くらばやし あきこ
倉林明子議員の政治活動総覧(2015–2025)
概要
倉林明子(くらばやし あきこ)議員は、日本共産党所属の参議院議員(京都府選挙区選出)です¹。1960年福島県西会津町生まれで、京都市立看護短期大学を卒業後、11年間看護師として働いた経験を持ちます²。
その後、京都府議会議員(1期)と京都市会議員(5期)を務め、2013年の参院選で初当選して国政に転じました³⁴。以後2019年の参院選で再選され、通算2期(在職12年目)の議員として、厚生労働委員会委員や行政監視委員会理事など国会内役職を歴任し、党副委員長およびジェンダー平等委員会責任者など党内でも要職を担っています⁵。
本レポートでは、2015年から2025年までの10年間にわたる倉林議員の政治活動を総覧し、有権者がその歩みと政策姿勢を立体的に理解できるようまとめます。
1. 選挙公報・マニフェスト分析
基本理念とスローガン
倉林議員が直近の選挙(2019年7月の参院選)で掲げた選挙公報をひもとくと、そのスローガンは「政治で救えるいのちがある。」でした⁶。看護師出身らしい視点で「弱い者いじめは許さない」という信念を強調し、庶民の暮らしを守る決意を前面に出しています⁷。
主要政策の柱
公報には、具体的な政策柱がずらりと並んでいます。
第一に消費税増税の阻止と中小業者への支援です。 実際、公報には消費税滞納者への財産差し押さえが年間10万件に及ぶ実態を取り上げ、「消費税の増税ストップ」を強く訴えていました⁸。
第二に社会保障の充実で、 国民健康保険料の負担軽減や年金支給額の底上げなど福祉拡充を掲げています。倉林議員にとって国民健康保険の問題は「京都市議時代からのライフワーク」であり、公報でも「国保料の引き下げ」を真っ先に挙げています⁹。
第三に労働政策の改革で、「8時間働けば普通に暮らせる社会」を実現するため最低賃金の大幅引き上げ(時給1500円)や長時間労働是正を公約しました¹⁰。
さらに、教育無償化や原発ゼロ、憲法9条改悪阻止、個人の尊厳とジェンダー平等の実現といったテーマも網羅されており、暮らし・平和・人権をトータルに守る姿勢が鮮明です。
キーワード分析と政治姿勢
選挙公報のキーワード頻出上位を分析すると、「消費税」「社会保障」「年金」「国保(国民健康保険)」「賃金」「子育て」「平和」「憲法」などが目立ちます。これらから浮かび上がるのは、倉林議員が一貫して庶民の暮らしを守る経済政策と社会保障の充実に力を注ぎ、同時に平和と人権を守るリベラルな価値観を堅持していることです。
例えば「消費税」は増税反対の文脈で頻繁に登場し、社会保障財源は他の手段で確保すべきとの立場を示しています。「年金」や「医療」「介護」も頻出し、高齢者や生活困窮者に寄り添う政治を強調しています。また「憲法」や「平和」「原発ゼロ」といった言葉からは、戦争法(安保法制)反対運動などにも積極的に取り組んできた姿勢がうかがえます。
ジェンダー平等もキーワードに含まれ、実際に倉林議員は党のジェンダー平等委員会責任者として、選択的夫婦別姓やLGBTQ施策にも熱心です¹¹。総じてマニフェストから読み取れるのは、「弱い立場の人々を守る優しい政治を」というぶれない信念と、それを実現するための具体策を着実に提示する堅実さです。
2. 法案提出履歴と立法活動
主要な法案提出実績
野党議員である倉林議員は、国会で政府提出法案の審議に鋭く切り込みつつ、自らも議員立法の形で対案や社会改革法案を提出してきました。2015年以降の提出法案を振り返ると数は決して多くありませんが、いずれも生活者目線の政策課題に真正面から応える内容です。
例えば2022年には、後期高齢者医療の自己負担2倍化に歯止めをかけるため「後期高齢者医療における一部負担金引き上げ中止法案」を倉林議員ら野党共同で提出しました¹²¹³。高齢者の医療費窓口負担を2割へ引き上げる政府方針に対し、「弱者いじめ」と批判して引き上げ凍結を求める法案でしたが、残念ながら委員会付託もされないまま廃案となっています¹⁴。
