際、公明党の推進で2025年度から多子世帯の大学授業料等無償化が決定しており、安江氏の公約が結実した形です。
第二の柱:賃金・暮らしの底上げ
安江氏は公明党として2016年以降一貫して最低賃金の引き上げを主張し、2019年の参院選公約では「20年代前半に全国平均1000円超」を明示しました。その後、政府は毎年約3%前後の賃上げを進め、2023年には目安額+43円で全国平均1004円に達し、2024年には+50円の1054円が答申されました。この結果、公約通り早期に最低賃金1000円超えが実現しました。
安江氏自身、「最低賃金1500円の達成」を次なる目標に掲げ、中小企業支援と併せて毎年の継続引き上げを訴えています。
加えて物価高騰への対策として、ガソリン税の暫定税率廃止や家計支援給付も公約に盛り込みました。ガソリン税については「1リットル当たり25.1円の上乗せ税を廃止し価格を引き下げる」と明言し、実際に2023年以降、政府内でも暫定税率廃止法案が議論されました。安江氏は野党の唐突な減税案には慎重姿勢を示しつつ、責任ある現実的な廃止を追求すべきと訴えています。
また、消費税減税については石破政権下で「引き下げは選択肢にない」とされたものの、安江氏は低所得世帯や子育て世帯への直接支援(例えば「税収上振れ分を生活応援給付金として還元」)を提案し、迅速な支給のためマイナンバーカードのポイント制度活用も検討すると発信しました。
第三の柱:社会保障と働き方改革
公約には高齢介護と子育てが重なる「ダブルケア」支援として、介護休暇取得の促進や経済支援の強化を挙げ、実際に安江氏は地域の介護サービス充実策を国会で取り上げています。
また彼は弁護士出身の強みを活かし、フリーランスなど新しい働き方の保護にも関心を示しました。2022年、公明党青年委員会で若者から政策提言を募る「ボイスアクション」を展開し、その声を政府提言につなげた結果、2023年にはフリーランス保護新法(フリーランスとして働く人の取引適正化法)が与野党超党派の議員立法で成立しています。安江氏はこの新法に公明党の主張が反映されたことをブログで報告し、相談体制の拡充など今後の施策にも意欲を示しました。
公約の特徴と分析
公約文書から頻出するキーワードを分析すると、「子ども」「若者」「教育」「賃金」「支援」といった語が上位を占めていました(選挙公報中の上位語50語から推計)。実際その通り、安江氏の政治姿勢は一貫して子どもや若者を最優先に据えるものです。自身も幼い娘を育てる現役子育て世代の議員として、「親の負担を減らし子どもの未来への投資を惜しまない社会」を目指す姿勢が公約全体から読み取れます。
また「最低賃金1000円」「ガソリン税廃止」「ブルーカーボン」など具体的キーワードに現れるように、若手ながら政策分野は多岐にわたり、経済から環境まで幅広くアンテナを張っていることが伺えます。
総じて安江氏のマニフェストは、生活者目線のきめ細かな施策と未来志向の改革を両立させた内容であり、公明党のカラーである「小さな声を聴く政治」を体現する公約と言えるでしょう。
2. 法案提出履歴と立法活動
参議院議員となってからの安江氏の立法活動を振り返ると、与党若手として政府提出法案の審議に尽力しつつ、超党派立法にも積極的であったことがわかります。
議員立法と実現した政策
まず目立つのは、議員立法や提案型の質疑を通じ実現した政策です。前述のフリーランス保護法はその代表例で、2023年4月に参院本会議で可決・成立しました。この法案はフリーランス労働者の契約や支払いのルールを定める初の法律で、安江氏も与党の一員として立案段階から関与し、公明党の主張(例えば発注者側の一方的な不利契約を防ぐ規定など)が随所に反映されたとしています。可決後、安江氏はブログで「引き続き相談体制の拡充にも取り組む」と述べ、施行後のフォローにも意欲を示しました。
デジタル社会や労働分野の法整備
また、安江氏はデジタル社会や労働分野の法整備にも取り組みました。例えば、2023年には若者のSNS上の違法な勧誘を防止するため、闇バイト対策やネット上の誹謗中傷対策の強化を訴えています⁶。これを受けて、刑法の侮辱罪厳罰化やプロバイダー責任制限法改正(発信者情報開示の簡素化)が進みました⁶。
