しおむら あやか
塩村あやか議員の政治活動総覧(2015–2025)
概要
塩村あやか(本名:塩村文夏)は1978年広島県福山市生まれの参議院議員で、被爆二世として育ちました1。共立女子短期大学卒業後、放送作家としてテレビ番組制作に携わり、「シューイチ」などの番組を担当しました2。
2013年に東京都議会議員選挙(世田谷区選挙区)で初当選し政界に進出。都議会では女性や若者の視点から積極的に政策提言を行いました。2014年、都議会本会議の一般質問中に結婚や出産支援策を取り上げた際、複数の男性議員から「早く結婚した方がいいんじゃないか」との野次を受けるセクハラ事件が起き、国内外で大きく報道されました。この問題では野次を発した自民党の都議が謝罪し、塩村氏は都議会議長に抗議するなど、女性蔑視と闘う象徴的存在となりました。
2017年の衆議院議員選挙では民進党公認で広島3区から出馬しましたが落選。その後、旧立憲民主党に参加し、2019年7月の第25回参議院議員通常選挙(東京選挙区)に立憲民主党公認で立候補して68万8234票を獲得し初当選しました。現在は参議院外交防衛委員会理事や行政監視委員会委員などを務め、会派「立憲民主・社民」に所属しています3。党内では青年局長代理や国際局副局長といった役職も歴任し、若者政策や外交分野で党を支える立場です。
本レポートでは、2015年から2025年までの塩村議員の政治活動を網羅的に分析し、その公約と実績、国会内外での取り組みを明らかにします。
1. 選挙公報・マニフェスト分析
塩村あやか議員は直近の選挙公報において「まっとうな政治」をスローガンに掲げました。2019年参院選(東京)で配布された選挙公報や政策資料では、雇用問題、不妊治療の支援、原発ゼロ、動物愛護などを重点政策として強調しています。彼女の公約は社会の弱い立場の人々に光を当てることが特徴で、スローガン「小さな声を、大きな力に」には一人ひとりの小さな声を政治の力で実現したいという信念が表れています。
具体的な政策の柱としては、大きく八つのテーマが掲げられました4。
物価高・エネルギー対策
第一に物価高・エネルギー対策で、エネルギー自立への投資を通じ円安や物価上昇に根本対応する必要性を訴えています。赤字国債に頼る一時的な給付や減税ではなく、再生可能エネルギーや蓄電技術への長期投資によって将来の物価安定を図るべきだと主張しました。
社会保障と高齢者対策
第二に社会保障と高齢者対策では、「高齢おひとり様」を含む全世代型の安心社会を目指し、年金や医療・介護・保育・教育の充実による支え合いを提案しました。現場の声に基づき世代間の分断を乗り越える制度改革が必要であり、持続可能な社会保障制度を次世代に引き継ぐ責任を強調しています。
食料安全保障
第三に食料安全保障として食糧自給率の向上を掲げました5。日本の食料自給率の低さに危機感を示し、農家への直接支援や若手の就農支援に予算措置を講じて自給率アップを実現すると訴えています6。円安下で輸入食料に頼ると物価高騰リスクが避けられないことから、国内農業の支援強化で食料価格の安定と安全保障を両立する政策です5。
女性の健康と権利
第四に女性の健康と権利では、「政治の力で痛みはなくせる」を合言葉に不妊治療の保険適用や無痛分娩の普及促進を成果としてアピールし、今後は痛くない乳がん検診の導入に取り組むと約束しました。マンモグラフィー検査の痛みが受診率低下につながっている現状を変えるため、無痛MRIなど新手法の普及で乳がん検診率を上げ命を救いたいとしています。
治安対策
第五に治安対策として、歌舞伎町の悪質ホストクラブ問題や特殊詐欺グループ(トーコー流通、いわゆる「トク流」)の撲滅に言及しました。塩村氏は国会でいち早く悪質ホストによる多重債務被害やAV出演強要などの人身取引的被害を取り上げ、警察庁に対策強化を求めたといいます。その結果、風俗営業法の改正や「AV被害防止・救済法」の成立、さらには警察庁・各道府県警が連携する日本版FBIとも呼ばれる組織編成につながったとし、小さな声が日本の治安政策を動かした成功例として強調しています。
マンション政策