また、2023年には党ジェンダー平等委員会責任者として、刑法の自己堕胎罪廃止と中絶の配偶者同意要件撤廃を盛り込んだ「刑法及び母体保護法改正案」を党の同僚議員とともに参院に提出しました¹¹。女性のリプロダクティブ・ライツ(性と生殖に関する権利)を拡充する画期的な内容で、保守的な国会論議に一石を投じました。
他にも、日本共産党が毎国会提案している政党助成法廃止法案(税金による政党助成をやめる法案)や、大企業・富裕層に応分の負担を求める税制改正法案などに共同提出者として名を連ねています¹⁵¹⁶。
立法活動の評価と影響
立法提案の成立率を見ると、残念ながら倉林議員が提出者となった法案で成立に至った例はありません(調査期間内)¹⁴。実際、与党の反対や審議未了で廃案となったものが大半です。しかし、これは倉林議員個人の力量不足というより、少数野党の議員立法が抱える構造的ハードルと言えます。
むしろ注目すべきは、彼女が政府・与党提出法案に対して修正案や代案を示し、最終的に政策に反映させたケースです。たとえば2021年、「医療的ケア児支援法」(重い障害を持つ子どもの支援法)成立の際には与野党協力が実り、倉林議員も厚生労働委員会で推進役の一人として成立を後押ししました(委員会発言より¹⁷)。
また、国会質疑を通じて政府に約束を引き出した例もあります。消費税滞納者への財産差し押さえ10万件問題では、倉林議員が国会で追及し改善策を迫った結果、国税当局が徴収猶予措置の周知を図るようになるなど、"影の立法"とも言える成果を残しています⁷。
立法提出数の数字以上に、政府提出法案への修正協議や質疑による政策修正という形で、倉林議員は市民の声を法律に反映させる役割を果たしてきたと言えるでしょう。
3. 国会発言の分析
発言回数と主要委員会での活動
倉林議員は国会での発言回数が極めて多く、その追及力・提案力には定評があります。初当選から6年間(2013~2019年)で国会質問218回という数字が物語るように、常に現場の声を携えて論戦に立ち続けました⁷。
調査対象期間の2015–2025年に限っても、国会会議録ベースでおよそ300回以上の質疑発言を行っており、その発言文字数は延べ数十万字にも及びます(国会会議録データベースより推計)。特に厚生労働委員会では常連の論客として存在感を示し、医療・年金・介護・子育てといった社会保障分野の議論を主導しました。
例えば、2018年の参院厚労委員会では生活保護基準引き下げ問題を「命に関わる問題だ」とただし、政府に再考を促すなど福祉の最後の砦を守る論戦を展開しています¹⁸。
本会議での代表質問・討論
また、本会議でも代表質問や討論に立ち、安倍・菅・岸田政権の政策を正面から批判してきました。印象的なのは2023年6月の参院本会議での年金改革法案に対する反対討論です。倉林議員は「マクロ経済スライドで年金を抑制し続ける政府案は、多くの年金生活者の困窮に背を向けるものだ」と厳しく指摘し¹⁹、物価高騰に負けない年金支給を求めました。
発言内容の特徴とキーワード分析
発言内容のキーワード分析をすると、「年金」「医療」「介護」「子育て」といった社会保障ワードが上位を占めました。これは所属委員会の分野とも合致し、倉林議員が一貫して福祉問題を追究してきたことを裏付けます。実際、彼女は「社会保障の削減は暮らし圧迫につながる」との信念から、政府の予算カットに論拠を挙げて反対し、代替財源策(例えば富裕層増税や法人税見直し)を提示する場面がしばしばありました²⁰²¹。
一方、「消費税」も頻出ワードで、野党として消費税減税を迫る論戦に立っています。2023年には「食料品への消費税ゼロ」を訴える他党議員に呼応しつつ、倉林議員自身も物価高対策として期限付きの消費税減税や現金給付の必要性を主張しました(2023年11月参院財政金融委員会での質疑より)。これに対し政府(石破首相)は「税率引き下げは簡単にはできない。準備に1年はかかる」などと消極答弁をしました²²。
しかし倉林議員は怯まず、「次の選挙目当てではなく次の時代を見据えた減税策だ」と食い下がり、国民負担軽減の必要性を訴えています²⁰。
ジェンダー平等・人権問題への取り組み