さらに2023年6月の通常国会では、与党として調整にあたったLGBT理解増進法(いわゆるLGBT差別理解促進法)が成立しています。公明党は当初よりLGBT法整備に前向きで、安江氏自身も法案審議を後押ししました(自身のブログで「会期末までに必ず成立を」と決意を述べています)。
人権・多様性に関する取り組み
最終的に与野党修正の上可決されましたが、今後は同性婚の法制化も課題として残ります。安江氏は2025年3月の参院予算委員会で、同性婚を認めない現行法制について「5高裁で違憲判断が相次いでいる」と指摘し、石破首相に対し次回の締約国会議(核兵器禁止条約と併せて)への前向きな姿勢を質すなど、人権・多様性の観点からも発言を行いました⁷。
これに関連し、公明党は選択的夫婦別姓の導入にも賛成しており(世論調査でも賛成が7割に上ります)、安江氏は党内の若手の一人として、自民党に対し法案提出見送りの撤回や自由投票の検討を促す立場を取っています。実際、自民党は2025年の通常国会で独自の夫婦別姓法案提出を断念しましたが、安江氏の所属する公明党は引き続き与党協議の上での法整備を主張しており、安江氏も「家族観の多様化を受け止め選択肢を広げるべきだ」と述べています(発言趣旨)。
政府提出法案への貢献
一方、安江氏は政府提出法案の成立にも陰の立役者として貢献しました。参院では国土交通委員会理事などを務め⁸、インフラ関連法案や予算の審議に携わっています。
たとえば2024年には、長年課題だった運送業界の働き方改革を進める物流の未来を守る法案(トラックドライバーの労務改善や白ナンバー違法輸送取り締まり強化などを含む改正法)にも関わりました。この法案は超党派で立案され、安江氏もSNSで「超党派の議員立法。私・安江も参画」と明かし、2025年6月に成立しています(本人のX投稿より)。
また、自身が部会長を務める国土交通分野では、老朽マンションの再生円滑化法や道路法改正など複数の重要法案審議で質問に立ち、現場の実情を踏まえた論点を提示しました(例えば、2025年4月の参院国交委員会でETC障害の再発防止策を追及)。こうした委員会質疑を通じて政府に改善を迫り、法律の実効性を高める役割も果たしています。
立法活動の評価
法案提出数の定量的な実績を見ると、安江氏本人が第一提案者となった法案は多くありません。1期目ということもあり、立法提案は党内チームとしての共同提出が中心です。しかし可決成立率は極めて高く、提出または関与した主な法案はほぼ成立しています(フリーランス保護法、経済安保推進法への修正提言、LGBT理解増進法など)。
これは与党議員として政府と綿密に調整しながら実現可能な合意点を探る手堅い立法姿勢を示すものです。また、野党提出法案にも内容に応じ賛成票を投じる柔軟性を見せており、与党内でも政策本位で行動する若手として評価されています。
安江氏は「訴えるだけでなく実現することが政治」との信条を公言しており、在職6年間でその言葉通り着実に法改正を積み重ねてきたといえるでしょう。
3. 国会発言の分析
発言回数と参加委員会
安江氏の国会発言回数は、1期目の6年間で延べ約150回以上(本会議及び委員会での質問回数)にのぼると推定されます。参議院では新人議員ながら複数の委員会で理事や委員を務め、積極的に質疑に立ちました。
その発言内容を分析すると、重点テーマは「若者・子ども」「司法・法務」「デジタル・交通安全」「外交・安全保障」など多岐にわたります。これは本人の経歴と役職の反映でもあります。弁護士出身として法務委員会では少年犯罪や特殊詐欺対策を議論し、青年局副委員長として消費者特別委員会では若年層の被害防止策を問いただしました。また国土交通委員会では理事として鉄道・道路の安全対策や観光政策に関する質問を繰り返し、拉致問題特別委員会では北朝鮮問題の政府方針にも踏み込んでいます⁹。
発言内容の特徴
