かだ ゆきこ
嘉田由紀子議員の政治活動総覧(2015–2025) 概要
はじめに
嘉田由紀子氏(1950年5月18日生まれ)は、元滋賀県知事(2006年・2010年当選)で、2019年7月に参議院滋賀県選挙区から初当選した日本維新の会所属の国会議員である¹²。
熊谷女子高校、京都大学農学部・大学院博士課程(博士)を修了し、米ウィスコンシン大学大学院で修士を取得した学識者でもある³。滋賀県職員として琵琶湖博物館創設に関わり、京大教授や滋賀県知事(2006–2014年)を歴任。
知事時代には流域治水政策や教育・子育て支援に注力し、2014年に知事を勇退。その後は国政に転じ、2017年衆院選滋賀1区に無所属で出馬するも落選、2019年参院選で野党統一候補として現職を破り当選した²。
現在は維新の会に所属し、参院法務・予算・災害対策特別各委員会に所属する(2025年6月時点)⁴。本報告書では2015年1月から2025年6月までの活動実績を整理し、有権者がその政策姿勢と成果を総合的に評価できるよう解説する。
1. 選挙公報・マニフェスト分析
直近の選挙(2022年7月の滋賀県参院補選)では、嘉田氏は野党4党(立憲・国民・社民・共産)の統一候補として擁立され、選挙戦では「憲法改正(自衛隊明記)反対」「消費税増税反対」「社会保障の充実」「教育・子育て支援の強化」「農業・琵琶湖環境の保全」などを中心政策に据えた⁵⁶。
自身が提唱するキャッチフレーズ「『もったいない』のその先に!」には、無駄な公共事業費を教育・福祉・防災など人への投資に回すという理念が込められており、実際に「子育て支援や教育費無償化、不足する介護体制の整備、本当に必要なところに税金を使う」といった方針を訴えていた⁶。
演説では特に「子育てと防災・減災」の重要性を強調しており⁷、少子化対策や災害時の流域治水(琵琶湖における洪水対策)に強い関心を示した。また、経済分野では消費税率引上げに反対し、法人税や所得税を中心とした増税パッケージを訴える一方で、子育て支援の財源確保を図る方針だった⁵⁶。
主な掲げた政策課題をキーワードで整理すると、「子育て支援」「教育無償化」「防災・減災」「環境保全」「税制改革」「社会保障拡充」「女性活躍」などが挙げられ、県政時代から一貫する「環境と子育てを両立させる社会づくり」を全国に広げたいという姿勢が読み取れる⁸⁶。
2. 法案提出履歴と立法活動
嘉田氏自身が提出した議員立法は多くないが、国会論戦では活発に質問・質疑を行っている。2019年当選以降、法務・予算・災害対策委員会などで活動し、とくに子育てや福祉、災害時の権限強化などに関心を示している。
立法面では、たとえば2022年6月にインターネット上の誹謗中傷対策を目的とした刑法改正案を有田芳生・高良鉄美両議員(立憲民主党)と共同提出している⁹。この案はSNSなどで悪質中傷が後を絶たない現状を踏まえ、侮辱罪の厳罰化やインターネットでの被害者保護措置の強化を盛り込んだもので、嘉田氏は審議で積極的に支援の姿勢を示した。
同年には野党・維新共同の政治資金規正法改正案も審議されたが(パーティー券購入者の即時公開・企業献金禁止など)、こうした法案では維新会派として与党修正案に賛成し、衆院では可決したものの参院では慎重姿勢を取っている¹⁰。
所属会派・維新では党提案の「生活困窮者自立支援法改正案」などにも修正賛成しており、嘉田氏個人としても基本的に党方針に沿った立場を維持している。国会内での法案審議には、法務委員会、予算委員会、災害対策特別委員会のメンバーとして臨み、各種政府提出法案の修正議論や委員会発言に力を注いでいる⁴⁹。
当選以来提出議案数は少数(党所属議員全体では2023年度参院で新規提出10本程度)だが、常時委員会で政策提言に参加している。
3. 国会発言の分析
議院活動では委員会での発言が中心で、全国子どもの幸福度の低さや虐待防止、共同親権の必要性など家族・子ども関連のテーマを頻繁に取り上げる。例えば2024年4月の法務委では「子ども家庭福祉の専門性向上」を目指す資格制度について取り上げるなど¹¹、2025年にも家庭裁判所で子どもの利益を守る施策を質した。
