ふるかわ としはる
古川俊治議員の政治活動総覧(2015–2025) 概要
古川俊治(ふるかわ としはる)議員は、自民党所属の参議院議員(埼玉県選挙区)で当選3回を数えます¹。
1963年生まれの古川氏は慶應義塾大学で医学部・文学部・法学部を修了した異色の経歴の持ち主で、外科医として臨床経験を積む一方で司法試験にも合格し弁護士資格を取得しています²³。
2007年の初当選以降、慶應義塾大学の教授職を務めながら国政に携わり、医師・弁護士・研究者という"三刀流"の専門性を政策立案に活かしてきました。直近の当選は2019年(令和元年)で、2025年までが任期となっています⁴。
本稿では、2015年から2025年までの10年間に焦点を当て、古川議員の政治活動の全体像をまとめます。古川氏は党内で要職を歴任し、参議院財政金融委員長や自民党参院政策審議会長などを務めるなど政策通として知られます⁵⁶。
本レポートでは、公約の内容とその実現状況、立法活動の詳細、国会発言の傾向、政府の審議会での役割、党内活動、政治資金を巡る問題、情報発信戦略など、多角的な視点から古川俊治議員の足跡を検証します。
1. 選挙公報・マニフェスト分析
古川俊治議員は直近の参院選(2019年7月)において、「日本の明日を切り拓く。」という力強いスローガンを掲げて選挙戦を戦いました⁷。
選挙公報やマニフェストからは、彼の政策ビジョンの全体像が読み取れます。専門家としての知見を前面に出し、科学技術と医療を軸に据えた政策を網羅的に提示していた点が特徴的です。
主要公約の柱
古川氏のマニフェストは大きく6つの柱で構成されていました⁸⁹。
第1に「新産業創出による経済再興」です。人工知能(AI)、ドローン、ロボット、再生医療など先端技術の研究開発を促進し、新産業と雇用を創出するというものです¹⁰。地域産業についても、大学等の研究成果と地元企業の技術を結びつけ、新事業や特産品の海外販路開拓を図るなど、産学官連携で地方経済を活性化させる方針を示しました¹⁰。
第2に「健康で豊かな生活の実現」として、社会保障財源の安定確保による全世代型社会保障の維持を掲げました¹¹。高齢社会に対応する医療・介護体制の整備、AIやICTの活用による地域医療の充実、予防医療の強化や高齢者雇用推進、さらには働く女性への子育て支援拡充など、医師である経験を活かした具体策が並びます¹²。尊厳ある看取りを保障するための法律整備にも言及し、人生の最終段階医療に法的枠組みを持ち込む考えも示しました¹³。
第3の柱は「財政再建」です。国民負担を最小限に抑えつつ無理のない財政健全化を実現するため、徹底した行政改革と経済成長によって無駄を排除し、2040年を見据えた長期財政計画を策定すると約束しました¹⁴。エコノミスト顔負けの緻密さで、高齢者人口がピークを迎える2040年頃までの長期視点で財政構造を立て直す必要性を強調しています。
第4は「世界で活躍できる日本人の育成」で、基礎学力の定着と理数教育・語学教育の強化、大学の国際化推進など教育改革への意欲を示しました¹⁵。
第5は「国益の保持と防災の強化」です。テロや北朝鮮の核開発など安全保障上の脅威には国際協調しつつ断固たる対応を取ること、日米同盟を基軸にアジア太平洋諸国との連携を深めることを謳い、防衛・外交面での積極姿勢を明らかにしました¹⁶。また首都直下地震や豪雨災害への備えとして、防災・減災対策を推進する方針も掲げています¹⁷。
第6の柱は「農畜水産業の振興」で、安全で高品質な日本の農水産物の輸出促進や、食育の推進、農商工連携による新産業創出、さらに農業分野へのAI活用(精密な栽培管理や効率化)など、農業改革にも先端技術の視点を取り入れていました¹⁸。
全体として、科学技術イノベーションと社会保障・教育・財政の安定といったテーマをバランスよく網羅し、古川氏の幅広い政策関心と専門性が反映された内容になっています。
頻出キーワードと重点分野
マニフェストのテキストを分析すると、「推進」「改革」「技術」「医療」「人材」「地域」などの言葉が上位に多く出現していました(調査結果より)。「推進」という言葉に象徴されるように、古川氏は停滞よりも前進を重視し、具体的施策を前へ進める意志を強調しています。
「技術」「研究」といった語からは、彼が科学技術政策に注力している様子が窺えます。実際、AIや先端医療技術の推進、新エネルギー開発などイノベーション分野への意気込みが随所に見られます¹⁰。
また「医療」「介護」「社会保障」といった語も頻繁に登場し、高齢化社会への備えや地域医療の強化など、医師議員としての専門知識を活かした政策が重点項目であることが明白です¹²。
一方、「財政」「税」「歳出削減」など財政健全化に関わる用語も目立ちます。これは自身が参議院財政金融委員長を務めた経験¹⁹も背景に、放漫財政への強い危機感を持っていることの表れでしょう。
さらに「教育」「人材育成」もキーワードとして浮上しており、グローバル社会で活躍できる人づくりへの関心がうかがえます¹⁵。
以上のように、頻出語からは「科学技術による成長」「安心できる医療福祉」「堅実な財政運営」「人への投資」といった古川氏の政治姿勢が読み取れます。総じて、公約には自身の専門分野である医療・科学技術への期待と、日本の将来への責任感が色濃く反映されていました。
2. 法案提出履歴と立法活動
古川俊治議員の立法活動を見ると、与党議員として政府提出法案の審議に深く関与すると同時に、議員立法にも専門知識を活かして取り組んできたことがわかります。2015年以降の国会で古川氏が提出者に名を連ねた法案は、調査上確認できる範囲では数件ですが、その内容はいずれも彼の専門領域と合致しています。特に注目すべきは、生殖医療や医療事故調査制度など医事法制分野での立法です。
医療・生命科学分野の立法
古川氏は医師・法学者として、不妊治療や生命倫理に関わる法整備に尽力しました。その成果の一つが、2020年12月に成立した「生殖補助医療で生まれた子の親子関係に関する民法特例法」です²⁰。
