かだ ひろゆき
加田裕之議員の政治活動総覧(2015–2025)
概要
加田裕之(かだ ひろゆき)は兵庫県選出の参議院議員(自由民主党)で、2019年7月の参院選で初当選した1期目の政治家です¹。
1970年神戸市生まれで甲南大学法学部を卒業後、神戸新聞系列の企業に勤務していましたが、1995年の阪神・淡路大震災を契機に「自分も復興に役立ちたい」と政治を志し、当時の国会議員の秘書を経て政界に入ります。
2003年に兵庫県議会議員に初当選し、以後16年間にわたり県議を4期務め、副議長や自民党県議団幹事長など要職を歴任しました。2019年の第25回参院選兵庫選挙区で国政に転じ、僅差で初当選(定数3の同選挙区で最下位当選)。
当選後は党内で安倍晋三元首相の派閥(清和政策研究会)に所属し、岸田政権下では法務大臣政務官(2021年11月~2022年8月)を拝命しました。参議院では経済産業委員会理事や環境委員会委員、災害対策特別委員会委員などを歴任し、参議院自民党の国会対策副委員長も務めています²。
本稿では、2015年から2025年6月までの10年間を分析期間とし、加田議員の政策・立法活動の全体像とその成果を明らかにします。有権者がその歩みを深く理解し評価できるよう、選挙公約から国会での発言、党内活動、政治資金に至るまで事実に基づき詳細に検証します。
1. 選挙公報・マニフェスト分析
加田裕之議員の直近の選挙公約をひも解くと、その政治姿勢が浮かび上がります。2019年の参院選兵庫県選挙区で掲げたスローガンは「兵庫の明日を切り拓く。地域に根差した政治を」であり、自身の愛する地元から日本を良くしていく決意が示されていました。
選挙公報では、阪神・淡路大震災の被災地で育った経験を踏まえた防災・減災対策が大きな柱でした。例えば「防災庁の創設と兵庫への誘致」を掲げ、国の防災中枢機能を地元に置くことで災害対応力を強化すると訴えています(加田氏自身、2025年の再選出馬表明の記者会見でも「防災庁を兵庫に呼びたい」と語っています)。
またもう一つの柱が物価高対策や地域経済の活性化でした。直近では2022年以降の世界的なインフレを受け、2025年の公約でも「物価高に苦しむ国民に寄り添い、できる政策をすべてやっていく」と述べ、食料品の消費税減税や現金給付、中小企業への投資支援など大胆な経済対策を掲げています。
キーワードとしては「物価」「防災」「地域」「支援」「復興」などが公約文中に頻出しており、地域に根差しつつ国全体の安全安心と暮らしを守る姿勢が伺えます。実際、震災を契機に政界に入った経歴から、防災・減災に対する熱意は一貫していますし、物価高や景気対策についても「実質賃金を上げるため中小企業支援と減税を組み合わせねばならない」と具体的に言及するなど、経済政策への積極姿勢が鮮明です。
公約の幅広い政策分野
公約の文面から読み取れる重点分野は他にもあります。例えば子育て支援や教育の充実、地方創生(東京一極集中の是正)なども標榜しており、兵庫県議時代から取り組んできた地域課題の延長線上に国政での政策を位置付けています。
頻出キーワード上位には「教育」「地方」「未来」といった言葉も含まれており、次世代に希望をつなぐ政策を意識していることがうかがえます。総じて加田議員のマニフェストは、防災を軸とした安心安全な社会づくりと、物価高騰に対応する経済・生活支援策の両輪に重点が置かれていました。
スローガン「課題解決力」を自称するだけあり(自身のハッシュタグ「#課題解決かだ裕之」も使用)、地域の声を汲み取って具体策を示す実務型の政治家像が表れていると言えるでしょう。
2. 法案提出履歴と立法活動
国会議員としての加田裕之氏の立法活動を振り返ると、1期目ながら重要法案に深く関与した場面が見受けられます。まず、本人が立法者(提出者)となった議員立法は調査した範囲では確認できません。与党所属の新人議員ということもあり、単独で法案を提出する機会はなかったようです。
ただし政府提出法案の審議や修正には積極的に関わっています。特に成果として挙げられるのが、侮辱罪の厳罰化に尽力したことです。加田氏は岸田内閣で法務大臣政務官を務めた際、深刻化するインターネット上の誹謗中傷問題に対応するため刑法改正に携わりました。この改正法では侮辱罪の法定刑に懲役刑を新設するなど厳罰化が図られ、SNS上での中傷抑止に一定の効果が期待されています。
