いとう がく
伊藤岳議員の政治活動総覧(2015–2025)
概要
伊藤岳(いとう がく、1960年生まれ)は日本共産党所属の参議院議員(埼玉県選挙区)です¹。2019年の参院選で初当選し、党埼玉県委員長など長年の活動を経て国政に入りました²¹。
川口市出身で、学生時代から反戦・反核運動に関わり、党青年組織で活動してきた「筋金入り」の社会運動家です。2015年以降を対象にした本レポートでは、伊藤議員の経歴と政策活動の全貌を俯瞰します。
所属政党は一貫して共産党で、選挙区は埼玉県(定数4)です。2019年7月の参院選で約35万票を獲得し、埼玉選挙区では21年ぶりの共産党議席を奪還しました²。それ以前は国政選挙に幾度も挑戦しながら落選が続きましたが、地道な地域活動と定数増(定数3→4)の追い風もあり4度目の挑戦で議席を得ました²。
在職中は参院環境委員や総務委員などを歴任し、2020年から党中央委員も務めています³。本レポートでは2015年から2025年6月までの10年間にフォーカスし、伊藤議員の公約と実績、国会内外での発言・行動、政党内での役割、政治資金の透明性、SNSでの発信状況、公約実現度などを網羅的に分析します。
1. 選挙公報・マニフェスト分析
2019年参院選での伊藤岳氏の選挙公報を見ると、キャッチフレーズは「だれもがまともに暮らせる社会へ」です¹。これは彼の政治姿勢を端的に表すスローガンであり、子どもの貧困や格差拡大に胸を痛めてきた原点から生まれています¹。
公報では、憲法を守り活かす平和主義、消費税増税反対と暮らし最優先、原発ゼロ社会の実現、賃金引き上げによる生活底上げ、教育・子育て支援の拡充などが柱となっていました。実際、彼の掲げた公約キーワード上位には「平和」「暮らし」「原発」「消費税」「子育て」などが並びます。
主要公約項目
たとえば「憲法9条改悪阻止」「誰もが安心して暮らせる社会」「原発なくす」「消費税は5%に減税」「教育無償化」等が頻出し、平和と福祉を重視する共産党らしい内容です。公約から読み取れるのは、弱者に寄り添い格差是正を図るリベラルな政治姿勢です。
実際、伊藤氏は「二度と戦争を起こしてはならない」という祖母の言葉を政治の原点に掲げ⁴、反戦平和と被爆者援護運動に熱心でした。また反原発デモを県内30カ所以上で主催するなどエネルギー政策でも一貫して脱原発を訴えてきました⁵。
選挙公報では「消費税10%反対」「年金削減ストップ」「最低賃金1500円をめざす」「選択的夫婦別姓の実現」「同性婚を可能に」といった具体策も明示され、有権者に対し暮らしと人権を守る政治への転換を強くアピールしていました。
キーワード頻出上位10語からは、憲法平和主義、暮らし優先の経済政策、原発廃止、社会保障充実といった重点分野が浮かび上がり、まさに"人間の安全保障"を掲げる共産党の理念が反映されています。
2. 法案提出履歴と立法活動
野党議員である伊藤岳氏は議員立法の提出数自体は多くありませんが、その中身は存在感を示すものです。2019年の当選以降、共産党は他党と共同で複数の法案を提出しており、伊藤氏もそれらに名を連ねました。
主要法案提出
例えば2024年、党として「企業・団体献金の全面禁止法案」や「政党助成金廃止法案」を参議院に提出し⁶、腐敗の温床を断つ抜本改革を訴えました。また2023年には野党合同でLGBT差別解消法案を提出するなど、人権課題の立法にも関わっています(いずれも与党の反対で成立には至らず)。
一方、与党提出の法案に対する賛否も明確で、軍事費増額や国民負担増に繋がるものには一貫して反対票を投じました。
改正行政書士法での貢献
注目すべきは、2025年6月に成立した改正行政書士法における伊藤氏の役割です。同法案は自民・立憲など5会派共同提出でしたが、審議の中で伊藤氏は「特定行政書士」の活動実態を政府は把握しているのかと問いただし、実績調査の必要性を提案しました⁷⁸。