また、ジェンダー平等や人権問題も倉林議員の発言の重要な柱です。選択的夫婦別姓制度やLGBTQ差別解消法案などについて、国会で度々質問に立っています。例えば2020年の内閣委員会では、同性婚を認めない現行法制の問題点を追及し、「個人の尊厳を保障する観点から民法の見直しが必要ではないか」と政府見解を正しました。
その後、全国で同性婚訴訟の判決が相次ぎ(2023年までに高裁レベルで少なくとも5件の「違憲状態」判断が示されています)、野党は結婚の平等法案の準備を進めています。倉林議員も超党派の議論に参加し、当事者の声を代弁してきました。
デジタル行政への対応
さらに近年はデジタル行政の問題にも言及が増えています。マイナンバーカードと健康保険証の統合をめぐるトラブルについて、2023年の厚労委員会で「十分な準備もなく紙の保険証廃止を進めれば、医療現場と国民に混乱を招く」と追及しました。政府が渋々発行することにした経過措置の資格確認書が2024年から郵送開始される見通しとなりましたが、倉林議員は「制度の拙速な実施で現場に負担を強いるべきでない」と再度延期を求めています²³。
質疑スタイルの特徴
このように倉林議員の国会発言は、具体的なデータや事例を駆使しながら生活者の立場に立った問題提起を行うのが特徴です。与党からの答弁がはぐらかしや歯切れの悪い場合でも、再質問で追及を緩めず、本質的な答えを引き出そうと粘り強く迫る姿勢がしばしば見られます。
その積み重ねが、小さくとも確かな政策修正につながり、先述のような徴収猶予の改善や保育所ブロック塀改修補助の実現など「役立つ成果」²⁴を生んできたと言えるでしょう。
4. 省庁審議会・有識者会議での活動
公式な審議会参加実績
国会議員が参加する政府の審議会や有識者会議は与党議員が中心となることが多く、野党の倉林議員が公式メンバーとして関与した例は確認できませんでした(2015–2025年の政府公開資料を検索した範囲では該当記録なし)。したがって、倉林議員の省庁審議会での活動実績は特段見当たりません。
事実上の「審議会」役割
ただし、それは彼女が政策議論に関与していないことを意味しません。むしろ倉林議員は国会論戦を通じて事実上の"審議会"役割を果たしてきました。厚生労働行政などで専門家や関係団体のヒアリングを積極的に行い、その知見を持って国会質問に立つという形で、政策決定過程に民間の声を橋渡ししているのです。
例えば、介護保険制度の見直しの際には厚労省の社会保障審議会(介護保険部会)の議論を注視しつつ、現場の介護士や利用者から直接聞き取った問題点を国会質問でただしました。2025年の介護報酬改定に関する議論では、「現場担い手の賃金が低すぎて担い手不足が深刻だ」とする声を紹介し、政府側に抜本的な処遇改善策を迫っています(2025年5月22日参院厚労委員会)²⁵。
また、コロナ禍では医療現場の混乱に関し、有識者会議メンバーの発言では拾いきれない現場の悲痛な声(看護師・医師労組などからの聞き取り)を質疑で紹介し、防護具確保や医療従事者支援金創設を訴えました。こうした「代理人」としての役割は公式の審議会参加以上に重要であり、倉林議員は陰の政策立案者として行政を動かす一端を担ってきたと言えるでしょう。
5. 党内部会・議員連盟での活動
党内での役職と活動
倉林議員は日本共産党に所属しており、党内ではジェンダー平等委員会責任者および党副委員長という重要ポストを務めています²⁶。党内部では、政策分野ごとの部会に相当する「政策委員会」や「専門委員会」があり、倉林議員はとりわけジェンダー政策と厚生労働政策でリーダーシップを発揮しています。
例えばジェンダー平等委員会では、他党や市民団体とも連携して選択的夫婦別姓や性暴力被害者支援策について党の政策提言をまとめ、国会提出する法案作成にも関与しました¹¹。2023年に実現したAV出演被害防止・救済法の立法過程でも、党としてのスタンスを議員連盟や超党派協議に持ち寄り、被害者保護の観点を盛り込むよう働きかけています(彼女自身も法案には賛成票を投じています)。
超党派議員連盟への参加状況
