どうこ しげる
堂故茂議員の政治活動総覧(2015–2025)
概要
堂故茂(どうこ・しげる)議員は、自由民主党所属の参議院議員(富山県選挙区)であり、2013年の初当選以来2期連続で参議院に席を置いています¹²。
経歴と背景
1952年に富山県氷見市で生まれ、高岡高校から慶應義塾大学経済学部を卒業後、運送会社勤務や綿貫民輔衆院議員の秘書を経て政界入りしました³。
1991年に富山県議会議員に初当選し(2期7年在職)、その後1998年からは郷里の氷見市長を4期15年務めるなど、長年地方政治の現場で経験を積んだ人物です³。
国政進出と選挙実績
2013年7月の第23回参院選で富山県選挙区から国政へ転じ、得票率77%という圧倒的支持で初当選、2019年の第25回参院選でも66%の票を得て再選されました²。現在まで参議院議員としての在職期間は10年以上に及びます。
政治家としてのキャリア
国会議員としてのキャリアの中で、堂故氏は党・国会内の様々な役職を歴任してきました。1期目には文部科学大臣政務官として教育行政に携わり、自民党副幹事長にも就任しています³。
2018年には参議院農林水産委員長に就き、与党議員として委員会運営の重責を担いました。また、自民党内では富山県連の参院選挙区支部長を務めるなど地方組織の要職も経験し、党総務部会長代理や参議院政務調査会副会長として政策立案にも関わっています⁴⁵。
2023年9月、第2次岸田第2次改造内閣で国土交通副大臣に抜擢され、約1年間にわたり国土交通行政の副掌舵を執りました⁶。2024年11月以降は参議院文教科学委員長に就任し、国会の教育・科学技術政策審議を主導する立場にあります⁴。
このように地方・国政双方の現場で経験を重ねた堂故氏は、「ふるさとに根っこがある人づくり、国づくり」をモットーに掲げ、自らの郷土である富山と日本全体の発展を結びつける視点で活動してきました⁷。
本レポートでは、2015年から2025年までの10年間にわたる堂故議員の政治活動を総覧し、その公約と実績、国会内外での動きについて包括的に分析します。
1. 選挙公報・マニフェスト分析
政治理念とスローガン
堂故茂議員の直近の選挙公報(2019年参院選)をひも解くと、掲げられたスローガンや政策の柱から彼の政治姿勢が浮かび上がります。最大のキャッチフレーズは「ふるさとに根っこがある人づくり、国づくり」であり⁷、これは地方に根差した人材育成を通じて国全体を良くしていこうという理念を端的に表現しています。
教育政策への強いこだわり
具体的な政策項目を見ると、まず教育分野への強いこだわりが目立ちます。「生きる力をはぐくむ教育」「ふるさと教育」「食育」「幸福学」「キャリア教育」など独自のキーワードを並べ、人づくりの様々な側面を強調しています⁸。
幼児教育の無償化や質の向上、学校施設の安全整備(耐震化・空調設備・トイレ改修等)、教員の長時間労働是正といった具体策も掲げられており⁹¹⁰、教育環境の充実が公約の筆頭に据えられました。これらはすでに市長時代から力を入れていたテーマであり、国政でも「教育・人づくりの堂故」として取り組む決意が見て取れます。
地域社会と経済に関する公約
次に、地域社会と経済に関する公約も堂故氏のマニフェストの大きな柱でした。「全ての人々が互いに尊重しあい、共に生きる共生社会の創造」や「山から海までの循環型社会の構築、花と緑の美しいふるさとづくり」といったビジョンが掲げられ¹¹、環境に配慮した地域づくり・まちづくりへの意欲を示しています。
加えて、「命を守り抜く防災対策」の推進や老朽インフラの維持管理強化、「自助・共助・公助のベストミックスで安定した社会保障」の実現など、安全安心と福祉の面でも手厚い政策を約束しました¹²¹³。
産業面では「ものづくりの富山らしい地場産業の育成」や「農林水産業の活性化と農山漁村の振興」を掲げ¹⁴、地方経済を底上げする意志を示しています。北陸新幹線延伸による交流人口拡大も公約に含まれており¹⁵、インフラ整備を地域活性化につなげる構想も盛り込まれました。
公約キーワードの分析
堂故氏の選挙公報から抽出される頻出キーワード上位には、「人づくり」「教育」「ふるさと」「地方創生」「防災」「社会保障」「農林水産」「共生」などが並びます。例えば「人づくり」は彼の理念そのものであり、演説や文章でも繰り返し用いられる言葉です。
また「教育」「地域(ふるさと)」といった語も公報で強調され⁹¹²、堂故氏が教育と地域振興を政治活動の両輪と位置付けていることが分かります。一方、「幸福学」や「キャリア教育」など専門的な用語も含まれており、教育の中身にも踏み込んだ特徴的な公約となっています。
これらのキーワードから読み取れるのは、堂故氏が「地方の現場から人を育て、日本全体の活力につなげる」という一貫した姿勢です。自身が長く地方行政を担った経験から、地域コミュニティの大切さ、人づくりの重要さを熟知しており、それを国政レベルの政策に昇華させようとしていることが窺えます。
公約に表れない政策立場
なお、2019年公報では触れられていないテーマでも、後に堂故氏が関わることになった政策分野があります。例えば夫婦別姓やLGBTといった家族法・人権に関する論点は公約に明記されていませんでしたが、堂故氏は当選後、党内の保守系議員連盟の一員として選択的夫婦別姓の導入に反対する立場を取っています¹⁶¹⁷。
こうした点は公約段階では前面に出さなかったものの、元来の信条や支持基盤の意向が背景にあると考えられます。
公約の総合評価
総じて、堂故氏のマニフェストは地味ながら実直な地方重視の政策群で構成されており、華々しい全国公約よりも足元の富山や日本の伝統的価値観を尊重する内容となっていたと言えるでしょう。
その後の活動を見ると、多くの公約について彼は一貫して追求を続けており、公約と実践とのギャップは比較的小さい部類に属します。それでも、教育再生や地方創生といった長期戦の課題については「道半ば」のものも多く、これらは引き続き彼の政治課題として残っています。
2. 法案提出履歴と立法活動
立法活動の基本姿勢
国会議員としての堂故茂氏の立法活動を振り返ると、与党の中堅議員らしく政府提出法案の審議と委員会運営に力点を置いた経歴が浮かびます。2015~2025年の間、堂故氏が議員立法(議員自らが提出者となった法案)の筆頭提案者となった例は確認できず、目立ったオリジナル法案の提出はありませんでした。
その代わりに、委員会での質疑や法案審査を通じて政策に影響を与える役割を果たしています。
農林水産委員長としての重要な経験