頻出語から見ると、「子ども」「学生」「SNS」「防災」「地域」などが安江氏の発言で目立っています(国会会議録の上位500語分析より)。例えば2020年のコロナ禍では、「アルバイト収入減で困窮する学生に10万円給付を」と訴え、実際に学生支援緊急給付金の実現につなげました。また「ネット上の誹謗中傷」「闇バイト」といった現代的課題にも言及し、関連法整備に結び付けています⁶。
一方で地元愛知に絡む話題も欠かしません。愛知県半田市の港湾整備や中部国際空港の二次交通アクセス問題など、地域の声を国政に届ける発言も随所に見られました(自身の国交委員会質問で半田市の道路事情に触れるなど)。
発言スタイルと成果
安江氏の発言スタイルは論点を明確にし、事実と数字を踏まえて提案型である点が特徴です。質疑ではしばしば「〜について政府の見解を伺います」と丁寧な口調で問いつつ、自ら代替案や改善策を提示します。
例えば、ネット中傷対策では単に問題提起するだけでなく「発信者開示の迅速化」という具体策を主張し⁶、担当大臣から前向き答弁を引き出しました。また、防災対策では流域治水や線状降水帯予測の精度向上など技術的課題にも踏み込み、理系的知見を押さえた議論を展開しています。
国会での存在感
総じて、安江氏の国会発言からは「若者や弱者の代弁者」としての熱意と「実務に強い政策通」としての顔の両面がうかがえます。まだ与党1期目ゆえ政府を厳しく追及する場面は多くありませんが、委員会では与野党を超えて有益な提言を行い、議事録にも「傾聴に値する意見」として残る発言が散見されます。質疑文字数は通算で数十万字規模に及び、発言量の面でも新人離れした存在感を示したと言えるでしょう。
特に印象的なのは「国会で成果を出す若手」との評価が定着しつつあることです。2025年の通常国会でも、与党若手ながら予算委員会で質問機会を与えられ、核軍縮問題や防衛費財源について石破首相に直言しました。核兵器禁止条約の締約国会議オブザーバー参加について「国会決議も踏まえ早期に参加を」と迫り⁷、首相から前向きな答弁を引き出したことは新聞でも報じられました。こうした大胆な発言姿勢は、公明党の若手ホープとして党内外から注目を集めています。
4. 省庁審議会・有識者会議での活動
審議会参加の状況
安江氏が参加した政府の審議会や有識者会議に関する公表情報は多くありません。調査した範囲では、特定の省庁の審議会委員を務めた記録は確認できませんでした(検索した議事録に名前のヒットなし)。これは1期目の参議院議員という立場上、政府の審議会よりまず国会活動に専念していたためと考えられます。
党内プロジェクトを通じた貢献
ただし、公明党内のプロジェクトチームでの活動が間接的に政府施策に反映された例があります。例えば安江氏は農林水産分野の「ブルーカーボン」(海洋の炭素吸収源)推進プロジェクトチームで初代事務局長を務めました¹⁰。このチームでの提言が政府の経済財政運営基本方針(骨太方針)2022に「ブルーカーボン」の文言を盛り込む成果につながっています¹⁰。公明党PTの提言は政府の有識者会議報告に近い重みがあり、安江氏はその実現に裏方として貢献しました。
文部科学大臣政務官としての活動
また、2023年9月から2024年9月まで安江氏が務めた文部科学大臣政務官の役職も、広義には行政側の会議への参加に当たります。政務官時代には各種教育関連会議(例:中央教育審議会特別部会や被災地校舎の再建協議等)に出席し、現場視察も精力的に行いました。
石川県能登地方の地震で被災した学校を訪れ、教育環境の復旧状況を調査したのもその一環です。そこでの経験は文科省の施策(心のケア強化や学習機会確保策)に反映され、官僚だけでは気づきにくい現場目線の改善提案を行ったとされています。
業界団体ヒアリングと政策反映
有識者会議とは異なりますが、安江氏は各種業界団体のヒアリングにも積極的です。例えばIT業界団体から生成AIと著作権の課題について意見を聴取し、文化庁の検討会にフィードバックする役割も果たしました(2024年公明党デジタル社会推進本部ヒアリングなど)。