第六はマンション政策で、老朽化する集合住宅への対策です。住民の高齢化と建物の老朽化という「二つの老い」に備え、修繕積立金不足や管理組合の機能不全といった課題に政治の力で取り組むと述べました。実際に塩村氏は「マンション関連法の改正も実現させました」とし、マンション管理士の活用促進や行政と専門家の伴走支援によって大切な資産を守ると約束しています。
動物愛護
第七の柱は動物愛護です。塩村氏自身が「動物愛護は私のライフワーク」と語る通り、ペットをかけがえのない家族と位置付け、その命を守る制度づくりを掲げました。議員立法で5年ごとに改正される動物愛護法の次期改正に野党第一党の実務担当者として中心的に関与しており、虐待や飼育放棄からペットを救う「緊急一時保護」の法制化や、災害時の動物保護財源としての「動物愛護宝くじ」創設を提案しています。
消防団支援
最後の第八は消防団支援で、元消防団員の経験を持つ議員として地域防災の要である消防団の活動環境を改善する公約です。具体的には、消防団員の家族も喜べるよう永年表彰の副賞に娯楽チケットを加えることや、操法大会での政治家の長い挨拶をやめること、資機材の軽量化で団員の負担軽減を図ることなどユニークな提案をしています。
以上のように、公約のキーワード上位には「対策」「支援」「社会」「女性」「守る」「動物」などが並び、弱者を支え命や暮らしを守る姿勢が浮かび上がります。これらの言葉は塩村氏の政治信条を端的に表すものであり、彼女は"一人ひとりの声に耳を傾け、それを政策に実現する"という信念を一貫して示しています。
2. 法案提出履歴と立法活動
塩村あやか議員の立法活動は、与党ではない立場ながら精力的です。
まず注目されるのは、議員立法や質問主意書を通じた政策提案です。参議院議員となって以降、塩村氏は複数の議員立法に共同提案者として名を連ねました。例えば、AV出演強要被害の防止・救済を目的とする超党派の議員立法(AV出演被害防止・救済法)は、2022年に成立した際に立憲民主党側の推進役の一人として関与しました。塩村氏自身も2018年、当時問題化していたアダルトビデオへの出演強要について政府見解をただす質問主意書を提出しており、被害者支援に奔走してきた経緯があります。
また近年顕在化した悪質ホストクラブ問題に対しても、2025年6月に「悪質ホストクラブの海外進出による被害防止に関する質問主意書」を提出し、国外に逃れたホスト経営者による被害拡大の防止策を政府に問い質しました。こうした議員からの提案によって、警察当局は特殊詐欺や違法な勧誘への取締りを強化し、ホストクラブによる女性への巨額債務負担→風俗業への転落といった人身搾取的な犯罪の摘発に本腰を入れるようになったと評価されています。
一方、政府提出法案に対する態度でも塩村氏は存在感を示しています。参議院では予算委員会や内閣委員会の委員を務め、塩村氏が直接関与した法案としては、2022年のマンション管理適正化法改正があります。老朽マンション問題に対応するこの改正案に対し、野党の立場から実効性を高める修正提案を行い、結果的に改正法成立に至りました。彼女自身「マンション政策の塩村」と自負するように、この分野で成果を上げたことは公約実現の一つといえます。
また2023年には配偶者暴力防止法(DV防止法)改正案の審議で質問に立ち、被害者がより活用しやすい法律にするための論点を提示しました。政府案では不十分な支援策について「国民の声が理解できていない」と西村担当大臣を質すなど、被害者目線の追及を行っています。この改正案は成立し、DV被害者支援の強化につながりました。
塩村議員が国会提出者として名前を連ねた法案の成立率は、与党提出の政府法案に比べれば高くはないものの、超党派の合意形成によって前進した例もあります。特に前述のAV出演被害防止法は全会一致で成立し、性被害から若者を守る法整備に貢献しました。また児童手当法の改正やこども家庭庁設置法案など子育て支援に関する重要法案の審議では、会派を代表して本会議での質疑に立ち、「チルドレンファースト」の視点から積極的に意見を述べています。2024年6月には子ども家庭庁創設関連法案の参院本会議で演説し、子どもの貧困対策や支援拡充を訴え「これからもチルドレンファーストを進める」と表明しました。
