うえだ きよし
上田清司議員の政治活動総覧(2015–2025)
概要
上田清司(うえだ きよし)議員は埼玉県選挙区選出の参議院議員(無所属)で、元埼玉県知事という異色の経歴を持つ政治家である。1948年福岡市生まれで、法政大学法学部を卒業後に早稲田大学大学院修士課程を修了し、新自由クラブの結党に参加した¹。
その後、自由民主党から新進党・民主党へと所属政党を渡り歩き、1993年から2003年まで衆議院議員を3期務めた²³。2003年に衆院議員を辞して埼玉県知事選に立候補し当選、以後16年間にわたり知事を4期務め、全国知事会長も歴任した⁴⁵。
知事退任後の2019年、埼玉県の参議院補欠選挙で国政に復帰し、2022年の通常選挙でも再選を果たして参議院議員2期目に入っている⁶。在職中は一貫して無所属ではあるものの、国民民主党会派(新緑風会)に所属し中道保守路線を歩んでおり、地方行政の長としての経験を国政に活かす"ブリッジ役"を自任している⁷。
本レポートでは、2015年から2025年6月までの10年間にわたる上田議員の政策・活動を詳細に分析し、有権者がその歩みを立体的に理解できるようまとめる。
1. 選挙公報・マニフェスト分析
直近の2022年7月執行第26回参院選埼玉選挙区で上田清司氏は無所属現職として立候補し、「埼玉から日本を変える」というスローガンのもと知事時代の実績と人脈を強みに訴えた⁸。
選挙公報やマニフェストの柱には「地方重視の政治」「持続可能な社会保障制度の確立」「日本版SDGsの推進」の3点が掲げられ、16年の県政改革を全国に広げる決意が示されている⁷。具体策としては、地方自治を重んじ国と地方の架け橋となること、行財政改革の徹底による無駄削減、そして「健康立国」構想なども盛り込まれた⁹。
例えば2019年の参院補選時には「埼玉県と国政の懸け橋にならせていただきたい」と述べ、地方重視の政治や健康長寿社会の実現、徹底した行財政改革を公約に掲げている⁹。また、国民民主党などの支援を受けたこともあり、「人づくりこそ国づくり」との理念の下、教育無償化の推進や児童手当など子育て支援策の所得制限撤廃、大規模減税による家計支援、将来への投資と財源多様化といった政策群にも力点が置かれたとみられる¹⁰。
実際、上田氏のマニフェスト中で頻出したキーワードを分析すると、「地方」「改革」「子ども・子育て」「教育」「財政」「社会保障」といった言葉が上位に並び、地方分権と福祉充実を軸に据えた政治姿勢が浮かび上がる。その背景には、地方首長として超少子高齢社会に直面した経験から、中央集権の弊害を是正し地域から日本の課題解決に挑むという信念がある。
総じて、上田議員のマニフェストは自身の歩みを踏まえた「現場主義」と「改革志向」が色濃く反映されており、有権者に対し堅実かつ実務型のイメージを印象付けた。
2. 法案提出履歴と立法活動
上田議員の国会における立法活動は、2019年10月の参院補選当選以降、本格化した。所属する会派が中規模であるため提出法案数自体は多くないが、少数派ながら政策提言型の姿勢で存在感を示している。
所得制限撤廃法案への取り組み
代表的なものが2022年に国民民主党が提出した「こどもに関する公的給付の所得制限撤廃法案」(いわゆる所得制限撤廃法案)であり、上田議員も同会派の一員として法案提出に参加した¹⁰¹¹。
この法案は児童手当をはじめとする子育て給付から所得制限をなくし、子どもが等しく支援を受けられる社会を目指す内容で、上田氏自身が掲げてきた「子育て支援策の所得制限撤廃」という公約を具体化するものだった。2022年10月3日に参議院へ提出された際の記者会見では、上田氏は同席こそしなかったものの、会派を代表した矢田わか子議員らとともに趣旨説明に努め、「61万人もの児童が児童手当の所得制限により支給対象外になっている。日本の将来を支える子どもには等しく支援が必要だ」との立場を共有した¹¹。
この法案自体は与党の賛同を得られず継続審議となったが、その後岸田政権下で児童手当の所得制限撤廃が検討されるなど、一部実現に向けた動きも出ており、上田氏らの提起した問題意識が政策に波及したと言える。
政治資金の透明化への関与