堂故氏にとって大きな転機となったのが、2018年秋の参議院農林水産委員長就任です³。当時、政府・与党は出入国管理法改正(外国人労働者の受け入れ拡大)や水産資源管理強化法案など重要案件の成立を急いでおり、農水委員会も緊迫した審議が続きました。
12月には野党が反発を強め、ついに「農林水産委員長堂故茂君解任決議案」を参議院本会議に提出します¹⁸。これは「委員長である堂故氏の職責を解任すべし」というもので、実質的には与党が委員会で強行採決に踏み切ったことへの抗議でした。
発議者は野党の小川勝也議員らで、提出日は平成30年12月6日と記録されています¹⁹。翌12月7日、本会議で採決が行われましたが、自公など与党多数により否決(反対多数)され、堂故氏は引き続き委員長の座に留まりました²⁰。
この一件は、堂故氏個人の不祥事ではなく国会戦術上の攻防でしたが、結果として彼の名前が全国ニュースに取り上げられる出来事となりました。委員長として与党の立場を守り抜いたことは、党内での評価に繋がった一方、野党から「強引な委員会運営」と批判を浴びる形にもなりました。
政府提出法案への貢献
委員長経験以外では、堂故氏自身が主導した法案こそありませんが、常に政府提出法案の成立に貢献する役割を果たしてきました。例えば、地方創生関連の法案(地方自治体への交付金制度等)については総務委員会理事として審査に関わり、農業競争力強化法などの農政改革法案では農水委員として与党側の質問に立ちました。
1期目の後半には文教科学委員会理事も務め、教育無償化政策に関連する法整備にも関与しています。これらはいずれも政府が提出し与党が賛成する法案で、堂故氏は与党議員として着実に賛成票を投じ、時に質疑で法案趣旨を補強する役回りでした。
したがって、法案提出数そのものはゼロでも、法案成立への貢献度という意味では多数の法律に影の功労者として関与していると言えます。
チームプレーヤーとしての立法姿勢
堂故氏の立法姿勢の特徴は、「シングルイシューの闘士」というより「チームプレーヤー」である点です。自身の名前を冠した法案提出はなくとも、党のプロジェクトチームや部会で政策を練り上げ、政府提出法案に反映させる裏方の働きをしています。
実際、自民党文部科学部会などで議論された教育費無償化や地方大学振興策などは、堂故氏がライフワークとするテーマであり、彼はこれらを党内合意にまとめ政府提案に繋げるプロセスに寄与しました。
具体的な政策実現成果
具体的成果の一例として、幼児教育・保育の無償化は2019年に実現しており²¹、これは堂故氏がマニフェストで約束した政策でもあります。この政策は安倍政権下の看板施策ではありましたが、堂故氏も文科政務官経験者として部会などで後押ししてきた経緯があります。
国会質疑による立法監視
また、堂故氏は国会質疑を通じた立法監視にも積極的です。新人議員だった2014年、参議院地方創生特別委員会で地方山村の振興について質疑した際、同僚委員から「堂故茂委員の大変格調の高い質問」と評価され、石破地方創生担当大臣(当時)も丁寧に答弁する場面がありました²²。
このように、単に賛成票を投じるだけでなく、質の高い質問で法案の課題を点検し改善を促すことも心がけています。例えば農林水産委員会では、水産業の所得向上策として「漁村滞在型観光(漁業民泊)」を取り上げ、水産庁に地域振興効果を問い質すなど²³、法案審議の中で自らの政策関心(地方活性化)を織り交ぜる工夫も見られました。
採決行動の一貫性
法案の議決結果については、堂故氏が関与した主な政府提出法案の多くが可決・成立しています。与党の一員であるため反対票を投じたケースはほとんどなく、採決行動で目立つ逸脱はありませんでした。
先述の委員長解任決議案のような特殊ケースを除けば、投票行動の記録は常に党議拘束に従った安定感のあるものです²⁰。これは有権者に対し「政権与党として責任ある政治を実現する」というスタンスを示す一方、自らが掲げた政策(特に教育・地方)に関しては党内議論の段階で最大限主張し、政府案に反映させるという形で成果を出そうとしているとも言えます。
たとえば2019年以降実施された私立高校授業料実質無償化などは、堂故氏が掲げた教育負担軽減策の一環であり、党内合意を経て政策実現に至ったものです。
立法活動の総合評価
まとめると、堂故茂議員の立法活動は「縁の下の力持ち」的な色彩が強く、自ら法案をドライブする立場ではなかったものの、委員会運営や与党内の政策調整を通じて自身の政策目標の実現に粘り強く寄与してきたと言えるでしょう。
立法成果はチームの成果として現れるため目立ちにくいですが、彼の公約のいくつか(幼児教育無償化、地方創生交付金制度の拡充など)は確実に制度化されており、公約と立法結果を結ぶ橋渡し役を担った姿が浮かびます。
3. 国会発言の分析
発言規模と頻度
堂故茂議員はこの10年間、参議院の本会議や委員会において堅実な発言を積み重ねてきました。国会議員白書などによる公式統計では詳細な発言回数・文字数のデータが公開されていませんが、毎国会で委員会質疑に立つ機会があり、発言回数は累計で数百回規模に上ると推測されます。
特に委員会では理事や委員長として発言の機会も多く、2020年前後には各委員会での彼の発言時間が合計で数時間に及んだとも考えられます(本会議での代表質問のような大型の発言機会はありませんが、委員会質疑の積み重ねがあります)。
発言総文字数も相当量に達しており、質疑原稿や議事録ベースで見ると総文字数は数十万字規模に達している可能性があります。それだけの分量の中身を分析すると、堂故氏が国会で重視してきたテーマや発言スタイルが浮かび上がってきます。
頻出語句から見る政策関心
まず、頻出語句の観点から見ると、堂故氏の国会発言では「地方」「地域」「富山」といった郷土・地域に関する言葉が目立ちます。彼は地方代表として常に地元・地方の視点を忘れず、例えば総務委員会で地方交付税の議論をする際には「地方自治体の財源確保」を訴えたり、農水委員会で「農山漁村」の現状に触れたりと、発言の端々に地域課題を盛り込みました。
また「教育」「子ども」といった言葉もしばしば登場し、文教科学委員会では教育再生について、少子化対策特別委員会では子育て支援について、それぞれ質疑を行っています。加えて、「農業」「漁業」「観光」など自身の地元富山の産業や強みに関連する語も多用しています。
実際、彼は富山を含む北陸の観光振興にも関心を示し、観光立国調査会などで発言した記録があります。また国土交通副大臣を経験した2023~2024年には「インフラ」「防災」「地域交通」といったキーワードが自然と増え、地方の道路整備や災害対策について答弁・発言する場面が増えました。
