いまい えりこ
今井絵理子議員の政治活動総覧(2015–2025)
概要
元人気アイドルグループ「SPEED」のメンバーから政界へ転身した今井絵理子氏(1983年生まれ)は、2016年の第24回参議院選挙に自由民主党公認で比例代表から初当選し、現在2期目を務める参議院議員です。
沖縄県出身で、高校卒業後に芸能活動や障がい児支援の講演などを経て政治の道に入った異色の経歴を持ちます。幼少期からの聴覚障がいを抱える長男を育てた経験が政治を志す大きなきっかけとなり、本人も「政治は希望。年齢や性別・障がいの有無に関わらず、すべての人がお互いを尊重し認め合える社会の実現を目指します」とスローガンに掲げました。
2019年には内閣府大臣政務官(沖縄及び北方対策、復興担当)に就任し、沖縄振興や被災地支援に携わりました(第4次安倍第2次改造内閣)。2024年発足の石破内閣でも再び政務官として沖縄・北方領土問題を担当し、現地視察や地方との協議に奔走しています。
また党内では参議院国会対策委員会副委員長や青年局次長、ネットメディア局次長などを歴任し、若者やネット世論への発信役も担ってきました¹。
本レポートでは、2015年から2025年6月までの約10年間にわたる今井議員の政策・立法活動を振り返り、公約との整合性や政治的な足跡を包括的に検証します。有権者が同氏の活動実績と姿勢を正しく評価できるよう、事実に即して丁寧に分析していきます。
1. 選挙公報・マニフェスト分析
今井議員が直近の2022年参院選(第26回)で掲げた選挙公報・マニフェストからは、彼女の政治姿勢が明確に浮かび上がります。キャッチコピーには「政治は希望」の力強い言葉が掲げられ、「年齢や性別、障がいの有無に関わらず、すべての人が互いに尊重し認め合える社会」を目指す決意が示されました。これは、誰一人取り残さないインクルーシブな社会づくりを自身の使命とする宣言と言えます。その背景には、生まれつき聴覚障がいを持つ長男を育ててきた体験から、障がい者や弱い立場の人々に光を当てたいという強い思いが感じられます。
公約の6つの柱
公約の柱は大きく6つに整理されていました。
第一の柱:すべての人が尊重され認め合う社会へ
この理念を掲げ、社会的障壁(バリア)の除去と多様性の尊重を最重視しています。ここにはバリアフリーや障がい者支援の推進が含まれ、実際「情報保障の確立(聴覚障がい者への情報アクセシビリティ)」や「誰一人取り残さない防災」をキーワードとして訴えてきました。
第二の柱:女性や若者が輝ける社会へ
コロナ禍で顕在化したドメスティックバイオレンス(DV)や性暴力、孤独といった問題に取り組み、未来に希望を持てる社会を作るとしています。特に若年層・女性の自殺増加への危機感から、相談支援体制の充実(後述の「DV相談+」開設など)を公約に盛り込みました。
第三の柱:安心して子育てができる社会へ
超少子高齢社会の中で子どもを「国の宝」と位置付け、児童が生き生き成長できる環境づくりを約束しています。具体的には児童手当の拡充や医療的ケア児への支援、ヤングケアラー問題の対策など、子育て家庭への継続的サポートを訴えました。実際、今井氏自身が中心メンバーとなって自民党若手議員による「子ども家庭庁」創設の勉強会に参加し、省庁横断の子ども政策推進を提言するなど、子育て支援策の強化に意欲を見せています。
第四の柱:実効性のある防災対策の推進を
災害大国日本で政治の責務としての防災を強調しました。特に東日本大震災で障がい者の死亡率が健常者の約2倍に上った教訓から、避難行動要支援者名簿の活用や個別避難計画策定の重要性を説き、災害時に障がい者や高齢者を取り残さない対策を訴求しています。
第五の柱:手話の普及と理解の促進を
ろう者の母語である手話を一つの言語として社会に定着させる決意を示しました。全国で「手話言語条例」が相次いで制定されている流れを受け、国会でも史上初めて手話を交えた質疑に挑戦するなど、自ら手話の必要性を体現しています。公約ではテレビでの手話通訳拡充など情報保障の推進も盛り込まれ、聴覚障がい者が情報にアクセスしやすい社会づくりを約束しました。
第六の柱:故郷沖縄の発展を
本土復帰50年を迎えた沖縄の自律的発展をさらに強化すること、基地問題では全国民が当事者意識を持つこと、そして沖縄特有の子どもの貧困問題解消に全力で取り組むことを誓いました。
公約の特徴分析
以上のように、公約からは福祉・子育て・防災・地方振興といった分野に軸足を置き、"弱者に寄り添う政治"を目指す姿勢が読み取れます。
選挙公約に使われたキーワードを頻度分析すると、「障がい」「社会」「子ども」「支援」「手話」「防災」「沖縄」「希望」「女性」等が上位に並びました(調査結果より)。これらはそのまま今井氏の政策関心の焦点を示しています。例えば「障がい」「手話」は公約文中に繰り返し登場し、障がい者施策への強いコミットを物語ります。
また「希望」「尊重」「共生」といった抽象的な言葉も目立ち、政治参加が初めての新人候補らしく理想を掲げるメッセージ性が強かったと言えるでしょう。一方で経済政策や安全保障など硬派な政策言及は公約にはほとんど見られず、得意分野に絞って訴えた印象です。
総じて、今井議員のマニフェストは自身の体験に裏打ちされた社会福祉重視の内容であり、「優しさ」や「包摂」といった価値観を前面に出したものでした。その実現度については後述するように立法や施策面で一定の成果を残しており、公約との整合性も概ね保たれているように見受けられます。
2. 法案提出履歴と立法活動
国会議員としての立法実績を見ると、今井氏は所属与党の一員として政府提出法案の審議や超党派法案の立案に注力するタイプだと言えます。同氏が在職中に単独または主要提出者として扱われる議員立法(法律案)を提出した件数は実はゼロでした。これは国会図書館の法令データ検索でも確認されており、参議院議員白書など公式統計上も自身名義の法案提出はありません。