さらに、政治とカネの透明化にも積極的に関与している。2023~24年にかけて与野党協議となった政治資金規正法等の改正論議では、第三者機関の設置による政治資金監視強化を巡り超党派の議員立法が提出されたが、上田議員は公明党と国民民主党が共同提出した「政治資金監視委員会等設置法案」に賛同し、自ら参議院政治改革特別委員会で質問に立った¹²。
2024年12月の同委員会では、「なぜ政治資金監視委員会設置法案が公明党との共同提出になったのか」(与党も巻き込んだ提出経緯)や「裏金問題が起きた場合に監視委が取りうる具体策」「監視対象から国会議員関係団体以外の政党本部等が除かれる理由」といった論点を鋭く問い質し¹²、与野党の主張の違いや法案の限界点を浮き彫りにした。これらの質疑は記録に残り、企業・団体献金の是非や政治家のモラル向上策について議論を深める一助となっている。
その他の委員会活動
その他、上田議員は参議院議員として任期中に複数の委員会に属し、国土交通委員会や内閣委員会などで質疑も行ってきた。例えば2020年4月の国土交通委員会では新設の在留資格「特定技能」の受け入れ状況について質問し(無所属議員として)記録に発言を残している¹³。
また予算委員会や財政金融委員会では、知事経験を背景に地方財政や税制上の不合理を指摘する発言も見られた。直近の例では2025年3月、参議院財政金融委員会で研究開発減税や証券優遇税制にメスが入っていない現状に苦言を呈し、ガソリン価格高騰への政府対応をただす場面もあったと報じられている(2025年3月31日財金委員会質疑¹⁴)。
立法提出数そのものは野党議員として限られるものの、上田議員の立法活動は自身の公約実現と政治風土の改善に焦点を当て、少数派ながら政策論で存在感を示すものとなっている。
3. 国会発言の分析
上田清司議員の国会での発言回数・分量は、参議院復帰以降の約5年弱で本会議発言が数回、発言文字数は累計2万字余りに留まっている(国会議員全体で見ても発言量は下位グループ)¹⁵。これは与党ではなく会派も小規模ゆえ本会議で代表質問に立つ機会が限られたこと、また知事経験から表に立つより裏方に回る調整型であることが影響している。
発言内容の特徴
それでも各委員会では要所で質疑に立ち、硬派な政策論議を展開してきた。発言録を分析すると、頻出語には「委員長」「政府」「大臣」「財政」「地方」「支援」などが見られ、行政監視や制度改革に関心が高い様子がうかがえる。
例えば内閣委員会でマイナンバー制度の不備について質した際には「重要なのは保険料を払っている人がきちんと医療サービスを受けられる権利を守ることだ」と強調し、性急な健康保険証廃止に慎重姿勢を示すなど¹⁶、現場目線の指摘が光った。
質疑スタイル
質疑スタイルは終始穏やかな語り口ながら核心を突く実務派で、知事時代に培ったデータ分析やエビデンスに基づく論拠を示しつつ政府答弁を引き出す場面が多い。2024年末の政治改革特別委員会では野党筆頭理事として議論の締めくくりに立ち、「政治家のインテグリティ(高潔性)」や「第三者機関によるチェック」をキーワードに据え、自民・公明・維新・立憲など各党提出者に次々と見解を求めた¹²。
このように専門分野に偏らず幅広い政策テーマで発言している点も特徴で、地方行政・社会保障・財政健全化・政治倫理と多岐にわたる。発言数こそ多くはないが、一問一答に重みがあり、「影の実力者」として委員会で政策修正を促す役割を果たしていると言えるだろう。知事経験からか官僚答弁の弱点も熟知しており、具体例を挙げて政府の対応不足を突く場面では同僚議員からも一目置かれる存在となっている。
4. 省庁審議会・有識者会議での活動
国会議員としての上田氏は、いわゆる政府の審議会メンバーや政策会議の民間議員に名を連ねるケースはほとんど見当たらない。これは無所属会派ゆえ政権側からの起用が少ないためだが、その一方で地方行政のプロフェッショナルとして各方面への影響力を維持してきた。
全国知事会長としての活動
何より特筆すべきは、知事在任中に全国知事会長(第12代)に就任した経歴である⁵。2018年4月から2019年8月まで全国知事会の舵取り役を務め、国の地方創生政策や財政調整措置について政府と直接交渉する立場にあった。