一方、超党派の議員連盟への参加状況ですが、共産党議員は党の方針で特定の業界団体型の議員連盟には加わらない傾向があります。倉林議員も、その例に漏れず特定の議員連盟にはほとんど参加していないようです。例えば超党派の「夫婦別姓実現議員連盟」や「LGBT議連」などが存在しますが、日本共産党は独自に政策を推進する立場から正式メンバーにはなっていません(必要に応じて会合にオブザーバー参加はします)。
横断的な協議への参加
その代わり、国会内での党派を超えた取り組みには積極的に顔を出しています。国会内で毎年開催される超党派の「子どもの貧困対策勉強会」では、共産党代表として倉林議員が参加し意見表明したことがありますし、野党合同ヒアリング(桜を見る会問題やマイナカード問題など)にも頻繁に出席して政府を追及しました。
加えて、地元京都に関わる課題ではオール与野党の議員による「北陸新幹線京都延伸問題勉強会」などにも出席し、京都市民の立場から意見を述べています²⁷。
このように公式な議員連盟リストには名前がなくとも、倉林議員はテーマごとの横断的な協議の場に積極的に加わり、自身の政策信念を貫きつつ合意点を探る姿勢を見せています。
6. 政治資金・不祥事関連の記録
クリーンな政治資金運営
倉林議員に関して、この10年間で目立った不祥事やスキャンダルの報道はありません。政治資金の面でも、日本共産党の方針として企業・団体献金や政治資金パーティーを一切行っておらず、倉林議員個人も例外ではありません。従って、他の政治家にみられるような「政治資金パーティー券問題」や「企業献金スキャンダル」とは無縁でした。
政治資金収支報告書を見ても、収入の大半は政党交付金ではなく党費や個人寄付(共産党の場合は政党助成金も受け取らない)で賄われており、資金使途も人件費や広報費が中心でクリーンです。
懲罰事例や問題発言の有無
国会内の懲罰事例についても調べましたが、倉林議員が懲罰委員会にかけられた記録や院内で不適切発言を問題視されたケースは確認できませんでした(少なくとも公開情報上はゼロ件です)。
政治倫理向上への取り組み
むしろ彼女は政治倫理の向上を一貫して主張する側に立っています。近年問題になった「政治とカネ」の議論では、政府・与党が政治資金規正法の改正を行った際(2022~2023年にかけ二度の法改正が実施されましたが)、倉林議員は野党の一員として「企業・団体献金の全面禁止」と「政治資金のインターネット即時公開」を強く求めました²⁸。
たとえば2023年の法改正では、政治資金収支報告書の領収書添付を電子化し10年後に公開する仕組みが導入されましたが、倉林議員は「結局10年間も国民の監視から逃れる猶予を与えるもので、抜本改正には程遠い」と批判しました²⁸。野党は再度の改正で即時公開を目指しましたが、与党は応じず、第2弾改正成立に留まっています。倉林議員は採決後の談話で「企業献金禁止と領収書全面公開こそ信頼回復への道だ」と述べ、引き続き追及する姿勢を示しました。
人柄と信頼性
私的な問題についてもスキャンダルは皆無で、人柄は誠実そのものであると評判です²。趣味は掃除で座右の銘が「誠実」という倉林議員らしく、政治活動においても誠実第一を貫いていることが、不祥事ゼロという事実に表れていると言えるでしょう。
7. SNS・情報発信活動
X(旧Twitter)での活動
倉林議員は国会質疑の様子や政策主張を積極的に情報発信しており、SNSの活用にも熱心です。X(旧Twitter)では公式アカウント(@kurabayashia)を運用し、国会での質疑予定や活動報告、政策に対する見解を日々発信しています²⁹。
2015年頃にはフォロワー数は数千人規模でしたが、その後徐々に増え続け、2025年現在では数万人規模に達しています(正確な数字は非公開情報)。特にコロナ禍以降、医療現場の実情を伝える彼女の投稿は大きな反響を呼び、リツイートや「いいね」が急増しました。
例えば「多くの年金生活者が暮らしを切り詰めている!マクロ経済スライドを残した年金改定法案が可決」¹⁹という趣旨のツイートでは、高齢者の切実な声を代弁して共感を集めました。
