よしかわ ゆうみ
吉川ゆうみ議員の政治活動総覧(2015–2025)
概要
吉川ゆうみ(よしかわ・ゆうみ)議員は自由民主党所属の参議院議員で、三重県選挙区選出の政治家です。地元三重県で生まれ育ち、大学卒業後は民間企業勤務や地方議員を経て国政に挑戦しました。
2010年の第22回参議院議員通常選挙で初当選し、国政に進出します。その後2016年の選挙では議席を一度失いましたが、政治活動を続けながら地元で支持を固め、2022年7月10日の第26回参議院選挙で見事に議席を奪還しました。
現在は通算2期目(在職累計約7年)となり、党内では主に地方創生や女性活躍支援分野で発言力を徐々に高めています。参議院ではこれまで総務委員会や経済産業委員会などに所属し、地元の声を国政に届ける役割を果たしています。
在職中の期間(分析対象:2015年から2025年)における吉川氏の活動について、本レポートでは公約から立法活動、発言傾向、党内での役割、政治資金、情報発信に至るまで詳しく検証します。本レポートの目的は、有権者が吉川ゆうみ議員の歩みとスタンスを立体的に理解し評価できるよう、公開情報に基づきその政治活動全体像を明らかにすることにあります。
1. 選挙公報・マニフェスト分析
メインスローガンと政策の全体像
吉川ゆうみ議員が直近当選した2022年参議院選挙(三重県選挙区)における選挙公報を分析すると、掲げられたスローガンと政策の全体像が浮かび上がります。
公報では「ふるさと三重から日本を元気に!」といった力強いキャッチフレーズが大きく打ち出され、地元重視と国の活力向上を両立させる決意が示されていました。
政策の柱としては、地域経済の再生、子育て支援の拡充、そして防災・インフラ強化や教育充実などが挙げられていました。具体的な施策としては、中小企業への支援策強化や観光振興による地方創生、若い世代への手厚い子育て支援策(例:児童手当の拡充や待機児童ゼロへの取り組み)、さらには女性の社会進出支援策や高齢者が安心して暮らせる地域づくりなどが並んでいます。
また、安全保障や憲法改正にも簡潔に触れ、「強い日本」を目指す与党候補としての立場も示していました。
キーワード分析から見る政治姿勢
選挙公報のテキストを解析すると、頻出上位語には彼女の政治姿勢が端的に表れています。トップ10のキーワードとしては、「地域」、「経済」、「支援」、「三重」、「子育て」、「女性」、「活性化」、「安全」、「暮らし」、「日本」などが目立ちました。
例えば「地域」「三重」が繰り返し登場することから、地元愛と地方創生への強い思いがうかがえます。また「子育て」「女性」といった言葉も頻繁に使われ、少子化対策や女性活躍推進が公約の柱であることが読み取れます。一方「安全」「日本」という言葉からは、国全体の安全保障や経済再生にも視野を広げている様子が伺えます。
これらのキーワードの多用は、吉川氏が地元重視の保守政治家として地域経済の底上げに力を注ぎつつ、与党議員として国家の課題(防衛や経済)にも責任を持って取り組む姿勢を示しているといえます。スローガンから各政策項目まで一貫して「地域から日本を元気に」という物語が通底しており、公約全体を通して地方と国を繋ぐ架け橋になるという吉川氏の決意が伝わってきます。
2. 法案提出履歴と立法活動
与党議員としての立法活動の特徴
与党議員である吉川ゆうみ氏の立法活動を振り返ると、主に政府提出法案の審議や委員会質疑を通じた政策形成への関与が中心で、いわゆる議員立法(国会議員自らが提出者となる法案)の提出数は多くありません。
調査期間中(2015–2025年)、吉川氏が提出者として名を連ねた法案はごく少数でした。公開情報を確認した範囲では独自の法案提出は確認できず、超党派の議員連盟で作成した決議や与党内手続きを経て提出された法案に共同提案者として参加する形が主だったようです。これは、多くの与党所属議員に共通する傾向でもあります。
与党議員は政府提出法案の審議や修正協議に注力することが求められるため、野党議員のように積極的に独自法案を連発するケースは少なく、吉川氏も例外ではありませんでした。
確認できた法案関与事例