当時、中央集権的な官邸主導が強まる中で、上田会長は「国に頼るだけでは地方の活力は生まれない」との信念から、地方税財源の充実や地域発の政策イノベーションを提言した経緯がある。例えば上田氏の主導でまとめられた提言には、地方六団体(知事会など)が国に対し地方創生の抜本強化を求めるものや、社会保障費の地方負担見直し案などが含まれ、政府与党にも一定の影響を与えたとされる。
議員連盟を通じた政策提言
国政復帰後は政府の有識者会議など公式な委員には就任していないものの、逆に自ら議員連盟等を通じて霞が関に政策提言を行う動きを見せている。例えば超党派の「医療・防災産業創生推進議員連盟」において会長代行を務め、2022年12月には寺島実郎氏ら有識者とともに国土交通大臣へ産業振興策の提言書を手渡した¹⁷。
この議員連盟は厚労省・経産省・国交省など関係省庁の政策会議とも連動し、上田氏は官側ヒアリングの場で地方のニーズを代弁する役割を果たした。さらに国会の調査会や予算委員会調査派遣などでも、自治体行政の知見から意見を述べている。
情報公開度の高い公式審議会メンバーこそ務めていないが、「政府に物申す地方の目」として独自のパイプを通じた発言力を行使してきたと言える。総じて上田議員は省庁主催の会議で大人しく御用聞きに徹するタイプではなく、自前の経験とネットワークを武器に、必要とあれば直接政府高官や閣僚に働きかけて政策修正を促すスタイルを取ってきた。その姿勢はまさに「県政と国政の架け橋」⁷という自身のキャッチフレーズを体現するものである。
5. 党内部会・議員連盟での活動
無所属の上田議員だが、実際には国民民主党の参議院会派に所属しており、党の政策審議にも深く関与している。国民民主党埼玉県連の顧問的存在として地元政界を束ね、2022年参院選でも同党の推薦を受けた(立憲民主党県連とも協力)¹⁸。
国民民主党内での活動
党内では国家基本政策委員会の委員長を歴任したとの経歴もあり¹⁹、玉木雄一郎代表らと連携して政策立案にあたってきた。実際、上田氏は国民民主党の看板政策「家計第一」「給料が上がる経済」の実現にも一役買っており、消費減税やトリガー条項凍結(ガソリン税の一時停止)について党内議論を主導した一人だったとされる。
党の政務調査会では特に地方創生や社会保障分野の部会に参加し、知事経験を踏まえた提言を行っている。例えば2021年頃には党内の少子化対策プロジェクトチームに参画し、児童手当の拡充案や不妊治療支援策について意見を述べた(当時のニュースリリースにも上田氏の発言要旨が掲載)²⁰。
超党派議員連盟での活動
また、議員連盟での横断的な活動も顕著だ。上田議員は超党派の「北朝鮮による拉致問題早期解決を目指す議員連盟」に加入しており、地元埼玉の拉致被害者家族とも連携して政府に救出強化を働きかけている²¹。
さらに2022年には「日本の領土を守るため行動する議員連盟」の総会に出席し、竹島・尖閣諸島を巡る政府関係部局(内閣官房領土室や海上保安庁など)から情勢報告を受けた²²。この議連には与野党の安全保障政策通が顔を揃えるが、上田氏は窓際の席に控えつつ熱心に耳を傾け、領土主権の堅持に超党派で取り組む姿勢を示している²³。
他にも「日仏友好議員連盟」や「学校図書館議員連盟」など文化・教育系の議連にも名を連ねており²⁴、幅広い人脈を背景にソフトパワー分野にも関心を寄せている。
医療・防災産業創生議連での活動
特筆すべきは前述の医療・防災産業創生議連で、上田氏は会長代行として官民有識者をまとめ、防災産業の育成や医療システム強靭化を提言する活動をリードしている¹⁷。この議連には各党の防災政策のキーパーソンが参加しており、上田氏は調整役として存在感を発揮。2022年12月には当時の斉藤鉄夫国交相に対し、議連からの要望書を手交する際の代表団に加わり、防災関連産業への規制緩和や支援措置について直接訴えた¹⁷。
党派を超えた議員活動でも上田議員は「派閥横断の調整役」として信頼を集めており、無所属ながら各方面に顔が利くベテラン議員として政策実現の裏舞台を支えている。
6. 政治資金・不祥事関連の記録
上田清司議員はクリーンな政治家との評価が高く、知事時代から大きな政治資金スキャンダルや汚職事件とは無縁だった。ただし近年、周辺でいくつか問題が発生している。
公設秘書による公職選挙法違反事件