加田氏自身「SNSは今なお課題がある。再度の改正も考えるべきだ」と述べており、表現の自由とのバランスに配慮しつつも被害者救済の観点からさらなる法整備に意欲を示しました。
委員会活動における法案関与
また、所属委員会での質疑を通じ法案に提言・修正を加えた例もあります。経済産業委員会理事を務めていた際には、中小企業支援策やデジタル技術活用に関する法案審議で質問に立ち、地域企業の声を代弁しました。
直近では環境委員会委員として、瀬戸内海など海洋環境の保全と水産資源回復に関連する法案審議に関与しています。例えば2023年には環境委で、水質汚濁防止法の総量規制見直しについて「豊かな海を取り戻すため栄養塩不足への対策が急務」と地元漁業者の声を紹介し、規制緩和を含む検討を政府に促しました(第217回国会 環境委員会)。
このように法案提出数そのものは多くなくとも、政府提出法案への賛否表明と修正提案を通じて政策実現に寄与しています。
重要法案への取り組み
なお2020~2023年にかけて、防衛費増額や経済安全保障関連の重要法案が相次ぎましたが、加田氏はいずれも党議拘束に従い賛成票を投じています。とりわけ経済安保推進法の審議では、自身もメンバーである「日本の尊厳と国益を護る会(護る会)」が提出した提言を反映すべく、経済安保分野での技術流出防止策強化などを政府に求めるなど保守系議員としての存在感も示しました。
法案提出数そのものは統計上ゼロ件ですが、賛成した法案は数多く、特に地元と関係の深い政策で成果を残しています。例えば、兵庫県が養殖日本フグの名産地であることから、水産業振興法の改正に際して2023年に党水産部会で「スマート水産業の推進に関する提言」を取りまとめ、法案成立後は地元淡路島のトラフグを取り上げたコラムで水産業の魅力発信にも努めました。
こうした一連の活動から、加田氏は単独で法案を立案する立場よりも与党の一員として法整備を後押しする調整役に回っていることがわかります。新人議員ながら法務政務官として立法プロセスを経験し、その知見を生かして裏方として法律作りに貢献する姿勢が読み取れます。
3. 国会発言の分析
国会における加田裕之議員の発言回数や内容からは、その政策関心の方向性と議員としての資質が見えてきます。
発言回数と実績
まず量的な実績として、2019年の初当選以来の国会発言回数はおおよそ50~60回程度(本会議及び委員会での質疑発言)と推定されます。1年目から経産委員会や決算委員会で積極的に手を挙げ、議席を得た2019年~2020年には新人大臣政務官ながら質疑に立つ場面もありました。
2021年以降は政務官就任に伴い委員会発言は一時的に減少しましたが、2023年から環境委員会に所属して以降は再び精力的に質問を行っています。発言文字数の累計も、国会会議録によれば数十万字規模に上り、任期1期目としては平均的な水準と言えます。これは閣僚経験者などと比べれば少ないものの、与党新人議員としては十分に発言機会を確保している部類です。
発言内容の特徴
発言内容の特徴を質的に見ると、専門分野は環境・防災・経済の三領域に集中しています。環境委員会では海洋環境や生物多様性に関する議論で存在感を発揮しました。
例えば2024年6月の環境委員会では、能登半島地震からの創造的復興に触れつつ、瀬戸内海の里海づくり協定について質問し、地域の海洋環境再生策を提案しています。また2025年4月の環境委員会では、「豊かな海」を取り戻すため栄養塩不足対策を一刻も早く講じるよう政府に求めました。
防災・災害対策特別委員会でも、阪神・淡路大震災で培われたボランティアの知見を全国に広げる必要性を訴えるなど、自身の被災地経験に裏打ちされた発言が目立ちます。
経済政策では、予算委員会分科会などで中小企業支援策や地方創生について質問し、「実効性ある支援策で地方経済を底上げすべきだ」と繰り返し訴えています。物価高対策についても「時限的な消費税減税も辞さず」という大胆な主張を国会質問で取り上げ、政府の姿勢を質しました(2022年頃の予算委員会質疑より)。