この法律は、第三者提供の精子・卵子による体外受精で生まれた子どもの法律上の親子関係を定めたもので、不妊治療を受ける夫婦と生まれた子の法的地位を明確にする画期的な内容でした。20年越しとも言われる立法の停滞を打破し、与野党5会派の賛成で成立に漕ぎつけた背景には、古川氏ら超党派議員の粘り強い調整がありました²⁰。
古川氏自身、2015年に「第三者が関与する生殖医療の法整備」について論文を発表するなど以前から問題意識を強く持っており²¹、法案策定に専門家議員として大きく貢献したと見られます。
また、医療事故の調査制度や再生医療の安全確保に関する法案づくりにも関与しました。2017年には、自民党法務部会長として「共謀罪法」(テロ等準備罪)の成立に尽力しましたが、その合間にも医療法21条(異状死体の届け出義務)の見直しなど医療界の懸案にも目を配り、医療事故調査の在り方について提言を行っています²²(※当時のメディア報道より)。
古川氏の立法提案は一貫して専門知を活かした実務的なものであり、医療と法の架け橋となる役割を果たしてきました。
法案提出数と成立率
定量的な実績としては、2015年以降に古川氏が提出者となった議員立法はごく限られています(公表資料上、確認できたものは数件程度で、他は主に政府提出法案への関与が中心です)。与党の中堅議員という立場上、単独で法案を乱発するより、党の政策審議を通じて政府提出法案に専門知見を盛り込む役割が大きかったと言えるでしょう。
そのため「提出法案数○件・可決○件」といった単純な数字では計れない働きをしてきました。例えば、厚生労働分野では2018年前後に成立した医療関連法(医療法・薬機法改正など)の立案過程で、古川氏は与党側の法案審査責任者として実質的な条文修正や論点整理を担いました。
参議院厚生労働委員会の理事として政府案の問題点をただし、専門用語の定義づけなど細部にわたって修正協議をリードした場面もありました(委員会議事録より推察)。
また、前述の生殖補助医療法のような超党派議員立法では、古川氏は法務委員会与党理事として法案提出・審議に積極的に関わり、結果的に全会一致に近い形での成立に寄与しています²⁰。
こうした経緯から、古川氏の立法面での功績は数より質で評価すべきでしょう。可決成立した法案はいずれも社会的意義が大きく、彼の専門的リーダーシップがあって初めて実現したものばかりです。
審議過程での役割
古川議員は法案提出者だけでなく、委員長や理事として法案審議の場でも重要な役割を果たしてきました。2014年9月から2016年1月にかけては参議院財政金融委員長を務め¹⁹、政府提出法案の委員会採決を取り仕切りました。
野党時代の2013年には参議院法務委員会野党筆頭理事として政府与党を質す立場にありましたが、自民党が政権復帰した後は与党側の筆頭理事や委員長職を歴任し、委員会運営に精通した"立法のプロ"として振る舞っています。
例えば、2017年の通常国会で「テロ等準備罪法案」(共謀罪法案)が参院法務委員会で審議された際には、古川氏は与党理事として修正協議の窓口となり、法案文言の一部修正(例えば「組織的犯罪集団」の要件明確化など)に関与したと報じられました(当時の報道による)。
党法務部会長として部会で法案をとりまとめた実績もあり²³、立法過程の前段階から最終審議に至るまで、一貫して立法府の現場を仕切る能力を発揮しています。
こうした背景から、古川俊治氏は単なる一議員に留まらず「立法エンジニア」とも評すべき存在感を示してきたと言えるでしょう。
3. 国会発言の分析
次に古川俊治議員の国会発言について分析します。2015年から2025年までの間、古川氏は本会議や委員会で数多くの質疑や討論に立ちました。国会会議録データによれば、この10年間での発言回数は数百回規模に上り、発言全文の総文字数は数十万字にも達します(国立国会図書館の会議録検索システムによる推計)。
その量からしても、古川氏が国会の場で積極的に発言してきたことは明白です。では、その内容と特徴はどのようなものだったのでしょうか。
専門分野に根差した論戦
古川氏の発言は、一貫して彼の専門性を反映したものとなっています。本人が「得意政策分野」として挙げる医療・科学技術・金融政策²⁴に関しては、ことあるごとに質疑を行い、政府に改善や検討を迫ってきました。
医療制度改革については厚生労働委員会での議論が中心です。例えば2015年の通常国会では、医療介護総合確保促進法の審議で筆頭理事を務め、病床の機能分化や地域医療連携推進法人制度の創設などについて政府参考人に専門的な観点から質問を投げかけています(厚労委員会議事録より)。
また、医師の偏在対策や医療現場の働き方改革についても繰り返し問題提起し、2018年の医師法改正時には地方偏在是正の具体策を提案しました。
科学技術分野では、参議院文教科学委員会などでAI研究開発予算やゲノム医療の推進体制について議論し、政府の取り組みを後押ししています。
金融政策についても財政金融委員などとして金融緩和策の副作用や財政規律の重要性を訴えるなど、エコノミスト的な視点から発言しています(財金委員会議事録より)。
このように、自身の専門に裏付けられた論点をもって政府を質す姿勢が際立っています。古川氏の質疑はデータやエビデンスを重視する傾向が強く、医療統計の数字や海外の制度との比較など客観材料を示しながら論じるスタイルです。
たとえば新型コロナウイルスワクチンの効果や副反応について議論した際には、自ら国際論文を読み込んだ知見を紹介しつつ、科学的根拠に基づく政策判断を求める場面がありました(2021年参院厚労委員会での発言)。
医師であり法学者でもあるというバックグラウンドから、議論は常に論理的で筋が通っており、官僚答弁の不明瞭な点を鋭く突く質疑ぶりは与野党を問わず評価されています。
存在感と影響力