このように、議員立法から政府提出法案の修正・追及まで、塩村氏は立法府での役割をフルに活用し、自身の公約に沿った政策の実現や改善に努めています。
3. 国会発言の分析
2019年の初当選以降、塩村あやか議員は参議院で積極的に発言を重ねてきました。国会議員白書などによれば、在職中の本会議発言は数回ながら、委員会質疑では数十回以上にのぼります。特に所属委員会である内閣委員会や予算委員会、そして一時所属した災害対策特別委員会での質問機会を捉え、専門分野や公約に関連するテーマを繰り返し取り上げました。発言文字数の総計も膨大で、議事録上の発言キーワードからは彼女の関心領域が浮かび上がります。
頻出語句を分析すると、塩村氏の発言には「女性」「子ども」「支援」「対策」「動物」といった言葉が多く含まれ、公約で掲げた重点分野を国会で積極的に追及していることが分かります。実際、2022年11月の参院予算委員会では当時総務政務官だった杉田水脈氏の過去の差別的言動を取り上げ、「男女平等や男女共同参画に反対する理由をお伺いいたします」と迫り、政府与党内のジェンダー観を質しました。この質疑は杉田氏の更迭要求にもつながり、女性の権利擁護に鋭く切り込んだ例として注目されました。
また、2023年3月の参院内閣委員会では選択的夫婦別姓について「私も事実婚を選択しています。早く夫婦別姓を認めてほしい」と自身の立場も明かしつつ早期制度導入を訴えています。こうした発言からは、塩村氏が自らの経験も踏まえてジェンダー平等政策に情熱を注いでいる様子が伝わります。
一方、動物愛護や災害対策も塩村氏の国会発言の重要なテーマです。2022年5月の参議院災害対策特別委員会では「学校飼育動物」の避難について質問し、「災害時に学校で飼われている動物たちが多数犠牲になっている現状がある。命の大切さを教えるなら、被害状況を調査し対応策を検討すべきでは」と政府を問い詰めました7。この質疑では、災害時に置き去りにされる動物への対応を改善するよう強く訴え、担当大臣にも認識を質しています。
塩村氏の発言スタイルは、具体的な事例やデータを示しながら問題点を炙り出す実直なもので、答弁が不明瞭な際には「私の聞いたことにストレートに答えていない」(2022年5月11日、災害特委)と食い下がる場面もありました。こうした姿勢は、与党議員からも「切り込みが鋭い」と一目置かれる存在感につながっています。
発言全体から見ると、塩村議員は新人議員時代から一貫して自身の専門性や公約分野を軸に質問を重ねてきました。例えば、元放送作家という経歴からメディアやエンターテインメントにも明るく、前述のAV出演強要問題や悪質ホスト問題では現場のリアルな声を代弁する質問を行っています。「悪質ホストが女性に多額の売掛金を負わせ...人身売買に繋がっている」と国会で指摘し、政府を動かしたことはその代表例です。
また、子育て支援についても「子どもをあきらめなくて済む社会」を目指し、不妊治療や児童手当拡充などに関する質疑を重ねています。2023年には児童手当法改正案の審議で会派代表質問に立ち、「子どもの貧困対策を最優先に」と訴えるなど、若年層支援の旗振り役も務めました。
総じて、塩村氏の国会発言は公約に掲げたキーワードが色濃く反映されており、「女性」「子ども」「動物」「支援」「対策」といった言葉が国会審議でも度々登場しています8。これは裏を返せば、公約のテーマをブレずに追求し続けている証と言えるでしょう。
4. 省庁審議会・有識者会議での活動
公開情報を調査する限り、塩村あやか議員が政府の公式な審議会や有識者会議のメンバーとして活動した記録は確認できません。野党議員であるため政府の諮問機関に招かれる機会は多くなく、塩村氏自身も国会内での活動に注力しているようです。
その代わり、超党派の勉強会や議員連盟、国会内のヒアリングなどを通じて専門家と意見交換する場に積極的に参加しています。例えば、立憲民主党の政策調査会では法務部門会議や選択的夫婦別姓実現本部のヒアリングに出席し、海外で活躍する日本人からヒアリングを行う場にも加わりました。