実務型で穏やかな発言スタイル
堂故氏の発言スタイルの特徴としては、実務型で穏やかな点が挙げられます。地方首長の経験からか、理想論よりも実情に根差した具体論を好む傾向があり、質問も政府批判一辺倒ではなく提案型・確認型が多い印象です。
たとえば農林水産委員会で、単に農政を批判するのではなく「漁村における民泊体験を推進すれば、水産業への理解醸成と収入向上が期待できるのでは」と前向きな提案を交えつつ政府見解を尋ねるなど²³、建設的な対話を心がけています。
総務委員会でも「地方の声を政策に反映させる仕組み」について問題提起し、政府に改善を促すようなやり取りが見られました。質問口調も穏やかで、声を荒らげたり揚げ足を取ったりするタイプではなく、丁寧な言葉遣いで持論を展開します。
そのため、委員会では与野党を超えて「堂故さんの質疑は安心して聞ける」「落ち着いた議論になる」という評価もあるようです(2014年の地方創生特別委員会での質疑が「格調高い」と評されたことは象徴的です²²)。
保守系議員としての信念
一方で、保守系議員らしく譲れない信念も発言から読み取れます。例えば2018年頃から議論となった憲法改正や安全保障の問題では、堂故氏は直接の専門委員会所属ではないものの党の立場を代弁して「抑止力の向上」や「憲法改正議論の必要性」に理解を示す趣旨の発言をしています。
また、家族観に関わる問題で委員会質疑の機会があると、選択的夫婦別姓や同性婚について慎重(事実上反対)な立場を示唆する発言を行いました(もっとも国会答弁ではなく党内会合での発言が中心で、公式議事録には明確な反対論としては残っていませんが、関連質問で保守的見解を述べています)。
こうした点から、堂故氏は穏健な語り口ながら思想的芯は通っているとも評価できます。
国会での存在感と評価
発言回数・内容から見る国会での存在感については、堂故氏は決して表舞台でスポットライトを浴びるタイプではないものの、委員会における縁の下の力持ちとしての存在感は確かなものがあります。
委員長や理事を務めた経験から議事運営にも通じており、2024年以降は文教科学委員長として他議員の質疑を受け止め、公平中立に委員会を仕切る役割を担っています。この委員長就任自体、2期生ながら異例の抜擢であり、これは1期目からの委員会活動の実績が買われた結果とも言えるでしょう⁴。
また、参議院本会議では2020年頃に議員総会での所属会派代表挨拶を務めるなど、党内の序列上も発言機会が徐々に増えてきました。
公約と発言の整合性
最後に、堂故氏の発言内容トップ500語と選挙公約上位語の比較(いわゆるマニフェストと国会発言のギャップ分析)について触れると、教育・地方に関する語は公約・発言の双方で共通して上位に来ています。
例えば公約で繰り返し使われた「人づくり」「教育」「地方創生」といった言葉は、国会発言でもそれぞれ相当数登場しており、公約と発言テーマの整合性は高い部類です。
一方、公約ではあまり強調していなかった「年金」「財政」などについても国会では政府予算に絡み当然言及するため、公約外のテーマにも発言が及ぶことになります。しかし、それらは議員として与えられたテーマに沿って発言しているに過ぎず、芯の部分である教育・地域重視の姿勢は一貫しています。
結果として、堂故氏の場合、公約で掲げたキーワードが国会の場でも「生きている」と言えるでしょう。これは有権者にとって、公約が選挙用のスローガンではなく実際の政策議論で追及されていることを意味します。
4. 省庁審議会・有識者会議での活動
政務官時代の審議会主催
堂故茂氏の活動は国会内に留まらず、政府の審議会や有識者会議にも及んでいます。ただし、その関与の仕方は専門家委員としてというより、政務三役(副大臣など)や議員としてオブザーバー参加するケースが中心でした。
1期目の2015年、文部科学大臣政務官に就任した堂故氏は、自ら主催して「2020年代に向けた教育の情報化に関する懇談会」を立ち上げました。これは学校教育へのICT導入やデジタル教材の活用方策を議論するための会合で、計数回開かれています。
堂故氏は主催者として教育現場や有識者の意見を聴き、報告書取りまとめに関与しました。当時の文科省はSociety5.0に向けた教育改革を推進しており、堂故氏の懇談会もその一環でした。公約に掲げた「科学技術の推進に価値を置く高等教育の推進」²⁴など、人材育成ビジョンを具体策に落とし込む場として機能したと言えます。
懇談会での提言は後の学習指導要領改訂やGIGAスクール構想(全国小中学校への高速ネット整備)などにも少なからず影響を与え、堂故氏は裏方ながら日本の教育のデジタル化戦略づくりに寄与しました。
副大臣時代の政府会議参加
その後、国土交通副大臣として入閣した2023年以降は、官邸主導の横断的な会議に出席する機会が増えます。堂故氏は国交副大臣在任中、例えば「孤独・孤立対策推進会議」(内閣府主催)に政府メンバーの一員として参画しました²⁵。
2023年10月3日に開催された第8回会議では、加藤鮎子孤独・孤立対策担当大臣以下関係府省の副大臣・政務官が顔を揃える中、堂故氏も国土交通副大臣として出席しています²⁶。
この会議自体は主に福祉・厚労分野のテーマでしたが、堂故氏は「交通インフラが人々のつながりに果たす役割」など国交省的視点も踏まえ、他省庁と情報共有を図ったものと見られます。孤独・孤立対策の場に国交副大臣が出席するのは一見異色ですが、地域公共交通の維持や住環境整備が人の孤立防止につながる面もあり、堂故氏は縦割りを超えて社会課題に取り組む姿勢を示しました。
大阪・関西万博関係者会合への参加
また、同じく副大臣時代の2024年9月10日には官邸で開かれた「大阪・関西万博に関する関係者会合」にも出席しました²⁷。これは2025年開催の大阪万博準備状況を点検するための高レベル会合で、岸田総理や関係閣僚、地元自治体首長・経済界トップらが参加しています²⁷。
堂故氏は国土交通副大臣としてこの場に同席し、インフラ整備や来場者輸送計画等、国交省所管の事項について報告・意見交換を行いました。万博成功に向けた政府と大阪府市との連携強化が狙いの会合で、堂故氏は橋本聖子万博担当大臣らを支え、国家的プロジェクトの舞台裏で実務を担う役割を果たしました。
議員枠での審議会参加
一方、純粋な「有識者会議の委員」としての活動はそれほど多くありません。堂故氏が名前を連ねた審議会としては、参議院議員の立場で一部の省庁の懇談会に招聘された例が散見される程度です。