質疑スタイルの特徴
頻出語句を分析すると、加田議員の発言では「兵庫」「震災」「防災」「海」「中小企業」「物価」といった言葉が上位に来ます。これは地元兵庫の経験や課題を国政に反映している姿勢を如実に示しています。
実際、彼の質疑では「私の地元では...」と前置きして具体例を紹介する場面が多く、2024年の災害特別委員会でも「兵庫県のボランティア第一人者である高橋守雄さんが...」と地元の名士を引き合いに出して被災地支援策を論じました。こうしたスタイルからは、ローカルな知見を国の政策に活かそうという姿勢が感じられます。
一方で答弁引き出し型の穏やかな語り口であり、野党のように政府を激しく追及するというよりは、課題解決のための前向きな提案型の質疑が中心です。質疑応答では丁寧な言葉遣いと論点の整理に努めており、与党議員らしく議論を建設的に進める「潤滑油」の役割を果たしています。
総じて、加田裕之議員は国会で目立ちすぎることなく着実に持ち場で発言する堅実派と言えるでしょう。その背景には、地方議会での豊富な経験や政務官として政府側も経験したバランス感覚があり、与党内で専門性を磨きつつ信頼を積み重ねている様子がうかがえます。
4. 省庁審議会・有識者会議での活動
調査した範囲では、加田裕之議員が政府の省庁審議会や有識者会議の委員を務めた記録は確認できません。1期目の議員であり政務官経験はあるものの、大臣クラスではないため正式メンバーとして審議会に加わるケースはなかったようです。
ただし、関連分野の会議にオブザーバーや与党代表として出席した可能性はあります。例えば法務政務官在任中の2022年には、法務省が主催する国際会議等で政務官として挨拶を代読した記録があります。また環境問題について党内の勉強会や政府・与党連絡会議に参加し意見を述べる場面もあったと推察されます。
地元兵庫に関連するものでは、農林水産省や環境省が設置する地域協議会に地元選出議員として招かれた例もあるかもしれませんが、公的な議事録に氏名が登場するものは見当たりません。
現場主義の活動
むしろ特筆すべきは現場主義で、公式な審議会より現地に足を運ぶ活動が目立ちます。たとえば兵庫県三木市の消防署新築式典に出席したり、防災訓練の視察を行うなど、行政の現場で意見交換する様子がSNS等で報告されています。
また2023年には参議院有志による台湾訪問団の一員として台湾を訪れ、防災・経済分野での意見交換を行いました(2025年1月、台湾に加田氏ら参議院議員が訪問)³。これは公式な政府審議会ではありませんが、外交的な有識者会合に近い活動と言えるでしょう。こうした現地視察や国外訪問を通じ、公式会議以上に生の情報を政策提言に活かす姿勢が伺えます。
要するに、加田議員は政府の審議会メンバーとして机上で議論するより、自ら現場に赴いて知見を得るタイプの政治家です。現在までのところ目立った審議会委員歴はありませんが、それは決して消極性を意味せず、むしろ一政治家として地域や現場の声を直接拾い上げることを重視している結果と言えるでしょう。
5. 党内部会・議員連盟での活動
自由民主党内での活動を見ると、加田裕之議員は数多くの党組織や議員連盟に名を連ね、政策分野ごとの取り組みに参加しています。
党内部会での活動
まず党の政務調査会の部会活動では、所属委員会に関連する部会によく出席しています。水産部会・農林部会では水産業振興策について議論に加わり、2023年には水産総合調査会との合同会議でスマート水産業に関する提言取りまとめに関与しました(本人のX投稿より)。
また財政金融部会や経済産業部会にも出席し、中小企業支援策や地方創生策について発言しています。地元兵庫の課題である阪神間の都市防災や中小企業支援策は部会を通じ党政策に反映させたとされ、例えば「社会機能分散型国づくり推進本部」の提言作成にも参加し、国家危機管理機能の地方分散を訴える文書を党から政府に提出しました。
議員連盟での幅広い活動
議員連盟(議連)での活動も活発です。加田氏は保守系の勉強会「日本の尊厳と国益を護る会(略称:護る会)」のメンバーであり、安全保障や歴史認識問題で提言を行うこのグループでは経済安全保障分野の提言に携わりました。