しかし、これは直ちに「立法活動が皆無」という意味ではありません。むしろ今井氏の場合、超党派の議員連盟を通じた法整備や、党内議論を経て政府提案へとつなげる裏方的な役割で成果を上げています。
主要な立法成果
電話リレーサービス法(2020年成立)
聴覚障がい者が手話通訳等を介して電話できるようにする同法は、自民党内のプロジェクトチームや超党派議連の議論を経て実現したもので、今井氏も法案作成に関与しました。
医療的ケア児支援法(2021年6月成立)
衆議院厚労委員会提案という形をとりつつ、与党議員による周到な立案準備がありました。今井氏は自身の公式サイトでこの法律成立に触れ、「議員立法で成立させた」と誇らしげに報告しています。実際には自民党の野田聖子衆院議員らが中心となったものの、今井氏も超党派で動き支援したとの評価があります。
障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法(2022年4月成立)
この法律は、障がい者が十分な情報取得と意思疎通支援を受けられる社会を目指す内容で、「情報保障の確立」を掲げる今井氏の理念が色濃く反映されました。超党派の参議院発議による議員立法として提出され、今井氏自身が中核メンバーとして法案作成に深く関与しました。法律成立を受け、彼女は「政治を志した原点を貫く一貫した活動が実った」と述べています。
現在進行中の立法活動
現在(2025年時点)も、「手話に関する施策の推進法(仮称)」の立法に奔走しています。自身が事務局長を務める超党派の「障がい児者の情報コミュニケーション推進議員連盟」において、乳幼児期からの手話習得支援や手話文化の継承、国民の理解促進を柱とする新法の骨子案を取りまとめ、2024年秋の臨時国会への提出を目指しました。
この「手話推進法案」は、日本初開催となる2025年東京デフリンピックに間に合わせる形での成立を目標に掲げており、今井氏は「全会一致で早期成立を」と精力的に訴えています。こうした動きからは、障がい者支援における立法措置を次々と形にしていく推進力がうかがえます。
政府提出法案への対応
他方、今井氏は防衛・財政・外交といった国家の根幹政策に関わる法案では、基本的に党議拘束に従って賛成票を投じてきました。憲法改正に関しては「賛成」の立場を明確にしており、憲法9条への自衛隊明記や緊急事態条項の創設にも支持を表明しています²。
2017年以降、国会で成立した安全保障関連法案や予算案・税制改正法案などでも目立った造反はなく、与党議員として一貫して政府提出法案を後押しする役割を果たしました。つまり独自法案の提出こそないものの、政府・与党の立法を支える「裏方」として動き、福祉分野では実質的な立案者として成果を挙げているのが今井議員の立法活動の実態です。
議員立法ゼロ件への批判と評価
もっとも、2025年5月にSNS上で「今井絵理子と生稲晃子は議員立法ゼロ件」と指摘する投稿が拡散され、12万件超の「いいね」を集める騒ぎとなりました。この指摘自体は事実ですが、今井氏が前述のように超党派立法に関与している点は一般には十分認知されていません。そのためネット上では「何も法案を出していない怠慢議員」といった批判も見受けられます。
この論争に対し、政治評論家の有馬晴海氏は「与党議員は党内議論を通じ政府提案に繋げるのが普通。議員立法がゼロでも即ダメとは言えない」と一定の擁護をしています。しかし同時に「福祉分野で活動していても、それだけでは政治家の資質があるとは言えない。問題を解決に導く政治力が問われる」とも指摘しており、与党内で法制度を動かす影響力や発信力という点では、今井氏に課題が残るとの見方もあります。
立法活動の総合評価
以上を総合すると、今井絵理子議員の立法面での特徴は「目立たずとも着実に福祉政策を前進させる職人的立法者」と言えるでしょう。本人も「障がい者施策や子ども支援に関わる法律を仲間とともに成立させてきた」という自負を持っており、それが有権者へのアピール材料ともなっています。
一方で、防衛費増額や経済安全保障などこの10年の国家的イシューに彼女が主導的に関与した形跡は薄く、立法者としての守備範囲は限定的です。もっとも、政治の世界では専門領域に特化して成果を出すことも一つの貢献スタイルです。今井氏はまさに自身の経験と情熱を持つ福祉・共生社会の領域にリソースを集中し、立法という形で少しずつ社会を変える結果を残していると言えるでしょう。
3. 国会発言の分析
国会での発言状況を分析すると、今井議員は在任9年で相当量の質疑・討論を行い、特に福祉や教育、防災に関するテーマで存在感を示してきたことがわかります。参議院本会議や各委員会における発言回数の合計は、調査データによれば数百回規模に上ります(国会議員白書データより)。
とりわけ所属した委員会での質疑発言や、政務官として答弁に立った回数が多く、例えば参議院予算委員会では累計で200回以上発言し数万字に及ぶ議事録を残しています(※参考データ:参院委員会統計)。これは2019~2020年に政務官として政府側答弁に立ったことで発言機会が増えた影響もあります。
実際、内閣府大臣政務官を務めた当時、沖縄北方や科学技術など担当分野の委員会で政府答弁者として答弁に登壇し、議員からの質問に繰り返し回答していました。その結果、発言文字数では同僚議員と比べ上位グループに入るほどの分量となっています(例:ある統計では委員会発言文字数約3.5万字で上位に位置)。
質疑者としての発言内容の特色
質疑者としての発言内容を見ると、今井氏は一貫して自身の関心領域である福祉・教育分野に話題を集中させています。典型的なのが聴覚障がい児支援や手話に関する質疑です。
印象的な質疑事例:2023年3月13日の参院予算委員会
2023年3月13日の参院予算委員会集中審議では、今井氏は難聴児への支援強化について手話を交えながら岸田首相に問いただしました。彼女はこの場で「息子が先天性の聴覚障がいを持ち、18歳になった今プロレスラーとして活躍しているが、その道のりは非常に大変だった」と自身の体験を語りつつ、「特別支援学校の教科書は30年改訂されておらず、障がいに関わることが光を当てられず取り残されている」と教育現場の課題を訴えました。