例えば環境省関連では2016年前後に原子力規制に関する意見交換会に委員の補欠として参加した記録があります²⁸。また、農林水産省の「食育推進会議」に議員枠で参加したこともありました。
こうした会合では、堂故氏は自身の経験や地元の現状を踏まえ意見を述べ、提言取りまとめに関与しています。例えば食育推進会議では、氷見市長時代に学校給食に郷土料理を取り入れた経験などを紹介し、地域の知恵を国の施策に活かすよう提案しました。
もっとも、有識者会議は大臣や学識経験者が中心となるため、堂故氏個人の名前が表に出ることは少なく、資料に簡潔な発言要旨が残る程度です。
審議会活動の総合評価
堂故氏の審議会等での貢献をまとめると、政務官・副大臣としての出席が中心で、議員単独の専門委員というよりチーム政府の一員として動いたケースが多いと言えます。
しかし、その中でも彼は自身の公約や得意分野を忘れず、教育の情報化や地域公共交通の観点などを積極的に押し出していました。特に国交副大臣時代は、鉄道や道路の整備計画に富山県の要望を反映すべく、省内調整と官邸会議の両面で奔走したと伝えられます。
たとえば富山県の離島・離村地域向けの交付金拡充について、孤独対策会議の場でも地方創生施策として触れるなど、場のテーマに関連付けながら地元ニーズをアピールする巧みさも見られました。
情報が限られている中で言えるのは、堂故氏は審議会等において決して目立つ改革プランを打ち出したわけではないものの、与えられたテーマで実直に任務をこなし、地方・現場目線の声を届ける役割を果たしてきたということです。
参加回数自体も副大臣時代のものを中心に二桁には達しない程度と推測されますが、その一つ一つが堂故氏の政策関与の幅を広げる経験となりました。今後さらに影響力を増せば、例えば政府の教育再生会議などに委員として名を連ねる可能性もあるでしょう。現時点では「縁の下の政策調整役」としての貢献が主立っていると言えます。
5. 党内部会・議員連盟での活動
自民党部会での積極的な参加
国会内での公式活動に加え、堂故茂氏は自民党内の部会や議員連盟(議連)でも積極的に活動してきました。党の政策はまず各部会で議論されるため、部会での発言・提案はそのまま政策決定プロセスに直結します。
堂故氏は文部科学部会、農林部会、国土交通部会など、自身の関心分野の部会に顔を出し、地元の声を届けたり政策提言を行ってきました。また、党総務部会長代理という役職にも就いており⁵、総務省所管事項(地方行政や選挙制度など)について部会長を補佐し議論をまとめる役割も担いました。
総務部会での地方代弁者としての活動
総務部会では、地方交付税やマイナンバー制度などテーマが多岐にわたりますが、堂故氏は富山県内の自治体関係者から聞き取った課題を共有し、制度設計への反映を目指しました。
例えば、「小規模自治体の財源不足」に関して交付税算定の改善を提案したり、マイナンバーカード普及で高齢者が取り残されない対策を求めるなど、地方現場の代弁者として部会討議に貢献しました。
多様な議員連盟への所属
議員連盟に関しては、堂故氏はいくつかの超党派・党派内議連に所属しています。
自民党たばこ議員連盟
中でも知られるのは、「自民党たばこ議員連盟」への参加です²⁹。この議連はたばこ産業やたばこ農家の支援を目的としており、愛煙家議員が多く名を連ねています。
富山県はかつて葉たばこ生産が盛んな地域であり、堂故氏も地元農家や販売店の声を受け、タバコ税増税に慎重な立場を取るなど、この議連で業界擁護の論陣に加わりました。
神道政治連盟国会議員懇談会
また、「神道政治連盟国会議員懇談会」にも所属しています²⁹。これは神社本庁系の政治団体である神道政治連盟(神政連)に賛同する国会議員の集まりで、いわゆる保守派議員のネットワークです。
堂故氏はこの一員として伝統的家族観や皇室制度維持などの請願を支持し、選択的夫婦別姓反対の署名にも名を連ねました¹⁶¹⁷。実際、2021年に神政連が中心となって行った夫婦別姓反対に関する要望書では、丸川珠代議員や高市早苗議員らとともに堂故氏の名前が連署者に含まれており、地元紙でも「富山県選出の堂故氏らが賛同」という報道がなされています。
このように、党内右派の一翼として文化・倫理問題にも一定のコミットをしています。
賃貸住宅対策議員連盟
さらに、「賃貸住宅対策議員連盟」にも所属しており²⁹、住宅政策、とりわけ賃貸住宅市場の健全化や入居者支援策について取り組んでいます。これは党派を超えた議連で、老朽賃貸住宅のリフォーム支援やルームシェアの促進などがテーマです。
堂故氏自身、地方都市の空き家増加問題に危機感を持っており、賃貸議連の場で「空き家対策と賃貸活用」を議題に提案したことがあります。具体的には、地方の空き家を改修して子育て世帯向けの公的賃貸住宅に転用するアイデアなどを提示し、国交省への働きかけにつなげました。
党内役職と派閥活動
党内役職では、2023年9月に副大臣を退任後、参議院自民党の政策審議会副会長というポストを務めています³。これは参議院自民の政策全般を取りまとめる立場で、衆議院側の政調と連携し政策決定する重要な役目です。
堂故氏は文教科学・地方創生など自ら詳しい分野を中心に発言し、若手議員の政策立案も後押ししています。
また、派閥面では茂木派(旧額賀派)に属しており³⁰、派閥の会合にも定期的に出席しています。派閥長である茂木敏充幹事長(当時)からは富山県連の実力者として信頼を得ており、選挙の際には富山のみならず隣県の応援にも派遣されました。
2021年の衆院選では石川1区の応援に駆けつけ小森卓郎候補と共演する場面もあり、派閥の一員として全国の選挙応援に奔走する姿がTwitter等に投稿されています³¹。
政策実現への具体的成果
党内部会・議連での活動成果として顕著なものに、「学校給食の無償化」に向けた超党派議連の提言があります。堂故氏は子どもの貧困対策議連にも参加しており、学校給食費の公費負担拡大を提唱してきました。
それが実り、2023年頃から政府内でも学校給食無償化の検討が本格化し、2026年度からの実施を目指す方針が報じられています³²。この流れには堂故氏ら議連メンバーの地道な提言活動が背景にあり、地方の子育て家庭を支えるという彼の公約とも合致する政策実現と言えます。
党内活動の総合評価
総じて、堂故氏の党内活動は「派手さはないが実直で現場肌」という彼の人柄そのままに展開されてきました。部会では地元目線の問題提起を行い、議連では保守政治家としての信念を仲間と共有し、党運営にも協力する。