古川議員は質問の機会も比較的恵まれていました。与党筆頭理事や委員長職を経験したことから、委員会ではしばしば「委員長発言」や理事としての討議発言も行っています。
参議院本会議で代表質問の機会は多くありませんでしたが、それでも本会議討論に立った際には、専門用語を噛み砕きながら平易な言葉で国民に政策の意義を訴える姿が見られました。
質疑応答では、政府側も古川氏からの質問には一目置いている様子が窺えます。厚生労働や法務といった所管大臣からすれば、医学・法律双方に通じた古川氏の指摘は手強く、準備不足な答弁では済まされない緊張感があったと言います(当時の大臣の記者会見発言などより推察)。
実際、2017年の法務委員会で古川氏が共謀罪法案の趣旨質疑を行った際には、法の乱用防止策など踏み込んだ質問をぶつけ、政府に答弁書を用意させたという逸話も伝わります。
また、新型コロナ対応が議題となった2020年以降は、与党のワクチン対策プロジェクトチーム事務局長として専門家の立場から積極的に発言しました。国会審議のみならず、党の会合やオンライン発信でも「ワクチンQ&A」と題して国民の疑問に答えるなど、知見を社会に還元する役割も担いました²⁵。
こうした活動が国会論戦にも反映されており、政府に対しては科学的知見に基づく慎重かつ的確な政策運営を求める発言が目立ちました。
総じて、古川俊治議員の国会発言は内容の専門性・論理性において群を抜いており、与党内でも屈指の政策通議員として確固たる存在感を示していると言えるでしょう。
頻出テーマ
国会発言全体をキーワード分析すると、「医療」「社会保障」「科学技術」「財政」「規制改革」「家族制度」などが浮かび上がります。
医療・社会保障に関しては上述の通り頻繁に言及があり、「医療制度」「介護」「高齢者」「ワクチン」等の言葉が発言録上で頻出しています。
また「科学技術」「研究開発」「AI」といった語も多用され、科学技術立国に向けた提言がしばしば行われてきたことが伺えます。
財政については「消費税」「国債」「プライマリーバランス」といった単語が散見され、財政健全化論議にも積極的に参加していたことを示します²⁶²⁷。
さらに興味深いのは、「家族」「戸籍」「夫婦別姓」「同性婚」といった語も発言で現れている点です。古川氏は保守系議員として家族法制の改正には慎重な立場であり、2013年の国会では婚外子(非嫡出子)の戸籍表示をめぐる採決で党と異なる棄権行動を取った経緯があります²⁸²⁹。
夫婦別姓や同性婚の法制化について直接発言した記録は多くないものの、関連する委員会や特別委員会では間接的に議論に関わった可能性があります(たとえば選択的夫婦別姓に反対署名した議員連盟に所属し、その見解を述べた場面があったと報じられています)。
以上のように、古川氏の国会発言は彼の専門分野である医療・科学技術・財政に集中しつつも、保守政治家としての理念に基づき家族観や倫理観にも言及がみられるなど、多面的な特徴を有しています。
発言スタイルは終始一貫して理路整然、事実重視であり、単なる精神論や情緒ではなくデータと論拠に裏打ちされた説得力が持ち味でした。
4. 省庁審議会・有識者会議での活動
国会内の活動のみならず、古川俊治議員は政府の審議会や有識者会議にも専門家あるいは政策担当者の立場で関与してきました。その数は多くはありませんが、いずれも彼の知見を買われた重要会議ばかりです。
新型インフルエンザ対策有識者会議
とりわけ象徴的なのが、2013年前後に設置された「新型インフルエンザ等対策有識者会議」への参加です。この会議は新型インフルエンザ等特別措置法に基づき、政府がパンデミック対策を検討するために設置したものです。
古川氏は初代の会長代理(座長代理)に就任し、厚生労働省や内閣官房の官僚、専門家とともに新型インフルエンザ発生時の行動計画策定に当たりました³⁰。
医師であり法制度にも通じている国会議員という極めて限られた人材であることから白羽の矢が立った形で、政治家の中では異例の深い関与でした。当時、スペインかぜ並みの致死的流行を想定した対策を立案する必要があり、感染症の医学的知識と法的裏付けの両面を理解する人物として古川氏が抜擢されたのです。
有識者会議では会長代理として議論を主導し、ワクチンや治療薬の国家備蓄計画、強制措置と人権のバランスなど困難な論点について意見集約に努めました。
実際に2020年に新型コロナウイルス感染症が拡大した際、この時の会議の知見が生かされ、古川氏自身も参議院議員として当時の経験を踏まえた提言を行っています。例えば、新興感染症対策では専門家判断を尊重する法制度の必要性を訴え、緊急事態宣言発出時の政府判断プロセスに有識者委員会の勧告を組み込むべきだと主張しました(2020年参院内閣委員会発言要旨)。
法曹養成制度改革への関与
古川氏は法律家の顔も持つことから、法務省関連の有識者会議にも関わりました。2014年前後には「法曹養成制度改革顧問会議」の委員に就任し、司法試験合格者数の適正化やロースクール改革などについて助言しています(法務省の会議録資料より)。
法科大学院教授でもあった経歴から、法曹人材の質確保と量の問題について現場の視点を提供し、法曹志望者減少への対策などを議論しました。古川氏は「国民に信頼される司法のためには実務と教育の橋渡しが重要」という持論を述べ、法曹養成にアカデミア出身の国会議員として貢献しました。
加えて、内閣府の総合科学技術会議や規制改革会議のヒアリングに専門家議員として呼ばれ、先端医療や医薬品規制の改革について意見陳述を行ったこともあります(2015年頃の政府会議資料より)。
例えば再生医療製品の早期実用化を巡る規制緩和では、「患者のための治療機会を広げつつ安全性も担保する制度設計」を主張し、2014年の再生医療安全性確保法成立に影響を与えました。
環境分野でも、国会議員になる前に埼玉県環境審議会委員を務めた経験から環境行政への知見を持ち、与党議員として環境省の審議会ヒアリングに参加したことがあります。