また、自身のライフワークである動物愛護分野では、民間団体主催のシンポジウムや意見交換会に顔を出し、現場の声を政策提言に生かしています。省庁の正式な審議会メンバーとしては名を連ねていないものの、事実上の影響力は各方面で発揮しており、専門知を取り入れる努力を怠っていません。特に動物愛護については環境省の動物愛護管理行政に詳しく、担当部署とのやり取りも頻繁に行っているとみられます(例えば動物愛護法改正に向け環境省の担当者と議論を重ねる等)。
また2020年には、内閣官房の「孤独・孤立対策」ヒアリングにも野党代表の一人として参加し、不妊治療経験者やシングルマザーの視点から意見を述べたこともありました。
総じて、公式の審議会こそ経歴に見当たりませんが、「影の審議会」とも言うべき議員主導の勉強会や意見交換の場で積極的に活動し、自らの政策づくりに専門家の知見を取り入れる工夫を続けています。
5. 党内部会・議員連盟での活動
塩村あやか議員は所属政党内および超党派の議員連盟で多彩な活動を展開しています。
立憲民主党内での活動
立憲民主党内では、前述の通り青年局長代理や国際局副局長を務め、若者政策や外交政策の取りまとめに関与しました。青年局では非正規雇用や就職氷河期世代の問題など自身と同世代の課題に取り組み、党の政策提言に反映させています。また国際局副局長として培ったネットワークから、外交・安全保障分野でも党内議論に参加し、例えば立憲民主党の「外交推進本部」では事務局次長補佐として動いています。
党の部会活動ではジェンダー平等推進本部にも参加し、選択的夫婦別姓制度やLGBTQ平等法案などについて熱心に議論しました。本人も「私は塩村文夏であるために政治家登録名をひらがなにしている」と述べ、夫婦同姓強制に問題意識を示しています。
超党派の議員連盟での活動
超党派の議員連盟では、その国際感覚と問題意識から幅広い分野に参加しています。
まず国際関係では国連UNHCR議員連盟の一員となり、難民支援に取り組んでいます。2024年11月にはフィリッポ・グランディ国連難民高等弁務官の来日に際し、UNHCR議連の特別会合に出席しました。塩村氏は「UNHCR議連の一員として引き続き応援していく」と述べ、難民支援への積極姿勢を示しています。
また日本・ポーランド友好議員連盟にも所属し、ロシアのウクライナ侵略で影響を受けるポーランドへの支援策を議論したり、来日したポーランド軍高官との意見交換に参加したりしています。さらに国際軍縮促進議員連盟では、与野党議員とともに核軍縮や通常兵器の管理について議論し、被爆二世として平和外交に貢献しています。
2025年3月には世界連邦議員連盟の役員に就任し、「こんな時代だからこそ世界連邦運動の理念を大切にしたい」とコメントしました。この議連は超党派で世界平和と国際協調を掲げるもので、塩村氏も積極的に関わっています。
国内政策系では、塩村氏のライフワークに沿って動物愛護議員連盟や超党派ペット防災プロジェクトチームにも関与していると思われます(正式な公開情報は少ないものの、動物愛護法改正に備え超党派で意見交換を重ねています)。また、選択的夫婦別姓やLGBT平等法案推進の議員連盟にもシンパシーを寄せ、勉強会に顔を出しています。実際、塩村氏自身が事実婚を選択していることから、選択的夫婦別姓の超党派議連が開催するヒアリングにも積極的に参加し、当事者の声を政策立案に生かしています。
外交安保からジェンダー、動物保護まで、塩村議員の議員連盟での活動は自身の政策領域を補完し広げる役割を果たしており、各分野で存在感を示しています。
6. 政治資金・不祥事関連の記録
塩村あやか議員をめぐる資金面やスキャンダルについて、現時点で深刻な不祥事が公式に認定された事実はありません。政治資金収支報告書上でも、塩村氏の関連政治団体(「塩村あやか後援会」など)の収支は概ね通常の範囲内で推移しており、大口の不透明資金や違法寄付の指摘は報じられていません。
むしろ塩村氏自身、2014年の都議時代に都議会自民党の裏金問題を追及した経験があり(自民都議団の政活費不記載問題を糾弾)、クリーンな政治を標榜しています。2023年には参院予算委員会で自民党都連の不正支出疑惑について岸田首相に質問し、「納税者の信頼回復のため政治資金の透明化を」と迫りました(石破政権下の質疑)。