さらに新生児聴覚スクリーニング検査への公費助成拡充など具体策を提案し、「誰一人取り残さない社会の実現が私の政治信念です」と締めくくっています。この感情を込めた訴えに対し岸田首相も「共生社会の実現は大変重要」と応じ、答弁の最後には自ら手話で「よろしくお願いします。ありがとうございました」と述べる場面もありました。これは国会史上初めて総理大臣が手話で答弁した瞬間として話題となり、今井氏の訴えが国政を動かした一例と言えます。
手話を用いた国会質疑の先駆的取り組み
また、彼女の国会発言で特筆すべきは手話を用いたコミュニケーションの導入です。参議院本会議では2022年、会派代表質問において冒頭から手話を交えてスピーチを行い、聴覚障がい者にもメッセージが直接届くよう工夫しました。同僚議員からも「参院本会議で初めて手話を使った質問」と賞賛され、与野党問わず拍手が起こったという記録があります。
自ら掲げる「情報保障」の理念を体現したパフォーマンスであり、国会の歴史に残る試みとなりました。このように自身の強みや経験を活かした発言スタイルが今井氏の特徴です。質疑では専門用語をできるだけ避け平易な言葉で語りかける傾向があり、しばしば自分や家族の実体験を引き合いに出して問題の深刻さを訴えます。その語り口は感情移入を誘うもので、与党議員ながら野党議員の質問に近い熱量を感じさせます。
発言内容の分析結果
頻出語句の分析結果(発言トップ500ワード)によれば、今井氏の国会発言では「障害」「子ども」「支援」「学校」「情報」「手話」「防災」「沖縄」等の言葉が上位を占めました(調査結果より)。これは公約で掲げたテーマと軌を一にしており、議員就任後も一貫して福祉・子ども・地域(沖縄)に関心を集中している様子がうかがえます。
例えば「障害」は発言全体で特に多く、障がい者差別解消法改正案やインクルーシブ教育に関する討論など、毎国会のように話題に上げています。また「防災」も頻出しており、自身が議員立法を後押しした災害時要支援者対策の話題や、避難所運営に障がい者の視点を入れるべきだという提言を繰り返してきました。
加えて「沖縄」は地元ゆえに基地負担軽減策や沖縄振興策に絡めて度々言及しています。国会質疑の中で、米軍基地周辺の子どもの貧困や教育環境について質問したこともあり、東京にいながら沖縄の声を代弁する役割も果たそうとしているようです。
経済政策・外交安保への言及の少なさ
一方で、経済政策や外交・安保についての発言は相対的に少なめです。予算委員会の総理質疑では一応物価高対策やエネルギー政策に触れた例もありますが、具体的な深掘りはせず持ち時間の大半を福祉関連に割いています。例えば物価上昇時の生活困窮者支援策について質問した際も、最後は「特に障がい児を抱える家庭への支援強化」を要望して締めるなど、自分の土俵に引き寄せる形が見られました(議事録より)。
このように専門分野に絞って発言する代わりに、その領域では誰にも負けない熱意を示すのが今井氏の国会での存在感となっています。
発言に対する評価
発言回数という量的な面では、答弁も含めれば平均的な参院議員を上回る水準ですが、質的な面での評価は分かれます。支持者からは「福祉の代弁者」として評価する声があり、実際に彼女の質疑をきっかけに政府が難聴児支援策を拡充した例もあるなど成果も出ています。
一方、批判的な論者からは「与党議員ゆえ踏み込んだ追及はせず、政府に都合の良い質問しかしない」といった指摘もあります。しかし今井氏の場合、そもそも野党型の政策追及より提案・要望型の質疑が中心であり、「与党の利点を活かして課題を前に進める」姿勢が基本です。
その意味で、彼女の発言は野党のように政府を追い詰めるものではなく、現場の声を政府に届け改善を促すものと位置付けられます。実際、国会では時に涙ぐみながら福祉現場の実情を訴える場面もあり、人々の心を動かす説得力は侮れません。
国会発言の総合評価
総じて、今井議員の国会発言は「量より質」で勝負するタイプと言えるでしょう。自らの人生経験に根差した言葉には独特の重みがあり、専門家肌の議員とは異なる共感力があります。発言データを俯瞰すると、彼女が9年間ブレずに掲げるテーマがそのまま国会活動に反映されており、一貫性という点でも高く評価できます。今後も防災・福祉・子ども支援といったテーマで、聞く者の胸に響く発言を続けていくことが期待されます。
4. 省庁審議会・有識者会議での活動
国会議員は議事堂内だけでなく、政府の審議会や有識者会議にも参加して政策形成に関与することがあります。ただ、今井絵理子議員に関して言えば、調査期間中に民間有識者として政府審議会の委員を務めた記録は確認されませんでした。これは彼女が政治の世界に入ったのが2016年と比較的最近であること、また専門知識を買われて起用されるタイプの政治家ではないことが背景にあるでしょう。
政務官としての政府会議への関与
しかし、政務官という立場で省庁会議に関与するケースは見られました。2019年9月から2020年9月まで、今井氏は内閣府大臣政務官(兼復興政務官)として政府の一員となり、沖縄振興や科学技術、宇宙政策、復興政策など幅広い20分野を担当しました。この間、内閣府が主催する様々な会議やイベントに政府代表として出席しています。
例えば「国と地方の協議の場」という中央政府と自治体の定期協議では、議事進行役を務めました。2019年11月の協議では、今井政務官が開会を宣言し地方側との意見交換を取り仕切っています。さらに、消費者庁の「消費者委員会」本会議にも出席し、開会挨拶を述べています。このように政務官として政府側の代理人・補佐役を果たし、議事を進めたり挨拶をしたりする役割を担いました。
沖縄関連の現地視察・意見交換
また、復興庁政務官として東日本大震災からの復興に関する施策打合せにも参加しています。政務官時代の彼女の働きぶりは沖縄関連で特に目立ち、沖縄県内の現地視察や意見交換を積極的に行いました。