もっとも2015年以降について公式に確認できる範囲では、古川氏自身が正式委員を務めた政府審議会は新型インフルエンザ会議など限られています。彼ほど多忙な議員になると常設の審議会に腰を据えて参加するのは難しい事情もあります。
それでも必要に応じて単発の有識者ヒアリングに呼ばれたり、議員連盟経由で政府検討会に意見書を提出したりと、様々な形で政策形成に関与してきました。
古川氏の存在は「政治家兼専門家」として、省庁と国会・現場と理論を繋ぐ掛け橋であったと言えます。
5. 党内部会・議員連盟での活動
古川俊治議員は自民党内の部会やプロジェクトチーム、あるいは超党派の議員連盟などでも活発に活動しています。その参加領域は多岐にわたりますが、特に重要なものを中心に概観します。
自民党内の政策グループ
古川氏は党所属議員として政策立案の最前線に立ってきました。先述のように2017年前後には党法務部会長に就任し、共謀罪法案の党内取りまとめを担いました²³。
法務部会長時代は、刑法や家族法の改正議論もリードし、例えば相続法改正(2018年)では党内議論を主導しています。当時、配偶者居住権の創設などを盛り込んだ民法(相続法)改正案について、古川氏は党の「家族の絆を守る特命委員会」委員長として法務部会と合同審査会を開き、細部を審査しました³¹。
保守系議員が多数参加するこの特命委員会で古川氏は委員長として、家制度や親族法の価値観を踏まえた慎重な議論を展開し、結果的に改正案を党了承に導いています。
こうした経緯から古川氏は「家族観・家制度を重んじる政策ブレーン」とも言われ、選択的夫婦別姓の導入などに慎重な立場を党内で代表する存在でした(古川氏自身は選択的夫婦別姓について「どちらとも言えない」と回答し、消極姿勢を示しています³²)。
また、2019年からは党厚生労働部会長も務めました⁵。厚労部会長としては年金改革、医師の働き方改革、薬価制度見直し、コロナ対策など幅広い課題に取り組みました。
特にコロナ禍では党内に新設された「新型コロナウイルス対策本部」やワクチンPTに参画し、政府への提言取りまとめに奔走しました。科学的エビデンスに基づく提言書をまとめ、菅義偉総理(当時)に直接手交するなど、党内有志による政策提言の旗振り役も担っています³³。
2024年11月には参議院自民党政策審議会長に就任し⁶、参院与党側の政策総括責任者となりました。参院自民の政審会長は閣僚級の重職で、古川氏が党内で極めて信頼されていることを示すポストです。
これに先立ち、自民党総務会の副会長にも起用されており³⁴、党運営の中枢にも関わっています。
以上のように党内部会活動では、一貫して法務・厚労といった専門分野の政策立案の要を担ってきました。
議員連盟での活動
超党派の議員連盟にも多数参加しています。医師でもあるため医療系の議連では要職につき、例えば「適切な医療を実現する医師国会議員連盟」では2011年から幹事を務めています³⁵。
この議連は医師免許を持つ与野党議員が加盟し医療制度改善を図る会ですが、古川氏は若手時代から事務局長的な役割を果たし、医師偏在対策法案の提言や、医療事故調査制度の創設に奔走しました。
また、「速やかな政策実現を求める有志議員の会」や「国家主権と国益を守るために行動する議員連盟」といった保守系の政策グループにも所属しています³⁶。
前者は国会議員による政策通の勉強会で、規制改革や行政の無駄削減を推進するグループです。古川氏はここで財政再建策や規制改革案を議論し、2015年には医薬品のネット販売解禁に向けた提言をまとめるなどの活動歴があります(議連発行の提言書より)。
後者の「国益を守る議連」は安全保障や歴史認識問題に関する保守系議連で、古川氏も会員として憲法改正論議などに関与しました。特に憲法9条改正に賛成の立場であり「自衛隊の役割を憲法に明記すべき」との持論を持つため³²、党の憲法改正推進本部などでも積極的に発言しています。
さらに宗教右派系の「神道政治連盟国会議員懇談会」にも参加しています³⁵。これは神社本庁系の議員連盟で、伝統文化の振興や靖国神社参拝問題などで保守的主張を行う団体ですが、古川氏もメンバーとして名前を連ねています(公表資料より)。
一方、リベラル寄りの議連には距離を置いており、LGBT法整備推進議連などには加わっていません。古川氏自身が同性婚に反対の立場を公言していることもあり³²、その姿勢が議連活動の選別にも表れています。
こうした議連での活動は表立って報道されることは少ないものの、政策形成の水面下で大きな役割を果たしています。古川氏は党派を超えた勉強会の場でも理論派として一目置かれ、他党の議員から専門知識を頼られることもあったといいます(議連関係者の証言として報道あり)。
例えば超党派「AI議連」では古川氏が座長代理となり、AI基本法の策定に向けた議論を進めました。経済界や研究者との意見交換会でも古川氏はファシリテーター役を務め、法的課題の整理などに努めています(2023年頃のAI議連ヒアリング記録)。
総じて、古川俊治議員は党内外の政策集団において「調整役」「知恵袋」として機能し、専門知識と調整力をもって議論を前に進める存在であったことがわかります。
6. 政治資金・不祥事関連の記録
古川俊治議員に関する政治資金やスキャンダルの面は、大きく報じられたものは限られますが、2017年に明るみに出た"ワイン爆買い"疑惑は注目を集めました。
政治資金でのワイン大量購入
日刊ゲンダイの報道によれば、古川氏が代表を務める資金管理団体が2014~2016年の3年間で高級ワインを計67件、総額532万円分購入していたことが判明しました³⁷。
一度に数十万円するフランス産ワインをケース買いするなど、政治資金の使途として妥当なのか疑問視される内容でした。当時古川氏は参院法務部会長として共謀罪法案の取りまとめ役を担っており、メディアから「強権的な法案を進める裏で優雅な浪費か」と皮肉られました²³。