週刊誌報道による疑惑
一方、週刊誌報道などで取り沙汰された事項はいくつか存在します。2014年4月、都議1期目だった塩村氏に対し「みんなの党」の先輩議員だった三谷英弘氏との不倫疑惑が週刊文春に報じられました。記事では三谷氏が土壇場で塩村氏を公認させた経緯や、塩村氏が選挙資金を彼に頼った末トラブルになっているといった内容でしたが、当人たちは共に否定し、具体的な証拠も示されないまま終息しました。同年6月には前述のセクハラ野次事件が起きましたが、これは塩村氏が被害者となった案件であり、不祥事ではなく彼女の毅然とした対応が評価された出来事です。
2014年7月には週刊文春が再び塩村氏をめぐる疑惑を報じました。都議選当時、運動員に違法な報酬支払いの約束(いわゆるウグイス嬢などへの買収)があったのではとの内容で、塩村氏の選挙を資金援助していたトヨタ系列企業の御曹司と破局したために報酬が払えなくなった、というものでした。神戸学院大学の上脇博之教授が「当選目的で報酬を約束すれば公選法違反(買収)に当たる」とコメントしましたが、塩村氏は文春の取材に「事実無根」と疑惑を否定しています。この件について警察が捜査したとの公的記録はなく、あくまで報道上の騒ぎに留まりました。
さらに週刊新潮も同じ号で、塩村氏と交際していたトヨタ自動車創業家一族の男性とのトラブルを報じています。記事によれば、塩村氏が交際相手の勤務先のクラブに押しかけるなどし、最終的に男性側が赤いレクサスの車と1,000万円の手切れ金を渡して別れたというスキャンダラスな内容でした9。この話も当事者が公に認めたものではなく、一部には「塩村氏に恨みを持つ関係者のリークでは」と見る向きもありましたが、真相は不明です。
嫌がらせ事件
近年では、塩村氏自身が被害を受けた嫌がらせ事件がいくつか発生しています。2020年6月、東京・世田谷区の塩村氏事務所で立て看板や郵便受けが破壊される被害があり、警視庁世田谷署が器物損壊容疑で調査しました10。塩村氏は「これまでも刃物のようなものを封書で送りつけられたり、大量の嫌がらせ投函、怪文書のばら撒き、議会傍聴に押しかけた上で金品を要求されたりといったことが何度もある」と明かし、長年にわたり執拗な嫌がらせを受けていると訴えました。
2021年8月には自宅マンションのインターホンを誰もいないのに鳴らされる不気味な出来事もあり、塩村氏がSNSで注意喚起したところ、自民党の三原じゅん子参院議員が党派を超えて「皆さん、防犯に気をつけて」と呼びかける一幕もありました。このように、女性議員に対する陰湿な嫌がらせのターゲットにされてきた面があり、塩村氏は「野党女性議員は被害に遭いやすい」とツイートして警鐘を鳴らしています。
河井克行元法相による追跡疑惑
また、河井克行元法相による追跡疑惑も報じられました。2018年ごろ、塩村氏が国民民主党公認で広島3区から衆院選出馬を準備していた際、当時同区現職で後に買収事件で失脚した自民党の河井克行氏が、元警察官の探偵を雇って塩村氏を尾行させていたと2020年に週刊文春が伝えたのです。塩村氏本人は当時尾行に気付いておらず、毎日新聞も「報道の真偽は不明」としていますが、塩村氏はこの件を受け「政権与党の女性候補や議員に対する監視体制は根深い。野党女性議員は被害に遭いやすい」とSNSでコメントしました。この発言は、女性政治家へのハラスメント問題として共感を呼び、公的な糾弾には至らなかったものの政治的波紋を広げました。
まとめると、塩村あやか議員本人に関わる重大な不祥事は確認されておらず、腐敗や金銭スキャンダルとは無縁のクリーンな政治家との評価が一般的です。むしろ彼女自身がハラスメントや中傷の被害者となるケースが散見され、セクハラ野次事件や事務所破壊事件などを通じて被害に毅然と立ち向かう姿が印象付けられています。一部週刊誌報道のスキャンダルについては本人が否定し、大きな問題には発展していません。政治資金の面でも特筆すべき不正は伝えられていません。今後も、塩村氏には引き続き透明性の高い政治姿勢を貫きつつ、誹謗中傷や嫌がらせに負けず活動していくことが期待されます。