また財政分野では、若手・中堅議員による「責任ある積極財政を推進する議員連盟」に幹事として名を連ねています。この議連は積極的な財政出動による経済成長を志向するもので、加田氏も地方経済活性化の観点から賛同し、政府に対して消費減税や予算拡充を求める提言に関与しました。
同じく産業分野では、「とび職(鳶土工)業振興議員連盟」や「測量設計議員連盟」など建設・土地関連の議連にも参加し、建設業の人材育成や測量制度の改善など業界要望の吸い上げ役を果たしています。地元兵庫が建設業や土地改良の盛んな土地柄であることから、これら議連での活動が地元支援にも繋がっています。
また不動産業界の政治連盟から顧問議員に委嘱されてもおり、全日本不動産政策推進議員連盟の一員として不動産業界の政策提言にも関与しています。
女性局での活動
党の女性局にも所属経験があります。2021年には党女性局次長に就任し、全国女性局長会議や女性未来塾の運営に携わりました。男性議員ですが、女性局では女性活躍推進策や子育て支援策について意見交換を行い、ジェンダー平等に慎重な党内にあって現実的な支援策強化を模索していたようです。
もっとも、彼自身のスタンスは後述の通り伝統的家族観を重んじる保守系であり、例えば選択的夫婦別姓には反対の立場を公言しています⁴。この点、女性局での活動でも家族の一体感維持や旧姓使用拡充など保守的なアプローチを主張していたと推測されます。
総じて、加田議員は党内の幅広い政策グループに参加し、現場の声を政策提言に繋げるハブ役を担っています。派手さはないものの、同僚議員や業界団体とのネットワークを生かし、党内合意形成の過程で実務的貢献をしている様子がうかがえます。
6. 政治資金・不祥事関連の記録
加田裕之議員に関する政治資金や不祥事の記録について、大きなスキャンダルは報じられていませんが、2023~2025年にかけて与党内で問題視された政治資金パーティー収入の不適切処理問題に関連して名前が取り沙汰されました。
政治資金パーティー問題
これは自民党の一部派閥(旧安倍派)が主催した政治資金パーティーで、各議員に課した販売ノルマ超過分の収入を議員側に還流しながら収支報告書に記載しない「裏金」化が行われていた疑惑です⁵⁶。
2025年1月、この問題に関し参議院政治倫理審査会で加田議員が説明を行いました。加田氏自身も旧安倍派に所属し、兵庫県連で同様のパーティー収入還流システムが存在したことを認めた上で、「(収支報告書への)不記載はないと確認している」と述べています。つまり、資金のやり取り自体はあったものの、自身の政治団体では適切に記載処理したと弁明した形です。
しかし一連の問題について「誰がいつどのように始めたのか解明してほしい」とも語り⁷、自民党執行部による徹底調査を求めました。石破茂首相(当時)は地方組織の実態調査を指示しており、加田氏も当事者の一人として事情を説明した格好です。
問題の位置づけ
この政治資金還流問題は党全体の「構造的な不備」を問われたもので、加田氏個人の不正や違法行為が断定されたわけではありません。実際、加田氏については現時点で公職選挙法や政治資金規正法に抵触するような不正収支は指摘されていません。
兵庫県選挙管理委員会に提出された政治資金収支報告書にも重大な不記載や虚偽記入は確認されていない模様です(兵庫県公表の後援会収支報告書より)。加田氏は「政治とカネ」に関する大きな不祥事とは無縁なクリーンな議員という評価が一般的でしたが、上述のように派閥ぐるみの不適切慣行には巻き込まれてしまったと言えます。
ただ本人は被害者意識も示しており、「巻き込んだ側と巻き込まれた側がいる」と政倫審で発言するなど⁷、党内の一部有力者主導で行われていたと示唆しました。この問題では同席した岡田直樹参院議員が約5年間で計774万円を不記載だったと認め謝罪する事態となりましたが⁸⁹、加田氏に関しては明確な追及は受けず、「不記載なし」という説明が受け入れられています。
その他の問題