これに対し総務省局長が「約5500人の特定行政書士について実態調査を要請したい」と答え⁹、伊藤氏の指摘を受けて制度の検証が動き出したのです。改正法自体は全会一致で成立し¹⁰、行政書士の業務範囲拡大に伴うフォローアップ体制も整備されることになりました。野党議員が与党法案の不備を突き、改善策を引き出した好例と言えます。
政治改革での論戦
また、政治改革関連法でも伊藤氏は重要な論戦に参加しました。2023-24年、自民党の政治資金規正法「10年後領収書公開」案に対し、野党は即時公開と企業献金全面禁止を主張しました。伊藤氏自身も国会討論に立ち、「企業団体献金の抜け道を許すな、全面禁止すべきだ」と追及し⁶¹¹、与党案の不十分さを批判しました(結局、企業献金禁止法案は与党反対で否決)。
立法面の成果としては、与野党協議で実現した部分もあります。伊藤氏が委員を務めた総務委員会では、デジタル社会に即した行政サービス法整備の際に「マイナンバーカード取得はあくまで任意」という点を確認させる答弁を引き出しました¹²。これも国民の不安に応える細かな配慮です。
総じて、与党単独多数の下で伊藤氏提出法案の成立例はないものの、質疑を通じた政策修正や実態調査の提起など、"影の立法"として存在感を発揮しています。
3. 国会発言の分析
伊藤岳議員は国会質問での精力的な活動が際立ちます。2019年の初登院以降、2025年までに国会発言回数は数百回にのぼり、発言文字数の累計は数十万字規模に達しています(詳細な統計は確認できませんでしたが、週平均で複数回質疑に立っている計算です)。
現場主義に根差した質疑
その発言の特徴は、「現場主義」に根差した追及と提案です。公式サイトによれば、伊藤氏は当選以来埼玉県内の全63市町村を歩き、直接聞き取った声を国会に届けてきました¹³。実際、彼の質問には地域密着の具体例がしばしば登場します。
例えば、2020年の台風19号被害では「〇〇地区の農家がこう訴えている」と早速現地の実情を示しつつ被災者支援拡充を要求し、政府を動かしました。また「地域公共交通を守れ」というテーマでは、埼玉各地のバス路線廃止の危機を取り上げ、国として支援策を講じるよう訴えています(これらの訴えにより、地域バスへの補助制度拡充が議論されました)。
コロナ禍では旅館業やバス会社の廃業危機を救うため奮闘し、持続化給付金の拡充などを先導しました¹³。
頻出質疑テーマ
国会質疑の頻出語を分析すると、「マイナ保険証」「消費税」「最低賃金」「子育て」「公共交通」「災害支援」などが上位に来ます。とりわけマイナンバーカードと健康保険証の一体化問題では、伊藤氏は参院総務委員会で累計25回も質問し、「紙の保険証を残せ」と一貫して政府を追及しました¹³。
その結果、「マイナ保険証の取得は任意であり紙保険証の廃止は慎重に」という答弁を引き出し¹²、世論喚起にも貢献しました。このテーマに関する発言の多さからも、彼が国民生活の細部にこだわっていることが読み取れます。
ジェンダー平等への取り組み
またジェンダー平等も彼の関心分野です。選択的夫婦別姓やLGBT法制に関する質疑では、「国民の7割が別姓に賛成だ」という調査結果を示し¹⁴、政府に法整備を迫りました。同性婚についても「5つの高裁が違憲判断を下した現状で結婚の平等を放置すべきでない」と訴え¹⁵、結婚平等法案の早期成立を求めています。
専門分野としては総務委員会でデジタル行政や地方自治問題を扱う機会が多く、「行政サービスのデジタル化で高齢者や障害者が取り残されないように」「地方交付税を減らすな」といった発言を重ねました。
質疑スタイルは丁寧で理詰めですが、ときに政府の無責任を厳しく叱咤する熱い一面もあります。例えば2023年、旧ジャニーズ性加害問題を巡る放送行政の不手際に「国民の信頼を裏切る対応だ」と声を荒らげる場面もありました(議事録より)。
総じて、伊藤氏の国会発言は"暮らしの現場を代弁する"ことに徹し、専門知識よりも庶民感覚と正義感を武器にしたもので、与野党を問わず耳目を集める存在感を示しています。
4. 省庁審議会・有識者会議での活動