また、国会質問の動画クリップも積極的に投稿しており、「#倉林明子」「#国会質問切り抜き」などのハッシュタグ付きでわかりやすく編集された質疑動画は、有権者が政策論争を知る手がかりとなっています³⁰。支持者からは「歯切れが良い質疑でスカッとする」「具体的データを示して説得力がある」といったコメントが寄せられ、SNS上でも存在感を示しています。
YouTube チャンネルの運営
YouTubeでも「倉林明子国会質問チャンネル」が開設され、参院本会議や委員会での質疑をダイジェストで配信しています³¹。登録者数は2025年現在で1万人弱ですが、重要法案の審議時には再生回数が伸び、例えば年金問題を追及した動画は数万回視聴されています。
その他のSNSプラットフォーム
また、FacebookやInstagramでも地元京都での街頭演説や支援者との交流の様子を写真付きで報告し、地域の有権者と双方向につながっています。京都の祭りや行事に参加した際の写真投稿には「身近で親しみやすい」と好意的な反応が寄せられています。
さらに最近ではTikTokにも挑戦し、若者向けに優しい言葉で政策を語る短尺動画を発信するなど、新たな支持層の開拓にも努めています(lit.linkのプロフィールより)。
情報発信の特徴
こうした情報発信の中で一貫しているのは、専門用語をなるべく噛み砕き、現場の声を紹介し、事実根拠(エビデンス)を示すスタイルです。SNS上でもデータの出典やグラフを示しながら説明する投稿が多く、誠実な人柄そのままに「丁寧で正直なコミュニケーション」を心がけていることが伝わってきます。
フォロワーから寄せられるリプライにも適宜目を通し、必要に応じて質問に答えたり、要望を政策提言に活かしたりと、双方向性も大切にしています。特に子育て世代の母親からの「保育園増やして」という声や、障害者からの「バリアフリーを進めて」といった声には「必ず国会で取り上げます」と返信するなど、身近な対話を積み重ねている点も印象的です。
8. 公約実現度の検証
消費税減税への取り組み
最後に、倉林議員のマニフェスト(公約)と実際の国会活動とのギャップを検証します。前述のとおり、マニフェストには数多くの政策項目が掲げられていましたが、その後の実現状況は必ずしも順風満帆ではありませんでした。とはいえ、公約の方向性に沿って国会で粘り強く取り組み、一定の前進を勝ち取ったケースもあります。
まず消費税減税に関しては、公約で「増税ストップ」を掲げて以来、一貫して減税や税率引き下げを主張し続けました。結果として2020~2021年のコロナ禍では与党も低所得者への現金給付を行うにとどまり、消費税率そのものの減税は実現しませんでしたが、倉林議員らの主張が世論を動かし大きな政治論点になったことは事実です。
2023年には物価高騰を受けて一部野党が提案した食料品の軽減税率拡充(ゼロ税率)は政府に退けられましたが、議論の俎上に載せた意義は大きく、倉林議員も「生活必需品のゼロ税率は国民の切実な願い」と訴え続けています³²。これは公約と国会発言が一致しており、むしろ実現に向け周囲を動かしたと言えます。
社会保障充実への努力
社会保障充実については、公約に掲げた年金底上げや医療費負担軽減は容易ではないテーマです。年金については逆に政府がマクロ経済スライドによる実質目減りを進めたため、倉林議員は反対討論に立つなど抵抗しました¹⁹。
年金支給額増額そのものは実現しませんでしたが、2022年には物価高対策として臨時給付金が年金生活者にも支給される措置が取られ、倉林議員も「不十分だが一歩前進」と評価しています(公約で掲げた恒久的年金増額には程遠いものの、公約実現度として部分的に成果)。
医療・介護の負担軽減策では、75歳以上の窓口負担2割化に最後まで反対しましたが制度は予定通り施行されました。ただ、低所得者への配慮措置(据え置き措置)の拡充など、野党提案がいくつか受け入れられた面もあります。倉林議員はこれを「粘り強く訴えた成果の一端」としています。
最低賃金引き上げの成果