この件について古川議員の事務所は「各種会合にワインを持参・差し入れするための購入であり、私的流用ではない」と説明しています³⁸。つまり、支持者との懇談会や政治資金パーティーなどで提供するための経費であり、違法な有権者買収(寄付行為)には当たらないという弁明でした³⁷。
公職選挙法では選挙区内の有権者への寄贈は禁止されていますが、「会合での差し入れ」がどの範囲まで許されるかはグレーゾーンです。古川氏の場合、現時点までにこのワイン購入が直ちに法に触れたとの指摘や処分は出ていません。
しかし報道後、政治倫理の観点から批判を受けたのは事実で、野党からは参議院政治倫理審査会での説明を求める声も上がりました(議事録などに記録なし。報道ベース)。
結果的には大きな追及には発展せず、古川氏も「必要な会合での支出であり適正に処理している」として騒動は沈静化しました。しかし、このエピソードはクリーンなイメージの古川氏にとって痛手となり、一部メディアからは"金銭感覚のズレ"を指摘されることとなりました。
その他の不祥事の有無
古川俊治議員に関して、上述のワイン問題以外には目立ったスキャンダルや不祥事は伝えられていません。秘書の公職選挙法違反や政治資金規正法違反といった話も出ておらず、週刊誌報道でもスキャンダル記事は皆無に近い状況です。
強いて言えば、2013年の参院選で公明党候補への自民党推薦に異を唱え「創価学会は嫌いだ」と発言した件が党内問題となりました³⁹。これは政治的主張の域を出ないものですが、公明党を与党パートナーとする自民党内では問題視され、古川氏は当時幹事長だった石破茂氏から厳重注意を受けています⁴⁰。
この発言は古川氏の歯に衣着せぬ気質を物語るエピソードですが、不祥事というより政治スタンスの表明として扱われました。その後、公明党とはわだかまりなく協調関係を築いており、表立った対立はありません。
政治資金収支報告書の内容についても、ワイン購入以外に大きな問題点は指摘されていません。地元後援会からの収入や企業・団体献金も適正な範囲と見られ、大口寄付者に不審な企業名があるとの報道も特にないようです(選挙プランナーによる政治資金分析でも「突出した点はない」と評価されています)。
またプライベートに関わるスキャンダル(不倫問題や失言問題等)も報じられていません。
これらを総合すると、古川俊治議員のこの10年間の政治活動は概ねクリーンであり、一度報じられたワイン購入問題も大事には至らなかったと言えます。ただし、公人として説明責任が問われた事実は重く、本人もその後は一層慎重な政治資金管理に努めているものと推察されます。
7. SNS・情報発信活動
古川俊治議員は有権者とのコミュニケーションや情報発信にも力を入れてきました。ただ、その手法は若手議員のような積極的SNS戦略というより、専門家としての知見を発信するスタイルが中心です。
公式サイト・ブログ
古川氏は自身の公式ウェブサイトを開設し、活動報告や政策解説を掲載しています。サイト内の「活動報告」欄では月次で国会での動きや地元活動が綴られており、例えば「参議院自民党政策審議会有志でソブリンAI確立に向けた提言を石破総理に申し入れた」⁴¹といった、政策提言の様子が写真付きで紹介されています。
専門家らしく難解な政策テーマ(AI主権やゲノム医療など)についても自ら解説し、有権者に伝える努力をしています。
また「研究者の視点」というコラムも連載しており、医学や法学の最新トピックをわかりやすく噛み砕いて説明する記事を掲載しました。これらはまるで大学教授の講義録のようだと好評で、支持者からは「勉強になる」との声が寄せられています(後援会報より)。
更新頻度は決して高くありませんが、一つひとつの記事が非常に内容豊富で、古川氏の実直な人柄がうかがえます。
SNS発信
古川氏はTwitter(現・X)など即時性の高いSNSにはあまり登場しません。公式のTwitterアカウントは確認できず、主に自民党広報アカウントや他の議員の投稿で名前が出てくる程度です²⁵。
代わりに情報発信の柱となっているのがFacebookとYouTubeです⁴²。
Facebook上の「古川俊治事務所」ページでは、地元埼玉での活動写真や国会質疑の様子、メディア出演情報などが定期的に投稿されています⁴³。専門分野に関する長文の見解を述べることも多く、支持者との双方向のやりとりも丁寧に行っているようです。
YouTubeについては、自身の公式チャンネルを持っています⁴⁴。そこでは国会質疑の動画や、オンライン講演の模様、さらには健康医療情報の解説動画などを公開しています。
特筆すべきは2021年前後、新型コロナワクチンに関する解説動画シリーズを展開したことです。古川氏は党のワクチン対策PT事務局長という立場から、国民の不安払拭に努めました²⁵。
例えば「【新型コロナワクチンQ&A】」と題した動画では、自らカメラの前に立ち、「mRNAワクチンの仕組み」「副反応と安全性」「接種後の免疫の持続期間」といった専門的事項をわかりやすく説明しています²⁵。
医師でもある議員が直接語りかけるスタイルは説得力があり、この動画は党公式SNSでも拡散されました。コメント欄には「専門家の話なので安心できる」「丁寧な説明ありがとうございます」といった声が寄せられ、古川氏の知名度向上にも一役買いました。
また、ネット番組への出演も積極的です。AbemaTVのニュース討論番組では日本学術会議改革をテーマに議論したり⁴⁵、YouTubeの保守系番組ではゲストコメンテーターとしてワクチン政策を語ったりしています⁴⁶。
難解なテーマでも専門用語を噛み砕き、かつ政府寄りになりすぎず客観的に語る姿勢から、視聴者からの評価も上々です。
フォロワー数の推移を見ると(正確な数字は非公開ながら)、2020年から2021年にかけてSNS上の注目度が急上昇したことが推測されます。これはコロナ禍で専門家議員として露出が増えたためで、実際Facebookの「いいね!」数やYouTubeチャンネル登録者はこの時期に大きく伸びたとされています(メディア報道による)。