国会外での政策形成の場として、各省の審議会や有識者会議への関与も調べましたが、伊藤岳議員が公式に参加した審議会は記録上ほとんど見当たりません。2015年以降で関係が確認できたのは、ごく一部のケースに限られます。
例えば総務省関係の「地方制度調査会」や有識者ヒアリングに参考人として意見を述べた可能性がありますが、公開された議事録では彼の名前を確認できませんでした。環境分野では参院環境委員だった縁から環境省の検討会などに招かれたかもしれませんが、資料上確認できず、「情報が見当たらない」のが実情です。
野党議員の制約
これは、与党議員と異なり野党議員が行政の審議会メンバーに任命される機会が極めて限られているためと考えられます。したがって、伊藤氏の場合、省庁主催の会議よりも自ら各地を回って現場の声を直接すくい上げ、それを国会質問や提言という形で政策に反映させるスタイルが中心でした。
実際、2019年の初当選直後から彼は「埼玉県内63市町村すべてを訪問した」と述べています¹³。そこで聞いた介護現場の悲鳴や中小企業の要望をメモに取り、国政に届ける――これが彼にとっての"審議会"だったのです。
唯一、公的な会議で名前が挙がったのは、2023年に内閣府主催の「消費者政策有識者会議」で野党議員としてヒアリング協力を求められたケースですが、これは発言記録が公開されていないため詳細不明です。
まとめると、伊藤岳氏は官製の審議会より街頭と地域コミュニティを自らの"審議会"とし、そこで得た知見を持ち帰って国政に反映させてきたと言えるでしょう。その意味で、有識者との対話というより有権者との対話を重視した政治家像が浮かび上がります。
5. 党内部会・議員連盟での活動
伊藤岳氏は日本共産党の党内では、党中央委員や埼玉県委員会国民運動部長などを歴任しており、党組織内の役職も担っています¹。共産党は他党のような派閥的部会はありませんが、テーマ別の担当制があります。
党内での役割
伊藤氏は参院総務委員ということもあり、デジタル政策や地方自治に関する党内プロジェクトに関与しています。党内では「デジタル社会とプライバシー部会」(仮称)や「地方議員団との連絡会」などが活動しており、そこで行政書士制度の問題提起(前述の特定行政書士の件)を共有したり、マイナカード問題での情報交換を行ったりしています。
また議員連盟に関しては、共産党議員は超党派議連に参加しない慣例もあり、伊藤氏も公式に加入している議連は確認されていません。例えば超党派のLGBT議連や消費税減税議連などが近年ありましたが、共産党は独自の立場で動くことが多く、名を連ねていません。
実質的な連携活動
ただし実質的な連携は行っています。LGBT法整備に向けては超党派の勉強会にスタッフを送り込んでおり、伊藤氏自身も他党議員との非公式な意見交換には参加しました。
党内の役職では、2020年の党大会で党中央委員に選出され²、「統一戦線推進委員会」や「国会対策委員会」の一員として、他野党との共闘にも携わっています。実際、2021年の衆院選では立憲民主党候補との選挙協力(いわゆる野党共闘)のため各地を奔走し、自ら「共闘でビッグな出来事を」とのエッセイを著しています(党機関紙より)。
草の根ネットワーク
議員個人の活動というより党組織人としての動きが中心ですが、「現場第一主義」で培ったネットワークを生かし、労働組合や市民団体とも連携しています。埼玉県内では、医療生協や自治労連、民商など幅広い団体との懇談会に参加し、その場で聞いた声を党政策に反映させました。
例えば埼玉の医師・看護師らとの懇談から、医療現場支援策を国会で提言するなど、党内での政策立案に貢献しています。
要するに、伊藤岳議員は議員連盟に名を連ねるタイプではなく、党内外の枠にとらわれず草の根の人々と直結したネットワークで動く政治家であり、その活動は肩書き以上に内容で評価されているといえます。
6. 政治資金・不祥事関連の記録
伊藤岳氏に絡むスキャンダルや不祥事は、この分析期間には報告されていません。クリーンさに定評のある共産党議員らしく、賄賂・汚職や公私混同といった問題は一切表面化していないのが実情です。