また国会審議では憲法や防災、教育費無償化など政策課題についても発言し、政府に対し具体策や予算措置を求めている。国会議員白書の統計では、嘉田氏は当選以来の国会質問回数・文字数はそれほど多くないが(参院1期目は公務多忙で発言控えめ)、改憲問題や社会保障、政治資金規制など維新共通の重点事項を巡る質疑には必ず顔を出している。
発言スタイルは冷静で論理的であり、政府提出法案には与党修正も含めて慎重に対応する一方、野党提案には意見を付して支持する姿勢が多い。具体的な発言録が参院サイトにも多く掲載されているが、例えばDV(ドメスティックバイオレンス)防止策や子育て支援の強化を訴えた場面では、地域での現場調査に基づく改善要望や予算要求を行っており、背景に滋賀県政での実績があることがうかがえる。
4. 省庁審議会・有識者会議での活動
調査した限り、嘉田氏が国の審議会や有識者会議の委員に就任した記録は確認できなかった。2015年以降はもっぱら国会活動が中心であり、中央省庁の委員会や地方自治体外部団体の会議には名前が見当たらない。
滋賀県知事時代に参加していた国土審議会などの歴史的文書は存在するが(例:2006年の国土審議会資料¹²)、分析期間には該当しない。活動量の少ない期間もあるが、その間も選挙や政党内活動に注力していたと見られる。
5. 党内部会・議員連盟での活動
嘉田氏は党内執行部では主要役職を持たないものの、党の政策策定や他党連携には積極的だ。特に注目されるのは、子育て・家庭問題分野の超党派議員連盟への参加である。
嘉田氏は「共同養育支援議員連盟」(離婚後も両親が共同養育する法制度を目指す会)の幹事を務めており、立憲・自民・維新各党のメンバーと協力して民法改正を訴えてきた¹³。
また、2025年5月には国会「子どもの貧困対策推進議連」の関西視察の一環で、県内国会議員らと滋賀県知事(三日月氏)との意見交換会にも出席している¹⁴。
維新党内では同様に地方財政や教育分野の部会活動があるが、公表情報は限られており、現在のところ議連や地域協議会での連携が主な役割とみられる。国会議員としては上記以外に「教育無償化を実現する会」に参加し、社会保障や子育て支援策の充実を議論しているという報道もあるが、詳細な参加記録は明らかでない。
6. 政治資金・不祥事関連の記録
嘉田氏に関する不祥事や懲罰の公表記録はほとんど見当たらない。唯一注目されたのは2021年5月のDV(ドメスティック・バイオレンス)関連の発言で、動画配信で滋賀県内のDVシェルターの所在地をほのめかしてしまい、県から「情報秘匿の配慮を」と忠告を受ける事件である。
嘉田氏はこれについて「配慮が足りない発言をした」と自身のサイトで謝罪し¹⁵、問題発言の動画も削除された¹⁶。この件で議院懲罰などの処分は行われておらず、政治資金収支報告についても特記すべき違反は報じられていない。
滋賀県選挙管理委員会の監査報告書などを見ると、嘉田氏の政治団体(「かだ由紀子と進む会」など)に特段の問題は認められておらず、政治資金の透明性に関しては自ら「最も透明性が高いのが維新党の運用である」旨を発言している報道もある¹⁷。
総じて、この10年で嘉田氏自身による金銭問題や倫理違反は公には確認されておらず、「不祥事なし」の状況と言える。
7. SNS・情報発信活動
嘉田氏はSNSでも情報発信を行っており、公式Twitter(現X)やFacebookで国政報告や政策的メッセージを発信している。公式アカウント(@kadayukiko)では維新党国会議員や元知事としての活動が紹介されており、投稿内容は委員会質疑や地域行事参加のレポートなどが中心である。
2025年6月現在、Xのフォロワー数は数千人規模、YouTubeチャンネル登録者数は数百人程度と、著名議員としては控えめな規模だが、動画配信では滋賀県政の実績や国政報告会の様子などを公開している。
SNS上で特定投稿が話題になった例は少ないものの、選挙期間中には政策パンフレットや街頭演説の映像を共有し、支持者とのコミュニケーションを図っている。例えば2022年参院選では自身の訴えを逐次動画で公開するなど、情報発信には務めている。