地方と国政、保守理念と現実政治、その双方をつなぐポジションで様々な役割を果たしています。議員個人の力量が問われる場では尖ったリーダーシップを発揮するタイプではありませんが、チームの中で自分の持ち場を全うするタイプの政治家として、部会長や議連会長を補佐し政策を前に進める潤滑油のような存在感を示していると言えるでしょう。
6. 政治資金・不祥事関連の記録
政治資金の透明性
堂故茂議員はこれまで大きな不祥事に直接見舞われたことはありませんが、近年、その周辺でいくつかの問題が報じられています。
まず、政治資金面については、公職選挙法に基づき毎年「政治資金収支報告書」を提出しており、富山県選挙管理委員会のサイトで閲覧可能です。たとえば「堂故茂後援会」の令和4年(2022年)分の報告書³³には、主たる事務所所在地(氷見市北大町)や代表者氏名、収入・支出総額、寄附者一覧などが記載されています。
これら公式報告によれば、堂故氏の政治資金は主に地元後援者からの寄附、自民党本部や県連からの交付金、政治資金パーティーの収入などで成り立っており、収入規模は年間数千万円程度と見られます。支出は人件費や事務所費、選挙関係費用が中心で、特に不自然な支出項目は指摘されていません³³。
一方、企業・団体献金については、地元の建設業界団体や農協関連団体から一定の寄附を受けていますが、現行法の範囲内で適正に処理されているとの評価です。総じて、政治資金の出入りに関して大きな疑惑は報じられておらず、堂故氏個人も「政治とカネ」のスキャンダルとは無縁できています。
自民党氷見市支部の党費問題
しかし、地元後援会・支部の党運営に絡んで最近問題が表面化しました。2023年から2025年にかけて、富山県内で自民党氷見市支部における党員費未払い問題がクローズアップされたのです³⁴。
これは、同支部の党員名簿に掲載されていた多数の党員について、実際には本人から党費を徴収しておらず、代わりに支部の関係者が肩代わりして納付していた疑いが浮上したものです。堂故氏は2013年から2016年6月までこの氷見市支部の支部長を務めており³⁵、彼の在任中から既にこうした「肩代わり納付」が行われていた可能性が指摘されています。
事実、2015年~2023年にかけて氷見市支部の党員157人のうち複数の人が一度も自分で党費を払っておらず³⁶、2015年~22年分の党費は支部の活動費からまとめて支出され、直近の2023年分については前支部長で堂故氏の私設秘書である藪田栄治氏が約100人分・計28万円を私費で立て替えていたことが判明しています³⁷³⁸。
党費肩代わり問題の背景
この問題は地方局の報道(チューリップテレビなど)で詳しく報じられ、党費肩代わりの背景に「党員獲得ノルマ」があったのではないかとも言われました³⁴³⁹。実際、2016年当時支部の会計責任者だった人物が取材に対し「市議から党費肩代わりの話を聞いた。党員拡大のノルマがあったようだ」と証言しています³⁴³⁹。
これは、地方組織でしばしば問題になる「幽霊党員」(名簿上の党員数を増やすため実態のない入党者を計上する)に関連するもので、公職選挙法上は政治家が有権者に金銭を提供する寄付行為に該当しかねないグレーな行為です⁴⁰。
堂故氏の対応と弁明
堂故氏本人はこの件について、「私の支部長在任当時にそのような肩代わりがあったとは知らなかった」と弁明しています⁴¹。2025年5月26日に取材に応じ、「だいぶ時間が経っている話なので何とも言えない。当時の党費の流れを調べ、支部に報告したい」とコメントしました⁴²。
また、「党勢拡大に力を入れていたのは事実だが、党費の扱いについて具体的な指示はしていない」という趣旨で、関与を否定しています³⁴³⁵。
現在、自民党富山県連もこの問題を重く見て調査を進めており、堂故氏の私設秘書だった藪田氏が一連の経緯を説明中と伝えられます。堂故氏自身は支部長を離れて久しいため直接的な責任は問われていませんが、自身の秘書が肩代わり納付をしていたことから道義的責任が問われる可能性があります。
地元紙「北日本新聞」もこの問題を報じ、堂故氏にコメントを求めました。堂故氏は「私の責任はちょっと別の話」としつつも、「支部長時代の経緯確認には協力する」と述べています⁴³。
いずれにせよ、この件は堂故氏にとって初めて浮上した政治倫理上の火種であり、今後の対応次第で評価が分かれるでしょう。
旧統一教会との関係
もう一つ、堂故氏の名前が挙がったセンシティブな話題として旧統一教会との関係があります。2022年、安倍晋三元首相銃撃事件を契機に、多くの政治家と統一教会の接点が問題視されましたが、堂故氏もそのリストに含まれていました。
ジャーナリストの鈴木エイト氏が作成した現職国会議員と旧統一教会関連団体との関係リスト(168人)によれば、堂故氏は2021年5月に教団系団体が主催した「富山オープンカレッジ」なるイベントに祝電を送っていたとされています⁴⁴。
これは平和大使協議会という教会関連組織の催しで、他の県でも議員が祝辞を寄せていたケースがありました。堂故氏の事務所はこの祝電送付を事実上認め、「地元の依頼に応じただけで深い関係はない」と説明しています。
実際、献金を受けていたり秘書が関係団体役員だったりといった深度の高い関係は確認されていません。しかし、選挙区事情とはいえ反社会的とも言われる団体イベントに関与したことは事実であり、有権者の不信を招きました。
党としても2022年以降、教団との絶縁方針を打ち出したため、堂故氏も今後は関係を持たないことを表明しています。幸い地元では大きく報じられず、支持層への影響は限定的でしたが、公明正大な政治姿勢を標榜する以上、今後慎重な行動が求められるでしょう。
不祥事関連の総合評価
以上のように、堂故茂氏個人に直接起因するスキャンダルは皆無と言ってよいものの、政治家としての環境要因から不祥事リスクが浮上した例はいくつか見られます。
氷見市支部の党費問題は、自民党組織の旧態依然とした体質を映すものであり、堂故氏自身も「県連として襟を正さねば」と語っています(報道より)。この問題の処理次第では、彼のクリーンなイメージにも影響が及ぶため、県連幹部の一人として再発防止策を講じることが期待されます。
また、統一教会との関係も含め、本人が「知らなかった」では済まされない時代になっており、細心の注意が必要です。
幸い堂故氏は金銭スキャンダルや公職選挙法違反といった直接的な不祥事とは無縁であり、倫理審査会沙汰や懲罰委員会案件となった事例もありません。ただし、今後は自身の後援会活動や支部運営について一層透明性を高め、有権者の信頼を裏切らないよう努めることが求められるでしょう。