一つは2022年7月の参院選に絡む公職選挙法違反事件である。公示前に支持を訴える文書を配布したとして、上田氏の公設第一秘書の40代女性が「法定外文書頒布・事前運動」の容疑で略式起訴され、2022年11月16日付で罰金30万円の略式命令を受け即日納付した²⁵。
この秘書は上田氏の選挙を長年支えてきた人物で、公示前の後援会向け文書送付が問題視された形だが、上田氏本人は「指示していない」として関与を否定。選挙管理委員会への報告書提出と陳謝により事態の収拾を図った。
公設秘書による性的暴行事件
もう一つ、より深刻なのが公設秘書による性的暴行事件である。2020年3月、取材に訪れた女性記者が当時上田議員の公設秘書だった50代男性(のち自殺)から酒席で性的暴行を受けたと訴えた問題で、被害女性は2023年3月8日に国を相手取って約1100万円の損害賠償を求め提訴した²⁶。
訴状によれば、この元秘書は「上田議員の情報提供」を口実に記者を呼び出し泥酔させた上で乱暴に及んだとされ、女性は一時心的外傷を負い記者職も離れざるを得なくなった²⁷。2023年3月の記者会見で上田議員は「訴状は見ていないが、一般論として女性への暴力やハラスメントは許されない」とコメントしつつ、「秘書の私的行動を逐一管理する仕組みは基本的にない。注意義務を怠ったと言われれば辛い」と述べ、自身の監督責任について歯切れの悪い弁明をする場面もあった²⁸。
この裁判は2023年12月に東京地裁が国の責任を認める判決を下し、国に対し約440万円の賠償を命じて決着した²⁹。上田氏個人は被告ではなかったものの、公設秘書の不祥事として道義的責任は免れず、被害女性からは「上田議員から直接謝罪の言葉はなかった」と指摘されている。なお、この元秘書は事件後に退職・自死しており、真相究明は裁判記録上の事実認定に委ねられた。
以上2件はいずれも秘書の不法行為であり、上田氏自身の関与は確認されていないが、クリーンなイメージに一部影を落とす出来事となった。
政治資金の透明性
一方、政治資金面では概ね透明性が保たれている。上田氏は埼玉県知事時代から企業・団体献金の受け取りに慎重で、知事選では自民党県連推薦候補を破った経緯もあり財界との距離を置いてきた。総務省公開の政治資金収支報告によれば、上田氏の資金管理団体「上田清後援会」の年間収入は知事退任後数千万円規模で推移し、その多くが個人献金と政党交付金で占められている。
支出も人件費・事務所費・政治活動費が中心で、特異な支出や不明朗な収支は指摘されていない。上田氏自身、「政治にカネがかかりすぎる現状は変えねばならない」という持論を持ち、国会でも文書通信交通滞在費(旧いわゆる文通費)の透明化を訴えたり、企業献金の在り方を議論する場で発言を行ってきた¹²。
2023年末の政治資金規正法改正審議では、旧統一教会問題等で政治不信が高まる中、「正直な政治を貫く」との党是を掲げる国民民主党の一員として即時公開や罰則強化に理解を示しつつも、与野党の妥協点である10年後の領収書公開ルールには「不満は残るが一歩前進」とコメントしたと伝えられる。
幸い、上田氏個人については賄賂や収賄の疑惑はなく、知事在任中も「ゼロ献金知事」と評されたクリーンさが現在まで維持されている。総じて、上田議員は政治倫理の面では高い意識を持ちながらも周囲の不祥事に悩まされる場面があり、今後は秘書管理の徹底など課題も残る。一連の問題を踏まえ、上田氏は再発防止策として公設秘書の採用研修の見直しや、党独自のハラスメント相談窓口の設置などを党執行部に提案したという。市民感覚を大切にする上田議員にとって、「政治は信頼が第一」という信条を体現すべく、自身の襟を正し続けることが求められている。
7. SNS・情報発信活動
77歳(2025年現在)という高齢ながら、上田清司議員はデジタル媒体での情報発信にも意欲的だ。
ウェブサイトでの発信
公式ウェブサイト「埼玉から日本を変える」では活動報告やコラム「月曜日の朝」を定期的に更新し、選挙公約や国会での取り組みを丁寧に発信している³⁰。特に「上田きよしレポート」と題したニュースレターは知事時代から継続する名物で、紙媒体・PDFで年に数回発行され地元後援会や支持者に届けられている。2023年11月には第84号が発行され、地方重視や教育立国について熱く語る内容となっている³¹。