8. 公約実現度の検証
嘉田氏の掲げる政策目標は、基本的に国政での活動にも反映されている。例えば、前述の子育て支援や教育無償化の推進は参院選マニフェストでも強調されたテーマであり⁶、その後も党派を超えて議論の場で繰り返し訴えている。
消費税率引上げ反対の姿勢も維新党の基本政策と一体化しており、財源措置として提案した増税策は党内外で議論された(維新提出の政治資金規正法案など)ものの、参院では修正法案に賛成している¹⁰。
一方で、知事時代に掲げた琵琶湖環境保全や公共事業見直しの具体的施策は、国政に移ってからは法案提出には至っていない。地域密着型の実績(ダム凍結や出産奨励金など)と国会活動との間にはやや距離があるが、それ自体は議員の裁量権や委員会所属の違いによるものでもある。
総じて、嘉田氏のマニフェストに書かれた重点政策は、議会活動でも引き続き訴えていると評価できる。特に新たな動向としては、自身の2014年出版著書『命をつなぐ政治を求めて』に基づく提案や、大学卒業までの教育費無料化など党内議論への参加も見られ、選挙公約と国会活動の間に大きな乖離は見られない。
参考資料
- 参議院議員プロフィール・議会資料:嘉田由紀子議員プロフィール(参議院)¹¹⁸⁴
- 政党・議員サイト:嘉田由紀子公式サイト(国政報告・ブログ)⁵¹⁹
- 政党ニュース:立憲民主党ニュースリリース「誹謗中傷対策法案」(2022年6月6日)⁹
- 報道資料:朝日新聞「DVシェルター特定につながる情報 嘉田参院議員が発言」記事¹⁵
- 自治体報道発表:滋賀県「子どもの貧困対策推進議員連盟と知事面会」¹⁴
- その他参考:共同養育支援法全国連絡会「共同養育支援議員連盟」¹³(議員連盟名簿)
1 2 3 4 18 嘉田 由紀子(かだ ゆきこ):参議院 https://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/giin/profile/7019012.htm 5 6 7 8 19 参院選の滋賀選挙区の統一候補として記者会見で立候補を表明いたしました! – 嘉田由紀 子 https://kadayukiko.jp/archive/7477/ 9 〖政調〗インターネット上の誹謗中傷への対策法案 参議院にも提出 - 立憲民主党 https://cdp-japan.jp/news/20220606_3801 10 第 213 回通常国会〖令和 6 年(2024 年) 1.26~6.23〗 |ニュース|活動情報|日本維新の会 https://o-ishin.jp/news/2024/09/11/16020.html 11 「滋賀県元知事 嘉田由紀子 参議院議員」オオクチバスの扱い ... http://smilefishing.jp/2025/03/06/001/ 12 [PDF] 国土審議会第1回近畿圏整備部会議事録 https://www.mlit.go.jp/common/000012747.pdf 13 共同養育支援議員連盟 - 共同養育支援法 全国連絡会 https://oyako-law.org/index.php? %E5%85%B1%E5%90%8C%E9%A4%8A%E8%82%B2%E6%94%AF%E6%8F%B4%E8%AD%B0%E5%93%A1%E9%80%A3%E7%9B%9F 14 超党派「子どもの貧困対策推進議員連盟」と三日月知事との会談を行います|滋賀県ホームページ https://www.pref.shiga.lg.jp/kensei/koho/e-shinbun/oshirase/344263.html 15 16 DVシェルター特定につながる情報 嘉田参院議員が発言:朝日新聞 https://www.asahi.com/articles/ASP5D7FX8P5DPTJB00Z.html 17 嘉田由紀子氏「野党一つに」 次期衆院選、候補一本化目指す 滋賀 https://mainichi.jp/articles/20240520/k00/00m/010/118000c