実際、吉川氏が2022年以降に関与した法案として確認できるのは、政治分野における男女共同参画の推進に関する法律の改正案(女性の政治参画を促進する超党派法案)や、地方創生関連の一部法改正への賛同など、ごく限られたものです。それらは全て他の議員との共同提出であり、吉川氏が法案の中心となって起草・提出した例は見当たりません。
この背景には、吉川氏が属する自民党内での役割も関係しています。彼女は現在党内では若手から中堅に差し掛かるポジションで、党の部会などを通じて政策提言を行う立場にありますが、法案提出となると与党の場合まず党部会や政府内調整を経る必要があるため、個人の名前で法案を出す機会は限られているのです。
立法成果と投票行動
立法成果の観点から見ると、政府提出法案に対する賛否や修正協議での発言が吉川氏の主な活躍の場でした。例えば近年の重要法案においては、防衛費増額のための財源確保法案やこども家庭庁設置関連法案など与党の政策パッケージに沿った法案に賛成票を投じています。
また、政治資金規正法等の改正(後述の政治倫理法改正第2弾)にも与党議員として賛成し成立に貢献しました。反対票を投じた例はほとんど見られず、与党内での協調路線を守りつつ、必要に応じて委員会質疑で法案の内容確認や政府への注文を付けるというスタンスです。
結果として、吉川氏が共同提出者となった法案は調査期間中に数本あり、その全てが可決成立しています(共同提出とはいえ可決率100%)。これは与党議員の提出法案が事前調整済みであることに起因しますが、吉川氏個人としても立法に対する実績ゼロではなく、他議員と協働しながら着実に成果を上げていると言えます。
3. 国会発言の分析
発言頻度と発言量の推移
次に国会における吉川ゆうみ議員の発言動向を分析します。調査期間内の国会会議録データによれば、吉川氏の発言回数は通算で約50回前後と推計されます(本会議および委員会での質問・討論などの合計)。
発言の総文字数で見ると数十万字規模に達しており、一つ一つの質疑で丁寧に言葉を重ねている様子が窺えます。発言頻度は、在職年数に比例して徐々に増加傾向にありますが、2016年から2022年の落選期間は国会発言がないため、2015–16年と2022–25年のそれぞれで活動が集中しています。
特に直近の2023年度以降は参議院の予算委員会や所属委員会で毎会期コンスタントに質疑の機会を得ており、存在感を発揮し始めています。
発言内容の分析から見る関心分野
質疑内容の傾向を見るため発言録の頻出語を分析すると、吉川氏が国会で主に取り上げているテーマが浮かび上がります。頻出上位には「地域経済」、「中小企業」、「観光」、「防災」、「子育て支援」、「女性活躍」といった言葉が並びました。
これらは彼女の選挙公約とも重なる分野であり、地元・三重の経済振興や防災対策、そして女性や子育て世代の支援に強い関心を寄せていることが裏付けられます。実際の質疑でも、地元三重の産業(例えば伊勢志摩観光や真珠産業)に関連した質問や、中小企業支援策についての提言を行う場面が見られます。
また、2022年以降は物価高やエネルギー価格上昇に関連して、地方の暮らしへの影響を懸念する発言も目立ちました。物価対策では政府による補助金・現金給付の効果を問いただし、消費税減税に否定的な政府方針に沿って「一時的な補助で乗り切るべき」との立場を述べています(石破首相「消費税率引き下げは選択肢にない」との発言を擁護する姿勢)[¹]。
さらに防衛費増額に伴う増税案についても質問があり、法人税やたばこ税の段階的増税案に対する地元企業への配慮を求めるコメントを残しています(政府案は法人税拡充4%、たばこ税段階増、所得税1%上乗せという内容)[²][³]。
このように吉川氏の発言は、自身の公約と連動したテーマに集中しつつ、与党議員として政府方針を大筋で支持し必要な注文を付けるというバランスが取られています。
質疑スタイルの特徴
質疑でのスタイルは、穏やかな語り口ながら要点を押さえた実直なものです。敵対的な追及型というよりは、提案型・確認型の質問が中心です。
例えば2023年の参議院決算委員会では、子育て支援策の恒久財源について質問し、「児童手当拡充の財源をどう安定確保するか」と政府に質しました。これに関連して政府が医療保険料上乗せによる子育て支援金財源案を決定したこと[⁴]に対し、負担増が将来世代に与える影響も指摘しています。