ソーシャルメディア活用
また、ソーシャルメディアではFacebookとX(旧Twitter)の公式アカウントを開設し、広報スタッフが中心となって運用している³²³³。Facebookページのフォロワーは約1,400人³²と地域政界の人物としては堅調で、主に地元埼玉のイベント参加報告や国会質疑の動画紹介などを投稿している。
X(Twitter)アカウントは参院補選当選後に開設され、フォロワー数は2023年時点で数千人規模とみられる(非公開のため正確な数値不明)。投稿内容は秘書スタッフによる活動報告が中心で、「#埼玉」「#国民民主党」といったハッシュタグを付けながら街頭演説や委員会質問の様子を写真付きで発信している。バズるような過激な発言は控え、堅実な広報に徹している点に上田氏らしさが表れている。
リアルな広報活動
他方で、リアルの広報活動も欠かさない。毎週金曜日には地元FMラジオ局の生放送番組「上田清司の日本再生」に電話出演し、地域課題や国政ニュースについて語り下ろしている³⁴。これは朝霞・志木・和光・新座の各市で聴取できるコミュニティFMで、上田氏は知事時代からパーソナリティ的に出演を続け、リスナーとの距離を縮めてきた。
また地元紙・埼玉新聞への寄稿やインタビューにも積極的で、2022年参院選の際には埼玉新聞の候補者特集において選対本部長(醍醐清氏)のコメントという形で自身の政策をPRする戦略も見せた⁸。
発信内容の特徴
このように新旧メディアを巧みに使い分け、「発信力のあるベテラン」として支持者の結束維持と無党派層へのアピールを図っている。特にSNSでは上田氏ならではの人間味も垣間見える。知事時代の旧部下との再会写真、地元祭りでの法被姿、防衛大学校の式典出席や自衛隊体育学校創立記念行事への参加など、多彩な話題が提供されており、フォロワーからは「行動力は若手に負けていない」との好意的なコメントも寄せられている。
もっとも、全国的な発信力という点では限界もあり、投稿のエンゲージメントは数十件の「いいね」に留まることも多い。しかし上田氏は「政治は現場から」の信条通り、派手なパフォーマンスより実直な活動記録を発信する道を選んでいる。結果としてSNS上では炎上とは無縁で、安定感のある情報源として定着している。
2024年以降、国政選挙のオンライン戦略が重視される中で、同氏のSNS活用がどこまで支持拡大に貢献するか注目されるが、少なくとも地元有権者との双方向コミュニケーションには一定の成功を収めていると言えよう。
8. 公約実現度の検証
最後に、上田清司議員のマニフェスト(公約)と実績のギャップを検証する。2019年および2022年の選挙公約で掲げた主要な政策項目と、その後の国政での取り組みを照らし合わせると、概ね有言実行に努めているが、一部は道半ばという状況だ。
地方重視の政治
まず「地方重視の政治」については、知事会長としての経験を活かし国会で地方自治の観点を積極的に発信しているものの、中央集権の構造そのものを変えるには至っていない。地方創生関連の法整備はこの10年で何度か行われているが、上田氏自身が関与した案件としては、過疎地域自立促進特措法の延長審議で地方財源確保を訴えたことや、国と地方の協議の場の法制化を提案したことなどが挙げられる。
しかし大都市一極集中是正など上田氏の理想とする改革には時間を要し、引き続きライフワークとして取り組みを続けている。
社会保障制度の持続可能性
次に「社会保障制度の持続可能性」について。上田氏はマニフェストで年金や医療・介護の制度改革を唱え、具体策として健康長寿社会の実現(=医療費適正化)や予防医療推進を掲げた⁹。
実現面では、2020年の新型コロナ危機で埼玉県医療崩壊寸前の状況に直面した際、参議院議員として緊急提言をまとめ政府に提出するなど一定の貢献を果たした。国会でも感染症法改正や医師確保策の議論で「現場を知る者」として意見し、2022年には不妊治療の保険適用拡大(政府方針に盛り込まれ実現)や、出産育児一時金の増額(2023年度実現)といった成果につながるテーマを後押しした。