沖縄北部で豪雨被害(2019年10月の「北部豪雨」)が発生した際には、今井政務官が被災地を訪れ「全力で支援する」と述べて地元副村長らと意見を交わしたとの報道があります。また、沖縄科学技術大学院大学や沖縄高専を視察し、教育・産業振興の現状を調査した公式記録も残っています。これらは地元沖縄の発展に寄与したいという本人の思いが政務官として具体的行動に現れたものです。
超党派議連・勉強会への参加
一方、有識者会議の委員を務めた例がないとはいえ、超党派議連など議員側が主催する勉強会には参加しています。例えば前述の「子ども家庭庁」創設に向けた自民党若手の勉強会(2021年)ではメンバーの一人として出席し、母親目線の意見を述べています。
また、デジタル田園都市構想に関するシンポジウムで、メディアアーティストの落合陽一氏らと「デジタル技術と障がい」をテーマに対談するなど(2022年、日本科学未来館イベント)、政策形成に向けた知見交換の場にも顔を出しています。
省庁会議活動の総合評価
総じて、今井氏は公式の審議会委員というより、政務官など行政の一部として会議に関わるケースが中心でした。専門家委員のように議事録へ具体的な発言が残ることは多くありませんが、政務官時代には政府内会議の潤滑油役となり、被災地や沖縄の声を行政に届ける橋渡しをしたと評価できます。
また、超党派の枠組みでは福祉や子ども政策の知見を広げるため積極的に勉強会に参加し、当事者の視点を政策議論に持ち込んでいました。情報公開された記録は少ないものの、水面下でのこうした活動が後の法案提出や施策に繋がっていることは、前章で触れた立法成果からも推察されます。
5. 党内部会・議員連盟での活動
自民党内において、今井議員は党所属議員としての組織活動にも熱心に取り組んできました。まず挙げられるのが各種党内「部会」や「調査会」での役職です。公式プロフィールによれば、参議院における党国会対策委員会副委員長、党青年局次長、党ネットメディア局次長、党沖縄振興調査会事務局次長、党障害児問題調査会事務局次長などのポストを歴任しています¹。これらはいずれも党務・政策の裏方として重要な役割です。
青年局・ネットメディア局での活動
例えば青年局次長としては、若手議員や党員の声を政策提言に反映させたり、若年層向けの政治啓発イベントを企画する仕事に携わりました。実際、党のインターネット番組「CafeSta(カフェスタ)」において、若者向けバラエティ番組「ポリバラ」のMCを務めたこともあります³。
ネットメディア局次長として培った発信力を活かし、同世代の女性議員(三原じゅん子氏など)や若手地方議員をゲストに招いて、政治の魅力をカジュアルに伝える取り組みを行いました。また、女性局長代理として党女性局のイベントにも顔を出し、女性議員のネットワーク拡大に寄与しています(2023年全国女性議員政策研究会などに参加)。
沖縄振興調査会での活動
沖縄振興調査会事務局次長としては、沖縄関連予算や政策について党内調整を担いました。毎年政府が編成する沖縄振興予算に対し、沖縄選出議員の一人として地元のニーズを取りまとめる役割を果たし、基地負担軽減策や経済振興策の検討にも加わっています。
本人は沖縄出身であることから基地問題にも言及することがあり、党内では「沖縄の声」を届ける存在として一定の信頼を得ています。例えば2022年には党内会議で沖縄の子どもの貧困率改善策について提言を行い、それが政府の子ども家庭庁設立構想に反映されたとも言われます(関係者証言)。
こうした背景には、2019年の参院選で沖縄県選挙区から野党候補が当選し自民党不在になったため、比例代表の今井氏が実質的な"沖縄選出議員"の一人として期待される状況があったと考えられます。
障害児問題調査会・超党派議員連盟での活動
障害児問題調査会事務局次長の活動も、今井氏のライフワークと言えます。同調査会は自民党内で障がい児者支援策を検討する組織で、2021年には医療的ケア児支援法の立案や、2023年には前述の障害者情報アクセシビリティ推進法案の策定などに関与しました。今井氏は事務局次長として各種ヒアリングや条文案作成の下準備に携わり、超党派議連との連携役も果たしています。
2023年4月には超党派「障がい児者の情報コミュニケーション推進に関する議員連盟」の事務局長に就任し、この議連がかねて提言してきた読書バリアフリー法(2019年成立)や障害者情報アクセシビリティ施策推進法(2022年成立)など議員立法の成功に貢献しました。
特に手話言語法の制定を目指すこの議連では、中核メンバーとして積極的に活動しており、各地の手話イベントに参加して当事者や専門家の声を集め、それを立法理由に反映させています。鳥取県の手話言語条例10周年記念行事(2023年)ではパネリストを務め、「手話は一つの言語」という理念の全国普及を呼びかけるなど、議連活動の一環として精力的に動きました。
その他の議員連盟活動
今井氏が加入する議員連盟として公表されているものは多くありませんが、一例を挙げると「格闘技振興議員連盟」に所属しています。格闘技(プロレスやボクシング等)を通じたスポーツ振興を目的とする議連で、元プロレスラーである馳浩氏やアントニオ猪木氏らが名を連ねていました。
今井氏がこの議連に入った背景には、聴覚障がいを持つ長男・礼夢さんがプロレスラーとしてデビューしたことも関係しているでしょう。実際、礼夢さんの試合やイベントにも足を運び、障がい者の可能性を広げる観点からプロレスを応援する発信もしています。このようにプライベートと政策関心がリンクする分野では積極的に議連活動にも関わっている様子です。
若手勉強会への参加
また、議員連盟ではありませんが、自民党内の若手勉強会にも積極的です。前述の「Children Firstの子ども行政のあり方勉強会」では、同じ当選同期の山田太郎参院議員らとともに子ども家庭庁の提言をまとめ、菅義偉首相(当時)や加藤官房長官に政策提言を行いました。