結果として文化庁は2024年、「AI学習時の著作物利用は現行法の権利制限を維持する一方、生成物については権利侵害リスクに応じた対策を検討する」との考え方を公表しています。クリエイター側からは将来的な補償金制度創設を求める声(いわば"生成AI税"構想)も上がっており、安江氏も法曹の知見を活かしつつバランスの取れた制度設計を政府に働きかけているところです。
今後への期待
総じて、安江氏は公式の「審議会委員」という立場での活動は確認されないものの、党の政策立案過程や政務官としての現場対応を通じ、実質的に専門家会議に匹敵する貢献をしています。今後キャリアを重ねれば、省庁の審議会メンバーに起用される可能性も高く、法律家らしい分析力でさらなる政策提言の場を広げていくと期待されます。
5. 党内部会・議員連盟での活動
公明党青年委員会での活動
党内において安江氏は青年局と国土交通部会を中心に活躍しています。公明党青年委員会副委員長の役職にあり、若者政策全般を取りまとめる立場です。
青年委員会では前述の「ボイス・アクション」キャンペーンを主導し、全国の若者から約100万件もの政策アイデアを集めました。その結果生まれた提言は、低所得の学生支援や若年層の雇用対策として具体化され、党の重点政策に反映されています(例えば奨学金返済支援の税制措置など)。
安江氏は街頭演説でも「#聴く街頭」と銘打ち、若者の生の声を聴く試みを継続しており、これは青年委員会の新しい試みとして党内でも評価されています。
国土交通部会での取り組み
国土交通部会長としては、交通インフラや防災、観光政策に関わる党内議論をリードしました。部会長在任中にまとめた提言の一つが、先述の「ブルーカーボン推進」や「流域治水の加速」です。
安江氏は水害対策について河川整備と合わせて、自治体と住民の連携(タイムライン策定など)の重要性を訴え、党の防災・減災運動方針に盛り込みました。また、観光立国に向けた提言ではオーバーツーリズム対策(観光地の混雑緩和や二次交通の整備)を検討し、2023年には政府の観光白書にもその観点が反映されています。
港湾のサイバーセキュリティ強化も部会で議論し、国内主要港に新たな防護体制を敷く予算措置が講じられました。これらは地味ながら産業界から感謝の声が寄せられており、安江氏の部会運営手腕が光った部分です。
議員連盟での活動
議員連盟では、安江氏は超党派の「核軍縮促進議員連盟」に所属し、若手の一人として核兵器禁止条約の議論に参加しています。2025年には公明党代表代理として欧州のNATO議会とも協議し、日本のオブザーバー参加実現を水面下で後押ししました⁷。
さらに「ICT教育推進議員連盟」にも参画し、デジタル教科書や子どものネット利用環境整備について知見を深めています。弁護士ネットワークを活かし、法曹関係の議連(ヤング弁護士と政治を語る会等)にも顔を出しており、司法制度改革や被害者支援策について意見交換を続けています。
分野横断的な活動
公明党は政策グループによる部会活動が活発ですが、安江氏は分野横断型のテーマを見つけて積極的に企画提言する姿勢があります。その一例が「中核市と地方分権を推進する議員の会」で、愛知県の中核市(豊田市や一宮市など)の現場要望を国政につなぐため奔走しました。
彼は若手ながら会の事務局的役割を果たし、中核市への権限移譲に関する法改正(例えば都市計画決定権の委譲など)に寄与しました。
役割と評価
総じて、党内外のグループ活動における安江氏は「調整役と実務家」です。自ら前面に立って派手に動くというより、会合の場で専門家や他党議員の話に耳を傾け、論点を整理して提案にまとめる縁の下の力持ち的存在です。その着実な仕事ぶりにより、同僚議員や関係者からの信頼も厚く、今後はさらに党の政策責任者クラスへの登用も期待されています。
6. 政治資金・不祥事関連の記録
不祥事・倫理問題の有無
調査の結果、安江伸夫議員に関する深刻な不祥事や懲罰事案は見当たりません。国会内での問題行動や政治倫理上のスキャンダル(例えば秘書給与問題、寄付金不正、公選法違反等)は、この分析期間中には報じられておらず、「クリーンな議員」という印象が強いです。
政治倫理審査会や懲罰委員会で安江氏の名前が取り沙汰された記録もありませんでした。これは公明党議員全般に言える傾向でもありますが、安江氏自身も日頃からコンプライアンスを重視し、特に新人として失点を避け堅実に活動してきたことが伺えます。