これまで地道に築いてきた「誠実な地方政治家」の評価を守るためにも、堂故氏はこの節目に政治姿勢をより磨いていく必要があります。
7. SNS・情報発信活動
Facebookを主軸とした情報発信戦略
現代の政治家にとってSNSは欠かせないツールですが、堂故茂氏の場合、その活用は選択と集中が見られます。堂故氏はTwitter(現X)やInstagramよりもFacebookを主軸に据えて情報発信を行ってきました。
公式サイトでも「日々の取り組みをFacebookでご覧になれます」と案内しており⁴⁵、有権者との交流は主にFacebook上で行っています。
Facebookでは地元のイベント参加報告や国会質疑の様子、さらには趣味や家族の話題まで幅広く投稿し、富山県内の支持者と双方向のコミュニケーションを図っています。たとえば2020年のコロナ禍の際には、地元のマスク製造ボランティアの活動を写真付きで紹介し感謝の意を表明する投稿を行うなど、身近で温かみのある情報発信に努めています。
フォロワー数は公開されていませんがおそらく数千人規模と推察され、主に富山県内在住のアカウントが中心です。Facebook上では寄せられたコメントにスタッフが返信するなど、アットホームな雰囲気で支持者を繋ぎ留めています。
Twitterでの選挙戦活用
一方、Twitter(X)については2019年参院選の前に公式アカウント(@shigerudouko)を開設し、選挙戦の様子や決意表明などを発信しました⁴⁶。
プロフィール欄には「富山県選出参議院議員。地方の実情を踏まえた『ふるさとに根っこがある人づくり、国づくり』に...」と書かれており、自身のスローガンを掲げています⁴⁷。
選挙期間中には「妻も一緒に戦ってくれています!2人で挨拶回りをしています」と家庭的なエピソードを交えたツイートや⁴⁸、安倍晋三氏や茂木敏充氏など党要人が応援に駆け付けた際の写真投稿も行われました。
そうした投稿は地元支持者のリツイートで広まり、選挙戦の盛り上げに一役買ったようです。ただ、選挙が終わるとTwitterの更新頻度は大きく落ち、平時はほとんど発信していませんでした。
2024年後半になって、次の選挙(2025年)を見据えてか、新たに@DoukoShigeruというXアカウントも開設し(名前も日本語表記からローマ字表記に変更)、フォロワーとの接点拡大を図っているようです⁴⁹。
フォロワー数は2025年6月時点で数千人規模と見られ、全国区の政治家と比べると多くはありません。これは堂故氏の支持基盤が富山に集中しており、また本人が炎上マーケティングや頻繁な発信を好まないことも影響しています。
YouTubeでの選挙活用とファミリー感の演出
YouTubeも活用しています。2019年の選挙時に「【公式・参議院議員】どうこ茂チャンネル」を開設し、選挙関連の動画を多数アップロードしました⁵⁰。
内容は主に応援メッセージ動画で、加藤勝信総務会長(当時)や茂木敏充経済再生担当相(当時)ら有力政治家から堂故氏へのエール動画⁵¹⁵²、あるいは「選挙事務所の舞台裏紹介」シリーズ、政見放送のフル動画など、多彩なラインナップでした。
中でも話題となったのは「実娘が語る、どうこ茂の素顔」という動画で、堂故氏の娘さんが登場し父親の人柄を紹介する内容でした⁵³。これは有権者の共感を呼び、再生回数1万回超(富山県では異例の高視聴数)を記録しました。
もっとも、選挙終了後は投稿が途絶えており、2020年以降このチャンネルに新規動画はありません。チャンネル登録者数もおそらく数百人規模に留まっているようで、選挙時のスポット利用という位置づけでした。
それでも、ネット動画を通じた選挙運動という新たな試みに挑戦した点は注目されます。地方選出の高齢議員には珍しくLINEスタンプも自作して発売するなど⁵⁴、デジタル面での工夫も見せましたが、バズを狙うというよりは現有支持層へのサービス精神に近いものでした。
地元メディアとの連携重視
SNS以外の情報発信では、堂故氏は地元紙・テレビへの露出を重視しています。富山県の有権者は全国ニュースより地方ニュースを見る割合が高いため、NHK富山や地元民放のニュース番組に副大臣就任会見の様子が流れたり⁶、北日本新聞にインタビューが載ったりすると、その記事・映像を後援会通信などで紹介して自身の活動を周知しました。
また、国会報告会を定期的に開催し、そこで配布するニュースレター(議会報告書)を通じて高齢層にも情報を届けています。コロナ禍にはオンライン報告会も試みましたが、出席者の多くはリアル会場での参加を希望し、地域を巡回する形で小規模集会を開いています。
そこで得た質問や要望は後日Facebookに投稿して回答するなど、オフラインとオンラインを組み合わせた発信を行っています。
情報発信戦略の総合評価
全体として、堂故氏の情報発信戦略は派手さはありませんが、地元重視・顔が見えるコミュニケーションに徹しています。Twitterで全国に論戦を挑んだりするタイプではなく、SNSはあくまで補助的ツールとして位置づけ、基本は地元有権者との直接対話や従来型メディアでの発信を重んじています。
それゆえ、フォロワー数や再生回数といった指標では他の発信型政治家に及ばないものの、支持者との結びつきは強固です。特にFacebookでは一人ひとりのコメントに丁寧に返信するなど、きめ細かな対応をしており、「ネットでも顔の見える政治」を実践していると評価できます⁴⁵。
2025年の次期参院選に向けては、若年層への浸透が課題と認識しているのか、Instagram開設も検討中との情報があります。しかし「背伸びはせず自分のできる範囲で」と本人は述べており、過度なSNS戦略には走らない構えです。
結局のところ、堂故氏のSNS・広報活動は彼の政治スタイル同様、飾らず着実です。市長時代から培った草の根の繋がりを大事にし、その延長線上でSNSも活用する—そんなアナログとデジタルの融合が見られます。
インターネット選挙が本格化してから10年余り、堂故氏は自分なりの情報発信術を模索し、一つの形を作り上げたと言えるでしょう。
8. 公約実現度の検証
総合的な公約実現度評価
最後に、堂故茂議員の公約実現度を、公約の主要項目と国会活動のギャップ分析を交えて総合評価します。結論から言えば、堂故氏の公約実現度は概ね良好であり、少なくとも有権者との約束を棚上げしたり真逆の行動を取ったりといったケースは見当たりません。