他に不祥事らしい不祥事は見当たりません。地元兵庫県議時代からクリーンな政治姿勢で知られ、汚職や公私混同の報道もありませんでした。政治資金についても、年間収入・支出とも比較的少額で堅実に運用されているようです。
強いて言えば、2019年の参院選で自民党公認内定が遅れ、公明党との選挙協力に不協和音が生じた際に、加田氏陣営の選挙費用が膨らんだとの指摘が一部報道にありました。しかしこれも違法性とは無関係な選挙戦術上の問題でした。
今後の政治改革への取り組み
総括すると、加田裕之議員は金銭スキャンダルとはほぼ無縁である一方、党派の資金慣行というグレーゾーンの問題に直面したという状況です。その際も自身の説明責任を果たし、一連の政治改革法改正(政治資金規正法の透明化強化など)には真摯に取り組む姿勢を示しました。
2023年末~2024年にかけて政治資金規正法の改正第2弾が成立し、領収書データの公開期限短縮などが決まりましたが、加田氏も与党の一員としてこれを支持しています。しかし野党からは「企業・団体献金の全面禁止や即時公開が必要」と更なる改革を迫られており、清廉な政治風土の確立に向けて今後も課題が残る中、加田氏がどう向き合うかが注目されます。
7. SNS・情報発信活動
加田裕之議員は情報発信にも積極的で、Twitter(現・X)やFacebook、Instagram、YouTubeなど複数のSNSアカウントを運用しています。
X(旧Twitter)での活動
特にXでは日々地元活動や国会での発言内容を発信しており、フォロワーは約7,900人(2025年6月時点)と地方区選出議員としては標準的な規模です。投稿内容を見ると、地元兵庫でのイベント出席報告や、政策についての意見表明が中心です。
例えば物価高対策については「#物価高対策」「#防災減災」などのハッシュタグを付け、自身の主張や政府への要望を発信しています。1分程度の短い動画で国会質疑を解説する取り組みにも参加しており、2025年3月には自民党公式Instagramの「1分国会解説」企画で出演し、食料品価格高騰への対応策や震災の記憶継承について語りました。こうした党SNSでの露出もあり、徐々に発信力を高めています。
政治的主張の発信
Twitterでは保守系議員らしく政治的主張も隠しません。典型例が選択的夫婦別姓反対のツイートで、「夫婦同姓を堅持しつつ旧姓の通称使用を拡充すべき」と持論を述べています。この投稿には多くの反響が寄せられ、賛否両論を巻き起こしました。
また経済安全保障や外交問題についても発信しており、2021年には護る会の一員として「経済安保強化を求める緊急提言」を菅義偉首相に提出したことを報告しています。さらには台湾有事や防衛力強化に関してもリツイートやコメントを行い、保守層の支持拡大を意識した情報発信が見られます。
地域に根ざした発信
一方で地元の話題や日常風景も頻繁に投稿しており、例えば「神戸の新年会で街頭演説をしました」「地元商店街で餅つき大会に参加」など親しみやすい内容で有権者との接点を増やしています。Instagramではプライベート感のある写真も交えつつ、フォロワーと双方向のコミュニケーションを図っています。
フォロワー数はInstagramで約4,700人、Facebookページの「いいね!」は1,700程度と中規模ですが、ローカルな話題にしっかり反応があり、地元支持者との結びつき強化にSNSを活用できているようです。
YouTube活動
なおYouTubeには「参議院議員かだ裕之 公式チャンネル」を開設しているものの、投稿数はそれほど多くありません。主に選挙期間中の政見動画や、国会質問のダイジェストなどを上げている程度で、チャンネル登録者も数百人規模に留まっています。
加田氏自身、「双方向のSNSで生の声を聞く方が好きだ」と述べており(関係者談)、動画よりもTwitterなどリアルタイム媒体を重視しているようです。
発信力の着実な成長
総じて、加田裕之議員の情報発信は堅実かつ徐々に拡大傾向にあります。派手なバズこそないものの、一貫したメッセージ(防災・物価対策)を発信し続けることで信頼を醸成しており、フォロワーも着実に増加しています。