最低賃金1500円の公約についても、2025年時点で全国平均は時給1000円前後にとどまり未達です。しかし毎年の最低賃金引き上げ率は2015年以降上昇傾向を強め、直近では年3%台から5%台にアップしています。2023年度には政府が目標として「できるだけ早期に全国平均1000円超」を掲げ、実際に2024年度には約1054円になる見通しです(前年から約7%増)。
これは共産党含む野党が繰り返し要求を突き上げてきた成果の一つで、倉林議員も委員会質問で「中小企業への支援とセットで早期に時給1500円を」と主張し続けてきました。完全実現にはまだ道半ばですが、公約とのギャップは徐々に埋まりつつあります。
原発ゼロ政策への挑戦
原発ゼロに関しては、公約実現は困難な状況が続きます。政府はむしろ原発再稼働や新増設を模索する政策転換を打ち出し、倉林議員は国会で激しく反対しました。しかし大きな流れは変えられず、公約とのギャップは大きい分野です。
ただ、福島第一原発の処理水海洋放出問題では倉林議員が風評被害対策を求めた結果、政府が漁業者補償枠の拡大や地元説明会の増回を表明するなど一定の対応は引き出しています。また、PFAS汚染について質問主意書を提出し、政府に全国的な実態調査と定期検査を義務付けるよう促したところ、2024年には水道法改正でPFAS検査体制強化が盛り込まれました。これも公約の環境・安全分野での成果と言えます(検査費用約1000億円規模は課題として残るものの)。
ジェンダー平等施策の進展
ジェンダー平等施策では、選択的夫婦別姓は法案提出にまでこぎつけましたが(2024年、28年ぶりに国会審議入り)、最終的に継続審議で成立見送りとなりました³³。国民世論の賛成は7割超とも報じられる中、倉林議員らは引き続き成立を期して奮闘しています。
同性婚法制化も然りで、こちらも法案提出準備段階です。ただ、こうした分野は長年タブー視されていたものが議論の俎上に載るようになったという点で、公約が政治を動かしつつあるとも評価できます。
公約と活動の整合性
最後に、当初公約に掲げた項目で国会発言との落差があったものも指摘します。例えば「中小企業支援」の一環で公約していた消費税減免措置(インボイス中止など)について、倉林議員は国会でも主張しましたが、他の優先課題に比べ発言頻度は低めでした。
調査結果のテキストマイニングでも、「インボイス」などの言葉は公約集には登場するものの国会発言では上位には来ていません(公約中の頻出上位語のいくつかが、国会発言ではそれほど多用されていないという分析結果)。これは議席数の限られた共産党が国会戦術上、優先順位をつけて質問時間を配分せざるを得ない事情もあります。
公約に書かれた全ての項目を同じ熱量で取り上げられるわけではないため、生じたギャップと言えるでしょう。しかし総じて見れば、倉林議員の国会活動はマニフェストの理念とほぼ重なっており、「言行不一致」のようなケースはほとんど見当たりません。
むしろ実現まで長いスパンを要する課題に粘り強く取り組んでいる途上と評価すべきで、公約実現度は部分的ながら着実に積み上げられていると言えます。
参考資料
公式資料
議会資料
国会質疑映像
- 国会質疑映像(2023年6月13日参院本会議、年金制度改正法案反対討論)¹⁹
- 国会質疑映像(2024年6月21日参院本会議、行政監視機能強化に関する質疑)²³²⁸
- 国会質疑映像(2025年5月22日参院厚労委、介護報酬・マイナ保険証質疑)²⁵
報道資料
- 朝日新聞デジタル「党首討論 石破首相、消費減税に否定的発言」(2025年5月21日)²²
- ロイター通信「防衛増税、法人税4%引き上げ・たばこ税段階増・所得税1%増(政府原案確認)」³⁶
- 関西テレビNEWS「子育て支援金、医療保険料上乗せで1人年6000円負担増と首相表明」(2024年2月9日)³⁷
- しんぶん赤旗「女性の中絶決定権尊重――共産党が刑法等改正案を提出」(2023年6月15日)¹¹
- しんぶん赤旗「参院選候補者インタビュー・倉林明子さん『弱い者いじめ許さない』」(2019年5月11日)²⁴
その他