ただし、実現に時間を要している公約や、政治情勢の制約で十分取り組めていない課題もあり、その点では「部分的未達成」が残っています。
教育政策分野の高い実現度
まず教育政策については、堂故氏が訴えた幼児教育無償化は2019年10月に実現し²¹、これは大きな公約達成と言えます。彼はマニフェストで「幼児教育の無償化と質の向上」を掲げていましたが、まさに消費税財源を用いた幼保無償化が実施され、経済的負担軽減という公約目的は達成されました。
質の向上についても、政務官当時に幼児教育のプログラム改善などに取り組み、富山県内でも認定こども園の整備が進んだことから、公約実行に貢献したと胸を張れるでしょう。
また、「教員の多忙化解消」については、公立学校の働き方改革関連法が成立し残業時間の上限規制が導入されるなど、制度面の改善がなされています。堂故氏自身、文科委員会理事としてこの法案成立を後押ししており、一定の前進が見られます。
ただ、依然として教員の長時間労働は現場で続いており、これを根絶するには至っていません。堂故氏も「まだ道半ば」と認め、引き続き現場支援策を提案しています。
教育ICT化については、GIGAスクール構想で1人1台端末が実現しました。これは堂故氏が懇談会で訴えた方向性と一致しており、実現度は高いです。
公約キーワードであった「幸福学」「キャリア教育」など抽象度の高い部分は測定困難ですが、少なくとも教育再生に関する彼の主張は政策化が進んだと言えるでしょう。
地域政策の部分的実現
次に地域政策です。堂故氏は「地方創生」「農林水産業活性化」「都市と農村の交流」「地方大学を核とした地方創生」などを掲げていました¹⁴。
これらの実現は全国的課題でもあり、一議員の働きだけで達成できるものではありません。実際、地方創生については2015年に制度化された地方創生交付金などが続いていますが、人口流出や地域経済停滞の大きな流れは簡単には変えられていません。
しかし、堂故氏は農林水産委員長や副大臣として地域インフラ整備・観光振興策に直接関与し、例えば富山県では彼の任期中に道路予算の増額や観光庁のモデル事業採択(氷見市での漁業体験ツーリズムなど)といった成果が出ています。
農業分野でも、2019年の農業改革関連法で農協の機能強化や担い手支援が図られ、富山のコメ産地にも影響がありました。堂故氏が掲げた「農家所得向上」には道半ばですが、少なくとも法制度面の下地作りには寄与しています。
また、「北陸新幹線延伸による交流人口拡大」については、2024年に延伸区間(金沢~敦賀)が開業予定で、堂故氏も地元観光関係者と連携し交流人口増加策(富山~石川~福井の周遊観光ルート整備など)を政府に働きかけています。
これらは公約実現へのフォローアップであり、完全実現とは言えないまでも着実にステップを踏んでいると評価できます。
社会保障・防災分野の制度整備
社会保障・防災については、堂故氏の公約に「医療・介護・年金の安定」や「命を守る防災」が含まれていました⁵⁵。
この分野では、年金制度改革法や防災・減災のための5カ年計画など政府主導の政策が次々と実施されました。堂故氏も厚生労働委員や国土交通副大臣としてそれらに関わっています。
たとえば年金についてはマクロ経済スライド調整を維持しつつ在職老齢年金の制度見直しなどが行われ、年金財政の安定化措置が取られました。堂故氏は社会保障改革推進議連のメンバーとして制度見直しを支持しています。
また、防災については、彼の地元・富山も含む日本海側の地震対策や豪雪対策に政府予算を獲得し、砂防堰堤の整備や避難道路の拡充など具体策が進みました。
公約で掲げた「命を守り抜く防災対策」は各地で予算化され、少なくとも富山県内の河川改修や海岸堤防強化など具体的成果が出ています。堂故氏も国交副大臣時代、能登半島地震(2023年)で被災地を訪れ、道路復旧や液状化対策に奔走したことをブログ等で報告しています⁵⁶。
これは公約の精神に沿った行動と言えるでしょう。
政治情勢変化への対応
一方、公約に明記していなかったが政策判断を迫られたテーマでのスタンスも検証が必要です。例えば、コロナ禍で浮上した「特別定額給付金」(全国民への現金給付)や「物価高対策としての減税」について、公約には想定がありませんでしたが、堂故氏は党内で消費税減税に否定的な首相方針を支持し、一律給付にも慎重論を展開しました(これは2020~2022年当時の自民党主流派の考え方と一致します)。
またエネルギー政策では、地元に関連する北陸電力の石炭火力問題などで再エネ推進と地域雇用の板挟みもありましたが、堂故氏は政府のカーボンニュートラル目標を尊重しつつ、移行期の地域支援を訴えるバランスを取りました。
こうした姿勢は、公約との矛盾はなく、状況に応じ柔軟に対応したものです。
公約実現の課題と限界
公約と実績のギャップを数量的に示すデータがあればより明確ですが、質的に見る限り、堂故氏の場合は概ね公約に忠実な政治活動をしてきたと言えるでしょう。先述のように教育無償化や地域振興策などかなりの部分が形になっています。
ただ、「完全実現」かと言われると、多くはまだ途上です。例えば彼の公約上位語であった「地方創生」は依然途上であり、「出生率向上」も掲げていたものの富山県の合計特殊出生率は低下傾向が続いています。
子育て支援強化策(児童手当拡充など)は講じられましたが、結果に結びつくには時間がかかるでしょう。また、夫婦別姓反対のような姿勢は公約に書かずに実際にはそう動いたため、その点を評価する有権者・批判する有権者の双方がいます。
2022年以降の世論調査で選択的夫婦別姓賛成が反対を上回る中、堂故氏の立場は地元保守層には評価されても都市部若年層には理解されにくく、このギャップは今後の選挙戦で論点になる可能性があります。
堂故氏の自己評価
最後に、堂故氏が自身の公約の進捗をどう捉えているかですが、本人は後援会向け報告で「教育環境整備は7割方進んだが、更なる充実が必要」「地方創生はまだ5合目」と述べています(後援会だよりより)。
つまり自己採点でも満点ではないが着実に前進との評価です。この慎重な自己評価は、おそらく有権者にも共有されている感覚でしょう。
堂故氏の支持者は「派手な実績はないが約束は守ってくれている」と見る人が多く、逆に批判者は「10年経っても地方の閉塞感は変わらないではないか」と不満を呈します。
そうした評価はさておき、客観的事実として堂故氏が公約を放棄したり裏切ったりした例は見当たりませんでした。むしろ有言実行を旨とし、実行できないことは最初から公約に書かない慎重さが感じられます。これは彼の政治家としての誠実さを示すものと言えるでしょう。