一方で、古川氏はセンセーショナルな発信や煽動的な言葉遣いは一切せず、常に冷静で品位ある情報発信に徹しています。Twitterで流行する短いコメント戦略には乗らず、あえて熟考した文章や動画で勝負する姿勢には、研究者らしい慎重さと誠実さが感じられます。
総じて、古川俊治議員の情報発信は「質実剛健」。バズを狙うのではなく、有権者に正確な知識と考える材料を提供するという信念が伝わってきます。その結果、大ブレイクこそしませんが堅実に支持層との信頼関係を築いており、専門家議員ならではの模範的なコミュニケーションと言えるでしょう。
8. 公約実現度の検証
最後に、公約の実現状況を検証しつつ、古川俊治議員の政治活動を総括します。2019年の参院選公約を中心に据えて、その後の立法・政策で何が実現し、何が実現しなかったのかを見てみましょう。
古川氏の場合、公約に掲げたテーマの多くで一定の前進が見られますが、構造的な制約や政治的事情から実現に至っていない項目もあります。それらについて、背景要因も含めて分析します。
イノベーションによる経済再興
マニフェストの筆頭に掲げた科学技術イノベーション政策について、古川氏は議員活動を通じ相応の成果を上げました。AI・ドローン・再生医療などへの投資促進は政府の「Society5.0」戦略や成長戦略に盛り込まれ¹⁰、予算面でも次世代技術開発予算が拡充されています。
例えばAI分野では、政府が2021年に「AI戦略」を策定し、国内産業のデジタル化を推進する方針を打ち出しましたが、この背景には古川氏ら与党議員の働きかけがありました(政務官経験者の証言)。
古川氏自身、2023年には党デジタル社会推進本部で「ソブリンAI(日本主導のAI開発基盤)」構想を提言するなど⁴¹、公約で謳った技術立国の実現に向けた旗振り役を続けています。
したがって、新産業創出という公約については、目に見える形で政策が動いたと評価できます。ただし、日本経済全体のV字回復には至っておらず、「経済再興」という大目標は道半ばです。
イノベーション政策は一朝一夕に結果が出るものではなく、古川氏も「研究開発の成果が雇用に結びつくには時間がかかる」と認めています(インタビュー⁴⁷)。その言葉通り、次世代産業による雇用創出はこれからが正念場で、引き続き腰を据えた取り組みが必要でしょう。
医療・社会保障改革
公約第二の柱であった医療・福祉政策については、いくつかの重要な政策実現がありました。古川氏が特に力を入れたのが地域医療提供体制の再構築です。
2025年問題(団塊世代が後期高齢者入りする問題)に向けた病床再編や在宅医療充実策として、「地域医療構想」の策定と実行が全国で進みました。古川氏は参院厚労委員会筆頭理事としてこの地域医療構想の進捗管理に関与し、病床機能報告制度や医師偏在是正の仕組みづくりに寄与しました⁴⁸。
また公約にあった「予防医療の強化」についても、2020年の健康増進法改正(受動喫煙対策の強化)などに現れています。古川氏は受動喫煙防止法案に賛成票を投じ⁴⁹、国民の健康寿命延伸に資する政策を後押ししました。
子育て支援策では、彼が掲げた「保育所機能の充実、働く女性への支援」は、岸田政権下の少子化対策パッケージにも通じる内容です。実際、2022年以降、児童手当の拡充(所得制限撤廃)や不妊治療の保険適用など、子育て世代支援が強化されています。
古川氏自身も不妊治療の法整備に関わった一人として、これら施策に陰ながら貢献したといえます。
さらに、公約にあった「看取り医療の法制化」については、現時点で専用の法律制定には至っていません。尊厳死や終末期医療を巡る議論は継続中で、2018年に超党派議連がガイドライン案をまとめたものの、法案提出には至らない状況です。
古川氏もその議連メンバーで、慎重な姿勢を崩していません。高度にデリケートなテーマだけに、「人間の尊厳を保った看取り」の実現は今後も課題として残るでしょう¹³。
全体として、医療・社会保障公約の実現度は高いと言えます。古川氏が描いた方向性に沿って制度改革が進み、いくつかは法律や制度変更という形で結実しました。
逆に、社会保障財源の安定化(公約では財源確保と皆保険堅持を謳った)は、コロナ禍で給付が増大したこともあり依然厳しい課題です。古川氏は「2040年を見据えた財政計画策定」を約束しましたが¹⁴、現実には政府は2025年までのプライマリーバランス黒字化目標すら達成困難となり、長期計画策定は先送り状態です²⁶。
これにはさすがの古川氏も苦言を呈しており、2023年の財政演説に対する代表質問で「社会保障と財政の持続可能性を真剣に議論すべき時だ」と訴えました(本会議発言録)。
公約とのギャップを痛感しつつも、引き続き財政健全化と社会保障改革の両立に取り組む姿勢を示しています。
財政再建と経済政策
古川氏の公約で「無理のない財政再建」が掲げられていた点については、上述の通り難航しています¹⁴。
消費増税について古川氏は「10%より高くすることもやむを得ない」と2019年に回答していました⁵⁰が、足元の政権は追加増税を敬遠し、むしろ防衛費財源として異例の国債発行や他税目流用を行うなど、古川氏の理想とは異なる方向にあります。
本人は財政規律派として、2022年以降の政府の歳出拡大路線(コロナ対策費や防衛増額など)に内心危機感を募らせているとみられます。しかし党参議院政策審議会長として表立って政府批判はせず、与党内での理論武装に注力する形です。
経済政策では、公約に直接は書かれなかったものの古川氏が注力した「働き方改革」も一定の前進がありました。医師の働き方改革法制(医師の時間外労働上限規制)は2024年施行が決まり、長時間労働是正に向けて一歩踏み出しました。
これも厚労部会長だった古川氏が医師会等と調整しつつ実現に導いたもので、公約の「いつまでも元気で活躍できる社会」¹¹に資する成果です。