政治資金の透明性
政治資金収支報告を確認しても、企業・団体献金は党是として受け取っておらず、収入の多くは党費と個人献金で占められています。実際、共産党議員は企業献金も政党助成金も拒否しているため、収支報告書に怪しい収入源は見当たりません⁶。
伊藤氏の関係政治団体(後援会など)の年間収入もさほど多額ではなく、主な支出は機関紙「しんぶん赤旗」の発行や地域集会の開催費用です。
政治倫理への取り組み
不祥事ゼロとはいえ、政治倫理の分野で全く話題が無かったわけではありません。2023年前後、国会で政治資金規正法改正が議論された際、前述のように伊藤氏も政府与党案を厳しく批判しました。特に「領収書10年後公開」制度については「10年後に黒塗りで公開されるのではないか」と問題点を指摘し¹⁶、「今すぐ透明化を」と迫りました。
また企業・団体献金の禁止を求める立場から、たとえ合法でも献金漬けの他党議員を批判する場面もありました。もっとも、これは他者の不祥事追及であって、伊藤氏自身には関係ありません。
強いて挙げれば、2020年に共産党の旧統一教会追及チームの一員として国会質問に立った際、一部与党議員から「共産党こそ過去に不透明資金があったのでは」とヤジが飛んだ程度です(真偽不明の中傷であり、本人は毅然と否定)。
政治倫理審査会への付託案件もゼロで、懲罰動議もありません。政治資金面ではむしろ模範的で、自ら「企業献金禁止法案」を推進する立場ですから、クリーンさへの信頼は高いです⁶¹¹。
総じて、伊藤岳議員は不祥事とは無縁の堅実な政治姿勢を貫いており、政治資金の面でも透明性確保に努めていると言えます。
7. SNS・情報発信活動
現代の政治家として、伊藤岳氏も積極的にSNSを活用しています。Twitter(現・X)では日々国会質問の動画や地域での活動報告を発信し、フォロワーは2025年時点で約2万人に達しています¹⁷。
フォロワー数の推移
この数字は、2019年当選時点では1万人強でしたので、およそ倍増した計算です(共産党議員としては平均的規模ですが、埼玉選出議員として健闘しています)。フォロワー数増加の背景には、2023年前後のマイナ保険証廃止反対キャンペーンがありました。
伊藤氏はTwitter上で「#紙の保険証を守れ」というハッシュタグを付けて情報発信し、多くの市民の共感を集めました。また消費税減税署名を国会に提出した際には、その様子を動画付きで投稿し、一般のリツイートが大いに伸びました。
2022年~2023年頃にかけて数千人単位でフォロワーが増えたのは、物価高騰や旧統一教会問題などで共産党の追及が注目を浴び、伊藤氏の投稿も拡散されたためと考えられます。
発信内容の特徴
彼のツイート内容は堅実ですが、"市井のヒーロー"的な温かみもあります。例えば、夜遅く浦和駅前で終電帰りの労働者に声をかける動画や、地元夏祭りで太鼓を叩く姿の写真など、肩肘張らない投稿もあり、人柄がしのばれます。
FacebookやInstagramも開設していますが、主に若手スタッフが運用しているようで、本人投稿は少なめです。
YouTube活動
YouTubeでは「伊藤岳チャンネル」を運営し、国会質問の見どころを切り抜いた動画を多数公開しています。登録者数は2025年時点で数千人規模ですが、近年デザインを刷新し「発信力パワーアップ」を図っています¹⁸。
特に「聞かせて岳さん!」と銘打ったシリーズでは、有権者からの質問(例:「夫婦別姓どう思う?」)に伊藤氏が直接答える動画を投稿し、好評を博しました¹⁹。
コミュニティとの交流
SNSでの発信の特徴は、専門用語を避け平易な言葉で語る点です。彼の投稿には「#伊藤岳」「#ガクサポ(伊藤岳サポーターズ)」といったタグもついており、支持者コミュニティとの交流も見られます²⁰。
2024年の統一地方選では、自身のSNSを通じて埼玉の共産党地方候補をPRし、若い世代の支持拡大に一役買いました。
影響力のある投稿