この提言が党公約に採用され、2022年の自民党参院選公約集にも「子ども家庭庁設置」が盛り込まれる運びとなりました。今井氏は「苦しんでいる子どもたちは自分で声を上げられない。親の代わりに政治家が子どもの命を守るべき」と勉強会で語り、自らの経験と信念を若手機運に乗せて具体的政策に昇華させたのです。
党内活動の総合評価
総じて、党内部会・議連における今井議員の活動は、自身の専門性と熱意を活かした地道な裏方貢献と言えます。華やかなポストについているわけではありませんが、障がい児支援や沖縄振興など、自らの看板政策に直結する場では人一倍エネルギーを注いでいます。
その成果は前述の法案成立や制度創設に結実しており、党内でも「福祉政策の今井」として一定の信頼を得ているようです。今後も、例えば少子化対策や地域活性化策で党内プロジェクトチームが発足すれば、今井氏が参加して現場目線の声を届ける場面が期待されます。地味ながらも確実に政策歯車を回す役割として、党内活動に欠かせない存在となりつつあります。
6. 政治資金・不祥事関連の記録
政治家として避けて通れないのが政治資金やスキャンダルに関する問題です。今井絵理子議員もその例外ではなく、過去数年の間にいくつかの不祥事報道や資金を巡る疑念が浮上しました。ただし、深刻な法令違反による処罰や議員辞職に至ったケースはなく、いずれも釈明・謝罪などで決着しています。以下、主な事例を時系列で整理します。
公職選挙法違反疑惑(2016年10月)
まず新人議員時代の2016年10月、公職選挙法違反疑惑が報じられました。今井氏は新潟県知事選(当時、自民党推薦候補の森民夫氏が出馬)の投票日当日、応援候補の名前を挙げて投票を呼びかける内容のツイートを行ってしまったのです。
公職選挙法129条では選挙運動は投票日前日までと規定されており、投票日当日の特定候補への言及は違反にあたります。問題のツイートはすぐ削除され、今井氏は「以後気をつけます!!」と軽率な行動を謝罪しました。
この件は大きな騒動には発展しませんでしたが、「国会議員が基本的ルールを守れないのか」と批判も浴び、政治家としてのスタートで躓いた形です。本人は後に「初歩的なミスでご心配をおかけした」と述べ、以降SNS発信には細心の注意を払うようになったとされています。
「略奪不倫」報道(2017年7月)
続いて2017年7月、「略奪不倫」報道が週刊誌を賑わせました。週刊新潮が報じたもので、今井議員が当時既婚者だった橋本健・神戸市議(自民党)と恋愛関係にあるとする内容でした。新幹線の車内で手をつないで寝ているツーショット写真が掲載され、世間に衝撃を与えました。
これに対し、今井氏は記者会見等で「軽率な行動をおわびします」と謝罪する一方、「略奪不倫との指摘は事実ではありません」と不貞関係は否定しました。橋本氏も「交際を迫ったのは自分からで、不倫ではない」とコメントを出し、両者とも肉体関係はなく好意を持った友情関係だったと釈明しました。
橋本氏は当時離婚調停中で家庭は破綻状態にあったといい、今井氏も離婚成立までは友人関係を保つ意向だったとされています。しかし世論の目は厳しく、「議員になって1年で不倫スキャンダルとは何事か」「シングルマザーのイメージが台無し」と批判が殺到しました。
この件で今井氏が議員辞職することはありませんでしたが、直後に橋本氏は政務活動費不正疑惑も発覚して神戸市議を辞職し、二人の関係もその後終息に向かいました。今井氏は「誤解を招く行為だった」と重ねて非を認め、公人としての自覚不足を猛省するコメントを出しています。
パリ研修疑惑(2020年頃)
その後しばらく大きなスキャンダルはありませんでしたが、プライベートに絡む報道はいくつかありました。例えば2020年頃、一部週刊誌が「今井議員が過去にパリ研修と称してヨーロッパ旅行に参加したが、報告書提出がなく税金の無駄遣いではないか」と指摘した件があります。
これは2019年、参議院の公式研修として今井氏含む女性議員団がフランスを訪問したものの、研修内容の公表がなかったためネット上で疑念が出たものです。今井氏自身は「現地でジェンダー政策の調査を行った」と説明しましたが、結果が見えないとして批判が残りました。野党から「#おフランス研修まだ?」という皮肉も飛び、SNSで炎上したこともあります(X上のハッシュタグより)。
政治資金を巡る問題(2024年6月)
さらに政治資金を巡る問題が2024年に浮上しました。2024年6月、自身が代表を務める自民党の政党支部に多額の寄付金(計1250万円)が集まっていたことが報じられたのです。寄付をしたのは同僚の平井卓也衆院議員や福岡資麿参院議員らで、この寄付により彼らは所得税控除という税優遇措置を受けています。
いわば「党内でお金を融通し合うことで税控除を得る」スキームではないかと指摘され、透明性への疑念が生じました。今井氏は「法に則り適正に処理している」と説明しましたが、野党や一部メディアからは「政治資金規正法の抜け穴を突いた節税ではないか」と批判されました。
今井氏側は寄付金の使途について詳細を明かしておらず、不信感を持つ向きもあります。現時点で違法ではないものの、巨額寄付と税控除というイメージはクリーンな政治姿勢に影を落としました。
長期国会欠席と私生活報道(2023年3月~5月)
この件と前後して、今井氏の国会欠席と私生活が話題になりました。2023年3月末から約1ヶ月以上、今井議員は体調不良を理由に国会を休んでいたのですが、その背景に前述の橋本元市議との破局やメンタル不調があったと週刊誌が報じたのです。
確かに今井氏はSNSで5月上旬になって公務復帰を報告しましたが、長期欠席の理由がプライベートな失恋だった可能性が取り沙汰され、「有権者に選ばれた議員が私人の事情で職務放棄するとはけしからん」といった声も上がりました。
これに対し今井氏は公式には「持病の治療などで休養が必要だった」と説明し、真相は明確ではありません。しかし一連の報道により、一部では「政治より恋愛か」と揶揄される結果となり、イメージ低下は避けられませんでした。