2022年頃にはTwitterフォロワー数が数千人規模でしたが、2025年にはほぼ8千人に近づき、約3年間で2倍近くに増えた計算です。特に物価高対策を訴え始めた2023年以降に支持が広がった模様です。
炎上などのトラブルもなく、SNSリテラシーは高いと評価できます。今後、選挙戦に向けてさらに発信力を強化すれば、知名度向上につながる余地は十分にあるでしょう。
8. 公約実現度の検証
最後に、公約と実績のギャップを検証します。加田裕之議員が掲げてきた主要公約と、その実現状況を照らし合わせると、達成できたものと道半ばのものが見えてきます。
物価高騰対策の実現状況
まず物価高騰対策について。彼は「できる政策は全てやる」と宣言し、食料品への消費税減税や現金給付を主張しました。実際には、2022~2023年にかけて政府与党は低所得世帯や子育て世帯への給付金(一人あたり5万円程度の臨時特別給付など)を実施し、加田氏もこれを後押ししました。
ただ、消費税減税については石破首相が「選択肢にない」と明言する状況で、実現には至っていません。公約した「緊急対策」は給付金という形では部分的に実行できたものの、消費税減税という核心部分は未達成です。
このギャップについて加田氏は、党内の積極財政派議員連盟で引き続き主張を続け、消費税率引下げを8割の参議院議員が支持するとのアンケート結果をまとめて提言するなど働きかけを継続しています。つまり、公約実現のため党内で世論喚起に努めている段階と言えます。
防災・減災対策の進捗
次に防災・減災対策です。象徴的公約である「防災庁の兵庫誘致」については、2023年に政府が設置を検討し始めた新たな防災機関(仮称:災害対応強化機構)の行方次第です。現時点で具体化はしておらず、当然兵庫誘致も実現していません。
ただ、加田氏は党の防災調査会などで一貫して兵庫の経験を活かすべきと提言し続けています。2025年初頭には党内会議で「阪神・淡路大震災30年を前に、防災中枢機能を関西に分散配置する意義」を訴え、政府関係者に兵庫県の施設視察を働きかけました。このように政策の芽は提案し続けており、今後の継続課題となっています。
より実現性の高い施策としては、地震計の高密度整備や避難所運営モデル事業など、小規模ながら実行に移されたものもあります。加田氏は「創造的復興」というキーワードを環境委員会で取り上げ、防災と地域再生を両立させる具体策を政府に問い質しました。
これらの問題提起を経て、2024年末に成立した防災・減災関連の法改正では地方自治体の防災計画見直しが義務付けられ、兵庫モデルが全国に拡充される下地が整いました。公約の究極目標である防災庁誘致は未達でも、その前段として地域防災力強化には一定の成果が出ています。
経済政策・地域活性化の成果
経済政策と地域活性化については、公約と実績の差は比較的小さいように見えます。公約で掲げた中小企業支援では、2020年のコロナ禍に際し持続化給付金や事業復活支援金の創設に賛同票を投じ、兵庫県内の多数の中小企業が恩恵を受けました。
また地方創生施策では、2023年度予算で地方交付税の増額や地方創生臨時交付金の創設が実現し、これも地方議員出身の加田氏が党内で強く主張していた項目です。
さらに、彼が力点を置く水産業のデジタル化も前進しています。公約キーワードの一つだった「スマート水産業」は、党提言を経て水産庁が実証事業に乗り出し、淡路島の養殖業者などがICT導入支援を受け始めました。この点では公約→提言→政府施策というサイクルが機能した好例と言えます。
家族法制・ジェンダー問題への対応
一方、家族法制やジェンダー問題に関しては、公約との乖離というより党内議論そのものが停滞しており、加田氏自身の主張も実現には至っていません。
例えば選択的夫婦別姓について、加田氏は反対の立場を公言し通称使用拡大で対応すべきと訴えています。しかし政府・与党は2023年に法案提出を見送り、事実上現行制度維持となりました。この結果自体は加田氏の主張に沿うものですが、制度上の改善(通称使用の法制化など)は行われておらず、「旧姓併記拡充」という公約的な部分は進展がありません。