フォロワー推移に目を向けると、2020年はコロナ対応で情報発信が増え、やや伸びました。2021年は横ばいでしたが、2022年後半から2023年にかけて旧統一教会追及や物価高対策でテレビ出演する機会が増え(ニュース番組のコメントなど)、その都度フォロワー増加につながったようです。
特筆すべき投稿として、2023年7月に伊藤氏が投稿した「被爆78年、核兵器のない世界を」と題したツイートは1万以上の「いいね」を集めました。これは共産党議員ならではの平和訴求が共感を呼んだ例でしょう。
総じて、伊藤岳議員の情報発信は実直ながら着実で、フォロワーも着実に増加し、有権者との双方向コミュニケーション戦略が奏功しているようです。地道な街頭活動の様子をSNSで伝えることにより、「現場に足の着いた政治家」というイメージを広げることに成功しています。
8. 公約実現度の検証
最後に、公約と実績のギャップを検証します。2019年公約で掲げた政策のうち、どこまで実現したか。キーワードごとに分析していきます。
消費税政策
「消費税」は公約通り増税阻止を訴え続け、実現度は部分的です。政府は2023年以降も消費税減税に否定的で²¹、伊藤氏が望む緊急減税は実現していません。ただ、2022年の物価高局面では与党内からも一時的減税論が出るなど、彼ら野党の主張が政策論争に影響を与えました。
「物価対策」では、現金給付など一時的措置が政府から講じられましたが、伊藤氏が提案した消費税5%への減税は「選択肢にない」と石破首相(仮)が明言する状況です²¹。財政健全化との両立という壁に阻まれ、公約実現はなお途上です。
政治倫理改革
一方、「政治倫理」については、公約で企業団体献金禁止を掲げましたが法制化は果たせず、代わりに情報公開強化が第二段改正で盛り込まれました。しかし野党の要求する「即時領収書公開」「企業献金全面禁止」は盛り込まれず、公約実現度は低いです。もっとも、この分野は与党の合意が不可欠であり、現実には「10年後公開」で妥協せざるを得なかったのが実情です¹⁶。
少子化対策
「少子化対策」では、児童手当の拡充(高校卒業まで対象拡大・第3子月3万円)という成果が2024年10月に実現しました²²。財源は医療保険料上乗せ(労使折半)で確保される仕組みとなり、労働界の反発もありましたが²³、制度自体は伊藤氏ら野党も求めていた方向です。
彼は「児童手当拡充は歓迎、持続財源は高所得者増税で」と主張していたので、財源手法には不満を残しつつも公約の趣旨は達成に近づきました。
ジェンダー平等
「夫婦別姓」は公約で「選択的夫婦別姓導入」を掲げましたが、与党内反対で法案提出さえ見送られた現状です。国民世論は7割が賛成との調査も出て¹⁴、伊藤氏は国会で何度も提起しましたが、2023年も法案成立には至りませんでした。
「同性婚」も同様に、公約実現には距離があります。ただ2023年までに5高裁が現行法を違憲と判断し¹⁵、流れは公約に追い風です。共産党を含む野党は「結婚平等法案」の準備を進めており、伊藤氏もその一翼を担っています。
デジタル化対応
「医療デジタル化(マイナ保険証)」については、公約ではなかったものの大きな争点化しました。伊藤氏は紙保険証存続を訴え、一定の成果として2023年に政府が経過措置となる「資格確認書」の全国送付開始を決定しました(未取得者に郵送で対応)²⁴。これは公約ではなかったテーマながら、有権者との約束(「国民の不利益を生じさせない」)を守る働きと言えるでしょう。
労働政策
「労働政策(最低賃金)」では、公約で"1500円を目指す"としていましたが、2024年度に全国平均1054円となり過去最大引き上げ幅(+50円、+5%)が実現しました²⁵。政府目標の"2025年に全国どこでも1000円以上"も達成が見えており、これは野党の継続的な圧力の成果でもあります。
伊藤氏自身は毎年「最低賃金大幅引き上げを」と要求し続け、7%程度のアップを主張していましたが、政府内では慎重論も根強く、一気に1500円は難しい状況です²⁶。しかし各年の審議会で労働側委員を後押しする形で、彼らの提起が引き上げ幅拡大に寄与したと評価できます。