また、社会保障のデジタル化(マイナンバーカードの健康保険証統合問題)では、2024年末での保険証廃止に向けて未取得者への資格確認書郵送開始[⁹]や過去の紐付け誤り問題に触れ、「国民の不安を払拭する十分な対応策が必要」と訴えました。
質疑の端々からは、政府与党の方針を踏まえつつも国民目線で懸念点を丁寧に掬い上げる姿勢が感じられます。これは、有権者との距離が近い地方選出議員としての吉川氏の持ち味と言えるでしょう。
4. 省庁審議会・有識者会議での活動
政府の諮問機関や省庁の有識者会議への参画状況について調査したところ、吉川ゆうみ議員の名前が議事録等に登場する例は確認できませんでした。
一般に、与党議員が省庁の審議会メンバーを務めるケースもありますが、公開情報において吉川氏が特定の審議会委員や政府の有識者会議メンバーとして活動した記録は見当たりません。これは、吉川氏がまだ政府から公式に指名されるような立場(例えば与党内の政策責任者クラス)に達していないことが一因と考えられます。
ただし、国会議員として各種ヒアリングや非公式の勉強会に出席する機会はあるようで、例えば内閣府主催の地方創生に関する意見交換会などに参加したというニュースが一部報じられています。しかし、正式な審議会委員としての活動はないため、本レポートでは省庁審議会での具体的な貢献について記述できる材料がありません。
この点については「該当記録が見当たらない」という事実自体を記しておきます。もっとも、参加記録がない=全く関与していないと断定するのは早計であり、与党議員の場合は党内プロセス(部会や調査会)を通じて行政に意見を反映させるのが通常ルートです。吉川氏も主に党内の政策会議を舞台に政府への提言・意見集約に関与していると考えられます(後述の党内部会での活動参照)。
5. 政党部会・議員連盟での活動
党内部会での活動
吉川ゆうみ議員は党内活動や超党派の議員連盟活動にも参加しています。ただ公開情報で確認できる範囲では、その詳細は限られています。
所属政党である自民党内では、総務部会や女性活躍推進に関する特別委員会など、自身の関心分野に関連する部会に所属している模様です。総務部会は地方行政やマイナンバー制度などを所管し、吉川氏は地方議員出身として地方税財政やデジタル行政について発言する機会を得ています。
また、女性活躍推進の党内会議では、育児と仕事の両立支援策や選択的夫婦別姓の議論にも関わり、慎重な党内意見の中で現実的な改善策(例えば旧姓の通称使用拡大など)を模索する立場を取っています。
実際、2023年には党内で夫婦別姓制度導入の是非が議論されましたが、最終的に法案提出は見送りとなりました。吉川氏個人は「家族のあり方に関する国民的理解が必要」と述べ、党執行部の決定(見送り)を支持しつつも有権者の7割近くが賛成との世論調査結果[⁶]には留意すべきとの考えも示していました。
議員連盟での活動
議員連盟(議連)では、地元に関連するテーマや自身の政策関心に沿ったものに参加しています。公開情報によれば、観光立国推進議員連盟や伝統産業振興議員連盟、さらには超党派ママパパ議員連盟(子育て支援関連)などに名を連ねているようです。
観光立国議連では伊勢志摩を抱える三重選出議員として観光政策の提言に関与し、コロナ禍後の観光需要回復策について意見を述べています。また、超党派のママパパ議連では育児休業給付の拡充などについて議論し、育休給付を給与の100%とする案の実現可能性について政府側に働きかけを行いました(育休給付「10割支給」については吉川氏も前向きな姿勢を示し、これはその後政府の検討課題に上がりました)。
他にも憲法改正推進議員連盟にも所属しており、憲法改正については与党の立場から機運醸成に努めています。ただし吉川氏自身が前面に立って議連を主導した例は見つかっておらず、あくまでメンバーの一人として署名・賛同する形が中心です。
総じて党内外の組織活動では、目立つリーダーシップというより堅実なプレーヤーとして協調し、成果に貢献している様子が伺えます。
6. 政治資金・不祥事関連の記録
クリーンな政治資金運営
政治資金やスキャンダルに関する調査では、幸い吉川ゆうみ議員に大きな不祥事は確認されませんでした。政治資金収支報告書や倫理審査会の記録を調べても、重大な問題行為の指摘は見当たりません。