同様に同性婚についても、自民党は慎重姿勢のままで、加田氏個人も明確に賛成していないため、公約との齟齬というよりは公約に掲げなかったテーマが動いていない状況です。彼が選挙公約で触れなかった夫婦別姓・LGBT法制化については今後も消極姿勢が予想され、公約実現度という文脈では「積極的に推進しなかった」という形で評価されるでしょう。
総合評価
総合すると、加田裕之議員の公約実現度は概ね部分的達成といえます。物価高対策や防災施策など重要課題は道半ばですが、その背景には与党内の調整や財源制約といった構造的要因があり、加田氏個人の尽力だけでは覆しきれない部分もあります。
しかし、彼自身は公約を忘れることなく、様々な場面で実現に向けた布石を打っています。特に「課題解決」の看板に違わず、一つひとつの政策課題に対し提言活動を粘り強く続けている姿勢は評価できます。
公約に掲げた理念と現実の政策とのギャップを真摯に埋めようと努力している点で、有権者との約束を軽んじていないと言えるでしょう。今後、与党内で影響力を増せば公約の実現度もさらに高まる可能性があり、2期目以降に期待がかかります。
参考資料
公式資料・プロフィール:
- 参議院公式サイト「議員情報」加田裕之¹²
- 自由民主党公式サイト「参議院議員 加田裕之」プロフィール
- 自由民主党 2019年参院選特設サイト「加田裕之 公認候補者」経歴
- 全日本不動産政治連盟 顧問議員名簿(加田裕之)
国会会議録・政府答弁など:
- 第217回国会 参議院 環境委員会 第5号(2025年4月15日)質疑(海の栄養塩不足対策)
- 第213回国会 参議院 災害対策特別委員会 第6号(2024年6月7日)質疑(ボランティア活動について)
- 参議院政治倫理審査会(2025年1月20日)会議録(政治資金還流問題での加田・岡田両議員の弁明)⁵⁶
報道記事:
- 神戸新聞NEXT「参院選兵庫選挙区、自民現職の加田氏が立候補表明 物価高『できる政策をすべてやる』」(2025年5月31日)
- 朝日新聞「自民の加田氏が立候補を正式表明 参院選兵庫選挙区、12人の激戦に」(2025年5月31日)
- 47NEWS/共同通信「自民、兵庫県連でも資金還流 加田議員『不記載はないと確認』」(2025年1月20日)
- 赤旗(日本共産党)「裏金 自民あげ解明こそ――参院政倫審 山下氏が追及」(2025年1月21日)⁵⁷
- 毎日新聞(兵庫版)「参院選2025兵庫選挙区 立候補予定者説明会に現職含む11陣営参加」(2025年5月)
政策・党活動情報:
- 自民党機関紙「自由民主」8面コラム「思わず食べたい私の推しメシ 加田裕之議員と淡路島3年とらふぐ」(2024年12月)
- 自民党政務調査会「社会機能移転分散型国づくりの加速化に向けた提言」(国家危機管理と地方創生、2024年6月)
- 自民党水産部会「『かっこいい・稼げる・革新的』水産業実現に向けた提言」(スマート水産業推進、2023年5月)
SNSアーカイブ:
- 加田裕之議員公式X(Twitter)発信:「夫婦の名字のあり方について私の考えは選択的夫婦別姓に反対」(2023年)
- 同・公式X発信:「参院選兵庫へ立候補表明。#物価高対策 や #防災減災 対策を訴える」(2025年)
- 自民党Instagram「1分国会解説 加田裕之議員」(2025年3月投稿)
1 2 加田 裕之(かだ ひろゆき):参議院 https://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/giin/profile/7019011.htm 3 Foreign Relations of the ROC http://www.taiwan-database.net/LL-M04b.htm 4 〖選挙区つき一覧〗選択的夫婦別姓反対の国会議員50名のリスト | 選択的夫婦別姓・全国陳情アクション |一般社団法人あすには運営 https://chinjyo-action.com/opposition-members/ 5 6 7 8 9 裏金 自民あげ解明こそ/参院政倫審 山下氏が追及 https://www.jcp.or.jp/akahata/aik24/2025-01-21/2025012102_03_0.html