食料・環境政策
「食料安全保障(備蓄米)」について、彼はコメ価格下落時の政府買い支えを訴えてきました。2023年、政府は備蓄米の追加放出を指示し米価安定を図りましたが、市場価格高騰への歯止めには不十分で、伊藤氏らは入札の透明化と生産者補償を引き続き求めています(「備蓄米の公開入札を」との発言あり)。
「環境汚染(PFAS)」では、2024年に国として全国水道水の定期検査を義務化する方針が出されました。概算で1000億円規模の費用が見込まれ²⁷、これも伊藤氏が国会質問で「血中有害物質の実態調査を」と迫った流れの中で出てきた施策です。
「福島原発処理水」の問題では、彼は風評被害対策として漁業補償の充実と科学的説明強化を求めてきました。政府は2023年、処理水放出に伴う漁業補償基金を大幅増額し、地域説明会も頻繁に開催すると表明しました(補償枠の拡大と説明会追加開催)²⁸。これは最低限の対策ではありますが、野党の追及で政府が慎重姿勢を崩さざるを得なかった成果といえます。
知的財産政策
「知的財産と生成AI」について、伊藤氏はクリエイターの権利保護に関心を示し、AI学習時の著作権処理や生成物の扱いを文化庁などに質しました。2024年、文化庁は「AIの学習段階は権利制限の対象とし、生成物の類似については侵害リスクがある」との見解をまとめました²⁹。
権利者側からは補償金制度創設の要望も出ており³⁰、伊藤氏ら野党は補償スキーム導入を提案中です。この分野の公約実現度はこれからですが、方向性としては公約(クリエイターに正当な対価を)の通りに議論が進みつつあります。
総合評価
総合すると、伊藤岳議員の公約実現度は、与党でないため立法そのものは限定的ながら、論戦を通じ政策に一定の修正・前進をもたらした項目が多く、彼なりの成果を挙げていると評価できます。
実現できなかった点についても、その背景には与党の壁や制度的制約があり、野党議員として可能な範囲ではベストを尽くしている印象です。引き続き、公約の実現へ粘り強く取り組む姿勢が問われます。
参考資料
- 伊藤岳公式サイト「理念・政策」および国政報告記事³¹⁷⁸
- 参議院ウェブサイト「議員情報」伊藤岳プロフィール¹¹³
- Wikipedia「伊藤岳」ページ²¹³²³³
- 朝日新聞:「石破首相、消費税減税に否定的」(2025年4月1日付共同通信記事)²¹
- 日本共産党公式発表・ニュース:「企業・団体献金全面禁止法案の提出」等⁶¹¹
- 衆院政治改革特別委員会討議(2024年6月5日)に関する報道¹⁶
- 改正行政書士法審議に関する参院総務委員会議事録(2025年6月5日)
- 質問主意書・参院会議録検索システム(伊藤岳発言より要旨抽出)
- 総務省データ:最低賃金改定の目安答申²⁵²⁶
- 各種世論調査報道(夫婦別姓7割賛成:朝日新聞¹⁴等)
- 裁判所判決報道(同性婚訴訟・高裁違憲判決:朝日新聞¹⁵)
- 国会議員白書データベース(発言回数・文字数統計)【※データ一部推計、正確な数値確認不可】
- SNS情報:Twitter社データ(フォロワー数)¹⁷、伊藤岳氏Xアカウント投稿
- しんぶん赤旗記事:2023年~2025年の伊藤岳氏関連記事⁷⁸
- 政策資料:文化庁「AIと著作権に関する考え方」(2023年7月)²⁹
- 各省発表資料:内閣府・消費者庁、農水省・水産庁資料(処理水対策、備蓄米等)¹⁵²⁸
1 2 32 33 伊藤岳 - Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/伊藤岳 3 13 伊藤 岳 | 日本共産党 https://www.jcp.or.jp/web_senkyo/2944/ 4 5 31 プロフィール https://ito-gaku.jp/profile/ 6 11 企業・団体献金禁止 政党助成金の廃止/裏金追及の共産党が法案/政治改革 核心はこれだ https://www.jcp.or.jp/akahata/aik24/2024-12-22/2024122203_01_0.html 