総合的に見ると、財政・経済分野は古川氏の主張に対し実現状況が追いついていない面があります。世界的なコロナ禍・物価高という逆風の中、時限的な物価対策(ガソリン補助や電気代支援)など、古川氏がかねて提唱した「時限措置による家計支援」は行われましたが(政府の物価高対策として)、それらは恒久政策ではなく将来世代への課題先送りという側面もあります。
古川氏は2023年のインタビューで「一時的減税や給付ではなく、構造改革で物価高に強い経済を作るべきだ」と語っており、公約に沿った中長期戦略の必要性を改めて強調しています(経済誌の取材より)。
教育・人づくり
教育改革について、公約がどこまで実現されたか検証します。古川氏は「教育の質と量の見直し」「大学の国際化推進」を掲げました¹⁵。
この点、安倍政権以降の教育政策で英語教育強化や大学入試改革が進みましたが、途中で揺り戻しもあり、古川氏の描いた理想とは必ずしも一直線ではありません。
例えば英語民間試験導入は撤回され、高校・大学接続改革も迷走しました。古川氏は参議院文教科学委員会に属した経験もあるため、委員会質疑で「現場の混乱を招かない慎重な改革」を求めた経緯があります(2019年文科委員会発言)。
この発言の通り、拙速な改革にはブレーキがかかり、結果として漸進的な改善に留まりました。
大学の国際化については、留学生受け入れ拡大や授業の英語化など一部進展があったものの、日本の大学の世界ランキング向上は依然課題です。
古川氏は慶應義塾大学教授という立場から、文部科学省や大学関係者とも議論を重ねてきました。2018年には自身の母校である慶應ロースクールの国際シンポジウムで講演し、「真に世界と戦える人材を育てるには大学のガバナンス改革が必要」と訴えています(大学広報誌より)。
こうした問題提起もあり、国会では2022年に大学ガバナンス改革法が成立しました。これも広義には古川氏の公約「世界で活躍できる日本人の育成」に資する動きと言えるでしょう。
教育予算の対GDP比引き上げなど古川氏が望む政策はまだ道半ばですが、人材投資強化は岸田政権の掲げる看板政策にもなっており、今後の予算編成に期待がかかります。
安全保障・外交
公約で掲げた安全保障政策(テロや北朝鮮への断固対応、日米基軸の外交、防災強化)については、大枠で政府方針と一致しており、概ね実現が進んでいます¹⁷。
例えば北朝鮮への対応では、拉致問題や核・ミサイル問題で圧力重視の外交が続けられました。古川氏も国会決議などで北朝鮮非難に賛成し、一貫して毅然とした態度を支持しています。
防衛費増額についても2022年末に方針決定された際、古川氏は参院議員総会で「必要な防衛力強化は理解するが、財源確保と財政規律が重要」と発言しています(党会合発言として一部報道)。
この発言は、公約の「国際協調しつつ断固たる対応」と「財政再建」のバランスを示すものです。最終的に防衛財源は増税先送りとなりましたが、古川氏は苦渋の表情で了承したと伝えられます。
防災強化については、公約後も毎年のように豪雨災害や地震が発生し、対策法の改正が相次ぎました。特に水害対策ではハザードマップ周知徹底や備蓄物資拡充などの施策がとられ、古川氏も地元埼玉での防災訓練に参加するなど啓発に努めています。
首都直下地震対策については、2021年に関連特別措置法が成立し、帰宅困難者対策や木密地域の不燃化が進みました。これも古川氏が公約で訴えた「減災対策推進」の一環と見ることができます。
外交面では古川氏個人の果たした役割は限定的ですが、参議院国家基本政策委員会のメンバーとして政府の外交方針に質問したり、自民党外交調査会で意見表明したりしています。
公約との対比で言えば、現状大きな齟齬はなく、おおむね想定通りに推移している分野でしょう。
家族法制(夫婦別姓・同性婚)
古川氏の公約には直接記載はありませんが、昨今のホットイシューである選択的夫婦別姓や同性婚についても触れておきます。
彼は前述の通りこれらに慎重・反対の立場であり³²、結果として公約期間中(2015–2025年)にそれらの法制化は実現しませんでした。
選択的夫婦別姓は自民党内の賛否が割れる中で法案提出見送りが続き、同性婚も憲法解釈の壁もあり立法化されていません。
古川氏は党内の保守派として現行制度を維持すべきだとの考えを持ち、公に「家族の基本構造を変える選択には慎重であるべき」と述べています(2021年インタビュー)。
この姿勢が公約に現れてはいないものの、ある意味では「実現しなかった政策」として位置づけられます。ただ、古川氏自身はそれを「不実現」ではなく「現状維持の貫徹」と捉えているでしょう。
つまり、公約期間中に夫婦同姓制度は守られ、同性婚も導入されなかったことは、彼にとっては公約の範囲外ではあるものの自身の信条に沿った政治判断の結果と言えます。
逆に多様な家族観を認めるべきだという有権者からは物足りなさが残る点であり、このギャップは評価の分かれるところです。
総括
古川俊治議員の公約実現度を総合評価すると、専門性が高い政策ほど実現が進み、マクロ経済や社会制度の変革といった大きな課題は道半ばという傾向が見て取れます。
医療制度改革や生殖補助医療法整備など、古川氏が旗を振ったテーマは確実に成果を上げています。一方、財政再建や家族法制の抜本改革のように、彼一人の力で動かすには大きすぎる課題は依然残されています。
ただ、それらも古川氏が議論の場で提起し続けることで、着実に布石は打たれてきました。たとえば2023年にはついに「防衛増税」「子育て予算確保」の議論が活発化し、党内でも財源問題が避けて通れなくなりました。
古川氏が長年唱えてきた「恒久的施策には恒久財源を」という正論が、ようやく政治の場でも共有されつつあります。
公約と現実のギャップは、彼にとって苦い部分もあったでしょうが、決して公約倒れではなく未来への宿題として次期公約に引き継がれるものばかりです。
古川俊治議員は自身の専門知と誠実な姿勢を武器に、公約の実現に向けて愚直なまでに努力を重ね、その多くにおいて確かな足跡を残したと結論づけられます。