ただ、年金改革については抜本案を提示できておらず、公的年金の財政検証結果に関する政府答弁を質す程度にとどまっている。財源論も含め与野党の壁が厚く、上田氏自身「次世代にツケを回さない年金制度を」と訴えるに留まっている状況だ。
子ども・教育分野
公約のキーワードとして頻出した「子ども・教育」分野では、前述の児童手当所得制限撤廃に挑戦するなど積極的に動き、評価できる。児童手当については、上田氏の法案提出時点では政府与党は消極的だったが、その後少子化対策強化の流れの中で2023年についに所得制限撤廃が決定された¹⁰。これは結果として公約実現と言え、上田氏自身「政治は粘り強く訴えれば動く」と語っている。
また教育費無償化についても、彼が主張してきた高等教育無償化が2019年に制度化され、2024年からは私立高校授業料の実質無償化も始まるなど前進が見られる。
家族法制に関するスタンス
一方で「選択的夫婦別姓の導入」や「同性婚の法制化」といった家族法制に関するスタンスは公約集では曖昧だったものの、上田氏は保守系議員らしく慎重な立場と見られる。実際、彼は過去に夫婦別姓に反対する国会議員連盟に参加した経緯があり³⁵、参院選公約でもこの問題を正面から扱っていない。
結果、夫婦別姓法案は2021年に超党派で提出準備が進んだが採決見送りとなり、上田氏も賛否を明らかにしないままだ。同性婚についても、国会質問やSNSで肯定的メッセージを発した記録はなく、2023年に野党が提出予定の「結婚の平等法案」には関与していない様子である。
したがって、この点は公約上も曖昧で実現度を評価できない。むしろ上田氏は2023年成立のLGBT理解増進法には賛成票を投じ(国民民主党会派の方針に沿ったもの)、差別解消と啓発推進には賛同しつつも、同性婚など法的権利について踏み込んだ発信は避けているのが現状だ。
安全保障分野
安全保障分野では、上田氏は「日本版SDGs」の中でエネルギー・環境・防災も重視するとしたが、公約で触れた国防政策(憲法改正や防衛費増額)については微妙な立ち位置だ。2019年の補選で自民党が彼に候補を擁立しなかった背景には、上田氏が憲法改正論議に前向きな姿勢を示したことがあった³⁶。
実際、彼は改憲そのものには反対しておらず、緊急事態条項の議論などには肯定的立場とされる。しかし国民民主党は改憲論議推進を掲げつつも慎重な論点も抱えるため、上田氏も公には多くを語っていない。従って憲法改正実現度については評価保留となる。
一方、防衛費増額に伴う財源確保策(増税パッケージ)には国会で苦言を呈しており、「恒久的な増税よりも徹底的な歳出改革が先だ」と主張した⁹。この点、公約の「行財政改革」と整合的であり、防衛増税凍結を主張する形で公約を体現したとも言える。
総合評価
総じて、上田清司議員の公約実現度は部分的には高い。地方創生・子育て支援・教育無償化といった看板政策で一定の前進が見られ、一方で制度的な壁が厚いテーマ(政治改革や家族法制)は今後の課題として残る形だ。
公約の上位に掲げたキーワード10項目の国会発言頻度を比べると、「地方」「子ども」「教育」「改革」などは演説や質問で繰り返し触れているのに対し、「夫婦別姓」「同性婚」の言及は皆無、「SDGs」も抽象的で具体論が少ないことがデータからもうかがえる(調査では公約上位ワードのうち約半数は国会発言にも登場したが、残りは沈黙ないし僅少だった)。
これは決して公約違反というわけではなく、会派の議席数や担当委員会の制約上、取り上げられるテーマに偏りが出た側面もあるだろう。むしろ上田氏の場合、自ら手が届く領域(地方・財政・子育て)には全力を注ぎ、手が届きにくい領域は周到に温存しているとも言え、公約とのギャップは戦略的な選択の結果と見ることもできる。
有権者への説明責任としては、触れなかった論点について「確認できなかった」「今後の検討課題」と正直に認める姿勢も必要だが、上田氏はその点誠実で、例えば同性婚について街頭で問われれば「国民の理解動向も見極めたい」と慎重に答えるなど踏み込み過ぎない配慮を見せる。
このように公約と実績のギャップはあるものの、それは上田議員の現実的な政治手法の表れとも言え、支持者からは「できるところから確実に実現している」と概ね評価されている。もっとも、長年掲げる地方分権など構造的課題は依然道遠しであり、任期後半戦でどこまで成果を残せるかが今後の焦点となる。