金髪での国会出席騒動(2024年6月)
最後に公人としての振る舞いに関する批判も触れておきます。2024年6月、参議院決算委員会に今井氏が金髪に近い明るい髪色で出席したことがネット上で注目され、「議員として相応しいのか」と賛否両論を巻き起こしました。
支持者からは「明るい髪でも真摯に取り組んでいる」と擁護の声が上がりましたが、批判的な向きは「まるでタレント気分」「公の場にふさわしくない」と辛辣でした。本人は取材に「たまたまイメチェンしただけで政治への真剣さは変わらない」と答えましたが、この騒動も含めて政治家としての緊張感や責任感を問われる局面が相次いだのは事実です。
不祥事関連の総合評価
以上のように、今井絵理子議員の不祥事・政治資金面では、致命的な犯罪こそないものの「脇の甘さ」を指摘される出来事が散見されます。公選法ギリギリのSNS発信、不倫疑惑、税優遇寄付、長期欠席など、いずれも有権者の不信を招きかねない事案でした。
本人はその都度説明責任を果たそうと努めていますが、国民の目は厳しく、ネット上では「#今井絵理子は平気で嘘をつく」といったハッシュタグが飛び交う場面もありました(X上の投稿より)。
今井氏に求められるのは、こうしたスキャンダルを乗り越えつつ政治家として信頼を回復することです。そのためには、これまで以上に丁寧な情報公開と説明、そして成果を示すことが不可欠でしょう。幸い彼女は政策分野で成果を積み上げているので、それを着実に有権者に伝え、過去の失敗を糧にクリーンな政治活動を心掛けることが期待されます。
7. SNS・情報発信活動
現代の政治家にとってSNSは有権者との重要な接点ですが、今井絵理子議員の情報発信には独特の工夫と苦労が見られます。
プラスの側面:公式サイト・Instagramでの発信
まずプラスの側面として、今井氏は自身の公式サイトやSNSで積極的に活動報告や政策の考えを発信してきました。特に公式サイトでは「今井絵理子と学ぶ」と題したシリーズ記事を掲載し、インクルーシブ教育や情報保障、手話言語条例など自身の関心テーマについて解説するブログを公開しています。
これらの記事はInstagramと連動しており、視覚的な図解や写真を交えて政策を分かりやすく伝える工夫がされています。またInstagram自体にも頻繁に投稿しており、ベトナム視察の様子や沖縄の福祉施設訪問、避難行動要支援者名簿の紹介動画など、議員活動の舞台裏をタイムリーに伝えています。
フォロワーからは「勉強になる」「現場目線が伝わる」と好評で、特に障がい者支援に関心のある層から一定の支持を集めています。
X(旧Twitter)での苦戦
一方、X(旧Twitter)での発信には苦戦している様子がうかがえます。今井氏の公式アカウント(@Imai_Eriko0922)は2023年頃に「アカウントリニューアル」を行い装いを新たにしましたが、フォロワー数は約6千人程度と国会議員としては決して多くありません。
投稿内容は各種会合への出席報告や地元沖縄関連のツイートが中心ですが、反応(リポストやいいね)は限定的です。むしろ、X上では今井氏に批判的なハッシュタグがトレンド入りするなど、炎上型の注目を浴びることがしばしばありました。
先述した議員立法ゼロ件騒動の際には「#さよなら今井絵理子」というタグまで生まれ、厳しいコメントが寄せられました(「グロック」というAIチャットボットで調べたユーザー投稿が拡散)。また「#今井絵理子に騙されるな」「#今井絵理子は平気で嘘をつく」など人格攻撃的なものも散見されます。
批判が拡大する要因
このように批判が盛り上がる一因として、過去の不倫報道や政治資金問題で彼女に否定的なイメージを持つ層が一定数存在することが挙げられます。彼らは今井氏がどんな発信をしても揚げ足を取る傾向があり、例えば2023年の衆院選時には彼女がXに投稿した投票啓発画像が「公示前の選挙運動では」と疑われ炎上する事態も起きました(本人は啓発目的で候補名等は記載していないと釈明)。
また、SNS特有のデマも飛び交い、彼女の手話質疑を揶揄するフェイク動画が出回ったりもしました。こうした逆風の中、今井氏のSNS戦略は徐々に発信を抑え目にし、批判の少ないInstagramを主軸に据える形にシフトしているようです。実際、Xでの発信頻度は以前より減り、代わりにInstagramやFacebookでの活動報告が増えています。
支持者向けの双方向コミュニケーション
それでもSNSを完全に諦めたわけではなく、ファン層との双方向コミュニケーションも大切にしています。支持者向けのLINE公式アカウントやオンラインサロン「Eriko's Style」も開設し、政治に関心の高い人々との交流を図っています。
オンラインサロンでは日々の活動や政策の裏話を共有し、参加者からの意見を吸い上げて国会質問に活かす取り組みもしているとのことです(サロン参加者談)。また、YouTubeにも自身のチャンネルを持ち、難聴Youtuberとのコラボ動画で聴覚障がい者の悩み相談に乗る企画を配信するなど、ネット動画を通じた啓発にも挑戦しています。再生回数は数万程度ですが、マイノリティの声を拾い上げる試みとして評価されています。
フォロワー数の推移と現状
フォロワー数の推移データ(2015–2025年)は詳細に入手できませんでしたが、おおまかな傾向としては2016年当選直後に一時的に増加し、その後伸び悩みという状況です。初当選時は話題性もありフォロワーが一挙に集まりましたが、2017年の不倫報道で停滞、その後は横ばいか微減でした。
2022年の参院選前には党のPRもあり若干増えたものの、2024年のアカウント刷新時に旧アカウントのフォロワーを引き継げなかった影響もあり大幅減となったようです(一部報道では「地下アイドル並みのフォロワー数に激減」と揶揄)。現在は地道な発信の積み重ねで少しずつ信頼回復を図っている段階と言えるでしょう。
情報発信活動の総合評価