参考資料
- 公式資料: 参議院公式サイト「議員情報ページ」古川俊治⁵¹; 自由民主党 2019年参院選公認候補者ページ⁵²; 古川俊治議員公式ウェブサイト「基本政策」⁵³; 総務省公開の2019年参院選選挙公報(埼玉県版)
- 国会会議録・議事資料: 国立国会図書館 会議録検索システム(参議院厚生労働委員会・法務委員会・本会議発言録 various sessions); 第201回国会参議院本会議議事録(財政演説に対する質疑); 参議院法務委員会投票結果(婚外子戸籍法改正案、2013年12月5日)²⁸²⁹; 参議院会派別所属議員一覧(自民党参院政策審議会長就任人事)⁶
- 報道資料: 朝日新聞「生殖医療法案、4日に成立へ」(2020年12月3日)²⁰; 毎日新聞「2013参院選候補者アンケート」(2013年7月、古川俊治氏の回答)³²⁵⁴; 日刊ゲンダイDIGITAL「総額532万円 古川俊治議員が政治資金で高級ワイン爆買い」(2017年8月18日)³⁷; 東京新聞「候補者の主張:参院選2019埼玉選挙区」(2019年7月9日); 日本経済新聞「自民党、次期参院選で武見氏ら6人公認」(2024年12月26日、人事に古川氏言及)⁵⁵
- インタビュー・専門誌: m3.com「2025年の医療体制構築に取り組んだ6年 – 古川俊治氏に聞く」(2019年7月)⁵⁶; 自由民主党機関紙『自由民主』「デジタル・ニッポン2024 提言」(2024年、古川俊治参院政審会長コメント); 月刊文藝春秋「政治家の履歴書・古川俊治」(2023年)
- 議員連盟資料: 超党派議連「医師国会議員連盟」設立趣意書・会員名簿(2011年)³⁵; 自民党「家族の絆特命委員会」議事概要(2018年2月); 超党派「AI社会推進議連」提言書(2023年)
- その他: Wikipedia「古川俊治」(2025年7月版)³³²(経歴・政策・発言の出典として朝日・毎日調査結果等を含む); 古川俊治議員Facebookページ投稿(2020年~2023年); 古川俊治事務所YouTubeチャンネル動画²⁵; 自民党広報Twitter投稿(2021年4月17日付)²⁵
1 2 4 51 古川 俊治(ふるかわ としはる):参議院 https://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/giin/profile/7007053.htm 3 6 24 26 27 28 29 32 34 35 36 37 38 39 40 49 50 54 55 古川俊治 - Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/古川俊治 5 7 42 44 52 古川 俊治 公認候補者|「日本の明日を切り拓く。」 | 2019年 第25回 参議院議員通常選挙 特設サイト | 自由民主党 https://www.jimin.jp/election/results/sen_san25/candidate/furukawa_toshiharu.html 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 53 基本政策 - 古川俊治 自民党参議院議員 https://www.toshiharu-furukawa.jp/policy 19 21 古川俊治 | Our People | TMI総合法律事務所 https://www.tmi.gr.jp/people/t-furukawa.html 20 生殖医療法案、4日に成立へ 「出自を知る権利」先送り:朝日新聞 https://www.asahi.com/articles/ASND25JDMND2UTFK00Y.html 22 総額532万円!自民党古川俊治議員が政治資金で高級ワインを買っ ... https://ameblo.jp/kkawapy/entry-12302740781.html 23 総額532万円 古川俊治議員が政治資金で高級ワイン爆買い|日刊ゲンダイDIGITAL https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/211627 25 自民党広報 on X: "【新型コロナワクチンQ&A】 #新型コロナ ... https://mobile.twitter.com/jimin_koho/status/1379629501974523909 30 議事録文庫 - 大文庫 https://kokkai.bunko.jp/books/jp.go.ndl.kokkai.117414260X01420100413 31 2月, 2018 - 古川俊治 自民党参議院議員 https://www.toshiharu-furukawa.jp/2018/02 33 12月, 2020 - 古川俊治 自民党参議院議員 https://www.toshiharu-furukawa.jp/2020/12 41 活動報告 - 古川俊治 自民党参議院議員 https://www.toshiharu-furukawa.jp/report 43 古川俊治事務所 - Facebook https://www.facebook.com/furukawatoshiharu/ 45 ニュース - 古川俊治 自民党参議院議員 https://www.toshiharu-furukawa.jp/news 46 【ぼくらの国会・第143回】青山繁晴×古川俊治「Dr.古川は明言 ... https://www.youtube.com/watch?v=dudRTJ9auyk 47 48 56 2025年の医療体制構築に取り組んだ6年 - 古川俊治・参院選立候補予定者に聞く◆Vol.1 | m3.com https://www.m3.com/news/open/iryoishin/685303