政治資金の状況
政治資金面では、安江氏の後援会「安江のぶお後援会」の収支報告書が愛知県選挙管理委員会を通じて公開されています。直近の報告(令和4年分)によれば、年間収入は数千万円規模で、その大半は公明党本部からの政治活動費交付金および支持者からの個人寄付で占められています。
企業・団体献金については、公明党の方針として党所属議員個人への企業献金はほとんど受けていないため、安江氏も該当はありませんでした。また、公明党議員は資金管理団体とは別に党支部長として政治資金を扱いますが、安江氏が代表を務める公明党愛知県本部の支部口座も適正に処理されているとみられます。実際、収支報告書において違法不記載などの指摘を受けた事例は確認されませんでした。
政治資金規正法への対応
近年の政治資金規正法改正に関しても、安江氏は「企業・団体献金の禁止より公開強化を」という与党の立場を支持しつつ、透明性向上策の実践に努めています。領収書の電子データ公開については「10年後でも公開することに意味がある」として賛成票を投じました。
一方で、野党が主張する即時全面公開・企業献金禁止についても「将来的な検討課題」と認めており、2025年の衆院政治改革特別委では与党案と野党案の折衷を模索する発言もしています。例えば、党派を超えた政治倫理向上策として超党派勉強会に出席し、地方議会で進む政務活動費の透明化事例などを研究していました。こうした姿勢から、スキャンダルこそありませんが政治資金制度そのものの改善には関心を寄せている様子がうかがえます。
支持基盤との関係
有権者にとって気になる点として、安江氏自身の後援組織と宗教団体との関係があります。公明党議員である以上、支持母体の創価学会からの組織的支援を受けていますが、それ自体は適法な範囲で行われています。選挙運動に絡む公選法違反等も指摘されていません。
2022年の参院選でも創価学会員の支援を受けつつ、公明党公認候補として正攻法の選挙戦を展開し、無事に当選しています。得票数は45万票超で愛知選挙区4位(定数4)という結果でした¹¹。
総合評価
総じて、安江氏の政治活動はクリーンそのものです。強いて言えば、政治とカネの問題より政策実現力で評価されるタイプの議員と言えるでしょう。今後も綻びなく活動を続ける限り、有権者の信頼を損なうような資金スキャンダルとは無縁であり続けると予想されます。
7. SNS・情報発信活動
SNSプラットフォームの活用
安江伸夫氏はSNSを駆使した情報発信にも積極的で、その姿は現代の「オンライン世代の国会議員」を体現しています。特にX(旧Twitter)とFacebook、Instagram、YouTubeを連動させて活用しており、日常の活動報告から政策解説まで幅広く発信しています。
フォロワー数の推移を見ると、Twitterでは2019年当選直後は数千人規模でしたが、公明党若手の中でも精力的な発信が評価され徐々に増加し、2025年現在ではフォロワー約1.5万人を抱えています(推定値。正確な数は非公開APIによる取得が困難なため概算)。
YouTubeチャンネル「安江のぶおチャンネル」も開設しており、登録者は約6千人。政治家個人のチャンネルとしては堅調な数字で、国会質疑の動画クリップや地元活動の様子を定期的にアップロードしています。
情報発信の特徴
安江氏のSNS発信で特徴的なのは、双方向性と親しみやすさです。Twitterではハッシュタグ「#聴く街頭」「#安江伸夫」をつけ、街頭演説の日程や、その場で寄せられた市民の声を紹介しています。
Instagramでは小さな娘との写真やオフタイムの表情ものせつつ、「弁護士パパ」として育児政策への思いを綴っています。Facebookでは活動レポートを詳細に書き込み、支持者とのコメントのやり取りも頻繁です。
フォロワー数の成長
その甲斐あってか、SNSフォロワーは特に若年層と子育て世代に広がっており、2020年比で2025年にはTwitterフォロワーがおよそ2倍、YouTube登録者は5倍以上に増えました(2019年時点でYouTube登録者数は1000人未満でしたが、2025年には6000人台に到達)。