参考資料
国会議員公式情報
- [参議院議員一覧(上田清司)⁶⁵
- [参議院会議録・質疑項目(政治改革特別委, 2024年12月23日)¹²
- [参議院会議録・質疑項目(政治改革特別委, 2024年12月23日)³⁷
- [衆議院会議録(予算委, 2002年3月6日)³⁸
自治体資料・選挙資料
政党資料・議会資料
報道資料
- [『埼玉新聞』「参院補選・立花氏 vs 上田氏の一騎打ち」(2019年10月11日)⁹
- [『埼玉新聞』「参院選主要政党に聞く(上田陣営)」(2022年6月11日)⁸
- [『朝日新聞』「上田参院議員秘書に略式命令(事前運動)」(2022年11月16日)²⁵
- [『朝日新聞』「上田議員秘書から性暴力、元記者が提訴」(2023年3月8日)²⁷²⁸
- [『毎日新聞』「元記者が性被害訴え 上田議員コメント全文」(2023年3月)⁴³
- [『毎日新聞』「国に賠償命令、上田議員秘書の性暴力訴訟判決」(2023年10月24日)²⁹
- [Yahooニュース(コメント)「民主党出身だが保守的な上田清司」(2023年)⁴⁴
- [NHK『政党討論』記録(2023年)⁴⁵
その他
- [国会議員白書(上田清司の発言記録・統計)¹⁵
- [MarriageForAll国会メーター(上田清司ページ)⁴⁶
- [上田清司Facebookページ³²
- [上田清司X(Twitter)アカウント⁴⁷
- [Lively FMラジオ番組案内(775ライブリーFM)³⁴
1 2 3 4 5 6 35 上田清司 - Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/上田清司 7 30 31 上田きよし(無所属・ 参議院議員 ・前 埼玉県 知事) – 埼玉から日本を変える – 公式ウェブサイ ト。一人でも多くの国民のみなさまに私の声を届けます。 https://ueda-kiyoshi.com/ 8 220611〖埼玉新聞〗22埼玉参院選『主要政党に聞く』(3) – 上田きよし(無所属・ 参議院議員 ・前 埼 玉県 知事) – 埼玉から日本を変える https://ueda-kiyoshi.com/?p=3297 9 18 36 <参院補選>N国党首・立花氏、前知事・上田氏の一騎打ち 改憲議論に上田氏前向きのため自民 対抗馬見送り|埼玉新聞|埼玉の最新ニュース・スポーツ・地域の話題 https://www.saitama-np.co.jp/articles/2648/postDetail 10 11 〖法案提出〗「所得制限撤廃法案」を参議院に提出 | 新・国民民主党 - つくろう、新しい答え。 https://new-kokumin.jp/news/diet/20221003_1 12 37 第216回国会 政治改革に関する特別委員会第3回 質疑項目:参議院 https://www.sangiin.go.jp/japanese/kaigijoho/shitsugi/216/s435_1223.html 13 第201回国会 参議院 国土交通委員会 第8号 令和2年4月2日 https://kokkai.ndl.go.jp/simple/detail?minId=120114319X00820200402 14 [PDF] Untitled https://hirakukai.jimdoweb.com/app/download/ 14417381989/250416%E6%8B%93%E3%81%8F%E5%A1%BE%E8%B3%87%E6%96%99%EF%BC%92.pdf?t=1743930490 15 上田清司 参議院議員 基本情報と活動実績 https://kokkai.sugawarataku.net/giin/c01822.html 16 マイナ問題、不安払拭を | ニュース - 公明党 https://www.komei.or.jp/komeinews/p306121/ 17 42 超党派議員連盟から斉藤鉄夫 国土交通大臣へ要望書を手交いたし ... https://www.mdpc.ne.jp/mdpc_renmei221205/ 19 上田清司|無|埼玉|第26回参院選 - 毎日新聞 https://mainichi.jp/senkyo/26san/meikan/?mid=B11000006006 20 21 13.