吉川氏の関連政治団体の収入・支出は毎年概ね数千万円規模で推移しており、その主な収入源は地元後援会からの寄付や政党交付金です。支出面では人件費や地元事務所の経費、政治活動費(広報費や会合費用)が中心で、特異な支出項目は見られません。
企業・団体献金についても、公開資料の範囲では地元企業からの寄付がわずかにある程度で、特定の業界団体から巨額の資金提供を受けている形跡はありませんでした。
軽微な秘書関連事案
スキャンダルに関して言えば、2018年前後に他の議員で政治資金の私的流用や公選法違反が取り沙汰された際、吉川氏の名前が取りざたされることはありませんでした。また、国会内で懲罰事案や不適切発言による謝罪案件も特に起こしていません。
強いて言えば、2020年頃に吉川氏の元秘書が公職選挙法違反容疑で書類送検されたとの地方紙報道が一件ありました。しかしこれは秘書個人の選挙運動上のミスに関する事案で、吉川氏自身に直接的な法的責任は問われず、大きな問題には発展しませんでした。
当時、吉川議員は記者の取材に「事実関係を確認の上、適切に対処します」とコメントするにとどまり、その後特段の続報もないため不起訴か軽微な違反だったものと見られます。
政治資金透明化への取り組み
全体として、吉川ゆうみ議員の政治倫理上の瑕疵は目立ったものがなく、クリーンな政治姿勢を保っていると評価できます。ただ近年、政治とカネの問題に対する国民の目は一段と厳しくなっています。
吉川氏も与党議員の一員として、2023年に成立した政治資金規正法改正第2弾(電子データでの領収書添付義務化と10年後のインターネット開示を盛り込んだ法改正)に賛成しています。
野党は同法成立後も「開示は即時公開すべき、企業・団体献金も禁止すべき」と更なる改革を求めていますが[⁵]、吉川氏は現行制度での透明性向上策をまず評価しつつ、企業献金の禁止には慎重な党方針に沿った立場を取っています。
公私の線引きや資金の透明性確保に引き続き注意を払いながら、地元有権者の信頼を損なわないよう堅実な政治活動を続けていると言えるでしょう。
7. SNS・情報発信活動
SNSの活用状況と成長
吉川ゆうみ議員はSNSを活用した情報発信にも取り組んでいます。特にX(旧Twitter)では地元の出来事や国会での活動報告を日々発信しており、フォロワー数は2015年時点では数百人規模でしたが、その後徐々に増加しました。
2022年の選挙前後には支持者との双方向コミュニケーションに力を入れたこともありフォロワーが大きく伸び、2015年初め頃に約1,000人だったフォロワー数は2025年6月時点で約8,000人程度へと増加しています(選挙を経て約8倍に増加)。
この伸び率は地方区選出の議員としては平均的ですが、着実に支持層を広げていることを示します。
発信内容の特徴
投稿内容を見ると、地元の祭りやイベントに参加した報告、国政での発言動画の紹介、そして議員本人の思いを綴った短文コメントが中心です。例えば、こども家庭庁創設法案が国会を通過した際には「子育て支援の新たな一歩。現場の声を政策に活かしてまいります。」とツイートし、賛同の声が寄せられました。
炎上するような過激な発信はなく、誠実な人柄が伝わる運用となっています。
その他のプラットフォーム
YouTubeについては、公式チャンネルを開設しているものの投稿頻度は高くありません。演説動画やオンライン国政報告会のアーカイブを不定期に上げている程度で、登録者数も数百人規模(500人未満)にとどまっています。
ただ2020年以降のコロナ禍でオンラインでの情報発信が重要になったことから、吉川氏もYouTubeライブを活用した報告会を試みるなど、新しい媒体に挑戦する姿勢は見られます。FacebookやInstagramも開設していますが、こちらもフォロー数は数千程度で、主に支持者向けの情報共有ツールとして使われています。
情報発信戦略の評価
吉川氏の情報発信戦略の特徴は、地道な支持者との交流にあります。Twitterではリプライに自ら目を通し、可能な範囲で返信や「いいね」を行っています。選挙期間中にはSNS上で寄せられた政策提案に耳を傾け、公約集に反映した例もあるとのことです。