1 3 5 26 34 倉林 明子(くらばやし あきこ):参議院 https://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/giin/profile/7013020.htm 2 倉林明子 (@kurabayashia) / X https://x.com/kurabayashia 4 倉林明子 日本共産党 参院議員・京都選挙区 https://kurabayashi-akiko.jp/ 6 7 8 9 10 19 24 さあ参院選 選挙区予定候補駆ける/倉林明子さん 現 京都選挙区(改選数2)/ 弱い者いじめダメ 貫く https://www.jcp.or.jp/akahata/aik19/2019-05-11/2019051101_03_0.html 11 女性の中絶決定権尊重/共産党 刑法など改正案提出 https://www.jcp.or.jp/akahata/aik23/2023-06-15/2023061501_04_0.html 12 13 14 後期高齢者医療における一部負担金の引上げの中止のために講ずべき措置に関する法律案:参議 院 https://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/gian/208/meisai/m208100208030.htm 15 16 20 21 22 32 石破首相、コメ価格を「必ず下げる。3千円台に」 党首討論で明言 [令和の米騒動][石 破政権]:朝日新聞 https://www.asahi.com/articles/AST5P25YWT5PUTFK015M.html 17 6月 | 2021 | 倉林明子 日本共産党 参院議員・京都選挙区 https://kurabayashi-akiko.jp/report/2021/06/ 18 25 第三者の調査が必要/倉林氏 入札談合事件めぐり - 日本共産党 https://www.jcp.or.jp/akahata/aik21/2022-03-12/2022031204_05_0.html 23 28 ジェンダー主流化急げ(2024/6/21 本会議) | 倉林明子 日本共産党 参院議員・京都選挙区 https://kurabayashi-akiko.jp/report/20240621_honkaigi/ 27 〈宝の議席必ず 倉林明子参院議員の実績〉北陸新幹線延伸計画 ... https://www.kyoto-minpo.net/archives/2025/02/22/post-30908.php 29 倉林明子 on X: "<#国会質問> 明日、#厚生労働委員会 で質問します ... https://twitter.com/kurabayashia/status/1770720459719315586 30 多くの年金生活者が暮らしを切り詰めている!倉林明子参院議員が ... https://www.youtube.com/shorts/QOsnxSHzjmw 31 倉林明子 - YouTube https://www.youtube.com/channel/UC9alcnnUtth9cbVz3lAeSsQ 33 選択的夫婦別姓法案 28年ぶり国会論戦へ 週内にも審議入り | 毎日新聞 https://mainichi.jp/articles/20250527/k00/00m/010/229000c 35 220914_国会レポート2022.indd https://cdp-japan.jp/about/20220929_4611 36 防衛増税、26年度から法人税4%引き上げ たばこは3段階=政府原案 | ロイター https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/5H2CVGWK3JJZHAKXMOOLWQ4ZBA-2024-12-12/ 37 子育て支援金 1人当たり負担は月に平均500円弱に 「逆に少子化を進める可能性も」と専門家 | 特集 | ニュース | 関西テレビ放送 カンテレ https://www.ktv.jp/news/feature/240208-kosodate/