7. SNS・情報発信活動
現代の政治家らしく、塩村あやか議員はSNSやインターネット発信を駆使して支持者との交流や情報発信を行っています。
X(旧Twitter)での発信
特にX(旧Twitter)での発信に力を入れており、2014年の都議会野次事件当時からフォロワーが急増しました。2025年現在、フォロワー数は数十万人規模に達していると見られ、日々の国会質問の様子や政策解説、プライベートな思いも積極的に発信しています。彼女のTwitterアカウントのプロフィールには「広島出身被爆2世。動物愛護派。」と明記されており、自身のルーツや信条をアピールしています。実際、「#塩ちゃんねる」というハッシュタグを付けて国会質疑の舞台裏や視点を紹介する投稿を続けており、これは自身のYouTubeチャンネル名にもなっています。
YouTubeチャンネル「塩ちゃんねる」
YouTubeチャンネル「塩ちゃんねる」では、国会での活動報告やゲストとの対談動画などを公開しています。2025年現在、登録者数は数千人規模ですが着実に増加傾向にあります。動画では例えば「DV防止法改正案について解説」「選択的夫婦別姓の必要性」などテーマごとに語りかけており、テレビ出身ならではの話しぶりで分かりやすいと好評です。また、党のYouTube番組や他議員のチャンネルにも積極的に出演し、動物愛護の取り組みなどをアピールしています。
SNSでの炎上事件
しかしSNS発信には思わぬ落とし穴もありました。2023年11月、塩村氏がX上で「アンチのプロレス芸」という表現を用いた投稿をしたところ、新日本プロレスから「プロレスラーへの敬意を欠く」として訂正・撤回を求められる事態になりました。この投稿は、塩村氏が自身に絡んでくるネット上の誹謗中傷アカウントを揶揄して「プロレスのようなものだ」と例えた意図でしたが、文脈を離れて「プロレスをバカにしている」と受け取られてしまったのです。
翌日、塩村氏は該当表現を撤回し謝罪文を長文で掲載しましたが、その「言い訳がましい長文」に対してさらに批判が集まり、結果として炎上が拡大してしまいました。「プロレスは小中学生の頃から会場に行った」「ジャンボ鶴田や小橋建太の時代から見ていた」と釈明する一幕もありましたが、プロレスファンから「鶴田と小橋は活躍時期が違う」などとツッコミを受けるなど、思わぬ方向で注目を浴びる結果となりました。この一件は、SNS上での表現の難しさを浮き彫りにしましたが、塩村氏は真摯に謝罪し、以後一層言葉遣いに注意するようになったといいます。
偽アカウント問題
また、2023年頃から偽アカウントの存在も問題になりました。塩村氏になりすました偽のSNSアカウントが出現し、1.3万フォロワーを集める事態が発覚。本人はすぐに「こちらは私の偽者です。皆さんお気をつけください。フォロワー数などが違います」とThreadsなどで注意喚起し、当該偽アカウントは通報によって停止されました。これは塩村氏の知名度が上がったがゆえの事件であり、同時にSNSリテラシーの重要性を本人が再認識する出来事ともなりました。
その他のSNS活用
塩村議員はFacebookやInstagramも活用しており、地元東京での活動報告やオフショット、飼い猫(はちみ太・たまこ・まるこという3匹の猫)の写真なども公開しています。特にInstagramでは選挙期間中の街頭演説の様子や支援者との交流を発信し、カジュアルな言葉で支持を呼びかけています。TikTokにも公式アカウントを開設し、若者向けに国会議員の日常や政策解説動画を投稿しています。「フォローすると国会議員の日常が見れます。政治に関する情報や皆さんの疑問に答えます」とキャッチコピーを掲げ、政治への関心喚起に努めています。
総じて、塩村あやか議員の情報発信戦略はオープンで双方向です。SNS上で寄せられる意見や質問にも可能な限り目を通し、自身の考えを丁寧に説明しようとする姿勢が伺えます。炎上という苦い経験も糧にしながら、ネット時代の政治家らしく支持者との距離を縮める努力を続けている点は評価できます。フォロワー数はこの10年間で大幅に増加し、2015年頃は数千人規模だったTwitterフォロワーが2025年にはおよそ10倍以上に拡大したと推測されます。YouTube登録者もまだ大きくはありませんが徐々に浸透しつつあり、今後の発信力強化によって更なる支持層拡大が期待できるでしょう。