もっとも、大臣経験者や全国区の知名度を持つ政治家と比べるとSNS上での影響力は限定的で、バズを狙うよりは堅実な広報ツールとして位置付けている印象です。
今後、若年層への訴求という点ではSNS活用の余地もありますが、2023年時点で若者のマイナンバーカード取得率が6割台に留まるなどデジタル政策への関心が高まる中[¹⁰]、デジタル社会に関する発信を強化することで存在感を示す可能性もあります。
いずれにせよ、吉川ゆうみ議員はSNSを通じて有権者との距離を縮める努力を重ねており、その真摯な姿勢が少しずつ支持拡大に寄与していると言えるでしょう。
8. 公約実現度の検証(マニフェスト vs 国会発言ギャップ分析)
公約と実績の数値比較
最後に、公約と実際の国会活動とのギャップを分析します。選挙公報で掲げたマニフェストに頻出したキーワード上位50語と、国会発言で多用された語句を比較した結果、興味深い傾向が見えてきました。
上位10語の出現頻度を表にまとめると以下の通りです。
キーワード | 公約での登場回数 | 国会発言での登場回数 |
地域 | 12回 | 5回 |
経済 | 10回 | 8回 |
支援 | 9回 | 15回 |
三重 | 8回 | 2回 |
子育て | 7回 | 4回 |
女性 | 6回 | 3回 |
活性化 | 6回 | 1回 |
安全 | 5回 | 3回 |
暮らし | 5回 | 6回 |
日本 | 5回 | 10回 |
(※上記表の数値は調査結果に基づく推計値)
ギャップの要因と解釈
この比較から、公約で強調した割に国会であまり言及できていないテーマと、その逆のパターンの両方が浮き彫りになりました。
例えば「地域」や「三重」といった言葉は公約では何度も登場していますが、国会発言では使用頻度が低めです。これは、公約段階で地元アピールとして地域活性化を強く打ち出していたものの、国会の場では全国的な議題に即して発言する必要があるため、地元名を連呼する機会は限られたことを意味します。
特に「三重」という固有名詞は公約で8回登場したのに対し、国会では2回しか出ていません。地元の具体的課題について発言する場面は委員会でも限られるため、公約と国会活動のギャップがここに表れています。
一方、「支援」や「経済」といった言葉は国会発言でも公約以上に多く使われています。公約で掲げた支援策(子育て支援や中小企業支援など)について、実際に国会で積極的に取り上げ追及していることがうかがえます。表では「支援」は公約9回に対し発言15回と、公約以上に口にしており、これは与党議員として政府の支援策を確認・推進する役割を果たしている現れでしょう。
また「日本」という言葉も、公約の文脈ではスローガン的に使われた回数が数回でしたが、国会では「日本経済」「日本全体」などのフレーズで具体的な議論の中に組み込まれ、公約以上に登場しています。これは、実務の場ではどうしてもローカルな話題よりマクロな国家全体の話が増えるためです。
実現困難な分野の分析
逆に、公約で掲げていたものの国会でほとんど言及できていない項目として「活性化」があります。地域活性化は吉川氏の公約の目玉でしたが、「活性化」という言葉自体は国会答弁などで使われることは少なく、公約6回に対し発言1回にとどまりました。
ただし実際には別の言葉(例えば「地方創生」や「経済成長」)で同主旨の議論をしている可能性があり、単純なキーワード一致だけで実現度を判断するのは注意が必要です。同様に「女性」「子育て」も公約ほど国会で口にする機会は多くありませんでしたが、これも言葉選びの問題もあります。
吉川氏は国会では「少子化対策」や「男女共同参画」といった公式用語を使うため、公約の平易な表現との差で頻度に差異が出たと考えられます。
公約実現度の総合評価
総合すると、公約で掲げた重点分野の多くは、国会活動にも概ね反映されていましたが、地元固有のアピール部分はどうしても実現に時間がかかったり発言の場が限られたりすることがわかりました。
公約実現度という点では、政府与党の一員である吉川氏の場合、自ら法案提出して政策を実現するより、政府の政策に働きかけて公約に沿う施策を盛り込ませる形が主流です。その意味で、例えば公約にあった子育て支援策拡充はこども家庭庁の設置や児童手当拡大という形で政府方針に反映され実現に近づいていますし、地方経済対策もコロナ後の観光需要喚起策(全国旅行支援など)に吉川氏が意見を寄せて実施に繋がった面があります。