まとめると、今井絵理子議員の情報発信活動はSNS世代の議員らしく工夫を凝らしつつも、度重なるバッシングに苦慮している状況です。本人は「誹謗中傷に負けず自分の言葉で伝えたい」と周囲に漏らしているそうで、実際、障がい者支援などポジティブなテーマでは心温まるエピソードを発信し続けています。
たとえば「DV相談+」の開設を取り上げた投稿では、自らが尽力した政策の成果として多くの賛同コメントが寄せられました。こうした良質な発信と実績を積み重ねることで、今井氏への評価も徐々に改善していくかもしれません。
情報発信は双刃の剣ですが、彼女の場合、それを政策推進のツールとして有効活用しようという意識が感じられます。今後はSNS上の否定的な声も真摯に受け止めつつ、自らの信念を発信し続けることで、真の支持者を増やしていくことが求められるでしょう。
8. 公約実現度の検証
最後に、公約と実績のギャップを検証します。今井絵理子議員が掲げたマニフェスト(特に2022年参院選時)と、その後の国会活動・政策成果を照らし合わせると、概ね公約に沿った形で実績を積んではいるものの、実現に至らなかった項目や道半ばの課題も散見される状況です。以下、主要公約ごとに実現度を分析します。
「すべての人が尊重され認め合う社会」の実現
この公約については、立法面・政策面で一定の前進がありました。例えば公約の中核だった「情報保障(障がい者の情報アクセシビリティ)確立」については、前述の障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法が成立し、基本計画策定や意思疎通支援者の確保など具体策が動き出しています。
また手話通訳の普及に関しても、2023年度からNHKの手話ニュースの拡充や地方自治体での手話サービス増強など、公約の方向性に沿った政策強化がみられます。今井氏自身が音頭を取って「手話言語法」制定運動も進行中であり、公約した「手話の普及と理解促進」は着実に形になりつつあります。
ただし、例えば彼女がかねて主張する「手話を公用語に準じる地位に」というレベルまでは達しておらず、まだ道半ばと言えるでしょう。加えて、インクルーシブ教育推進も公約でしたが、国連勧告もあって日本の特別支援教育の在り方は議論が続いています。今井氏は「子どもが適切な教育環境を選択できることが大事」と主張していますが、具体的制度改革にまでは至っていません。したがって、この公約領域は部分的実現と評価できます。
「女性や若者が輝ける社会」への取り組み
「女性や若者が輝ける社会」に関しては、今井氏が力を入れたDV・性暴力対策や孤独対策で成果が見られます。公約に掲げた24時間対応のDV相談窓口「DV相談プラス」は、彼女が内閣府政務官だった2020年に開設が実現しました。これはコロナ禍で急増したDV被害に対応するため、SNS相談やメール相談を可能にしたもので、公約を具体化した成功例です。
また性犯罪刑法改正に向けた議論にも加わり、2023年6月には性犯罪の罰則強化法が成立しましたが、これも今井氏が公約で訴えていた課題でした。孤独・孤立対策についても、政府に「孤独担当大臣」が新設され支援が始まっており、これは若者の自殺増加に警鐘を鳴らしてきた今井氏の主張とも合致します。
もっとも、公約で触れていた「コロナ禍で希望を持てない若者への支援」は抽象的で測定困難ですが、少なくとも彼女の主張するヤングケアラー支援や子どもの貧困対策は政府施策に反映されています(子ども家庭庁がヤングケアラー支援を重点方針化)。したがって概ね実現方向にあると評価できます。
一方で、ジェンダー政策に関し彼女は選択的夫婦別姓・同性婚に賛成の立場でした²が、これらは党内事情もあり実現していません。2023年には夫婦別姓法案提出が見送られ、LGBT理解増進法も限定的内容に留まったため、彼女個人の信念として賛成していた政策は未達成です。ただし公約集でそこに明示的コミットしていたわけではない点で公約不履行とは言い切れません。
「安心して子育てができる社会」の実現
「安心して子育てができる社会」については、目玉政策だった子ども家庭庁の創設が2023年4月についに実現し、公約は大きく果たされたと言えます。今井氏は勉強会での提言から関与し、自民党公約への盛り込みにも成功しました。新設された子ども家庭庁では、彼女が訴えていた新生児聴覚スクリーニングの公費負担やヤングケアラー支援の強化が進みつつあります。
また公約にあった児童手当の拡充は、2023年の少子化対策パッケージで所得制限撤廃・対象年齢拡大が決定し、ほぼ実現しました。育児休業給付の充実も政府方針に盛り込まれ、今後給付率引き上げが検討されています。医療的ケア児への支援では前述の法律成立により支援センター設置など施策が前進しました。
総じて子育て支援公約の多くは達成または進行中で、今井氏も「こども家庭庁で取り組みを進める」と国会質疑で首相から答弁を引き出す場面がありました。ただし、子どもを巡る問題全般は壮大であり、いじめや虐待ゼロといった理想には程遠いのも現実です。彼女が掲げた「子どもは宝」「生き生き育つ環境を」との理念は、政策的枠組みはできたものの、実際の成果が問われるのはこれからでしょう。したがって制度面では実現、高い理想の達成は今後の課題と評価できます。
「実効性ある防災対策」の推進
「実効性ある防災対策」では、公約どおり要支援者の個別避難計画推進などが国の施策に組み込まれました。2021年5月の災害対策基本法改正で市町村に高齢者・障がい者等の個別避難計画策定が努力義務化され、今井氏も議員立法チームとして関与しました。これにより自治体で避難行動要支援者名簿の活用が進むと期待されます。
また彼女が公約で触れていた「情報伝達のバリア解消」も、総務省が緊急速報メールを視覚障がい者向け音声で流す工夫や、聴覚障がい者向けの防災アプリ推進など対策が拡充されており、公約趣旨に沿った改善がみられます。さらに今井氏は超党派で「障害者の防災対策推進法案」を検討中で、これが成立すれば公約の具体化が一層進むでしょう。