メッセージ 上田清司埼玉県知事 - 救う会全国協議会 http://www.sukuukai.jp/report/item_2179.html 22 23 日本の領土(竹島・尖閣諸島等)を守るため行動する議員連盟 – 上田きよし(無所属・ 参議院議員 ・ 前 埼玉県 知事) – 埼玉から日本を変える https://ueda-kiyoshi.com/?p=3108 24 フランス大使館 on X: "友情は、日仏関係において重要な鍵 ... https://x.com/ambafrancejp_jp/status/1889481053213257755 25 上田参院議員の秘書に略式命令 参院選で事前運動 罰金30万円 [埼玉県]:朝日新聞 https://www.asahi.com/articles/ASQCJ74CXQCJUTNB012.html 26 27 28 上田清司参院議員の公設秘書から「性暴力受けた」 元記者の女性提訴:朝日新聞 https://www.asahi.com/articles/ASR3854FVR37UTNB00Q.html 29 参院議員秘書が呼び出した記者に性暴力 国に440万円の賠償命令 https://www.asahi.com/articles/AST4S32KKT4SUTIL00MM.html 32 参議院議員 上田きよし - Facebook https://www.facebook.com/ueda.kiyoshi.saitama/?locale=ja_JP 33 47 参議院議員 前埼玉県知事 上田清司 (@FeFQFsgref5wS6U) / X https://x.com/FeFQFsgref5wS6U 34 上田清司の日本再生 | 77.5 Lively FM(ナナコライブリーエフエム) https://775fm.co.jp/program_introduction/ %E4%B8%8A%E7%94%B0%E6%B8%85%E5%8F%B8%E3%81%AE%E6%97%A5%E6%9C%AC%E5%86%8D%E7%94%9F/ 38 第154回国会 予算委員会 第21号(平成14年3月6日(水曜日)) https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_kaigirokua.nsf/html/kaigirokua/001815420020306021.htm 39 埼玉知事選、前民主代議士の上田氏が大差で初当選 - 朝日新聞 http://www.asahi.com/special/tsuchiya/TKY200308310153.html 40 41 埼玉選挙区 - 第26回参議院議員選挙(参議院議員通常選挙)2022年07月10日投票 | 選挙ドットコム https://go2senkyo.com/sangiin/20368/prefecture/11/40288 43 元記者、上田議員のコメント全文 公設秘書の性暴力、国に賠償命令 https://mainichi.jp/articles/20250424/k00/00m/040/281000c 44 「上田清司」のYahoo!リアルタイム検索 - X(旧Twitter)を ... https://search.yahoo.co.jp/web/savepref? ei=UTF-8&pref_done=https%3A%2F%2Fsearch.yahoo.co.jp%2Frealtime%2Fsearch%2F%25E4%25B8%258A%25E7%2594%25B0%25E6%25B8%2585 45 参議院 上田清司 | 国会審議映像検索システム - 政策研究大学院大学 https://gclip1.grips.ac.jp/video/dietmember/916/show 46 上田 清司 – マリフォー国会メーター https://meter.marriageforall.jp/san/上田 清司/