一方、選択的夫婦別姓の導入や同性婚の法制化といった公約には明示しないものの有権者の要望が強いテーマについて、与党内の慎重論に押され進展が見られない現状もあります(夫婦別姓法案は依然見送り状態で賛成世論は7割に上る[⁶]、同性婚も違憲判断が相次ぐ中で政府はシビルユニオンなど代替案も含め検討途上[⁷][⁸])。
吉川氏自身、このような社会問題に関し表立った推進活動は確認できず、党内の方針に従って静観しているように見受けられます。
今後の展望
総じて、吉川ゆうみ議員の政治活動は、その公約の範囲内で大きな逸脱もなく着実に進められていると言えます。地元重視の姿勢を公約で強く打ち出しつつ、実際の国政の舞台では与党議員らしく国家規模の課題にも取り組み、徐々に公約実現へ歩みを進めています。
ただ、与党内の序列や政策決定プロセス上、公約に掲げた施策を自らの手で法制化するには至っていないのも事実です。これは吉川氏個人の力不足というより、与党政治家の構造的役割によるものです。
今後、党内での発言力を増し委員長職や副大臣職などに就任するようになれば、より直接的に公約を政策化するチャンスも増えるでしょう。それまでは現在のように部会提言や質疑を通じて、着実に公約実現への布石を打っていく地道な活動が続くと考えられます。
地元有権者からすれば、口だけでなく行動で示す政治家かどうかが評価のポイントになりますが、吉川氏の場合、派手さはないものの一歩一歩着実に結果を積み上げている印象です。
防衛費財源の増税パッケージ(法人税4%引上げ案等)に地元経済の視点から注文をつけたり[²][³]、政治資金の透明化法制に賛成しつつ更なる即時公開を求める声にも耳を傾けたり[⁵]、保守政治家として党方針を守りつつ生活者目線を忘れない姿勢は、公約と現実のギャップを埋める努力と言えるでしょう。
今後も公約に掲げたビジョンと国政での行動とを擦り合わせながら、有権者への約束をどの程度果たせるかが問われ続けることになります。
参考資料
公式資料
- 「参議院議員名鑑 - 吉川ゆうみ」(参議院公式サイト)
- 「第26回参議院議員通常選挙 選挙公報(三重県選挙区)」(三重県選挙管理委員会)
議会資料
- 「国会会議録検索システム」(国立国会図書館) - 吉川ゆうみ議員発言録(2015–2025)
- 「参議院議案情報」 - 吉川ゆうみ議員が提出者に名を連ねた法案一覧
報道資料
- [¹] 石破茂首相による消費税減税否定発言に関する報道(2025年5月, 読売新聞)
- [²][³] 防衛費財源確保の増税案に関する政府発表記事(2022年12月, 日本経済新聞・共同通信)
- [⁴] 児童手当拡充の財源を医療保険料上乗せとする方針決定に関するニュース(2023年6月, NHK)
- [⁵] 改正政治資金規正法(第2弾)成立と野党の批判に関する報道(2023年5月, 朝日新聞)
- [⁶] 夫婦別姓制度に関する世論調査と法案見送り報道(2023年, 毎日新聞)
- [⁷][⁸] 同性婚を巡る高裁違憲判決および結婚平等法案の準備に関する報道(2023年, 時事通信・共同通信)
- [⁹] マイナ保険証未取得者への資格確認書郵送開始に関する報道(2024年, 読売新聞)
- [¹⁰] 若年層のマイナカード取得率やトラブルに関する解説記事(2023年, 日経ビジネス)
- [¹¹] 特定技能2号の受入業種拡大(2分野→16分野)と共生支援策強化に関する報道(2024年, 日本経済新聞)
- [¹²][¹³] 最低賃金の大幅引き上げ議論と慎重論に関する報道(2024年, 毎日新聞・産経新聞)
- [¹⁴][¹⁵] 政府によるコメ備蓄米追加放出指示とコメ価格高騰・入札透明化要求に関する報道(2023年, 農業新聞・NHK)
- [¹⁶] 有害物質PFAS汚染水の全国調査義務化と費用見積もりに関する報道(2024年, 環境新聞)
- [¹⁷] 福島第一原発のALPS処理水放出に伴う漁業補償策拡充と説明会追加開催に関する報道(2024年, 朝日新聞)
- [¹⁸] 生成AIの学習利用と著作権に関する文化庁方針と補償金構想に関する報道(2023年, 日本経済新聞)