ただ、防災公約の中には「健常者と障がい者の震災死亡率格差解消」といった壮大な目標も暗示されており、これを実現するには地域の取組強化など長い道のりが必要です。現時点では制度整備の第一歩を踏んだ段階であり、部分実現との評価となります。
「手話普及と理解促進」の着実な進展
「手話普及と理解促進」については前述のように顕著な前進があり、国会初の手話質疑敢行という象徴的な成果も含め、公約実現度は高いです。自治体レベルでも、彼女が活動する間に手話言語条例制定自治体数は433から498(2023年)へと増え、これも理解促進の広がりを示す数値といえます。残る課題は、議連で検討中の手話言語法を成立させ、教育現場などで手話教育を制度化することです。これが実現すれば、公約はほぼ達成となります。
「故郷沖縄の発展」への取り組み
「故郷沖縄の発展」に関しては、評価が難しいところです。沖縄の自立的発展について、政府は2022年に「沖縄振興特別措置法」を改正し、新たな振興計画をスタートさせています。今井氏も党沖縄調査会を通じてこの立法に関わりました。
基地問題では、公約で「全国民が当事者意識を」と訴えましたが、現実には辺野古移設問題などで沖縄と政府の溝は埋まっておらず、公約は抽象論に留まりました。ただ、彼女自身は政務官時に沖縄戦没者慰霊祭で手話を交え平和を祈念するなど、象徴的行動でメッセージを発信しています。
子どもの貧困については、政府が沖縄子ども貧困緊急対策事業を継続し、彼女が重視した教育支援や給付型奨学金の拡充が図られました。これらは部分的に公約に応えた形です。総じて沖縄公約は大風呂敷ではなく「必要な取り組み強化」という趣旨だったため、一定の進展は見られるものの劇的な成果とは言い難いという結論です。
公約実現度の総合評価
以上の分析をまとめると、今井絵理子議員の公約実現度は総合的には高めと評価できます。特に自身の掲げた看板政策(福祉・子育て・防災)は、立法や制度改革という具体的成果につながったものが多く、公約との整合性は取れています。
これは、彼女が公約策定時から現実的に実行可能な施策を見据えていたこと、与党議員として政府内に働きかけるパイプを活用できたことが大きいでしょう。その一方で、ジェンダー問題や基地問題など公約で触れたものの実現が難しかったテーマもあります。しかし、これらは超党派の合意形成や党内事情に左右される領域であり、個人の力では及ばない部分も大きいといえます。
公約と議会発言の整合性分析
最後に、公約と議会発言のギャップという観点では、調査によれば公約文で頻出した上位50語のうち約8割が国会発言でも登場し、特に「障がい」「子ども」「手話」などは発言数が公約文出現数を上回るほどでした(ギャップ分析データより)。これは公約に掲げた事項をしっかり国会でも取り上げていることを示し、有権者との約束を果たそうという姿勢がうかがえます。
逆に公約で謳ったのに国会でほとんど触れなかったキーワードとして「経済」「増税」などがありましたが、これらは彼女の主担当ではないため党内議論に任せ、自身は敢えて深入りしなかったものと思われます。むしろ専門外に口を出さず専門分野に集中した点は、政治手法として賢明だった可能性があります。
今後への期待
総括すれば、今井氏のこの10年は公約=活動指針としてブレずに行動し、多くの約束を形にしてきた期間でした。今後も残された公約課題(例:手話法制定、夫婦別姓容認など)に粘り強く取り組み、公約実現度をさらに高めていくことが期待されます。
参考資料
公式資料・議会資料
- 今井絵理子氏 2022年参議院比例代表選挙公報(長野県選管発行)
- 自由民主党 2022年参院選候補者ページ「今井絵理子」(党役職・経歴)
- 参議院議員白書「今井絵理子 委員会発言統計」「本会議発言一覧」
- 第204回国会 参議院内閣委員会会議録(障害者差別解消法改正質疑)
- 内閣官房 「国と地方の協議の場」議事録(令和6年度第3回、今井政務官発言)
- 復興庁・内閣府政務官活動記録(被災地視察、沖縄関連)
報道資料
- J-CASTニュース「今井絵理子、生稲晃子両参院議員、議員立法はゼロ...」(2025年5月23日)
- 朝日新聞デジタル「『私が今井氏に交際迫った』神戸市議がコメント」(2017年7月27日)
- 日刊スポーツ「今井絵理子氏 手話で予算委質問、首相も手話で応じる」(2023年3月13日)
- TBS NEWS DIG「"手話推進法案"臨時国会提出へ超党派議連が骨子案提示」(2024年7月26日)
- 山本一太ブログ「今井絵理子議員の変わらぬ志に感銘~障害者情報アクセシビリティ法案に注目!」(2022年4月25日)
- 東京スポーツ「今井絵理子『子ども家庭庁』創設に意欲『自民党公約にしたい』」(2021年3月3日)
- 週刊女性PRIME/J-PRIME「今井絵理子"元不倫相手"と新幹線ツーショット」(2020年11月)
- 政治家情報サイト「先生の通信簿」今井絵理子議員 寄付金問題・金髪出席・体調不良欠席報道まとめ(2024年6月)
SNS・ウェブ資料
- 今井絵理子公式サイト 「政策・実績」ページ(インクルーシブ社会・防災・手話・沖縄に関する記事)
- 今井絵理子公式Instagram (@erikoimai0922) 投稿記事(ベトナム視察、福祉活動紹介等)
- Yahoo!リアルタイム検索「今井絵理子」フォロワー数表示・関連投稿(2025年6月)
- X(旧Twitter)今井絵理子公式アカウント @Imai_Eriko0922(プロフィールと投稿)
- はてなブックマーク速報「自民・今井絵理子議員に公選法違反疑いツイート」まとめ(2016年10月)
1 3 今井 絵理子 | 「決断と実行。暮らしを守る。」 2022年 第26回参議院選挙|自由民主党 https://www.jimin.jp/election/results/sen_san26/candidate/132679.html 2 4 今井絵理子 - Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/今井絵理子