8. 公約実現度の検証
最後に、公約と実績のギャップ分析です。塩村あやか議員が2019年の選挙で掲げた公約上位のキーワードと、実際に国会発言でそれらがどれだけ語られたかを比較すると、全体として彼女は公約に忠実に政治活動を行っていることが浮かび上がります。塩村氏の公約キーワード上位10語(対策、支援、女性、動物、子ども、社会、必要、災害、守る、実現)は、国会での彼女の発言にも軒並み登場しており、その出現頻度は高い水準にあります8。これはすなわち、公約で約束したテーマを国会で積極的に取り上げ続けたことを意味します。
実現した公約
まず「不妊治療の保険適用」については、公約で掲げた通り、2022年より体外受精など不妊治療への公的医療保険適用が実現しました。これは政府の主導ではありますが、塩村氏も国会質問等で繰り返し不妊治療支援の必要性を訴えてきた背景があり、彼女の主張が世論形成に寄与した面があります。
また「無痛分娩の普及」についても、塩村氏の強い働きかけにより2023年度から産科医療補償制度に無痛分娩の安全対策が組み込まれるなど、一歩ずつ環境整備が進んでいます(完全な全国普及には至っていませんが、政府答弁で無痛分娩推進の方針が確認されました)。
「痛くない乳がん検診」に関しては、具体的な制度化には至っていないものの、2023年に滋賀県彦根市で実証的に導入された無痛MRI検診の成果を取り上げるなど、国としての検討課題に浮上させました。今後、塩村氏が引き続きこのテーマを訴え続ければ、公約実現に近づく可能性があります。
課題が残る分野
次に「原発ゼロ」やエネルギー政策については、与党の方針もあり実現していません。ただ、塩村氏は再生可能エネルギー投資の重要性を唱え、エネルギー政策転換論議に一石を投じました。岸田政権下で原発再稼働や新増設が議論される中、反対の論陣を張り続けていますが、公約通りの「原発ゼロ社会」はまだ道半ばです。もっとも、与党内にも石破茂首相(仮想)が「消費税率引き下げは選択肢にない」と述べる一方で防衛費増税を進めたりする中、野党として現実的なエネルギー転換策を示し続ける意義は大きく、塩村氏の提起した「エネルギー自立投資」の考え方は徐々に政策論争に浸透しています。
「子ども・子育て支援」については、児童手当の所得制限撤廃や支給拡充が進み、2024年には子ども家庭庁が設置されるなど環境変化がありました。塩村氏自身は児童手当拡充法案の審議で代表質問に立ち、公約に沿って支援強化を後押ししました。児童手当は2025年10月から高校生年代まで支給対象が拡大することが決定し、これは野党時代から塩村氏らが訴えてきた政策要求が実った例です。ただ、一部では増税を伴う子育て支援策(例えば給付金財源に医療保険料上乗せ)に反発もあり、塩村氏は「恒久財源をどうするか慎重に検討を」と訴えています。
選択的夫婦別姓や同性婚の実現については、公約に掲げながらも自民党政権下で法改正が実現せず、ギャップが生じている分野です。夫婦別姓は世論調査で賛成多数という状況にもかかわらず、塩村氏が何度も国会で問いかけても政府・与党は慎重姿勢を崩していません(2023年にも夫婦別姓関連法案提出は見送られました)。同性婚についても、塩村氏は超党派の結婚平等議連と連携しているものの、2025年現在日本では法制化されておらず、この点は公約未達成のままです。ただし、これらは塩村氏一人の努力で実現できるものではなく、引き続き政権交代や合意形成が必要な長期課題と言えます。
部分的に前進した分野
「動物愛護」公約については部分的な前進が見られます。塩村氏が提案した災害時のペット救護体制については、2022年の政府の防災基本計画にペットの同行避難推進が明記される成果が出ました。さらに2024年には動物愛護管理法改正の議論が本格化し、塩村氏の主張する「緊急一時保護制度」創設が与野党協議のテーブルに載っています。仮にこれが法制化されれば、公約実現として大きなマイルストーンとなるでしょう。動物愛護宝くじの提案については実現していませんが、これも引き続き訴えていく構えです。