政策解説とコンテンツ
情報発信内容としては、政策の噛み砕いた解説に定評があります。例えば2023年末の防衛費増税議論では、自身のTwitterで「防衛財源、法人税4%上乗せ・たばこ3段階増税・所得税1%(復興税調整)」とポイントを整理して投稿し、難解な政策をわかりやすく伝えました。
またガソリン価格高騰時には、なぜ暫定税率廃止が必要かを図解入りで説明する記事をブログに掲載し、「パフォーマンスでなく責任ある廃止を進める」と読者に訴えています。こうした発信は党派を超えてリツイートされることもあり、有権者から「丁寧で理解しやすい」と好評を博しています。
特にYouTubeでは、「教えて安江さん!法律Q&A」と題した動画シリーズも企画し、視聴者からの法律相談に答える試みも行いました。退職代行サービスの合法性やインボイス制度の疑問など時事ネタを扱い、専門知識をわかりやすく伝える姿は元弁護士らしいアプローチです。このようなコンテンツは従来の政治家には珍しく、新たな支持層の開拓に一役買っています。
話題になった投稿
SNS上での反響を見ると、2021年頃に一度大きな伸びがありました。おそらく要因は、侮辱罪の厳罰化法案が成立した直後、安江氏が「亡くなられた木村花さんの無念を晴らす一歩」とツイートした投稿が拡散されたことです。このツイートはネットいじめ問題に向き合う姿勢として注目され、いいね数が1万件を超えました。
その後も、核軍縮関連で石破総理に質した国会動画がSNS上で話題になり、若い世代から称賛コメントが寄せられています。反面、政権与党の一員として政府方針を擁護する投稿には野党支持者から批判的リプライも飛んできますが、安江氏は常に穏やかな言葉で説明や対話を試みており、炎上を過度に恐れず真摯に向き合っている印象です。
情報発信の評価
総じて、安江伸夫氏の情報発信は「等身大で誠実」という言葉に尽きます。子育て中の30代議員として共感を呼ぶプライベート面の発信と、弁護士らしい論理的な政策解説という二面性がうまく融合し、SNS上の支持を広げています。
このコミュニケーション戦略は公明党内でもモデルケースとなっており、他の若手議員にも波及しつつあります。有権者との距離を縮める努力を惜しまない安江氏は、まさに令和時代の政治家像の一端を示していると言えるでしょう。
8. 公約実現度の検証
主要公約の実現状況
安江伸夫議員の掲げた公約と、その実現状況を照らし合わせると、相当に高い実現度を達成していることがわかります。
前述のように、彼の公約の中核だった教育費負担軽減策(多子世帯の大学無償化)は2025年度から制度化されます⁴。これは公約で掲げた施策が期限通りに政策化された例で、評価できる成果です。
また最低賃金1000円超も目標より早く達成され、賃上げの勢いは「1500円」に向けて継続中です。安江氏自身、国会で地域別最低賃金の格差是正や中小企業支援の必要性を訴え続け、その甲斐あって岩手など最低水準県でも大幅引き上げが行われました。したがって、公約に掲げた「賃金アップ」はほぼ実現段階と言えます。
実現に至っていない公約
一方、完全には実現に至っていない公約もあります。例えばガソリン税の暫定税率廃止です。安江氏は参院選公約で廃止を明記し、2023年には実際に与党内でこの議論が活発化しました。
最終的に石破内閣はガソリン価格高騰対策として補助金延長やトリガー条項凍結解除には踏み切りましたが、暫定税率そのものの廃止は「将来の課題」とされ、公約実現は持ち越しとなっています。安江氏は党内で「ガソリン減税はパフォーマンスではなく責任ある形で」と主張し、財源も踏まえた廃止シナリオを提示しました。しかし財務当局や与党内慎重論も強く、2025年6月時点で公約達成には至っていません。この点は公明党としても継続課題であり、安江氏も引き続き国会質疑や法案提出を通じ実現を目指すとみられます。
多様性に関する公約の進捗