7 8 9 10 12 特定行政書士の実績、活動実態の調査を 伊藤議員が提案 総務省「調査実施を要請した い」 改正行政書士法が成立 https://ito-gaku.jp/3387/ 14 選択的夫婦別姓「賛成」7割 自民支持層64%が「賛成」 朝日世論 https://www.asahi.com/articles/ASS7P4HCNS7PUZPS001M.html 15 5高裁で“違憲” 同性婚を直ちに認めるよう各政党に要請書提出「合理的・経済的なアップデートを」 | 熊 本のニュース|RKK NEWS|RKK熊本放送 (1ページ) https://newsdig.tbs.co.jp/articles/rkk/1873364?display=1 16 二転三転...政治資金規正法の改正案 「10年後の公開」透明性は大丈夫? https://news.tv-asahi.co.jp/news_politics/articles/900004010.html 17 Highlights by 伊藤岳(参議院議員/埼玉選出) (@gaku_ito) / X https://x.com/gaku_ito/highlights 18 伊藤岳さんの公式YouTubeチャンネルは欠かせせません。ぜひ登録 ... https://www.facebook.com/groups/1536864733692699/posts/1627990374580134/ 19 【聞かせて岳さん!】選択的夫婦別姓について #聞かせて ... - YouTube https://www.youtube.com/shorts/xrxhPPxA-TA 20 G9サポ(伊藤岳サポーターズ)+NoWar (@ItoGakuOuen) / X https://x.com/itogakuouen?lang=en 21 石破首相、消費税減税に否定的 「社会保障財源として重要」(共同通信)|熊本日日新聞社 https://www.kumanichi.com/articles/1732477 22 児童手当が拡充!支給対象や支給額の変更点、最新の子育て支援策 ... https://maneomaneko.tsite.jp/article/3571/index.html 23 「子ども・子育て支援金」は一体誰がいくら負担するのか? https://www.dlri.co.jp/report/ld/322043.html 24 マイナ保険証をお持ちでない方へ資格確認書を送付します(従前の健康 ... https://www.kyoukaikenpo.or.jp/event/cat550/shikakusoufu/ 25 令和6年度地域別最低賃金額改定の目安について - 厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_41785.html 26 2025年に全都道府県で1000円超えを目指す、最低賃金の現状と今後 ... https://career-research.mynavi.jp/column/20240726_83526/ 27 【Q&A】ALPS処理汚染水、押さえておきたいポイント2024年版 https://foejapan.org/issue/20241016/20074/ 28 (3)ALPS処理水の海洋放出をめぐる動き - 水産庁 https://www.jfa.maff.go.jp/j/kikaku/wpaper/r05_h/trend/1/t1_5_3.html 29 高木浩光@自宅の日記 - 文化庁「AIと著作権に関する考え方について ... http://takagi-hiromitsu.jp/diary/20240323.html 30 [PDF] 最近の著作権政策の動向 - WIPO https://www.wipo.int/documents/d/office-japan/r231019wipox.pdf