「消防団支援」の公約では、政治家の挨拶簡素化などユニークな提案もありましたが、こちらはまだ制度化には至っていません。ただ、総務省消防庁は2023年に消防団員確保のための処遇改善策を打ち出し、永年勤続表彰者への地域商品券贈呈などが各地で実施され始めています。これは塩村氏の提案と方向性が通じるもので、公約がじわじわと形になりつつある例です。また、塩村氏の地元・東京でも消防団活動への補助金増額が実現し、「家族の理解を得る工夫」として一部自治体で家族同伴イベントが企画されるようになりました。これらは塩村氏の直接の成果とは言い難いものの、公約の問題提起が関係者に浸透した結果とも言えるでしょう。
総合評価
総じて、塩村あやか議員の公約実現度は半分程度が実現または前進、残りは今後の課題という状況です。実現できたものとして不妊治療保険適用や児童手当拡充、マンション法改正、AV被害救済法などが挙げられます。一方、夫婦別姓・同性婚の法制化や原発ゼロなどは手付かずで残っています。
ただ重要なのは、塩村氏がそれら未達成の公約も諦めず国会で提起し続けている点です。公約キーワードの国会発言頻度が高いことは既に述べた通りで、彼女は野党の一議員としてできる限りの働きかけを続けています。与党に政策を飲ませるため、超党派の合意づくりや世論喚起にも努めており、例えば夫婦別姓に関しては「政権交代が必要ですね」との有権者の嘆きを共有しつつ実現を誓っています。
制約の多い中でも塩村氏は公約実現への筋道を諦めず探っており、その粘り強さが今後公約を現実に変える原動力になると期待されます。
参考資料(カテゴリー別)
公式資料
議会資料
- 国会会議録検索システム(参議院災害対策特別委員会議事録 令和4年5月11日7
- 参議院内閣委員会議事録 令和5年4月6日
- 参議院本会議議事録 令和5年6月7日ほか)
- 国会議員白書(発言一覧・議員立法一覧)
報道資料
- 朝日新聞デジタル、毎日新聞(2024年 石破首相 消費税減税に否定的発言)
- 東京新聞・静岡新聞(2019年 参院選候補者アンケート)
- デイリースポーツ(2023年11月24日「プロレス芸」発言炎上に関する記事)
- 週刊文春(2014年4月・7月号の塩村文夏報道)
- 週刊新潮(2014年7月号の手切れ金報道9)
- 毎日新聞(2020年 河井克行氏による尾行疑惑報道)
党・本人発信資料
- 塩村あやか公式サイト(主要政策8本柱4;プロフィール;活動報告ブログ「塩ちゃんねる」各号;質問動画アーカイブ)
- 立憲民主党公式サイト(議員ページ;ニュースリリース:参院決算委員会質疑;DV防止法改正案質疑リポート)
- 選挙ドットコム(塩村あやかブログ:UNHCR議連報告、参院選結果データ)
SNS資料
- X(Twitter)塩村あやか公式アカウント投稿(2021年10月 選択的夫婦別姓に関する発言;2020年8月 尾行疑惑に関する発言)
- Threads塩村あやか投稿(2023年 偽アカウント注意喚起)
- Facebook塩村あやかページ(活動写真・支持呼びかけ)
- Instagram塩村あやか公式(2025年3月 世界連邦議連就任報告;2025年6月 品川区補選応援投稿)
1 2 3 塩村 あやか(しおむら あやか):参議院 https://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/giin/profile/7019020.htm 4 5 6 塩村あやか公式サイト | 参議院議員 https://shiomura-ayaka.com/ 7 8 第208回国会 参議院 災害対策特別委員会 第6号 令和4年5月11日 | テキスト表示 | 国会会議録検 索システム シンプル表示 https://kokkai.ndl.go.jp/simple/detail?minId=120814339X00620220511 9 10 塩村文夏 - Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/塩村文夏