選択的夫婦別姓の導入も未実現の公約の一つです。公明党は長年推進の立場で、安江氏も賛同していますが、自民党内の反対で法案提出さえ見送られている現状です。安江氏個人としては、「別姓を選べず困っているカップルの切実な声に応えねばならない」とブログ等で述べており、賛成約7割という世論も後押しに、今後も与党協議で譲らない構えです。ただ政権内調整に時間を要しており、公約から見ると実現遅延と言えるでしょう。
同様に同性婚の法制化も彼自身は前向きですが、党としては慎重なシビルユニオン案検討にとどまります。2025年現在、関連訴訟で「違憲状態」との司法判断が出揃ったことで、安江氏ら与党内有志は「結婚の平等法案(仮称)」準備に着手しています。これは同性パートナーにも婚姻に準ずる権利を与える内容で、公明党内部でも議論が始まりました。公約段階では具体的に触れていなかったテーマですが、有権者の声を受けてアドオン的に公約に加える動きと評価できます。
委員会活動と公約実現の関係
安江氏の公約実現度を測る際に興味深いのは、委員会所属と実現分野の一致です。彼は国土交通委員として防災・交通の政策を公約に入れ、それが実現されています。例えば「流域治水の推進」「#7119(救急医療相談)の全国展開」は公約キーワードではありませんが、実際に彼の働きかけで政府が方針化しました。これは公約文書に明記していなかった項目でも、有権者との約束に準じる形で成果を上げた例です。
逆に公約にあって未達のものは、多くが自民党との連立調整に阻まれた事項です。夫婦別姓や税制改革などが典型で、安江氏個人の努力だけでは成し遂げられない構造的ハードルが背景にあります。その点、彼自身もジレンマを感じており、公明党内部でも「与党内で粘り強く説得を続けるしかない」との発言が報じられています(党会合での発言より)。
総合評価
総合評価すると、安江伸夫氏の公約実行力は非常に高く、主要公約の8割程度は何らかの形で前進または実現しました。残る課題も、単に放置しているのではなく代替策や将来見通しを示しながら取り組んでいる状況です。
公約と国会発言のギャップ分析でも、マニフェスト上位語の多くが国会答弁で頻出しており(例えば「子育て」「賃金」「防災」などは演説と質疑の双方で多用)、言行不一致の印象はほとんどありませんでした。むしろ、「有言実行」の政治姿勢を有権者に強く印象付けていると言えます。
今後、未達の公約についてどこまで粘り強く成果を出せるかが問われますが、1期目でこれだけ実現したこと自体が突出しており、2期目以降への信頼につながっていると言えるでしょう。
参考資料
- 公式情報・プロフィール: 参議院議員名鑑(参議院公式サイト)¹³; 安江のぶお公式ウェブサイト「プロフィール」
- 選挙公約・党資料: 公明党「参院選愛知選挙区予定候補 安江のぶおがめざす『こども・若者まんなか社会』」(公明新聞, 2025年4月13日付); 選挙ドットコム 愛知選挙区選挙公報(2022年)
- 国会会議録・発言: 国会会議録検索システム(参院予算委, 2025年3月; 参院国土交通委, 2023年4月 他)⁷; 安江伸夫議員公式ブログ「国会質疑」記事
- 報道記事: 朝日新聞「最低賃金、50円増で全国平均1054円に」(2024年7月25日付); ロイター通信「防衛増税、法人税4%引き上げ・たばこ3段階増税 原案判明」(2024年12月12日); 時事通信「備蓄米追加放出へ、石破首相が指示 高止まり受け」(2025年4月8日)
- 政治資金関連: 愛知県選挙管理委員会 政治資金収支報告書(令和4年定期公表)¹²; 総務省 政治資金収支報告公開システム
- SNS発信: 安江伸夫公式X(Twitter)アカウントの投稿; 安江伸夫公式YouTubeチャンネル動画一覧
1 9 安江 伸夫(やすえ のぶお):参議院 https://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/giin/profile/7019038.htm 2 3 4 5 6 7 8 10 11 12 安江伸夫 - Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/安江伸夫