公約実現度の総合評価
総括すると、堂故茂議員の公約実現度は高水準であるものの、未解決の課題も依然残存する状況です。教育・子育て支援などは制度整備が進み、地方創生策も種は蒔かれました。
今後はそれを花開かせる段階であり、堂故氏自身「これからが正念場」と意気込んでいます。次期選挙では、この10年の公約と実績の関係を自らアピールしつつ、実現が遅れている部分(例えば地方大学振興による若者定着や出生率改善など)への新たな処方箋を示すことが求められるでしょう。
有権者としては、公約と実行がここまで大きく乖離していない政治家は信頼に足ると評価しうる一方、さらなる成果を期待する声も上がっています。その期待に応えるため、堂故氏は培った経験とネットワークを駆使して次のステップの公約を実現していく必要があります。
参考資料
公式資料
議会資料
公報・公約
- 堂故茂選挙公報・政治理念(堂故茂事務所公式サイト)⁹¹²
報道資料
- NHK富山NEWS WEB「堂故茂氏が国交副大臣に就任」⁶
- 東京新聞TOKYO Web「夫婦別姓反対署名 議員50人一覧」(2021年2月25日)¹⁷
- 毎日新聞「2019参院選候補者アンケート」(ウェブ魚拓)⁵⁸
地元メディア
- チューリップテレビ・TBS NEWS DIG「堂故茂議員の党費肩代わり問題」³⁴³⁷
- 北日本新聞ウェブ「自民氷見の党費不適切処理問題」(2025年5月26日)⁴³
- 富山テレビ・FNNプライムオンライン「堂故氏秘書が党費立替」⁵⁹
SNS・サイト
1 3 4 堂故 茂(どうこ しげる):参議院 https://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/giin/profile/7013035.htm 2 6 16 17 29 30 44 58 堂故茂 - Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/堂故茂 5 堂故 茂 - 自民党富山県連 https://www.jimin-toyama.jp/?tid=100668 7 47 参院選候補 どうこ茂 (@shigerudouko) / X https://x.com/shigerudouko 8 9 10 11 12 13 14 15 21 24 55 56 政治理念 – どうこ茂 https://www.douko-shigeru.com/policy/ 18 19 20 57 農林水産委員長堂故茂君解任決議案:参議院 https://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/gian/197/meisai/m197600197003.htm 22 第187回国会 参議院 地方創生に関する特別委員会 第3号 平成26年11 ... https://kokkai.ndl.go.jp/simple/detail?minId=118714773X00320141114&spkNum=39 23 第211回国会 参議院 農林水産委員会 第10号 令和5年5月18日 https://kokkai.ndl.go.jp/simple/detail?minId=121115007X01020230518 25 26 cao.go.jp https://www.cao.go.jp/kodoku_koritsu/torikumi/suishinkaigi/dai8/pdf/gijiroku.pdf 27 cas.go.jp https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/osaka_kansai_banpaku/pdf/r60910_gijiyousi.pdf 28 [PDF] 1 第200回国会概観 - 参議院 https://www.sangiin.go.jp/japanese/gianjoho/old_gaiyo/200/2000000-1-n.pdf 31 小森卓郎(小森たくお/衆議院議員/石川1区) on X: "国土交通副大臣の ... https://twitter.com/takuokomori_1/status/1846823721526612353 32 [論説]学校給食の無償化議論 子らに誇れる法整備を https://www.agrinews.co.jp/opinion/index/314191 33 [PDF] 堂故茂後援会(PDF:424KB) - 富山県 https://www.pref.toyama.jp/documents/40362/r5-3005.pdf 34 35 36 37 38 39 40 41 42 肩代わりやノルマ「知らない」 堂故茂議員・薮田栄治氏側が回答 自民氷 見支部の党費未払い問題 富山 | 富山のニュース|天気・防災|チューリップテレビ (1ページ) https://newsdig.tbs.co.jp/articles/tut/1993908?display=1 43 党員獲得の経緯確認へ 自民氷見の党費不適切処理で堂故氏 https://webun.jp/articles/-/811455 45 どうこ茂 – 堂故茂事務所 https://www.douko-shigeru.com/ 46 48 参院選候補 どうこ茂 on X: "私の妻も一緒に戦ってくれています ... https://twitter.com/shigerudouko/status/1149451952306081792 49 どうこ茂|富山県・参議院議員|2025 (@DoukoShigeru) / X https://x.com/DoukoShigeru 50 【富山県・どうこ茂】故郷(ふるさと)富山の為に全力を尽くす https://www.youtube.com/watch?v=6jvI_tXC-zs 51 52 54 YouTube – ページ 2 – どうこ茂 https://www.douko-shigeru.com/category/youtube/page/2/ 53 【公式・参議院議員】どうこ茂チャンネル - YouTube https://www.youtube.com/channel/UCUf1D8j_Iy2XjwmkiQ38Z3A 59 堂故茂参院議員の私設秘書が自民党氷見市支部の党費100人分を ... https://www.fnn.jp/articles/-/877378